(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の燻煙剤組成物は、以下の(A)〜(D)成分を含有する。
【0010】
<(A)成分:薬剤>
(A)成分は薬剤である。(A)成分を用いることで、殺菌、抗菌、防カビ、抗カビ等の微生物抑制効果や、消臭効果、殺虫効果等を発揮できる。
【0011】
(A)成分は、燻煙剤の目的に応じて、適宜選択される。(A)成分としては、例えば、殺菌剤、抗菌剤、防カビ剤、抗カビ剤等の微生物制御剤、消臭剤、殺虫剤等として作用するものが挙げられ、中でも、殺菌剤、抗菌剤、防カビ剤、抗カビ剤、等の微生物制御剤や消臭剤を好適に用いることができる。ここで微生物制御剤とは、菌の増殖を防いだり、菌の付着を防いだり、殺菌する等して菌の働きを抑える薬剤の総称である。これらの(A)成分は従来から、燻煙剤に用いられている、有機系薬剤、無機系薬剤等を使用することが出来る。
【0012】
有機系薬剤としては、例えば、3−メチル−4−イソプロピルフェノール(IPMP)、3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメイト(IPBC)、o−フェニルフェノール(OPP)、メトキサジアゾン等が挙げられ、IPMPやIPBCが好ましい。
無機系薬剤としては、例えば、有効成分として、抗菌・殺菌・防カビ・抗カビ・消臭作用を持つ銀単体;酸化銀;塩化銀、硝酸銀、硫酸銀、炭酸銀、スルホン酸銀塩等の無機銀塩;蟻酸銀、酢酸銀等の有機銀塩等の銀化合物を含むものが挙げられる。
【0013】
また、無機系薬剤としては、銀単体、又は前記銀化合物をゼオライト、シリカゲル、低分子ガラス、リン酸カルシウム、ケイ酸塩、酸化チタン等の物質(以下、担体ということがある)に担持させた状態(以下、担持体ということがある)で配合してもよい。担体としては、後述する(C)成分、(D)成分であってもよい。担持体としては、例えば、銀単体、酸化銀、又は銀化合物(例えば、無機銀塩、有機銀塩等)を担持したゼオライト系抗菌剤、シリカゲル系抗菌剤、酸化チタン系抗菌剤、ケイ酸塩系抗菌剤等が挙げられる。
中でも、(A)成分としては、(A)成分由来の臭気をより低減する観点から、銀単体、酸化銀、硝酸銀等の無機銀塩又はこれらを担体に担持させた銀含有無機薬剤が好ましい。特に銀化合物を担持したゼオライト系抗菌剤が好ましい。無機薬剤を用いることで、燻煙処理時及び燻煙処理後における(A)成分由来の臭気をより低減できる。
これらの(A)成分は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0014】
(A)成分の形態は特に限定されないが、対象空間の広さ等を勘案して決定できる。(A)成分として銀化合物を用いる場合は、粒子が微細であるほど、煙化しやすくなり、(A)成分の効果を十分に発揮できると共に、広域に拡散される。一方、(A)成分の粒子は、小さすぎると拡散した後に落下しにくくなり、対象空間の下方における(A)成分の効果の発現までに時間を要する。
例えば、(A)成分として銀系化合物を用いた場合は、体積平均粒子径は、0.01〜1000μmが好ましく、0.5〜100μmがより好ましく、1〜5μmがさらに好ましい。本発明の燻煙剤組成物においては、このような比較的大きな粒子径の(A)成分であっても、煙化して拡散することができる。ここで、「煙化」とは、(A)成分を対象空間に拡散できる状態にすることを意味する。
なお、体積平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(LA910、株式会社堀場製作所製)により求められる値をいい、次のようにして測定できる。(A)成分を固形分1質量%となるように蒸留水に分散して試料とする。この試料をレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置に投入し、装置内で超音波によって分散後、レーザーを照射して粒度分布を測定する。体積頻度の累積が50%(体積)となる径を体積平均粒子径とする。
【0015】
(A)成分の含有量は、(A)成分の種類や有効成分濃度、燻煙剤に求める機能に応じて決定される。例えば、銀化合物の場合、(A)成分の含有量は、燻煙剤組成物中の銀濃度が0.001〜0.5質量%となる量が好ましく、0.05〜0.1質量%となる量がより好ましい。(A)成分の含有量が上記下限値以上であると、薬剤の効能が向上しやすい。(A)成分の含有量が上記上限値以下であると、有効成分の揮散率が低下することを防ぐことができる。
一方、有機系薬剤(IPMP等)の場合、(A)成分の含有量は、燻煙剤組成物の総質量に対し、1〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。(A)成分の含有量が上記下限値以上であると、薬剤の効能が向上しやすい。(A)成分の含有量が上記上限値以下であると、有効成分の揮散率の低下を防ぐことができる。
【0016】
<(B)成分:発泡剤>
(B)成分は、発泡剤である。(B)成分としては、加熱により熱分解して多量の熱を発生すると共に、炭酸ガスや窒素ガス等(以下、総じて発泡ガスという)を発生するものが用いられ、例えば、アゾジカルボンアミド、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾビスイソブチロニトリル、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。中でも、分解温度、発泡ガスの発生量等の観点から、アゾジカルボンアミドが好ましい。これら(B)成分は加熱により(A)成分と発泡溶融し、(B)成分の熱分解ガスの作用によって(A)成分を煙化できる。
これらの(B)成分は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0017】
(B)成分の含有量は、(B)成分の種類や(A)成分の粒子径等を勘案して決定することができる。例えば、(B)成分の含有量は、燻煙剤組成物の総質量に対し、50〜85質量%が好ましく、60〜75質量%がより好ましい。上記下限値以上であると、(A)成分を効率よく煙化しやすい。上記上限値以下であると、(B)成分の分解物の飛散量が少なくなり、対象空間を汚染しにくくなる。
【0018】
<(C)成分:リン酸カルシウム>
(C)成分は、リン酸カルシウムである。(C)成分としては、第一リン酸カルシウム(Ca(H
2PO
4)
2)、第二リン酸カルシウム(CaHPO
4)、第三リン酸カルシウム(Ca
3(PO)
2)、リン酸三カルシウム(Ca
3(PO
4)
2)、TCP−10・U(3[Ca
3(PO
4)
2]・Ca(OH)
2)、第三リン酸三カルシウム(3Ca
3(PO
4)
2・Ca(OH)
2)、TCP(Ca
3(PO
4)
2)、HAP(Ca
10(PO
4)
6(OH)
2、球形HAP(3Ca
3(PO
4)
2・Ca(OH)
2)、ピロリン酸二水素カルシウム(CaH
2P
2O
7)、ピロリン酸カルシウム(Ca
2P
2O
7)、及びこれらの含水塩等が挙げられる。なかでも第三リン酸カルシウムが好ましい。
(C)成分の平均粒子径は、0.1〜20μmが好ましく、1〜6μmがより好ましい。なお、平均粒子径はレーザー回折散乱式粒度分布測定法によって、25℃で測定した値である。
これらの(C)成分は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0019】
(C)成分の含有量は、燻煙剤組成物の総質量に対し、0.5〜10.0質量%が好ましく、1.0〜5.0質量%がより好ましい。(C)成分の含有量が上記範囲内であると、(D)成分と特定比で組み合わせた場合に薬剤の効能が向上しやすい。
【0020】
<(D)成分:非晶質ケイ酸化合物>
(D)成分は、非晶質ケイ酸化合物である。(D)成分としては、非晶質シリカ、非晶質ゼオライト(アルミノケイ酸ナトリウム)、非晶質ケイ酸カルシウム、珪藻土、パーライト、シラスバルーン、及びこれらの含水物などが挙げられる。
なかでも、非晶質シリカが好ましい。非晶質シリカとしては無水物が好ましい。
(D)成分の平均粒子径は、0.1〜20μmが好ましく、2〜15μmがより好ましい。なお、平均粒子径はレーザー回折散乱式粒度分布測定法によって、25℃で測定した値である。
これらの(D)成分は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0021】
(D)成分の含有量は、燻煙剤組成物の総質量に対し、0.025〜0.65質量%が好ましく、0.05〜0.5質量%がより好ましい。(D)成分の含有量が上記範囲内であると、(C)成分と特定比で組み合わせた場合に薬剤の効能が向上しやすい。
【0022】
(C)成分/(D)成分で表される質量比(以下、C/D比ともいう)は、2〜35であり、好ましくは8〜20である。C/D比が上記範囲内であると、薬剤の揮散率が向上し、薬剤の効能が向上しやすい。
【0023】
[(C)成分+(D)成分]/(B)成分で表される質量比(以下、[C+D]/B比ともいう)は、0.005〜0.4が好ましく、0.01〜0.1がより好ましい。[C+D]/B比が上記範囲内であると、薬剤の効能が向上しやすい。
【0024】
<任意成分>
また、本発明の燻煙剤組成物は、(A)〜(D)成分に加えて、(A)〜(D)成分以外の任意成分を含有してもよい。
任意成分としては、例えば、結合剤、界面活性剤、賦形剤、発熱助剤、安定剤、効力増強剤、酸化防止剤、賦香剤等が挙げられる。
任意成分は、1種単独で用いられても良いし、2種以上が組み合わされて用いられても良い。
【0025】
本発明の燻煙剤組成物に結合剤が含有されると、顆粒成形性が向上する。
結合剤としては、例えば、セルロース類(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等。)、デンプン系高分子化合物(デンプン、スターチ等。)、天然系高分子化合物(アラビアゴム等。)、合成高分子化合物(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等。)等が挙げられる。
【0026】
本発明の燻煙剤組成物が結合剤を含有する場合、本発明の燻煙剤組成物(100質量%)中の結合剤の含有量は、3〜8質量%が好ましい。結合剤の含有量が下限値以上であれば、設置から燻煙開始までの時間をより長くすることができ、燻煙開始時に使用者が被煙することを防ぎやすい。結合剤の含有量が上限値以下であれば、良好な燻煙効能(噴出力)が得られやすい。
【0027】
賦形剤としては、例えば、無機系鉱物質(クレー、カオリン、タルク、石英、水晶等)等が挙げられる。
本発明の燻煙剤組成物が賦形剤を含有する場合、本発明の燻煙剤組成物(100質量%)中の賦形剤の含有量は、2〜45質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましい。賦形剤の含有量が下限値以上であれば、顆粒成形性が向上し、燻煙効能がより安定になる。賦形剤の含有量が上限値以下であれば、充分な燻煙効能(噴出力)が得られやすい。
【0028】
発熱助剤としては、例えば、酸化亜鉛、メラミン等が挙げられる。
安定剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドキシアニソール、没食子酸プロピル、エポキシ化合物(エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等。)等が挙げられる。
効力増強剤としては、例えば、ピペロニルブトキサイド、S−421等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、トコフェロール等が挙げられる。
(A)〜(D)成分、任意成分の合計含有量は、100質量%を超えない。
【0029】
<燻煙剤組成物の製造方法>
本発明の燻煙剤組成物は、粉状、粒状、錠剤などの固形製剤として調製される。
燻煙剤組成物の製造方法としては、目的とする剤形に応じて、公知の製造方法が用いられる。例えば、粒状の製剤とする場合は、押出し造粒法、圧縮造粒法、撹拌造粒法、転動造粒法、流動層造粒法等、公知の造粒物の製造方法が用いられる。
燻煙剤組成物は、(A)〜(D)成分を混合することにより得られる。
押出し造粒法による製造方法の具体例として、燻煙剤組成物の各成分を、ニーダー等により混合し、必要に応じて適量の水を加えて混合し、得られた混合物を任意の開孔径を有するダイスを用い、前押出しあるいは横押出し造粒機で造粒する方法が挙げられる。該造粒物をさらにカッター等で任意の大きさに切断し、水分除去のための乾燥を行っても良い。
乾燥方法は、例えば、従来公知の乾燥機を用いた加熱乾燥法が挙げられる。
乾燥温度は、特に限定されないが、香料等の揮発を抑制する点から、50〜80℃が好ましい。
乾燥時間は、乾燥温度に応じて適宜決定される。
乾燥した後の燻煙剤組成物の水分含量は、特に限定されないが、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、0質量%であってもよい。水分含量が5質量%以下であると(A)成分の揮散率が良好である。
【0030】
<燻煙剤組成物の使用方法>
本発明の燻煙剤組成物を用いた燻煙方法は、公知の方法を採用できる。例えば、金属製容器、セラミック製容器等の容器に本発明の燻煙剤組成物を収容し、密閉した対象空間内で、直接的又は間接的に燻煙剤を加熱することによって燻煙する方法が挙げられる。燻煙剤を間接的に加熱することで、直接的に加熱するよりも、燻煙時の(A)成分や(B)成分に由来する臭気の低減や、燻煙剤の燃えカス等による屋内汚染を低減しやすい。
対象空間としては、特に限定されず、例えば、浴室、居室、押入れ、トイレ等が挙げられる。
【0031】
燻煙剤を間接的に加熱する方法としては、燻煙剤を燃焼させることなく、(B)成分が熱分解し得る温度まで燻煙剤に熱エネルギーを供給できるものであればよく、間接加熱方式の燻煙方法に通常用いられる公知の加熱方法を採用できる。
具体的には、例えば、水と接触して発熱する物質と水とを接触させ、その反応熱を利用して燻煙剤を加熱する方法(i)、鉄粉と酸化剤(塩素酸アンモニウム等。)との混合による酸化反応、又は金属と該金属よりイオン化傾向の小さい金属酸化物もしくは酸化剤との混合による酸化反応により発生する熱を利用して燻煙剤を加熱する方法(ii)等が挙げられる。なかでも、実用性の点から、方法(i)が好ましい。
【0032】
水と接触し発熱する物質としては、酸化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、塩化鉄等が挙げられる。なかでも、水と接触して発熱する物質としては、実用性の点から、酸化カルシウムが好ましい。
【0033】
本発明の間接加熱型燻煙剤組成物の使用量は、燻煙処理を行う空間の容積に応じて適宜設定すればよく、1m
3あたり0.1〜2.4gが好ましく、0.4〜2.0gがより好ましい。
燻煙処理時間(燻煙開始後、対象空間の密閉を解除するまでの時間)は、特に限定されないが、60分程度が好ましく、30分未満では薬剤の効果を発揮するには不十分な場合があり、120分以上では使い勝手が低下してしまう。
【0034】
以下、本発明の燻煙剤組成物を用いた燻煙方法の一例として、
図1に例示した燻煙装置10を用いた燻煙方法について説明する。
燻煙装置10は、
図1に示すように、筐体12と、筐体12の内部に設けられた加熱部20と、筐体12の内部に設けられた燻煙剤部32とで概略構成されている。筐体12は略円筒状の本体14と、底部16と、本体14の上部に設けられた蓋部18とで構成されている。筐体12内には、燻煙剤容器30が設けられ、燻煙剤容器30に燻煙剤組成物が充填されて燻煙剤部32が形成されている。
【0035】
蓋部18は、貫通孔を有するものであり、メッシュ、パンチングメタル、格子状の枠体等が挙げられる。蓋部18の材質は、例えば、金属、セラミック等が挙げられる。
本体14の材質は蓋部18と同じである。
【0036】
燻煙剤容器30は、燻煙剤部32を充填する容器として機能すると共に、加熱部20で生じた熱エネルギーを燻煙剤部32に伝える伝熱部として機能するものである。燻煙剤容器30は、例えば金属製の容器等が挙げられる。
【0037】
加熱部20は、特に限定されず、燻煙剤部32の煙化に必要な熱量を考慮して適宜決定できる。加熱部20としては、前記した水と接触して発熱する物質を充填して形成したものが好ましく、酸化カルシウムを充填して形成したものが特に好ましい。また、加熱部20は、鉄粉と酸化剤とを仕切り材で仕切って充填して形成してもよく、金属と該金属よりイオン化傾向の小さい金属酸化物又は酸化剤とを仕切り材で仕切って充填して形成してもよい。
【0038】
底部16は、加熱部20の機構に応じて適宜決定すればよい。例えば、加熱部20が水と接触して発熱する物質(酸化カルシウム等。)により構成されている場合、底部16には不織布や金属製のメッシュ等を用いることができる。底部16を不織布や金属製のメッシュとすることで、底部16から水を加熱部20内に浸入させて反応熱を発生させ、燻煙剤組成物を加熱することができる。
【0039】
燻煙装置10を用いた燻煙方法では、まず燻煙装置10を対象空間内に設置する。次いで、加熱部20の機構に応じて加熱部20を発熱させる。例えば、酸化カルシウムを充填した加熱部20が設けられている場合、底部16を水に浸漬する。加熱部20が発熱すると、燻煙剤容器30を介して燻煙剤部32が加熱される。加熱された燻煙剤部32の燻煙剤組成物は、(B)成分の分解によってガスが生じ、該ガスと共に(A)成分が煙化し、蓋部18の貫通孔を通過して噴出する。これにより、対象空間内に(A)成分が拡散して、(A)成分の効果が得られる。
【0040】
以上、説明した通り、本発明の燻煙剤組成物は、(A)〜(D)成分を含み、かつC/D比が特定の範囲内であることにより、薬剤の効能を向上させることができる。
本発明の燻煙剤組成物は、特に居室や浴室用の微生物制御用(防カビ、抗カビ等)の燻煙剤として好適である。なかでも、浴室用防カビ燻煙剤であることが好ましい。
【実施例】
【0041】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
各例の燻煙剤組成物の組成(含有量(質量%))を表1〜3に示す。
表中、空欄の配合成分がある場合、その配合成分は配合されていない。
表中、「バランス」は、燻煙剤組成物に含まれる全配合成分の合計の配合量が100質量%となるように加えられる残部を意味する。
本実施例において使用した原料は下記の通りである。
【0042】
<(A)成分>
・A−1:銀担持ゼオライト系無機抗菌剤 (商品名:ゼオミックAJ10N 銀含量2.5質量% 、平均粒子径約2.5μm、(株)シナネンゼオミック製)ゼオライトは結晶性。
・A−2:抗菌性リン酸カルシウム銀系抗菌剤(商品名:アパサイダーAW 銀含量2.2質量%、平均粒子径約2.3μm、(C)成分:リン酸カルシウム(Ca
3(PO
4)
2)約85質量%、(D)成分:非晶質シリカ約5.5質量%を含む、(株)サンギ製)。
・A−3:3−メチル−4−イソプロピルフェノール(IPMP)(商品名:ビオゾール、大阪化成(株)製)。
【0043】
<(B)成分>
・B−1:アゾジカルボンアミド(商品名:ダイブローAC.2040(C)、大日精化工業(株)製)。
・B−2:炭酸水素ナトリウム(商品名:セルボンSC855、永和化成工業(株)製)。
【0044】
<成分(C)>
・C−1:無水リン酸カルシウム(Ca
3(PO
4)
2)(試薬、平均粒子径約5μm、純正化学(株)製)。
【0045】
<成分(D)>
・D−1:非結晶質シリカ(商品名:トクシールNP、平均粒子径約10μm、(株)トクヤマ製)。
【0046】
<任意成分>
・ZnO:酸化亜鉛(日本薬局方 酸化亜鉛、平均粒径0.6μm、真比重5.6g/cm
3(20℃)、堺化学工業株式会社製)。
・HPMC:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名:メトローズ60SH−50、信越化学工業株式会社製)。
・香料:表1記載の香料組成物。
・クレー:結晶質シリカ(石英(SiO
2))75%含有、商品名「MK−300」、昭和KDE株式会社製。
【0047】
【表1】
【0048】
[実施例1〜17、比較例1〜6]
(燻煙剤組成物の製造方法)
室温(20℃)条件下において、表に示す組成に従い、各成分をニーダー(S5−2G型、株式会社モリヤマ製)で攪拌混合した後、組成全量を100部として10部の水を加えて混合し混合物を得た。得られた混合物を直径2mmの開孔を有するダイスの前押し出し造粒機(EXK−1、株式会社不二パウダル製)を用い造粒し造粒物を得た。得られた造粒物をフラッシュミル(FL300、株式会社不二パウダル製)により長さ2〜5mmに切断し、70℃に設定した乾燥機(RT−120HL、アルプ株式会社製)により2時間乾燥させ、顆粒状の燻煙剤組成物を得た。
(充填方法)
底面に不織布を用い略円筒状の本体からなる筐体に酸化カルシウム37gを充填し加熱部とした。燻煙剤容器に各例の燻煙剤組成物5gを充填し燻煙装置を作製した。
【0049】
<除菌効果の評価>
図2に示すように、1818タイプ(メーターモジュール用、幅:180cm×奥行:180cm)の浴室とほぼ同体積の密閉可能な評価室(床面から天井面までの高さ:約2m)の床隅に、下記(1)の方法で作成した供試用プラスチック板(菌を接種したプラスチック板)を、菌を接種した面を上側に向けて取り付けた。
評価室の床中央部に23mLの水を入れた給水用プラスチック容器を設置した。
各例に従って作製した燻煙装置に燻煙剤組成物5gを入れ、燻煙装置を給水用プラスチック容器に入れて燻煙を開始し、評価室を密閉した。
発煙が開始してから60分後に排気し、回収したプラスチック板から、下記(2)の方法で菌を回収した。プラスチック板から回収した菌液を、計測可能な濃度となるように生理食塩水で適宜希釈したものを、トリプトソイ寒天培地に塗抹接種して、30℃にて3日間培養した後、目視により、形成されたコロニー数を計測した。計測したコロニー数と菌液の希釈倍率から生菌数を求め、その値を「処理後の菌数」とした。
供試用プラスチック板であって、燻煙処理を行っていない未処理のプラスチック板から下記(2)の方法で菌を回収し、トリプトソイ寒天培地に塗抹接種して、30℃にて3日間培養した後のコロニーを計測した。計測したコロニー数から生菌数を求め、その値を「未処理菌数」とした。
上記の結果から、下記の評価基準に従い、除菌効果を評価した。
【0050】
(1)供試用プラスチック板作製方法
(細菌に対する除菌評価)
トリプトソイ寒天(Difco社製)の平板培地にて30℃、3日間培養したMethylobacterium sp.を、滅菌した0.05%Tween80(関東化学製)水溶液にて約10
7CFU/mLの菌液を調製した。次いで、該菌液をプラスチック板(FRP板、50mm×50mm)に0.5mL接種し、室温にて乾燥固定した(薄膜状、板上の菌数は約10
6CFU)。
【0051】
(2)プラスチック板から菌の回収方法
菌を接種したプラスチック板とSCDLP培地(日本製薬社製)10mLを滅菌プラスチックシャーレ(アズワン社製)に入れ、滅菌したピペットの先端で撹拌し、プラスチック板から菌を抽出した。
【0052】
(評価基準)
床の隅部に設置したプラスチック板及び未処理のプラスチック板について求めた菌数を常用対数(log)に変換し、未処理の菌数から処理後の菌数を差し引いた値(log(未処理菌数)−log(処理後の菌数))を求め、その値を除菌活性値とした。その値から、下記の基準で除菌効果を判定した。
(判定基準)
◎◎◎:除菌活性値が4以上。
◎◎ :除菌活性値が3.5以上4未満。
◎ :除菌活性値が3以上3.5未満。
○ :除菌活性値が2以上3未満。
△ :除菌活性値が1以上2未満。
× :除菌活性値が1未満。
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
表2〜4に示す結果から、本発明を適用した実施例1〜17の燻煙剤組成物は、除菌効果に優れていた。
C/D比が2〜35の範囲外である比較例1〜3は、除菌効果に劣っていた。
(D)成分として結晶性ケイ酸化合物を使用した比較例4は、除菌効果に劣っていた。
C/D比が2〜35の範囲外である比較例5〜6は、除菌効果に劣っていた。
以上の結果から、本発明を適用した燻煙剤組成物は、薬剤の効能を高めることができることが判った。