(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記撹拌脱泡工程は、前記計量混合工程により混練した混練物の温度を摂氏10度から32度として撹拌する請求項1から4の何れか一項に記載のシーラントの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したシーラントは、シリンジ等の容器に充填されて冷凍状態で保管され、使用時に解凍される場合がある。この冷凍保管されたシーラントは、解凍後2時間程度、容器から吐出される単位時間当たりの吐出量が規定値以上に維持されること(吐出性)が求められる。
その一方で、上述したシーラントにおいては、ボイド条件及び温度条件を満たしつつ、量産性の向上が望まれている。しかしながら、一度に撹拌する撹拌量が増加すると、特許文献2に記載されたボイド条件と温度条件とのトレードオフの関係が成り立たなくなり、ボイド条件と温度条件との両方を満たせなくなる場合が有ることが、本発明者らの鋭意研究した結果判明した。
【0006】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ボイド除去性及び吐出性を維持しつつ量産性の向上を図ることができるシーラントの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために以下の構成を採用する。
この発明の第一態様によれば、シーラントの製造方法は、主剤と、硬化剤とをそれぞれ計量して混合する計量混合工程と、前記計量混合工程により混合された混合物を混練する混練工程と、前記混練工程によって混練された混練物を撹拌して脱泡する撹拌脱泡工程と、前記撹拌脱泡工程により脱泡された混練物を容器に充填する充填工程と、
前記撹拌脱泡工程に先立ち、前記混練物の撹拌量毎に、前記混練物を撹拌する撹拌回転数及び前記混練物を撹拌する撹拌時間を変化させた前記混練物のボイド及び吐出量を計測し、この計測結果に基づいて、前記混練物の撹拌量に応じた前記撹拌回転数と前記撹拌時間との積の上限値である積上限値と、前記撹拌回転数と前記撹拌時間との積の下限値である積下限値と、を求める工程と、を含む。前記撹拌脱泡工程は、前記混練物を撹拌する
前記撹拌回転数、及び前記混練物を撹拌する
前記撹拌時間の積が、それぞれ前記混練物の撹拌量に応じて予め求められた
前記積下限値以上、且つ、
前記積上限値以下となるように前記混練物を撹拌する。
このように構成することで、撹拌回転数と撹拌時間との積が、撹拌量に応じて予め求められた積下限値以上、且つ、積上限値以下となる条件でのみ、混練物を撹拌脱泡することができる。そのため、積下限値と積上限値との各条件を満たしつつ撹拌量を増加させることができる。
【0008】
この発明の第二態様によれば、第一態様に係る積下限値及び積上限値は、前記撹拌時間が、予め設定された前記撹拌時間の上限値以下及び下限値以上となるように設定されていてもよい。
撹拌時間が長すぎると撹拌回転数に関わらず混練物の硬化が進み、撹拌時間が短すぎると撹拌回転数に関わらず脱泡が進まない。しかし、上記のように構成することで、ボイド除去性及び吐出性が低下することを抑制できる。
【0009】
この発明の第三態様によれば、第二態様に係るシーラントの製造方法において、前記撹拌時間の上限値は、3分であり、前記撹拌時間の下限値は、0.5分であってもよい。
このように構成することで、量産性を向上しつつボイド除去性及び吐出性が低下することを抑制できる。
【0010】
この発明の第四態様によれば、第一から第三態様の何れか一つの態様に係るシーラントの製造方法において、前記混練物の撹拌量は、270gから370gであり、前記撹拌回転数は、700rpmであり、前記撹拌時間は、120秒であってもよい。
このように構成することで、撹拌量が270gから370gの場合に、シーラントへのボイドの混入を抑制しつつ、シーラントの吐出性を120分程度維持することができる。
【0011】
この発明の第五態様によれば、第一から第四態様の何れか一つの態様に係る撹拌脱泡工程は、前記計量混合工程により混練した混練物の温度を摂氏10度から32度として撹拌してもよい。
このように構成することで、安定的にボイドを除去できるとともに、使用時の吐出性を担保することができる。
【0012】
この発明の第六態様によれば、第一から第五態様の何れか一つの態様に係るシーラントの製造方法において、前記容器に充填した混練物を冷凍する冷凍工程を含んでいてもよい。
容器に充填された混練物を冷凍して保管することができる。そのため、混練物を解凍して使用する際にもボイド除去性、吐出性を維持することができる。
【発明の効果】
【0013】
上記シーラントの製造方法によれば、ボイド除去性及び吐出性を維持しつつ量産性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、この発明の実施形態におけるシーラントの製造方法を図面に基づき説明する。
図1は、この実施形態のシーラントの製造方法のフローチャートである。
図1に示すように、この実施形態で例示するシーラントの製造方法は、計量混合工程S01と、混練工程S02と、撹拌脱泡工程S03と、充填工程S04と、冷凍工程S05と、保管工程S06と、を含んでいる。この実施形態において例示するシーラントは、例えば、航空機の構造部材に用いられる非導電性の2液混合型(2液性)のシーラントである。
【0016】
まず、計量混合工程S01においては、2液性のシーラントを構成する主剤と硬化剤とをそれぞれ既定の割合で計量して混ぜ合わせる。
ここで、主剤としては、二酸化マンガンを用いることができる。また、硬化剤としては、酢酸エチルや、トルエンを用いることができる。
次に、混練工程S02においては、計量混合工程S01によって混ぜ合わせた混合物を混練する。この混練工程においては、主剤と硬化剤とが十分に混ざり合うように混練される。
【0017】
撹拌脱泡工程S03においては、混練工程S02によって混練した混練物を撹拌して脱泡(撹拌脱泡)する。この実施形態の撹拌脱泡工程S03により行われる撹拌脱泡は、混練物が収容された容器をそれぞれ自転及び公転させることが可能な撹拌脱泡装置を用いて行われる。
【0018】
この撹拌脱泡工程S03においては、混練物を撹拌する撹拌回転数と、混練物を撹拌する撹拌時間とを積算した値(以下、単に積と称する)、及び混練物の撹拌量に基づいて混練物の撹拌を行う。より具体的には、撹拌回転数と撹拌時間との積が、撹拌量に応じて予め求められた積下限値以上、且つ、積上限値以下となるように混練物を撹拌する。なお、この実施形態における撹拌回転数は、上述した撹拌脱泡装置により容器を公転させる回転数である。
【0019】
図2は、縦軸を撹拌回転数(rpm)、横軸を撹拌時間(s)としたグラフであって、撹拌量が270gの場合のボイド有無、及び吐出量の評価結果を示している。
図3は、縦軸を撹拌回転数(rpm)、横軸を撹拌時間(s)としたグラフであって、撹拌量が370gの場合のボイド有無、及び吐出量の評価結果を示している。
図4は、縦軸を撹拌回転数(rpm)と撹拌時間(s)の積、横軸を撹拌量(g)としたボイド有無、及び吐出量の評価結果を示すグラフである。ここで言うボイドは、例えば、直径0.2mm以上のものを対象とする。
【0020】
図2から
図4において、薄い網掛けの四角形はボイドが除去されていること(OK)を示し、濃い網掛けの四角形はボイドが除去されていないこと(NG)を示している。さらに、
図2から
図4において、薄い網掛けの丸は吐出量が良好であること(OK)を示し、濃い網掛けの丸は吐出量が良好ではないこと(NG)を示している。つまり、
図2から
図4における四角形と丸との両方が薄い網掛けとなる撹拌回転数と撹拌時間の範囲内となるように撹拌脱泡工程S03を行うのが好ましい。
【0021】
図2に示す破線は、撹拌量が270(g)の場合におけるボイドを除去可能な下限値を示している。
図2に示すように、撹拌時間がそれぞれ30,60,120,180(s)の場合、撹拌回転数(rpm)がボイド除去下限値のライン(破線)よりも高い回転数の場合に混練物のボイドが除去されている。このボイド除去下限値は、撹拌時間が短いほど高い撹拌回転数となり、撹拌時間が長いほど低い撹拌回転数となっている。さらに、ボイド除去下限値のラインは、撹拌時間が短いほど撹拌回転数の増加率が上昇するような曲線状になっている。
【0022】
その一方で、
図2に示す一点鎖線は、撹拌量が270(g)の場合における硬化進展性上限値を示している。
図2に示すように、撹拌時間がそれぞれ30,60,120,180(s)の場合、撹拌回転数が硬化進展性上限値よりも低い回転数の場合に混練物の吐出性が良好となっている。この硬化進展性上限値は、撹拌時間が短いほど高い撹拌回転数となり、撹拌時間が長いほど低い撹拌回転数となっている。この点において、硬化進展性上限値は、上述したボイド除去下限値と同じ傾向を示しているが、同じ撹拌時間において、硬化進展性上限値の方がボイド除去下限値よりも高い撹拌回転数の値となっている。この硬化進展性上限値のラインは、ボイド除去下限値と同様に曲線で示すことができる。この
図2においては、ボイド除去下限値以上、且つ硬化進展性上限値以下となる領域は、短い撹拌時間から長い撹拌時間まで連続している。
【0023】
図3に示す破線は、撹拌量が370(g)の場合におけるボイド除去下限値を示している。
図3に示すように、撹拌時間がそれぞれ30,60,120,180(s)の場合、撹拌回転数がボイド除去下限値のラインよりも高い場合にボイドが除去されている。このボイド除去下限値は、撹拌時間が短いほど高い撹拌回転数となり、撹拌時間が長いほど低い撹拌回転数となっている。さらに、ボイド除去下限値のラインは、撹拌時間が短いほど撹拌回転数の増加率が上昇する曲線状になっている。
【0024】
図3に示す一点鎖線は、撹拌量が370(g)の場合における硬化進展性上限値を示している。
図3に示すように、撹拌時間がそれぞれ30,60,120,180(s)の場合、撹拌回転数が硬化進展性上限値よりも低い回転数の場合に吐出性が良好となっている。この硬化進展性上限値は、撹拌時間が60秒と30秒との間で、60秒から30秒に向かうにつれて急激に上昇している。
【0025】
この硬化進展性上限値のラインは、撹拌時間が30秒から60秒の間で、ボイド除去下限値のラインと交差している。より具体的には、撹拌時間が30秒から60秒の間の領域で、ボイド除去下限値と硬化進展性上限値とが同一になる場合が生じる。つまり、このボイド除去下限値と硬化進展性上限値とが同一になる場合は、ボイドが除去され、且つ、吐出量が良好となる領域が存在しないこととなる。言い換えれば、このボイド除去下限値と硬化進展性上限値とが同一の場合は、撹拌回転数と撹拌時間(温度)とがトレードオフにならないことが分かる。この実施形態における硬化進展性上限値は、撹拌時間が60秒を超えると約750(rpm)で収束している。
【0026】
また、
図3に示すように、撹拌時間が60秒を超えると、ボイド除去下限値のラインが硬化進展性のラインよりも下方にかい離している。そして、これらボイド除去下限置のラインと硬化進展性のラインとの間に、混練物のボイドが除去され、且つ、吐出量が良好となる領域が形成される。
【0027】
ここで、撹拌脱泡工程S03により一度に取り扱う撹拌量は、270(g)よりも370(g)の方が多いため、シーラントの量産性は良好となる。その一方で、撹拌時間に関わらず撹拌回転数が低いほど撹拌脱泡装置の負担が低下する。そのため、撹拌時間が長くなっても撹拌回転数を低くすることでシーラント量産性を向上することができる。この実施形態のシーラントの製造方法においては、上記撹拌量と撹拌回転数との2つのパラメータより量産性を判断している。そのため、例えば、
図3においては、「A」で示す領域において、ボイドが除去され且つ吐出量が良好となっているが、撹拌回転数が高いため、量産性の観点で採用せず、
図3の「B」で示す領域のみ採用することとする。
【0028】
図4のグラフに示すように、撹拌量が270gの場合、ボイドが除去され、且つ、吐出量が良好となる撹拌回転数と撹拌時間との積の下限値(以下、単に積下限値と称する)は、900(rpm・m)となっている。その一方で、撹拌量が270gの場合、ボイドが除去され、且つ、吐出量が良好となる撹拌回転数と撹拌時間との積の上限値(以下、単に積上限値と称する)は、2100(rpm・m)となっている。
【0029】
撹拌量が370gの場合、ボイドが除去され、且つ、吐出量が良好となる積下限値は、1400(rpm・m)程度となる。その一方で、撹拌量が370gの場合、ボイドが除去され、且つ、吐出量が良好となる積上限値は、1600(rpm・m)となっている。
【0030】
ここで、
図4に示す撹拌量が370gの場合において、積上限値を超えた領域に、ボイドが除去され、且つ、吐出量が良好となるデータが存在している。しかし、このデータは、撹拌時間が120秒を超えるデータである。このように撹拌時間が120秒を超えると、吐出量の結果が良好であったり不良であったり安定しなかった。そのため、120秒を超えるデータについては撹拌時間として除外するようにしている。つまり、撹拌量が370gにおける積上限値は、撹拌時間の上限値を120秒として設定している。
【0031】
さらに、
図4に示す撹拌量が370gの場合において、積下限値を下回る領域にも、ボイドが除去され、且つ、吐出量が良好となるデータが存在する。しかし、このデータは、撹拌時間が30秒であり、相対的に撹拌回転数が高回転となってしまう場合のデータである。そのため、このように撹拌時間が60秒を下回るデータについては、上述した撹拌脱泡装置の負担増加(言い換えれば、量産性)の観点から撹拌時間として除外するようにしている。つまり、撹拌量が370gにおける積下限値は、撹拌時間の下限値を60秒として設定している。
【0032】
そして、複数の撹拌量(270g、370g)における積上限値から
図4に示す積上限値のラインL1を求めることができる。このラインL1は、複数の撹拌量(270g、370g)の各積上限値を通り、撹拌量が増加するほど下降する右肩下がりの直線になっている。
同様に、複数の撹拌量(270g、370g)における積下限値から
図4に示す積下限値のラインL2を求めることができる。このラインL2は、複数の撹拌量(270g、370g)の各積下限値を通り、撹拌量が増加するほど上昇する右肩上がりの直線になっている。
【0033】
この実施形態においては、これらラインL1と、ラインL2とは、撹拌量が400g、撹拌回転数と撹拌時間の積が1500rpm・mとなる点の近傍で交差している。つまり、これらラインL1以下で、且つラインL2以上となる領域は、撹拌量が増加するほど先細りになっている。ラインL1以下で、且つラインL2以上となる領域内で、ラインL1とラインL2との交点Pに近いほど、撹拌量の観点から量産性を向上できる(
図4中、量産性最適条件領域)。なお、積上限値のラインL1と積下限値のラインL2との交点よりも撹拌量が多い領域については、基本的にボイドの除去不良と吐出性不良との少なくとも一方が現れる。
【0034】
充填工程S04においては、撹拌脱泡工程S03によって撹拌脱泡した混練物を、シリンジ等の保管容器(言い換えれば、カートリッジ)に充填する。この充填工程においては、気泡の混入を抑制するために、真空引きされたチャンバー等の内部で充填してもよい。
【0035】
冷凍工程S05においては、充填工程S04によって混練物が充填された保管容器を、例えば、液体窒素等の冷媒によって急速冷凍する(例えば、摂氏−70度程度)。
保管工程S06は、冷凍工程S05によって冷凍された混練物入りの保管容器を冷凍庫等で保管する(例えば、摂氏−50度程度)。
この保管工程S06で保管された冷凍状態の混練物は、保管容器に充填された状態で使用前に温水又は常温で解凍される。混練物が解凍された保管容器は、コーキングガン等に装填される。そして、保管容器の混練物は、コーキングガンのピストン等により加圧される。これにより、コーキングガンのノズル出口等から解凍された混練物がシーラントとして吐出される。
【0036】
したがって、上述した実施形態によれば、撹拌脱泡工程S03における撹拌回転数と撹拌時間との積が、撹拌量に応じて予め求められた積下限値以上、且つ、積上限値以下となる条件でのみ、混練物を撹拌脱泡することができる。そのため、積下限値と積上限値との各条件を満たしつつ撹拌量を増加させることができる。
【0037】
また、撹拌時間が長すぎると撹拌回転数に関わらず混練物の硬化が進み、撹拌時間が短すぎると撹拌回転数に関わらず脱泡が進まない。しかし、上記のように撹拌時間を上限値と下限値との間にすることで、ボイド除去性及び吐出性が低下する条件を除外することができる。
【0038】
さらに、混練物の温度を摂氏10度から32度とすることで、再現性が確保できるため、安定的にボイドを除去することができるとともに吐出性を担保できる。
また、混練物が充填された保管容器を冷凍保管するため、混練物を解凍して使用する際にもボイド除去性、吐出性を維持することができる。
【実施例】
【0039】
次に、上述したシーラントの製造方法による実施例について説明する。
(実施例1)
上述した
図4の硬化進展性上限値のrL1以下で、且つ、ボイド除去下限値のラインL2以上となる領域内に、撹拌回転数と撹拌時間との積が入るとともに、できるだけ撹拌量が多くなるように、主剤である二酸化マンガンを245gと、硬化剤である酢酸エチルを25gと、を混合し(混合比10:1)、270gの混合物を作成した。
【0040】
そして、直ぐにこの混合物の混練を開始した。この混練は、混練装置により回転数30rpmで10分間行った。
この混練の後、撹拌脱泡装置(ARV930TWIN、株式会社シンキー製)の容器に混練物を移し替えて、撹拌脱泡を行った。この撹拌脱泡装置による撹拌回転数は、700rpmとし、撹拌時間は120秒とした。上記の各作業は、室温を摂氏22度として行った。混練開始時における混練物の温度は、室温と同一であった。
【0041】
その後、撹拌脱泡した混練物を撹拌脱泡装置から取り出して、充填装置(特許第4659128号、加賀産業株式会社製)により、保管容器への充填を行った。撹拌脱泡した混練物は、一つの保管容器に対して135g充填した。
保管容器に充填された混練物は、急速冷凍機によって摂氏−70度で急速冷凍させた。
そして、急速冷凍した混練物入りの保管容器を、冷凍庫によって摂氏−50度で、保管した(15時間)。
【0042】
次いで、シーリング作業時、冷凍庫から保管容器を取り出して、上記の室温で保管容器内の混練物を解凍した。その後、保管容器内の混練物に所定の圧力をかけて、30分毎に保管容器内の混練物を吐出させて、その際の単位時間当たりの吐出量を計測した。
【0043】
(実施例2)
上述した
図4のラインL1以下で、且つ、ラインL2以上となる領域内に、撹拌回転数と撹拌時間との積が入るとともに、できるだけ撹拌量が多くなるように、主剤である二酸化マンガンを336gと、硬化剤である酢酸エチルを34gと、を混合し、370gの混合物を作成した。
【0044】
そして、直ぐにこの混合物の混練を開始した。この混練は、混練装置により回転数30rpmで10分間行った。
この混練の後、撹拌脱泡装置(ARV930TWIN、株式会社シンキー製)の容器に混練物を移し替えて、撹拌脱泡を行った。この撹拌脱泡装置による撹拌回転数は、750rpmとし、撹拌時間は120秒とした。上記の各作業は、室温を摂氏22度として行った。混練開始時における混練物の温度は、室温と同一であった。
【0045】
その後、撹拌脱泡した混練物を撹拌脱泡装置から取り出して、充填装置(特許第4659128号、加賀産業株式会社製)により、保管容器への充填を行った。撹拌脱泡した混練物は、一つの保管容器に対して135g充填した。
保管容器に充填された混練物は、急速冷凍機によって摂氏−70度で急速冷凍させた。
そして、急速冷凍した混練物入りの保管容器を、冷凍庫によって摂氏−50度で、保管した(15時間)。
【0046】
次いで、所定時間経過後、冷凍庫から保管容器を取り出して、上記の室温で保管容器内の混練物を解凍した。その後、保管容器内の混練物に所定の圧力をかけて、30分毎に保管容器内の混練物を吐出させて、その際の単位時間当たりの吐出量を計測した。
(比較例1)
主剤である二酸化マンガンを336gと、硬化剤である酢酸エチルを34gと、を混合し、370gの混合物を作成した。
【0047】
そして、直ぐにこの混合物の混練を開始した。この混練は、混練装置により回転数30rpmで10分間行った。
この混練の後、撹拌脱泡装置(ARV930TWIN、株式会社シンキー製)の容器に混練物を移し替えて、撹拌脱泡を行った。この撹拌脱泡装置による撹拌回転数は、700rpmとし、撹拌時間は60秒とした。上記の各作業は、室温を摂氏22度として行った。混練開始時における混練物の温度は、室温と同一であった。
【0048】
その後、撹拌脱泡した混練物を撹拌脱泡装置から取り出して、充填装置(特許第4659128号、加賀産業株式会社製)により、保管容器への充填を行った。一つの保管容器に対して撹拌脱泡した混練物は、135gずつ充填した。
保管容器に充填された混練物は、急速冷凍機によって摂氏−70度で急速冷凍させた。
そして、急速冷凍した混練物入りの保管容器を、冷凍庫によって摂氏−50度で、保管した(15時間)。
【0049】
(比較例2)
主剤である二酸化マンガンを336gと、硬化剤である酢酸エチルを34gと、を混合し、370gの混合物を作成した。
【0050】
そして、直ぐにこの混合物の混練を開始した。この混練は、混練装置により回転数30rpmで10分間行った。
この混練の後、撹拌脱泡装置(ARV930TWIN、株式会社シンキー製)の容器に混練物を移し替えて、撹拌脱泡を行った。この撹拌脱泡装置による撹拌回転数は、700rpmとし、撹拌時間は180秒とした。上記の各作業は、室温を摂氏22度として行った。混練開始時における混練物の温度は、室温と同一であった。
【0051】
その後、撹拌脱泡した混練物を撹拌脱泡装置から取り出して、充填装置(特許第4659128号、加賀産業株式会社製)により、保管容器への充填を行った。一つの保管容器に対して撹拌脱泡した混練物は、135gずつ充填した。
保管容器に充填された混練物は、急速冷凍機によって摂氏−70度で急速冷凍させた。
そして、急速冷凍した混練物入りの保管容器を、冷凍庫によって摂氏−50度で、保管した(15時間)。
【0052】
(比較例3)
主剤である二酸化マンガンを336gと、硬化剤である酢酸エチルを34gと、を混合し、370gの混合物を作成した。
【0053】
そして、直ぐにこの混合物の混練を開始した。この混練は、混練装置により回転数30rpmで10分間行った。
この混練の後、撹拌脱泡装置(ARV930TWIN、株式会社シンキー製)の容器に混練物を移し替えて、撹拌脱泡を行った。この撹拌脱泡装置による撹拌回転数は、600rpmとし、撹拌時間は120秒とした。上記の各作業は、室温を摂氏22度として行った。混練開始時における混練物の温度は、室温と同一であった。
【0054】
その後、撹拌脱泡した混練物を撹拌脱泡装置から取り出して、充填装置(特許第4659128号、加賀産業株式会社製)により、保管容器への充填を行った。一つの保管容器に対して撹拌脱泡した混練物は、135gずつ充填した。
保管容器に充填された混練物は、急速冷凍機によって摂氏−70度で急速冷凍させた。
そして、急速冷凍した混練物入りの保管容器を、冷凍庫によって摂氏−50度で、保管した(15時間)。
【0055】
(ボイド除去性)
実施例1,2、比較例1から3で作成したシーラント(混練物)について、解凍後、テストピースに塗布し、硬化した後、カットしてボイドの有無を目視により検証した。
その結果、
図4のラインL1以下で、且つ、ラインL2以上となる領域内に、撹拌回転数と撹拌時間との積が入る実施例1,2については、ボイドが除去されていることが確認できた。
【0056】
これに対し、撹拌回転数と撹拌時間との積が、
図4のラインL2よりも下の領域となる比較例1では、ボイドの残存が確認された。
また、撹拌回転数と撹拌時間との積が、
図4のラインL1よりも上の領域となる比較例2では、ボイドが除去されていることが確認された。
さらに、撹拌回転数と撹拌時間との積が
図4のボイド除去下限値のラインを僅かに下回る比較例3においても、比較例1と同様にボイドの残存が確認された。
【0057】
(吐出性)
実施例1,2、比較例1から3で作成したシーラント(混練物)について、120分経過までに複数回、20分から30分間隔で単位時間当たりの吐出量を、重量計測した。
また、この吐出量の計測においては、保管容器(言い換えれば、カートリッジ)をノズル径が5mmのコーキングガンに装填して、一定の圧力で加圧して保管容器内のシーラントをノズル先端から吐出させた。
【0058】
その結果、
図4のラインL1以下で、且つ、ラインL2以上となる領域内に撹拌回転数と撹拌時間との積が入る実施例1,2については、解凍後120分経過しても十分な吐出量(例えば、8.4g/10秒程度)を維持していることが確認できた。
【0059】
これに対し、
図4のラインL2よりも下の領域に撹拌回転数と撹拌時間との積が入る比較例1では、120分経過まで十分な吐出量を維持できなかった。
また、
図4のラインL1よりも上の領域に、撹拌回転数と撹拌時間との積が入る比較例2では、十分な吐出量が維持されるものと、維持されないものとが両方確認された。つまり、比較例2は、吐出性について不安定であることが確認できた。
さらに、撹拌回転数と撹拌時間との積が
図4のラインL2を僅かに下回る比較例3においても、比較例1と同様に十分な吐出量を維持できなかった。
【0060】
ボイド除去性及び吐出性の検証結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
表1に示すように、実施例1,2については、ボイド除去性及び吐出性を両方満たすのに対して、比較例1から3については、ボイド除去性と吐出性との少なくとも一方を満たすことができないことが確認された。
【0063】
この発明は上述した実施形態の構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。
例えば、撹拌脱泡装置は、実施形態に例示した装置に限られない。