【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、式(I)に示される薬物を抗体に結合させるためのリンカーを提供することであり、
【化3】
ここで、
Rは、CF
2H、CF
3、CF
2CF
3、PhSO
2Meから選ばれ、
Qは、
【化4】
から選ばれ、
L
1は、−(CR
1R
2)
m−(CR
3R
4)−(CR
1R
2)
n−、−(CR
1R
2)
m−(CR
3R
4)−O−(CR
1R
2)
n−及び−[(CR
1R
2)(CR
1R
2)×]
p−(CR
1R
2)
q−から選ばれ、
mは、1、2、3または4であり、
nは、1、2、3または4であり、
pは、1、2、3、4、5または6であり、
qは、1または2であり、
R
1は、H、または任意に選んだ1〜3個のハロゲン、OH、NH
2、NHMeまたはNMe
2で置換されたC
1−3アルキル基から選ばれ、
R
2は、H、または任意に選んだ1〜3個のハロゲン、OH、NH2、NHMeまたはNMe
2で置換されたC1−3アルキル基から選ばれ、
R
3は、H、または任意に選んだ1〜3個のハロゲン、OH、NH
2、NHMeまたはNMe
2で置換されたC
1−3アルキル基から選ばれ、
R
4は、H、OH、NR
5R
6、CO
2H、P(O)(OH)
2、SO
3H、または任意に選んだ1〜3個のハロゲン、OH、NH
2、NHMeまたはNMe
2で置換されたC
1−3アルキル基C
1−3アルキル基から選ばれ、
R
5は、H、または任意に選んだ1〜3個のハロゲン、OH、NH
2、NHMeまたはNMe
2で置換されたC
1−3アルキル基から選ばれ、
R
6は、H、または任意に選んだ1〜3個のハロゲン、OH、NH
2、NHMeまたはNMe
2で置換されたC
1−3アルキル基から選ばれ、
Xは、NR
7、O、及びS(O)
rから選ばれ、
rは、0、1または2であり、
R
7は、H、または任意に選んだ1〜3個のハロゲン、OH、NH
2、NHMeまたはNMe
2で置換されたC
1−3アルキル基から選ばれ、
L
2は、ジペプチド構造単位であり、
【化5】
から選ばれ、
R
8は、メチル基、プロピル基、イソプロピル基、sec-ブチル基、ベンジル基、及び
【化6】
から選ばれ、
R
9は、(CH
2)
4NH
2、(CH
2)
3NHCONH
2、(CH
2)
3NHC(=NH)NH
2、
【化7】
から選ばれ、
sは、0、1、2、3または4から選ばれ、
L
3は、自己分解のできる構造単位であり、
【化8】
から選ばれ、
R
10は、H、または任意に選んだ1〜3個のハロゲン、OH、NH
2、NHMeまたはNMe
2で置換されたC
1−3アルキル基から選ばれ、
各R
11は、それぞれ独立的にH、または任意に選んだ1〜3個のハロゲン、OH、NH
2、NHMeまたはNMe
2で置換されたC
1−3アルキル基から選ばれ、
同一のCに結合された二つのR
11は、同一の炭素原子に任意に結合して、3〜6員環を形成することができ、
隣接する二つの位置でのR
11は、同一の炭素原子に任意に結合して、5〜7員環を形成することができ、
R
12は、H、または任意に選んだ1〜3個のハロゲン、OH、NH
2、NHMeまたはNMe
2で置換されたC
1−3アルキル基から選ばれ、
R
13は、H、または任意に選んだ1〜3個のハロゲン、OH、NH
2、NHMeまたはNMe
2で置換されたC
1−3アルキル基から選ばれる。
【0007】
本発明の他の目的は、式(II)に示される薬物リンカー共役体を提供することであり、
【化9】
ここで、
Q’は、
【化10】
から選ばれ、
Mは、薬物であり、
他の変数は、前記のように定義される。
【0008】
本発明の別の目的は、式(III)に示される抗体−薬物複合体を提供することであり、
【化11】
ここで、
Yは、抗体であり、
aは、1〜8の整数または小数であり、
Mは、薬物であり、
他の変数は、前記のように定義される。
【0009】
本発明の一態様において、aは、1、2、3、3.4、3.5、4、4.2、5、6、7または8から選ばれる。
【0010】
本発明の一態様において、前記抗体は、標的細胞に優先的に結合する、再表面化されたモノクローナル抗体、再表面化された単鎖モノクローナル抗体、または再表面化されたモノクローナル抗体断片から選択される。
【0011】
本発明の一態様において、前記抗体は、ヒト化モノクローナル抗体、ヒト化単鎖モノクローナル抗体、またはヒト化モノクローナル抗体断片から選択される。
【0012】
本発明の一態様において、前記抗体は、キメラ抗体、キメラ抗体断片、ドメイン抗体またはドメイン抗体断片から選択される。
【0013】
本発明の一態様において、前記抗体は、MY9、anti−B4、EpCAM、CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD11、CD19、CD20、CD22、CD26、CD30、CD33、CD37、CD38、CD40、CD44、CD56、CD79、CD105、CD138、EphA受容体、EphB受容体、EGFR、EGFRvIII、HER2、HER3、メソテリン、cripto、alpha
vbeta
3、alpha
vbeta
5、alpha
vbeta
6インテグリンまたはC242から選択される。
【0014】
本発明の一態様において、前記抗体は、My9−6、B4、C242、N901、DS6、EphA2受容体、CD38、IGF−IR、CNTO95、B−B4、トラスツズマブ、テルツズマブ、ベバツズマブ、シブロツヅマ、リツキシマブ及びアダリムマブから選択される。
【0015】
本発明の一態様において、前記抗体は、ハーセプチンとエルビタックスから選択される。
【0016】
本発明の一態様において、前記抗体に結合された標的細胞は、腫瘍細胞、ウイルス感染細胞、微生物感染細胞、寄生虫感染細胞、自己免疫細胞、活性化細胞、骨髄系細胞、活性化T細胞、B細胞、メラニン細胞から選ばれ、または1以上のIGF−IR、CanAg、EGFR、MUCI、MUCI6、VEGF、TF、MY9、anti−B4、EpCAM、CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD11、CD11a、CD18、CD19、CD20、CD22、CD26、CD30、CD33、CD37、CD38、CD40、CD44、CD56、CD70、CD79、CD105、CD138、EphA受容体、EphB受容体、EGFRvIII、HER2/neu、HER3、メソテリン、cripto、alphavbeta3インテグリン、alphavbeta5インテグリン、alphavbeta6インテグリン、Apo2、またはC242抗原を発現することができる細胞であり、またはインスリン様成長因子受容体、上皮成長因子受容体、葉酸受容体を発現できる細胞である。
【0017】
本発明の一態様において、前記腫瘍細胞は、乳癌細胞、前立腺がん細胞、卵巣癌細胞、直腸癌細胞、胃癌細胞、扁平上皮癌、小細胞肺癌細胞、精巣癌細胞から選ばれる。
【0018】
本発明の一態様において、前記薬物は、細胞傷害性薬剤から選ばれる。
【0019】
本発明の一態様において、前記薬物は、メイタンシノイド、DNA結合薬物およびその類似体、カリケアミシン、ドキソルビシンおよびその類似体、ビンカアルカロイド、クリプトフィシン、ドラスタチン、オーリスタチンおよびその類似体、チューブリシン、エポチロン、タキソイド、siRNAから選ばれる。
【0020】
本発明の一態様において、前記DNA結合薬物は、CC−1065から選ばれる。
【0021】
本発明の一態様において、前記Mは、
【化12】
から選ばれる。
【0022】
本発明の一態様において、前記薬物は、診断試薬または検出試薬である。
【0023】
本発明の一態様において、前記薬物は、放射性標識化合物から選ばれる。
【0024】
本発明の一態様において、前記薬物は、
3H、
18F、
11C、
13N、
15O、
201Tl、
32P、
51Cr、
67Ga、
123I、
125I、
131I、
132I、
131Cs、
113×e、
133×e、
169Yb、
198Au、
203Hg、
99mTc、
113mIn、
133mIn、
75Se、
186Re、
153Sm、
89Srで標識される。
【0025】
本発明の一態様において、前記L
1は、
【化13】
から選ばれる。
【0026】
本発明の一態様において、前記L
2は、
【化14】
から選ばれる。
【0027】
本発明の一態様において、前記L
2は、
【化15】
から選ばれる。
【0028】
本発明の一態様において、前記同一の炭素原子に結合された二つのR
11または隣接する二つのR
11が結合されて形成された環は、シクロヘキシルである。
【0029】
本発明の一態様において、前記L
3は、
【化16】
から選ばれる。
【0030】
本発明の一態様において、前記構造単位である
【化17】
は、
【化18】
から選ばれる。
【0031】
本発明の一態様において、前記構造単位である
【化19】
は、
【化20】
から選ばれる。
【0032】
本発明の一態様において、前記リンカーは、
【化21】
から選ばれる。
【0033】
本発明の一態様において、前記リンカーは、
【化22】
から選ばれる。
【0034】
本発明の一態様において、前記共役体は、
【化23a】
【化23b】
から選ばれる。
【0035】
本発明の一態様において、前記共役体は、
【化24a】
【化24b】
【化24c】
から選ばれる。
【0036】
本発明の一態様において、前記抗体−薬物複合体は、
【化25a】
【化25b】
から選ばれ、
Yは、抗体であり、aは、1〜8から選ばれる整数または小数であり、具体的に、aは、1、2、3、3.4、3.5、4、4.2、5、6、7または8から選ばれる。
【0037】
本発明の一態様において、前記抗体−薬物複合体は、
【化26a】
【化26b】
【化26c】
から選ばれ、
Yは、抗体であり、aは、1〜8から選ばれる整数または小数であり、具体的に、aは、1、2、3、3.4、3.5、4、4.2、5、6、7または8から選ばれる。
【0038】
本発明の一態様において、前記抗体−薬物複合体は、
【化27a】
【化27b】
から選ばれ、
aは、2〜6から選ばれる整数または小数であり、具体的に、aは、1、2、3、3.4、3.5、4、4.2、5、または6から選ばれる。
【0039】
本発明の一態様において、前記抗体−薬物複合体は、
【化28a】
【化28b】
【化28c】
から選ばれ、
aは、2〜6から選ばれる整数または小数であり、具体的に、aは、1、2、3、3.4、3.5、4、4.2、5、または6から選ばれる。
【0040】
本発明の別の目的は、式(II)に示される薬物リンカー共役体または式(III)に示される抗体−薬物複合体を合成して調製するための中間体を提供することであり、
【化29】
が含まれる。
【0041】
本発明の別の目的は、治療有効量の抗体−薬物複合体またはその薬学に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む薬物組成物を提供することである。
【0042】
本発明の別の目的は、前記リンカー、共役体、抗体−薬物複合体または組成物が、癌の治療のための薬物の調製への応用を提供することである。
【0043】
本発明の別の目的は、前記抗体−薬物複合体または前記薬学的組成物の有効量を投与することを含む癌の治療または診断の方法を提供することである。
【0044】
(定義と説明)
C
1−6は、C
1、C
2、C
3、C
4、C
5及びC
6から選ばれ、C
3−6は、C
3、C
4、C
5及びC
6から選ばれる。
【0045】
C
1−6アルキル基、C
1−6ヘテロアルキル基、C
3−6シクロヒドロカルビル基、C
3−6ヘテロシクロヒドロカルビル基、C
3−6シクロヒドロカルビル基またはC
3−6ヘテロシクロヒドロカルビル基により置換されたC
1−6アルキル基またはC
1−6ヘテロアルキル基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、−CH
2C(CH
3)(CH
3)(OH)、シクロプロピル基、シクロブチル基、プロピルメチレン基、シクロプロピルアシル基、ベンジルオキシル基、シクロプロピルアルキレン基、トリフルオロメチル基、アミノメチル基、ヒドロキシメチル基、メチルオキシル基、メチルアシル基、メチルオキシカルボニル基、メチルスルホニル基、メチルスルフィニル基、エチルオキシル基、エチルアシル基、エチルスルホニル基、エチルオキシカルボニル基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジメチルアミノカルボニル基、ジエチルアミノカルボニル基、及び、N(CH
3)
2、NH(CH
3)、−CH
2CF
3、−CH
2CH
2CF
3、−CH
2CH
2F、−CH
2CH
2S(=O)
2CH
3、−CH
2CH
2CN、
【化30】
−CH
2CH(OH)(CH
3)
2、−CH
2CH(F)(CH
3)
2、−CH
2CH
2F、−CH
2CF
3、−CH
2CH
2CF
3、−CH
2CH
2NH
2、−CH
2CH
2OH、−CH
2CH
2OCH
3、−CH
2CH
2CH
2OCH
3、−CH
2CH
2N(CH
3)
2、−S(=O)
2CH
3、−CH
2CH
2S(=O)
2CH
3、
【化31】
が含まれるが、これに限定されない。
【0046】
「置換された」とは、特定の原子上の何れかまたは複数の水素原子が、特定の原子の原子価が通常であり、また置換後の化合物が安定である限り、重水素と水素のバリアント(variant)を含む置換基によって置換されることを意味する。置換基がケト基(即ち、=O)であるときは、二つの水素原子が置換されることを意味する。ケトンの置換は、芳香族基では存在しない。「任意に置換された」という用語は、置換されることもできるし、置換されないこともできて、特に言及しない限り、置換基の種類と数が化学的に実現できる基では、任意であることができる。
【0047】
何れかの変数(例えば、R)が、化合物の組成または構造に一回以上出現する場合、それぞれの場合での定義は、すべて独立である。したがって、例えば、一つのグループが0〜2個のRによって置換されると、前記グループは、任意にせいぜい二つのRによって置換されることができ、またそれぞれの状況下のRは、すべて独立のオプションを有する。なお、置換基及び/またはその変形の組み合わせは、このような組み合わせが安定な化合物が生成する場合にのみ、許容される。
【0048】
ある置換基の結合が、一つの環での二つの原子にまたがって結合されるとき、この置換基は、この環上のいずれの原子と結合することができる。挙げられた置換基に、どの原子を介して、化学構造式に含まれるが具体的に言及していない化合物に結合されるかを指定していない場合、このような置換基は、そのいずれかの原子を介して結合することができる。置換基及び/またはその変形の組み合わせは、このような組み合わせが安定な化合物が生成する場合にのみ、許容される。
【0049】
アルキル基とヘテロアルキル基の原子団の置換基を、通常は、「アルキル基置換基」といい、それらは以下のグループの中の一つまたは複数を選択するが、限定されず、−R’、−OR’、=O、=NR’、=N−OR’、−NR’R''、−SR’、ハロゲン、−SiR’R''R''’、OC(O)R’、−C(O)R’、−CO
2R’、−CONR’R''、−OC(O)NR’R''、−NR''C(O)R’、NR’C(O)NR''R''’、−NR''C(O)
2R’、−NR''''’−C(NR’R''R’'')=NR''''、NR''''C(NR’R'')=NR’''、−S(O)R’、−S(O)
2R’、−S(O)
2NR’R''、NR''SO
2R’、−CN、−NO
2、−N
3、−CH(Ph)
2、フルオロ(C
1−C
4)アルコキシ基及びフルオロ(C
1−C
4)アルキル基であり、置換基の数が0〜(2m’+1)であり、ここで、m’は、ラジカルの中の炭素原子の合計である。R'、R''、R'''、R’’’’及びR’’’’’のそれぞれが独立的に水素、置換または未置換ヘテロアルキル基、置換または未置換アリール基(例えば、1〜3個のハロゲンによりアリール基が置換される)、置換または未置換アルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基の官能基またはアリールアルキル基から好ましくは選択される。本発明の化合物が、一つ以上のR基を含む場合、例えば、R基ごとに独立的に選択された、たとえ一つ以上のR'、R''、R'''、R''''及びR''''’基が存在するような場合の各官能基である。R'及びR''が同じ窒素原子に付着された場合、それらは当該窒素原子と結合して、5−、6−または7−員環を形成することができる。例えば、−NR'Rは、1−ピロリジニルおよび4−モルホリニルを含むが、それに限定されないことを意味する。前記の置換基に関する検討の中で、当業者が理解できるのは、「アルキル基」という用語は、炭素原子が非水素グループに結合されて形成されたグループである、例えば、ハロアルキル基(例えば、−CF
3、−CH
2CF
3)及びアシル基(例えば、−C(O)CH
3、−C(O)CF
3、−C(O)CH
2OCH
3等)を含むことを意味する。
【0050】
上述したアルキル基ラジカルの置換基と同様に、一般に、アリール基とヘテロアリール基の置換基を「アリール基置換基」と総称し、例えば、−R’、−OR’、−NR’R''、−SR’、ハロゲン、−SiR’R''R''’、OC(O)R’、−C(O)R’、−CO
2R’、−CONR’R''、−OC(O)NR’R''、−NR''C(O)R’、NR’C(O)NR''R''’、−NR''C(O)
2R’、−NR''''’−C(NR’R''R''’)=NR''''、NR''''C(NR’R'')=NR''’、−S(O)R’、−S(O)
2R’、−S(O)
2NR’R''、NR''SO
2R’、−CN、−NO
2、−N
3、−CH(Ph)
2及びフルオロ(C
1−C
4)アルコキシ基とフルオロ(C
1−C
4)アルキル基等、置換基の数が0から芳香族環で開放された原子価の合計の間であり、ここで、R’、R''、R''’、R''''が独立的に水素、置換または未置換アルキル基、置換または未置換ヘテロアルキル基、置換または未置換アリール基と、置換または未置換ヘテロアリール基から好ましく選択される。本発明の化合物が一つ以上のR基を含む場合、例えば、R基毎に独立的に選択できる、たとえば一つ以上のR’、R''、R''’、R''''及びR''''’基である場合のそれぞれのようなグループである。
【0051】
アリール基またはヘテロアリール基環の隣接する原子上の二つの置換基は、任意に一般式がT−C(O)−(CRR’)q−U−で表される置換基により置換することができ、ここでTとUは、独立的に−NR−、−O−、CRR'−または単結合から選択することができ、qは、0から3までの整数である。選択的に、アリール基またはヘテロアリール基環で、隣接する原子上の二つの置換基が、任意に一般式が、−A(CH
2)rB−の置換基によって置換されることができ、ここで、AとBは、独立的に−CRR’−、−O−、−NR−、−S−、−S(O)−、S(O)
2−、−S(O)
2NR’−または単結合から選択することができ、rは、1から4までの整数である。新しく形成された環の一つの単結合は、任意に二重結合に置換されることができる。選択的に、アリール基またはヘテロアリール基上の隣接する原子上の二つの置換基は、任意に式−(CRR’)s−X−(CR''R''’)d−で表される置換基によって置換されることができ、ここで、sとdは、それぞれ独立的に0から3までの整数であり、Xは、−O−、−NR’−、−S−、−S(O)−、−S(O)
2−または−S(O)
2NR’−から選択することができる。R、R’、R''またはR''’それぞれ独立的に好ましくH、置換または未置換C
1−6アルキル基から選択することができる。
【0052】
「ハロ」または「ハロゲン」は、それ自体として、または別の置換基の部分として、特に言及がないかぎり、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素原子を意味する。なお、「ハロアルキル基」は、モノハロアルキルと、ポリハロアルキルを含むことを意味する。例えば、「ハロ(C
1−C
4)アルキル基」は、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチルエステル、4−クロロブチル、3−ブロモプロピル、及び他のものを含むがそれに限定されない。
【0053】
ハロアルキル基の例は、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、ペンタフルオロエチル、及びペンタクロロエチルを含むが、それに限定されない。「アルコキシ基」は、以上で定義された、酸素橋を介して特定数の炭素原子に結合された、いずれかのアルキル基である。C
1−6アルコキシ基は、C
1、C
2、C
3、C
4、C
5及びC
6を含むアルコキシ基を意味する。アルコキシ基の例は、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペンチルオキシ、s−ペントキシを含むが、それに限定されない。「シクロアルキル基」は、飽和環、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、またはシクロペンチル基を意味する。3−7シクロアルキル基は、C3、C4、C5、C6、及びC7を含むシクロアルキル基を意味する。「アルケニル基」は、直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖を意味し、同時に一つまたは一つ以上の不飽和C−C結合が、鎖上の任意のいずれの安定な位置に存在することができ、例えば、ビニル基とプロペニル基である。
【0054】
ここで使用された「ハロ」または「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨードを意味する。
【0055】
ここでの「ヘテロ」は、特例の状況がない限り、「ヘテロ原子」または「ヘテロラジカル」(即ち、ヘテロ原子を含むラジカル)、炭素原子と水素原子以外の全ての原子を含み、同時に前記ヘテロ原子を含むラジカルを含む。例としては、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、アルミニウム(Al)及びホウ素(B)を含み、同時に任意に置換された−C(=O)N(H)−、−N(H)−、−C(=NH)−、−S(=O)
2N(H)−、または−S(=O)N(H)−も含むことができる。
【0056】
本文で使用される「環」は、置換または未置換シクロアルキル基、置換または未置換ヘテロシクロアルキル基、置換または未置換シクロアルケニル基、置換または未置換ヘテロシクロアルケニル基、置換または未置換シクロアルキニル基、置換または未置換ヘテロシクロアルキニル基、置換または未置換アリール基、または、置換または未置換ヘテロアリール基を意味する。環は、単環、二環、スピロ環、縮合環、架橋環を含む。環上での原子の数は、通常環の員数と定義されていて、例えば、「5〜7員環」は、5〜7個の原子が環状に配置されることを示す。特に制限がない限り、当該環は、任意に1〜3個のヘテロ原子を含む。従って、「5〜7員環」は、例えば、フェニル基、ピリジニル及ピペリジニルを含み、一方、「5〜7員ヘテロシクロアルキル基環」という用語は、ピリジニルとピペリジニルを含むが、フェニル基を含まない。「環」という用語は、少なくとも一個の環の環系も含み、ここでのそれぞれの「環」は、独立的に前記定義に符合される。
【0057】
本文で使用されるように、「複素環」または「複素環基」は、安定なヘテロ原子またはヘテロラジカルを含む単環式、二環式または三環式を意味し、これらは飽和であるか、または部分的に不飽和であるか、または不飽和(芳香環)であり、炭素原子と1、2、3または4個の独立的にN、O及びSから選択されたヘテロ原子、ここで任意の前記の複素環は、上記定義によるヘテロ環が一つのベンゼン環に縮合した二環式を含む。窒素と硫黄ヘテロ原子は、任意に酸化される(即ち、NO及びS(O)p)ことができる。窒素原子は、置換または未置換である(即ち、NまたはNR、ここでRは、Hまたは本文で定義された他の置換基である)。当該複素環は、ヘテロ原子または炭素原子のいずれかのペンダント基に付着して、安定な構造を形成することができる。たとえば生成した化合物が安定であれば、本文の前記の複素環は、炭素または窒素上の置換が可能である。複素環中の窒素原子は、任意に四級化される。好ましくは、複素環中のS及びO原子の合計が1を超える時、これらのヘテロ原子は互いに隣接しない。好ましくは、複素環中のS及びO原子の合計は、1を超えない。本文で使用されるように、「芳香族複素環基」または「ヘテロアリール基」という用語は、安定な5、6、7員単環式または二環式または7、8、9または10員二環式複素環基の芳香族環を意味し、炭素原子と1、2、3または4個の独立的にN、O及びSから選択されたヘテロ原子からなる。窒素原子は、置換または未置換である(即ち、NまたはNR、ここでRは、Hまたは本文で定義された他の置換基である)。窒素と硫黄ヘテロ原子は、任意に酸化される(即ち、NO及びS(O)p)から選択されることができる。注意すべきは、芳香複素環上のSとO原子の合計は、1を超えない。架橋環も、複素環の定義に含まれている。一つまたは一つ以上の多数の原子(すなわち、C、O、NまたはS)が二つの隣接しない炭素原子または窒素原子を結合する時に架橋環が形成される。好ましくは、架橋環は、一つの炭素原子、二つの炭素原子、一つの窒素原子、二つの窒素原子及び一つの炭素−窒素基を含むが、これに限定されない。注意すべきは、一つの架橋は、いつも単環式を三環式に転換させる。環が架橋されたとき、環の上の置換基も架橋に出現することができる。
【0058】
複素環化合物の実例は、アクリジニル、アゾシニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサゾリニル、ベンズチアゾリル、ベンズトリアゾリル、ベンズテトラゾリル、ベンズイソキサゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンズイミダゾリニル、カルバゾリル、4aH−カルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シノリニル、デカヒドロキノリニル、2H,6H−1,5,2−ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3−b]テトラヒドロフラン、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H−インダゾリル、インドレニル、インドリル、インドリジニル、インドリル、3H−インドリル、イソチノイル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、メチレンジオキシフェニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキシインドリル、ピリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリドニル、4−ピペリドニル、ピペロニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、2H−ピロリル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H−キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾニル、6H−1,2,5−チアジアジニル、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、チアトレニル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニル、トリアジニル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、1,2,5−トリアゾリル、1,3,4−トリアゾリル及びキサンテニルを含むが、これに限定されない。また、縮合環及びスピロ化合物も含まれる。
【0059】
「ヒドロカルビル基」またはその下位概念(例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基等)自体または別の置換基の一部分として示す、直鎖、分岐鎖または環状の炭化水素ラジカルまたはその組み合わせは、完全に飽和、モノまたはポリ不飽和であることができ、二価または多価ラジカルを含むことができ、指定された数の炭素原子(例えば、C1−C10が示す1ないし10個の炭素)を有する。「ヒドロカルビル基」は、脂肪族ヒドロカルビル基および芳香族ヒドロカルビル基を含むが、これに限定されず、前記脂肪族ヒドロカルビル基は、鎖状と環状を含み、具体的に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基を含むが、これに限定されず、前記芳香族ヒドロカルビル基は、6−12員環の芳香ヒドロカルビル基、例えば、ベンゼン、ナフタレン等を含むが、これに限定されない。いくつかの実施形態の中で、「アルキル基」という用語は、直鎖または分岐鎖のラジカルまたはそれらの組み合わせは、完全に飽和であり、モノまたはポリ不飽和であることができ、二価と多価ラジカルを含むことができる。飽和炭化水素ラジカルの例は、メチル基、エチル基、n−プロピル、イソプロピル基、n−ブチル、tert−ブチル、イソブチル、sec-ブチル基、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル基、シクロプロピルメチル基、及びn−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、オクチルなどのラジカルの同族体または異性体である。不飽和アルキル基は、一つまたは多数の二重結合または三重結合を有し、その例は、ビニル基、2−プロペニル、クロチル基、2−イソペンテニル基、2−(ブタジエニル)、2,4−ペンタジエニル基、3−(1,4−ペンタジエニル基)、エチニル基、1−および3−プロピニル基、3−ブチニル基、及び更に高級の同族体または異性体である。
【0060】
特に制限がない限り、「ヘテロヒドロカルビル基」またはその下位概念(例えば、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアルキニル基、ヘテロアリール基等)自体または別の用語と組み合わせて示す、安定な直鎖、分岐鎖または環状の炭化水素ラジカルまたはその組み合わせは、一定数の炭素原子と少なくとも一つのヘテロ原子により形成される。いくつかの実施形態の中で、用語「ヘテロアルキル基」自体または別の用語と組み合わせて示す、安定な直鎖、分岐鎖の炭化水素ラジカルまたはその組み合わせは、一定数の炭素原子と少なくとも一つのヘテロ原子から組成される。一つの典型的な例において、ヘテロ原子は、B、O、N及びSから選択され、そこで、窒素と硫黄原子は、任意に酸化され、窒素ヘテロ原子は、任意に四級化される。ヘテロ原子B、O、N及びSは、ヘテロヒドロカルビル基のいずれの内部位置(当該ヒドロカルビル基が分子の残りの部分の位置に付着される)に配置されることができる。例としては、−CH
2−CH
2−O−CH
3、−CH
2−CH
2−NH−CH
3、−CH
2−CH
2−N(CH
3)−CH
3、−CH
2−S−CH
2−CH
3、−CH
2−CH
2、−S(O)−CH
3、−CH
2−CH
2−S(O)
2−CH
3、−CH=CH−O−CH
3、−CH
2−CH=N−OCH
3及び−CH
2−CH=N(CH
3)−CH
3を含むが、これらに限定されない。多くとも二つのヘテロ原子が、連続的であることができ、例えば、−CH
2−NH−OCH
3である。
【0061】
「アルコキシ基」、「アルキルアミノ基」及び「アルキルチオ基」(またはチオアルコキシ基)は、慣用的な表現であり、それぞれ一つの酸素原子、アミノ基または硫黄原子を通じて、分子の残りの部分のアルキル基グループに結合される。
【0062】
「シクロヒドロカルビル基」、「ヘテロシクロヒドロカルビル基」またはその下位概念(例えば、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルケニル基、シクロアルキニル基、ヘテロシクロアルキニル基等)自身または他の用語と組み合わせてそれぞれ環化した「ヒドロカルビル基」、「ヘテロヒドロカルビル基」を示している。なお、ヘテロヒドロカルビル基またはヘテロシクロヒドロカルビル基(例えば、ヘテロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基)において、ヘテロ原子は、当該複素環において分子の残余部分の位置を占めることができる。シクロアルキル基の例は、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−シクロヘキセニル、3−シクロヘキセニル、シクロヘプチル等を含むが、これらに限定されない。複素環基の限定されない例は、1−(1,2,5,6−テトラヒドロピリジル)、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−モルホリニル、3−モルホリニル、テトラヒドロフラン−2−イル、テトラヒドロフラン−3−イル、テトラヒドロチオフェン−2−イル、テトラヒドロチオフェン−3−イル、1−ピペラジニル及び2−ピペラジニルを含む。
【0063】
用語「アリール基」は、多不飽和の芳香族炭化水素置換基を示し、単環式または多環(好ましくは、1ないし3個の環)であることができ、縮合または共価で結合することができる。用語「ヘテロアリール基」は、1ないし4個のヘテロ原子を有するアリール基(または環)を示す。一実施形態の中で、ヘテロ原子は、B、N、O及びSから選ばれ、ここで窒素と硫黄原子は、任意に酸化され、窒素原子は、任意に四級化される。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を通じて分子の他の部分に結合することができる。アリール基、ヘテロアリール基の限定されない例は、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、4−ビフェニル基、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、3−ピラゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、ピラジニル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、2−フェニル−4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソキサゾリル、4−イソキサゾリル、5−イソキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−フラニル、3−フラニル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジニル、3−ピリジニル、4−ピリジニル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ベンズチアゾリル、プリニル、2−ベンズイミダゾリル、5−インドリル、1−イソキノリニル、5−イソキノリニル、2−キノキサリニル、5−キノキサリニル、3−キノリニルおよび6−キノリニルを含む。前記任意の一つのアリール基とヘテロアリール基の環系の置換基は、以下において前記の許容可能な置換基である。
【0064】
便宜のため、アリール基が、他の用語と組み合わせて使用されるとき(例えば、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基)、上記のように定義されたアリール基とヘテロアリール基環を含む。従って、用語「アリールアルキル基」は、アリール基がアルキル基のラジカル(例えば、ベンジル基、フェネチル基、ピリジニルメチル基等)に結合されたことを意味し、その中での炭素原子(例えば、メチレン基)が、例えば、酸素原子によって置換されたアルキル基、例えば、フェノキシメチル基、2−ピリジルオキシメチル、3−(1−ナフチルオキシ)プロピル基等を含むことを意味する。
【0065】
用語「脱離基」とは、別の官能基または原子が置換反応(例えば、求核置換反応)によって、置換されることができる官能基または原子を意味する。例えば、代表的な脱離基は、トリフルオロメタンスルホネート、塩素、臭素、ヨウ素、スルホネート基、例えば、メタンスルホネート、トルエンスルホネート、p−ブロモベンゼンスルホネート、p−トルエンスルホネートなど;アシルオキシ、例えば、アセトキシ基、トリフルオロアセトキシ等を含む。
【0066】
用語「保護基」は、「アミノ保護基」、「ヒドロキシ保護基」または「メルカプト保護基」を含むが、これに限定されない。用語「アミノ保護基」とは、アミノ窒素位での副反応を防ぐための保護基を意味する。代表的なアミノ保護基は、ホルミル基、アシル基、例えば、アルカノイル基(例えば、アセチル基、トリクロロアセチル基、またはトリフルオロアセチル基)、アルコキシカルボニル、例えば、tert−ブトキシカルボニル(Boc)、アリールメトキシカルボニル基、例えば、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)および9−フルオレニルメトキシカルボニル基(Fmoc)、アリールメチル基、例えば、ベンジル基(Bn)、トリチル基(Tr)、1,1−ジ−(4'−メトキシフェニル)メチル基;シリル基、例えば、トリメチルシリル基(TMS)とtert−ブチルジメチルシリル(TBS)等を含むが、これに限定されない。用語「ヒドロキシ保護基」は、ヒドロキシ副反応を防ぐための保護基を意味する。代表的なヒドロキシ保護基は、アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、アシル基、例えば、アルカノイル基(例えば、アセチル基)、アリールメチル基、例えば、ベンジル基(Bn)、p−メトキシベンジル基(PMB)、9−フルオレニルメチル基(Fm)、ジフェニルメチル基(ベンズヒドリル基、DPM)、シリル基、例えば、トリメチルシリル基(TMS)、tert−ブチルジメチルシリル基(TBS)等を含むが、これに限定されない。
【0067】
「抗体」は細胞結合剤であり、抗体は、膜貫通分子(例えば、受容体)またはリガンド(例えば、増殖因子)である、ポリペプチドである抗原と結合する。
【0068】
例示的な抗原は、分子(例えば、レニン)、増殖ホルモン(ヒト増殖ホルモンとウシ成長ホルモンを含む)、増殖ホルモン放出因子、甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、リポタンパク質、α−1−抗トリプシン;インスリンA鎖、インスリンB鎖、プロインスリン;卵胞刺激ホルモン、カルシトニン、黄体化ホルモン、グルカゴン、凝固因子(例えば、因子vmc、因子IX、組織因子(TF)とフォンヴィレブラント因子(von Willebrands factor))、抗凝固因子、例えば、プロテインC、心房性ナトリウム利尿因子、肺界面活性剤、プラスミノーゲン活性化因子(例えば、ウロキナーゼまたはヒト尿または組織プラスミノーゲン活性化因子(t−PA))、ボンベシン、トロンビン、造血成長因子、腫瘍壊死因子−αと−β、エンケファリナーゼ、RANTES(通常のT細胞の発現および分泌活性化に対する調節)、ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP−1−α)、血清アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)、ミュラー阻害物質(Muellerian−inhibiting substance)、リラキシンA鎖、リラキシンB鎖、プロリラキシン、マウスゴナドトロピン関連ペプチド、微生物タンパク質(例えば、β-ラクタマーゼ)、DNase、IgE;細胞傷害性Tリンパ球関連抗原(CTLA)、例えば、CTLA−4、インヒビン、アクチビン、血管内皮成長因子(VEGF)、ホルモンまたは増殖因子受容体、タンパク質AまたはD、リウマチ性因子、神経栄養因子(例えば、骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3、−4、−5または−6(NT−3、NT4、NT−5またはNT−6))、または神経増殖因子(例えば、NGF−β)、血小板由来増殖因子(PDGF)、線維芽細胞増殖因子(例えば、aFGF和bFGF)、表皮成長因子(EGF)、トランスフォーミング成長因子(TGF)、例えば、TGF−αおよびTGF−β、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4またはTGF−β5を含み、インスリン様増殖因子−Iおよび−II(IGF−IおよびIGF−II)、des(1−3)−IGF−I(脳IGF−I)、インシュリン様増殖因子結合蛋白、EpCAM、GD3、FLT3、PSMA、PSCA、MUC1、MUC16、STEAP、CEA、TENB2、EphA受容体、EphB受容体、葉酸受容体、FOLR1、メソテリン、cripto、αvβ6、インテグリン、VEGF、VEGFR、トランスフェリン受容体、IRTA1、IRTA2、IRTA3、IRTA4、IRTA5、CDタンパク、例えば、CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD8、CD11、CD14、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD26、CD28、CD30、CD33、CD36、CD37、CD38、CD40、CD44、CD52、CD55、CD56、CD59、CD70、CD79、CD80、CD81、CD103、CD105、CD134、CD137、CD138、CD152、エリスロポエチン、骨誘導性因子、免疫毒素、骨形成タンパク質(BMP)、インターフェロン、例えば、インターフェロン−α、−β及び−γ、コロニー刺激因子(CSF)(例えば、M−CSF、GM−CSFおよびG−CSF)、インターロイキン(IL)、例えば、IL−1ないしIL−10、スーパーオキシドジスムターゼ、T細胞受容体、表面膜タンパク質、崩壊加速因子、ウイルス抗原、例えば、HIVエンベロープの一部、輸送タンパク質、ホーミング受容体、アドレシン、調節タンパク質、インテグリン、例えばCD11a、CD11b、CD11c、CD18、ICAM、VLA−4とVCAM、腫瘍関連抗原、例えば、HER2、HER3またはHER4受容体、及びいずれの以上で挙げられたポリペプチドの断片、抗体モデルAdnectins(米国特許出願公開第2007/0082365号明細書)、または米国特許出願公開第2008/0171040号明細書または米国特許第2008/0305044号明細書に開示された一つまたは多種の腫瘍に関連する抗原または細胞表面受容体の抗体が含まれるが、前記米国公報は、引用する方式で全体を本文に援用する。
【0069】
本発明は、抗体の好ましい抗原が含むCDタンパク質、例えば、CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD8、CD11、CD14、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD25、CD26、CD27、CD28、CD30、CD33、CD36、CD37、CD38、CD40、CD44、CD52、CD55、CD56、CD70、CD79、CD80、CD81、CD103、CD105、CD134、CD137、CD138およびCD152、ErbB受容体のファミリの構成体、例えば、EGF受容体、HER2、HER3またはHER4受容体、細胞付着分子、例えば、LFA−I、Macl、pi50.95、VLA−4、ICAM−I、VCAM、EpCAM、α4/β7インテグリンとαv/β3インテグリンであり、そのαまたはβサブクラス(例えば、抗CD11a、抗CD18または抗CD11b抗体)、増殖因子、例えば、VEGF、組織因子(TF)、TGF−β、αインターフェロン(α−IFN)、インターロイキン、例えば、IL−8、IgE、血型抗原Apo2、死亡受容体、flK2/flt3受容体、肥満(OB)受容体;mpl受容体、CTLA−4、タンパク質C等を含む。
【0070】
本文で、最も好ましい標的は、IGF−IR、CanAg、EphA2、MUCl、MUCl6、VEGF、TF、CD19、CD20、CD22、CD27、CD33、CD37、CD38、CD40、CD44、CD56、CD138、CA6、Her2/neu、EpCAM、CRIPTO(大部分の人の乳癌細胞中で高レベルで生成するタンパク質)、darpins、αv/β3インテグリン、αv/β5インテグリン、αv/β6インテグリン、TGF−β、CD11a、CD18、Apo2とC242または米国特許出願公開第2008/0171040号明細書または米国特許出願公開第2008/0305044号明細書に開示された一種または多種の腫瘍関連抗原または細胞表面受容体結合の抗体であり、前記米国公報は引用した方式で全般を本文に援用させた。
【0071】
好ましくは、本発明が含まれる抗体の抗原は、CDタンパク、例えばCD3、CD4、CD8、CD19、CD20、CD27、CD34、CD37、CD38、CD46、CD56、CD70およびCD138、ErbB受容体のファミリの構成体、例えば、EGF受容体、HER2、HER3またはHER4受容体、細胞接着分子、例えば、LFA−I、Macl、p150.95、VLA−4、ICAM−I、VCAM、EpCAM、α4/β7インテグリンとαv/β3インテグリン、そのαまたはβサブクラス(例えば、抗CD11a、抗CD18または抗CD11b抗体)、増殖因子、例えば、VEGF、組織因子(TF)、TGF−β、αインターフェロン(α−IFN)、インターロイキン、例えば、IL−8、IgE、血型抗原Apo2、死亡受容体、flK2/flt3受容体、肥満(OB)受容体、mpl受容体;CTLA−4、プロテインCなどを含む。本文において最も好ましいは、IGF−IR、CanAg、EGF−R、EGF−RvIII、EphA2、MUC1、MUC16、VEGF、TF、CD19、CD20、CD22、CD27、CD33、CD37、CD38、CD40、CD44、CD56、CD70、CD138、CA6、Her2/neu、CRIPTO(大部分の人の乳癌細胞中で高レベルで生成するタンパク質)、αv/β3インテグリン、αv/β5インテグリン、TGF−β、CD11a、CD18、Apo2、EpCAMとC242を含む。
【0072】
モノクローナル抗体技術は、モノクローナル抗体の形で特異性細胞結合剤を生産することを許容している。本分野において特別に熟知されていることは、研究された抗原(例えば、完全標的細胞、標的細胞から分離された抗原、全ウイルス、弱毒化した全ウイルスとウイルスタンパク質(例えば、ウイルスコートタンパク質))を用いて、マウス、ラット、ハムスターまたは任意の他の哺乳動物に免疫させるモノクローナル抗体の調製技術である。感作ヒト細胞を使用してもよい。別のモノクローナル抗体の調製方法は、sFv(単鎖可変区)を用いることで、特にヒトsFvのファージライブラリー(例えば、Griffiths等、米国特許第5,885,793号明細書、McCafferty等、国際公開第92/01047号、Liming等、国際公開第99/06587号)を用いる。
【0073】
適当な細胞結合剤の選択は、標的の特定細胞群体の選択事項に依存し、一般的には、好ましくは、モノクローナル抗体とそのエピトープ結合断片である(もし適当なものが使用できる場合)。
【0074】
例えば、モノクローナル抗体My9は、マウスIgG2a抗体であり、それは急性骨髄性白血病(AML)細胞で発現したCD33抗原に特異性(Roy等、Blood、77:2404−2412(1991))を有し、またAML患者を治療するために使用することができる。同様に、モノクローナル抗体抗B4はマウスIgGiであり、それはB細胞上のCD19抗原と結合(Nadler等、J.Immunol.131:244−250(1983))し、たとえ標的細胞がB細胞または非ホジキンリンパ腫または慢性リンパ芽球性白血病で、その抗原の患病の細胞を発現すると、前記抗体を使用することができる。抗体N901は、マウスモノクローンIgGi抗体であり、それは小細胞肺癌細胞と神経内分泌起源の他の腫瘍の細胞上で発現されたCD56と結合(Roy等、J.Nat.Cancer Inst.88:1136−1145(1996))し、huC242はCanAg抗原と結合する抗体であり、トラスツズマブは、HER2/neuと結合する抗体であり、及び抗EGF受容体抗体は、EGF受容体と結合する。
【0075】
薬物単位(D)は、いずれかの細胞傷害性薬剤、細胞増殖抑制剤または免疫抑制剤薬物であることができ、本明細書においては、細胞毒性剤、細胞増殖抑制剤または免疫抑制剤とも称することができる。薬剤の例としては、放射活性アイソトープ、化学療法剤、小分子毒素や、バクテリア、真菌、植物または動物由来の酵素活性毒素などの毒素があり、合成アナログや誘導体が含まれる。薬物単位は、リンカーユニットと一つの結合を形成しうる原子を有する。ある例において、薬物単位Dは、リンカーユニットと一つの結合を形成し得る窒素原子を有する。他の例において、薬物単位Dは、リンカーユニットと一つの結合を形成しうるカルボン酸を有する。他の例において、薬物単位Dは、リンカーユニットと一つの結合を形成しうるメルカプト基を有する。他の例において、薬物単位Dは、リンカーユニットと一つの結合を形成しうるヒドロキシ基またはケトンを有する。
【0076】
これらに適用できる細胞毒性剤または免疫抑制剤は、例えば、微管蛋白剤、オーリスタチン、DNA副溝結合剤、DNA複製阻害剤、アルキル化剤(例えば、プラチナ錯体、例えば、シスプラチン、モノ(プラチナ)、ビス(プラチナ)及トリニューラールプラチナ錯体及びカルボプラチン)、アントラサイクリン、抗生物質、抗葉酸剤、代謝抵抗物、化学療法増感剤、デュオカルマイシン、エトポシド(etoposide)、フッ化ピリミジン、イオン担体、レキシトロプシン、ニトロソウレア、プラチナロール(platinol)、予形成化合物、プリン代謝抵抗物質、ピューロマイシン(puromycine)、放射線増感剤、ステロイド、タキサン、トポイソメラーゼ阻害剤、ビンカアルカロイドまたはその類似物を含む。特に、細胞毒性剤に有用なこれらの例は、例えば、DNA副溝結合剤、DNAアルキル化剤及びチューブリン阻害剤を含む。細胞毒性剤の例は、例えば、オーリスタチン、カンプトテシン、デュオカルマイシン、エトポシド、メイタンシン(maytansine)及びメイタンシノイド(例えば、DM1及びDM4)、タキソイド、ベンゾジアゼピン(例えば、ピロロ[1,4]ベンゾジアゼピン(PBD)、インドリノベンゾジアゼピン及びオキサゾリルベンゾジアゼピン)及びビンカアルカロイドが含まれる。ベンゾジアゼピンが含まれている薬物の記述は、国際公開第2010/091150号、国際公開第2012/112708号、国際公開第2007/085930号、及び国際公開第2011/023883号にある。
【0077】
各細胞毒性剤または免疫抑制剤は、例えば、アンドロゲン、アントラマイシン(anthramycin)(AMC)、アスパラギナーゼ、5−アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン(bleomycin)、ブスルファン(busulfan)、ブチオニン(buthionine)スルホキシイミン、カリケアミシン、カンプトテシン、カルボピアチン、カルムスティーン(carmustine)(BSNU)、CC−1065、クロラムブシル、シスプラチン、コルヒチン、シクロホスファミド、シタラビン、シチジンアラビノシド、サイトカラシンB、ダカルバジン(dacarbazine)、ダクチノマイシン(以前は、アクチノマイシン)、ダウノルビシン(daunorubicin)、ダカルバジン、ドセタキセル(docetaxel)、ドキソルビシン、エトポシド、エストロゲン、5−フルオロデオキシウリジン、5−フルオロウラシル、ゲムシタビン(gemcitabine)、グラミシジンD、ヒドロキシ尿素、イダルビシン(idarubicin)、イフォスファミド、イリノテカン(irinotecan)、ロムスチン(lomustine)(CCNU)、メイタンシン、メクロレタミン、メルファラン(melphalan)、6−メルカプトプリン、メソトレキサート、ミスラマイシン、ミトミシンC、ミトキサントロン、ニトロイミダゾール、パクリタキセル、パリトキシン、プリカマイシン、プロカルビジン、リゾキシン、ストレプトゾトシン、テニポシド、6−チオグアニン、チオテパ(thioTEPA)、トポテカン(topotecan)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ヴィノレルビン(vinorelbine)、VP−16及びVM−26を含む。
【0078】
典型的な実施例の中で、細胞毒性剤に適合するのは、例えば、DNA副溝結合剤(例えば、エンジイン及びラクシュトセン、CBI化合物、米国特許第6130237号明細書を参照)、デュオカルマイシン(米国特許出願公開第2006/0024317号明細書を参照)、タキサン(例えば、パクリタキセル及びドセタキセル)、ピューロマイシン、ビンカアルカロイド、CC−1065、SN−38、トポテカン、(N−モルホリニル)−ドキソルビシン、リゾキシン、シアノ(N−モルホリニル)−ドキソルビシン、エキノマイシン、コンブレタスタチン(combretastatin)、ネトロプシン、エポチロン(epothilone)A及びB、エストラムスチン(estramustine)、クリプトフィシン(cryptophysin)、セマドチン(cemadotin)、メイタンシノイド、ディスコデルモライド(discodermolide)、エレウテロビン(eleutherobin)及ミトキサントロン(mitoxantrone)を含む。
【0079】
いくつかの実施形態の中で、薬物単位が抗チューブリン剤である。抗チューブリン剤の例は、タキソイド(例えば、Taxol(登録商標)(パクリタキセル)、Taxoterc(商品名)(ドセタキセル))、T67(TulariK)及びビンカアルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン(vindesine)及びビノレルビン)がある。他の抗チューブリン剤は、例えば、バッカチン誘導体、タキソイド類似物(例えば、エポチロンA及びB)、ノコダゾール(nocodazole)、コルヒチン及びコルシミッド(colcimid)、エストラムスティーン、クリプトプフェン、セマドチン、メイタンシノイド、コンブレタスタチン、ディスコデルモライド及エリュテロビンを含む。
【0080】
いくつかの実施例の中で、細胞毒性剤は、メイタンシンまたはメイタンシノイド(他のグループの抗チューブリン剤)である。(ImmuoGen、Inc.;Chai等、1992、Cancer Res.52:127−131及び米国特許第8163888号)。
【0081】
いくつかの実施例の中で、薬物単位は、オーリスタチンである。オーリスタチンは、AE、AFP、AEB、AEVB、MMAF及びMMAEを含むが、これらに限定されない。オーリスタチンの合成及び構造は、米国特許出願公開第2003/0083263号明細書、米国特許出願公開第2005/0238649号明細書、米国特許出願公開第2005/0009751号明細書、米国特許出願公開第2009/0111756号明細書及び米国特許出願公開第2011/0020343号明細書、国際公開第04/010957号、国際公開第02/088172号及び米国特許第7659241号明細書及び米国特許第8343928号明細書に記述されていて、それぞれ全体を通して引用の形式で、全ての目的を込めて本文に援用する。本発明のオーリスタチンの例はチューブリンに結合し、細胞株に対して細胞毒性または細胞増殖抑制の作用を発揮する。
【0082】
例示的なオーリスタチン薬物単位は、以下の式またはその薬学上において許容できる塩を用いて、その中で、波線部分は結合剤単位の結合の位置を示している:
【化32】
【0083】
いくつかの実施例の中で、薬物は、ベンゾジアゼピン(薬物を含むベンゾジアゼピン、例えば、ピロロ[1,4]ベンゾジアゼピン(PBD)、インドリノベンゾジアゼピン及及びオキサゾリジノベンゾジアゼピンが含まれる)。PBDは、以下のような構造の一般式を有する。
【化33】
置換基の数、種類及び位置は、その芳香族A環、ピロロC環、シクロヒドロカルビル基C環の飽和度が異なり得る。B環の中で、N10−C11位置において、イミン(N=C)、メタノールアミノ(NH−CH(OH))またはカルビノールアミンメチルエーテル(NH−CN(OMe))が存在し、それは、アルキル化DNAの求電子中心である。全ての既知の天然化合物は、キラルC11a位置には、全てが(S)立体配置であり、C環からA環に向かって見ると、当該(S)立体配置は、右利きのひねりとなる。これは、B型DNA副溝の等螺旋性の適当な3次元構造を提供することで、結合の位置点で緊密に結合するようになる。PBDが、副溝で付加物を形成して、DNAの合成を阻害するので、腫瘍抵抗剤として使用される。このらの分子の生物活性は、例えば、二つのPBD単位をC8/C−ヒドロキシ基により一つのフレキシブルなアルキレンリンカーへの結合を介して、増強できる。PBDダイマーは、パリンドロームの5'−Pu−GATC−Py−3'インターストランドなどの配列選択的DNA損傷を形成すると考えられ、それらの生物学的活性を主に担うと考えられている架橋結合である。
【0084】
リンカー、薬物結合共役体と、抗体−薬物複合体の調製方法の一般式は、以下のようである。
【化34】
アミノアルコール1と、例えば、トリフルオロアセトアルデヒドメチルヘミアセタールなどのヘミアセタールとが、トルエンなどの溶媒の中で還流温度で反応するとともに脱水して、オキサゾリジン中間体2を生成する。その後、オキサゾリジン2が、グリニャール試薬または適当な前駆体から得られる塩基と反応して、アミノアルコール中間体3が生成する。中間体3は、適当な酸化剤、例えば、ジョーンズ試薬または過ヨウ素酸が三酸化クロムの触媒により酸化され、そしてエステル化を経てエステル中間体4が生成する。中間体4の官能基に対して適当な置換または操作を行って、更に転化される適合な位置を含む中間体5が得られる。
【0085】
【化35】
方法1におけるアミノアルコール3は、同様に、Gosselin,F.,et.al.,Org.Lett.2004,6,641およびRoy,A.,et.al.,J.Org.Chem.2006,71,4320によって、ジアステレオ選択方法で調製することで、高いジアステレオ選択性で3aが得られる。
【0086】
【化36】
【0087】
【化37】
方法1由来の中間体5と、方法3由来の中間体8とを適切な条件下で反応させて、中間体10を得る。中間体10は、その後の反応を経て、中間体11として4−ニトロフェニルカーボネートを得る。
【0088】
【化38】
方法4由来の中間体11は、適当な条件の下で、MMAEと反応させて、薬物リンカー中間体12を得る。
【0089】
【化39】
中間体12は、対応する実験セクションに記載された適切な条件の下で、標的抗体と結合される。
【0090】
ハーセプチン薬物とリンカー中間体との結合の一般的な調製方法:
ステップ1:抗体ジスルフィド結合の還元と精製
240mgの抗体−薬物複合体を得るために、8.955mlのハーセプチン(26.8mg/ml、約30mg/ml)を8.95μLの0.5MのTCEP(反応液中のTCEPの最終濃度は、0.5mMである)と混合させ、室温で2時間反応させた。その後、反応液を1mlのプロテインAアフィニティーカラムで分離し、残留TCEPと他の非モノクローナル抗体不純物を除去した。精製後、1MのTrisで溶出液のpHを6.0程度に調整し、分光光度計でモノクローナル抗体の濃度を測定した。溶液の最終体積は、約20mlであり、モノクローナル抗体の濃度は、約11.6mg/mlであった。
【0091】
ステップ2:薬物リンカーと抗体との結合
溶液を均等に2本の試験管(10mlずつ)に分け、各試験管に薬物リンカー中間体のDMSO溶液を1ml(25mg/ml)入れた。薬物リンカーと当該クローン抗体の比率は、6:1であった。室温で約12時間反応させた。反応終了後、二つの試験管の溶液を併せてから、5000rpm/分の条件の下で5分間遠心分離し、遠心分離溶液をプロテインAアフィニティーカラムで精製して、未反応の薬物コンジュゲート中間体を除去した。1MのTrisの緩衝液で溶出液のpHを6.0に調整した。薬物抗体比(DAR)は、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)HPLCにて決定した。
【0092】
本発明では、実施例によって更なる説明を行い、以下の実施例は、単に本発明の更なる説明を提供するためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明の化合物は、当業者が熟知する多様な合成方法により調製することができ、以下で例示された具体的な実施形態、それが他の化学合成方法と組み合わされて行われた実施形態及び本技術領域においての技術者にとって熟知の均等の代替方法を含み、好ましい実施形態は含まれるが本発明の実施例に限定されない。
【0093】
本発明で使用されている全ての溶媒は市販であり、精製することなく用いる。反応は、一般的には、不活性窒素の下で、無水溶剤の中で行う。プロトン核磁気共鳴のデータは、BruKer Avance III 400 (400MHz)スペクトロメータ上で記録され、化学シフトは、テトラメチルシランの低磁場における(ppm)として表される。質量スペクトルは、Agilent1200シリーズおよび6110(&1956A)で測定された。LC/MS、またはShimadzu MSは、DAD:SPD−M20A(LC)およびShimadzu Micromass 2020検出器からなる。質量分析計は、正または負のモードで操作されるエレクトロスプレーイオン源(ESI)を備えている。
【0094】
本発明において、以下のような略称が用いられている。即ち、ADCは抗体−薬物複合体を、aqは水を、mAbは、モノクローナル抗体を表し、MTMHは、1−マレイミド−6−トリフルオロメチルヘキシル−6−イルを表しており、その構造は、
【化40】
であり、(S)−MTMHは、
【化41】
を表し、(R)−MTMHは、
【化42】
を表し、PABO(CO)は、
【化43】
を表し、ABAは、
【化44】
を代表し、MMAEは、
【化45】
を代表し、Fmoc−Clは、9−フルオレニルメチルクロロホルメートを表し、DIADは、アゾビスイソブチロニトリルを表し、Z−Glu−OMeは、(S)−4−(((ベンジル)カルボニル)アミノ)−5−メチルオキシル−5−オキソペンタン酸を表し、HATUは、1−[Bis(dimethylamino)methylene]−1H−1,2,3−triazolo[4,5−b]pyridinium3−oxidhexafluorophosphateであり、EDCIは、1−Ethyl−3−(3−dimethylaminopropyl)carbodiimideであり、DMSOは、ジメチルスルホキシド(Dimethyl sulfoxide)であり、HOBTは、Hydroxybenzotriazoleであり、DCMは、ジクロロメタン(dichloromethane)であり、PEは、石油エーテル(petroleum ether)であり、DMFは、N,N−ジメチルホルムアミド(N,N−dimethylformamide)であり、EtOAcは、酢酸エチルであり、EtOHは、エタノールであり、MeOHは、メタノールであり、Cbzは、benzyloxycarbonylで、アミノ基の保護基であり、BOCは、tert−ブチルカルボニル基で、アミノ基の保護基であり、HOAcは酢酸であり、NaBH(OAc)
3は、sodium triacetoxyborohydrideであり、r.t.は、室温であり、THFは、テトラヒドロフランであり、Boc
2Oは、二炭酸ジ−tert−ブチルであり、TFAは、トリフルオロ酢酸であり、DIPEAは、ジイソプロピルエチルアミンであり、Pd(dppf)Cl
2は、[1,1′−Bis(diphenylphosphino)ferrocene]dichloropalladium(II)であり、POCl
3は、オキシ塩化リンであり、NaHは、水素化ナトリウムであり、LAHは、水素化アルミニウムリチウムであり、Pd(OAc)
2は、酢酸パラジウム(II)であり、Pd
2(dba)
3は、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)であり、Pd(PPh
3)
4は、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムであり、Et
3SiHは、トリエチルシランであり、PPh
3は、トリフェニルホスフィンであり、xantphosは、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテンであり、MeSO
3Hは、メタンスルホン酸であり、xphosは、2−Dicyclohexylphosphino−2′,4′,6′−triisopropylbiphenylであり、Lawesson’s reagentは、2,4−Bis(4−methoxylphenyl)−1,3−dithia−2,4−diphosphetane−2,4−disulfideであり、NBSは、N−ブロモスクシンイミドであり、t−BuOKは、カリウムtert−ブトキシドであり、化合物名は、手動で、またはChemDraw(登録商標)を使用して命名し、または市販されていれば市販カタログ名を使用している。