特許第6688794号(P6688794)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6688794マイクロリアクターシステムおよびマイクロリアクター方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688794
(24)【登録日】2020年4月8日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】マイクロリアクターシステムおよびマイクロリアクター方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20200421BHJP
   B81B 1/00 20060101ALI20200421BHJP
   B81C 3/00 20060101ALI20200421BHJP
   B22F 3/105 20060101ALI20200421BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20200421BHJP
   B22F 7/08 20060101ALI20200421BHJP
   B22D 19/00 20060101ALI20200421BHJP
   F28D 7/00 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
   B01J19/00 321
   B81B1/00
   B81C3/00
   B22F3/105
   B22F3/16
   B22F7/08 E
   B22D19/00 A
   F28D7/00 Z
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-525082(P2017-525082)
(86)(22)【出願日】2015年11月10日
(65)【公表番号】特表2018-505038(P2018-505038A)
(43)【公表日】2018年2月22日
(86)【国際出願番号】US2015059856
(87)【国際公開番号】WO2016077287
(87)【国際公開日】20160519
【審査請求日】2017年6月1日
(31)【優先権主張番号】62/078,053
(32)【優先日】2014年11月11日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509303512
【氏名又は名称】エイチ.シー. スターク インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アイモネ, ポール アール.
(72)【発明者】
【氏名】アブーアフ, マーク
(72)【発明者】
【氏名】ホーガン, パトリック
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−268395(JP,A)
【文献】 特開2007−142159(JP,A)
【文献】 特開2001−351642(JP,A)
【文献】 特開2003−082476(JP,A)
【文献】 特開2014−198324(JP,A)
【文献】 特開2014−092163(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0175853(US,A1)
【文献】 特開2007−196082(JP,A)
【文献】 特開2011−020044(JP,A)
【文献】 特開2013−226560(JP,A)
【文献】 特開2005−319409(JP,A)
【文献】 特開2003−062797(JP,A)
【文献】 特表2013−516314(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02422874(EP,A1)
【文献】 米国特許第07673389(US,B1)
【文献】 大参 達也,Ni−Al系マイクロチャンネルライニング層の高温酸化組織,日本鉄鋼協会講演論文集「材料とプロセス」,日本,社団法人日本鉄鋼協会,2012年,p.401
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/00
B22D 19/00
B22F
B81B 1/00
B81C 3/00
F28D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロリアクターを製造する方法であって、該方法は、
中空のマイクロチャネル導管のネットワークを耐食性物質から形成することと、
該形成することの後に、該耐食性物質の熱伝導性よりも大きい熱伝導性を有するマトリックス物質を含むマトリックスでマイクロチャネル導管の該ネットワークの周りを囲むことと
を含み、
該マイクロチャネル導管に近接する該マトリックスの部分が、該耐食性物質および該マトリックス物質を含む、混合および/または傾斜組成物を含み、
該混合および/または傾斜組成物は、マイクロチャネル導管と該マトリックスの該部分との間にひびまたは剥離が生じるのを防ぐのに十分な、該マイクロチャネル導管から該マトリックスに延びる厚さを有する、方法。
【請求項2】
前記マトリックス物質内に、複数の中空の熱交換導管を画定することであって、該熱交換導管は前記マイクロチャネル導管と交差しない、ことをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項3】
マイクロチャネル導管の前記ネットワークが付加的な製造技術によって形成される、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記付加的な製造技術が三次元印刷を含む、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記マトリックス物質が前記付加的な製造技術によって前記マイクロチャネル導管の周りに形成される、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記マトリックス物質が鋳造または粉末加圧のうちの少なくとも一つによって前記マイクロチャネル導管の周りに配置される、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記耐食性物質がニオブ、モリブデン、タンタル、タングステン、レニウム、チタン、ジルコニウム、ガラスまたはステンレス鋼のうちの少なくとも一つを含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記マトリックス物質がアルミニウム、金、真鍮、銀または銅のうちの少なくとも一つを含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
マイクロリアクターを製造する方法であって、該方法は、
金属シートを成形し、結合することによって、一つまたは複数のマイクロチャネル導管にすることであって、該金属シートは耐食性物質を含む、ことと、
一つまたは複数のマイクロリアクター部分を製造することであって、該一つまたは複数のマイクロリアクター部分のそれぞれは、該耐食性物質を含む供給原料を利用する付加的な製造技術によって該マイクロチャネル導管のうち一つまたは複数と接続するように構成されている、ことと、
該一つまたは複数のマイクロチャネル導管を該一つまたは複数のマイクロリアクター部分に結合し、それによって該マイクロリアクターのマイクロチャネルネットワークを形成することと、
その後に、該マイクロチャネルネットワークの周りに、該耐食性物質の熱伝導性よりも大きい熱伝導性を有するマトリックス物質を含むマトリックスを形成することと
を含み、
該マイクロチャネル導管に近接する該マトリックスの部分が、該耐食性物質および該マトリックス物質を含む、混合および/または傾斜組成物を含み、
該混合および/または傾斜組成物は、マイクロチャネル導管と該マトリックスの該部分との間にひびまたは剥離が生じるのを防ぐのに十分な、該マイクロチャネル導管から該マトリックスに延びる厚さを有する、方法。
【請求項10】
前記マイクロチャネルネットワークの周りに前記マトリックスを形成する間または形成した後に、該マトリックス物質内において一つまたは複数の中空の熱交換導管を画定することであって、該一つまたは複数の熱交換導管は該マイクロチャネルネットワークと交差しない、ことをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記マイクロチャネルネットワークの周りに、付加的な製造技術によって前記マトリックス物質が形成される、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記マイクロチャネルネットワークの周りに、鋳造または粉末加圧のうちの少なくとも一つによって前記マトリックス物質が形成される、請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記耐食性物質がニオブ、モリブデン、タンタル、タングステン、レニウム、チタン、ジルコニウム、ガラスまたはステンレス鋼のうちの少なくとも一つを含む、請求項に記載の方法。
【請求項14】
前記マトリックス物質がアルミニウム、金、真鍮、銀または銅のうちの少なくとも一つを含む、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2014年11月11日に出願された米国仮特許出願第62/078,053号に対する利益および優先権を主張し、その全開示は、参照によって本明細書に、これによって援用される。
【0002】
(技術分野)
様々な実施形態において、本発明はマイクロリアクターの製造および使用に関係がある。
【背景技術】
【0003】
(背景)
マイクロリアクターは、小規模、制御可能な量で、化学試薬を操作するおよび/または化学試薬に反応を起こさせるために利用されるデバイスである。そのような試薬(および/または試薬の反応生成物)は、しばしば苛性かつ/または腐食性であるので、マイクロリアクターは、例えば、全開示が本明細書で参照によって援用されている国際特許出願公開第WO2007/112945号において説明されるように、耐食性物質の板からエッチング加工されたマイクロチャネルのネットワークを多くの場合特徴とする。そのようなシステムは、反応チャネルから離れて熱を伝導するための独立したモジュール(例えば、独立した板)全体を多くの場合含む一方で、耐食性物質の板全体の使用は(1)非常に高価であり得、かつ、(2)マイクロリアクターにおける反応によって生成された熱は、熱交換モジュールに到達する前に、チャネルそれ自体を通るだけでなく、板の残厚および、反応モジュールと熱交換モジュールとの間の接続部分もまた通って伝導されなければならないので、熱交換の効率に有害に影響を与える。従って、マイクロリアクター外への熱の伝導を改善するために、高価で非熱伝導性耐食性の物質の使用を最小限にする、マイクロリアクターの設計についての必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2007/112945号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(概要)
本発明の様々な実施形態に従って、マイクロリアクターの中空の耐食性マイクロチャネル(または「マイクロチャネル導管」)は耐食性物質から形成され、かつ、マイクロチャネルのネットワークは、より高い熱伝導性を有する、異なる「マトリックス」物質によって、後にまたは同時に囲まれる(または「入れられる」)。従って、耐食性物質の使用は最小限にされ、物質の消費を減らし、かつ、マイクロチャネル導管からの熱伝導性を改善し、かつ、加えて、従来の製造方法によっては可能でない設計の使用を可能にする。様々な実施形態において、耐食性物質は、一つまたは複数の耐火性の金属(例えばニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)および/もしくはレニウム(Re))、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハステロイ(すなわち、残部のニッケルと共に、コバルト、クロム、Mo、W、鉄、シリコン、マンガンおよび/もしくは炭素の追加も含む、ニッケルベースの合金)、ガラスおよび/もしくはステンレス鋼を含むか、一つまたは複数の耐火性の金属、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハステロイ、ガラスおよび/もしくはステンレス鋼から本質的に成るか、または、一つまたは複数の耐火性の金属、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハステロイ、ガラスおよび/もしくはステンレス鋼から成る。耐食性物質は、比較的高い融解点および/もしくは硬度、比較的低い延性、ならびに/または比較的低い熱伝導性を有し得る。様々な実施形態において、マトリックス物質は、アルミニウム(Al)、金(Au)、真鍮、銀(Ag)および/もしくは銅(Cu)など比較的高い熱伝導性を有する一つもしくは複数の金属を含むか、アルミニウム(Al)、金(Au)、真鍮、銀(Ag)および/もしくは銅(Cu)など比較的高い熱伝導性を有する一つもしくは複数の金属から本質的に成るか、またはアルミニウム(Al)、金(Au)、真鍮、銀(Ag)および/もしくは銅(Cu)など比較的高い熱伝導性を有する一つもしくは複数の金属から成る。マトリックス物質が、耐食性マイクロチャネルの周りを囲む固体の構造物を形成し得る一方で、いくつかの実施形態において、マトリックス物質は中空の熱交換チャネルを画定し、熱交換流体(例えば水)が、耐食性マイクロチャネルに近接した領域から熱を奪うために中空の熱交換チャネルを通って流れ得る。
【0006】
本明細書で使用される場合、「マイクロリアクター」という用語は、およそ1cmかもしくはそれより小さい直径、またはおよそ1mmかもしくはそれより小さい直径(または他の短手方向の寸法)さえを有する一つまたは複数のマイクロチャネルを含む、流体性のデバイスを意味する。そのようなマイクロチャネルは、より大規模なデバイスと比較するとより高い伝熱速度および質量移動速度を典型的に可能にする。マイクロチャネルは、例えば、(それぞれマイクロチャネル内にまた含まれ得る)一つもしくは複数の他の流体との熱交換、処理、および/または反応のための、移動もしくは静止する流体を含むために利用され得る。従って、「マイクロリアクター」、「マイクロチャネル熱交換器」、「マイクロチャネルリアクター」などの用語が当技術分野において利用される場合、「マイクロリアクター」は、「マイクロチャネル熱交換器」および/もしくは「マイクロチャネルリアクター」を含み得るか、または「マイクロチャネル熱交換器」および/もしくは「マイクロチャネルリアクター」から本質的に成り得る。一つまたは複数のマイクロチャネルは、マイクロリアクター内に収められた他の流体のうち一つまたは複数との熱交換のための伝熱媒体(例えば、水などの伝熱流体)を含み得る。
【0007】
本発明の様々な実施形態において、耐食性マイクロチャネルは、三次元印刷、または曲げ加工および溶接さえなど、例えば付加的な製造技術によって製造される。いくつかの実施形態において、様々な耐食性マイクロチャネルは、一つの技術(例えば熱機械的な処理)によって形成され得、マイクロチャネルネットワークの、様々なより複雑な部分は他の技術(例えば、三次元印刷など付加的な製造技術)によって形成され得、かつ、これらの部分は、熱伝導性マトリックス物質の中に後に入れられる、完成されたマイクロチャネルネットワークを形成するために互いに結合され得る。本明細書で利用される場合、「付加的な製造技術」という用語は、三次元部分が、粉末またはワイヤー供給原料からの物質の蒸着および押し固め、それに続いて高温化における随意の焼結/緻密化によって、層ごとの様式で製造される製造技術を指す。本明細書で利用される場合、「熱機械的な処理技術」という用語は、金属の供給原料(例えば鋳塊、シートなど)が両方とも変形され、かつ、所望の形状および力学的性質を有する部分を形成するために(同時におよび/または連続的に)熱処理される製造技術を指す。本明細書で利用される場合、「粉末冶金技術」という用語は、粉末がバルク内に圧縮され、かつ固体の三次元物体を形成するために(同時におよび/または連続的に)焼結される製造技術を指す。
【0008】
一様態において、本発明の実施形態は、中空のマイクロチャネル導管のネットワークならびにマイクロチャネル導管の周りを囲みかつ接触しているマトリックスを含むか、または、中空のマイクロチャネル導管のネットワークならびにマイクロチャネル導管の周りを囲みかつ接触しているマトリックスから本質的に成るマイクロリアクターを特徴とする。マイクロチャネル導管は耐食性物質を含むか、耐食性物質から本質的に成るか、または耐食性物質から成る。マトリックスは、耐食性物質の熱伝導性よりも大きい熱伝導性を有するマトリックス物質を含むか、耐食性物質の熱伝導性よりも高い熱伝導性を有するマトリックス物質から本質的に成るか、または耐食性物質の熱伝導性よりも高い熱伝導性を有するマトリックス物質から成る。一つまたは複数の熱交換チャネルはマトリックス物質によって画定され得、かつマトリックス物質内に配置され得る。例えば、熱交換チャネル内の熱交換流体が一つまたは複数のマイクロチャネル導管内の流体と熱接触するように、各熱交換チャネルは一つまたは複数のマイクロチャネル導管に近接し得る。熱交換チャネルは、存在する場合、マイクロチャネル導管のうちのいずれのマイクロチャネル導管とも交差しない。
【0009】
本発明の実施形態は、様々な組み合わせのうち任意の組み合わせにおける、以下のもののうち一つまたは複数を含み得る。耐食性物質はニオブ、モリブデン、タンタル、タングステン、レニウム、チタン、ジルコニウム、ハステロイ、ガラスおよび/もしくはステンレス鋼を含み得るか、ニオブ、モリブデン、タンタル、タングステン、レニウム、チタン、ジルコニウム、ハステロイ、ガラスおよび/もしくはステンレス鋼から本質的に成り得るか、またはニオブ、モリブデン、タンタル、タングステン、レニウム、チタン、ジルコニウム、ハステロイ、ガラスおよび/もしくはステンレス鋼から成り得る。マトリックス物質は、アルミニウム、金、真鍮、銀および/もしくは銅を含み得るか、アルミニウム、金、真鍮、銀および/もしくは銅から本質的に成り得るか、またはアルミニウム、金、真鍮、銀および/もしくは銅から成り得る。少なくとも一つの熱交換チャネルの直径(または、非円形の横断面を有するチャネルに対する、他の短手方向の寸法)は少なくとも一つのマイクロチャネル導管の直径(または、非円形の横断面を有するマイクロチャネル導管に対する、他の短手方向の寸法)よりも大きくあり得る。少なくとも一つのマイクロチャネル導管に近接した、マトリックスの部分は、耐食性物質およびマトリックス物質を含むか、耐食性物質およびマトリックス物質から本質的に成るか、もしくは耐食性物質およびマトリックス物質から成る混合組成物および/または傾斜組成物を含み得るか、または、耐食性物質およびマトリックス物質を含むか、耐食性物質およびマトリックス物質から本質的に成るか、もしくは耐食性物質およびマトリックス物質から成る混合組成物および/または傾斜組成物から本質的に成り得るか、または、耐食性物質およびマトリックス物質を含むか、耐食性物質およびマトリックス物質から本質的に成るか、もしくは耐食性物質およびマトリックス物質から成る混合組成物および/または傾斜組成物から成り得る。マイクロチャネル導管のネットワークは、(i)単一の反応部に集まる、二つもしくはそれより多くの入力導管および(ii)反応部から出る出力導管を含み得るか、または、(i)単一の反応部に集まる、二つもしくはそれより多くの入力導管および(ii)反応部から出る出力導管から本質的に成り得る。
【0010】
他の様態において、本発明の実施形態はマイクロリアクターを製造する方法を特徴とする。中空のマイクロチャネル導管のネットワークは耐食性物質から形成される。その後に、および/またはその間に、マイクロチャネル導管のネットワークは、耐食性物質の熱伝導性よりも高い熱伝導性を有するマトリックス物質に囲まれ、かつ、耐食性物質の熱伝導性よりも大きい熱伝導性を有するマトリックス物質内に入れられる。
【0011】
本発明の実施形態は、様々な組み合わせのうち任意の組み合わせにおける、以下のもののうち一つまたは複数を含み得る。複数の中空の熱交換導管は、マトリックス物質内において画定され得る。熱交換導管は、マイクロチャネル導管と交差しない場合がある。マイクロチャネル導管のネットワークは、例えば三次元印刷などの付加的な製造技術によって形成され得る。マトリックス物質は、付加的な製造技術によって、(例えば、マイクロチャネル導管のネットワークが形成される間および/または形成された後に)マイクロチャネル導管の周りに形成され得る。マトリックス物質は、粉末冶金技術(例えば粉末加圧)によって、マイクロチャネル導管の周りに配置され得る。マトリックス物質は、鋳造によってマイクロチャネル導管の周りに配置され得る。耐食性物質は、ニオブ、モリブデン、タンタル、タングステン、レニウム、チタン、ジルコニウム、ハステロイ、ガラスおよび/もしくはステンレス鋼を含み得るか、またはニオブ、モリブデン、タンタル、タングステン、レニウム、チタン、ジルコニウム、ハステロイ、ガラスおよび/もしくはステンレス鋼から本質的に成り得るか、または、ニオブ、モリブデン、タンタル、タングステン、レニウム、チタン、ジルコニウム、ハステロイ、ガラスおよび/もしくはステンレス鋼から成り得る。マトリックス物質は、アルミニウム、金、真鍮、銀および/もしくは銅を含み得るか、アルミニウム、金、真鍮、銀および/もしくは銅から本質的に成り得るか、またはアルミニウム、金、真鍮、銀および/もしくは銅から成り得る。
【0012】
さらなる他の様態において、本発明の実施形態はマイクロリアクターを製造する方法を特徴とする。一つまたは複数の中空の管状のマイクロチャネル導管を形成するために、金属シートが成形され、かつ/または結合される。金属シートは、耐食性物質を含むか、耐食性物質から本質的に成るか、または耐食性物質から成る。それぞれマイクロチャネル導管のうち一つまたは複数と接続するように構成された、一つまたは複数のマイクロリアクター部分は、耐食性物質を含むか、耐食性物質から本質的に成るか、または耐食性物質から成る供給原料(例えば、ワイヤーおよび/もしくは粉末)を利用する付加的な製造技術によって製造される。一つまたは複数のマイクロチャネル導管は、一つまたは複数のマイクロリアクター部分に結合され、それによって、マイクロリアクターのマイクロチャネルネットワークを形成する。その後に、マイクロチャネルネットワークは、耐食性物質の熱伝導性よりも大きい熱伝導性を有するマトリックス物質内に入れられる。マイクロチャネルネットワークをマトリックス物質内に入れる間または入れた後に、一つまたは複数の中空の熱交換導管はマトリックス物質内で画定され得る。一つまたは複数の熱交換導管は、存在する場合、マイクロチャネルネットワークと交差しない。
【0013】
本発明の実施形態は、様々な組み合わせのうち任意の組み合わせにおける、以下のもののうち一つまたは複数を含み得る。マイクロチャネルネットワークは、三次元印刷などの付加的な製造技術によって、マトリックス物質内に入れられ得る。マイクロチャネルネットワークは、鋳造によってマトリックス物質内に入れられ得る。マイクロチャネルネットワークは、例えば粉末加圧などの粉末冶金技術によってマトリックス物質内に入れられ得る。耐食性物質は、ニオブ、モリブデン、タンタル、タングステン、レニウム、チタン、ジルコニウム、ハステロイ、ガラスおよび/もしくはステンレス鋼を含むか、ニオブ、モリブデン、タンタル、タングステン、レニウム、チタン、ジルコニウム、ハステロイ、ガラスおよび/もしくはステンレス鋼から本質的に成るか、またはニオブ、モリブデン、タンタル、タングステン、レニウム、チタン、ジルコニウム、ハステロイ、ガラスおよび/もしくはステンレス鋼から本質的に成る。マトリックス物質は、アルミニウム、金、真鍮、銀および/もしくは銅を含み得るか、アルミニウム、金、真鍮、銀および/もしくは銅から本質的に成り得るか、またはアルミニウム、金、真鍮、銀および/もしくは銅から成り得る。
本明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
耐食性物質から形成された中空のマイクロチャネル導管のネットワークと、
該マイクロチャネル導管を囲み、かつ該マイクロチャネル導管と接触しているマトリックスであって、該マトリックスは、該耐食性物質の熱伝導性よりも大きい熱伝導性を有するマトリックス物質を含む、マトリックスと
を含む、マイクロリアクター。
(項目2)
一つまたは複数の中空の熱交換チャネルであって、それぞれ(i)前記マトリックス物質によって画定され、(ii)一つまたは複数のマイクロチャネル導管に近接し、かつ、(iii)該マイクロチャネル導管のうちのいずれのマイクロチャネル導管とも交差しない、熱交換チャネルをさらに含む、項目1に記載のマイクロリアクター。
(項目3)
少なくとも一つの熱交換チャネルの直径が少なくとも一つのマイクロチャネル導管の直径よりも大きい、項目2に記載のマイクロリアクター。
(項目4)
前記耐食性物質がニオブ、モリブデン、タンタル、タングステン、レニウム、チタン、ジルコニウム、ガラスまたはステンレス鋼のうちの少なくとも一つを含む、項目1に記載のマイクロリアクター。
(項目5)
前記マトリックス物質がアルミニウム、金、真鍮、銀または銅のうちの少なくとも一つを含む、項目1に記載のマイクロリアクター。
(項目6)
前記マイクロチャネル導管に近接する前記マトリックスの部分が、前記耐食性物質および前記マトリックス物質を含む、混合および/または傾斜組成物を含む、項目1に記載のマイクロリアクター。
(項目7)
マイクロチャネル導管の前記ネットワークが、(i)単一の反応部に集まる、二つまたはそれより多くの入力導管および(ii)該反応部から出ている出力導管を含む、項目1に記載のマイクロリアクター。
(項目8)
マイクロリアクターを製造する方法であって、該方法は、
中空のマイクロチャネル導管のネットワークを耐食性物質から形成することと、
該形成することの後におよび/またはその間に、該耐食性物質の熱伝導性よりも大きい熱伝導性を有するマトリックス物質でマイクロチャネル導管の該ネットワークの周りを囲むことと
を含む、方法。
(項目9)
前記マトリックス物質内に、複数の中空の熱交換導管を画定することであって、該熱交換導管は前記マイクロチャネル導管と交差しない、ことをさらに含む、項目8に記載の方法。
(項目10)
マイクロチャネル導管の前記ネットワークが付加的な製造技術によって形成される、項目8に記載の方法。
(項目11)
前記付加的な製造技術が三次元印刷を含む、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記マトリックス物質が前記付加的な製造技術によって前記マイクロチャネル導管の周りに形成される、項目10に記載の方法。
(項目13)
前記マトリックス物質が鋳造または粉末加圧のうちの少なくとも一つによって前記マイクロチャネル導管の周りに配置される、項目8に記載の方法。
(項目14)
前記耐食性物質がニオブ、モリブデン、タンタル、タングステン、レニウム、チタン、ジルコニウム、ガラスまたはステンレス鋼のうちの少なくとも一つを含む、項目8に記載の方法。
(項目15)
前記マトリックス物質がアルミニウム、金、真鍮、銀または銅のうちの少なくとも一つを含む、項目8に記載の方法。
(項目16)
マイクロリアクターを製造する方法であって、該方法は、
金属シートを成形し、結合することによって、一つまたは複数のマイクロチャネル導管にすることであって、該金属シートは耐食性物質を含む、ことと、
一つまたは複数のマイクロリアクター部分を製造することであって、該一つまたは複数のマイクロリアクター部分はそれぞれ、該耐食性物質を含む供給原料を利用する付加的な製造技術によって該マイクロチャネル導管のうち一つまたは複数と接続するように構成されている、ことと、
該一つまたは複数のマイクロチャネル導管を該一つまたは複数のマイクロリアクター部分に結合し、それによって該マイクロリアクターのマイクロチャネルネットワークを形成することと、
その後に、該マイクロチャネルネットワークを、該耐食性物質の熱伝導性よりも大きい熱伝導性を有するマトリックス物質内に入れることと
を含む方法。
(項目17)
前記マトリックス物質内に前記マイクロチャネルネットワークを入れる間または入れた後に、該マトリックス物質内において一つまたは複数の中空の熱交換導管を画定することであって、該一つまたは複数の熱交換導管は該マイクロチャネルネットワークと交差しない、ことをさらに含む、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記マイクロチャネルネットワークが付加的な製造技術によって前記マトリックス物質内に入れられる、項目16に記載の方法。
(項目19)
前記マイクロチャネルネットワークが、鋳造または粉末加圧のうちの少なくとも一つによって前記マトリックス物質内に入れられる、項目16に記載の方法。
(項目20)
前記耐食性物質がニオブ、モリブデン、タンタル、タングステン、レニウム、チタン、ジルコニウム、ガラスまたはステンレス鋼のうちの少なくとも一つを含む、項目16に記載の方法。
(項目21)
前記マトリックス物質がアルミニウム、金、真鍮、銀または銅のうちの少なくとも一つを含む、項目16に記載の方法。
【0014】
本明細書で開示された本発明の有利な点および特徴に加えて、これらの目的および他の目的は、以下の説明、添付の図面および請求項の参照を通してより明らかになる。さらに、本明細書で説明される様々な実施形態の特徴は、互いに排他的でなく、かつ、様々な組み合わせおよび順列において存在し得るということが理解されるべきである。本明細書で使用される場合、「およそ」および「実質的に」という用語は、±10%を意味し、かつ、いくつかの実施形態においては±5%を意味する。「から本質的に成る」という用語は、本明細書において他の態様で画定されない限り、機能に寄与する他の物質を排除することを意味する。それにもかかわらず、そのような他の物質は、集合的にまたは個別に微量で存在し得る。例えば、複数の金属から本質的に成る構造は、一般にその複数の金属のみ、かつ、化学分析によって検知され得るが機能には寄与しない、(金属性または非金属性であり得る)意図せぬ不純物のみを含む。本明細書で使用される場合、「少なくとも一つの金属から本質的に成る」とは、金属または二つもしくはそれより多い金属の混合物を指すが、金属と非金属元素または酸素、シリコン、もしくは窒素などの化学種との間の合成物(例えば、金属窒化物、金属シリサイド、もしくは金属酸化物)を指さない;そのような非金属元素または化学種は集合的または個別的に微量で、例えば不純物として存在し得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図面において、同じ参照符号は、異なる図面全体を通して一般に同じ部分を指す。また、図面は必ずしも一定の縮小比ではなく、代わりに、一般に本発明の原理を例示することに重点が置かれている。以下の説明において、本発明の様々な実施形態が以下の図面の参照と共に説明される。
【0016】
図1図1は、本発明の様々な実施形態に従う、マイクロチャネルの簡易化されたネットワークの概略的な表現である。
【0017】
図2図2は、本発明の様々な実施形態に従う、熱伝導性マトリックス物質内に入れられた図1のマイクロチャネルネットワークを特徴とするマイクロリアクターの簡略的な表現である。
【0018】
図3図3は、本発明の様々な実施形態に従う、マイクロリアクターを製造する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(詳細な説明)
図1は、耐食性物質のマイクロチャネルの、簡易化されたネットワークまたは部分的なネットワーク100の例を表現し、このネットワークは、マイクロリアクター内のマイクロチャネルのより大きなネットワークの一部であり得る。表現された例において、マイクロチャネルネットワーク100は、二つの入力チャネル110および出力チャネル130を特徴とし、化学試薬が反応部120における結合および反応のために二つの入力チャネル110を通って導入され得、反応生成物(および/または初期試薬の一部)が出力チャネル130を通って伝導される。チャネルの直径(または、非円形の横断面を有するチャネルを特徴とする実施形態における、他の短手方向の寸法)は、約1cmより小さくあり得るか、あるいは約1mmより小さくさえあり得る。マイクロチャネルの壁の厚さは、例えば、10μmから500μmの間であり得る。本発明の様々な実施形態において、マイクロリアクターは反応部120を欠いており、流体はマイクロチャネル内に限定および/もしくは伝導され、かつ/または流体との熱交換は付近のマイクロチャネル内に限定および/もしくは伝導される。
【0020】
マイクロチャネルのネットワーク100が一度製造されるか、あるいはネットワーク100の製造と実質的に同時に製造されると、マトリックス物質200は、図2に示されるように、物理的に接触して、その周りで形成され得る。示されるように、マトリックス物質200は、従って、マイクロチャネル100のネットワークの周りで、周囲の「ブロック」または「マトリックス」を形成し、かつ、マイクロチャネルへのこの極度の近接は、より低い熱伝導性を有するマイクロチャネルからの熱の効率的な伝達を可能にする。破線にもまた示されるように、一つまたは複数の熱交換チャネル210はマトリックス200内で形成され得、マイクロチャネル100からの反応の熱の伝達をさらに促進するために、伝熱流体の導入を可能にする。図2に表現されるように、一つまたは複数の入力流体220は、入力チャネル110に導入され得、かつ反応部120において反応し得、かつ出力流体(または「出力生成物」)230は出力チャネル130から流れ出る。また示されるように、熱交換流体240は、入力流体220および/もしくは出力流体230と熱を交換し、かつ/または反応部120から反応の熱を奪うために、熱交換チャネル210内で流れ得るか、または熱交換チャネル210内に含まれ得る。
【0021】
本発明の様々な実施形態において、マイクロチャネル100のネットワークは、一つまたは複数の耐火性の金属(例えばNb、Mo、Ta、Wおよび/もしくはRe)、ガラスおよび/もしくはステンレスの鋼鉄を含むか、一つまたは複数の耐火性の金属、ガラスおよび/もしくはステンレスの鋼鉄から本質的に成るか、または一つまたは複数の耐火性の金属、ガラスおよび/もしくはステンレスの鋼鉄から成る耐食性物質から形成される。耐食性物質は比較的高い融解点および/もしくは硬度、比較的低い延性、および/または比較的低い熱伝導性を有し得る。例えば、耐食性物質は、例えば約1300℃から約3500℃の間の融解点、または約2000℃から約3500℃の間の融解点さえを有し得る。耐食性物質は、200ワット毎メートル毎ケルビン(W・m−1・K−1)、160W・m−1・K−1、150W・m−1・K−1、100W・m−1・K−1、75W・m−1・K−1、60W・m−1・K−1、または50W・m−1・K−1よりも低い熱伝導性さえを有し得る。耐食性物質は、少なくとも約0.5W・m−1・K−1、または少なくとも1W・m−1・K−1の熱伝導性を有し得る。
【0022】
様々な実施形態において、マトリックス物質200は、Al、Au、真鍮、Agおよび/もしくはCuなど比較的高い熱伝導性を有する一つまたは複数の金属を含むか、比較的高い熱伝導性を有する一つまたは複数の金属から本質的に成るか、または、比較的高い熱伝導性を有する一つまたは複数の金属から成る。マトリックス物質200は、少なくとも100W・m−1・K−1、少なくとも170W・m−1・K−1または少なくとも300W・m−1・K−1さえの熱伝導性を有し得る。マトリックス物質200は、500W・m−1・K−1より小さい熱伝導性、または400W・m−1・K−1より小さい熱伝導性さえを有し得る。マトリックス物質200は耐食性マイクロチャネル100の周りを囲む、固体の構造物を形成し得る一方で、いくつかの実施形態において(および図2に示されるように)、マトリックス物質200は、中空の熱交換チャネル210を画定し、熱交換流体が、耐食性マイクロチャネル100に近接した領域から熱を奪うために中空の熱交換チャネル210を通って流れ得る。
【0023】
マトリックス物質200は、例えば、鋳造するまたは粉末加圧するおよび焼結することによって、マイクロチャネル100のネットワークの周りで形成され得、それによって、耐食性物質の必要量を最小限にしながら、マイクロチャネル100の耐食性のネットワークを収納するモノリス構造を生成する。様々な実施形態において、マイクロチャネル100が形成された後あるいはマイクロチャネル100の形成の間に、マイクロチャネルの(配置中)開口端部は、マトリックス物質200のマイクロチャネル内への進入を防ぐために、密封され得るか、あるいは他の態様で塞がれ得る。例えば、マイクロチャネル100の端部は、付加的な製造工程の間密封され得るか、あるいは製造の後に耐食性物質の塊と共に密封され得る。様々な実施形態において、密封されたマイクロチャネル100は、後に鋳型または金型に適切に固定され、かつそれからマトリックス物質200はその周りで鋳造されるかまたは加圧される。それから、最終構成要素は、結果として生じる、マトリックス物質のブロックから加工され得、かつマイクロチャネル100の密封された端部は(例えば、切断することによって)取り除かれ得る。マトリックス物質200が粉末冶金技術によって形成される実施形態において、加圧された粉末は、加圧されている間またはその後に焼結され得、かつ、それから、マイクロチャネル100の密封された端部は取り除かれ得る。
【0024】
マトリックス物質200が粉末冶金技術によってマイクロチャネル100の周りで形成される実施形態において、粉末加圧および/または焼結条件は特定のマトリックス物質200に基づいて選択され得る。例えば、銅を含むか、本質的に銅から成るか、または銅から成るマトリックス物質200に対して、例えば200から300MPaの間の圧力を利用して、銅ベースの粉末は圧縮され得る。加圧された銅ベースの粉末は、例えば約750℃から約1000℃の間の温度で、例えば約50分から約1000分の間の時間、焼結され得る。他の例において、アルミニウムを含むか、本質的にアルミニウムから成るか、またはアルミニウムから成るマトリックス物質200に対して、アルミニウムベースの粉末は、例えば80から400MPaの圧力を利用して圧縮され得る。加圧されたアルミニウムベースの粉末は、例えば約550℃から約620℃の間の温度で、例えば約50分から200分の間の時間、焼結され得る。マトリックス物質200の焼結は、真空環境において、あるいは、例えば窒素、水素もしくはアンモニアを含むか、本質的に窒素、水素もしくはアンモニアから成るか、または窒素、水素もしくはアンモニアから成る環境において実行され得る。
【0025】
マトリックス物質200が鋳造によってマイクロチャネル100の周りで形成される実施形態において、鋳造の温度は、マトリックス物質200の融解点より、例えば約50℃から約200℃の間高くあり得る。例えば、銅を含むか、本質的に銅から成るか、または銅から成るマトリックス物質200に対して、鋳造温度は約1150℃から約1180℃の間であり得る。様々な実施形態において、マイクロチャネル100のネットワークへの損害またはマイクロチャネル100のネットワークの変形を防ぐために、鋳造温度は耐食性物質の融解温度または軟化温度より小さい。従って、マトリックス物質200が鋳造によって形成される実施形態において、マトリックス物質200は典型的に、耐食性物質の融解温度よりも小さい、少なくとも200℃、少なくとも500℃、少なくとも1000℃または少なくとも2000℃さえの融解点を有する。
【0026】
熱交換チャネル210は、鋳造する、加圧する、もしくは焼結する間に形成され得るか、または、マトリックス物質200が耐食性マイクロチャネル100の周りに形成された後に、熱交換チャネル210はマトリックス物質200から加工され得る。熱交換チャネル210は、マイクロチャネル100の直径(例えば約1cmより小さく、もしくは約1mmよりさえ小さい)と匹敵する直径(もしくは他の短手方向の寸法)を有し得るか、または、より大きな直径を有し得、熱交換媒体のより多くの量が熱交換チャネル210の中に導入されることを可能にする。熱交換チャネルは、例えば図3に関連する下記の技術のうちの任意の技術によって形成され得る。
【0027】
他の実施形態において、耐食性マイクロチャネル100および熱伝導性の周囲のマトリックス200は、三次元印刷など付加的な製造技術によって実質的に同時に形成される。耐食性物質がマイクロチャネル100を形成すると共に、全構造(例えば図2に表現された構造)は、耐食性物質およびマトリックス物質から層ごとに製造され得る。そのような実施形態において、マイクロチャネル100の周りを直接囲む領域は、耐食性物質およびマトリックス物質の混合組成物または傾斜組成物から製造さえされ得、それによって両方の物質の有益な性質を活用する。例えば、混合領域または傾斜領域は、マトリックス物質に関連した耐食性物質の、差動熱膨張の任意の有害な影響を緩和するために、マイクロチャネル100のうち一つもしくは複数のうちの全てまたは一部を囲み得る。(様々な実施形態において、耐食性物質およびマトリックス物質の熱膨張係数(例えば、線膨張係数)は二倍以上に、五倍以上に、または十倍以上にさえ異なり得る;係数は、100倍より小さいか、または50倍よりさえ小さく異なり得る。)この混合領域または傾斜領域は、例えば傾斜したステップであり得るかもしくは実質的に直線的に傾斜し得るか、または実質的に均一な、二つの物質の混合物であり得、かつ、ひびが入るかもしくはマイクロチャネルとその周りを囲むマトリックスの一部との間が剥離するなどの損害を防ぐのに十分な、マイクロチャネルからマトリックスに延びる厚さを有し得る;そのような厚さは、マイクロチャネルの特定の配置ならびにマイクロチャネルおよびマトリックスの物質に基づいて、当業者によって容易に決定され得る。様々な実施形態において、混合領域または傾斜領域は、マイクロチャネルの直径(もしくは他の短手方向の寸法)とおよそ等しいかまたは直径よりも小さい距離によって、マイクロチャネルのうちの少なくとも一つの少なくとも一部から外の方に延びる。様々な実施形態において、混合領域もしくは傾斜領域の厚さは約1cmであるかもしくはそれより小さいか、または1mmでさえあるかもしくはそれより小さいか、かつ少なくとも0.05mmであり得る。
【0028】
例示的な実施形態において、印刷ヘッドは、液状バインダーまたは液状粘着剤(典型的にはポリマー物質)を、耐食性物質および/またはマトリックス物質の粒子の粉末床に、マイクロリアクターまたはマイクロリアクターの部分に対しておよそ所望の形状および大きさで層ごとに、分散させるために利用される。各層の後に、バインダーは、例えば熱または光の適用によって硬化され得る。印刷が完了した後、マイクロリアクターは、バインダー物質によって結合された粒子から構成される。マイクロリアクターは、それから、粒子を融合させ、かつバインダー物質のうちいくつかまたは全てを融解し、かつ場合により空の孔(所望される場合;そのような孔は後に他の物質を浸透させられ得る)を残すために焼結され得る。焼結は低い圧力(例えば、少なくとも部分真空)または還元性(例えば、水素もしくは水素含有)雰囲気において実行され得る。焼結の工程はまた、粒子の緻密化およびマイクロリアクターの縮小をもたらす。
【0029】
図3は、本発明の実施形態に従ってマイクロリアクターを製造するための方法300を要約したフローチャートである。示されるように、方法300は様々な異なる処理および製造技術を共に組み合わせ得る。ステップ310において、マイクロチャネルネットワークまたはマイクロチャネルネットワークの部分は、小直径のチューブの製造のために、熱機械的な工程を利用して製造される。そのような熱機械的な工程は、例えば従来の圧延工程および焼鈍工程による耐食性物質の薄いシートの生成を例えば含み得、それに続いて、そのシートをスリットし、成形し、そして溶接(または他の締結工程)して所望のマイクロチャネルの直径の一つまたは複数のチューブにすることを含み得る。あるいは、耐食性シートは、最終的なマイクロチャネルネットワークにおいて所望されるよりも厚い厚さへと圧延され得、成形され得、そして溶接され得て、最終的なマイクロチャネルネットワークにおいて所望されるチューブ(単数または複数)よりも大きいチューブ(単数または複数)になり、かつ、それから、引っ張られかつ/または押し出されて、最終的な所望の大きさのマイクロチャネルになる。
【0030】
ステップ320において、ミキサー、コネクター、反応部などの非管状の特徴または他の非線形および/もしくは非管状の特徴は、三次元印刷など付加的な製造技術によって製造され得る。例えば、印刷ヘッドは、液状バインダーまたは液状粘着剤(典型的にはポリマー物質)を、耐食性物質の粒子の粉末床に、非管状部に対しておよそ所望の形状および大きさで層ごとに分散させるために利用され得る。各層の後に、バインダーは、例えば熱または光の適用によって硬化され得る。プリントが完了した後に、部分は、粒子を融合させるために焼結され得る。三次元印刷に加えて、または三次元印刷の代わりに、他の付加的な製造技術が、マイクロチャネルネットワークの一つまたは複数の部分を製造するために利用され得る。例えば、レーザー粉末形成も利用され得、レーザー粉末形成において、レーザーが、蒸着ヘッドを通るレーザー光線の焦点に同軸に供給された金属粉末(またはワイヤー供給原料)を溶かすために使用される。レーザー粉末形成において、上で部分が製造されるプラットフォームは、部分の各層を製造するためにラスタ様式で動かされ、そして、それから蒸着ヘッドが、各層が完成されるにつれて垂直に上に動かされる。他の例において、選択的なレーザー融解または選択的なレーザー焼結が利用され得、選択的なレーザー融解または選択的なレーザー焼結において、金属粉末は層ごとにプラットフォーム上に散布され、それからレーザーエネルギーの集約適用によって融合される(すなわち、融解または焼結される)。他の例において、電子ビームの付加的な製造において、電子ビームは、部分がニアネットシェイプに達し、かつ部分が加工を終了する準備ができるまで、耐食性物質を(ワイヤー供給原料および/または粉末によって)層ごとに蒸着させるために利用される。
【0031】
ステップ330において、ステップ320における付加的な製造によって製造された特徴は、マイクロリアクターのマイクロチャネルネットワークの内部構造を完成させるために、例えば溶接、ろう付け、締り嵌めなどによって、ステップ310において製造されたマイクロチャネルに結合される。
【0032】
ステップ340において、マイクロチャネルの完成されたネットワークは、マイクロリアクターを形成するためにマトリックス物質内に入れられる。マトリックス物質は、マイクロチャネルネットワークの周りに、例えば鋳造、粉末冶金技術、および/または付加的な製造技術(例えばステップ320と関連する上記の技術のうち任意の技術)によって製造され得る。様々な実施形態において、マトリックス物質は、インベストメント鋳造、砂型鋳造、シェル型鋳造、永久鋳型鋳造、ダイカスト鋳造などの鋳造技術によってマイクロチャネルネットワークの周りに形成される。例えば、マイクロチャネルネットワークは鋳型の空洞内に配置され得、かつ溶解したマトリックス物質が鋳型の空洞の中およびマイクロチャネルネットワークの周りに注がれ得るまたは流しいれられ得る。複数の異なるマトリックス物質は、マイクロリアクターの局所的部分において所望される温度管理の量に応じて、マイクロチャネルネットワークの異なる部分の周りに配置され得る。他の実施形態において、マトリックス物質は粉末冶金技術によってマイクロチャネルネットワークの周りに形成される。例えば、マイクロチャネルネットワークは鋳型内に配置され得、かつ、マイクロチャネルネットワークをその鋳型内に入れるために、粉末にされたマトリックス物質がその鋳型の中に注がれ得る。マトリックス物質粉末は、冷間等方加圧、熱間等方加圧および/または焼結などの技術によって後に押し固められ得る。押し固められた後、完成されたマイクロリアクターは鋳型から取り除かれ得る。鋳造技術と同様に、マトリックス物質の異なる種類またはマトリックス物質の混合物は、マイクロチャネルネットワークの異なる部分の周りに配置され得、かつ、後に押し固められ得る。最後に、他の実施形態において、マトリックス物質は、例えば三次元印刷などの付加的な製造技術によってマイクロチャネルネットワークの上に直接製造され得る。
【0033】
随意のステップ350において、一つまたは複数の熱交換チャネルがマトリックス物質内で形成される。例えば、熱交換チャネルは、ステップ340で形成される、押し固められたマトリックス物質から加工され得るか、あるいは、ステップ340の間にマトリックス物質内で画定され得る。例えば、最終熱交換チャネルの近似の大きさおよび形状を有する犠牲チャネル(またはチューブもしくはロッドさえ)は、マトリックス物質の形成の間に(例えば鋳造鋳型または粉末冶金鋳型において)マトリックス物質内に配置され得、かつ、後に、マトリックス物質が押し固められた後に(例えばエッチングによって)マトリックス物質から取り除かれ得る。むろん、マトリックス物質が付加的な製造技術によって形成される実施形態において、熱交換チャネルは、製造の間マトリックス内に残された、単に物質のない空間であり得る。熱交換チャネルがマトリックスの形成の後にマトリックス物質からできた機構である実施形態において、熱交換チャネルは、例えば放電加工を使用して加工され得、放電加工において、電極とマトリックス物質との間で急速に繰り返される、一連の放電が電極に最も近いマトリックス物質を取り除く;熱交換チャネルの所望の形状を画定するために、電極はマトリックス物質に対して動かされる。
【0034】
本明細書で採用された用語および表現は、説明の用語および表現として使用されるのであって限定の用語および表現として使用されるのではなく、かつ、そのような用語および表現の使用において、示されかつ説明された特徴または特徴の部分の、任意の均等物を排除する意図はない。加えて、本発明の特定の実施形態を説明してきたが、本明細書で開示された概念を援用する他の実施形態が本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく使用され得るということが、当業者に明らかになるだろう。従って、説明された実施形態は、全ての点において単に例示的であり限定的でないと考えられるべきである。

図1
図2
図3