(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688813
(24)【登録日】2020年4月8日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】スプレードライ
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20200421BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20200421BHJP
A23P 10/20 20160101ALI20200421BHJP
A23P 10/30 20160101ALI20200421BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20200421BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
A23L27/00 A
A23L5/00 D
A23L5/00 H
A23P10/20
A23P10/30
A61K9/14
A61K47/12
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-561725(P2017-561725)
(86)(22)【出願日】2016年5月25日
(65)【公表番号】特表2018-522537(P2018-522537A)
(43)【公表日】2018年8月16日
(86)【国際出願番号】EP2016061798
(87)【国際公開番号】WO2016189032
(87)【国際公開日】20161201
【審査請求日】2019年3月27日
(31)【優先権主張番号】61/166,737
(32)【優先日】2015年5月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501105842
【氏名又は名称】ジボダン エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】チェイニー、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】シャーマン、グレゴリー アラン
【審査官】
池上 京子
(56)【参考文献】
【文献】
欧州特許出願公開第00168956(EP,A1)
【文献】
特開昭62−058954(JP,A)
【文献】
特開2013−051964(JP,A)
【文献】
特表2008−514774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00−2/84
A23L 5/00−5/49
A23L 27/00−27/60
A23L 29/00−29/30
A61K 9/00−9/72
A61K 47/00−47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性の、無糖マトリックスへのフレーバーの添加、および、得られた混合物をスプレードライすることを含み、該マトリックスが、乳化剤、膜形成剤、および、クエン酸、グルコン酸および酒石酸の、鉄、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の塩から選択される、少なくとも1種の金属塩を含み、金属塩が、非フレーバー粒子成分の10〜30重量%の濃度で存在する、スプレードライされたフレーバー含有粒子を調製する方法。
【請求項2】
塩が、グルコン酸カリウム、クエン酸三カリウム、酒石酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸マグネシウムおよびグルコン酸第一鉄から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
個々の塩の重量割合が、次:
グルコン酸カリウム 20〜30%
グルコン酸マグネシウム 25%
グルコン酸第一鉄 25%
酒石酸カリウム 25%
クエン酸三カリウム 10〜25%
クエン酸マグネシウム 20〜30%
のとおり選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
1種を超える金属塩が使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
1種を超える塩が、以下の組み合わせ:
クエン酸三カリウムおよびグルコン酸カリウム
クエン酸三カリウムおよび酒石酸カリウム
グルコン酸カリウム、クエン酸三カリウムおよび酒石酸カリウム
の1つから選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
以下の塩の重量割合:
グルコン酸カリウムおよびクエン酸三カリウム(1:2) 30%
グルコン酸カリウムおよびクエン酸マグネシウム(1:2) 30%
グルコン酸カリウムおよびクエン酸三カリウム(1:1) 20%
酒石酸カリウムおよびクエン酸三カリウム(1:1) 20%
グルコン酸カリウム、酒石酸カリウムおよびクエン酸三カリウム(1:1:1) 30%
が使用される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
フレーバーが、粒子の15重量%までの割合で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
マトリックスが、粒子の10〜90重量%を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
無糖マトリックス中にフレーバーを含み、該マトリックスが、乳化剤、膜形成剤、および、クエン酸、グルコン酸および酒石酸の、鉄、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の塩から選択される、少なくとも1種の金属塩を含み、金属塩が、非フレーバー粒子成分の10〜30重量%の濃度で存在する、スプレートライされたフレーバー含有粒子。
【請求項10】
フレーバー含量が、粒子の15重量%までである、請求項9に記載のスプレードライされたフレーバー含有粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、スプレードライ、およびそれによって得られた製造物に関する。
【背景技術】
【0002】
スプレードライは、フレーバーの形成において一般的に使用される技術である。フレーバーは、水溶性のマトリックス材料と混合され、次にそれは加熱雰囲気にスプレーされる。これはスプレーされた粒子を乾燥および凝固し、次にそれは回収され得る。典型的なマトリックス成分は、乳化剤、膜形成剤および/または充填剤および可塑剤を含む。
1つの非常に一般的に使用される可塑剤は、糖である。可塑剤の機能は、低い空隙、増加された密度、および増加された酸化に対する耐性を提供する。糖は、これらのタスクを見事に行う。残念なことに、糖はまた、わずかに吸湿的であり、およびこれは湿度耐性を減少させる。
【発明の概要】
【0003】
今ではこの問題を相当に減少し、さらには完全に排除すること、および優れた湿度耐性、加えて全ての他の所望の性質を有するスプレードライされた粒子を得られることが見出されている。従って、水溶性の、無糖マトリックスへのフレーバーの添加、および、得られた混合物をスプレードライすることを含み、該マトリックスが、乳化剤、膜形成剤、および、クエン酸、グルコン酸および酒石酸の、鉄、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の塩から選択される、少なくとも1種の金属塩を含む、スプレードライされたフレーバー含有粒子を調製する方法が提供される。
さらに、無糖マトリックス中にフレーバーを含み、該マトリックスが、乳化剤、膜形成剤、および、クエン酸、グルコン酸および酒石酸の、鉄、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の塩から選択される、少なくとも1種の金属塩を含む、スプレードライされたフレーバー含有粒子が提供される。
【0004】
マトリックスは、スプレードライされたフレーバー中の使用のため、当該技術分野で知られる任意の通常の材料であってもよい。乳化剤は、所望の表面活性を有する任意の天然材料から選択されてもよい。典型的な例は、タンパク質、および、加工デンプンを含む、デンプンを含む。特定のデンプンは、OSA(octenyl succinate anhydride:オクテニルコハク酸無水物)加工デンプンである。
膜形成剤/充填剤は、任意の適した材料であってもよく、限定しない例は、食品等級(food grade)および商業的に利用される膜形成剤、例えばコーンシロップ固体、アラビアガム、変性セルロース、ゼラチンおよび他の動物性または植物性タンパク質を含み、特定の例はマルトデキストリンである。
金属塩は、よく知られ、および商業的に利用可能な品目である。かかる塩の特定の例は:グルコン酸カリウム、クエン酸三カリウム、酒石酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸マグネシウムグルコン酸マグネシウムおよびグルコン酸第一鉄を含むが、それらに限定されない。特定の例は、グルコン酸カリウムである。
【0005】
1種を超えるかかる塩が使用されてもよい。特定の組み合わせは:
−クエン酸三カリウムおよびグルコン酸カリウム
−クエン酸三カリウムおよび酒石酸カリウム
−グルコン酸カリウム、クエン酸三カリウムおよび酒石酸カリウム
を含む。
塩は、非フレーバー粒子成分(つまり、フレーバーをひいた全ての粒子成分)の10〜30重量%の濃度で使用されてもよい。粒子のマトリックス割合は、10〜90%である。フレーバーは、粒子の15重量%までの割合で存在する。
【0006】
非フレーバー粒子成分の特定の個々の塩の重量割合は:
グルコン酸カリウム 20〜30%
グルコン酸マグネシウム 25%
グルコン酸第一鉄 25%
酒石酸カリウム 25%
クエン酸三カリウム 10〜25%
クエン酸マグネシウム 20〜30%
を含む。
【0007】
非フレーバー粒子成分の塩の重量の特定の組み合わせ:
グルコン酸カリウムおよびクエン酸三カリウム(1:2) 30%
グルコン酸カリウムおよびクエン酸マグネシウム(1:2) 30%
グルコン酸カリウムおよびクエン酸三カリウム(1:1) 20%
酒石酸カリウムおよびクエン酸三カリウム(1:1) 20%
グルコン酸カリウム、酒石酸カリウムおよびクエン酸三カリウム(1:1:1) 30%
【0008】
粒子は、当該技術分野で知られる標準的なスプレードライ装置および典型的な条件を使用して製造されてもよい。条件は、装置の性質(nature)やスプレーされている材料に依存して当然に変化してもよいが、当業者は日常の実験のみで、あらゆるケースにおける適切な条件を容易に決定し得る。条件の典型的な例は、5%未満の含水量、および、25℃で0.05〜0.30の所望の範囲における水分活性を有する乾燥粉末を製造する。水分活性(A
w)は、水の標準状態の部分蒸気圧により除される、物質中の水の部分蒸気圧である。それは密閉室中の試料の相対湿度の測定である−基本的に、A
wは、試料材料より放出された平衡湿度である。
【0009】
従来の高い塔形状の(tall-form tower)スプレードライヤーの使用のための典型的なパラメータは:
入口温度−120〜180℃
出口温度−70〜95℃
である。
仕上がりの材料径は、レーザー回折式粒径装置により測定されるとおりの体積分布により、平均直径20〜200μmであるべきである。
本開示は、以下の限定しない例に関してさらに記載される。
【実施例】
【0010】
例1:テストマトリックスの調製
テストマトリックスをCapsul
TM1450、オクテニルコハク酸ナトリウム加工デンプン、および、10:90の重量割合における25DEマルトデキストリンを混合することにより調製した。これを対照として使用した。塩が添加された場合、マルトデキストリンの割合は、添加される塩の割合だけ減少される。塩を、表1に示す。
【0011】
表1:塩試料の概要
【表1】
【0012】
全てのケースにおける増量剤は、マトリックス+D−リモネンの塩への、マトリックス+塩の15%の率での添加であった。
粒子を、加工デンプン、マルトデキストリンおよび(適用可能な場合)塩/塩混合物を温水(40℃)中に混合することにより調製した。これに、D−リモネンを添加し、および高剪断混合に処した混合物を、レーザー回折式粒径分析器により測定で1.0ミクロン未満の平均粒径に乳化した。
次に、エマルジョンを、回転アトマイザーおよび蠕動送液ポンプを備えたAnhydro PSD55スプレードライユニットを使用してスプレードライした。入口および出口温度は、それぞれ170℃(±5℃)および95℃(±3℃)であった。粉末を、サイクロンセパレーターを用いて回収した。
【0013】
例2:酸化的安定性のテスト
様々な粒子を、様々な期間の貯蔵後に残っているD−リモネンの割合を決定することにより、酸化的安定性をテストした。試料を、40℃で、および相対湿度30%で、水吸収に対するバリアを提供しないタイプのLDPE袋中で貯蔵した。試料を、GCおよびMSにより分析した。対照試料に加えて、同一のマトリックスを使用して製造し、同一の条件と装置を使用して製造したが、塩の代わりに糖を有し、1つは糖50%を有し、他は糖40%を有する、2つの粒子も含んだ。これらを、それぞれS1およびS2と指定した。
【0014】
結果を、表2および3に示す。表2は、残っているD−リモネンの割合を示し、および表3は、存在する酸化副生成物の割合を示す。許容し得るD−リモネン損失は、当初の割合の10%未満であり(つまり、13.5%を上回るリモネン含量)、または酸化副生成物の割合が当初のリモネン割合の2.5%を超えた場合(試料が感覚刺激性を失ったレベルの場合)、さらなる測定は行わなかった。
【0015】
表2:塩試料の概要
試料D−リモネン分析値の安定性研究結果
【表2】
【0016】
表3
【表3】
【0017】
表から、
(i)対照および2つの糖を含有する試料は、早期に失った。
(ii)特に良い結果が、試料4、5、19、21および22、つまり:
クエン酸マグネシウム10%、マンニトール20%
クエン酸マグネシウム20%&グルコン酸カリウム10%
グルコン酸カリウム10%&クエン酸三カリウム10%
クエン酸三カリウム10%&酒石酸カリウム10%
グルコン酸カリウム10%、クエン酸三カリウム10%&酒石酸カリウム10%
から得られたことがわかる。
他の塩の多くは、短期の貯蔵時間は許容し得る。