(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記規制部は、前記スリーブの内部に設けられた一対のストッパであり、前記スリーブの一対の前記ストッパの間に前記係合部材が挿入されている、請求項1又は2に記載の連結部材。
前記規制部は、前記スリーブの内周面に形成された縮径部であり、前記係合部材には、前記縮径部に当接する拡径部が形成されている、請求項1又は2に記載の連結部材。
前記係合部材は軸周りに回転可能とされており、前記係合部材が軸周りに回転することにより、前記係合部材の前記被螺合部に対する前記ロッドの前記螺合部の螺合量が調整可能とされている、請求項1又は2に記載の連結部材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている歯科装具において、伸縮ロッドの長さを調整するナットは、伸縮ロッドを最も短くした際に接続部材と当接するストッパとしても用いられている。しかし、特許文献1に開示されている歯科装具では、外側に別部材であるナットが設けられているため歯科装具が大型化していた。
【0006】
また、特許文献2に開示されている歯科装具では、咬合システムが留め金具によって上顎装具及び下顎装具に固定されている。このため、上顎装具と下顎装具とを分離するには留め金具を専用の冶具等を用いて破壊するなどして取外す必要があり、下顎装具のみを交換したい場合等に時間及び手間がかかっていた。
【0007】
したがって、本開示の第1の態様は、小型の連結部材、及びこの連結部材を備えるマウスピースを提供することを目的とする。
また、本開示の第2の態様は、連結されている上顎用アタッチメントと下顎用アタッチメントとを容易に分離することができるマウスピースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の態様としては、以下の実施態様<1>〜<10>が挙げられる。
本開示の第2の態様としては、以下の実施態様<11>〜<16>が挙げられる。
【0009】
<1>上顎又は下顎の一方に装着される第1アタッチメントに設けられた第1取付部に軸方向一端部が連結された摺動部材と、上顎又は下顎の他方に装着される第2アタッチメントに設けられた第2取付部に軸方向一端部が連結され、摺動部材が摺動可能に挿入されるとともに、摺動部材の軸方向における両方向の摺動を規制する規制部が軸方向両端部の間に形成されたスリーブと、を備える連結部材。
【0010】
上記<1>の構成によれば、スリーブ内で摺動部材が摺動することで連結部材を第1アタッチメント及び第2アタッチメントの動きに追随させることができる。このとき、連結部材の摺動部材は、スリーブの軸方向両端部の間に形成された規制部によって軸方向における両方向の摺動を規制される。
【0011】
ここで、摺動部材はスリーブ内に設けられているため、スリーブの外部にナットのような係合部材を設ける構成と比較して連結部材を小型化することができる。なお、本開示において、「軸方向両端部の間」とは、スリーブの軸方向一端面から軸方向他端面までの間、すなわちスリーブの軸方向両端面より軸方向内側を指す。
【0012】
<2>第1取付部は、第1アタッチメントの外壁面に突出形成され、第2取付部は、第2アタッチメントの外壁面に突出形成されており、摺動部材は、軸方向一端部が第1取付部に連結され、軸方向他端部に螺合部が形成されたロッドと、ロッドの螺合部が螺合された被螺合部が軸方向一端部の内周面に形成された筒状の係合部材と、で構成されている、<1>に記載の連結部材。
【0013】
上記<2>の構成によれば、ロッドの螺合部の係合部材の被螺合部への螺合量を調整することで、連結部材の長さを調整して第1アタッチメントと第2アタッチメントの相対位置を調整することができる。また、スリーブ内で係合部材が摺動することで連結部材を第1アタッチメント及び第2アタッチメントの動きに追随させることができる。
【0014】
<3>規制部は、スリーブの外周面に軸方向に沿って形成されたスリットであり、係合部材の軸方向他端部の外周面には、スリット内に挿入される突起が形成されている、<2>に記載の連結部材。
【0015】
上記<3>の構成によれば、係合部材の外周面に形成された突起がスリーブの外周面に形成されたスリットの両端部に当接することにより、係合部材の摺動が規制される。このとき、係合部材の突起はスリーブのスリット内を移動するため、係合部材がスリーブに対して軸周りに回転することを抑制しつつ、連結部材を第1アタッチメント及び第2アタッチメントの動きに追随させることができる。
【0016】
<4>一対のスリットが、スリーブの外周面の対向する位置に形成されている、<3>に記載の連結部材。
【0017】
上記<4>の構成によれば、係合部材の突起が挿入されるスリットがスリーブの外周面の対向する位置にそれぞれ形成されている。このため、係合部材がスリーブに対して軸周りに回転することを、より抑制することができる。
【0018】
<5>規制部は、スリーブの内部に設けられた一対のストッパであり、スリーブの一対のストッパの間に係合部材が挿入されている、<2>に記載の連結部材。
【0019】
上記<5>の構成によれば、スリーブの内部に設けられた一対のストッパ間に係合部材が挿入されているため、ストッパによって係合部材の軸方向における両方向の摺動が規制される。なお、ストッパはスリーブの内部に設けられているため、スリーブの外部にストッパが設けられている構成と比較して連結部材を小型化することができる。
【0020】
<6>規制部は、スリーブの内周面に形成された縮径部であり、係合部材には、縮径部に当接する拡径部が形成されている、<2>に記載の連結部材。
【0021】
上記<6>の構成によれば、スリーブの内周面に縮径部が形成され、係合部材に拡径部が形成されている。このため、係合部材の拡径部がスリーブの縮径部に当接することにより、係合部材の軸方向における両方向の摺動が規制される。なお、係合部材の拡径部がスリーブ内で縮径部に当接するため、係合部材の拡径部がスリーブ外でスリーブに当接する構成と比較して連結部材を小型化することができる。
【0022】
<7>係合部材は軸周りに回転可能とされており、係合部材が軸周りに回転することにより、係合部材の被螺合部に対するロッドの螺合部の螺合量が調整可能とされている、<2>、<5>、<6>のいずれか1つに記載の連結部材。
【0023】
上記<7>の構成によれば、係合部材を軸周りに回転させることにより、ロッドを軸周りに回転させることなく係合部材の被螺合部に対するロッドの螺合部の螺合量を調整することができる。このため、ロッドの軸方向一端部が第1取付部に連結された状態で、連結部材の長さを調整することができる。
【0024】
<8>スリーブの軸方向一端部は開放されており、係合部材の軸方向他端部には、冶具が挿入される挿入空間が形成されている、<2>、<5>〜<7>のいずれか1つに記載の連結部材。
【0025】
上記<8>の構成によれば、スリーブの軸方向一端部から係合部材の挿入空間に冶具を挿入し、冶具を軸周りに回転させることにより、係合部材を軸周りに回転させることができる。これにより、ロッドを軸周りに回転させることなく係合部材に対するロッドの位置を調整することができるため、第1アタッチメントの第1取付部にロッドが連結された状態で、連結部材の長さを調整することができる。
【0026】
<9>ロッドの螺合部は、目盛が形成された雄ねじ部であり、係合部材の被螺合部は、雌ねじ部であり、係合部材の軸方向一端部の外周面には開口が形成されている、<2>〜<8>のいずれか1つに記載の連結部材。
【0027】
上記<9>の構成によれば、ロッドの雄ねじ部の係合部材の雌ねじ部への螺合量を調整することで、連結部材の長さを調整することができる。ここで、ロッドに目盛が形成され、係合部材の軸方向一端部の外周面に開口が形成されているため、係合部材の開口から目盛を目視することで、雄ねじ部の雌ねじ部への螺合量を目視で確認することができる。
【0028】
<10>第1アタッチメントとしての下顎用アタッチメントと、第2アタッチメントとしての上顎用アタッチメントと、下顎用アタッチメントの外壁面から突出する第1取付部と、上顎用アタッチメントの外壁面から突出する第2取付部と、<1>〜<9>のいずれか1つに記載の連結部材と、を備えるマウスピース。
【0029】
上記<10>の構成によれば、マウスピースは<1>〜<9>のいずれか1つに記載の連結部材、すなわち、スリーブ内に挿入された係合部材の摺動がスリーブの軸方向両端部の間に形成された規制部によって規制される連結部材を備えている。このため、スリーブの外部にナットのような係合部材が設けられた連結部材を備える構成と比較して、マウスピースを小型化することができる。
【0030】
<11>上顎に装着される上顎用アタッチメントと、下顎に装着される下顎用アタッチメントと、上顎用アタッチメントに設けられた上取付部と、下顎用アタッチメントに設けられた下取付部と、上取付部と下取付部とに取付けられ、上顎用アタッチメント及び下顎用アタッチメントの上顎及び下顎への装着状態における取付角度では、上取付部及び下取付部に対して着脱が抑制され、上顎用アタッチメント及び下顎用アタッチメントの上顎及び下顎への非装着状態における取付角度では、上取付部又は下取付部の少なくとも一方に対して着脱可能とされた連結部材と、を備えるマウスピース。
【0031】
上記<11>の構成によれば、上顎及び下顎への上顎用アタッチメント及び下顎用アタッチメントの非装着状態における取付角度では、連結部材が上取付部又は下取付部の少なくとも一方に対して着脱可能とされているため、上顎用アタッチメントと下顎用アタッチメントとを容易に分離することができる。
【0032】
一方、上顎用アタッチメント及び下顎用アタッチメントの上顎及び下顎への装着状態における取付角度では、連結部材は上取付部及び下取付部に対して着脱が略不可能な程度まで抑制されているため、上顎用アタッチメントと下顎用アタッチメントとの連結状態を維持することができる。
【0033】
<12>上取付部は、上顎用アタッチメントの外壁面に突出形成され、下取付部は、下顎用アタッチメントの外壁面に突出形成されている、<11>に記載のマウスピース。
【0034】
上記<12>の構成によれば、上取付部及び下取付部が上顎用アタッチメント及び下顎用アタッチメントの外壁面にそれぞれ突出形成されているため、上取付部及び下取付部に連結部材を取付けることが容易となる。また、上取付部及び下取付部が上顎用アタッチメント及び下顎用アタッチメントの内壁面等に設けられている構成と比較して、上取付部及び下取付部に連結部材を取付けた際に、連結部材によって舌の動きが阻害されることを抑制することができる。
【0035】
<13>上取付部又は下取付部の少なくとも一方は、長軸及び短軸を有するフランジ部が先端近傍に設けられた軸部を備えており、連結部材は、フランジ部に係合され、長径がフランジ部の長軸の長さより長く、短径がフランジ部の短軸の長さより長くフランジ部の長軸の長さより短いアイレット部を有する、<11>又は<12>に記載のマウスピース。
【0036】
上記<13>の構成によれば、上取付部又は下取付部の少なくとも一方に長軸及び短軸を有するフランジ部が設けられており、連結部材のアイレット部は、長径がフランジ部の長軸の長さより長く、短径がフランジ部の短軸の長さより長くフランジ部の長軸の長さより短くされている。
【0037】
このため、連結部材のマウスピースに対する取付角度、すなわちアイレット部のフランジ部に対する取付角度を変えることで、連結部材の着脱を可能としたり着脱を抑制したりすることができる。
【0038】
<14>フランジ部の長軸方向と、アイレット部の長径方向とを揃えた場合に、アイレット部がフランジ部を通過可能とされている、<13>に記載のマウスピース。
【0039】
上記<14>の構成によれば、フランジ部の長軸方向と、アイレット部の長径方向とを揃えた場合に、アイレット部がフランジ部を通過可能とされている。このため、上顎及び下顎への上顎用アタッチメント及び下顎用アタッチメントの非装着状態で、アイレット部の長径方向とフランジ部の長軸方向とを揃えることにより、連結部材のアイレット部を上取付部又は下取付部のフランジ部から取外すことができる。
【0040】
一方、上顎及び下顎への上顎用アタッチメント及び下顎用アタッチメントの装着状態では、フランジ部の長軸方向とアイレット部の長径方向とが揃わないようにしておくことで、アイレット部をフランジ部から取外すことは略不可能となる。このため、上顎用アタッチメントと下顎用アタッチメントとの連結状態を維持することができる。
【0041】
<15>フランジ部は、アイレット部の相似形とされている、<13>又は<14>に記載のマウスピース。
【0042】
上記<15>の構成によれば、フランジ部がアイレット部の相似形とされているため、フランジ部の角度とアイレット部の角度とが略一致する位置でのみ、フランジ部がアイレット部に対して通過可能となる。一方、フランジ部の角度とアイレット部の角度とがずれた場合には、アイレット部はフランジ部を略通過不可能となる。
【0043】
<16>フランジ部及びアイレット部は、楕円形状とされている、<15>に記載のマウスピース。
【0044】
上記<16>の構成によれば、フランジ部及びアイレット部を楕円形状としている。このため、フランジ部及びアイレット部を複雑な形状とすることなく、連結部材の着脱を可能としたり着脱を抑制したりすることができる。
【0045】
<17>アイレット部の長径方向は、連結部材の長手方向とされており、フランジ部は、上顎用アタッチメントの下顎用アタッチメントに対向する対向面、又は下顎用アタッチメントの上顎用アタッチメントに対向する対向面に対する長軸の角度が、10度から60度の範囲外とされている、<13>〜<16>のいずれか1つに記載のマウスピース。
【0046】
上記<17>の構成によれば、上顎及び下顎への上顎用アタッチメント及び下顎用アタッチメントの装着状態では、連結部材の上取付部又は下取付部への取付角度(アイレット部の長径の角度)は、約10度〜60度となる。このため、上顎用アタッチメント又は下顎用アタッチメントの対向面に対するフランジ部の長軸の角度を10度〜60度の範囲外とすることで、上顎用アタッチメント及び下顎用アタッチメントの上顎及び下顎への装着状態において、アイレット部がフランジ部から外れることを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0047】
第1の態様によれば、小型の連結部材、及びこの連結部材を備えるマウスピースを提供することができる。
第2の態様によれば、連結されている上顎用アタッチメントと下顎用アタッチメントとを容易に分離することができるマウスピースを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本明細書において、「奥方」とは、マウスピースを装着した際の奥歯(例えば歯列4〜8番)側、すなわち口蓋側を指す。また、「左右」とは、歯列の中心、すなわち歯列1番を正面に見た際の左右側を指す。
【0050】
以下、本開示の第1の態様、及び第2の態様の一例について図面を参照しながら説明するが、本開示は図面に示す態様に限定されるものではない。なお、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0051】
[第1の態様]
本開示の第1の態様に係る連結部材は、上顎又は下顎の一方に装着される第1アタッチメントに設けられた第1取付部に軸方向一端部が連結された摺動部材と、上顎又は下顎の他方に装着される第2アタッチメントに設けられた第2取付部に軸方向一端部が連結され、摺動部材が摺動可能に挿入されるとともに、摺動部材の軸方向における両方向の摺動を規制する規制部が軸方向両端部の間に形成されたスリーブと、を備える。
【0052】
第1の態様によれば、連結部材の摺動部材がスリーブ内に設けられているため、スリーブの外部にナットのような係合部材を設ける構成と比較して、連結部材を小型化することができる。
【0053】
<第1実施形態>
以下、第1の態様の第1実施形態に係るマウスピースについて、
図1〜
図3Cを用いて説明する。
【0054】
(マウスピース)
本実施形態のマウスピース10は、例えばいびきや歯軋り、睡眠時の無呼吸等を低減又は防止するために用いられる睡眠時無呼吸症候群用のマウスピースであり、
図1に示すように、上顎の歯列に装着される上顎用アタッチメント(第2アタッチメントの一例)12と、下顎の歯列に装着される下顎用アタッチメント(第1アタッチメントの一例)14と、を備えている。
【0055】
上顎用アタッチメント12及び下顎用アタッチメント14は、例えばアクリル樹脂で構成されているが、曲げ弾性率が2000MPa以上3000MPa以下の単一の硬い材料や、10MPa以上300MPa以下の柔らかい材料と1000MPa以上3000MPa以下の硬い材料とを組み合わせた材料によって構成されていてもよい。
【0056】
なお、上顎用アタッチメント12及び下顎用アタッチメント14は、引張強度150N以上2000N未満、特に150N以上500N以下の比較的柔らかい材料で構成されていてもよく、その場合、マウスピース10の装着時において上顎用アタッチメント12及び下顎用アタッチメント14の歯への追従性を高くすることができる。
【0057】
なお、引張強度は、ニッシン標準模型を用いて作製したマウスピース(厚さ3mm)の上顎用アタッチメントにおける歯列6番にφ1.5mmの穴を開け、臼歯方向(すなわち歯列の後ろ方向)に引張試験をした際に裂けた強度をいう。
【0058】
引張強度150N以上2000N未満の材料としては、例えば、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系ゴム樹脂が挙げられ、中でもオレフィン系樹脂が好ましい。
【0059】
オレフィン系樹脂は、オレフィンを単独重合してなる重合体、又はオレフィンと他の単量体とを重合してなる共重合体である。オレフィンとしては、炭素数が2〜6のオレフィンが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、メチルペンテン、ヘキセンが挙げられる。他の単量体としては、例えば、酢酸ビニルが挙げられる。
【0060】
オレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリプロピレン系樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)が好ましく、特に好ましくはポリエチレン(PE)、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリプロピレン系樹脂である。
【0061】
ポリエステル系樹脂は、多価カルボン酸(ジカルボン酸)とポリアルコール(ジオール)との重縮合体であり、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。また、ウレタン系樹脂は、イソシアネート基を有する化合物と水酸基を有する化合物との重縮合体であり、例えば、熱可塑性ポリウレタン(TPU)が挙げられる。
【0062】
ポリアミド系樹脂は、アミド結合によって多数のモノマーが結合してできたポリマーであり、例えば、ナイロン、パラ系アミド、メタ系アミドが挙げられる。また、アクリル系ゴム樹脂は、アクリル系ゴムを主成分としたものであり、例えば、メタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルのブロック共重合体が挙げられる。
【0063】
引張強度150N以上2000N未満の材料としては、市販されているものを用いてもよく、例えば、ポリプロピレン樹脂としてプライムポリマー株式会社製のF327等を用いてもよい。
【0064】
上顎用アタッチメント12の歯列の中心から見て左右奥方(本実施形態では歯列6番〜7番)の外壁面12Aには、外壁面12Aから突出するように金属製の上取付部16(第2取付部の一例)が設けられている。
【0065】
一方、下顎用アタッチメント14の歯列の中心から見て左右奥方(本実施形態では歯列3番〜4番)の外壁面14Aには、外壁面14Aから突出するように金属製の下取付部18(第1取付部の一例)が設けられている。
【0066】
上取付部16は、一端が上顎用アタッチメント12の外壁面12Aに固定された円柱形状の軸部20と、軸部20の他端(先端)に設けられたフランジ部22と、を備えている。なお、フランジ部22は、長軸及び短軸を有する楕円形状とされている。また、
図3に示すように、上顎用アタッチメント12の下顎用アタッチメント14に対向する対向面12Bに対するフランジ部22の長軸の角度は、約90度とされている。
【0067】
同様に、下取付部18は、軸部24と、軸部24の先端に設けられた楕円形状のフランジ部26と、を備えている。また、
図3に示すように、下顎用アタッチメント14の上顎用アタッチメント12に対向する対向面14Bに対するフランジ部26の長軸の角度は、約90度とされている。なお、対向面12B、14Bに対するフランジ部22、26の長軸の角度は、10度〜60度の範囲外とされていればよい。
【0068】
また、右の上取付部16と右の下取付部18、及び左の上取付部16と左の下取付部18には、それぞれ金属製の連結部材28が上取付部16、下取付部18の軸周りに回転可能に連結される。連結部材28は、上顎用アタッチメント12と下顎用アタッチメント14とを開閉可能に連結するとともに、上顎用アタッチメント12に対して下顎用アタッチメント14が歯列の奥方へ移動しないように位置決めする。
【0069】
本実施形態のマウスピース10は、歯列の中心からみて、上取付部16が下取付部18よりも奥方(奥歯側)とされている。すなわち、マウスピース10は、装着時に連結部材28によって下顎用アタッチメント14(下顎)を前に押し出すPush型とされている。
【0070】
(連結部材)
連結部材28は、
図2A及び
図2Bに示すように、軸方向両端部が開放された筒状のスリーブ30と、スリーブ30内に摺動可能に設けられた筒状の係合部材32と、係合部材32に係合されるロッド34と、を備えている。なお、係合部材32とロッド34とによって摺動部材が構成されている。
【0071】
スリーブ30の外周面の軸方向両端部の間には、軸方向に沿ってスリット30A(規制部の一例)が形成されている。また、スリーブ30の軸方向上端部(
図2Aにおける左端部)の軸心からオフセットした位置には、
図1における上取付部16のフランジ部22に係合される楕円形状の上側アイレット部30Bが形成されている。
【0072】
上側アイレット部30Bは、長径の方向が連結部材28の長手方向(すなわちスリーブ30の軸方向)と同じ方向とされており、大きさがフランジ部22より一回り大きくされたフランジ部22の相似形とされている。具体的には、上側アイレット部30Bの長径の長さL1は、
図3Bに示すフランジ部22の長軸の長さR1より長くされている。
【0073】
一方、上側アイレット部30Bの短径の長さL2は、
図3Bに示すフランジ部22の短軸の長さR2より長く、かつフランジ部22の長軸の長さR1より短くされている。このため、上側アイレット部30Bは、長径の方向とフランジ部22の長軸の方向とが揃う位置でのみフランジ部22に着脱可能とされている。
【0074】
係合部材32の軸方向上端部(
図2Aにおける左端部)の外周面には、突起32Aが突出形成されている。突起32Aは、直径がスリーブ30のスリット30Aの幅より一回り小さく、スリット30A内に摺動可能に挿入されている。また、係合部材32の軸方向下端部(
図2Bにおける右端部)の内周面には雌ねじ部32Bが形成されており、軸方向下端部の外周面には開口32Cが形成されている。
【0075】
ロッド34の軸方向上端部(
図2Aにおける左端部)には、係合部材32の雌ねじ部32Bに螺合される雄ねじ部34Aが形成されている。雄ねじ部34Aの一部には、軸方向に沿って非ねじ部36が設けられており、非ねじ部36には目盛36Aが形成されている。
【0076】
一方、ロッド34の軸方向下端部(
図2Aにおける右端部)には、
図1における下取付部18のフランジ部26に係合される楕円形状の下側アイレット部34Bが形成されている。下側アイレット部34Bは、一例としてロッド34の軸心上に形成されており、長径の方向が連結部材28の長手方向(すなわちロッド34の軸方向)と同じ方向とされている。
【0077】
また、上側アイレット部30Bと同様に、下側アイレット部34Bの大きさはフランジ部26より一回り大きくされたフランジ部26の相似形とされている。具体的には、下側アイレット部34Bの長径の長さL1は、
図3Bに示すフランジ部26の長軸の長さR1より長くされている。
【0078】
さらに、下側アイレット部34Bの短径の長さL2は、
図3Bに示すフランジ部26の短軸の長さR2より長く、かつフランジ部26の長軸の長さR1より短くされている。このため、下側アイレット部34Bは、長径の方向とフランジ部26の長軸の方向とが揃う位置でのみフランジ部26に着脱可能とされている。
【0079】
連結部材28は、ロッド34を軸周りに回転させて雄ねじ部34Aの係合部材32の雌ねじ部32Bへの螺合量を調整することにより、長さが無段階に調整される。また、連結部材28は、係合部材32がスリーブ30内を摺動することにより、上顎用アタッチメント12及び下顎用アタッチメント14の動きに追随する。
【0080】
このとき、係合部材32の突起32Aがスリーブ30のスリット30Aの両端部(
図2Aにおける左右端部)に当接することによって、係合部材32の軸方向における両方向の摺動が規制される。なお、上取付部16と下取付部18との距離(中心間距離)は、連結部材28によって約18mm〜50mmの間で調整される。
【0081】
(作用、効果)
マウスピース10は、
図1に示すように、上側アイレット部30Bが軸部20に掛かり、下側アイレット部34Bが軸部24に掛かることにより、上顎用アタッチメント12と下顎用アタッチメント14とが連結部材28によって連結された状態で歯列へ装着される。
【0082】
このとき、
図2A及び
図2Bにおける雄ねじ部34Aの雌ねじ部32Bへの螺合量を調整することによって、上顎用アタッチメント12に対して下顎用アタッチメント14が歯列の奥方とならないように下顎用アタッチメント14の位置を調整する。なお、雄ねじ部34Aの螺合量は、係合部材32の開口32Cからロッド34の非ねじ部36に形成された目盛36Aを目視することにより確認する。
【0083】
閉口時には、
図3Aに示すように、係合部材32の突起32Aがスリーブ30のスリット30Aの上端部(
図3Aにおける右端部)に当接することにより、下顎用アタッチメント14の歯列の奥方(
図3Aにおける右方)への移動が規制される。
【0084】
また、閉口時には、連結部材28の取付角度M、すなわち、上顎用アタッチメント12の対向面12Bに対する上側アイレット部30Bの長径の角度及び下顎用アタッチメント14の対向面14Bに対する下側アイレット部34Bの長径の角度は、約10度となる。
【0085】
ここで、フランジ部22、26の長軸の対向面12B又は対向面14Bに対する角度は約90度とされているため、フランジ部22、26の長軸の角度と上側アイレット部30B、下側アイレット部34Bの長径の角度は揃わない。
【0086】
このため、閉口時には、上側アイレット部30B、下側アイレット部34Bはフランジ部22、26を略通過不可能となる。すなわち、連結部材28を上取付部16及び下取付部18から取外すことは略不可能であり、上顎用アタッチメント12と下顎用アタッチメント14との連結状態が維持される。
【0087】
同様に、開口時には、
図3Bに示すように、連結部材28の取付角度N、すなわち、上顎用アタッチメント12の対向面12Bに対する上側アイレット部30Bの長径の角度及び下顎用アタッチメント14の対向面14Bに対する下側アイレット部34Bの長径の角度は、約40〜60度となる。
【0088】
ここで、フランジ部22、26の長軸の対向面12B又は対向面14Bに対する角度は約90度とされているため、フランジ部22、26の長軸の角度と上側アイレット部30B、下側アイレット部34Bの長径の角度は揃わない。
【0089】
このため、開口時にも、上側アイレット部30B、下側アイレット部34Bはフランジ部22、26を略通過不可能となる。すなわち、連結部材28を上取付部16及び下取付部18から取外すことは略不可能であり、上顎用アタッチメント12と下顎用アタッチメント14との連結状態が維持される。
【0090】
なお、開口時には、係合部材32がスリーブ30内を摺動することにより、連結部材28が上顎用アタッチメント12及び下顎用アタッチメント14の動きに追随する。このとき、係合部材32の突起32Aは、スリーブ30のスリット30Aの上端部から下方(
図3Bにおける左方)へ移動し、スリット30Aの下端部(
図3Bにおける左端部)に当接する。
【0091】
上顎用アタッチメント12及び下顎用アタッチメント14(上取付部16及び下取付部18)に対して連結部材28を着脱する場合には、まず、マウスピース10を歯列から取外す。そして、
図3Cに示すように、連結部材28の取付角度が約90度となるように上顎用アタッチメント12と下顎用アタッチメント14とを互いに略水平方向に離間させる。
【0092】
このとき、上顎用アタッチメント12の対向面12Bに対する上側アイレット部30Bの長径の角度、及び下顎用アタッチメント14の対向面14Bに対する下側アイレット部34Bの長径の角度も約90度となる。
【0093】
すなわち、フランジ部22、26の長軸の角度と上側アイレット部30B、下側アイレット部34Bの長径の角度とが揃い、上側アイレット部30B、下側アイレット部34Bがフランジ部22、26を通過可能となる。このため、連結部材28を上取付部16及び下取付部18から取外すことができる。
【0094】
本実施形態によれば、ロッド34を軸周りに回転させることにより、雄ねじ部34Aの雌ねじ部32Bへの螺合量が調整される。ここで、ロッド34は、下側アイレット部34Bがフランジ部26に係合された状態では、軸周りに略回転不可能とされている。このため、マウスピース10の歯列への装着時において、ロッド34が回転して連結部材28の長さが不必要に変わることを防ぐことができる。
【0095】
また、本実施形態によれば、スリーブ30内に設けられた係合部材32の突起32Aを、スリーブ30の軸方向両端部の間に形成されたスリット30Aの両端部に当接させることで、係合部材32の軸方向における両方向の摺動を規制している。
【0096】
このため、スリーブ30の外部にナットのような係合部材を設けたり、スリーブ30の外側端部に係合部材32やロッド34を当接させたりする構成と比較して、連結部材28及びマウスピース10を小型化することができる。
【0097】
なお、係合部材32の突起32Aがスリーブ30のスリット30A内を軸方向に移動する。このため、係合部材32がスリーブ30内を摺動する際に、スリーブ30に対して軸周りに回転することを抑制することができる。
【0098】
また、本実施形態によれば、係合部材32の開口32Cからロッド34の非ねじ部36に形成された目盛36Aを目視することができる。このため、ロッド34の雄ねじ部34Aを係合部材32の雌ねじ部32Bへ螺合した際に、雄ねじ部34Aの螺合量を確認することができる。
【0099】
また、本実施形態によれば、上取付部16及び下取付部18に楕円形状のフランジ部22、26が設けられており、連結部材28の上側アイレット部30B及び下側アイレット部34Bがフランジ部22、26より一回り大きい楕円形状(すなわち相似形)とされている。
【0100】
さらに、上顎用アタッチメント12又は下顎用アタッチメント14の対向面12B、14Bに対するフランジ部22、26の長軸の角度が、連結部材28の取付角度の範囲外である約90度とされている。
【0101】
このため、マウスピース10の歯列への装着状態では、上側アイレット部30B及び下側アイレット部34Bはフランジ部22、26に対して着脱が略不可能な程度まで抑制され、上顎用アタッチメント12と下顎用アタッチメント14との連結状態を維持することができる。
【0102】
一方、マウスピース10の歯列への非装着状態では、上側アイレット部30B及び下側アイレット部34Bがフランジ部22、26に対して容易に着脱可能となる。つまり、マウスピース10に対する取付角度を変えるだけで、連結部材28を容易に着脱可能な状態及び着脱が抑制された状態に切替えることができる。
【0103】
このため、上側アイレット部30B及び下側アイレット部34Bとフランジ部22、26とが接着もしくは螺合等されている構成と比較して、上顎用アタッチメント12と下顎用アタッチメント14とを容易に分離することができ、メンテナンスや交換をすることが可能となる。
【0104】
また、上側アイレット部30B及び下側アイレット部34Bが楕円形状であるため、マウスピース10の歯列への装着時において、上取付部16の軸部20と上側アイレット部30B、及び下取付部18の軸部24と下側アイレット部34Bの間に隙間が形成される。この隙間内を軸部20、24が摺動することにより、上顎用アタッチメント12及び下顎用アタッチメント14の動きに連結部材28をより追随させることができる。
【0105】
<第2実施形態>
次に、第1の態様の第2実施形態に係るマウスピースの連結部材38について、
図4Aを用いて説明する。なお、第1実施形態の連結部材28と同様の構成については、説明を省略する。
【0106】
図4Aに示すように、連結部材38は、軸方向両端部が開放された筒状のスリーブ40と、スリーブ40内に摺動可能に設けられた筒状の係合部材42と、係合部材42に係合されるロッド44と、を備えている。なお、係合部材42とロッド44とによって摺動部材が構成されている。
【0107】
スリーブ40の外周面の軸方向両端部の間には、スリーブ40の軸方向に沿って一対のスリット40A(規制部の一例)が互いに対向する位置に形成されている。一方、係合部材42の軸方向上端部(
図4Aにおける左端部)には、係合部材42を径方向に貫通するように円柱形状のピン46が取付けられている。
【0108】
ピン46の直径は、スリーブ40のスリット40Aの幅より一回り小さくされており、ピン46の両端部は、係合部材42の外周面から突出して一対のスリット40A内にそれぞれ摺動可能に挿入されている。
【0109】
連結部材38は、係合部材42がスリーブ40内を摺動することにより長さが可変とされている。このとき、係合部材42に取付けられているピン46が、スリーブ40のスリット40Aの両端部(
図4Aにおける左右端部)に当接することにより、係合部材42の軸方向における両方向の摺動が規制される。
【0110】
本実施形態によれば、係合部材42に取付けられたピン46をスリーブ40の軸方向両端部の間に形成されたスリット40Aの両端部に当接させることで、スリーブ40内における係合部材42の軸方向における両方向の摺動を規制している。このため、スリーブ40の外にナットのような係合部材を設けたり、スリーブ40の外側端部に係合部材42やロッド44を当接させたりする構成と比較して、連結部材38を小型化することができる。
【0111】
また、ピン46の両端部がスリーブ40の外周面に設けられた一対のスリット40Aにそれぞれ挿入されているため、係合部材42がスリーブ40内を摺動する際に、スリーブ40に対して軸周りに回転することをより抑制することができる。
【0112】
<第3実施形態>
次に、第1の態様の第3実施形態に係るマウスピースの連結部材48について、
図4Bを用いて説明する。なお、第1、第2実施形態の連結部材28、38と同様の構成については、説明を省略する。
【0113】
図4Bに示すように、連結部材48は、軸方向両端部が開放された筒状のスリーブ50と、スリーブ50内に摺動可能に設けられた筒状の係合部材52と、係合部材52に係合されるロッド54と、を備えている。なお、係合部材52とロッド54とによって摺動部材が構成されている。
【0114】
スリーブ50の内部の軸方向両端部の間には、一対のストッパ56A、56B(規制部の一例)が設けられている。ストッパ56A、56Bは、例えば中空部を有する円筒形状とされており、スリーブ50の内周面に固定されている。なお、ストッパ56A、56Bの形状は、後述する係合部材52の当接部52B、52Cが当接可能な形状とされていればよく、円筒形状には限られない。
【0115】
一方、係合部材42の軸方向の長さは、ストッパ56A、56B間の長さ、すわなち、上端部側(
図4Bにおける左端部側)のストッパ56Aの下端部から下端部側(
図4Bにおける右端部側)のストッパ56Bの上端部までの長さより短くされており、係合部材52はスリーブ50内のストッパ56A、56B間に挿入されている。
【0116】
なお、係合部材52の軸方向上端部が、ストッパ56Aの下端部に当接する当接部52Bとされ、係合部材52の軸方向下端部が、ストッパ56Bの上端部に当接する当接部52Cとされている。
【0117】
また、ロッド54は、軸方向下端部(
図4Bにおける右端部)の下側アイレット部54Bがスリーブ50から露出し、軸方向上端部(
図4Bにおける左端部)の雄ねじ部54Aがストッパ56Bの中空部を通ってスリーブ50内に挿入され、係合部材52の雌ねじ部52Aに螺合されている。
【0118】
連結部材48は、係合部材52がスリーブ50内のストッパ56A、56B間を摺動することにより長さが可変とされている。このとき、係合部材52の当接部52B、52Cがそれぞれストッパ56A、56Bに当接することにより、係合部材52の軸方向における両方向の摺動が規制される。
【0119】
本実施形態によれば、スリーブ50内の軸方向両端部の間に設けられたストッパ56A、56Bによって、スリーブ50内での係合部材52の軸方向における両方向の摺動を規制している。このため、スリーブ50の外に係合部材やストッパを設ける構成と比較して、連結部材48を小型化することができる。
【0120】
<第4実施形態>
次に、第1の態様の第4実施形態に係るマウスピースの連結部材58について、
図5を用いて説明する。なお、第1〜第3実施形態の連結部材28、38、48と同様の構成については、説明を省略する。
【0121】
図5に示すように、連結部材58は、軸方向両端部が開放された筒状のスリーブ60と、スリーブ60内に摺動可能に設けられた筒状の係合部材62と、係合部材62に係合されるロッド64と、を備えている。なお、係合部材62とロッド64とによって摺動部材が構成されている。
【0122】
スリーブ60の内周面の軸方向両端部の間には、内径がスリーブ60の他の部分の内径より小さくされた縮径部66A、66B(規制部の一例)が形成されている。なお、スリーブ60の軸方向上端面より下端側(
図5における左端部側)に形成された縮径部66Aは、スリーブ60の肉厚を厚くすることにより形成されており、スリーブ60の軸方向下端面より上端側(
図5における右端部側)に形成された縮径部66Bは、スリーブ60の下端部をかしめることにより形成されている。
【0123】
一方、係合部材62の軸方向上端部(
図5における左端部)には、外径が係合部材62の他の部分の外径より大きくされた拡径部68が一体的に形成されており、係合部材62の拡径部68がスリーブ60の縮径部66A、66B間を摺動可能とされている。
【0124】
また、係合部材62の軸方向上端部側における拡径部68の端面中央部には、挿入空間68Aが形成されている。挿入空間68Aは六角形状の溝とされており、六角レンチ等の冶具が挿入可能とされている。
【0125】
ロッド64は、軸方向上端部(
図5における左端部)に形成された雄ねじ部64Aが係合部材62の内周面に形成された雌ねじ部62Aに螺合されている。なお、ロッド64の軸方向上端部側における端面には、拡径部68の係合部材62における軸方向下端部側の端面に当接する当接部70が設けられている。
【0126】
連結部材58は、係合部材62がスリーブ60内を摺動することにより長さが可変とされている。このとき、係合部材62の拡径部68がスリーブ60の縮径部66Aの下端部(
図5における右端部)及び縮径部66Bの上端部(
図5における左端部)にそれぞれ当接することにより、係合部材62の軸方向における両方向の摺動が規制される。
【0127】
また、係合部材62に対するロッド64の位置を調整する場合には、開放されたスリーブ60の軸方向上端部から係合部材62の拡径部68の挿入空間68Aへと六角レンチを挿入する。そして、六角レンチを軸周りに回転させることにより、係合部材62を軸周りに回転させて係合部材62の雌ねじ部62Aへのロッド64の雄ねじ部64Aの螺合量を調整する。
【0128】
本実施形態によれば、スリーブ60の内周面の軸方向両端部の間に形成された縮径部66A、66Bによって、スリーブ60内での係合部材62の軸方向における両方向の摺動を規制している。
【0129】
このため、スリーブ60の外にナットのような係合部材を設けたり、スリーブ60の外側端部に係合部材62やロッド64を当接させたりする構成と比較して、連結部材58を小型化することができる。
【0130】
また、本実施形態によれば、係合部材62を軸周りに回転させることにより、ロッド34を軸周りに回転させることなく、係合部材62に対するロッド64の軸方向の位置を調整することができる。このため、ロッド64の下側アイレット部64Bが
図1におけるフランジ部26に係合された状態で、簡単に連結部材58の長さを調整することができる。
【0131】
<第5実施形態>
次に、第1の態様の第5実施形態に係るマウスピースの連結部材78について、
図6A〜
図7Eを用いて説明する。なお、第1〜第4実施形態の連結部材28、38、48、58と同様の構成については、説明を省略する。
【0132】
図6A〜
図7Eに示すように、連結部材78は、軸方向両端部が開放された筒状のスリーブ80と、スリーブ80内に摺動可能に設けられた筒状の係合部材82と、係合部材82に係合されるロッド84と、を備えている。なお、係合部材82とロッド84とによって摺動部材が構成されている。
【0133】
図6A及び
図7Aに示すように、スリーブ80の軸方向上端部(
図6A及び
図7Aにおける下端部)の軸心からオフセットした位置には、図示しないマウスピースの上取付部のフランジ部に係合される真円形状の上側アイレット部80Aが形成されている。また、
図6D及び
図7Dに示すように、スリーブ80の内周面の軸方向両端部の間には、内径がスリーブ80の他の部分の内径より小さくされた縮径部86A、86B(規制部の一例)が形成されている。
【0134】
なお、スリーブ80の軸方向上端面より下端側(
図6D及び
図7Dにおける下端部側)に形成された縮径部86Aは、スリーブ80の肉厚を厚くすることにより形成されている。一方、スリーブ80の軸方向下端面より上端側(
図6D及び
図7Dにおける上端部側)に形成された縮径部86Bは、
図6Eに示すように、スリーブ80の軸方向下端部をかしめることにより形成されている。
【0135】
図6D及び
図7Dに示すように、係合部材82の軸方向上端部(
図6D及び
図7Dにおける下端部)には、外径が係合部材82の他の部分の外径より大きくされた拡径部88が一体的に形成されており、係合部材82の拡径部88がスリーブ80の縮径部86A、86B間を摺動可能とされている。
【0136】
また、係合部材82の軸方向上端部側における拡径部88の端面中央部には、挿入空間88Aが形成されている。挿入空間88Aは六角形状の溝とされており、六角レンチ等の冶具が挿入可能とされている。
【0137】
ロッド84は、軸方向上端部(
図6D及び
図7Dにおける下端部)に形成された雄ねじ部84Aが係合部材82の内周面に形成された雌ねじ部82Aに螺合されている。また、ロッド84の軸方向下端部(
図6D及び
図7Dにおける上端部)の軸心上には、図示しないマウスピースの下取付部のフランジ部に係合される真円形状の下側アイレット部84Bが形成されている。
【0138】
連結部材78は、係合部材82がスリーブ80内を摺動することにより長さが可変とされている。このとき、係合部材82の拡径部88がスリーブ80の縮径部86Aの下端部(
図6D及び
図7Dにおける上端部)及び縮径部86Bの上端部(
図6D及び
図7Dにおける下端部)にそれぞれ当接することにより、係合部材82の軸方向における両方向の摺動が規制される。
【0139】
また、係合部材82に対するロッド84の位置を調整する場合には、開放されたスリーブ80の軸方向上端部から係合部材82の拡径部88の挿入空間88Aへと六角レンチを挿入する。そして、六角レンチを軸周りに回転させることにより、係合部材82を軸周りに回転させて係合部材82の雌ねじ部82Aへのロッド84の雄ねじ部84Aの螺合量を調整する。
【0140】
本実施形態によれば、第4実施形態と同様に、スリーブ80の内周面の軸方向両端部の間に形成された縮径部86A、86Bによって、スリーブ80内での係合部材82の軸方向における両方向の摺動を規制することができる。
【0141】
また、係合部材82を軸周りに回転させることにより、ロッド84を軸周りに回転させることなく、係合部材82に対するロッド84の軸方向の位置を調整することができる。このため、ロッド84の下側アイレット部84Bが図示しないマウスピースのフランジ部に係合された状態で、簡単に連結部材78の長さを調整することができる。
【0142】
<その他の実施形態>
なお、第1の態様は上記の実施形態に限定されるものではなく、本開示の範囲内にて他の種々の実施形態が可能である。
【0143】
例えば、第1実施形態では、マウスピース10の歯列への非装着状態において、上側アイレット部30B及び下側アイレット部34Bが上取付部16及び下取付部18のフランジ部22、26に対して着脱可能とされていた。しかし、接着もしくは螺合等によって上側アイレット部30B及び下側アイレット部34Bがフランジ部22、26に対して着脱不可能に取付けられていてもよい。
【0144】
また、第1実施形態では、上取付部16及び下取付部18が、上顎用アタッチメント12及び下顎用アタッチメント14の外壁面12A、14Aにそれぞれ突出形成されていた。しかし、上取付部16及び下取付部18は、上顎用アタッチメント12及び下顎用アタッチメント14の外壁面12A、14Aから突出していなくてもよく、また、上顎用アタッチメント12及び下顎用アタッチメント14の内壁面に設けられていてもよい。
【0145】
また、第1実施形態では、上顎用アタッチメント12及び下顎用アタッチメント14が上顎及び下顎の歯列にそれぞれ装着されていた。しかし、上顎用アタッチメント12及び下顎用アタッチメント14は、上顎及び下顎の歯列ではなく歯茎に装着されていてもよく、又は歯列に装着された歯列矯正具等の別部材に装着されていてもよい。
【0146】
また、上側アイレット部30Bは、スリーブ30の軸心からオフセットした位置に形成されていたが、スリーブ30の軸心上に形成されていてもよい。同様に、下側アイレット部34Bは、ロッド34の軸心上に形成されていたが、ロッド34の軸心からオフセットした位置に形成されていてもよい。さらに、ロッド34に目盛36Aを形成せず、係合部材32の開口32Cから雄ねじ部34Aの上端の位置を目視することにより雄ねじ部34Aの螺合量を確認する構成としてもよい。
【0147】
また、第1〜第4実施形態では、上側アイレット部30B、40B、50A、及び下側アイレット部34B、44B、54B、64Bがそれぞれ楕円形状とされていたが、第5実施形態の上側アイレット部80A及び下側アイレット部84Bと同様に、真円形状とされていてもよい。
【0148】
同様に、第1実施形態では、上取付部16及び下取付部18のフランジ部22、26が楕円形状とされていたが、真円形状とされていてもよい。また、上取付部16及び下取付部18が上顎用アタッチメント12及び下顎用アタッチメント14に対してそれぞれ着脱可能に取付けられていてもよい。
【0149】
具体的には、例えば雌ねじ部を有するナットの一部を上顎用アタッチメント12及び下顎用アタッチメント14の外壁面12A、14Aに埋設する。一方、雄ねじ部が形成された軸部と、軸部の先端に設けられた真円形状の頭部(すなわちフランジ部)と、を有するボルトによって上取付部及び下取付部を構成する。このボルトの雄ねじ部をナットの雌ねじ部に螺合することで、上顎用アタッチメント12及び下顎用アタッチメント14に上取付部及び下取付部を取付けることができる。
【0150】
また、第4実施形態では、スリーブ60の肉厚を厚くすることにより縮径部66Aを形成し、スリーブ60の下端部をかしめることにより縮径部66Bを形成していた。しかし、縮径部66A、66Bの形成方法は上記実施形態には限られず、縮径部66A、66Bが同一の方法で形成されていてもよい。また、拡径部68が係合部材62に一体的に形成されていたが、別部材の拡径部68が係合部材62の軸方向上端部に接合される構成とされていてもよい。
【0151】
また、上記の実施形態では、規制部がスリット30A、40A、ストッパ56A、56B、又は縮径部66A、66B、86A、86Bとされていた。しかし、規制部は、スリーブ30、40、50、60、80の軸方向両端部の間、すなわち軸方向一端面から軸方向他端面までの間に形成され、係合部材(摺動部材)の軸方向における両方向の摺動を規制することができる構成とされていれば、どのような形状とされていてもよい。
【0152】
さらに、第1〜第5実施形態では、ロッド34、44、54、64、84に雄ねじ部34A、44A、54A、64A、84Aが形成され、係合部材32、42、52、62、82に雌ねじ部32B、42A、52A、62A、82Aが形成されていた。しかし、ロッド34、44、54、64、84に雌ねじ部を形成し、係合部材32、42、52、62、82に雄ねじ部を形成してもよい。
【0153】
また、第1〜第5実施形態では、摺動部材としての係合部材32、42、52、62、82及びロッド34、44、54、64、84が互いに螺合する別部材とされ、螺合量を調整することにより長さが調整可能とされていた。しかし、摺動部材は、長さの調整が不可能な一部材で構成されていてもよい。
【0154】
また、上顎用アタッチメント12や下顎用アタッチメント14、上取付部16、下取付部18、連結部材28を構成する材料も、上記実施形態で挙げられた材料には限られない。例えば、上取付部16、下取付部18、及び連結部材28は金属製とされていたが、金属アレルギー患者へ適用でき、部材の強度を保持しつつ軽量化を図る、あるいは口腔内での違和感を減らすという点から、プラスチックで構成されていてもよい。
【0155】
[第2の態様]
本開示の第2の態様に係るマウスピースは、上顎に装着される上顎用アタッチメントと、下顎に装着される下顎用アタッチメントと、上顎用アタッチメントに設けられた上取付部と、下顎用アタッチメントに設けられた下取付部と、上取付部と下取付部とに取付けられ、上顎用アタッチメント及び下顎用アタッチメントの上顎及び下顎への装着状態における取付角度では、上取付部及び下取付部に対して着脱が抑制され、上顎用アタッチメント及び下顎用アタッチメントの上顎及び下顎への非装着状態における取付角度では、上取付部又は下取付部の少なくとも一方に対して着脱可能とされた連結部材と、を備える。
【0156】
第2の態様によれば、上顎及び下顎への上顎用アタッチメント及び下顎用アタッチメントの非装着状態における取付角度では、連結部材が上取付部又は下取付部の少なくとも一方に対して着脱可能とされているため、上顎用アタッチメントと下顎用アタッチメントとを容易に分離することができる。
【0157】
第2の態様の一実施形態に係るマウスピースは、
図1〜
図3Cに開示されている第1の態様の第1実施形態のマウスピース10と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0158】
なお、第2の態様は上記の実施形態に限定されるものではなく、本開示の範囲内にて他の種々の実施形態が可能である。
【0159】
例えば、上記の実施形態では、
図1〜
図3Cに示すように、フランジ部22、26、上側アイレット部30B、及び下側アイレット部34Bがそれぞれ相似形の楕円形状とされていた。しかし、マウスピース10の歯列への装着状態において連結部材28の着脱が抑制され、非装着状態において連結部材28が容易に着脱可能とされていれば、フランジ部22、26、上側アイレット部30B、及び下側アイレット部34Bはどのような形状とされていてもよい。
【0160】
また、マウスピース10の歯列への非装着状態において、上側アイレット部30B及び下側アイレット部34Bは、フランジ部22、26に対してそれぞれ着脱可能とされていた。しかし、どちらか一方が着脱可能とされていればよく、他方は上取付部16又は下取付部18に対して接着もしくは螺合等によって略着脱不可能に取付けられていてもよい。
【0161】
また、上記の実施形態では、上取付部16及び下取付部18が、上顎用アタッチメント12及び下顎用アタッチメント14の外壁面12A、14Aにそれぞれ突出形成されていた。しかし、上取付部16及び下取付部18は、上顎用アタッチメント12及び下顎用アタッチメント14の外壁面12A、14Aから突出していなくてもよく、また、上顎用アタッチメント12及び下顎用アタッチメント14の内壁面に設けられていてもよい。
【0162】
また、上側アイレット部30Bは、スリーブ30の軸心からオフセットした位置に形成されていたが、スリーブ30の軸心上に形成されていてもよい。さらに、上側アイレット部30B、下側アイレット部34Bの長径の方向は、連結部材28の長手方向と同じ方向とされていたが、連結部材28の長手方向に直交する方向等とされていてもよい。
【0163】
また、連結部材28の長さを調整する方法も、上記実施形態には限られない。さらに、ロッド34に目盛36Aを形成せず、係合部材32の開口32Cから雄ねじ部34Aの上端の位置を目視することにより雄ねじ部34Aの螺合量を確認する構成としてもよい。
【0164】
2016年7月19日に出願された日本国特許出願2016−141424、及び日本国特許出願2016−141425の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。