(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
カルバメート基含有アクリルポリオール樹脂は、重量平均分子量が3,000〜10,000であり、ガラス転移温度が−30〜30℃であり、水酸基価が固形分重量基準で30〜70mgKOHである、請求項1に記載の高耐スクラッチ性の一液型塗料組成物。
ハイパーブランチ構造のカルバメート基含有ポリエステルポリオール樹脂は、重量平均分子量が5,000〜20,000であり、水酸基価が固形分重量基準で30〜70mgKOHである、請求項1に記載の高耐スクラッチ性の一液型塗料組成物。
【背景技術】
【0002】
自動車コーティング産業分野において、上塗り塗膜(Top coat)は、ベースコートとクリアコートまたはモノコートからなり得る。基材に色を与えるベースコートを適用した後、透明なクリアコートを適用する色調および透明コーティングシステムは、通常使用される自動車塗装の仕上げ工程として、自動車に求められる多様且つ厳しい条件に耐えられるほどの性能を要する。
【0003】
従来の一液型熱硬化性コーティング組成物として使用されてきたヒドロキシル官能基を含む樹脂とアミノプラストの硬化コーティングシステムの場合、優れたコーティング性質を提供するものの、硬化メカニズムにより形成されるエーテル結合が不良な耐酸性を有することが広く知られており、かかる問題を解決するための方法の一つとして、カルバメート官能基を有する硬化構造を主成分とするコーティング組成物が当業界において公知になってきた。カルバメート硬化構造を導入した熱硬化性コーティング組成物から得られる効果としては、高度の透明性、高いDOI(像鮮明性)、耐久性、硬度の向上に伴い柔軟性を確保する特性だけでなく、向上した耐スクラッチ性などがある。
【0004】
米国特許出願第1994‐241925号には、カルバメートアクリル樹脂/メラミンまたはカルバメートメラミン/オキシゾリジンブロックDDBSA(dodecylbenzyl sulfonic acid)触媒から構成された塗料組成物が開示されており、前記塗料組成物は、一液型塗料組成物として適用することができ、硬度が強い一方、柔軟性があり、耐薬品性に優れたことを特徴とする。
【0005】
また、米国特許出願第1999‐378319号には、カルバメート官能基を有するポリマーの製造方法として、ヒドロキシ官能基を有するポリマーまたはオリゴマーと低分子量アルキルカルバメートとを反応させてカルバメートポリマーを製造するという内容のカルバメートアクリルとカルバメートポリエステルの製造方法が開示されている。
【0006】
また、米国特許公開公報第2003‐0009052号には、カルバメート変性アクリル樹脂、カルバメート変性ポリエステル、メラミン、硬化剤からなる塗料組成物が記載されており、特に、カルバメートポリエステルが、特許の重要な構成成分として、ラクトンとヒドロキシ基を先に反応させた後、カルバメートとさらに反応させる形態で製造され、レオロジーコントロール剤(rheology control agent、RCA)、すなわち、垂れ(Sagging)上昇効果を目的とするものである。
【0007】
また、米国特許公開公報第2008‐0124532号には、ガラス転移温度40℃以上のハードセグメント(Hard segment)の役割をするポリマーまたはオリゴマーと、ソフトセグメント(Soft segment)の役割をするポリマーまたはオリゴマーとの混合を特徴とする塗料組成物が記載されており、ハードセグメントポリマーとソフトセグメントポリマーの2種ともにカルバメート変性を用いることを特徴とする。
【0008】
しかし、前記の塗料組成物を、メラミン硬化剤を使用する一液型透明塗料に適用する際、硬化した塗膜物性の弾性、柔軟性、耐スクラッチ性またはスクラッチ復元性能に劣るという問題があった。
【0009】
したがって、メラミン硬化剤を使用する一液型透明塗料に適用する際、従来の一液型塗料に比べ、優れた塗膜物性および耐スクラッチ性を確保できる塗料組成物への要求が依然として存在する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の具体的な第1の側面によると、樹脂と、硬化剤と、硬化触媒と、有機溶剤とを含み、前記樹脂は、塗料組成物100重量%を基準にして、カルバメート基含有アクリルポリオール樹脂30〜70重量%と、ハイパーブランチ構造のカルバメート基含有ポリエステルポリオール樹脂5〜25重量%とを含む高耐スクラッチ性の一液型塗料組成物が提供される。
【0017】
本発明の第1の側面による塗料組成物は、固形分含有量が50〜70重量%であり、粘度がフォードカップ#4を基準に20〜40秒であってもよい。前記粘度は、塗装作業性に適する粘度範囲であり、20秒より短い場合、垂直面垂れなどの問題が生じることがあり、40秒を超える場合、塗装機に負荷がかかって塗装機故障の原因になることもあり、高粘度によって外観阻害をもたらすことがある。
【0018】
本発明の第1の側面による塗料組成物に使用されるカルバメート基含有アクリルポリオール樹脂は、固形分含有量が50〜80重量%であり、カルバメート基当量が固形分重量基準で400〜700のものを使用することができる。また、カルバメート基含有アクリルポリオール樹脂は、重量平均分子量が3,000〜10,000であり、ガラス転移温度が−30〜30℃であり、水酸基価が固形分重量基準で30〜70mgKOHであるものを使用することができる。カルバメート基含有アクリルポリオール樹脂が、前記当量および水酸基価の範囲を満たす時に、塗膜応用の際に適する機械的物性を得ることができる。特に限定しないが、前記カルバメート基含有アクリルポリオール樹脂は、有機溶剤、ラジカル重合開始剤、エチレン性不飽和モノマー、非官能性アクリルモノマー、水酸基を含有するアクリルモノマー、アルキルカルバメートおよびスズ系触媒を使用して製造され得る。
【0019】
エチレン性不飽和モノマーとしては、スチレンおよびその誘導体、ブタジエン、およびC1〜C12アルキルのアクリルまたはメタクリル酸エステルが使用され得るが、これらに限定されるものではない。
【0020】
非官能性アクリルモノマーとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ノルマルブチルメタクリレート、ターシャリーブチルメタクリレート、ノルマルヘキシルメタクリレート、2‐エチルヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、ノルマルブチルアクリレート、ターシャリーブチルアクリレート、2‐エチルヘキシルアクリレート、ノルマルオクチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートなどが使用され得る。
【0021】
水酸基を含有するモノマーとしては、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、2‐ヒドロキシプロピルメタクリレート、2‐ヒドロキシエチルアクリレート、2‐ヒドロキシプロピルアクリレート、カルドゥーラアクリレート、カルドゥーラメタクリレート、カプロラクトンアクリレート、カプロラクトンメタクリレート、2,3‐ジヒドロキシプロピルアクリレート、2,3‐ジヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリプロピレン変性アクリレート、ポリプロピレン変性メタクリレート、4‐ヒドロキシメチルシクロヘキシル‐メチルアクリレート、4‐ヒドロキシメチルシクロヘキシル‐メチルメタクリレート、2,2,4‐トリメチル‐1,3‐ペンタンジオールモノアクリレート、2,2,4‐トリメチル‐1,3‐ペンタンジオールモノメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレートなどが使用され得る。
【0022】
本発明の第1の側面による塗料組成物は、組成物総100重量%に対して、カルバメート基含有アクリルポリオール樹脂を30〜70重量%、例えば、35〜65重量%、例えば、40〜60重量%含む。カルバメート基含有アクリルポリオール樹脂の含有量が少なすぎる場合、耐薬品性などの化学的物性が阻害される問題があり、含有量が多すぎる場合、耐寒チッピング性などに劣り、塗膜が硬くなりすぎるという問題がある。また、カルバメート含有アクリルポリオール樹脂の含有量が前記範囲から逸脱する場合、機械的物性と製造および塗装時の作業性が低下し得る。
【0023】
本発明の塗料組成物は、ハイパーブランチ構造のカルバメート基含有ポリエステルポリオール樹脂を含む。本発明のハイパーブランチ構造のカルバメート基含有ポリエステルポリオール樹脂とは、イソシアネート化合物に3個以上のカルバメート基を含有するポリエステル樹脂が、ブランチ構造で結合しているものを意味する。
【0024】
本発明の第1の側面による塗料組成物に使用されるハイパーブランチ構造のカルバメート基含有ポリエステルポリオール樹脂は、固形分含有量が50〜80重量%であり、カルバメート基当量が固形分重量基準で500〜800であるものを使用することができる。また、前記ハイパーブランチ構造のカルバメート基含有ポリエステルポリオール樹脂は、重量平均分子量が5,000〜20,000であり、水酸基価が固形分重量基準で30〜70mgKOHであるものを使用することができる。
【0025】
特に限定しないが、前記ハイパーブランチ構造のカルバメート基含有ポリエステルポリオール樹脂は、有機溶剤、多価アルコール、多価酸、アルキルカルバメート、スズ系触媒、イソシアネート化合物を使用して製造され得る。
【0026】
多価アルコールとしては、グリコール類、2価アルコール、3価アルコール、4価アルコールなどを含む。一例として、前記多価アルコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4‐ブタンジオール、2,3‐ブタンジオール、1,6‐ヘキサンジオール、ジメチレングリコール、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコールなどを選択して使用することができる。
【0027】
多価酸としては、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、またはこれらの無水物などが挙げられる。
【0028】
イソシアネート化合物としては、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、メチレンビス(4‐シクロヘキシルイソシアネート)などのイソシアネートモノマーと、前記モノマーの二量体または三量体などを選択して使用することができる。
【0029】
本発明の第1の側面による塗料組成物は、組成物総100重量%に対して、ハイパーブランチ構造のカルバメート基含有ポリエステルポリオール樹脂を5〜25重量%、例えば、8〜22重量%、例えば、12〜18重量%含むことができる。ハイパーブランチ構造のカルバメート基含有ポリエステルポリオール樹脂の含有量が少なすぎる場合、塗膜の優れた弾性、柔軟性および耐スクラッチ性を得ることが困難であり、含有量が多すぎる場合、塗膜の硬度を確保することが困難である。
【0030】
本発明の第1の側面による塗料組成物に使用される硬化剤としては、メラミン化合物を使用することができ、例えば、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミンおよびこれらの組み合わせからなる群から選択されるものを使用することができる。
【0031】
本発明の第1の側面による塗料組成物は、組成物総100重量%に対して、硬化剤を6〜25重量%、例えば、8〜22重量%、例えば、12〜18重量%含むことができる。硬化剤含有量が6重量%未満の場合、硬化剤と主剤樹脂が反応する時に、不完全な硬化によって硬度、耐溶剤性などに影響を及ぼし、25重量%を超える場合、過硬化によって付着性、耐衝撃性などの塗膜物性に影響を及ぼすことがあり、塗膜内に未反応のメラミン化合物が残存し、その他の物性に悪い影響を及ぼし得る。
【0032】
本発明の第1の側面による塗料組成物に使用される硬化触媒としては、ドデシルベンゼンスルホン酸、スルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるものを使用することができる。
【0033】
本発明の第1の側面による塗料組成物は、組成物総100重量%に対して、硬化触媒を0.1〜5重量%、例えば、0.3〜3重量%、例えば、0.5〜2重量%含むことができる。前記範囲から逸脱する場合、不完全な硬化によって機械的物性が低下することがある。
【0034】
本発明の第1の側面による塗料組成物に使用される有機溶剤としては、特に限定されず、例えば、ココゾル#100、ブタノール、1‐メトキシ‐2‐プロピルアセテート、エチルエトキシプロピオネートおよびこれらの混合物からなる群から選択されるものを使用することができる。本発明の塗料組成物は、組成物総100重量%に対して、有機溶剤を5〜30重量%、例えば、10〜27重量%、例えば、15〜23重量%含むことができる。前記範囲から逸脱する場合、製造および塗装作業性が低下することがある。
【0035】
本発明の第1の側面による塗料組成物は、表面調整剤、光安定剤、耐候性添加剤、外観調節剤、消泡剤およびレベリング剤からなる群から選択される一つ以上の添加剤をさらに含むことができる。特に限定しないが、本発明の塗料組成物は、組成物総100重量%に対して、前記添加剤を0.01〜20重量%含むことができる
【0036】
本発明の具体的な第2の側面によると、樹脂と、硬化剤と、硬化触媒と、有機溶剤とを含み、前記樹脂は、塗料組成物100重量%に対して、カルバメート基含有アクリルポリオール樹脂30〜60重量%と、ハイパーブランチ構造のカルバメート基含有ポリエステルポリオール樹脂10〜25重量%と、水酸基含有長鎖アクリルポリオール樹脂5〜25重量%とを含む高耐スクラッチ性の一液型塗料組成物が提供される。
【0037】
本発明の第2の側面による塗料組成物は、固形分含有量が50〜70重量%であり、粘度がフォードカップ#4を基準に20〜40秒であってもよい。前記粘度は、塗装作業性に適する粘度範囲であり、20秒より短い場合、垂直面垂れなどの問題が生じることがあり、40秒を超える場合、塗装機に負荷がかかって塗装機故障の原因になることがあり、高粘度によって外観阻害をもたらすことがある。
【0038】
本発明の第2の側面による塗料組成物に使用されるカルバメート基含有アクリルポリオール樹脂、ハイパーブランチ構造のカルバメート基含有ポリエステルポリオール樹脂、硬化剤、硬化触媒および有機溶剤としては、上述の本発明の第1の側面による塗料組成物において使用されたものと同じものを使用することができる。
【0039】
本発明の第2の側面による塗料組成物は、組成物総100重量%に対して、カルバメート基含有アクリルポリオール樹脂を30〜60重量%、例えば、30〜55重量%、例えば、30〜50重量%含む。カルバメート基含有アクリルポリオール樹脂の含有量が少なすぎる場合、耐薬品性などの化学的物性が阻害されるという問題があり、含有量が多すぎる場合、耐寒チッピング性などに劣り、塗膜が硬くなりすぎるという問題がある。また、カルバメート含有アクリルポリオール樹脂の含有量が前記範囲から逸脱する場合、機械的物性と製造および塗装時の作業性が低下し得る。
【0040】
本発明の第2の側面による塗料組成物は、組成物総100重量%に対して、ハイパーブランチ構造のカルバメート基含有ポリエステルポリオール樹脂を10〜25重量%、例えば、12〜20重量%、例えば、13〜18重量%含むことができる。ハイパーブランチ構造のカルバメート基含有ポリエステルポリオール樹脂の含有量が少なすぎる場合、塗膜の優れた弾性、柔軟性および耐スクラッチ性を得ることが困難であり、含有量が多すぎる場合、塗膜の硬度を確保することが困難である。
【0041】
本発明の第2の側面による塗料組成物に使用される水酸基含有長鎖アクリルポリオール樹脂は、固形分含有量が50〜80重量%であり、水酸基価が固形分重量基準で80〜170mgKOHであるものを使用することができる。また、前記水酸基含有長鎖アクリルポリオール樹脂は、重量平均分子量が10,000〜30,000であり、ガラス転移温度が−50〜0℃であるものを使用することができる。
【0042】
特に限定しないが、前記水酸基含有長鎖アクリルポリオール樹脂は、酸基を含有するアクリルモノマーまたは酸基を含有するメタクリルモノマー、非官能性アクリルモノマーおよび水酸基を含有する長鎖アクリルモノマーを使用して重合され、水酸基を含有する長鎖アクリルモノマーは、以下の構造を有するものであってもよい。特に限定しないが、長鎖アクリルモノマーは、炭素数2個以上(例えば、2〜30個、例えば、2〜20個)であってもよい。場合に応じて、エチレン性不飽和モノマーを追加して水酸基含有長鎖アクリルポリオール樹脂を製造してもよい。
【0044】
ここで、R
1はHまたはCH
3であり、R
2は炭素数2個以上(例えば、2〜30個、例えば、2〜20個)のアルキルまたはシクロアルキルであり、nは1以上の整数(例えば、1〜5)である。
【0045】
本発明の第2の側面による塗料組成物は、組成物総100重量%に対して、水酸基含有長鎖アクリルポリオール樹脂を5〜25重量%、例えば、7〜23重量%、例えば、9〜21重量%含むことができる。水酸基含有長鎖アクリルポリオール樹脂の含有量が少なすぎる場合、塗膜の優れた弾性、柔軟性および耐スクラッチ性を得ることが困難であり、含有量が多すぎる場合、塗膜の硬度を確保することが困難である。
【0046】
本発明の第2の側面により製造された樹脂は、長鎖のエステル構造を有することにより、優れた弾性、柔軟性および耐スクラッチ性を有する。
【0047】
本発明の第2の側面による塗料組成物は、組成物総100重量%に対して、硬化剤を6〜25重量%、例えば、8〜22重量%、例えば、12〜18重量%含むことができる。硬化剤含有量が6重量%未満の場合、硬化剤と主剤樹脂が反応する時に、不完全な硬化によって硬度、耐溶剤性などに影響を及ぼし、25重量%を超える場合、過硬化によって付着性、耐衝撃性などの塗膜物性に影響を及ぼすことがあり、塗膜内に未反応のメラミン化合物が残存し、その他物性に悪い影響を及ぼすことがある。
【0048】
本発明の第2の側面による塗料組成物は、組成物総100重量%に対して、硬化触媒を0.1〜5重量%、例えば、0.3〜3重量%、例えば、0.5〜2重量%含むことができる。前記範囲から逸脱する場合、不完全な硬化によって機械的物性が低下することがある。
【0049】
本発明の第2の側面による塗料組成物に使用される有機溶剤としては、特に限定されず、例えば、ココゾル#100、ブタノール、1‐メトキシ‐2‐プロピルアセテート、エチルエトキシプロピオネートおよびこれらの混合物からなる群から選択されるものを使用することができる。本発明の塗料組成物は、組成物総100重量%に対して、有機溶剤を5〜30重量%、例えば、10〜27重量%、例えば、15〜23重量%含むことができる。前記範囲から逸脱する場合、製造および塗装作業性が低下することがある。
【0050】
本発明の第2の側面による塗料組成物は、表面調整剤、光安定剤、耐候性添加剤、外観調節剤、消泡剤およびレベリング剤からなる群から選択される一つ以上の添加剤をさらに含むことができる。特に限定しないが、本発明の塗料組成物は、組成物総100重量%に対して、前記添加剤を0.01〜20重量%含むことができる。
【0051】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。しかし、これらの実施例は、本発明の理解を容易にするためのものであって、如何なる意味でも本発明の範囲がこれらの実施例に限定されない。
【実施例】
【0052】
[実施例]
実施例1‐1〜1‐3および比較例1‐1〜1‐5
1.合成例1:カルバメート基含有アクリルポリオール樹脂(A)の製造
温度計、攪拌装置、コンデンサ、加熱装備を備えた合成用四ツ口フラスコにココゾル#100 215重量部を仕込み、還流温度(165℃)まで昇温した。還流が安定した後、2‐ヒドロキシエチルアクリレート206重量部、スチレンモノマー190重量部、ノルマルブチルアクリレート100重量部、α−メチルスチレンダイマー40重量部を均一混合し、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエート15重量部、ココゾル#100 40重量部を別に均一混合し、それぞれ180分、195分間均一に分離滴加した後、60分間還流維持させた。維持終了後、ココゾル#100で希釈し、反応物を80℃に冷却してメチルカルバメート80重量部、ジブチルスズオキシド1.3重量部を投入し、約145℃で流出されるメタノールを別に捕集した。総30重量部程度のメタノールが捕集された後、窒素を注入して残余メチルカルバメートを1時間除去して冷却し、反応を終了した。これにより、固形分 63%、粘度Z2、水酸基が50mgKOHであり、重量平均分子量が5,000であり、ガラス転移温度が10℃であり、カルバメート基当量が固形分重量基準で600であるカルバメート基含有アクリルポリオール樹脂を得た。
【0053】
2.比較合成例1:アクリルポリオール樹脂(B)の製造
温度計、攪拌装置を備えた合成用四ツ口フラスコにココゾル#100 215重量部を仕込み、還流温度(165℃)まで昇温した。還流が安定した後、ヒドロキシプロピルアクリレート203重量部、スチレンモノマー152重量部、ノルマルブチルメタクリレート132重量部、ノルマルブチルアクリレート127重量部と、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエート10重量部、ココゾル#100 52重量部を180分、195分間均一に分離滴加した後、60分間還流維持させた。ココゾル#100で希釈し、反応物を60℃に冷却して固形分70%のアクリルポリオール樹脂を得た。
【0054】
3.合成例2:ハイパーブランチ構造のカルバメート基含有ポリエステルポリオール樹脂(C)の製造
温度計、攪拌装置、コンデンサ、充填カラム(Packed Column)、加熱装備を備えた合成用四ツ口フラスコにトリメチロールプロパン90重量部、ネオペンチルグリコール250重量部、ヘキサヒドロフタル酸無水物380重量部、ジブチルスズオキシド0.5重量部を投入し、徐々に昇温した。投入物が溶解した後、攪拌を行って縮合水を除去しながら230℃まで徐々に昇温した。230℃で酸価が10になるまで反応を維持し、酸価が10以下になると80℃まで冷却し、メチルカルバメート90重量部を投入して145℃まで徐々に昇温した。縮合反応によって生じたメタノールを除去し、水酸基価が60以下になった時に60℃に冷却した。60℃でココゾル#100 80重量部、エトキシエチルプロピオネート70重量部、ヘキサメチレンジイソシアネート三量体(Desmudur N‐3300)55重量部を投入し、60℃でNCO%が0.05%以下になるまで等温維持させた。維持終了後、ココゾル#100で希釈し、反応を終了した。これにより、固形分70%、カルバメート基当量が固形分重量基準で700であり、重量平均分子量が12,000であり、粘度Z3、水酸基が55である物性を有するハイパーブランチ構造のカルバメート基含有ポリエステルポリオール樹脂を得た。
【0055】
4.比較合成例2:カルバメート基含有ポリエステルポリオール樹脂(D)の製造
温度計、攪拌装置、コンデンサ、充填カラム、加熱装備を備えた合成用四ツ口フラスコにトリメチロールプロパン90重量部、ネオペンチルグリコール250重量部、ヘキサヒドロフタル酸無水物380重量部、ジブチルスズオキシド0.5重量部を投入し、165℃まで徐々に昇温した。投入物が溶解した後、攪拌を行って縮合水を除去しながら230℃まで徐々に昇温した。230℃で酸価が10になるまで維持反応を行ってから、酸価が10以下になった後、80℃まで冷却し、ココゾル#100で希釈しながら反応を終了した。これにより、固形分70%、粘度Y、水酸基が157である物性を有する樹脂を得た。
【0056】
5.塗料組成物の製造
実施例1‐1〜1‐3および比較例1‐1〜1‐5の塗料組成物をそれぞれ表1に示した組成で製造し、1500rpmで20分以上攪拌混合して塗料組成物を製造し、以下の条件で塗装した後、測定した物性を表2に示した。
【0057】
【表1】
【0058】
‐塗料塗装の条件
(1) Handgun spray
(2) ノズル口径:1.5mm、空気圧:約4.5kgf/cm
2に一定維持
(3) ノズル入口と試験片の距離を2〜30cmの範囲で一定に維持し、水平に40〜50cm/secの速度で等速で動かしながら塗装する。
(4) 塗装後、130℃×20min焼付硬化の後、塗膜物性(硬度、付着性、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性、耐溶剤性など)を測定
【0059】
‐物性測定方法
(1)硬度
‐測定方法:鉛筆硬度法で測定(3B、2B、B、HB、F、H、2H、3Hそれぞれの鉛筆で塗膜に損傷を与えない硬度を測定)
(3B、2B、B、HB、F、H、2H、3H:劣る <---> 優れる)
【0060】
(2)付着性
‐測定方法:上塗り塗装まで完成された塗装試験片を熱処理CYCLEで処理した後、常温で24時間放置してから0.2mm間隔の碁盤目法で付着力を測定する。
‐熱処理CYCLE:150℃×20分、20分間常温放置の過程を3回繰り返す
(M‐1、M‐2、M‐3、M‐4、M‐5:優れる <---> 劣る)
【0061】
(3)耐水性
‐測定方法:試験片を40℃の恒温水槽に240時間浸漬してから1時間常温で放置した後、0.2mm間隔の碁盤目付着性評価でテープ剥離試験を行い、外観の異常有無を目視で観察する。
【0062】
‐判定方法:試験後、外観は、軟化、白化、光沢不良、ハガレ、膨らみ、変色などがあってはならず、沈積部と未沈積部の外観の差があってはならず、付着性評価を実施し、総剥離面積が5%未満でなければならない。
(M‐1、M‐2、M‐3、M‐4、M‐5:優れる <---> 劣る)
【0063】
(4)耐酸性
‐測定方法:試験片に0.1N硫酸を0.2mLずつ滴下した後、Gradient Ovenの温度を35〜40℃にセットし、150分間加熱する。
【0064】
‐判定方法:硫酸溶液を滴下した試験片の箇所に対して、目視で、エッチング、シミ、膨らみの発生有無を確認し、損傷が生じていない最高温度を耐酸性温度として判定する。
【0065】
(5)耐スクラッチ性
‐測定方法:Amtec Kistler装備を用いて10回往復実施。
‐判定方法:試験片の初期20度光沢を測定し、10回往復実施後、20度光沢を測定する。測定実施前の光沢を測定後の光沢で除し、光沢維持率を計算する。
【0066】
(6)耐溶剤性
‐測定方法:試験片に試験用溶剤(キシレン)をつけた綿布をのせておいた後、1分ごとに爪で2Kgの力で4回掻き、下層塗膜面が現れた時間を記録する。
【0067】
【表2】
【0068】
前記表2に示されているように、本発明の高耐スクラッチ性の一液型塗料組成物である実施例1‐1および1‐3は、硬度、付着性、耐水性および耐酸性などの物性が、比較例1‐1〜1‐3と同等またはそれ以上であり、弾性、柔軟性、耐スクラッチ性および耐溶剤性に対しては、比較例1‐1〜1‐5に比べ、非常に優れた効果を示すことが分かった。 すなわち、本発明の高耐スクラッチ性の一液型塗料組成物を使用する場合、優れた耐スクラッチ性により、弾性および柔軟性が向上することを確認することができた。
【0069】
実施例2‐1、2‐2および比較例2‐1〜2‐7
前記と同様に合成例1および2と比較合成例1の樹脂を製造し、以下のように水酸基含有長鎖アクリルポリオール樹脂(D)を製造した。
【0070】
1.合成例3:水酸基含有長鎖アクリルポリオール樹脂(D)の製造
温度計、攪拌装置を備えた合成用四ツ口フラスコにブチルアセテート66重量部を仕込み、還流温度(約130℃)まで昇温する。還流が安定した後、Miramer M100(カプロラクトンアクリレート、Miwon社製)141重量部、メチルメタクリレート39重量部、メタアクリル酸2重量部を均一混合し、ベンゾイルパーオキシド7重量部、ブチルアセテート7重量部を均一混合した後、300分間均一に分離滴加した後、60分間還流維持させた。ブチルアセテートで希釈し、反応物を60℃に冷却し、固形分63%、水酸基価が固形分重量基準で130mgKOH、重量平均分子量が22,000であり、ガラス転移温度が−30℃である水酸基含有長鎖アクリルポリオール樹脂を得た。
【0071】
2.塗料組成物の製造
実施例2‐1、2‐2および比較例2‐1〜2‐7をそれぞれ表3に示した組成で製造し、1500rpmで20分以上攪拌混合して塗料組成物を製造し、以下の条件で塗装した後、測定した物性を表4に示した。
【0072】
【表3】
【0073】
硬化剤、硬化触媒、表面調整剤、光安定剤およびUV吸収剤は、前記表1と同様のものを使用し、塗料塗装条件も前記実施例1‐1などと同様であり、物性測定において耐溶剤性の代わりに、下記のように光沢復元率を測定した以外は、実施例1‐1などと同様に実施した。
【0074】
(1)光沢復元率
‐測定方法:耐スクラッチ性試験試験片を40℃で1時間放置した後、光沢を再度測定して、耐スクラッチ性評価光沢上昇分を測定前の光沢で除し、光沢復元率で表現する。
【0075】
【表4】
【0076】
前記表4に示されているように、本発明の高耐スクラッチ性の一液型塗料組成物である実施例2‐1および2‐2は、硬度、付着性、耐水性および耐酸性などの物性が、比較例2‐1〜2‐7と同等またはそれ以上であり、耐スクラッチ性および光沢復元率に対しては、比較例2‐1〜2‐7に比べて非常に優れた効果を示すことが分かった。 すなわち、本発明の高耐スクラッチ性の一液型塗料組成物を使用する場合、イソシアネート硬化剤やオリゴマーを使用することなく、塗膜を硬化させる場合にも、優れたスクラッチ復元性能を確保することを確認することができた。