【課題を解決するための手段】
【0018】
この課題は、請求項1の構成を備えた加熱装置、および、請求項13の構成を備えたブロー成形機によって解決される。有利な構成は従属項に記載されている。
【0019】
本発明によれば、加熱装置は、開口部を有する上部の口部分と、該口部分の下方に配置されるカラー状の支持リングと、下端を閉鎖されている底部部分とを備えた熱可塑性材料から成るパリソンを、ブロー成形に適した温度プロファイルに熱的にコンディショニングするための加熱区間を備え、該加熱装置は、該加熱装置の搬送経路に沿って前記パリソンを搬送するための複数の搬送手段を有し、これら搬送手段が、それぞれ、前記パリソンを保持および操作するための少なくとも1つの操作手段を担持し、1つの前記パリソンを操作するためにそれぞれ設けられた2つの前記操作手段の間の中間空間内に、強制案内されて前記パリソンの前記搬送経路に続いている放射シャッターが配置され、該放射シャッターは少なくとも端面に溝を有し、該溝が、該溝に対し境を接している前記操作手段で保持される前記パリソンを部分的に取り囲んでおり、前記放射シャッターは、前記パリソンを搬送している間少なくとも一時的に、該放射シャッターの面領域が前記パリソンの長手方向に見て前記口部分とは逆の側で前記支持リングの面領域とオーバーラップするように、配置されている。
【0020】
放射シャッターが支持リングとオーバーラップしていることにより、支持リングと、該支持リングの上方に配置されている口部分とは、温度プロファイルの形成のためにパリソン本体に作用する放射熱による望ましくない昇温から遮蔽される。
【0021】
搬送経路に沿って加熱装置を通過するようにパリソンを搬送するための従来の搬送チェーンの場合、各チェーンリンクは1つのパリソンを受容するための搬送心棒を有している。公知の搬送チェーンでは、中央に穴を備えた穴付き板が搬送心棒に配置され、この場合パリソンは、搬送心棒により穴を貫通するように受容されて荷重され、除荷のために降ろされる。その際支持リングは、熱損失のために可能な限り小さな隙間を形成させるために穴の高さにある。それにもかかわらず、支持リングと穴との間の隙間により、支持リング下方の放射空間からの放射熱のかなりの部分を温度プロファイルの発生に利用できない。さらに、従来の構造により、支持リングと該支持リング上方の口領域との昇温が望ましいものではなく、この領域が後で変形することがある。
【0022】
本発明が提案する解決手段により、一方では口領域の望ましくない昇温を回避でき、さらに、支持リング下方でほぼ所定の温度プロファイルを発生でき、このことは、これに続くストレッチブローステップでの材料逃がしを改善させる。
【0023】
放射シャッターの本発明による配置構成の更なる利点は、操作手段または搬送心棒から不慮に滑り落ちたパリソンが加熱空間内へ落下することがない点にある。加熱装置の加熱空間または加熱区間を通過させる搬送の際、放射シャッターはパリソンと支持リング下方で下から係合し、これによって滑り抜けおよび落下が阻止される。時折、機能不良または材料欠陥のために滑り落ちるパリソンが加熱空間内へ落下して、加熱箱の底部で溶融することがある。このため、場合によっては設備の停止および面倒なクリーニングプロセスを必要とする。
【0024】
有利な実施態様では、操作手段が搬送心棒として形成され、該搬送心棒でパリソンを好ましくはぶら下げて搬送することが想定されている。特に、操作手段または搬送心棒はそれぞれ担持ヘッドを有し、該担持ヘッドを用いてパリソンをその口領域で固持することができる。特に鉛直方向において搬送心棒の下端領域に配置されている担持ヘッドは、好ましくは、パリソンを保持するためにパリソンの口開口部内へ係合し、パリソンをクランプして固持するように、形成されている。パリソンを荷重、除荷するため、搬送心棒がパリソンの長手軸線に沿って、または、搬送手段の長手軸線に沿って変位可能に支持されていることが想定されている。特に有利な実施態様では、搬送心棒はパリソンの搬送方向に対し横方向において、または、搬送手段の運動軌道に対し横方向において軸線方向に変位可能であることが想定されている。
【0025】
パリソンを操作手段で荷重するため、特に搬送心棒として形成された操作手段で荷重するため、パリソンは搬送手段の外側に配置される受け渡し装置から、パリソンの長手軸線に沿って軸線方向に、または、パリソンの搬送方向に対し横方向に、または、搬送手段の運動方向に対し横方向に操作手段に受け渡されるように構成されていてよい。これとは択一的に、または、これに加えて、特に搬送心棒として形成された操作手段が担持ヘッドを静止位置から軸線方向へ、特に軸線方向下方へ変位させて、パリソンを荷重のために受け渡し装置から受け取るのが有利である。操作手段のアクティブな運動の際、パリソンの受容後に、パリソンを保持している担持ヘッドを軸線方向において逆方向へ、特に軸線方向上方へ変位させて搬送位置へ到達させることが想定されている。
【0026】
操作手段によってパリソンを除荷するため、対応的に逆方向での運動過程が想定されている。特に、パリソンを除荷するため、パリソン、搬送手段の外側に配置されている取り出し装置により、パリソンの長手軸線に沿って軸線方向に、または、パリソンの搬送方向に対し横方向に、または、搬送手段の運動方向に、操作手段から取り出すように構成されていてよい。これとは択一的に、または、これに加えて、除荷過程に対しても、特に搬送心棒として形成された操作手段が担持ヘッドを搬送位置から軸線方向へ、特に軸線方向下方へ変位させることで、担持ヘッドで保持されているパリソンを除荷のために取り出し装置へ受け渡すように構成されていてよい。操作手段のアクティブな運動の際、パリソンの受け渡し後、空の担持ヘッドを逆の軸線方向へ、特に軸線方向上方へ変位させて静止位置へ到達させることが想定されている。
【0027】
パリソンの支持リングを鉛直方向において本発明による放射シャッターのそばを通過させるようにしてパリソンを軸線方向に移動させることでパリソンを荷重および/または除荷するためには、パリソンの衝突のない変位が保証されていなければならない。本発明によれば、放射シャッターは、パリソンを搬送している間少なくとも一時的に、該放射シャッターの面領域がパリソンの長手方向に見て口部分とは逆の側で支持リングの面領域とオーバーラップするように構成されているので、放射シャッターのオーバーラップしている面領域を、荷重および/または除荷の間に支持リングの運動軌道から離間させねばならない。このため、以下で詳細に説明するように、放射シャッターはたとえば側方へ回動させることができ、または、搬送手段の特定の区間ガイドの際に、前後して案内される2つの放射シャッターの間に拡大する隙間が形成され、このことは、パリソンの衝突のない変位のための自由空間を、すなわち特に軸線方向においてパリソンと放射シャッターとの間での回動運動に対し横方向において放射シャッターのそばを通過する自由空間を保証している。
【0028】
さらに、操作手段またはパリソンの口開口部に少なくとも部分的に係入する担持ヘッドを備えた搬送心棒を使用する場合、有利な構成では、パリソンの口領域に係入する担持ヘッド領域の下面または端面が放射熱に対し反射性を有するように形成されていてよい。これにより、パリソン本体側から作用してパリソンの壁を通じて口領域内へ入射する放射熱による過熱に対する口領域の付加的な遮蔽を得ることができる。担持ヘッドの反射性の下面または端面により、一方では口領域が望ましくない過熱から保護されるとともに、他方ではより多くの放射熱を加熱領域で保持することができるので、加熱装置のエネルギー効率を上昇させることができる。担持ヘッドの下面または端面は、たとえば研磨した金属面、放射熱を反射させるセラミック、または技術水準から知られている他の材料または要素を放射熱の反射のために有していてよい。特に、パリソンの支持リングの下方から入射する放射熱が所定の方向に戻り反射されるように反射面を成形してよい。
【0029】
本発明による加熱装置では、加熱区間が1つまたは複数の加熱部分から成っていることが想定されている。1つの部分はそれぞれ単一の加熱機構から成り、或いは、搬送方向に直列に配置される複数の加熱機構(いわゆる加熱箱)から成っている。搬送手段は、好ましくは、搬送チェーンを形成するために回転軸により回動可能に互いに枢着されているチェーンリンクである。
【0030】
1実施態様では、操作手段が搬送心棒として形成され、この場合搬送手段が搬送チェーンを形成するためにチェーンリンク状に回動可能に互いに枢着されていることが想定されている。さらに、第1実施形態では、搬送チェーンの、互いに直接連続している担持心棒が、パリソンを操作するために用いられるように構成されていてよい。これとは択一的に、操作のために設けられている2つの搬送心棒の間に、1つまたは1つ以上のチェーンリンクが十分幅広の隙間を提供するための空リンクとして挿着されていることが考えられる。この実施態様では、操作のために設けられている2つの搬送心棒の間に、1つまたは1つ以上の搬送心棒が空心棒として設けられていることが考えられる。この場合、空心棒の1つを、本発明による放射シャッターのための保持部として用いることができる。この択一的な実施態様は、たとえば、搬送チェーンで搬送されるパリソンがそれぞれパリソンを操作するために設けられている搬送心棒よりも幅広である場合に、考慮される。
【0031】
好ましくは、各放射シャッターは、それぞれ1つのパリソンを取り囲むように把持するために形成された2つの溝を有している。これとは択一的な実施態様では、1つ以上の放射シャッターが2つのパリソンの間の中間空間内に配置されているように構成されていてよい。この場合、1つのパリソンに境を接している各放射シャッターは、パリソンを部分的に取り囲む1つの溝を有する。溝は、特にパリソンの周形状または半径に適合していてよく、好ましくは支持リングのすぐ下方の領域で、すなわち支持リングの、口部分とは逆の側で、パリソンの周形状または半径に適合していてよい。
【0032】
特に本発明による搬送手段および操作手段の構成および機能を可能にするための本加熱装置の構造的詳細は、前記特許文献6および独国特許出願公開第102014017546.4号明細書に記載されているように実施されていてよい。前記構造的詳細に関してはこれらの文献を引用することにする。
【0033】
特に、荷重および除荷のためにパリソンをその口部分および支持リングでもって放射シャッターのそばを通過させて保持位置へ受容させ、または搬出位置へ放出するようにした従来の搬送心棒を操作手段として使用する場合、放射シャッターが、支持リングを横方向に解放する開口位置と、支持リングを下側から取り囲む閉鎖位置とへ移動可能であることが想定されている。
【0034】
本発明による加熱装置では、放射シャッターの面領域が支持リングとオーバーラップしている。したがって、放射シャッター間の隙間の寸法を非常に小さくさせることができ、これにより加熱区間の放射空間の遮蔽が著しく改善される。パリソンと放射シャッターとの間の隙間では、非常に急勾配の温度プロファイルとが生成され、これによって加熱プロセスに続く2軸延伸のために非常に正確に定義された引き出し領域が生じる。
【0035】
パリソンの支障のない荷重および除荷を可能にするため、放射シャッターは開口位置と閉鎖位置とへ移動可能である。閉鎖位置では、支持リングのパリソン底部側で、放射シャッターの面領域が支持リングの面部分とオーバーラップしている。すなわち放射シャッターは支持リングの下へ係合する。開口位置では、放射シャッターは横方向でパリソンから離間しており、その結果支持リングと放射シャッターとのオーバーラップは解消されている。したがって、1つのパリソンを取り囲んでいる2つの放射シャッターの開口位置で荷重および除荷は衝突なしに実施することができる。
【0036】
放射シャッターは、好ましくは、パリソンを、搬送中に少なくとも一時的にまたは部分的に、たとえば加熱区間を通過するように搬送している間に、部分的に周部分にわたって取り囲むように強制案内されている。その際、たとえば、放射シャッターが搬送経路の直線案内の間に閉鎖位置を占め、カーブ走行の間に開口位置を占めることが想定されている。開口位置または閉鎖位置はカム制御を用いて調整することができる。
【0037】
特に種々のタイプのパリソンまたは容器のための温度プロファイルを適合させるために該温度プロファイルを調整する際の高い融通性を達成させるため、放射シャッターは高さ調整可能に形成されている。この更なる構成では、放射シャッターのパリソン本体側の表面、すなわちパリソンを加熱するための放射空間側の表面と、支持リングまたはパリソンとの間の間隔は、パリソンの長手方向に変更可能である。したがって、温度調整の際に生成される引き出し点は、支持リングに対する間隔で変更させることができる。
【0038】
加熱装置の作用効率は、放射熱と接触する構成部材の材料および表面特性の合目的な選定によって改善させることができる。たとえば、放射シャッターが、パリソンの本体側に、放射熱を反射させる表面を有しているように構成されていてよい。たとえば、表面が研磨されているように構成されていてよい。簡潔な構成では、放射シャッターは金属から製造されていてよい。これとは択一的に、または、これに加えて、放射シャッターが放射熱を反射する層でコーティングされているように構成されていてよい。
【0039】
放射シャッターの過度な昇温と、場合によってはこれに伴う損傷とを回避するため、加熱装置が、放射シャッターに冷却ガスを作用させる冷却機構を有しているように構成されていてよい。
【0040】
好ましくは、放射シャッターの表面は、すなわちパリソン側の表面は、冷却空気の作用を受ける。冷却は放射シャッターの望ましくない昇温を阻止する。
【0041】
1つの可能な実施態様では、放射シャッターが、それぞれ1つのパリソンを部分的に、すなわちある領域で取り囲む2つの溝を有しているように構成されていてよい。この場合、放射シャッターが、パリソンを搬送している間、少なくとも一時的に第1の溝でもって、第1の操作手段で担持されている第1のパリソンを取り囲み、第2の溝でもって、第2の操作手段で担持されている第2のパリソンを取り囲むことが想定されている。
【0042】
溝は、パリソンを部分的に取り囲むことができるように成形されている。口部分または口部分の下方に配置されている支持リングの効率的な遮蔽のため、溝が、1つのパリソンを160゜ないし180゜の角度範囲にわたって取り囲むことが想定されている。
【0043】
好ましくは、溝はパリソンを180゜の角度範囲にわたって取り囲み、すなわち半分を取り囲む。その結果、パリソンの他の側に接続している放射シャッターは残りの角度範囲をカバーすることができる。したがって、パリソンの密な取り囲みを達成でき、よってパリソン本体の領域に入ってくる放射熱に対する可能なかぎり優れた遮蔽を達成できる。
【0044】
可能な構成では、放射シャッターが、操作手段または該操作手段を担持している搬送手段で保持されているように構成されていてよい。第1の実施態様では、放射シャッターがそれぞれ搬送方向に回動可能に搬送手段に枢着されていることが想定されている。その際、放射シャッターの回動軸線と、チェーンリンク状に結合されている2つの搬送手段のチェーンリンク軸線とが一致しているように構成されていてよい。
【0045】
また、放射シャッターが、2つの回動軸を用いて、搬送方向に直接隣り合っている2つの搬送手段と結合され、その際放射シャッターがそれぞれ回動軸により1つの搬送手段と枢着されていることも考えられる。
【0046】
放射シャッターを搬送手段のチェーンリンク軸に回転継手を介して枢着する場合、放射シャッターはカーブ軌道を通過する際にパリソンとの係合を解除されて開口位置へ移動せしめられる。その際にパリソンは解放されて、この状態でパリソンは、支持リングが放射シャッターと衝突することなく、たとえば搬送心棒として形成された操作手段から降ろされ、または受容される。
【0047】
本発明による放射シャッターを使用する際の、パリソンの温度調整に関する特に優れた結果を得るため、放射シャッターに加工された溝のパリソン本体側縁領域は、該縁領域の延在方向に変化する傾斜を有する斜角面を有している。好ましくは、斜角面の角度の増大は、前記縁領域の延在方向に常時変化していてよい。この場合、特に、斜面角の角度、すなわちパリソンの長手軸線に対する角度は、最大傾斜の角度から、すなわちたとえば45゜よりも小さな角度または30゜よりも小さな角度から、最小傾斜の角度へ、すなわち45゜よりも大きな角度または60゜よりも大きな角度へ拡大するように構成されている。
【0048】
この実施態様では、放射シャッターの溝は非対称な斜角面プロファイルを有している。
【0049】
非対称な斜角面プロファイルを有する溝を備えた放射シャッターを使用して加熱過程の一連の実験を行った結果、適当な非対称傾斜推移によって、支持リングのすぐ下の領域で有利な温度勾配が得られることが明らかになった。パリソンをして加熱装置の加熱区間を搬送する際、パリソンは通常加熱空間の片側に配置される放射熱で加熱される。パリソンを取り囲んでいる溝のパリソン本体側縁領域が、パリソンの、加熱放射器とは逆の側で、急傾斜の斜角面角度を有していれば、すなわちパリソンの長手軸線に対したとえば45゜以下または30゜以下の角度を有していれば、この場合に急傾斜に形成された斜角面は、支持リングのすぐ下方の特定の壁領域を合目的に昇温するための反射面として有利に利用することができる。これに対し、パリソンの放射熱側での、パリソンを取り囲んでいる溝のパリソン本体側縁領域の平坦な斜角面角度は、すなわちパリソンの長手軸線に対するたとえば45゜以上または60゜以上の角度は、そうでなければ遮蔽される放射熱を合目的に通過させるために用いることができて、支持リングのすぐ下方でのパリソンの壁領域を温度プロファイルに関し合目的にコンディショニングする。
【0050】
均一な温度プロファイルの形成に関し特に有利なのは、互いに対向しあって1つのパリソンを2つの側から共同して把持する溝の斜角面プロファイルが同一形状に形成されている場合である。このように構成すると、斜角面の勾配変化に関して2つの縁領域の共通の延在態様に無段階に続く斜角面プロファイルが形成される。斜角面の一部分が、特に放射熱を反射させるために設けられている急傾斜の領域が、放射熱を特に好適に反射させる表面または鏡面化された表面或いは対応する表面処理部を有していてよいことはもちろんである。
【0051】
本発明は、本発明による加熱装置を有するブロー成形機も対象としている。ブロー成形機の利点および構成は、上述した本発明による加熱装置に対する実施態様に対応して導かれる。