(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688902
(24)【登録日】2020年4月8日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】制御モデルに基づいて技術システムを制御するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
G05B 13/04 20060101AFI20200421BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20200421BHJP
【FI】
G05B13/04
G06N20/00 130
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-547436(P2018-547436)
(86)(22)【出願日】2017年2月1日
(65)【公表番号】特表2019-510310(P2019-510310A)
(43)【公表日】2019年4月11日
(86)【国際出願番号】EP2017052133
(87)【国際公開番号】WO2017153095
(87)【国際公開日】20170914
【審査請求日】2018年11月16日
(31)【優先権主張番号】102016203855.9
(32)【優先日】2016年3月9日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】デュル,ジークムント
(72)【発明者】
【氏名】ガイペル,マルクス ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ハイネ,イアン−クリシュトフ
(72)【発明者】
【氏名】シュテルツィング,フォルクマール
【審査官】
山村 秀政
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2014/0214733(US,A1)
【文献】
特表2011−513861(JP,A)
【文献】
特開2015−130144(JP,A)
【文献】
特開2000−181526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 13/04
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレーニングされた制御モデル(SM,SM1,SM2)およびトレーニング可能な制御モデル(SM,SM1,SM2)の少なくとも一方に基づいて技術システム(TS)を制御するための方法であって、プロセッサ(PROC)によって、
a)データコンテナ(DC,DC1,DC2)が受信され、該データコンテナ(DC,DC1,DC2)では、トレーニング構造(TSR)を有する制御モデル(SM,SM1,SM2)と、モデルタイプ情報(MTI,MTI1,MTI2)とが、全てのモデルタイプにわたって符号化されており、
b)前記モデルタイプ情報(MTI,MTI1,MTI2)に応じて、複数のモデルタイプ固有の実行モジュール(EM1,EM2,EM3)のうちから1つが前記技術システム(TS)のために選択され、
c)前記モデルタイプ情報(MTI,MTI1,MTI2)に応じて、前記技術システム(TS)の運転データチャネル(BDC)が前記制御モデル(SM,SM1,SM2)の入力チャネル(IC)に割り当てられ、
d)前記技術システム(TS)の運転データ(BD)が、各運転データチャネル(BDC)を介して取得されて、当該運転データチャネル(BDC)に割り当てられた入力チャネル(IC)を介して前記制御モデル(SM,SM1,SM2)に送信され、
e)前記制御モデル(SM,SM1,SM2)が、前記選択された実行モジュール(EM1,EM2)によって実行され、前記送信された運転データ(BD)から前記トレーニング構造(TSR)に従って制御データ(CD)が導出され、
f)前記制御データ(CD)が前記技術システム(TS)を制御するために出力され、
割り当てられるランタイム環境(RE)に実行モジュール(EM1,EM2,EM3)を適応させるために、複数のランタイム環境固有のアダプタ(AD,AD1,AD2)が、それぞれ1つのランタイム環境(RE)に割り当てられており、
前記技術システム(TS)の1つのランタイム環境(RE)に関する環境情報(EI)が取得され、
前記取得された環境情報(EI)に応じて、前記技術システム(TS)の前記ランタイム環境(RE)に割り当てられた1つのアダプタ(AD2)が選択され、
前記選択されたアダプタ(AD2)を介して、前記選択された実行モジュール(EM1,EM2)が前記ランタイム環境(RE)に結合され、
前記選択されたアダプタ(AD2)が、前記技術システム(TS)の前記ランタイム環境(RE)の能力に関する能力情報(CI)を提供し、
前記能力情報(CI)に応じて、前記制御モデル(SM,SM1,SM2)と前記ランタイム環境(RE)との互換性がチェックされ、それに応じて前記制御モデルが実行される、
制御モデルに基づいて技術システムを制御するための方法。
【請求項2】
前記制御モデル(SM,SM1,SM2)が、ニューラルネットワーク、データ駆動型のリグレッサ、サポートベクターマシンおよび決定木の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記データコンテナ(DC,DC1,DC2)内の前記制御モデル(SM,SM1,SM2)が、暗号化された形態で存在し、前記技術システム(TS)によって少なくとも部分的に解読されることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記制御モデル(SM,SM1,SM2)を実行するために復号および解読の少なくとも一方がなされた制御モデル部分に基づいて前記制御モデルのモデル構造を導出することを防止又は困難にするように、前記制御モデル(SM,SM1,SM2)が符号化および暗号化の少なくとも一方がなされていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記データコンテナ(DC,DC1,DC2)内の制御モデル(SM,SM1,SM2)にディジタル署名(SIG)が設けられており、
前記ディジタル署名(SIG)がチェックされ、
前記チェックの結果に応じて前記制御モデルが実行されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記データコンテナ(DC,DC1,DC2)が、前記制御モデル(SM,SM1,SM2)のトレーニングに関するトレーニング情報(TI)を含み、
前記トレーニング情報(TI)に応じて、前記制御モデル(SM,SM1,SM2)の実行および前記実行モジュール(EM1,EM2)の選択の少なくとも一方が行われることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
運転データチャネル(BDC)および入力チャネル(IC)にそれぞれデータタイプ、物理的次元、値範囲および二次的条件の少なくとも1つが割り当てられており、各入力チャネル(IC)への各運転データチャネル(BDC)の割り当ての際に、割り当てられたデータタイプ、物理的次元、値範囲および二次的条件の少なくとも1つに互換性があるかどうかチェックされることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記制御データ(CD)が値範囲、値変化および二次的条件の少なくとも1つに関してチェックされることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記制御モデル(SM,SM1,SM2)が、前記送信された運転データ(BD)に基づいて、定期的に追加トレーニングされるか、又は連続的にトレーニングされることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の方法を実施するように構成されている、トレーニングされた制御モデル(SM,SM1,SM2)およびトレーニング可能な制御モデル(SM,SM1,SM2)の少なくとも一方に基づいて技術システム(TS)を制御するための装置。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか1項に記載の方法を実施するように構成されている、コンピュータプログラム製品。
【請求項12】
請求項11記載のコンピュータプログラム製品を有するコンピュータ読取可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
例えばガスタービン、風力タービン又は製造設備のような複雑な技術システムを制御する場合、通常は予め定められた基準に関してシステム挙動を最適化することが望ましい。このために現代の制御はしばしば機械学習技術を使用する。例えば、制御モデルとしてのニューラルネットワークは、技術システムをさまざまな基準に関して最適化するために、トレーニングすることができる。
【背景技術】
【0002】
しかし、特に大型設備の制御は、使用される制御システムの安全性および柔軟性に関して高度の要求をし、多くの事例で、それらの制御システムは複雑な認証プロセスを経なければならない。しかし、これは、一般に学習ベースの制御システムの使用を困難にする。というのは、それらの制御システムの内部的な相互作用は、外部から理解し難く、しかもトレーニング状態に依存して変化し得るからである。さらに、さまざまの実装要件を伴う多くの制御モデルが存在する。従って、特に大型の技術システムにおいて学習ベースの制御モデルを使用することはしばしば困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、学習ベースの制御モデルのより柔軟な使用を可能にする、技術システムを制御するための方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、請求項1の特徴事項を有する方法によって、請求項12の特徴事項を有する装置によって、請求項13の特徴事項を有するコンピュータプログラム製品によって、ならびに請求項14の特徴事項を有するコンピュータ読取可能な記憶媒体によって解決される。
【0005】
トレーニングされたおよび/またはトレーニング可能な制御モデルに基づいて技術システムを制御するために、データコンテナが受信され、該データコンテナでは、トレーニング構造を有する制御モデルとモデルタイプ情報とが、全てのモデルタイプにわたって
符号化されている。この場合に、トレーニング構造は、特に、トレーニングされた、トレーニング可能な、学習能力のあるおよび/またはトレーニングの際に形成される構造、および/または制御モデルのトレーニング状態に関係し得る。この場合に、トレーニングとは、特に、1つ以上の目標変数への制御モデルの入力パラメータのマッピングをトレーニング段階中に所定の基準に従って最適化することであると理解すべきである。このようなトレーニングは、ニューラルネットワークのトレーニング、分析モデル又は統計モデルの回帰、および/または別の種類のパラメータフィッティングによって実現することができる。本発明によれば、モデルタイプ情報に応じて、複数のモデルタイプ固有の実行モジュールの1つが技術システムのために選択される。さらに、モデルタイプ情報に応じて、技術システムの運転データチャネルが制御モデルの入力チャネルに割り当てられる。技術システムの運転データが、各運転データチャネルを介して取得されて、当該運転データチャネルに割り当てられた入力チャネルを介して制御モデルに送信される。制御モデルが、選択された実行モジュールによって実行され、送信された運転データからトレーニング構造に従って制御データが導出され、該制御データが技術システムを制御するために出力される。制御データとして、制御関連の予測データおよび/または監視データも出力することができる。
【0006】
本発明による方法を実施するために、制御装置、コンピュータプログラム製品ならびにコンピュータ読取可能な記憶媒体が設けられている。
【0007】
本発明の利点は、モデルタイプ固有の実行モジュールによって、技術システムの制御構造を、異なる制御モデルタイプの固有の要求から大々的に切り離すことができることにある。これは全く異なる制御モデルのより簡単かつ柔軟な実装を可能にする。特に、異なる制御モデルを同一の技術システム上で自動的に実行することができ、かつ同一の制御モデルを異なる技術システム上で自動的に実行することができる。モデルタイプ固有に運転データチャネルを入力チャネルに割り当てることによって、制御モデルを運転データによりタイプに応じて制御することができる。
【0008】
本発明の有利な実施形態および発展形態は従属請求項に記載されている。
【0009】
好ましくは、制御モデルがニューラルネットワーク、データ駆動型のリグレッサ、サポートベクターマシンおよび/または決定木を含む。前述の実装部分はそれぞれトレーニング構造を備えており、固有のモデルタイプ情報によって識別することができる。
【0010】
本発明の有利な実施形態に従って、制御モデルがデータコンテナ内に暗号化された形態で存在し、技術システムによって少なくとも部分的に
解読されるとよい。このようにして制御モデルを送信および保存の際に権限のないアクセスから保護することができる。
【0011】
好ましくは、制御モデルの実行のために
復号および/または
解読された制御モデル部分に基づいて制御モデルのモデル構造を導出するのを防止又は困難にするように、制御モデルが
符号化および/または暗号化されている。モデル構造は、例えばニューラルネットワークのトレーニング構造および/または固有の層構造、ノード構造、網目状構造又は重み構造に関連し得る。この場合に、制御モデルは次のように暗号化されるとよい。即ち、実行に関係する制御モデル部分のみは技術システムによって
解読できるが、固有のモデル構造は殆ど隠されたままであるように暗号化されるよい。従って、ニューラルネットワークでは実行可能な計算ルーチンのみが
符号化されるとよく、これから固有のネットワーク構造を導き出すことは困難である。従って、制御モデルは、実質的にはブラックボックスとして実施することができる。この種の
符号化もしくは暗号化によって、モデル構造内に含まれているノウハウを保護することができる。
【0012】
さらに、データコンテナ内の制御モデルは、ディジタル署名を備えており、このディジタル署名は、例えば技術システムによってチェックされる。そのチェック結果に応じて、制御モデルを実行することができる。このようにして、制御モデルのインテグリティを保証することができる。特に、制御モデルの作成、トレーニングおよび/または変更は、明確に、責任ある部署に帰属させることができる。
【0013】
さらに、データコンテナは、制御モデルのトレーニングに関するトレーニング情報を含むことができる。制御モデルの実行および/または実行モジュールの選択は、トレーニング情報に応じて行うとよい。トレーニング情報は、特に制御モデルの行われた又は後続のトレーニング過程に関連するとよい。
【0014】
本発明の有利な実施形態に従って、運転データチャネルおよび入力チャネルにそれぞれデータタイプ、物理的次元、値範囲および/または二次的条件を割り当てることができる。各入力チャネルに各運転データチャネルを割り当てる際に、割り当てられたデータタイプ、物理的次元、値範囲および/または二次的条件が互換性であるかどうかをチェックすることができる。物理的次元として、例えばメートル、秒、グラム又はこれらのうちからの組合せを割り当てることができる。このようにして、多くの場合に、制御モデルが正し
い運転データで制御されることを保証することができる。代替的に又は追加的に、実行中に制御モデルの正しい制御を保証するために、取得された運転データを、データタイプ、物理的次元、値範囲および/または二次的条件に関してチェックすることができる。
【0015】
さらに、制御データが、値範囲、値変化および/または二次的条件に関してチェックされるとよい。トレーニングされた制御モデルの場合には入力データへの出力データの依存性が通常明確に知られてなく、またモデルエラーがしばしば排除できないため、予め与えられた二次的条件をチェックすることによって、誤制御をしばしば回避することができる。
【0016】
本発明の有利な発展形態に従って、複数のランタイム環境固有のアダプタがそれぞれ1つのランタイム環境に割り当てられるとよい。アダプタは、割り当てられたランタイム環境に実行モジュールを適応させるために使用される。さらに、技術システムの1つのランタイム環境に関する環境情報が取得され、その取得された環境情報に応じて、技術システムの当該ランタイム環境に割り当てられたアダプタを選択することができる。その際に、選択された実行モジュールは、選択されたアダプタを介して当該ランタイム環境に結合することができる。このようにして、実行モジュールおよび制御モデルは、殆どそれぞれのランタイム環境に依存せずに作成して実装することができる。従って、アダプタは、殆ど制御モデルのタイプに依存せずに開発して実装することができる。従って、制御モデルとランタイム環境とは、実質的に切り離されており、それによって開発プロセスおよび/または実装プロセスをしばしば著しく簡単化することができる。
【0017】
さらに、選択されたアダプタは、技術システムのランタイム環境の能力に関する能力情報を提供することができる。その能力情報に応じて、制御モデルとランタイム環境との互換性をチェックして、それに応じて制御モデルを実行することができる。このようにして、制御モデルの自動的な実装を簡単化することができる。
【0018】
以下において、図面を参照して本発明の実施例をさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は
符号化された制御モデルを有する本発明によるデータコンテナを示す概略図である。
【
図2】
図2は本発明による制御装置を有する技術システムを示す概略図である。
【
図3】
図3は制御モデルを用いて運転データから制御データを導出する例を示す概略図である。
【
図4】
図4は制御モデルとランタイム環境との協働の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に、
符号化された、トレーニングされたおよび/またはトレーニング可能な制御モデルSMを有する本発明によるデータコンテナDCが概略的に示されている。制御モデルSMは、技術システム又はそのうちの一部分の物理的な、調節技術的なおよび/または確率論的な動力学又はその他の相互作用をシミュレートするために使用される。制御モデルSMは、ニューラルネットワーク、データ駆動型のリグレッサ、サポートベクターマシン、決定木および/または他の分析モデル又はそれらの組み合わせを含むことができる。制御モデルSMは、データコンテナDCにおいて全てのモデルタイプにわたって
符号化されており、例えばいわゆるPMMLフォーマット(PMML:Predictive Model Markup Language、予測モデルマークアップ言語)又は独自仕様のフォーマットで
符号化されている。
【0021】
この実施例では、制御モデルSMは、送信および保存の際のデータ保護のために、付加的に暗号化されている。さらに制御モデルSMはトレーニング構造TSRを有する。トレーニング構造TSRは、学習能力のある構造を、好ましくは予めトレーニングされたトレーニング状態で含む。ニューラルネットワークの場合、トレーニング構造TSRは、例えばニューロンの網目状構造と、ニューロン間の結合の重みとを含み得る。データ駆動型のリグレッサの場合、トレーニング構造TSRはリグレッサモデルの係数を含むことができる。トレーニング構造TSRは、制御モデルSMの実行済のトレーニングにも、今後のトレーニングにも関係し得る。
【0022】
さらに、データコンテナDCは、技術メタデータTMとモデルメタデータMMとを含んでいる。
【0023】
技術メサデータTMは、この実施例では、モデルタイプ情報MTIとトレーニング情報TIと入出力コントラクトデータIOCとを含む。さらに、技術メサデータTMは、例えば制御モデルSMの作成時間のようなコンテキスト情報、計画したターゲットシステムに関する情報、および/または、ランタイム環境に対する制御モデルSMの要求に関する、例えばリアルタイム能力、並列化可能性、計算資源および/または異なる実行モデルとの互換性に関する情報を含んでいる。
【0024】
モデルタイプ情報MTIは、全てのモデルタイプにわたって
符号化されており、制御モデルSMのタイプを表す。その場合に、例えば、制御モデルSMが、ニューラルネットワークに基づくかどうか、データ駆動型のリグレッサに基づくかどうか、サポートベクターマシンに基づくかどうか、決定木に基づくかどうか、および/またはそれらのうちの組み合わせに基づくかどうかを表すことができる。さらに、制御モデルSMの入力変数および/または出力変数、ならびに制御モデルSMのその他の個別の要求、能力および/または特性を表すことができる。
【0025】
トレーニング情報TIは、制御モデルSMの実行されたトレーニングプロセスおよび/または後続のトレーニングプロセスおよび/またはトレーニング状態を表す。
【0026】
入出力コントラクトデータIOCは、制御モデルSMの動作特性に二次的条件を設定するいわゆる入出力コントラクトを指定する。入出力コントラクトデータIOCによって、例えば値範囲、値変化、値変化速度、および/または制御モデルSMの入力データおよび/または出力データのデータタイプのような予め与えられた二次的条件を規定することができる。通常は使用者判読ができないトレーニング構造を有する制御モデルSMの所望の動作特性をチェック可能な方法で保証するために、有利には、出力コントラクトデータIOCが使用者判読可能なフォーマットで表されるとよい。
【0027】
この実施例において、モデルメタデータMMは、制御モデルSMの作成、トレーニングおよび/または変更をした者および/または部署の1つ以上のディジタル署名SIGを含んでいる。
【0028】
さらに、モデルメタデータMMは、制御モデルSMのバージョン情報、権利情報、ソースおよび/またはターゲットシステムに関する情報を含むことができる。さらに、モデルメタデータMMには、例えば監視、予測および/または制御をするために、有効期間に関するデータ、必要なデータ処理資源に関するデータ、および/または許容可能又は実現可能な適用分野に関するデータが含まれ得る。
【0029】
図2は、技術システムTS用の本発明による制御装置CTLを有する技術システムTSを概略図で示す。技術システムTSは、例えば発電所、生産設備、ガスタービン等であってよい。
【0030】
技術システムTSは、技術システムTSのデータ処理および制御をするためのランタイム環境REを持っている。このようなランタイム環境(ここではREである)は、オペレーティングシステム、クラウド/クラスタミドルウェアおよび/またはデータ処理環境を含む。このための例が、Hadoop/HIVEフレームワークを有するLinux(登録商標)クラスタ、クラスタストリームプロセッシング環境又はマルチコアストリームプロセッシング環境である。
【0031】
制御装置CTL、例えばガスタービンの制御システムは、制御装置CTLの全ての方法ステップを実行するために、1つ以上のプロセッサPROCと、モデル実行システムMESとを含んでいる。モデル実行システムMESは、この実施例では、制御装置CTL内に実装されているが、それに代えて又はそれに追加して少なくとも部分的に、例えば1つのクラウド内に実装されていてもよい。モデル実行システムMESは、複数の制御モデルとランタイム環境REとの間の抽象化層として使用することができる。モデル実行システムMESは、複数の実行モジュールEM1,EM2,EM3と複数のアダプタAD1およびAD2とを含む。
【0032】
実行モジュールEM1,EM2,EM3は、技術システム上でもしくは技術システムのために、トレーニングされたおよび/またはトレーニング可能な制御モデルの実行、インストール、初期化および/または解析をするために使用される。 実行モジュールEM1,EM2,EM3は、それぞれ制御モデルタイプに固有である。この種の実行モジュールは、しばしばインタプリタとも称せられる。
【0033】
アダプタAD1およびAD2は、実行モジュール(ここではEM1,EM2,EM3)を異なるランタイム環境に適応させるために使用される。アダプタAD1およびAD2は、それぞれランタイム環境に固有である。
【0034】
ランタイム環境固有の1つのアダプタを選択するために、モデル実行システムMESが、技術システムTS内に存在するランタイム環境REから、ランタイム環境REを記述する環境情報EIを取得する。その取得された環境情報EIに応じて、モデル実行システムMESがアダプタAD1,AD2のうちの1つを選択する。その選択されたアダプタは、環境情報EIによって記述されたランタイム環境(ここではRE)に固有であって、当該ランタイム環境に適している。この実施例では、アダプタAD2が、現在のランタイム環境REに適していることが判明しており、それゆえ選択されて、そのランタイム環境REに結合される。
【0035】
それに従って、選択されたアダプタAD2は、ランタイム環境REに固有の能力に関する能力情報CIを提供し、この能力情報CIに基づいて、モデル実行システムMESによって制御モデルとランタイム環境REとの互換性をチェックすることができる。
【0036】
技術システムTSを制御するために、モデル実行システムMESは、それぞれ
図1に示されているように構成されている異なるデータコンテナDC1およびDC2を受信する。データコンテナDC1およびDC2は、それぞれ固有の制御モデルSM1もしくはSM2を含んでいる。好ましくは、データコンテナDC1およびDC2は、技術システムTSへ固有の情報として送信される。
【0037】
制御モデルSM1およびSM2は、それぞれ
図1との関連で説明したように構成されており、技術システムTS又はその一部の種々の物理的な、調節技術的な、確率的なおよび/またはその他の相互作用のシミュレートするために使用される。制御モデルSM1およびSM2はそれぞれ技術システムの特定部分、特定調節タスク、特定制御タスクおよび/または特定シミュレーションタイプに固有であることが好ましい。制御モデルSM1およびSM2は、それぞれ全てのモデルタイプにわたって
符号化されている。
【0038】
データコンテナDC1およびDC2により、それぞれ制御モデルSM1もしくはSM2のためのモデルタイプ情報MTI1もしくはMTI2が、モデル実行システムMESに送信される。MTI1およびMTI2は、それぞれ制御モデルSM1もしくはSM2のモデルタイプを表し、それぞれ
図1との関連で説明したように構成することができる。
【0039】
データコンテナDC1およびDC2の受信後に、モデル実行システムMESは、これらのデータコンテナを解凍して、ディジタル署名をチェックする。チェック結果が否定的である場合、関連する制御モデルSM1もしくはSM2のさらなる処理は抑制される。さらに、モデル実行システムMESは、各制御モデルSM1もしくはSM2について、それの技術メタデータと能力情報CIとに基づいて、各制御モデルSM1もしくはSM2がランタイム環境REと互換性があるかを、またどの程度まで互換性があるかをチェックする。それに応じて、各制御モデルSM1もしくはSM2のさらなる処理が行われる。
【0040】
さらに、モデル実行システムMESは、暗号化された制御モデルSM1およびSM2を
解読する。その際に、好ましくは、制御モデルは確かに実行できるが、しかし制御モデルのモデル構造は妥当な費用では導出できないように、各制御モデルの実行関連部分のみが
解読される。
【0041】
さらに、モデル実行システムMESは、各制御モデルSM1,SM2のために、モデルタイプ情報MTI1もしくはMTI2に基づいて、また場合によっては他の技術メタデータに基づいて、各制御モデルに固有の実行モジュールを選択する。この実施例では、制御モデルSM1のために実行モジュールEM1が、また制御モデルSM2のために実行モジュールEM2が選択されて割り当てられる。しかる後に、モデル実行システムMESが、選択されたアダプタAD2を介して、選択された実行モジュールEM1およびEM2を、ランタイム環境REに結合する。
【0042】
技術システムTSの運転データを処理するために、モデル実行システムMESは、制御モデルSM1および/またはSM2をランタイム環境RE上で実行する。その際に、モデル実行システムMESは、各制御モデルSM1もしくはSM2の実行を、それぞれ割り当てられた実行モジュールEM1もしくはEM2に委ねる。各制御モデルSM1もしくはSM2の実行中に、各制御モデルSM1もしくはSM2の入出力コントラクトデータに基づいて、それによって指定された入出力コントラクトの順守が監視されて保証される。
【0043】
図3は、結合されたアダプタADを用いて実行モジュールEMによって技術システムTS上で実行される制御モデルSMにより、技術システムTSの運転データBDから制御データCDを導出する例を示す。図を分かり易くする理由から、同一の技術システムTSが
図3の両側に概略的に示されている。技術システムTS、制御モデルSMならびにアダプタADは、好ましくは、
図1および
図2との関連で説明したように構成されている。
【0044】
制御モデルSMは、トレーニング構造TSRを有するニューラルネットワークNNを用いて実装されている。
【0045】
技術システムTSは、技術システムTSの運転データBDを取得するためのセンサSを持っている。運転データBDは、例えば、技術システムTSの物理的な、調節技術的な、および/または構造形式に依存した運転変数、特性、デフォルト値、状態データ、システムデータ、制御データ、センサデータおよび/または測定値であり得る。特に、運転データBDはセンサSからではないデータも含み得る。
【0046】
運転データBDは、技術システムTSの固有の運転データチャネルBDCを介して取得される。この場合に、運転データチャネルBDCは、運転データBDのデータタイプ、物理的次元、出所、機能および/またはその他の特性に対して固有である。
【0047】
制御モデルSMは、制御モデルSMの異なる入力パラメータ又は入力データが割り当てられている異なる入力チャネルICを有する。入力チャネルICは、入力パラメータもしくは入力データのパラメータタイプ、物理的次元に、出所、機能および/またはその他の特性に対して固有である。
【0048】
入力チャネルICと運転データチャネルBDCとの間では、次の割り当てIMAPが行なわれる。即ち、この割り当てIMAPでは、各入力チャネルICに、モデルタイプ情報MTIに基づいて、また場合によっては入出力コントラクトデータIOCに基づいて、それぞれ運転データチャネルBDCのうちの1つが割り当てられる。割り当てIMAPは、モデル実行システムMESによって、好ましくは選択された実行モジュールEMを用いて行われる。
【0049】
運転データチャネルBDCおよび入力チャネルICにそれぞれ割り当てられたデータタイプ、物理的次元、値範囲および/または二次的条件に基づいて、入力チャネルICの割り当てられたデータタイプ、物理的次元、値範囲もしくは二次的条件と、運転データチャネルBDCの割り当てられたデータタイプ、物理的次元、値範囲もしくは二次的条件とに互換性があるかどうかが、モデル実行システムMESによってチェックされる。互換性がない場合には、制御モデルSMの実行が抑制される。
【0050】
運転データチャネルBDCを介して取得された運転データBDは、割り当てられた入力チャネルICを介して、入力データとして制御モデルSMに供給される。モデル実行システムMESは、選択された実行モジュールEMにより制御モデルSMを実行し、その際に、送信された運転データBDから、トレーニング構造TSRに従って制御データCDが導出される。制御データCDは、制御モデルSMの出力データとして出力される。この場合、制御データCDは、技術システムTSを制御するために使用され、特に制御に関連のある予測データおよび監視データでもあり得る。
【0051】
制御データCDは、制御モデルSMの異なる出力パラメータに割り当てられた制御モデルSMの固有の出力チャネルOCを介して出力される。これらの出力チャネルOCは、それらを介して出力される制御データCDのパラメータタイプ、用途、目的および/または制御機能に対して、それぞれ固有である。
【0052】
モデル実行システムMESは、好ましくは、選択された実行モジュールEMによって、技術システムの複数の制御チャネルCDCの1つへの各出力チャネルOCの割り当てOMAPを実行する。その割り当ては、モデルタイプ情報MTIに応じて、また場合によっては入出力コントラクトデータIOCに応じて行われる。その割り当てOMAPでは、制御チャネルCDCおよび出力チャネルOCの割り当てられたデータタイプ、物理的次元、値範囲等が互いに互換性であるかどうかがチェックされる。互換性でない場合には、制御モデルSMの実行が抑制される。
【0053】
制御モデルSMの実行中に、モデル実行システムMESによって、入出力コントラクトデータIOCに基づいて当該入出力コントラクトデータの順守が監視および保証される。
【0054】
図4は異なる制御モデルSM1,・・・,SMMと異なるランタイム環境RE1,・・・,,RENとの協働の例を示す。
【0055】
ランタイム環境RE1,・・・,,RENは、それぞれ複数のランタイム環境固有のアダプタのAD1,・・・,もしくはADNを介してモデル実行システムMESに上述のように結合されている。さらに、制御モデルSM1,・・・,SMMが、それぞれ複数のモデルタイプ固有の実行モジュールのEM1,・・・,もしくはEMMを介して上述のようにモデル実行システムMESに結合されている。
【0056】
ランタイム環境のRE1,・・・,もしくはRENにおける運転データの到達、又はこれらのランタイム環境の1つによるこれらの運転データの取得は、運転データのデータ駆動型の処理を次によって引き起こす。即ち、ランタイム環境に固有のアダプタAD1,・・・,もしくはADNと、モデルタイプに固有の実行モジュールEM1,・・・,もしくはEMMとを介して、制御モデルSM1,・・・,もしくはSMMに対して、取得されたランタイム環境RE1,・・・,もしくはRENの処理を委任DBDすることによって引き起こす。この場合、委任DBDはモデル実行システムMESによって仲介される。
【0057】
各制御モデルSM1,・・・,もしくはSMMによって導出された制御データの出力は、モデル実行システムMESによって仲介される技術システムの制御プロセスの委任DCDを引き起こす。委任DCDは、各制御モデルSM1,・・・,もしくはSMMから、各割り当てられたモデルタイプ固有の実行モジュールEM1,・・・,もしくはEMMと、各ランタイム環境に固有のアダプタAD1,・・・,もしくはADNとを介して、割り当てられたランタイム環境RE1,・・・,もしくはRENに対して行われ、当該ランタイム環境が制御データに基づいて技術システムTSを制御する。
【符号の説明】
【0058】
AD,AD1,・・・,ADN アダプタ
BD 運転データ
BDC 運転データチャネル
CD 制御データ
CDC 制御チャネル
CI 能力情報
CTL 制御装置
DC,DC1,DC2 データコンテナ
EI 環境情報
EM,EM1,EM3 実行モジュール
IC 入力チャネル
IMAP 割り当て
IOC 入出力コントラクトデータ
MES モデル実行システム
MM モデルメタデータ
MTI,MTI1,MTI2 モデルタイプ情報
NN ニューラルネットワーク
OC 出力チャネル
OMAP 割り当て
PROC プロセッサ
RE,RE1,RE2 ランタイム環境
S センサ
SIG ディジタル署名
SM,SM1,SM2 制御モデル
TI トレーニング情報
TM 技術メタデータ
TS 技術システム
TSR トレーニング構造