特許第6688906号(P6688906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6688906脂環族モノマーが適用されたポリアミック酸組成物及びこれを用いた透明ポリイミドフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688906
(24)【登録日】2020年4月8日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】脂環族モノマーが適用されたポリアミック酸組成物及びこれを用いた透明ポリイミドフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20200421BHJP
【FI】
   C08G73/10
【請求項の数】12
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-551729(P2018-551729)
(86)(22)【出願日】2016年11月1日
(65)【公表番号】特表2019-500487(P2019-500487A)
(43)【公表日】2019年1月10日
(86)【国際出願番号】KR2016012483
(87)【国際公開番号】WO2017111289
(87)【国際公開日】20170629
【審査請求日】2018年7月12日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0182872
(32)【優先日】2015年12月21日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】504408236
【氏名又は名称】ドゥーサン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、トン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】オ、ヒョン ソク
(72)【発明者】
【氏名】アン、キョン イル
【審査官】 岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2014−0118386(KR,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0110589(KR,A)
【文献】 国際公開第2015/125895(WO,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2016−0125377(KR,A)
【文献】 国際公開第2015/122032(WO,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2016−0079836(KR,A)
【文献】 特開2015−214597(JP,A)
【文献】 特開2016−204569(JP,A)
【文献】 特表2010−536981(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0311796(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2009−0019306(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C08J
C08K
C08L
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)フッ素化第1のジアミン及びスルホン系第2のジアミンのみからなるジアミン、
(b)フッ素化第1のジアンヒドリドと脂環族第2のジアンヒドリドとを含有するジアンヒドリド、及び
(c)有機溶媒;
を含み、
前記脂環族第2のジアンヒドリドは、全ジアンヒドリド100モル%に対して、10〜80モル%の範囲で含まれており、
前記フッ素化第1のジアミンの使用量は、全ジアミン100モル%に対して、60〜90モル%であることを特徴とするポリアミック酸組成物。
【請求項2】
前記脂環族第2のジアンヒドリドは、下記の化1で示されるものであることを特徴とする請求項1に記載のポリアミック酸組成物。

(式中、Cyは、炭素数4〜20の4価炭化水素環基であり、前記炭化水素環基は、フッ素で置換又は非置換されることができる。)
【請求項3】
前記Cyは、
からなる群から選択されるものであることを特徴とする請求項2に記載のポリアミック酸組成物。
【請求項4】
前記脂環族第2のジアンヒドリドは、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物(CPDA)及びビシクロ[2,2,2]−7−オクテン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物(BCDA)からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリアミック酸組成物。
【請求項5】
前記フッ素化第1のジアンヒドリドの含有量は、全ジアンヒドリド100モル%に対して、20〜90モル%であることを特徴とする請求項1に記載のポリアミック酸組成物。
【請求項6】
前記ジアンヒドリドは、非フッ素化第3のジアンヒドリドをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のポリアミック酸組成物。
【請求項7】
前記ジアミン(a)と前記ジアンヒドリド(b)とのモル数比(a/b)は、0.7〜1.3の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のポリアミック酸組成物。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載のポリアミック酸組成物をイミド化して製造され、ASTM E313規格による黄色度が3以下であり、ガラス転移温度(Tg)が、350〜390℃の範囲であることを特徴とする透明ポリイミド樹脂フィルム。
【請求項9】
前記ポリイミド樹脂は、化2又は化3で示される繰り返し単位を含むことを特徴とする請求項に記載の透明ポリイミド樹脂フィルム。
(式中、Cyは、炭素数4〜20の4価炭化水素環基であって、前記炭化水素環基は、フッ素で置換又は非置換されることができ、
Yは、ジアミンから誘導された炭素数6〜40の2価有機基であり、脂肪族基、単環式脂肪族基、単環式芳香族基、縮合多環式芳香族基、又は、芳香族基が直接、又は、橋かけにより連結される非縮合多環式芳香族基である。)
【請求項10】
前記繰り返し単位のYは、
からなる群から選択されるものであることを特徴とする請求項に記載透明ポリイミド樹脂フィルム。
(ここで、R〜Rは、互いに同一又は異なって、それぞれ独立に、水素、又はフッ素で置換又は非置換のC〜Cのアルキル基であり、R及びRは、それぞれ独立に、水素又はヒドロキシ基である。)
【請求項11】
波長550nmの光線透過率が90%以上であり
式で算出される厚さ方向の複屈折位相差(Rth)が、厚さ10μm当り、90nm〜100nmであることを特徴とする請求項に記載の透明ポリイミド樹脂フィルム。
位相差Rth(nm)=[(n−n)×d+(n−n)×d]/2
(nは、波長550nmの光で測定されるポリイミド樹脂フィルムのx方向の屈折率であり、nは、波長550nmの光で測定されるポリイミド樹脂フィルムのy方向の屈折率であり、nは、波長550nmの光で測定されるポリイミド樹脂フィルムのz方向の屈折率であり、dは、ポリイミドフィルムの厚さである。)
【請求項12】
フレキシブルディスプレイ用基板及び保護膜として使用されることを特徴とする請求項に記載の透明ポリイミド樹脂フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルディスプレイ基板又は保護膜として適用可能な透明ポリイミド樹脂、及び、このようなポリイミド樹脂を製造するためのポリアミック酸組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリイミド(Polyimide、PI)樹脂とは、芳香族ジアンヒドリドと芳香族ジアミン又は芳香族ジイソシアネートとを溶液重合してポリアミック酸誘導体を製造した後、高温で閉環脱水によりイミド化して製造される高耐熱樹脂を指す。
【0003】
前記ポリイミド樹脂を製造するための芳香族ジアンヒドリド成分としては、ピロメリト酸二無水物(PMDA)又はビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)などが使用され、前記芳香族ジアミン成分としては、オキシジアニリン(ODA)、p−フェニレンジアミン(p−PDA)、m−メチレンジアミン(m−MDA)、メチレンジアミン(MDA)、ビスアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(HFDA)などが主に使用されている。このようなポリイミド樹脂は、不溶又は不融の超高耐熱性樹脂であって、耐熱酸化性、耐熱特性、耐放射線性、低温特性、耐薬品性などに優れた特性を有するため、自動車材料、航空や宇宙船素材などの耐熱に優れた新素材、及び、絶縁コーティング剤、絶縁膜、半導体、LCDの電極保護膜などの電子材料として、広範な分野で使用されている。
【0004】
しかし、ポリイミド(PI)樹脂は、芳香族環の密度が高く、これにより、褐色又は黄色に着色され、可視光線領域において透過度が低くなるため、透明性が求められる分野に使用することが困難である。近年、無色透明なポリイミドフィルムが開発されつつあるが、この場合、既存のポリイミド樹脂に比べて、熱膨張係数(CTE)が高く、耐溶剤性が低くなる。これにより、前記無色透明なポリイミドを、基板用、光学用のコート及びフィルムとして使用する場合、高い熱膨張係数による反りや捩れが生じ易いという問題点がある。これにより、上述の用途で使用される場合、ポリイミドフィルムの低い熱膨張係数が要求される。また、ディスプレイ材料として適用するためには、優れた光学的特性及び優れた耐熱特性を備える必要がある。
【0005】
それで、ディスプレイ材料として適用するため、ガラス基板のような高透明性を示しかつ耐熱性に優れた、低い熱膨張係数を有する透明プラスチック基板を製造するためのポリアミック酸(Polyamic acid)組成物の開発が要望されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであって、特定の化学構造及び反応基を有するモノマーを導入することで、光学特性及び熱的特性が従来に比べて改善されることに着目したものである。
【0007】
具体的に、本発明は、高透明性のポリイミド樹脂を得るためには、剛直な(Rigid)化学構造を有するジアンヒドリドモノマーの導入が効果的であることを知見し、特定の化学構造を有するジアミン及びジアンヒドリドモノマーを採択し、これらの含有量を特定の範囲に調節することで、低いY.I(Yellow Index)、高い光透過度、及び高いガラス転移温度(T)などを同時に実現することができる、透明ポリアミック酸組成物を提供することを目的とする。
【0008】
さらに、本発明の他の目的は、LCD及びOLEDのフレキシブルディスプレイ用プラスチック透明基板、TFT基板、フレキシブル印刷回路基板、フレキシブルOLED面照明基板、電子ペーパー用基板材料などに適用可能な透明ポリアミック酸組成物、及び、これで製造された透明ポリイミドフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、(a)ジアミン、(b)フッ素化第1のジアンヒドリドと脂環族第2のジアンヒドリドとを含有するジアンヒドリド、及び、(c)有機溶媒を含み、前記脂環族第2のジアンヒドリドは、全ジアンヒドリド100モル%に対して、10〜80モル%の範囲で含まれることを特徴とするポリアミック酸組成物を提供する。
【0010】
本発明の好適な一例によれば、前記脂環族第2のジアンヒドリドは、下記の化1で示されるものであることができる。
【化1】
式中、Cyは、炭素数4〜20の4価炭化水素環基であり、前記炭化水素環基は、フッ素で置換又は非置換されることができる。
【0011】
本発明において、前記脂環族第2のジアンヒドリドは、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物(CPDA)及びビシクロ[2,2,2]−7−オクテン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物(BCDA)からなる群から選択される1種以上であることができる。
【0012】
本発明において、前記フッ素化第1のジアンヒドリドの含有量は、全ジアンヒドリド100モル%に対して、20〜90モル%であることができる。
【0013】
本発明において、前記ジアンヒドリドは、非フッ素化第3のジアンヒドリドをさらに含むことができる。
【0014】
本発明において、前記ジアミンは、フッ素化第1のジアミン及びスルホン系第2のジアミンからなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0015】
本発明において、前記フッ素化第1のジアミンの含有量は、全ジアミン100モル%に対して、50〜100モル%であることができ、前記スルホン系第2のジアミンの含有量は、全ジアミン100モル%に対して、0〜50モル%であることができる。
【0016】
本発明において、前記ジアミン(a)と前記ジアンヒドリド(b)とのモル数比(a/b)は、0.7〜1.3の範囲であることができる。
【0017】
また、本発明は、上述のポリアミック酸組成物をイミド化して製造される透明ポリイミド樹脂フィルムを提供する。
【0018】
本発明において、前記ポリイミド樹脂は、ガラス転移温度(T)が、350〜390℃の範囲であることができる。
【0019】
本発明において、前記透明ポリイミド樹脂フィルムは、波長550nmの光線透過率が90%以上であり、ASTM E313規格による黄色度が3以下であり、次式で算出される厚さ方向の位相差(Rth)が、厚さ10μm当たり、90nm〜100nmであることができる。
位相差Rth(nm)=[(n−n)×d+(n−n)×d]/2
(ここで、nは、波長550nmの光で測定されるポリイミド樹脂フィルムのx方向の屈折率であり、nは、波長550nmの光で測定されるポリイミド樹脂フィルムのy方向の屈折率であり、nは、波長550nmの光で測定されるポリイミド樹脂フィルムのz方向の屈折率であり、dは、ポリイミドフィルムの厚さである。)
【0020】
本発明において、前記透明ポリイミド樹脂フィルムは、フレキシブルディスプレイ用基板及び保護膜として使用することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、特定の構造を有するジアミン及びジアンヒドリドモノマーを採択し、その組成を調節することにより、高いガラス転移温度(T)、低い黄色度、高い光透過度などを同時に有するポリアミック酸組成物を提供することができる。
【0022】
また、本発明によれば、高い光透過度及び高いガラス転移温度を有する前記ポリアミック酸組成物を基板に適用することにより、優れた物性及び製品の信頼性を発揮するフレキシブルディスプレイ基板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について詳述する。なお、下記のものは例示に過ぎず、本発明はこれらの例によって制限されるものではなく、後述の特許請求範囲によって定義される。
【0024】
<ポリアミック酸組成物>
本発明のポリアミック酸組成物は、透明ポリイミド樹脂フィルムを製造するためのものであって、(a)ジアミン、(b)フッ素化第1のジアンヒドリドと脂環族第2のジアンヒドリドとを含有するジアンヒドリド及び(c)有機溶媒を含み、この時、脂環族第2のジアンヒドリドを、特定範囲の含有量で含むように構成されることを特徴とする。
【0025】
前記脂環族第2のジアンヒドリドは、化学構造が剛直(Rigid)であるため、熱や光による分解が発生することなく安定している。従って、これを含むポリアミック酸組成物の光学特性及び熱的特性を有意に改善することができる。
【0026】
また、本発明では、ヒドロキシ基(−OH)又はスルホン基(−SO−)が導入されるジアンヒドリド又はジアミンモノマーをさらに適用することで、優れた接着力特性及び光学的特性を発揮することが可能となる。
【0027】
本発明の透明ポリアミック酸の製造に使用されるジアミン単量体(a)としては、当業界で周知のものを使用することができ、例えば、フッ素置換基が導入されたジアミン単量体を使用することができる。好ましくは、フッ素化第1のジアミン、スルホン系第2のジアミン又はこれらの混合物を使用する。
【0028】
使用可能なジアミン単量体(a)としては、例えば、オキシジアニリン(ODA)、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(2,2’−TFDB)、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,3’−ジアミノビフェニル(2,2’−Bis(trifluoromethyl)−4,3’−Diaminobiphenyl)、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−5,5’−ジアミノビフェニル(2,2’−Bis(trifluoromethyl)−5,5’−Diaminobiphenyl)、ビスアミノヒドロキシフェニルヘキサフルオロプロパン(DBOH)、ビスアミノフェノキシフェニルヘキサフルオロプロパン(4BDAF)、ビスアミノフェノキシフェニルプロパン(6HMDA)、ビスアミノフェノキシジフェニルスルホン(DBSDA)、ビス(4−アミノフェニル)スルホン(4,4’−DDS)、ビス(3−アミノフェニル)スルホン(3,3’−DDS)、スルホニルジフタル酸無水物(SODPA)、ビス(カルボキシフェニル)ジメチルシラン、又は、これらの1種又は2種以上の混合物を適用することができるが、これらに制限されない。
【0029】
本発明のジアミン単量体(a)において、前記フッ素化第1のジアミン及びスルホン系第2のジアミンは、それぞれ、化合物中、フッ素化構造及びスルホン系を含むジアミンモノマーであれば、特に限定されない。なお、高いガラス転移温度と光学特性を実現するため、フレキシブル構造を有するモノマーを選択して使用することが好ましい。
【0030】
高透明性、高いガラス転移温度及び低い黄色度を考慮して、前記フッ素化第1のジアミンとしては、直線状の高分子化を誘導し得る2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(2,2’−TFDB)を使用することが好ましい。また、前記スルホン系第2のジアミンは、ビス(4−アミノフェニル)スルホン(4,4’−DDS)を含むことが好ましい。
【0031】
本発明において、前記フッ素化第1のジアミンの使用量は、特に限定されないが、例えば、全ジアミン100モル%に対して、50〜100モル%であることができ、好ましくは、60〜90モル%の範囲である。
【0032】
また、本発明において、前記スルホン系第2のジアミンの使用量は、特に限定されないが、例えば、全ジアミン100モル%に対して、0〜50モル%の範囲であることができ、好ましくは、5〜45モル%の範囲である。
【0033】
本発明の透明ポリアミック酸の製造に使用されるジアンヒドリド(b)単量体としては、当業界で周知のフッ素化第1のジアンヒドリドと、脂環族第2のジアンヒドリドを使用することができる。
【0034】
前記フッ素化第1のジアンヒドリド単量体としては、フッ素置換基が導入された芳香族ジアンヒドリドであれば、特に限定されない。
【0035】
使用可能なフッ素化第1のジアンヒドリドとしては、例えば、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(2,2−bis(3,4−dicarboxyphenyl)hexafluoropropane dianhydride、6−FDA)、4−(トリフルオロメチル)ピロメリト酸二無水物(4−(trifluoromethyl)pyromellitic dianhydride、4−TFPMDA)などが挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0036】
フッ素化ジアンヒドリドの中の6−FDAは、分子鎖間及び分子鎖内の電荷移動錯体(CTC:Change Transfer Complex)の形成を制限するという特性が非常に大きいので、透明化に非常に適している。従って、前記フッ素化第1のジアンヒドリドとしては、(2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(2,2−bis(3,4−dicarboxyphenyl)hexafluoropropane dianhydride、6−FDA)を使用することが好ましい。
【0037】
本発明において、前記フッ素化第1のジアンヒドリドの使用量は、特に制限されないが、例えば、全ジアンヒドリド100モル%に対して、20〜90モル%であり、好ましくは、30〜80モル%の範囲である。
【0038】
また、本発明において使用可能な脂環族第2のジアンヒドリドとしては、化合物の内、芳香族環でなく、脂環族環を有しかつ酸二無水物構造を有する化合物であれば、特に制限されない。
【0039】
前記脂環族第2のジアンヒドリドは、下記の化1で示されるものであることが好ましい。
【化2】
式中、Cyは、炭素数4〜20の4価炭化水素環基であり、前記炭化水素環基は、フッ素で置換又は非置換されることができる。
【0040】
本発明の好適な一例によれば、前記Cyは、
【化3】
からなる群から選択することができる。
【0041】
本発明において使用可能な脂環族第2のジアンヒドリドとしては、例えば、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物(CPDA)、ビシクロ[2,2,2]−7−オクテン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物(BCDA)、又は、これらの1種以上の混合物などが挙げられるが、これらに制限されない。
【0042】
本発明において、前記脂環族第2のジアンヒドリドの使用量は、特に制限されないが、例えば、全ジアンヒドリド100モル%に対して、10〜80モル%の範囲であることができ、好ましくは、20〜70モル%の範囲である。
【0043】
本発明では、ジアンヒドリド成分として、フッ素置換基が導入されていない非フッ素化芳香族第3のジアンヒドリドをさらに含むことができる。
【0044】
使用可能な非フッ素化第3のジアンヒドリド単量体として、例えば、ピロメリト酸二無水物(Pyromellitic Dianhydride、PMDA)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’−Biphenyl tetracarboxylic acid dianhydride、BPDA)などが挙げられるが、これらに制限されない。これらは、単独で使用又は2種以上を混用することができる。
【0045】
本発明において、前記非フッ素化第3のジアンヒドリドの使用量は、特に制限されないが、全ジアンヒドリド100モル%に対して、5〜50モル%の範囲であることができ、好ましくは、5〜40モル%の範囲である。
【0046】
本発明の透明ポリアミック酸組成物において、前記ジアミン成分(a)のモル数と前記ジアンヒドリド成分(b)のモル数との比(A/B)は、0.7〜1.3であることができ、好ましくは、0.8〜1.2、より好ましくは、0.9〜1.1の範囲である。
【0047】
本発明のポリアミック酸組成物に含まれる、上述の単量体の溶液重合反応を行うための溶媒(c)としては、当業界で公知の有機溶媒を制約なく使用することができる。
【0048】
使用可能な溶媒としては、例えば、m−クレゾール、N−メチル−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、ジエチルアセテート、及び、ジメチルフタレート(DMP)からなる群から選択される1つ以上の極性溶媒を使用することができる。その他、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルムのような低沸点溶液又はγ−ブチロラクトンのような低吸収性溶媒を使用することができる。
【0049】
前記溶媒の含有量は、特に限定されないが、適正なポリアミック酸溶液の分子量及び粘度を得るために、重合用溶媒(第1の溶媒)の含有量は、ポリアミック酸組成物の全重量に対して、50〜95重量%の範囲であることができ、好ましくは、70〜90重量%、より好ましくは、75〜85重量%の範囲である。
【0050】
本発明では、上述の成分を有するジアンヒドリドとジアミンとを、前記有機溶媒に投入した後、反応させることで、ポリアミック酸組成物を製造する。例えば、フッ素系第1のジアミン、スルホン系第2のジアミン、フッ素系第1のジアンヒドリド、脂環族第2のジアンヒドリドなどの成分を、ガラス転移温度及び黄色度の改善を図るため、ジアミン(a)とジアンヒドリド(b)とがおよそ1:1の当量比となるようにして透明ポリアミック酸組成物を形成する。
【0051】
前記ポリアミック酸組成物の組成は、特に制限されないが、例えば、ポリアミック酸組成物の全100重量%に対して、酸二無水物2.5〜25.5重量%、ジアミン2.5〜25.5重量%、及び、残部の有機溶媒を含んで構成することができる。なお、本発明に係るポリアミック酸組成物の組成において、固形分100重量%に対して、酸二無水物30〜70重量%、及び、ジアミン30〜70重量%の範囲であることができるが、これらに制限されない。
【0052】
このような本発明の透明ポリアミック酸組成物は、約1,000〜50,000cps、好ましくは、約3,000〜15,000cps範囲の粘度を有することができる。ポリアミック酸溶液の粘度が上述の範囲内であれば、ポリアミック酸溶液のコーティング時に、厚さの調節が容易で、均一なコーティング表面が得られる。
【0053】
また、本発明のポリアミック酸溶液は、必要に応じて、本発明の目的と効果を損なわない範囲で、可塑剤、酸化防止剤、難燃化剤、分散剤、粘度調節剤、レベリング剤などの添加剤を少量含むことができる。
【0054】
本発明のポリアミック酸溶液は、フッ素化第1のジアンヒドリドと、脂環族第2のジアンヒドリドと、ジアミンと、必要に応じて非フッ素化第3のジアンヒドリドとを有機溶媒に投入した後、反応させることで製造することができる。
【0055】
この時、反応条件は、特に限定されず、反応温度は、−20〜80℃が好ましく、重合時間は、1〜48時間、好ましくは、2〜12時間の範囲であることができる。また、アルゴンや窒素などの不活性雰囲気下で反応を行うことがより好ましい。上述の透明ポリアミック酸溶液を、発熱溶液の重合反応を行うことで、透明ポリアミック酸樹脂を合成することができる。
【0056】
<ポリイミド樹脂フィルム>
本発明は、上述のポリアミック酸溶液を高温でイミド化及び熱処理を行って製造されるポリイミド樹脂フィルムを提供する。
【0057】
前記ポリイミド樹脂は、イミド(imide)環を含む高分子物質であって、耐熱性、耐化学性、耐摩耗性及び電気的特性に優れている。なお、前記ポリイミド樹脂は、ランダム共重合体(Random copolymer)又はブロック共重合体(block copolymer)の形態であることができる。
【0058】
本発明に係るポリイミド樹脂は、下記の化2又は化3で示される繰り返し単位を含むことができる。
【化4】
【化5】
式中、Cyは、炭素数4〜20の4価炭化水素環基であり、前記炭化水素環基は、フッ素で置換又は非置換されることができ、
Yは、ジアミンから誘導される炭素数6〜40の2価有機基であって、脂肪族基、単環式脂肪族基、単環式芳香族基、縮合多環式芳香族基、又は、芳香族基が直接、又は、橋かけで互いに連結された非縮合多環式芳香族基である。
【0059】
本発明の好適な一例によれば、前記繰り返し単位において、Cyは、
【化6】
からなる群から選択することができる。
【0060】
また、前記繰り返し単位において、Yは、
【化7】
からなる群から選択することができる。
【0061】
式中、R〜Rは、互いに同一又は異なって、それぞれ独立に、水素、又はフッ素で置換又は非置換のC〜Cのアルキル基であり、R及びRは、それぞれ独立に、水素又はヒドロキシ基である。
【0062】
なお、ポリイミド樹脂フィルムは、フレキシブルディスプレイなどに適用するためには、基本的に、高透明性、低い熱膨張係数、高いガラス転移温度などの特徴を有する必要がある。より具体的に、膜厚さ10μmの場合、400nmの光透過率が75%以上、550nmの光透過率が90%以上、550nmでの黄色度の値が3以下、ガラス転移温度(T)が300℃以上、などが要求される。
【0063】
実際に、上述のポリアミック酸組成物をイミド化して製造される本発明のポリイミド樹脂フィルムは、繰り返し単位内に剛直な(Rigid)化学構造を有することで、高透明性を示しながら、低い黄色度及び熱膨張係数、高いガラス転移温度(T)を有するようになる。より具体的に、(i)ガラス転移温度(T)は、350℃以上、好ましくは、350〜390℃の範囲であり、(ii)膜厚さ10μmで、550nmの光線透過率が90%以上であり、(iii)ASTM E313規格による550nmでの黄色度(Yellow Index、Y.I)が3以下(厚さ10μm)であり、(iv)下記の式で算出される厚さ方向の複屈折位相差(Rth)が、厚さ10μm当り、100nm以下、好ましくは、90nm〜100nmの範囲を有することができる。
位相差Rth(nm)=[(n−n)×d+(n−n)×d]/2
ここで、nは、波長550nmの光で測定されるポリイミド樹脂フィルムのx方向の屈折率であり、nは、波長550nmの光で測定されるポリイミド樹脂フィルムのy方向の屈折率であり、nは、波長550nmの光で測定されるポリイミド樹脂フィルムのz方向の屈折率であり、dは、ポリイミドフィルムの厚さである。
【0064】
本発明に係るポリイミド樹脂フィルムは、常法で製造することができ、例えば、前記透明ポリアミック酸組成物を、ガラス基板にコーティング(キャスティング)した後、30〜350℃の範囲で徐々に昇温しながら、0.5〜8時間の間、イミド閉環反応(Imidazation)を誘導させることで製造することができる。
【0065】
なお、前記コーティング方法は、当業界で周知の方法を制約なく使用することができ、例えば、スピンコーティング(spin coating)法、ディップコーティング(dip coating)法、ソルベントキャスティング(solvent casting)法、スロットダイコーティング(slot die coating)法及びスプレーコーティング法からなる群から選択される少なくとも1つの方法で行うことができる。前記無色透明なポリイミド層の厚さが、数百nm〜数十μmとなるように、透明ポリアミック酸組成物のコーティングを1回以上行うことができる。
【0066】
上述のように、透明ポリイミドフィルムは、種々の分野で使用することができ、特に、高透明性及び耐熱性が要求される、有機EL素子(OLED)用ディスプレイ、液晶素子用ディスプレイ、TFT基板、フレキシブル印刷回路基板、フレキシブルOLED面照明基板、電子ペーパー用基板素材のようなフレキシブルディスプレイ用基板及び保護膜として活用することができる。
【0067】
以下、好適な実施例を挙げて本発明について詳述する。後述の実施例は、本発明の理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の範囲は、これらの実施例によって限定されない。
【0068】
[実施例1]
1.透明ポリアミック酸組成物の製造
より具体的に、100mlの三口丸底フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)58.504g(85.0wt%)を入れた後、反応器の温度を50℃に昇温し、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(2,2’−TFDB)3g(4.3wt%)を加え、30分後、ビス(4−アミノフェニル)スルホン(4,4’−DDS)1.551g(2.3wt%)を加えた。次に、当該モノマーを1時間攪拌し、2,2’−TFDB及び4,4’−DDSを完全に溶解させた。次に、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(2,2−bis(3,4−dicarboxyphenyl)hexafluoropropane dianhydride、6−FDA)及びシクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)を、それぞれ順次に、4.855g(7.1wt%)、0.919g(1.3wt%)加えた後、30℃に冷却して溶解させた。この時、固形分は15%であった。次に、3時間攪拌した。モノマー反応終了後、自然冷却し、25℃での溶液粘度65poise(6500CPs)の透明ポリアミック酸組成物を得た。
【0069】
2.透明ポリイミドフィルムの製造
前記透明ポリアミック酸溶液をLCD用ガラスにスピンコーティングを行った後、窒素雰囲気のコンベクションオーブンで、80℃で30分間、150℃で30分間、200℃で1時間、段階的に徐々に昇温しながら乾燥及びイミド閉環反応(Imidazation)を行った。これにより、イミド化率が85%以上である、膜厚さ10μmの透明ポリイミドフィルムを製造した。次に、フッ酸でガラスをエッチングし、ポリイミドフィルムを得た。
【0070】
[実施例2]
1.透明ポリアミック酸組成物の製造
上述の実施例1と同様な条件で、丸底フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)54.114g(85.0wt%)を入れた後、反応器の温度を50℃に昇温し、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(2,2’−TFDB)3g(4.7wt%)を加え、30分後、ビス(4−アミノフェニル)スルホン(4,4’−DDS)1.551g(2.4wt%)を加えた。次に、当該モノマーを1時間攪拌し、2,2’−TFDB及び4,4’−DDSを完全に溶解させた。次に、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(2,2−bis(3,4−dicarboxyphenyl)hexafluoropropane dianhydride、6−FDA)及びシクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)を、それぞれ順次に、3.468g(5.5wt%)、1.531g(2.4wt%)加えた後、30℃に冷却して溶解させた。この時、固形分は15%であった。次に、3時間攪拌した。モノマー反応終了後、自然冷却し、25℃での溶液粘度80poise(8000CPs)の透明ポリアミック酸組成物を得た。
【0071】
2.透明ポリイミドフィルムの製造
無色透明なポリイミドフィルムの製造は、上述の実施例1と同様に行った。
【0072】
[実施例3]
1.透明ポリアミック酸組成物の製造
上述の実施例1と同様な条件で、丸底フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)44.833g(85.0wt%)を入れた後、反応器の温度を50℃に昇温し、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(2,2’−TFDB)3g(5.7wt%)を加え、30分後、ビス(4−アミノフェニル)スルホン(4,4’−DDS)0.582g(1.1wt%)を加えた。次に、当該モノマーを1時間攪拌し、2,2’−TFDB及び4,4’−DDSを完全に溶解させた。次に、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(2,2−bis(3,4−dicarboxyphenyl)hexafluoropropane dianhydride、6−FDA)及びシクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)を、それぞれ順次に、3.641g(6.9wt%)、0.689g(1.3wt%)加えた後、30℃に冷却して溶解させた。この時、固形分は15%であった。次に、3時間攪拌した。モノマー反応終了後、自然冷却し、25℃での溶液粘度56poise(5600CPs)の透明ポリアミック酸組成物を得た。
【0073】
2.透明ポリイミドフィルムの製造
無色透明なポリイミドフィルムの製造は、上述の実施例1と同様に行った。
【0074】
[実施例4]
1.透明ポリアミック酸組成物の製造
上述の実施例1と同様な条件で、丸底フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)42.273g(85.0wt%)を入れた後、反応器の温度を50℃に昇温し、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(2,2’−TFDB)3g(4.2wt%)を加え、30分後、ビス(4−アミノフェニル)スルホン(4,4’−DDS)1.551g(2.2wt%)を加えた。次に、当該モノマーを1時間攪拌し、2,2’−TFDB及び4,4’−DDSを完全に溶解させた。次に、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(2,2−bis(3,4−dicarboxyphenyl)hexafluoropropane dianhydride、6−FDA)及びビシクロ[2,2,2]−オクテン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物(BCDA)を、それぞれ順次に、4.855g(6.9wt%)、1.163g(1.7wt%)加えた後、30℃に冷却して溶解させた。この時、固形分は15%であった。次に、3時間攪拌した。モノマー反応終了後、自然冷却し、25℃での溶液粘度47poise(4700CPs)の透明ポリアミック酸組成物を得た。
【0075】
2.透明ポリイミドフィルムの製造
無色透明なポリイミドフィルムの製造は、上述の実施例1と同様に行った。
【0076】
[実施例5]
1.透明ポリアミック酸組成物の製造
上述の実施例1と同様な条件で、丸底フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)41.560g(85.0wt%)を入れた後、反応器の温度を50℃に昇温し、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(2,2’−TFDB)3g(4.3wt%)を加え、30分後、ビス(4−アミノフェニル)スルホン(4,4’−DDS)1.551g(2.2wt%)を加えた。次に、当該モノマーを1時間攪拌し、2,2’−TFDB及び4,4’−DDSを完全に溶解させた。次に、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(2,2−bis(3,4−dicarboxyphenyl)hexafluoropropane dianhydride、6−FDA)及び1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物(CPDA)を、それぞれ順次に、4.855g(7.0wt%)、0.984g(1.5wt%)加えた後、30℃に冷却して溶解させた。この時、固形分は15%であった。次に、3時間攪拌した。モノマー反応終了後、自然冷却し、25℃での溶液粘度50poise(5000CPs)の透明ポリアミック酸組成物を得た。
【0077】
2.透明ポリイミドフィルムの製造
無色透明なポリイミドフィルムの製造は、上述の実施例1と同様に行った。
【0078】
[比較例1]
上述の実施例1と同様な条件下で、丸底フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)53.180g(84.0wt%)を入れた後、反応器の温度を50℃に昇温し、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(2,2’−TFDB)3g(4.7wt%)を加え、30分後、ビス(4−アミノフェニル)スルホン(4,4’−DDS)1.551g(2.4wt%)を加えた。次に、当該モノマーを1時間攪拌し、2,2’−TFDB及び4,4’−DDSを完全に溶解させた。次に、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(2,2−bis(3,4−dicarboxyphenyl)hexafluoropropane dianhydride、6−FDA)及びピロメリト酸二無水物(PMDA)を、それぞれ順次に、4.855g(7.6wt%)、1.022g(1.3wt%)加えた後、30℃に冷却して溶解させた。この時、固形分は15%であった。次に、3時間攪拌した。モノマー反応終了後、自然冷却し、25℃での溶液粘度43poise(4300CPs)の透明ポリアミック酸組成物を得た。
【0079】
2.透明ポリイミドフィルムの製造
前記ポリアミック酸溶液をLCD用ガラスにスピンコーティングを行った後、窒素雰囲気のコンベクションオーブンで、80℃で30分間、150℃で30分間、200℃で1時間、300℃で1時間、段階的に徐々に昇温しながら乾燥及びイミド閉環反応(Imidazation)を行った。これにより、イミド化率が85%以上である、膜厚さ10μmの透明ポリイミドフィルムを製造した。次に、フッ酸でガラスをエッチングし、ポリイミドフィルムを得た。
【0080】
[比較例2]
1.透明ポリアミック酸組成物の製造
上述の実施例1と同様な条件で、丸底フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)58.581g(84.0wt%)を入れた後、反応器の温度を50℃に昇温し、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(2,2’−TFDB)3g(4.3wt%)を加え、30分後、ビス(4−アミノフェニル)スルホン(4,4’−DDS)1.551g(2.2wt%)を加えた。次に、当該モノマーを1時間攪拌し、2,2’−TFDB及び4,4’−DDSを完全に溶解させた。次に、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(2,2−bis(3,4−dicarboxyphenyl)hexafluoropropane dianhydride、6−FDA)を6.936g(9.5wt%)加えた後、30℃に冷却して溶解させた。この時、固形分は15%であった。次に、3時間攪拌した。モノマー反応終了後、自然冷却し、25℃での溶液粘度20poise(2000CPs)の透明ポリアミック酸組成物を得た。
【0081】
2.透明ポリイミドフィルムの製造
前記ポリアミック酸溶液をLCD用ガラスにスピンコーティングを行った後、窒素雰囲気のコンベクションオーブンで、80℃で30分間、150℃で30分間、200℃で1時間、300℃で1時間、段階的に徐々に昇温しながら乾燥及びイミド閉環反応(Imidazation)を行った。これにより、イミド化率が85%以上である、膜厚さ10μmの透明ポリイミドフィルムを製造した。次に、フッ酸でガラスをエッチングし、ポリイミドフィルムを得た。
【0082】
[比較例3]
1.透明ポリアミック酸組成物の製造
上述の実施例1と同様な条件で、丸底フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)40.744g(84.0wt%)を入れた後、反応器の温度を50℃に昇温し、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(2,2’−TFDB)3g(6.2wt%)を加え、30分後、ビス(4−アミノフェニル)スルホン(4,4’−DDS)1.551g(1.2wt%)を加えた。次に、当該モノマーを1時間攪拌し、2,2’−TFDB及び4,4’−DDSを完全に溶解させた。次に、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(2,2−bis(3,4−dicarboxyphenyl)hexafluoropropane dianhydride、6−FDA)及びピロメリト酸二無水物(PMDA)を、それぞれ順次に、3.641g(7.5wt%)、0.766g(1.1wt%)加えた後、30℃に冷却して溶解させた。この時、固形分は15%であった。次に、3時間攪拌した。モノマー反応終了後、自然冷却し、25℃での溶液粘度43.2poise(4320CPs)の透明ポリアミック酸組成物を得た。
【0083】
2.透明ポリイミドフィルムの製造
前記ポリアミック酸溶液をLCD用ガラスにスピンコーティングを行った後、窒素雰囲気のコンベクションオーブンで、80℃で30分間、150℃で30分間、200℃で1時間、300℃で1時間、段階的に徐々に昇温しながら乾燥及びイミド閉環反応(Imidazation)を行った。これにより、イミド化率が85%以上である、膜厚さ10μmの透明ポリイミドフィルムを製造した。次に、フッ酸でガラスをエッチングし、ポリイミドフィルムを得た。
【0084】
上述の実施例1〜5及び比較例1〜3で得られたポリアミック酸組成物の組成を下記の表1に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
[物性評価]
実施例1〜5及び比較例1〜3で得られた透明ポリイミド樹脂フィルムの物性を、下記のような方法で評価し、その結果を下記の表2に示す。
【0087】
<物性評価方法>
1)光透過度の測定
400nm及び550nmの波長で、UV−Vis NIR Spectrophotometerを用いて、ASTM E313−73規格であるC光源及び2°視野角で測定した。
【0088】
2)複屈折の測定
複屈折測定装置(Retarder、大塚社製、RETs−100)を用いて測定した。サンプルは、横5cm×縦5cmの正方形の試験片をサンプルホルダーに装着し、モノクロメーターを用いて550nmに固定し、厚さ方向複屈折(Rth)は、入射角45°で測定した。
th=[(n−n)×d+(n−n)×d]/2
ここで、nは、x方向の屈折率、nは、y方向の屈折率、nは、z方向の屈折率、dは、ポリイミドフィルムの厚さを10μmに換算して計算した値である。
【0089】
3)黄色度の測定
UV分光計(コニカミノルタCM−3700d)を用いて、550nmでの黄色度を、ASTM E313規格によって測定した。
【0090】
4)ガラス転移温度(T)の測定
示差走査熱量計(DSC、TAインスツルメント社製、Q200)を用いて、ガラス転移温度を測定した。
【0091】
5)厚さの測定
シリコンウェハに、透明ポリアミック酸樹脂を、膜厚さ20μm以下となるようにコーティングを行った後、乾燥及びイミド閉環反応を行い、550nm波長での非接触式屈折率測定装置(Ellipso Technology社製、Elli−RP)を用いて、フィルムの厚さを測定した。
【0092】
6)接着力の測定(ASTM D3002/D3359)
ガラス基板の上に、透明ポリアミック酸樹脂を、膜厚さ20μm以下となるようにコーティングを行った後、乾燥及びイミド閉環反応を行い、形成されたポリイミド薄膜の表面を刃物でカットし、カットされた表面の上に接着力測定用テープを貼り付けた後、剥離し、ポリイミド接着面の剥離状態を確認した。
【0093】
この時、5Bは、剥離されたポリイミドの百分率が0%、4Bは、剥離されたポリイミドの百分率が5%以下、3Bは、剥離されたポリイミドの百分率が5〜15%、2Bは、剥離されたポリイミドの百分率が15〜35%、1Bは、剥離されたポリイミドの百分率が35〜65%、0Bは、剥離されたポリイミドの百分率が65%超であることをそれぞれ示す。
【0094】
【表2】
【0095】
表1に示されるように、本発明の無色透明なポリイミドフィルムは、その特性値が、脂環族ジアンヒドリドであるCBDAの添加量が多くなるほどガラス転移温度(Tg)が高くなるという結果が得られ、CBDAによるガラス転移温度の上昇効果が確認された。
【0096】
また、フレキシブルディスプレイ材料及び基板として適用するためには、550nm条件での透過度が90%以上、厚さの複屈折が100nm以下、黄色度が3以下であるという条件を満たす必要がある。前記表1の結果によれば、上述の条件をいずれも満たすことが確認された。
【0097】
さらに、基板のガラス転移温度(T)が300℃〜400℃の範囲である条件を満たす必要があるが、本発明では、ガラス転移温度(T)が350℃〜390℃の範囲であるため、フレキシブルディスプレイ材料として適用可能な条件を満たすことが確認された。
【0098】
上述のような結果から、本発明のポリアミック酸組成物は、フレキシブルディスプレイ用基板及び保護膜として適用可能であることが確認された。