(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
支持体20上でフッ素樹脂と無機フィラーとの水分散液またはフッ素樹脂のみの水分散液を被せた(コートした)後、焼成する工程を繰り返して形成された多層構造のフッ素樹脂フィルム10を支持体20上から剥離することによって、多層構造のフッ素樹脂フィルム10を事前形成する段階と、
前記事前形成されたフッ素樹脂フィルム10を金属基材30上に提供する段階と、
前記フッ素樹脂フィルム10と金属基材30を熱圧着する段階とを含み、
前記熱圧着段階では有機化合物が含まれたプライマーまたは接着剤を使用せず、
前記多層構造のフッ素樹脂フィルム10の事前形成段階は、
支持体20上に第1層として、流れ性が良好なフッ素樹脂とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)との混合物の水分散液を被せて(コートして)焼成する段階と、
第2層として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロプロピルビニルエーテル共重合体(TFM)、ポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体(MFA)のうちの1種、またはこれらの2種以上の混合物であるフッ素樹脂と、第2層の焼成前で混合前のフッ素樹脂と無機フィラーの総体積100vol%に対して体積基準含量が5〜50vol%である無機フィラーと、の混合物の水分散液を被せて(コートして)焼成する段階と、
第3層として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなるフッ素樹脂と、第3層の焼成前で混合前のフッ素樹脂と無機フィラーの総体積100vol%に対して体積基準含量が25vol%以下である無機フィラーと、の混合物の水分散液を被せて(コートして)焼成する段階を含む、
調理器具用中間材の製造方法。
前記フッ素樹脂と無機フィラーとの水分散液またはフッ素樹脂のみの水分散液を被せる(コートする)段階で支持体20の含浸が行われ、前記含浸により支持体20の両面に前記フッ素樹脂と無機フィラーとの水分散液またはフッ素樹脂のみの水分散液が被せられる(コートされる)ようになる、請求項1に記載の調理器具中間材の製造方法。
前記平板型プレス板は摂氏300度〜410度の温度を維持するように加熱され、100psi〜800psiの圧力が加えられる、請求項3に記載の調理器具用中間材の製造方法。
前記圧着機の二つのローラは摂氏330度〜420度の温度を維持するように加熱され、2MPa〜15MPaの圧力が加えられ、0.2〜5m/minのライン速度が適用される、請求項4に記載の調理器具用中間材の製造方法。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景となる先行技術として本発明の出願日前に公開された特許文献3件を紹介する。
【0003】
まず、関連先行技術として日本特許出願公開2009−195276号に開示された技術を紹介する。前記日本特許文献は、SUMITOMO ELEC FINE POLYMER INC.によって出願されたものであって、発明の名称は「フッ素樹脂が被覆されたアルミニウム板および調理用加熱器具」である。本日本特許文献では、アルミニウム板などの金属基材上にベース層、中間層および最外層の多層構造のフッ素コーティング層を形成している。本日本特許文献で注目すべき点は、このような多層構造のフッ素コーティング層の形成において、アルミニウム板を先にエッチング処理して表面に微細な凹凸を形成した後、PTFE分散液を塗布、熱処理してベース層を形成し、その上にPFA粉体とフィラーの分散液を塗布、熱処理して中間層を形成し、中間層の表面にPFA分散液を塗布、熱処理して最外層を形成するということである。本発明者は、前記日本特許文献に開示された方式でフッ素樹脂のコーティングを実施すると、フッ素コーティング剤内に含まれている揮発性成分によって、ピンホールの形成を排除できないということを発見した。ピンホールなどのコーティング不良が発生すると、その部分で離型性が低下する問題点と調理器具の使用寿命が短くなる問題点が発生する。
【0004】
次いで、関連先行技術として日本特許出願公開2001−218684号に開示された技術を紹介する。前記日本特許文献は、OSAKA GAS CO LTD.によって出願されたものであって、発明の名称は「調理器具のための部材および調理器具」である。本日本特許文献では、アルミニウム板などの金属基材上に3層のフッ素樹脂含有コーティング層を形成している。本日本特許文献で注目すべき点は、このような3層のフッ素コーティング層の形成において、基材の表面を凹凸処理した後、合計3層のフッ素樹脂含有塗料をスプレーコーティング法などによって順次塗装する方式を使用するということである。併せて、本日本特許文献ではコーティング剤の溶剤として、トルエン、ベンゼン、キシレン、テトラヒドロフラン、アセトンなどを使用しているだけでなく、PI、PPS、PESなどの有機バインダーを使用している。コーティング剤に前記のような溶剤を使用することによりピンホールの発生の可能性が高くなり、前記のような有機バインダーの使用により高温加熱時に変色などの問題が発生する恐れがある。
【0005】
最後に、関連先行技術として日本特許出願公開2007−313871号に開示された技術を紹介する。前記日本特許文献は、ラミネート工業株式会社により出願されたものであって、発明の名称は「ラミネート金属板の製造方法とその方法によって製造されたラミネート金属板」である。本日本特許文献では、
図1に図示された方法でフッ素樹脂フィルムを金属板に接合させている。より具体的には、本日本特許文献は金属板3を火炎4、5により加熱し、加熱した金属板3とフッ素樹脂フィルム2をローラ6により圧着させて接合させる方式を開示している。ところで、このような直火方式の火炎処理ではローラ6の均一な温度維持が難しい。したがって、ローラ6の圧着過程での付着性に偏差が発生する可能性がある。ひいては、前記日本特許文献では、あらかじめ形成されたフッ素樹脂フィルム2を金属板3に付着する方法を取っているが、本発明特有のフッ素樹脂フィルムの事前形成方式と特有のフッ素樹脂の構成については提示していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前述した従来技術の問題点を解決するためのものであって、多層構造のフッ素樹脂を金属基材上に形成する過程で、ピンホールの発生の可能性を未然に防止する新しい多層構造のフッ素樹脂フィルムの事前形成段階を含む調理器具用中間材の製造方法と前記方法により製造された調理器具用中間材を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は金属基材上に多層構造のフッ素樹脂フィルムを熱圧着する過程で、有機化合物が含まれたプライマーまたは接着剤を使用せずとも金属基材とフッ素樹脂フィルムとの間の堅固な結合を達成できる調理器具用中間材の製造方法と前記方法により製造された調理器具用中間材を提供することを目的とする。
【0008】
さらに、本発明は事前形成されたフッ素樹脂フィルムを金属基材上に熱圧着する最適な工程条件を提示すると共に、調理器具として完成時に最適な離型性、耐熱性、耐薬品性および耐摩耗性を発揮できるフッ素樹脂フィルムの構成を提示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するための本発明の代表的な構成は次の通りである。
【0010】
本発明の一実施例に係る調理器具用中間材の製造方法は、支持体20上でフッ素樹脂と無機フィラーの水分散液またはフッ素樹脂のみの水分散液を被せた(コートした)後、焼成する工程を繰り返して形成された多層構造のフッ素樹脂フィルム10を支持体20上から剥離することによって多層構造のフッ素樹脂フィルム10を事前形成する段階と;前記事前形成されたフッ素樹脂フィルム10を金属基材30上に提供する段階と;前記フッ素樹脂フィルム10と金属基材30を熱圧着する段階とを含む。併せて、前記熱圧着段階では有機化合物が含まれたプライマーまたは接着剤を使用しないのが本発明の特徴の一つである。
【0011】
本発明の一実施例に係る調理器具用中間材の製造方法において、前記多層構造のフッ素樹脂フィルム10の事前形成段階は、支持体20上に第1層として流れ性が良好なフッ素樹脂とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の混合物の分散液を被せて(コートして)焼成する段階と、第2層としてフッ素樹脂と体積を基準に含量が5〜50%である無機フィラーの混合物の分散液を被せて(コートして)焼成する段階と、第3層としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)と体積を基準に含量が25%以下である無機フィラーの混合物の分散液を被せて(コートして)焼成する段階を含む。
【0012】
前記フッ素樹脂分散液を被せる(コートする)段階では支持体20の含浸が行われ、前記含浸により支持体20の両面にフッ素樹脂水分散液が被せられ(コートされ)得る。
【0013】
また、前記熱圧着段階では平板型プレス板を加熱しながら圧着が行われてもよく、二つのローラを含む圧着機を加熱しながら圧着が行われてもよい。
【0014】
平板型プレス板を加熱しながら熱圧着段階を行う場合、平板型プレス板は摂氏300度〜410度の温度を維持するように加熱され、100psi〜800psiの圧力が加えられるように運転されることが好ましい。
【0015】
二つのローラを含む圧着機を加熱しながら熱圧着段階を行う場合、二つのローラは摂氏330度〜420度の温度を維持するように加熱され、2MPa〜15MPaの圧力が加えられ、0.2〜5m/minのライン速度が適用されるように運転されることが好ましい。
【0016】
前述した調理器具用中間材の製造方法により製造された調理器具用中間材は、本発明の権利範囲に包括されるという点が理解されるべきである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、多層構造のフッ素樹脂を金属基材上に形成する過程で、ピンホールの発生の可能性を未然に防止する新しい多層構造のフッ素樹脂フィルムの事前形成段階を含む調理器具用中間材の製造方法と前記方法により製造された調理器具用中間材が提供される。ピンホールが発生すると、調理器具に臭いが付いたり、調理器具の加熱過程で浸透した水分が揮発してコーティング膜が剥離したり、塩分成分の浸透により耐食性が低下してコーティング膜が剥離し、その結果、調理器具の離型性が低下して細菌が繁殖する問題が発生するが、本発明によるとこのようなピンホールの発生の可能性が除去される良好な作用効果が発生する。
【0018】
また、本発明によると、金属基材上に多層構造のフッ素樹脂フィルムを熱圧着する過程で、有機化合物が含まれたプライマーまたは接着剤を使用せずとも金属基材とフッ素樹脂フィルムとの間の堅固な結合を達成できる調理器具用中間材の製造方法と前記方法により製造された調理器具用中間材が提供される。前述した有機化合物が含まれたプライマーまたは接着剤は熱分解の可能性があり、これによる耐熱性の低下の問題を抱いている。本発明によると、有機化合物が含まれたプライマーまたは接着剤の使用が根本から排除されるため、耐熱性の低下の問題点が除去されて調理された食品の安全性が向上する良好な作用効果が発生する。
【0019】
さらに、本発明によると、事前形成されたフッ素樹脂フィルムを金属基材上に熱圧着する最適な工程条件が提示されると共に、調理器具として完成時に最適な離型性、耐熱性、耐薬品性および耐摩耗性を発揮できるフッ素樹脂フィルムの構成が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付した図面を参照して、本発明の好ましい実施例について本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるほど詳細に説明する。
【0022】
本発明を明確に説明するために、本発明と関係のない部分は省略し、明細書全体を通じて同じ構成要素については同じ参照符号を付する。また、図面に示された各構成の大きさなどは説明の便宜のために任意に示したため、本発明は必ずしも図示されたものに限定されない。
【0023】
すなわち、明細書に記載されている特定の形状、構造および特性は、本発明の思想および範囲を逸脱することなく一実施例から他の実施例に変更して具現され得、個別構成要素の位置または配置も本発明の思想および範囲を逸脱することなく変更され得るものと理解されるべきである。したがって、後述する詳細な説明は限定的な意味として行われるものではなく、本発明の範囲は特許請求の範囲の請求項が請求する範囲およびそれと均等なすべての範囲を包括するものと理解されるべきである。
【0024】
図2は、本発明の一実施例により多層フッ素樹脂フィルムを事前形成する製造工程を図示する図面である。本発明の代表的な特徴の一つは、調理器具の本体を形成する金属基材上にフッ素樹脂層を直接形成するのではなく、多層フッ素樹脂フィルムを事前形成することにあり、
図2はこのような工程を概念的に図示する。
【0025】
フッ素樹脂は分子中にフッ素を含有した樹脂を総称するものであって、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をはじめとして、本明細書に例示された多様な種類が存在する。一般にフッ素樹脂は、耐熱性、耐薬品性に優れ、摩擦係数が小さいだけでなく、接着、粘着性がない特性を有しているため、調理器具用コーティング剤として広く使用されてきた。
【0026】
最も代表的なフッ素樹脂であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、融点(melting point)が摂氏320度以上であり、略摂氏450度程度で分解が始まるため、その加工性と流れ性が非常によくないものと知られている。
【0027】
フッ素樹脂をフィルムに製造する方法としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の極めて劣る加工性と流れ性を改善したフッ素樹脂を使用し、これを溶融させて押出することによって、フィルムに引き抜く方式が存在した。ところで、このような方式ではフッ素樹脂フィルムを一度に多層に形成することが商業的に制限された。また、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をビレット(billet)に形成した後、その表面を削ってフィルムに形成するスカイビング(skiving)方式が存在したが、この方式でも多層フィルムの形成が不可能であっただけでなく、無機フィラーを適正比率含有させることが商業的に制限された。これは無機フィラーの含量が多くなると、ビレットを形成する過程中にビレットが壊れる現象が発生するためである。
【0028】
本発明の
図2の実施例に係る工程では、まず、支持体を提供する。
図2の工程における支持体20は、本明細書で用いられる金属基材30という用語とは区分されて理解されなければならない。金属基材30は、調理器具の本体を形成するアルミニウム板などの金属を指し示し、
図2の実施例で支持体20は、このような金属基材上に熱圧着される多層構造のフッ素樹脂フィルム10を形成するために中間工程でのみ使用される構成要素である。多層構造のフッ素樹脂フィルム10の形成が完了すると、このフィルムは支持体20から剥離されて次の工程である金属基材上への結合工程に投入される。支持体20はポリイミドなどの合成樹脂で製造されてもよく、金属で製造されてもよい。
【0029】
支持体20が提供された後、フッ素樹脂フィルム10の第1層11となるフッ素樹脂が含まれた水分散液を支持体20上に塗布する。次いで、焼成工程を経ることになる。焼成工程は、フッ素樹脂第1層11が塗布された支持体20を略摂氏350度〜摂氏450度(前記温度に制限されるものではない)に加熱する段階を含む。このような加熱段階で分散液のうち蒸溜水が除去され、小さい微粒子の状態で蒸溜水に分散していたフッ素樹脂が支持体20に結合される。このような焼成工程を経た後、第2層12となるフッ素樹脂が含まれた水分散液を支持体20上に結合されたフッ素樹脂第1層11の上に塗布した後、2次焼成工程を経る。第2次焼成工程が終了した後には、フッ素樹脂フィルムの第3層13となるフッ素樹脂が含まれた水分散液をフッ素樹脂第2層12上に塗布した後、3次焼成工程を経る。
図2の実施例では3層からなるフッ素樹脂フィルム10を形成しているので、フッ素樹脂水分散液の塗布と焼成工程がそれぞれ3回行われたが、本発明はこれに制限されるものではなく、事前形成しようとするフッ素樹脂フィルム10の層の個数と厚さに応じてフッ素樹脂分散液の塗布と焼成工程の回数はいくらでも変動可能である。
【0030】
本発明で水分散液を塗布して焼成を実施する一サイクルの工程によって形成されるフィルム層の厚さは2μm〜25μmであることが、ピンホール除去効果の達成に効果的であるという事実が本発明者らの実験の繰り返しの結果、明らかとなった。より好ましくは、水分散液を塗布して焼成を実施する一サイクルの工程によって形成されるフィルム層の厚さは5μm〜10μmであることが、ピンホール除去効果の達成にさらに効果的である。
【0031】
本願の
図2と関連して必ず理解しなければならない点は、本発明に係る工程では、複数層のフッ素樹脂フィルム10の形成において、各1層からなるフィルムを複数個形成した後、これらフィルムを熱圧着などの方式で結合して複数層のフッ素樹脂フィルムを形成するのではなく、金属基材上に最終的に熱圧着される複数層からなるフッ素樹脂フィルム10を分散液の塗布と焼成工程の繰り返しによって形成するという点である。すなわち、本発明に係る工程は、金属基材30上に形成されるフッ素樹脂の層の個数だけフッ素樹脂フィルムを事前に準備してこれら複数個のフッ素樹脂フィルムを金属基材上に結合するのではなく、複数層からなる一個のフッ素樹脂フィルム10を事前形成してこれを金属基材30上に熱圧着するのに特徴がある。本発明に係る工程は、複数個のフィルムを事前形成する方式に比べて金属基材上への熱圧着時に付着性の偏差を相対的に減らすことができ、工程が単純化されるという利点を有する。
【0032】
図2に図示された通り、最後の層に対する焼成工程が終了すると、フッ素樹脂フィルム10は支持体20から剥離される。
【0033】
図2に図示された工程は、複数層からなる一個のフッ素樹脂フィルム10を事前形成するという共通点を維持しつつ、一度に二つのフィルム層を形成することができ、ピンホール除去の側面でも有利な含浸段階を含む工程で代替され得る。
【0034】
図2に図示された工程を代替できる含浸段階を含む工程において、支持体20はフッ素樹脂水分散液が貯蔵された容器に含浸(dipping)され得、このような含浸によって支持体20の両面にフッ素樹脂層が形成される。含浸に続き、焼成工程を経るようになる。各含浸時に水分散液の組成を異ならせると、一個のフッ素樹脂フィルム10内に構成成分を異にする多層フッ素樹脂フィルムを形成することができる。
【0035】
図3は、本発明の一実施例により形成された多層フッ素樹脂フィルム10を金属基材30上に熱圧着する製造工程を図示する図面である。
【0036】
金属基材30は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、マグネシウム、アルミニウムメッキ鋼、鉄、ステンレススチールなどから選択された1種の材質で構成されるか、このような金属板が2個以上圧延された形態のクラッド材であり得るがこれに制限されるものではない。
【0037】
また、金属基材30は多層フッ素樹脂フィルム10との結合工程前にその表面が事前処理され得る。このような金属基材30の表面前処理作業は、サンドブラスト、ブラッシング、研磨、ヘアーラインなどの物理的方式とエッチング、アノダイジング、化成処理、燐酸塩処理などの化学的方式のいずれも可能であり、このような方式で制限されるものではない。前記金属基材30の厚さは調理器具としての使用に適合するように選択され、いかなる厚さの金属基材30でも本発明の技術的思想の範疇を逸脱することなく製造可能であるという点が理解されるべきである。
【0038】
本発明の
図3の実施例に図示された工程で、金属基材30は平板の形態で提供される。平板の形態で提供された金属基材30上に、
図2に図示され、明細書の関連部分で説明された通りに形成された多層フッ素樹脂フィルム10が載置される。その後、プレスが多層フッ素樹脂フィルム10を金属基材30上に熱圧着する。
【0039】
一方、
図3に図示されたプレス工程の他に、Roll to Roll工程も適用が可能である。
【0040】
本発明の発明者らは、事前多層フッ素樹脂フィルム形成工程と後続する金属基材との圧着工程からなる新しい概念の調理器具用中間材の製造方法を適用するにおいて、前述した平板型プレス工程または二つのローラを含むRoll to Roll工程の最適な運転条件を明らかにするために繰り返し実験を遂行したのであり、その結果、次のような運転条件を導き出した。
【0041】
まず、平板型プレス工程では、摂氏300度〜410度を維持するための熱を加えつつ、100〜800psiに設定されたプレス圧を適用することが、多層フッ素樹脂フィルム10と金属基材30との間の良好な圧着と生産性の条件の側面で最適な運転条件であることを見出した。
【0042】
次いで、二つのローラを含むRoll to Roll工程では、摂氏330度〜420度の温度と2〜15MPaの圧力および0.2〜5m/minのライン速度(Line Speed)が多層フッ素樹脂フィルム10と金属基材30との間の良好な圧着と生産性の条件の側面で最適な運転条件であることを見出した。
【0043】
前述した平板型プレス工程とRoll to Roll工程は、生産可能な調理器具用中間材の金属基材30の厚さの側面で差別化される。Roll to Roll工程では、金属基材30がローラの間に巻き込まれながらその表面に事前形成された多層フッ素樹脂フィルムが熱圧着されるため、厚さの厚い金属基材30の表面に多層フッ素樹脂フィルム10を熱圧着することが難しいという制限が存在する。したがって、略2mm以上の厚い金属基材30を適用するにおいては平板型プレス工程を適用することが好ましい。
【0044】
図2および
図3に図示され、明細書の関連部分で説明されたように、調理器具の本体を形成する金属基材30上に多層フッ素樹脂フィルム10が熱圧着された調理器具の中間材が提供される。このような中間材は、
図3の工程で説明されたプレス機構またはRoll to Roll機構から図示されていない切断機構に移され得る。調理器具の本体を形成する金属基材30上に多層フッ素樹脂フィルム10が熱圧着された調理器具の中間材は、長方形に切断されてもよく、円形に切断されてもよい。切断工程では、最終生産品である調理器具の形状に沿って中間材が切断されるが、最終生産品が家庭用フライパンである場合、複数個の円形板に切断され、最終生産品が業者用フライパンである場合、複数個の長方形板に切断され得る。切断が終了した中間材は、後続するプレス工程によって最終調理器具の形状を有するようになる。以後、取っ手などを付着し、検収を経て最終製品である調理器具の出庫が行われる。
【0045】
図4は、本発明の好ましい実施例により形成された多層フッ素樹脂フィルム10の構成を図示する図面である。
【0046】
図4に図示された多層フッ素樹脂フィルム10は、合計3つの層からなる。金属基材に近い順序から、第1層11は流れ性のよいフッ素樹脂とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の混合物からなる。第2層12は体積を基準として無機フィラーの含量が5〜50%であるフッ素樹脂からなる。第3層13は体積を基準として無機フィラーの含量が25%以下であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる。
【0047】
本発明の
図4に図示された実施例に係る調理器具に含まれる多層フッ素樹脂フィルム10の第1層11としての流れ性のよいフッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロプロピルビニルエーテル共重合体(TFM)、ポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体(MFA)のうち1種、またはこれらの2種以上の混合物が使用され得るが、これに制限されるものではない。
【0048】
金属基材30と熱圧着される第1層11の場合、金属基材30との付着力を維持するために、金属基材の表面の微細な凹凸部分にフッ素樹脂が満たされなければならない。ところで、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は溶融温度以上の温度条件、すなわち略摂氏370度以上の温度で溶融粘度が10
10〜10
11poise以上であるため、流れ性が殆どない反面、流れ性がよい樹脂として前記で例示されたフッ素樹脂は、略摂氏370度以上の温度での溶融粘度が10
3〜10
6poiseの範囲であり、流れ性が発生するため、金属基材の表面の微細な凹凸部分を満たすことができる。ただし、最近調理器具の使用温度が段々上がっていく傾向を見せており、流れ性がよいフッ素樹脂の中でも融点が摂氏250度以上であるものを使用することが好ましい。
【0049】
本発明の
図4に図示された実施例に係る調理器具に含まれる多層フッ素樹脂フィルム10の第2層12としてのフッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロプロピルビニルエーテル共重合体(TFM)、ポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体(MFA)のうち1種、またはこれらの2種以上の混合物が使用され得るが、これに制限されるものではない。
【0050】
本発明の
図4に図示された実施例に係る調理器具に含まれる多層フッ素樹脂フィルム10の第2層12と第3層13に含まれる無機フィラーは、タルク(Talc)、雲母(Mica)、カーボンブラック、グラファイト、二酸化チタン、人造ダイヤモンド、アルミナ、シリカ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、グラスビーズ(Glass Bead)、グラスバブル(Glass Bubble)およびカーボンナノチューブのうち1種以上が選択され得るが、これに制限されるものではない。
【0051】
無機フィラーは、色相の具現または外部からの物理的衝撃を緩和することによって耐スクラッチ性を向上させるための目的で、本発明の事前形成される多層フッ素樹脂フィルムの中間層である第2層12のフッ素樹脂に含まれるものであって、これによって熱伝導度が向上する効果も得ることができる。
【0052】
本発明の
図4に図示された実施例に係る調理器具に含まれる多層フッ素樹脂フィルム10の第3層13、すなわち最外郭層としては、体積を基準として無機フィラーの含量が25%以下であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を使用する。最外郭層としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)と他の種類のフッ素樹脂の混合物またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を排除した他の種類のフッ素樹脂の使用を排除し、フッ素樹脂のうちポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のみを使用することが本発明の特徴の一つである。
【0053】
最外郭層において、無機フィラーの含量が増加するほど表面での耐スクラッチ性は多少改善され得るものの、離型性が急減する現象が観察されたのであり、本発明者らは無機フィラーの含量を25%以下に制限することが好ましいという事実を明らかにした。また、最外郭層において、無機フィラーの含量が0%、すなわち純粋なポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる場合、長時間使用しても離型性が一定の水準以上に維持される傾向を確認した。
【0054】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、離型性、耐薬品性および耐熱性に優れた物質であって、調理器具で金属基材上にコーティングされるフッ素樹脂層のうち最外郭層に適合した性質を有している。ただし、このようなポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、それ自体に流れ性がなく、基材との付着力が充分ではないため、従来技術ではほとんど液状塗料または粉体塗料の形態で適用されてきたのであり、この場合、前述したようにピンホールの形成を防止することができなかった。
【0055】
このような問題点を認識してピンホールの形成を防止するために、液状塗料または粉体塗料の形態で金属基材上への形成方式を排除し、事前形成されたフィルムを適用しようとしても、押出方式のフィルム形成方式ではポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をフィルムに形成することが非常に困難であった。押出方式を適用するには、フッ素樹脂を溶融させる過程を経なければならないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)はその溶融点(melting point)が非常に高く、溶融点(略摂氏320度)と分解が始まる温度(略摂氏450度)が近いため、溶融した状態のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を押出して引き抜く商業的に有効な工程が制限的であった。流れ性を改善したフッ素樹脂のみが(前記
図4の実施例の第1層に使用可能なフッ素樹脂の種類参照)商業的な押出工程に適用されてきたが、このようなフッ素樹脂からなるフィルムはその溶融点が低いため、耐熱性に劣る問題を有していた。
【0056】
ひいては、前述したスカイビング方式の工程でポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をフィルムに形成することが可能であった。ただし、この工程を使用する場合には、多層で構成されたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムを製造することが不可能であったのであり、無機フィラーの含量が制限的にならざるを得なかった。
【0057】
このように、従来技術では無機フィラーを含有するフィルム層を押出方式で形成し、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のフィルム層はスカイビング方式で形成した後、この二つの異なる種類のフィルムを金属基材で熱圧着させる方式が理論的に可能であったが、このような方式は前記のように、本発明特有の方式に比べて金属基材上への熱圧着時に付着性の偏差が大きくなり、工程が複雑となるという問題を根本的に抱えざるを得なかった。
【0058】
本発明に係る工程は、ピンホールの形成を抑制する事前形成されたフィルムを使用する工程でありながらも、多層構造に無機フィラーの含量を層ごとに異ならせることができ、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を金属基材にコーティングされる多層構造のフッ素樹脂フィルム10の最外郭層に使用され得るようにしたことに、その技術的意義がある。
【0059】
本発明者らは、実験の繰り返しによって多層フッ素樹脂フィルム10の厚さを20〜300μmに、特に20〜80μmに形成することが好ましく、このとき最外郭層の厚さは5〜50μmに形成することが好ましいという点を見出した。
【0060】
図5は本発明の一実施例により形成された調理器具用中間材と二つの比較例について、ピンホールの形成の有無をテストした結果を示した写真である。
【0061】
本発明の一実施例により形成された調理器具用中間材は、金属基材30上に
図4に図示された実施例により最外郭層がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である3層構造の事前形成されたフッ素樹脂フィルム10が熱圧着されたものを使用した。3層構造の事前形成されたフッ素樹脂フィルムの全体厚さは70μmである。対照群1としては、金属基材上にプライマーコーティング後にフッ素樹脂が1回スプレー塗装され、コーティング膜の厚さは20μmであるものが使用された。対照群2としては、金属基材上にプライマーコーティング後にフッ素樹脂が2回粉体塗装され、コーティング膜の厚さは35μmであるものが使用された。ピンホール形成の評価方法としては、蛍光染料浸透方式が用いられた。
【0062】
蛍光染料浸透評価は次のように遂行された。本発明の一実施例および二つの比較例を通じて製作された直径28cm大きさのフライパンに、蛍光染料200mlを注ぎ、100℃の温度で加熱しながら1時間程度放置した後に蛍光染料を除去し、330〜390nm波長の紫外線を照射してフッ素樹脂層で蛍光染料が浸透したかを観察した。
【0063】
図5の上端には蛍光染料が浸透した状態でピンホールの存在の有無を撮影した写真が配列されている。
図5の下端には本願発明と対照群1および2の表面を撮影した写真が順に配列されている。
【0064】
図6は本発明の一実施例により形成された調理器具用中間材と二つの比較例について、ピンホールの形成の有無を電子顕微鏡でフッ素樹脂層の表面を200倍に拡大した写真である。
【0065】
その結果、
図5および
図6で明確に確認できるように、対照群1と2に比べて本発明により形成された調理器具で最も優れたピンホール抑制性能が発揮されることが分かった。