特許第6688908号(P6688908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ レンチング アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

<>
  • 特許6688908-改変されたビスコース繊維 図000011
  • 特許6688908-改変されたビスコース繊維 図000012
  • 特許6688908-改変されたビスコース繊維 図000013
  • 特許6688908-改変されたビスコース繊維 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688908
(24)【登録日】2020年4月8日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】改変されたビスコース繊維
(51)【国際特許分類】
   D01F 2/06 20060101AFI20200421BHJP
【FI】
   D01F2/06 Z
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-556294(P2018-556294)
(86)(22)【出願日】2017年4月25日
(65)【公表番号】特表2019-515151(P2019-515151A)
(43)【公表日】2019年6月6日
(86)【国際出願番号】EP2017059813
(87)【国際公開番号】WO2017186725
(87)【国際公開日】20171102
【審査請求日】2019年2月13日
(31)【優先権主張番号】A50381/2016
(32)【優先日】2016年4月28日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】507127314
【氏名又は名称】レンチング アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(72)【発明者】
【氏名】フックス,ハイドルン
(72)【発明者】
【氏名】シェーンベルガー,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】クローナー,ゲルト
(72)【発明者】
【氏名】ショーベスベルガー,ハラルド
【審査官】 斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第104153025(CN,A)
【文献】 特表2014−504337(JP,A)
【文献】 特開2013−256748(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0186611(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0177919(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第1544727(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第101096776(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第101372767(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第101967698(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B 1/00 − 37/18
D01F 2/00 − 2/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取り込まれた藻類材料を含有する改変されたビスコース繊維であって、以下の式:
湿潤係数(cN)≧0.5*√T
(式中、Tは、dtex単位の繊維の繊度である)
を満たす、湿潤状態における5%の伸びでの湿潤係数を特徴とする、ビスコース繊維。
【請求項2】
以下の式:
繊維強度(cN/tex)≧27.38−1.4*T
を満たす、調整状態における繊維強度を特徴とする、請求項1に記載のビスコース繊維。
【請求項3】
少なくとも200ppm、好ましくは200ppm〜700ppmの亜鉛イオンの含有量を特徴とする、請求項1または2に記載のビスコース繊維。
【請求項4】
少なくとも0.5重量%、好ましくは2重量%〜6重量%の藻類材料の含有量を特徴とする、請求項1−3のいずれか一項に記載のビスコース繊維。
【請求項5】
4重量%〜7重量%のセルロース、5重量%〜10重量%のNaOH、34重量%〜42重量%(セルロースに基づく)の二硫化炭素ならびに1重量%〜5重量%(セルロースに基づく)の改質剤の含有量を有するビスコースを紡糸浴槽中に紡糸し、凝固したフィラメントを引き出すことによって、請求項1−4のいずれか一項に記載の改変されたビスコース繊維を製造するためのプロセスであって;紡糸ガンマ値が50〜68の範囲であり、紡糸粘度が50落球秒〜150落球秒の範囲であるビスコースが使用され;紡糸前のビスコースのアルカリ比(=セルロース濃度/アルカリ含有量)が0.7〜1.5の範囲であり、紡糸浴槽の温度が34℃〜48℃の範囲であり、以下の紡糸浴槽濃度:
SO 68g/l〜90g/l
NaSO 90g/l〜160g/l
ZnSO 30g/l〜65g/l
が使用されており、紡糸浴槽からの最終引き出しが15m/分〜60m/分の速度で起こり、水性分散液の形の藻類材料が紡糸される、プロセス。
【請求項6】
水性分散液が、2重量%〜15重量%の藻類材料の含有量を有することを特徴とする、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
ヤーンおよび平面織物アセンブリを製造するための、請求項1から4のいずれかに記載のビスコース繊維の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改変されたビスコース繊維、本発明に基づくビスコース繊維を製造するためのプロセス、およびその使用に関する。
【0002】
特に、本発明は、制限のない洗浄性に対する消費者の期待、およびそれぞれ、工業用洗浄の要件も満たす、織物用途、特にニットウェア分野における改良された使用特性を有する、藻類から取り込んだ材料を含む改変されたビスコース繊維、ヤーンおよび平面アセンブリの製造におけるその使用、ならびにそれらの繊維を製造するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
EP 1 259 564は、生分解性ポリマー−通常セルロース−と海草および/または海生動物の殻由来の材料と、任意選択で、さらなる添加物とを含むポリマー溶液からのNMMO法による繊維および成形体の製造について記載している。EP 1 259 564によれば、このように製造された成形体は、添加物を含まないNMMO法による対応する成形体と比較して、フィブリル化への傾向がより低い。この結論は、変化した繊維構造に基づいて出され、この構造はより正確には短くなった長手方向に基づいてSEM画像で見られる。
【0004】
さらに、EP 1 259 564は、ビスコース法による、海草および/または海生動物の殻由来の材料の添加によって改変された繊維および成形体の製造を開示している。一例として、15%(実施例7)および1.7%(実施例8)の褐藻類由来の材料をセルロースに添加している。このように製造した繊維および、それぞれ、成形体は、添加物を含まないビスコース繊維と比較して、同様の、またはそれぞれ、わずかに低下した物理的な繊維特性を有する(比較例3)。
【0005】
加えて、EP 1 259 564は、実施例9および10で、カーバメート法による海草および/または海生動物の殻由来の材料の添加による繊維および成形体の製造を記載している。前記プロセスによれば、非常に低い繊度関連乾燥引裂強度が達成され、取り込まれた量に応じて、藻類材料の添加によってさらに低下する。
【0006】
海草、特に海藻由来の材料の添加は、繊維およびセルロース成形体ならびにそれから製造した織物に特にやわらかい感触を付与し、ビタミン、微量栄養素および微量元素を濃縮させ、また藻類に含有されるアルギン酸塩は、保湿特性を有することが知られている。藻類およびそれから製造した繊維は、酸化防止特性を有することも実証されている[http://www.smartfiber.de/index.php/seacell-de/zertifizierungen、2016年4月17日に検索]。これらの理由から、海草、特に海藻由来の材料を含有する製品は、特に皮膚に優しいと考えられている。
【0007】
EP 1 259 564に開示されている全ての繊維、すなわち、NMMO法、ビスコース法およびカーバメート法によって製造された繊維タイプだけでなく、SeaCell(商標)の商標で市販されているリヨセルタイプも、種々の理由のために現代の織物産業の要件を十分に満たしていない。
【0008】
高級仕上げまたは追加の架橋がなければ、リヨセル系タイプは、フィブリル化し、続いて、繰り返し洗浄した後、やや低い長手方向繊維配向にもかかわらず、擦られて白くなった見苦しい織物表面を形成する傾向がある。他方では、ビスコース法によって製造した繊維タイプは、湿潤状態において従来のビスコース繊維よりもさらにわずかに劣る安定性(湿潤強度およびBISFA湿潤係数)を示す。カーバメート法によって製造したタイプは、商用のヤーン製造にとって低すぎる乾燥引張り強さを有する。加えて、前記プロセスは、今日まで、経済的有意性を有せず、カーバメート法による工業用繊維の製造は行われていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この先行技術と比較して、ある量の消費者の目を引く藻類由来の材料が天然のやわらかい手触り、保湿能力および皮膚への優しさという所望の特性を達成するために取り込まれているが、加えて、寸法安定性および洗浄耐性と小さいフィブリル化挙動の両方のために増加した織物機械的要件を満たすセルロース系繊維を製造することが目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的は、請求項1に基づく改変されたビスコース繊維によって達成される。好ましい実施形態は、従属項に示されている。本発明の目的のためには、用語「繊維」は、定義された比較的短い長さの繊維(例えば、いわゆる「スフ(staple fibre)」)ならびに言語使用において「フィラメント」とも呼ばれる非常に大きい長さの繊維を包含することを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】適合させたカナダ標準ろ水度試験に基づいて決定したセルロース系繊維のフィブリル化動力学を例示する図である。
図2】実施例3に基づく繊維のフィブリル化挙動の顕微鏡評価を示す図である。
図3】実施例4に基づく繊維のフィブリル化挙動を示す図である。
図4】SeaCell(商標)繊維のフィブリル化挙動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、藻類材料を取り込んだ非フィブリル化再生セルロース系繊維を提供することによって上記の問題を解決し、これは、EP 1 259 564と比較して改変されたビスコース法に従って製造される。本発明に基づく繊維は、それ自体が既知の藻類由来の材料が取り込まれたセルロース繊維の特定のやわらかさを特徴とするが、NMMO法に基づく溶媒紡糸繊維と比較して著しく低下した湿潤フィブリル化への傾向を呈する。
【0013】
驚くべきことに、EP 1 259 564 B1に記載されている製造プロセスと比較して小さな手順の変更は、本発明に基づく繊維が、EP 1 259 564、実施例7(15%褐藻類を含む)および実施例8:(セルロース基準で1.67%の褐藻類を含む)に従って取り込まれた褐藻類を有するビスコースタイプの繊維と比較して、さらにEP 1 259 564の比較例3(藻類の混合物なし)と比較して、著しく改善された物理的繊維特性、特により高い繊度関連引裂強度およびより高い湿潤係数を示す結果を有していた。
【0014】
本発明に基づく繊維は、以下の式を満たす、湿潤状態における5%の伸びでの湿潤係数を有し:
湿潤係数(cN)≧0.5*√T、
式中、Tは、dtex単位の繊維の繊度である。
【0015】
この湿潤係数は、BISFA(The International Bureau for the Standardization of Man−Made Fibers)による定義によって、モダール繊維の湿潤係数に対応し、以下「BISFA湿潤係数」または「BISFA係数」とも呼ばれる。本出願で言及されている湿潤係数および他の織物の物理的性質は、BISFAによって定義された測定方法に従って測定する。
【0016】
好ましい実施形態では、本発明に基づく繊維は、以下の式を満たす、調整状態における繊維強度を有する:
繊維強度(cN/tex)≧27.38−1.4*T。
【0017】
この強度は、EP 1 259 564に記載されている改変されたビスコース繊維のものよりも著しく高い。
【0018】
本発明に基づく繊維は、セルロースに基づいて、藻類材料の0.5重量%〜6重量%、好ましくは2重量%〜6重量%、特に好ましくは3重量%〜4重量%を含有していてよい。
【0019】
藻類は、海水と淡水の両方から採ることができる。微細藻類ならびに大型藻類、特にさらにケルプの使用が可能である。
【0020】
好ましくは、使用した藻類のアルギン酸含有量は、15重量%〜50重量%である。好ましい実施形態では、本発明に基づく繊維は、アスコフィラムノドサム(Ascophyllum nodosum)タイプの藻類材料を含有する。
【0021】
さらに、本発明に基づく繊維は、金属イオンの相補的な添加がなくても、藻類の添加が同じであるリヨセル繊維および/またはビスコース繊維と比較して、亜鉛の含有量が増加する。
【0022】
亜鉛イオンの含有量は、好ましくは少なくとも200ppmまでの量、特に好ましくは200ppm〜700ppmである。
【0023】
亜鉛含有量は、モダール繊維と比較しても著しく増加しており、少なくとも部分的にアルギン酸Znとして本発明に基づく繊維に存在する。亜鉛は、スキンケア品質をもつ必須微量元素であり、したがってスキンケア製品で使用されている。創傷被覆材には、とりわけアルギン酸亜鉛が使用されている。アルギン酸塩(保湿剤および天然軟化剤として)とアルギン酸塩から放出可能な亜鉛イオンの複合効果によって、より優れたスキンケア特性が実現すると考えられている。
【0024】
4重量%〜7重量%のセルロース、5重量%〜10重量%のNaOH、34重量%〜42重量%(セルロースに基づく)の二硫化炭素ならびに1重量%〜5重量%(セルロースに基づく)の改質剤の含有量を有するビスコースを紡糸浴槽中に紡糸し、凝固したフィラメントを引き出すことにあるプロセスであって;紡糸ガンマ値が50〜68の範囲であり、紡糸粘度が50落球秒〜150落球秒の範囲であるビスコースが使用され;紡糸前のビスコースのアルカリ比(=セルロース濃度/アルカリ含有量)が0.7〜1.5の範囲であり、紡糸浴槽の温度が34℃〜48℃の範囲であり、以下の紡糸浴槽濃度:
SO 68g/l〜90g/l
NaSO 90g/l〜160g/l
ZnSO 30g/l〜65g/l
が使用されており、紡糸浴槽からの最終引き出しが15m/分〜60m/分の速度で起こり、水性分散液の形の藻類材料が紡糸される、プロセスが、本発明に基づくビスコース繊維の製造に役立つ。
【0025】
ビスコースの組成について示された数値は、藻類材料の分散液を添加する前のその状態を指す。
【0026】
使用したビスコース、紡糸浴槽および紡糸のパラメーターに関する同様のプロセスは、WO 2011/026159 A1に記載されており、それにより紡糸プロセスに関するさらなる詳細についてこの文献を参照することができる。
【0027】
使用されている改質剤は本発明に基づく繊維のさや構造を、それ自体既知の方法で製造する。例えば、改質剤は、エトキシ化アミンであってよい。
【0028】
使用されている藻類由来の材料は、粒径x99≦20μm、より良好には≦15μmで、<15%、より良好には<10%の残留水含有量を有する、粉末状および乾燥状態で提供されることが好ましい。所望の繊維特性を達成するために、藻類材料は、好ましくは少なくとも15%のアルギン酸含有量を有しているべきである。使用直前に、材料は、好ましくは2重量%〜15重量%の範囲の固体含有量を有する分散液を得るために、任意選択で分散助剤を加えて、水中に分散させることが好ましい。水性分散液は、必要に応じて真空中で脱気することができ、任意選択で、溶解していない粒子を除去するための先行するろ過の際に所望の比でビスコースに添加することができるが、そうすることで、均質混合が、従来の混合装置、ホモジナイザーなどを用いて保証されるべきである。ビスコースに混合すると、紡糸の前にカートリッジフィルターによるろ過を行うことができる。
【0029】
紡糸は、繊維の所望の繊度に応じて穴径50μm〜100μmの紡糸口金によって行うことができる。
【0030】
本発明はまた、ヤーンおよび平面織物アセンブリの製造のための本発明に基づくビスコース繊維の使用に関する。
【0031】
本発明は、次に一例として説明する。これらは、本発明の可能な実施形態として理解されるべきである。本発明は、決してそれらの実施例の範囲に限定されるものではない。
【0032】
全ての実施例のプロセスパラメーターの詳細なリストは、実施例の項の最後の表9に見られる。
【実施例1】
【0033】
本発明に基づいて藻類を取り込んだ改変されたビスコース繊維の調製
アスコフィラムノドサムの乾燥粉末状植物材料から脱塩水中の10%分散液を調製し、6時間脱気した。藻類材料を含まない、またはそれぞれセルロース基準で2.5%、またはそれぞれ5%含むビスコース繊維を、引き出し30m/分で穴径50μmの紡糸口金によって製造した。藻類分散液の投与は、ホモジナイザーの直前に行い、紡糸口金の前で<1分の滞留時間を有した。
【0034】
【表1】
【0035】
説明文(以下の表にも当てはまる):
繊度[dtex]:繊度(調整済)
FFk[cN/tex]:繊度関連引裂強度乾燥、それぞれ調整済
FDk[%]:最大引張力伸び乾燥、それぞれ調整済
FFn[cN/tex]:繊度関連引裂強度湿潤
FDn[%]:最大引張力伸び湿潤
湿潤係数(Bisfa係数)[cN/tex]:5%伸びにおける繊度関連湿潤係数
【実施例2】
【0036】
異なった濃度の粉末分散液を用いた、本発明に基づいて藻類を取り込んだ改変されたビスコース繊維の調製
アスコフィラムノドサムの乾燥粉末状植物材料から脱塩水中の10%、5%および2.5%分散液を調製し、分散液を脱気しなかった。藻類材料を含まない、またはそれぞれ、いずれの場合にも、セルロース基準で5%含むビスコース繊維を、引き出し30m/分で穴径50μmの紡糸口金によって製造した。
【0037】
【表2】
【0038】
粘度が高いために、最も高濃度の藻類分散液は、依然として多くの気泡を含有しており、それは紡糸中に糸切れを頻繁にもたらした。したがって、この場合に適切な引き出しとより高い強度を達成することができなかった。より薄い藻類分散液を投与した場合、この問題は起こらず−得られた繊度関連強度は、EP 1 259 564に基づくビスコース繊維のものよりも著しく高いレベルにある。
【0039】
使用した藻類材料およびこのように紡糸した繊維のアルギン酸含有量は、アルギン酸標準(Fluka)に対するマンヌロン酸およびグルロン酸含有量に基づいてHPLCによる繊維の全加水分解後に分析した。3.8%〜4.8%の藻類の含有量に対応して、使用した藻類粉末のアルギン酸含有量は25%であり、繊維のアルギン酸含有量は0.95%〜1.2%であった。
【0040】
表2に示すように、このように製造された繊維はまた、藻類を添加していない改変されたビスコース繊維と比較して、著しく高い保水能力(WRV)を有する。これは、藻類添加物の保湿能力を示す。
【実施例3】
【0041】
本発明に基づいて藻類を取り込んだ改変されたビスコース繊維の調製−セルロース基準で4%の藻類粉末(アスコフィラムノドサム)の取り込み、水中で6%分散液として計量
藻類材料を含まない、またはそれぞれセルロース基準で4%含むビスコース繊維を、引き出し20m/分で穴径60μmの紡糸口金によって製造した。
【0042】
【表3】
【0043】
このように紡糸した繊維のアルギン酸含有量は、3.35%〜3.60%の藻類の含有量に対応して、0.77%〜0.83%になり、使用した藻類粉末のアルギン酸含有量は、23%であった。
【実施例4】
【0044】
本発明に基づいて藻類を取り込んだ改変されたビスコース繊維の調製−セルロース基準で4%の藻類粉末(アスコフィラムノドサム)の取り込み、水中で6%分散液として計量
藻類材料をセルロース基準で4%含む本発明に基づいて改変されたビスコース繊維を、引き出し19m/分で約40時間、穴径60μmの紡糸口金によって製造した。
【0045】
【表4】
【0046】
このように紡糸した繊維のアルギン酸含有量は、3.2%〜4.0%の藻類の含有量に対応して、0.80%〜1.0%であり;使用した藻類粉末のアルギン酸含有量は、25%であった。
【0047】
本発明に基づいて藻類を取り込んだ改変されたビスコース繊維の亜鉛含有量:
亜鉛含有量は、標準的なビスコース繊維(製造業者:Lenzing AG)、モダール繊維(製造業者:Lenzing AG)ならびにリヨセルプロセスに基づいて製造された藻類改変繊維(SeaCell(商標)、製造業者:Smartfiber AG)と比較して、実施例3および実施例4からの繊維試料のICP分析を用いて、繊維パルプ化後に決定した。
【0048】
本発明に基づいて藻類を取り込んだ改変されたビスコース繊維の亜鉛含有量は、330ppm〜530ppmだが、標準的なビスコース繊維およびモダール繊維は、著しく低い亜鉛含有量を示すことが分かった。
【0049】
【表5】
【0050】
本発明に基づいて製造した繊維とEP 1 259 564からの先行技術との比較:
1)市販されているSeaCell(商標)繊維とのフィブリル化への傾向の比較
この繊維は、アスコフィラムノドサムを3%〜5%取り込んだ材料を含む、EP 1 259 564に基づいて製造したリヨセルタイプである。
【0051】
フィブリル化への繊維の傾向を研究するために、以下の手順を使用した:
a)湿潤摩耗値−EP 0 943 027 B1[0030]に基づく方法
b)カナダ標準ろ水度T 227 om−99標準に基づく適合させたCSF試験
c)フィブリル化への傾向の振盪試験および顕微鏡評価−EP 0 943 027 B1[0029]に基づく方法
【0052】
a)湿潤摩耗値の試験(同様に湿潤耐摩耗性または‘NSF’):
20本の単繊維に、繊度依存性のプレテンションウェイトで重みを付け、直径1cmの金属ローラーから吊るす。ローラーをビスコースフィラメントヤーンストッキングで覆われており、連続的に湿らせている。測定中、ローラーは、500rpmの速度で回転させる。ローラーは同時に、約1cmのたわみで繊維軸に対して横方向に振り子運動を行う。繊維が擦り減るまでの回転数を決定する。湿潤状態でのフィブリル化に対する傾向が強いほど、達成される回転数Uは低くなり、繊度[dtex]に基づく湿潤耐摩耗性の値を示す。
【0053】
【表6】
【0054】
b)適合させたCSF試験、カナダ標準ろ水度’(CSF):
適合させたカナダ標準ろ水度試験では、ミキサーは、フィブリル化への傾向の目安となり、5mmの長さに切断された繊維試料は、それらがフィブリル化し始めるまで前記ミキサー内の水中で打たれる。CSF装置自体は、オーバーフローを伴う漏斗とその中に挿入されたスクリーンからなる。フィブリル化の程度が増大すると共に、CSF装置に配置されたスクリーンが詰まり、それによってより多くの水がオーバーフローし、より少ない水が通路に入る。標準化されたメスシリンダーでは、水の体積は、種々の混合時間後の通路においてml単位で測定され、それによってそれが高いほど、繊維のフィブリル化が少なくなる。
【0055】
図1は、それらの実験に基づいて決定したフィブリル化動力学を例示している。横軸は、分単位の混合時間を示し、縦軸は、ml単位の変遷する水の体積を示す。
【0056】
図1に従って調べたA〜Fの繊維タイプは、以下の繊維であった:
A 標準的なリヨセル繊維1.7dtex
B 実施例2からの藻類を含まないビスコース繊維1.7dtex
C 実施例2からの藻類を取り込んだ改変されたビスコース繊維
D 実施例4からの藻類を取り込んだ改変されたビスコース繊維
E 普通のビスコース繊維1.7dtex
F 1.7dtex SeaCell(商標)(Smartfiber AG)、リヨセル系の藻類を取り込んだタイプ
【0057】
図1に示すとおり、両方のリヨセルタイプ、標準的なリヨセル繊維ならびにSeaCell(商標)は、10分の混合時間後にすでにフィブリル化している。ビスコース法に基づく全ての繊維タイプ、すなわち、本発明によって改変されたプロセスによる藻類を取り込んだ繊維も、45分の混合時間後でさえ、依然としてCSF試験でフィブリル化の徴候を示さない。
【0058】
c)振盪試験および顕微鏡評価を用いたフィブリル化の程度
洗浄中と、それぞれ湿潤状態での仕上げ作業中の繊維同士の摩擦は、以下の試験によってシミュレートされる:8本の繊維を、水4mlを入れた20ml試料バイアルに入れ、Gerhardt、Bonn(FRG)製のタイプRO−10の実験室振盪機中、レベル12で3時間振盪する。そのすぐ後で、繊維のフィブリル化挙動を顕微鏡下で繊維長0.276mm当たりのフィブリル数を数えることによって評価し、0(フィブリルなし)〜6(強力なフィブリル化)の範囲のフィブリル化値として示される。
【0059】
【表7】
【0060】
図2〜4は、繊維の顕微鏡検査の結果を示す:
図2は、実施例3に基づく繊維のフィブリル化挙動を示す。
図3は、実施例4に基づく繊維のフィブリル化挙動を示す。
図4は、SeaCell(商標)繊維のフィブリル化挙動を示す。
【0061】
本発明に基づく繊維は、フィブリル化しないまたはほとんどフィブリル化しないことがはっきり明白である。
【0062】
2)本発明に基づくプロセスによって製造した、藻類を取り込んだ改変されたビスコース繊維とEP 1 259 564 B1に記載されたビスコース繊維との物理的な繊維特性の比較
【0063】
【表8】
【0064】
表8に示すように、実施例2からの繊維試料を除いて、前述のように、糸切れのために良好な強度が得られず、乾燥状態における繊度関連引裂強度は、本発明に基づいて製造した藻類材料を取り込んだ全ての繊維において25cN/texより高く、すなわち、EP 1 259 564、実施例7および8からのビスコース繊維のものよりも著しく高く、参照ビスコース繊維EP 1 259 564、比較例3のものよりもさらに高い。
【0065】
特に、BISFAによる湿潤係数、すなわち、湿潤状態における5%の伸びでの引張り強さは、本発明に基づいて製造した藻類材料を取り込んだ全ての繊維において4.0cN/texよりも高いが、湿潤係数は、EP 1 259 564からのビスコースタイプの値3.0を超えない。
【0066】
湿潤係数に関する限り、改変されたビスコース法に基づいて製造した全ての藻類を取りこんだタイプは、モダール繊維についてBISFAによって定義されているように最小値を満たす。
【0067】
乾燥強度に関して、実施例1および2(100g/l藻類分散液を含む実施例2.1を除いて)の繊維だけ、BISFAによるモダール定義に必要な値を達成する。
【0068】
したがって、藻類を取り込んだ本発明に基づいて改変されたビスコース繊維は、言葉の真の意味でモダール繊維ではないが、実質的に改善された物理的繊維特性から、EP 1 259 564、実施例7および8と比較して、著しく改善された使用価値を推測することがさらに可能である。繊維の湿潤係数とそれから製造した生地の表面収縮との関係は、長い間知られてきた(Szego,L.,Faserforsch.、Text. Techn. 21.10 (1970)。Pucheggerは、ビスコースとモダール繊維のこの関係を確認している(Puchegger,F Lenzinger Ber.、55、32〜36(1983)およびPuchegger,F.、Lenzinger Ber. 58、94〜99(1985))。
【0069】
以下の表では、実施例1〜4のプロセスパラメーターをまとめて示している:
【0070】
【表9】
図1
図2
図3
図4