(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板上に並設された複数の列バンクにおける、行方向に隣接する列バンク間の間隙それぞれに前記列バンクの列方向端部間にわたり列方向に連続して塗布された溶質と2種類以上の溶媒とを含むインクの乾燥に用いるインク乾燥装置であって、
前記インクが塗布された基板が設置されるチャンバと、
前記チャンバ内において前記基板が載置される支持台と、
前記チャンバ内の気体を排気する手段とを備え、
前記気体を排気する手段する手段は、
前記チャンバ内の圧力を、標準大気圧から前記複数の溶媒それぞれの蒸気圧中、最大の蒸気圧よりも高い第1の圧力まで減少する第1の期間と、
前記第1の期間の後に、前記チャンバ内の圧力を、前記複数の溶媒それぞれの蒸気圧中、最小の蒸気圧よりも低い第2の圧力まで減少する第2の期間とを含む圧力プロファイルで制御し、
前記チャンバ内の圧力を10XPa(Xは実数)としたとき、前記第2の期間における単位時間当たりのXの値の変化量の平均値は、前記第1の期間における単位時間当たりのXの値の変化量の平均値よりも絶対値が大きく、
さらに、前記基板を加熱する加熱手段を備え、当該加熱手段は、前記第2の期間の後に、前記基板を加熱する
インク乾燥装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
≪本発明を実施するための形態の概要≫
本実施の形態に係る有機EL表示パネルの製造方法は、基板上に複数の画素が行列状に配された有機EL表示パネルの製造方法であって、前記基板を準備する工程と、前記基板上に行列状に複数の画素電極層を形成する工程と、少なくとも前記画素電極層の行方向外縁間に位置する前記基板上方に列方向に延伸して行方向に複数の列バンクを並設する工程と、行方向に隣接する前記列バンク間の間隙それぞれに、前記列バンクの列方向端部間にわたり列方向に連続して有機機能材料を含む溶質と2種類以上の溶媒とを含むインクを塗布する工程と、前記基板を含む雰囲気から気体を排気する工程と、前記雰囲気の圧力が所定圧力以下の状態に前記基板を置くことにより前記インクを乾燥させて有機機能層を形成する工程と、前記有機機能層上方に透光性の対向電極層を形成する工程とを含み、前記気体を排気する工程は、前記雰囲気の圧力を、標準大気圧から前記複数の溶媒それぞれの蒸気圧中、最大の蒸気圧よりも高い第1の圧力まで減圧する第1の期間と、前記第1の期間の後に、前記雰囲気の圧力を、前記複数の溶媒それぞれの蒸気圧中、最小の蒸気圧よりも低い第2の圧力まで減圧する第2の期間とを含み、前記雰囲気の圧力を10
XPa(Xは実数)と表したとき、前記第2の期間における単位時間当たりのXの値の変化量の平均値は、前記第1の期間における単位時間当たりのXの値の変化量の平均値よりも絶対値が大きいことを特徴とする。
【0015】
係る構成により、基板上の列状塗布領域内及び列状塗布領域間において、成膜エリアの周縁部分と中央部分において形成される発光層の膜厚が等価になる。その結果、表示パネルの成膜エリアの周縁部分と中央部分において発光層の膜厚の不均一性に起因して生じる表示パネル面内の輝度ムラを改善することができる。
【0016】
また、本実施の形態に係るインク乾燥装置は、基板上に並設された複数の列バンクにおける、行方向に隣接する列バンク間の間隙それぞれに前記列バンクの列方向端部間にわたり列方向に連続して塗布された溶質と2種類以上の溶媒とを含むインクの乾燥に用いるインク乾燥装置であって、前記インクが塗布された基板が設置されるチャンバと、前記チャンバ内において前記基板が載置される支持台と、前記チャンバ内の気体を排気する手段とを備え、前記気体を排気する手段する手段は、前記チャンバ内の圧力を、標準大気圧から前記複数の溶媒それぞれの蒸気圧中、最大の蒸気圧よりも高い第1の圧力まで減少する第1の期間と、前記第1の期間の後に、前記チャンバ内の圧力を、前記複数の溶媒それぞれの蒸気圧中、最小の蒸気圧よりも低い第2の圧力まで減少する第2の期間とを含むプロファイルで制御し、前記チャンバ内の圧力を10
XPa(Xは実数)と表したとき、前記第2の期間における単位時間当たりのXの値の変化量の平均値は、前記第1の期間における単位時間当たりのXの値の変化量の平均値よりも絶対値が大きいことを特徴とする。
【0017】
係るインク乾燥装置を用いたインク乾燥工程では、基板上の列状塗布領域内及び列状塗布領域間で成膜エリアの周縁部分と中央部分において形成される発光層の膜厚が等価になり、発光層の膜厚の不均一性に起因して生じる表示パネル面内の輝度ムラを改善することができる。
【0018】
また、別の態様では、上記何れかの構成において、前記第1の期間は、前記雰囲気の圧力の減少を開始した後、30秒以上300秒以下の時間である構成であってもよい。また、別の態様では、前記第2の期間は、前記第1の期間の終了から30秒以上120秒以下の時間である上記何れかの構成において、構成であってもよい。また、別の態様では、上記何れかの構成において、前記第1の圧力は、1×10
4Pa以上3×10
4Pa(10
4.47712Pa)以下の範囲から選択される圧力である構成であってもよい。また、別の態様では、上記何れかの構成において、前記第2の圧力は、10Paである構成であってもよい。また、別の態様では、上記何れかの構成において、前記第2の期間は、前記第1の期間の終了から60秒以下の時間である構成であってもよい。
【0019】
係る構成を用いた有機EL表示パネルの製造方法によれば、基板上の列状塗布領域内に有機機能材料を含むインクを塗布して製造する表示パネルにおいて、インク吐出直後の吐出量バラツキに起因する膜厚バラツキをレべリングして減少させるとともに、基板上の列状塗布領域内に有機機能材料を含むインクを塗布して製造する際に、列状塗布領域内でインク表面張力のアンバランスの起因するインク対流が生じる時間を短縮しその影響を縮小することができる。そのため、形成される発光層の膜形状は、成膜エリアの周縁部分と中央部分において膜厚が等価な形状になる。その結果、成膜エリアの周縁部分と中央部分との間の発光層の膜厚差について、基板上の列状塗布領域内及び列状塗布領域間において発光層の膜厚の均一化を図ることにより、表示パネルの発光層の膜厚の不均一性に起因して生じる輝度ムラを改善することができる。
【0020】
また、別の態様では、上記何れかの構成において、前記気体を排気する工程は、前記第2の期間の後に、Xが0となる第3の圧力以下に前記雰囲気の圧力を減少する第3の期間をさらに含む構成であってもよい。また、別の態様では、上記何れかの構成において、 前記所定の圧力は前記第3の圧力以下の圧力であり、前記インクを乾燥させる工程では、前記第2の期間の後に、前記所定の圧力下に前記基板を置く構成であってもよい。
【0021】
また、別の態様では、上記何れかの構成において、前記インクを乾燥させる工程では、前記所定の圧力下に置いた状態で前記基板を加熱する構成であってもよい。
【0022】
前記インクを乾燥させる工程では、前記所定の圧力下に前記基板を置いた後、前記基板を大気圧下に置いた状態で前記基板を加熱する構成であってもよい。また、別の態様では、上記インク乾燥装置において、さらに、前記基板を加熱する加熱手段を備え、当該加熱手段は、前記第2の期間の後に、前記第3の圧力以下である所定の圧力下に置いた状態で前記基板を加熱する構成であってもよい。係る構成により、金属酸化物を含むホール注入層の形成をウエットプロセスを用いて好適に製造することができる。
【0023】
また、別の態様では、上記何れかの構成において、前記第1の期間及び前記第2の期間
における前記雰囲気の圧力の減少は単調減少である構成であってもよい。
【0024】
≪実施の形態≫
1.表示パネル10の全体構成
1.1 概要
本実施の形態に係る表示パネル10について、図面を用いて説明する。なお、図面は模式図であって、その縮尺は実際とは異なる場合がある。
【0025】
図1は、表示パネル10の模式平面図である。
【0026】
表示パネル10は、有機化合物の電界発光現象を利用した有機EL表示パネルであり、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)が形成された基板100x(TFT基板)に、各々が画素を構成する複数の有機EL表示素子100が行列状に配され、上面より光を発するトップエミッション型の構成を有する。ここで、本明細書では、
図1におけるX方向、Y方向、Z方向を、それぞれ表示パネル10における、行方向、列方向、厚み方向とする。
【0027】
図1に示すように、表示パネル10は、基板100x上をマトリックス状に区画してRGB各色の発光単位を規制する列バンク522Yと行バンク122Xとが配された区画領域10a(X、Y方向にそれぞれ10Xa、10Ya、区別を要しない場合は10aとする)と、区画領域10aの周囲に非区画領域10b(X、Y方向にそれぞれ10Xb、10Yb、区別を要しない場合は10bとする)とから構成されている。区画領域10aの列方向の外周縁は列バンク522Yの列方向の端部522Yeに相当する。非区画領域10bには、区画領域10aを取り囲む矩形状の封止部材300が形成されている。さらに、区画領域10aは、基板中心を含む表示素子配列領域10eと、表示素子配列領域10eの周囲に非発光領域10neとから構成されている。表示素子配列領域10eは、列バンク522Yと行バンク122Xにより規制される各区画に有機EL表示素子100が形成されている領域であり、非発光領域10neでは、各区画に有機EL表示素子100が形成されていない領域である。また、X、Y方向における非発光領域10neの長さは、隣接する列バンク522Yと隣接する行バンク122Xとに囲まれたサブ画素100se領域のX、Y方向の長さに対し、それぞれ、2倍以上10倍以下であることが好ましい。本実施の形態では、X、Y方向とも4倍とした。
【0028】
1.2 表示素子配列領域10eの構成
図2は、
図1におけるX0部の拡大平面図である。
【0029】
表示パネル10の表示素子配列領域10eには、有機EL表示素子100に対応する単位画素100eが行列状に配されている。各単位画素100eには、有機化合物により光を発する領域である、赤色に発光する100aR、緑色に発光する100aG、青色に発光する100aB(以後、100aR、100aG、100aBを区別しない場合は、「100a」と略称する)の3種類の自己発光領域100aが形成されている。すなわち、
図2に示すように行方向に並んだ自己発光領域100aR、100aG、100aBのそれぞれに対応する3つのサブ画素100seが1組となりカラー表示における単位画素100eを構成している。
【0030】
また、
図2に示すように、表示パネル10には、複数の画素電極層119が基板100x上に行及び列方向にそれぞれ所定の距離だけ離れた状態で行列状に配されている。画素電極層119は、平面視において矩形形状である。行列状に配された画素電極層119は、行方向に順に並んだ3つの自己発光領域100aR、G、Bに対応する。
【0031】
表示パネル10では、バンク122の形状は、いわゆるライン状の絶縁層形式を採用し、行方向に隣接する2つの画素電極層119の行方向外縁及び外縁間に位置する基板100x上の領域上方には、各条が列方向(
図2のY方向)に延伸する列バンク522Yが複数行方向に並設されている。
【0032】
一方、列方向に隣接する2つの画素電極層119の列方向外縁及び外縁間に位置する基板100x上の領域上方には、各条が行方向(
図2のX方向)に延伸する行バンク122Xが複数列方向に並設されている。行バンク122Xが形成される領域は、画素電極層119上方の発光層123において有機電界発光が生じないために非自己発光領域100bとなる。そのため、自己発光領域100aの列方向における外縁は、行バンク122Xの列方向外縁により規定される。
【0033】
隣り合う列バンク522Y間を間隙522zと定義したとき、間隙522zには、自己発光領域100aRに対応する赤色間隙522zR、自己発光領域100aGに対応する緑色間隙522zG、自己発光領域100aBに対応する青色間隙522zB(以後、間隙522zR、間隙522zG、間隙522zBを区別しない場合は、「間隙522z」とする)が存在し、表示パネル10は、列バンク522Yと間隙522zとが交互に多数並んだ構成を採る。
【0034】
また、
図2に示すように、表示パネル10では、複数の自己発光領域100aと非自己発光領域100bとが、間隙522zに沿って列方向に交互に並んで配されている。非自己発光領域100bには、画素電極層119とTFTのソースとを接続する接続凹部119c(コンタクトホール)があり、画素電極層119に対して電気接続するための画素電極層119上のコンタクト領域119b(コンタクトウインドウ)が設けられている。
【0035】
また、1つのサブ画素100seにおいて、列方向に設けられた列バンク522Yと行方向に設けられた行バンク122Xとは直交し、自己発光領域100aは列方向において行バンク122Xと行バンク122Xの間に位置している。
【0036】
2.表示パネル10の各部構成
表示パネル10における有機EL表示素子100の構成を
図3及び
図4の模式断面図を用いて説明する。
図3は、
図2におけるY1−Y1で切断した模式断面図である。
図4は、
図2におけるX1−X1で切断した模式断面図である。
【0037】
本実施の形態に係る表示パネル10は、Z軸方向下方に薄膜トランジスタが形成された基板100x(TFT基板)が構成され、その上に有機EL素子部が構成されている。
【0038】
(1) 基板100x(TFT基板)
基板100xは表示パネル10の支持部材であり、基材(不図示)と、基材上に形成された薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)層(不図示)と、基材上及びTFT層上に形成された層間絶縁層(不図示)とを有する。
【0039】
基材は、表示パネル10の支持部材であり、平板状である。基材の材料としては、電気絶縁性を有する材料、例えば、ガラス材料、樹脂材料、半導体材料、絶縁層をコーティングした金属材料などを用いることができる。例えば、ガラス基板、石英基板、シリコン基板、硫化モリブデン、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、マグネシウム、鉄、ニッケル、金、銀などの金属基板、ガリウム砒素基などの半導体基板、プラスチック基板等を採用することができる。
【0040】
TFT層は、基材上面に形成された複数のTFT及び配線からなる。TFTは、表示パネル10の外部回路からの駆動信号に応じ、自身に対応する画素電極層119と外部電源とを電気的に接続するものであり、電極、半導体層、絶縁層などの多層構造からなる。配線は、TFT、画素電極層119、外部電源、外部回路などを電気的に接続している。
【0041】
基板100xの上面に位置する層間絶縁層は、TFT層によって凹凸が存在する基板100xの上面の少なくともサブ画素100seを平坦化するものである。また、層間絶縁層は、配線及びTFTの間を埋め、配線及びTFTの間を電気的に絶縁している。
【0042】
TFT上部の絶縁層は、例えば、酸化シリコン(SiO
2)、窒化シリコン(SiN)や酸窒化シリコン(SiON)、酸化シリコン(SiO)や酸窒化シリコン(SiON)を用いることもできる。TFTの接続電極層としては、例えば、モリブデン(Mo)と銅(Cu)と銅マンガン(CuMn)との積層体を採用することができる。基板100xの上面に位置する層間絶縁層は、例えば、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、シロキサン系樹脂、ノボラック型フェノール系樹脂などの有機化合物を用い形成されており、層厚は、例えば、2000nm〜8000nmの範囲とすることができる。
【0043】
(2)画素電極層119
基板100xの上面に位置する層間絶縁層上には、サブ画素100se単位で画素電極層119が設けられている。画素電極層119は、発光層123へキャリアを供給するためのものであり、例えば陽極として機能した場合は、発光層123へホールを供給する。画素電極層119の形状は、矩形形状をした平板状であり、画素電極層119は行方向に間隔δXをあけて、間隙522zのそれぞれにおいて列方向に間隔δYをあけて基板100x上に配されている。また、基板100xの上面に開設されたコンタクトホールを通して、画素電極層119の一部を基板100x方向に凹入された画素電極層119の接続凹部119cとTFTのソースとが接続される。
【0044】
画素電極層119は、金属材料から構成されている。トップエミッション型の場合には、層厚を最適に設定して光共振器構造を採用することにより出射される光の色度を調整し輝度を高めているため、画素電極層119の表面部が高い反射性を有することが必要である。画素電極層119は、金属層、合金層、透明導電膜の中から選択される複数の膜を積層させた構造であってもよい。金属層としては、例えば、銀(Ag)またはアルミニウム(Al)を含む金属材料から構成することができる。合金層としては、例えば、APC(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)等を用いることができる。透明導電層の構成材料としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)や酸化インジウム亜鉛(IZO)などを用いることができる。
【0045】
(3)ホール注入層120、ホール輸送層121
画素電極層119上には、ホール注入層120、ホール輸送層121が順に積層され、ホール輸送層121はホール注入層120に接触している。ホール注入層120、ホール輸送層121は、画素電極層119から注入されたホールを発光層123へ輸送する機能を有する。
【0046】
ホール注入層120は、例えば、銀(Ag)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、イリジウム(Ir)などの酸化物、あるいは、PEDOT(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)などの導電性ポリマー材料からなる層である。
【0047】
ホール輸送層121は、例えば、ポリフルオレンやその誘導体、あるいはポリアリールアミンやその誘導体などの高分子化合物などを用いることができる。
【0048】
(4)バンク122
画素電極層119、ホール注入層120及びホール輸送層121の端縁を被覆するように絶縁物からなるバンク122が形成されている。バンク122は、列方向に延伸して行方向に複数並設されている列バンク522Yと、行方向に延伸して列方向に複数並設されている行バンク122Xとがあり、
図2に示すように、列バンク522Yはバンク122Xと直交する行方向に沿った状態で設けられており、列バンク522Yと行バンク122Xとで格子状をなしている(以後、行バンク122X、列バンク522Yを区別しない場合は「バンク122」とする)。また、列バンク522Yはバンク122Xの上面122Xbよりも高い位置に上面522Ybを有する。
【0049】
行バンク122Xの形状は、行方向に延伸する線状であり、列方向に平行に切った断面は上方を先細りとする順テーパー台形状である。行バンク122Xは、各列バンク522Yを貫通するようにして、列方向と直交する行方向に沿った状態で設けられており、各々が列バンク522Yの上面522Ybよりも低い位置に上122Xbを有する。そのため、行バンク122Xと列バンク522Yとにより、自己発光領域100aに対応する開口が形成されている。
【0050】
行バンク122Xは、発光層123の材料となる有機化合物を含んだインクの列方向への流動を阻害してはいけない。そのため、行バンク122Xはインクに対する親液性が所定の値以上であることが必要である。係る構成により、発光層123の材料となる有機化合物を含んだインクの列方向への流動性を高めサブ画素間のインク塗布量の変動を抑制する。行バンク122Xにより画素電極層119は露出することはなく、行バンク122Xが存在する領域では発光せず輝度には寄与しない。
【0051】
バンク122Xの厚みの上限膜厚は、2000nmより厚い場合は列バンクに沿った間隙内のインクの濡れ広がりが阻害されてしまう。それに対して2000nm以下では列バンクの間隙内のインクの濡れ拡がりは良好である。1200nm以下の場合には、インクの濡れ広がりが更に良化する。また、下限膜厚は、100nm以上あれば、画素電極層119端部がバンク122で被覆され画素電極層119と対向電極層125がショートする事なく一定の歩留りで製造可能となる。200nm以上あれば、バンク膜厚バラつきにともなう上記のショート不良が軽減され安定的に製造可能となる。バンク122に接続溝部を設ける場合における、溝部の底における膜厚も同様である。
【0052】
したがって、行バンク122Xの厚み、例えば、100nm以上2000nm以下、より好ましくは200nm以上1200nm以下であることが好ましい。本実施の形態では、約500nmとした。
【0053】
列バンク522Yは、発光層123の材料となる有機化合物を含んだインクの列方向への流動を堰き止めて形成される発光層123の行方向外縁を規定するものである。列バンク522Yの形状は、行方向に延伸する線状であり、列方向に平行に切った断面は上方を縮幅する台形形状である。
【0054】
列バンク522Yは、行方向における各サブ画素100seの発光領域100aの外縁を規定する。そのため、列バンク522Yはインクに対する撥液性が所定の値以上であることが必要である。
【0055】
列バンク522Yの厚み、例えば、200nm以上5000nm以下、より好ましくは200nm以上3000nm以下であることが好ましい。列バンク522Yの高さは、行バンク122Xの高さより高くする必要がある。行バンク122Xの高さに対して、列バンク522Yの高さは100nm以上高ければよい。本実施の形態では、約2000nmとした。
【0056】
バンク122は、画素電極層119の外縁と、対向電極層125との間における厚み方向(Z方向)の電流リークを防止するために、バンク122は、体積抵抗率が1×10
6 Ωcm以上の絶縁性を備えていることが必要である。そのために、バンク122は、は後述するように所定の絶縁材料からなる構成を採る。
【0057】
バンク122は、樹脂等の有機材料を用い形成されており絶縁性を有する。バンク122の形成に用いる有機材料の例としては、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等があげられる。バンク122は、有機溶剤耐性を有することが好ましい。より好ましくは、アクリル系樹脂を用いることが望ましい。屈折率が低くリフレクターとして好適であるからである。
【0058】
または、バンク122は、無機材料を用いる場合には、屈折率の観点から、例えば、酸化シリコン(SiO)を用いることが好ましい。あるいは、例えば、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などの無機材料を用い形成される。
【0059】
上述のとおり、バンク122Xは、約500nmの層である。ただし、層厚は、これに限定されるものではなく、例えば、100nm〜2000nmの範囲とすることができる。また、列バンク522Yは、約2000nmの層である。ただし、層厚は、これに限定されるものではなく、例えば、100nm〜5000nmの範囲とすることができる。
【0060】
さらに、バンク122は、製造工程中において、エッチング処理、ベーク処理など施されることがあるので、それらの処理に対して過度に変形、変質などをしないような耐性の高い材料で形成されることが好ましい。
【0061】
また、表面に撥水性をもたせるために、表面をフッ素処理することもできる。また、列バンク522Yの形成にフッ素を含有した材料を用いてもよい。また、列バンク522Yの表面に撥水性を低くするために、列バンク522Yに紫外線照射を行う、低温でベーク処理を行ってもよい。
【0062】
(5)発光層123
表示パネル10は、列バンク522Yと間隙522zとが交互に多数並んだ構成を有する。列バンク522Yにより規定された間隙522zには、発光層123が列方向に延伸して形成されている。自己発光領域100aRに対応する赤色間隙522zR、自己発光領域100aGに対応する緑色間隙522zG、自己発光領域100aBに対応する青色間隙522zBには、それぞれ各色に発光する発光層123が形成されている。
【0063】
発光層123は、有機化合物からなる層であり、内部でホールと電子が再結合することで光を発する機能を有する。
【0064】
発光層123は、画素電極層119からキャリアが供給される部分のみが発光するので、層間に絶縁物である行バンク122Xが存在する範囲では、有機化合物の電界発光現象が生じない。そのため、発光層123は、行バンク122Xがない部分のみが発光して、この部分が自己発光領域100aとなり、自己発光領域100aの列方向における外縁は、行バンク122Xの列方向外縁により規定される。
【0065】
発光層123のうち行バンク122Xの側面及び上面122Xb上方にある部分119bは発光せず、この部分は非自己発光領域100bとなる。発光層123は、自己発光領域100aにおいてはホール輸送層121の上面に位置し、非自己発光領域100bにおいては行バンク122Xの上面及び側面上に位置する。
【0066】
なお、
図7に示すように、発光層123は、自己発光領域100aだけでなく、隣接する非自己発光領域100bまで連続して延伸されている。このようにすると、発光層123の形成時に、自己発光領域100aに塗布されたインクが、非自己発光領域100bに塗布されたインクを通じて列方向に流動でき、列方向の画素間でその膜厚を平準化することができる。但し、非自己発光領域100bでは、行バンク122Xによって、インクの流動が程良く抑制される。よって、列方向に大きな膜厚むらが発生しにくく画素毎の輝度むらが改善される。
【0067】
発光層123の形成に用いる材料は、湿式成膜プロセスを用い製膜できる発光性の有機機能材料(有機発光材料)を用いることが必要である。
【0068】
具体的には、例えば、特許公開公報(日本国・特開平5−163488号公報)に記載のオキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、アンスラセン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体などの蛍光物質で形成されることが好ましい。
【0069】
発光層123は、有機発光材料を含むインクを構成して、列バンク522Y間の間隙522zに列方向端部間にわたり列方向に連続して塗布した後、減圧雰囲気下で乾燥することにより形成される。インクは、機能層材料を含む溶質と少なくとも2種類以上の溶媒とから構成されている。表1は、インクに用いることができる複数種類の溶媒と、各溶媒の20℃における蒸気圧を示した一覧表である。
【0071】
表1に示すように、インクに用いることができる複数種類の溶媒の蒸気圧は、20℃において10Pa以上5900Pa以下の範囲に含まれている。
【0072】
(6)電子輸送層124
バンク122上及びバンク122により規定された開口内には、発光層123の上に電子輸送層124が形成されている。また、本例では、発光層123から露出する各列バンク522Yの上面522Yb上にも配されていている。電子輸送層124は、対向電極層125から注入された電子を発光層123へ輸送する機能を有する。電子輸送層124は、例えば、オキサジアゾール誘導体(OXD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、フェナンスロリン誘導体(BCP、Bphen)などを用い形成されている。
【0073】
(7)対向電極層125
電子輸送層124を被覆するように、対向電極層125が積層形成されている。対向電極層125については、表示パネル10全体に連続した状態で形成され、ピクセル単位あるいは数ピクセル単位でバスバー配線に接続されていてもよい(図示を省略)。対向電極層125は、画素電極層119と対になって発光層123を挟むことで通電経路を作り、発光層123へキャリアを供給するものであり、例えば陰極として機能した場合は、発光層123へ電子を供給する。対向電極層125は、電子輸送層124の表面に沿って形成され、各発光層123に共通の電極となっている。対向電極層125は、光透過性を有する導電材料が用いられる。例えば、酸化インジウムスズ(ITO)若しくは酸化インジウム亜鉛(IZO)などを用い形成される。また、銀(Ag)又はアルミニウム(Al)などを薄膜化した電極を用いてもよい。
【0074】
(8)封止層126
対向電極層125を被覆するように、封止層126が積層形成されている。封止層126は、発光層123が水分や空気などに触れて劣化することを抑制するためのものである。封止層126は、対向電極層125の上面を覆うように表示パネル10全面に渡って設けられている。封止層126は、例えば、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などの透光性材料を用い形成される。また、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などの材料を用い形成された層の上に、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などの樹脂材料からなる封止樹脂層を設けてもよい。
【0075】
(9)接合層127
封止層126のZ軸方向上方には、上部基板130のZ軸方向下側の主面にカラーフィルタ層128が形成されたCF基板131が配されており、接合層127により接合されている。接合層127は、基板100xから封止層126までの各層からなる背面パネルとCF基板131とを貼り合わせるとともに、各層が水分や空気に晒されることを防止する機能を有する。接合層127の材料は、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの透光性材料樹脂材料を採用することができる。
【0076】
(10)上部基板130
接合層127の上に、上部基板130にカラーフィルタ層128が形成されたCF基板131が設置・接合されている。上部基板130には、表示パネル10がトップエミッション型であるため、例えば、カバーガラス、透明樹脂フィルムなどの光透過性材料が用いられる。また、上部基板130により、表示パネル10、剛性向上、水分や空気などの侵入防止などを図ることができる。透光性材料としては、例えば、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板等を採用することができる。
【0077】
(11)カラーフィルタ層128
上部基板130には画素の各色自己発光領域100aに対応する位置にカラーフィルタ層128が形成されている。カラーフィルタ層128は、R、G、Bに対応する波長の可視光を透過させるために設けられる透明層であり、各色画素から出射された光を透過させて、その色度を矯正する機能を有する。例えば、本例では、赤色間隙522zR内の自己発光領域100aR、緑色間隙522zG内の自己発光領域100aG、青色間隙522zB内の自己発光領域100aBの上方に、赤色、緑色、青色のフィルタ層128R、G、Bが各々形成されている。カラーフィルタ層128は、具体的には、例えば、複数の開口部を画素単位に行列状に形成されたカラーフィルタ形成用のカバーガラスからなる上部基板130に対し、カラーフィルタ材料および溶媒を含有したインクを塗布する工程により形成される。
【0078】
3.インク乾燥装置
(1)全体構成
次に、表示パネル10の製造方法に用いるインク乾燥装置の構成について説明する。
【0079】
ホール輸送層121、発光層123などの機能層は、列バンク522Yの間隙522zに、有機機能材料を含むインクを塗布した後、インク乾燥装置900を用いて低真空以上の減圧雰囲気下においてインクを乾燥させることにより形成される。インクは、機能層材料を含む溶質と少なくとも2種類以上の溶媒とから構成されている。
【0080】
図5は、実施の形態に係る有機EL表示パネル10の製造方法に用いるインク乾燥装置900の模式断面図である。
【0081】
インク乾燥装置900は、後述するインク乾燥工程において、基板100x上の列バンク522Y間の間隙522z内に充填された有機機能材料を含むインクを減圧下で乾燥させベーク処理することによって、発光層123を形成するための製造装置である。さらに、有機機能材料を含むインクを減圧下で乾燥させた後にベーク処理する構成としてもよい。
【0082】
図5に示すように、インク乾燥装置900は、列バンク522Y間の間隙522z内に有機機能材料を含むインクが塗布された基板100xを収容するチャンバ500と、チャンバ500内において基板100xが載置される支持台700を備える。支持台700は、耐熱性に優れた金属、又はセラミックの板からなる。支持台700は、駆動手段(不図示)により、チャンバ500の内と外との間を双方向に移動可能に構成されている。
【0083】
さらに、チャンバ500に接続されチャンバ500から気体を吸引してチャンバ500外へ排気する真空ポンプ600を備える。さらに、インクを減圧下で乾燥させた後にベーク処理する場合には、支持台700上の基板100xを加熱するヒータ(不図示)を備えた構成としてもよい。ヒータは、支持台700に設置されたホットプレート、チャンバ500内を加熱するオーブンを用いることができる。
【0084】
チャンバ500内における真空ポンプ600への排気路への開口500aは支持台700の下方に位置することが好ましい。
図5に示すように、支持台700を包むように気流を形成することができ、RGB各色の発光単位を規制する列バンク522Yと行バンク122Xとが配された区画領域10a内において上方に蒸気Air1を放出することができる。
【0085】
真空ポンプ600には、クライオポンプ、メカニカルブースターポンプ等、公知のポンプを用いることができる。真空ポンプ600には、独立して作動する複数のポンプ機構を備えていてもよく、例えば、主排気系等、副排気系等の複数の排気系等を選択的又は同時に作動させる構成としてもよい。
【0086】
チャンバ500の内部には、チャンバ500内部の圧力を測定する圧力センサ810が設置されている。圧力センサ810によって測定される圧力に基づいて、真空ポンプ600の回転速度などを設定して真空ポンプ600を駆動する制御部820を備えている。制御部820により、圧力センサ810の出力が所定の圧力変化曲線(プロファイル)を描くように真空ポンプ600が制御される。
【0087】
(2)減圧プロファイル
次に、インク乾燥装置900の減圧プロファイルの構成について説明する。
図6は、インク乾燥工程におけるチャンバ内圧力の時間変化を示す図である。
図6に示すように、チャンバ500から気体を排気する工程は、以下に示す期間T1、T2、T3を少なくとも含むことを特徴とする。期間T1、T2、及びT3は、それぞれ、第1の期間、第2の期間、及び第3の期間を意味する。
【0088】
期間T1は、チャンバ500内の圧力を、標準大気圧1×10
5Paから、インクに含まれている複数種類の溶媒それぞれの蒸気圧VP1、VP2、・・・VPn中、最大の蒸気圧VPmaxよりも高いP1まで減少する期間である。P1は、1×10
4Pa以上3×10
4Pa(10
4.47712Pa)以下の範囲から選択される圧力であることが好ましい。P1を、1×10
4Pa以上3×10
4Pa(10
4.47712Pa)以下とすることにより、P1を、インクに用いることができる複数種類の溶媒中、最大の蒸気圧VPmaxを上回る圧力に設定することができる。また、期間T1は、チャンバ500内の圧力の減圧を開始した後、30秒以上300秒以下の時間である。本実施の形態では、期間T1は、120秒とした。
【0089】
期間T2は、期間T1の後に、チャンバ500内の圧力を、複数種類の溶媒それぞれの蒸気圧VP1、VP2、・・・VPn中、最小の蒸気圧VPminよりも低いP2まで減圧する期間である。P2は、10Paであり、P2を10Paとすることにより、P2を、インクに用いることができる複数種類の溶媒中、最小の蒸気圧VPmin以下の圧力に設定することができる。また、期間T2は、期間T1の終了から30秒以上120秒以下の時間であることが好ましく、期間T1から60秒以下の時間であることがさらに好ましい。
【0090】
また、
図6に示すように、チャンバ500内の圧力を対数で示してチャンバ内圧力の時間変化をあらわしたとき、期間T2における圧力プロファイルの勾配は、期間T1における圧力プロファイルの勾配よりも傾斜が大きい。すなわち、期間T2におけるチャンバ内圧力の時間変化の勾配の平均値は、期間T1におけるチャンバ内圧力の時間変化の勾配の平均値よりも絶対値が大きい構成となっている。言い換えると、期間T1とT2との関係において、チャンバ500内の圧力を、10
XPa(パスカル)(但し、Xは実数をあらわす)と表したとき、期間T2における単位時間当たりのXの値の変化量の平均値は、期間T1における単位時間当たりのXの値の変化量の平均値よりも絶対値が大きい構成を採る。これにより、インク乾燥工程において、インクジェット方式における吐出口のインク吐出量のバラツキや不吐出等に起因するインク塗布直度の列方向に沿った膜厚バラツキを減少するとともに、基板上の列状塗布領域内でインク表面張力のアンバランスの起因するインク対流の影響を減少することができる。インク乾燥工程の詳細については後述する。
【0091】
また、期間T1及び期間T2における圧力の減少は単調減少であることが好ましい。
【0092】
チャンバ500から気体を排気する工程は、さらに、期間T2の後に、Xが0(1Pa)となる第3の圧力P3以下にチャンバ500内の圧力を減圧し、雰囲気の圧力が第3の圧力P3以下の状態に基板100xを置きインクを乾燥させるだけの期間T3を含む。圧力P3以下の状態において、支持台700上の基板100xを加熱するヒータ(不図示)を備えて、基板100xを圧力P3以下の状態に置いた状態で加熱することによりインクを乾燥させる構成としてもよい。
【0093】
4.表示パネル10の製造方法
次に、表示パネル10の製造方法について説明する。
図7は、表示パネル10の製造工程を示す工程図である。
図8(a)〜(d)、
図12(a)(b)は、有機EL表示パネル10の製造における各工程での状態を示す
図2におけるにおけるY1−Y1と同じ位置で切断した模式断面図である。
【0094】
(1)画素電極層119の形成
先ず、
図7、8(a)に示すように、層間絶縁層までが形成されたTFT基板100x0を準備する。層間絶縁層にコンタクト孔を開設し、画素電極層119を形成する(ステップS10)。
【0095】
画素電極層119の形成は、スパッタリング法あるいは真空蒸着法などを用い金属膜を形成した後、フォトリソグラフィ法およびエッチング法を用いパターニングすることでなされる。なお、画素電極層119は、TFTの電極と電気的に接続された状態となる。
【0096】
(2)ホール注入層120、ホール輸送層121の形成
次に、
図8(b)に示すように、画素電極層119上に対して、ホール注入層120、ホール輸送層121を形成する(ステップS20、30)。ホール注入層120、ホール輸送層121は、スパッタリング法を用い酸化金属(例えば、酸化タングステン)からなる膜を形成、あるいは、スパッタリング法を用い金属(例えば、タングステン)からなる膜を堆積し、減圧雰囲気下又は大気圧下にて焼成によって酸化して形成される。
【0097】
あるいは、ホール注入層120は、インクジェット法を用い、PEDOT(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)などの導電性ポリマー材料を含むインクを、後述する列バンク522Yを形成した後、列バンク522Yにより規定される間隙522z内に塗布した後、減圧雰囲気下(
図6に示す圧力P3)にて溶媒を揮発除去させて、あるいは、その後に大気圧下にて焼成することにより形成してもよい。大気圧下での焼成は、減圧雰囲気下にてインクに含まれる溶媒をある程度揮発除去させた後、基板100xをチャンバ500外に取り出して行う構成を採ることができる。大気圧下にて焼成することにより、金属酸化物を含むホール注入層の形成をウエットプロセスを用いて好適に製造することができる。
【0098】
また、ホール輸送層121は、インクジェット法やグラビア印刷法によるウェットプロセスを用い、構成材料を含むインクを後述する列バンク522Yを形成した後、列バンク522Yにより規定される間隙522z内に塗布した後、減圧雰囲気下(
図6に示す圧力P3)にて溶媒を揮発除去させる。あるいは、その後に減圧雰囲気下にて焼成することにより形成してもよい。
【0099】
その後、フォトリソグラフィ法およびエッチング法を用い各画素単位にパターニングしてもよい。
【0100】
(3)バンク122の形成
図8(b)に示すように、ホール輸送層121の縁部を覆うようにバンク122を形成する。バンク122の形成では、先ず行バンク122Xを形成し(ステップS40)、その後、各画素を規定する間隙522zを形成するように列バンク522Yを形成し(ステップS50)、間隙522z内の行バンク122Xと行バンク122Xとの間にホール輸送層121の表面が露出するように設けられる。
【0101】
バンク122の形成は、先ず、ホール輸送層121上に、バンク122の構成材料(例えば、感光性樹脂材料)からなる膜を積層形成する。そして、樹脂膜をパターニングして行バンク122X、列バンク522Yを順に形成する。行バンク122X、列バンク522Yのパターニングは、樹脂膜の上方にフォトマスクを利用し露光を行い、現像工程、焼成工程(約230℃、約60分)をすることによりなされる。
【0102】
バンク122Xの形成工程では、先ず、スピンコート法などを用い、有機系の感光性樹脂材料、例えば、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等からなる感光性樹脂膜を形成した後、乾燥し、溶媒をある程度揮発させてから、所定の開口部が施されたフォトマスクを重ね、その上から紫外線照射を行い感光性樹脂等からなるフォトレジストを露光し、そのフォトレジストにフォトマスクが有するパターンを転写する。次に、感光性樹脂を現像によってバンク122Xをパターニングした絶縁層を形成する。一般にはポジ型と呼ばれるフォトレジストが使用される。ポジ型は露光された部分が現像によって除去される。露光されないマスクパターンの部分は、現像されずバンク122が約500nm程度の厚みで残存する。
【0103】
列バンク522Yの形成は、先ず、スピンコート法などを用い、列バンク522Yの構成材料(例えば、感光性樹脂材料)からなる膜を積層形成する。そして、樹脂膜をパターニングして間隙522zを開設して列バンク522Yを形成する。間隙522zの形成は、樹脂膜の上方にマスクを配して露光し、その後で現像することによりなされる。列バンク522Yは、列方向に延設され、行方向に間隙522zを介して並設される。
【0104】
また、列バンク522Yは、発光層123の材料となる有機化合物を含んだインクの列方向への流動を堰き止めて、形成される発光層123の行方向外縁を規定するため、列バンク522Yはインクに対する撥液性が所定の値以上であることが必要である。他方、行バンク122Xは、発光層123のインクの列方向への流動を制御するために、行バンク122Xはインクに対する親液性が所定の値以上であることが必要である。
【0105】
列バンク522Yの表面に撥水性をもたせるために、列バンク522Yの表面をCF4プラズマ処理することもできる。また、列バンク522Yの形成にフッ素を含有した材料、もしくはフッ素を含有した材料を混合した組成物を用いてもよい。
【0106】
製造上、バンク122Xの上限膜厚は、1000nm以下で、製造時の膜厚バラツキがより小さくなると共にボトム線幅の制御が可能となる。また、下限膜厚は、膜厚が薄くなるとともに膜厚とボトム線幅とを同程度にする必要があり、下限膜厚が200nm以上で、解像度の制約による所望のボトム線幅を得ることが可能となる。したがって、バンク122Xの厚みは、製造プロセスの観点では、例えば、200mm以上1000nm以下であることが好ましい。本実施の形態では約500nmとした。
【0107】
製造上、バンク522Yの上限膜厚は、コスト削減による生産性向上の観点から1500nm以下が望ましい。また、下限膜厚は、膜厚が薄くなるとともに膜厚とボトム線幅とを同程度にする必要があり、下限膜厚が1000nm以上で、解像度の制約による所望のボトム線幅を得ることが可能となる。また溶液塗布をともなうプロセスの場合、下地の凹凸が膜厚の均一性が向上する。このことよりTFTの段差をできるだけ低減する必要があることより絶縁膜の下限膜厚が決定し500nm以上が好ましい。したがって、バンク522Yの厚みは、製造プロセスの観点では、例えば、500nm以上1500nm以下であることが好ましい。本実施の形態では約1000nmとした。
【0108】
(4)発光層123の形成
図8(c)に示すように、列バンク522Yで規定された各間隙522z内に、ホール輸送層121側から順に、発光層123を積層形成する(ステップS60)。
【0109】
発光層123の形成は、インクジェット法を用い、有機発光材料を含むインクを列バンク522Yにより規定される間隙522z内に塗布(ステップS61)した後、焼成によりインクを乾燥する(ステップS62)ことによりなされる。
【0110】
具体的には、この工程では、副画素形成領域となる間隙522zに、インクジェット法によりR、G、Bいずれかの有機発光層の材料を含むインク123RI、123GI、123BIをそれぞれ充填し、充填したインクを減圧下で乾燥させ、ベーク処理することによって、発光層123R、123G、123Bを形成する(
図8(c))。
【0111】
(4−1)インク塗布工程(ステップS61)について
発光層123のインクの塗布では、先ず、液滴吐出装置を用いて発光層123の形成するための溶液の塗布を行う。基板100xに対して赤色発光層、緑色発光層、青色発光層の何れかを形成するためのインクの塗布が終わると、次に、その基板に別の色のインクを塗布し、次にその基板に3色目のインクを塗布する工程が繰り返し行われ、3色のインクを順次塗布する。これにより、基板100x上には、赤色発光層、緑色発光層、青色発光層が、図の紙面横方向に繰り返して並んで形成される。
【0112】
次に、インクジェット法を用いて、発光層123のインクを間隙522z内に塗布する方法の詳細について説明する。
図9は、基板に対して発光層形成用のインクを塗布する工程を示す図であって、列バンク522Y間の間隙522zに一様に塗布する場合の模式図である。
【0113】
発光層123の形成時には、発光層123を形成するための溶液であるインクを用いて、赤色副画素用の間隙522zR内に発光層123R、緑色副画素用の間隙522zG内に発光層123G、及び青色副画素用の間隙522zB内に発光層123Bを、複数のラインバンク間の各領域に形成する。発光層123Rと、発光層123G又は発光層123Bとは厚みが異なる。具体的には、間隙522zR内に塗布するインクの量を、間隙522zB及び間隙522zG内に塗布するインクの量よりも多くすることにより、発光層123Rの厚みを、発光層123B及び発光層123Gの厚みよりも大きく形成することができる。
【0114】
説明を簡略にするため、ここでは、ノズルから吐出するインクの量を第1の条件に設定して基板上の複数の第1色目の間隙にインクを塗布し、次に、ノズルから吐出するインクの量を第2の条件に設定してその基板上の複数の第2色目の間隙にインクを塗布し、次にノズルから吐出するインクの量を第3の条件に設定してその基板上の複数の第3色目の間隙にインクを塗布する方法で、3色全部の間隙にインクを順次塗布する。基板100xに対して第1色目の間隙へのインクの塗布が終わると、次に、その基板の第2色目の間隙にインクを塗布し、さらに、その基板の第3色目の間隙にインクを塗布する工程が繰り返し行われ、3色の間隙用のインクを順次塗布する。
【0115】
上記において、複数の基板に対して第1色目の間隙へのインクの塗布が終わると、次に、その複数の基板に第2色目の間隙にインクを塗布し、次にその複数の基板の第3色目の間隙にインクを塗布する工程を繰り返し行って、3色の間隙用のインクを順次塗布してもよい。
【0116】
他方、ノズルから吐出するインクの量を第1の条件に設定して1枚の基板上の第1色目の間隙にインクを塗布した後、インクの量を第2の条件に変更して隣接する第2色目の間隙にインクを塗布し、さらに、インクの量を第3の条件に変更して隣接する第3色目の間隙にインクを塗布し、インクの量を第1の条件に戻して隣接する第1色目の間隙にインクを塗布し、この動作を繰り返して1枚の基板上の3色の間隙全部にインクを連続して塗布してもよい。
【0117】
(列バンク522Y間の間隙522zに一様に塗布する方法)
次に、1色の間隙中にインク(例えば、赤色間隙用のインク)を塗布する方法について説明する。
【0118】
発光層123は、発光領域100aだけでなく、隣接する非自己発光領域100bまで連続して延伸されている。このようにすると、発光層123の形成時に、発光領域100aに塗布されたインクが、非自己発光領域100bに塗布されたインクを通じて列方向に流動でき、後述する本実施の形態に係るインク乾燥工程を実施することにより列方向の画素間でその発光層123の膜厚を平準化することができる。但し、非自己発光領域100bでは、行バンク122Xによって、インクの流動が程良く抑制される。よって、列方向に大きな膜厚むらが発生しにくく画素毎の輝度むらや寿命低下が改善される。
【0119】
本塗布方法では、
図9に示すように、基板100xは、列バンク522YがY方向に沿った状態で液滴吐出装置の作業テーブル上に載置され、Y方向に沿って複数の吐出口624d1がライン状に配置されたインクジェットヘッド622をX方向に走査しながら、各吐出口624d1から列バンク522Y同士の間隙522z内に設定された着弾目標を狙ってインクを着弾させることによって行う。
【0120】
なお、同一の塗布量にて発光層123のインクを塗布する領域は、x方向に隣接して並ぶ3つの領域の中の1つである。
【0121】
発光層123の形成方法はこれに限定されず、インクジェット法やグラビア印刷法以外の方法、例えばディスペンサー法、ノズルコート法、スピンコート法、凹版印刷、凸版印刷等の公知の方法によりインクを滴下・塗布しても良い。
【0122】
(4−2)インク乾燥方法(ステップS62)について
塗布したインクを焼成により乾燥するインク乾燥工程について説明する。
図10は、有機EL表示パネル10の製造方法において、インク乾燥工程の詳細を示す工程図である。
【0123】
ステップS620では、列バンク522Y間の間隙522z内に有機発光材料を含むインクが塗布された基板100xを支持台700に載置し、支持台700を駆動手段(不図示)により、チャンバ500の内に移動させて、基板100xをチャンバ500内に収容する。このとき、チャンバ500内において、整流板を昇降手段(不図示)により上方から下方に移動させ、支持台700の外周近傍に複数設けられたスペーサに保持させて、支持台700と整流板との間隙を所定距離になるよう規制してもよい。
【0124】
ステップS621では、真空ポンプ600を駆動してチャンバ500内の圧力を大気圧からP1まで減圧する。
図6に示すように、本実施の形態では、チャンバ500内の圧力を、標準大気圧1×10
5Paから約120秒の期間T1の間に約3×10
4Pa(10
4.47712Pa)(P1)まで緩やかに減圧し、その後、減圧開始から600秒付近で約0.1Paまで減圧する構成としている。これにより、P1を、インクに用いることができる複数種類の溶媒中、最大の蒸気圧VPmaxを上回る圧力に設定するとともに、所定の期間T1においてチャンバ500内の圧力をP1を上回るように維持することができる。
【0125】
これにより、基板100xが含まれる雰囲気の蒸気濃度を高い状態に維持して、基板100x上の区画領域10aからインクの溶媒の蒸発を抑制することができる。そのため、基板100xの間隙522z内のインクは列方向に移動することが許容され、間隙522z内のインク塗布の膜厚はレべリングされる。すなわち、インク塗布直後に、基板100xが含まれる雰囲気の蒸気濃度を高い状態に維持することにより、インク塗布膜の列方向におけるレべリングを促進することができる。その結果、インクジェット方式における吐出口のインク吐出量のバラツキや不吐出等に起因するインク塗布直度の列方向に沿った膜厚バラツキは期間T1内に減少する。
【0126】
ステップS622では、真空ポンプ600をさらに駆動してチャンバ500内の圧力を大気圧からP2まで減圧する。
図6に示すように、本実施の形態では、チャンバ500内の圧力を、P1に到達した期間T1の終了時から約60秒以下の期間T2にて10Pa(P2)まで減圧する構成としている。これにより、P2を、インクに用いることができる複数種類の溶媒の蒸気圧中、最小の蒸気圧VPminより低い圧力に設定することができる。
【0127】
期間T2の減圧過程では、主に期間T1の終了から30秒以上120秒以下の期間T2において、
図5に示すように、支持台700が位置するチャンバ500内から外への急激な気流が発生する。この気流に伴って、基板100xに塗布されたインクから蒸発した溶媒蒸気も、主に期間T2において、基板100x上方からチャンバ500外へ放出される。
【0128】
これにより、基板100xが含まれる雰囲気の蒸気濃度を急激に減少させることにより、基板100x上の区画領域10aからインクの溶媒の蒸発を促進し、基板100xの間隙522z内のインクは列方向に移動することを抑制して、間隙522z内の表面張力のアンバランスによるインクの移動を抑制することができる。すなわち、インク塗布から一定時間経過した後に、基板100xが含まれる雰囲気の蒸気濃度を低い状態とすることにより、基板上の列状塗布領域内でインク表面張力のアンバランスの起因するインク対流の影響を減少することができる。その結果、表示パネル10の成膜エリアの周縁部分と中央部分において発光層123の膜厚の不均一性に起因して生じる輝度ムラを改善することができる。
【0129】
すなわち、本実施の形態では、上述のとおり、期間T1とT2との関係において、チャンバ500内の圧力を、10
XPa(Xは実数)と表したとき、期間T2における単位時間当たりのXの値の変化量の平均値は、期間T1における単位時間当たりのXの値の変化量の平均値よりも絶対値が大きい構成としている。これにより、期間T1内にインクジェット方式における吐出口のインク吐出量のバラツキや不吐出等に起因するインク塗布直度の列方向に沿った膜厚バラツキを減少するとともに、期間T2内に基板上の列状塗布領域内でインク表面張力のアンバランスの起因するインク対流の影響を減少することができる。
【0130】
次に、チャンバ500内の圧力が所定の基準値以下になるまで減圧し、基準値以下を維持し充填したインクに含まれる溶媒を蒸発してインクを乾燥させる。具体的には、ステップS623では、真空ポンプ600をさらに駆動してチャンバ500内の圧力をP2からP3まで減圧した後、基板100xを加熱あるいは非加熱状態で基板100xをチャンバ500内に放置する。本実施の形態では、
図6に示すように、チャンバ500内の圧力を、期間T2の開始から約130秒以下の時間にて1Pa(P3、10
0Pa、X=0)まで減圧し、さらに減圧を続けて第3の圧力P3以下にチャンバ500内の圧力を減圧し、雰囲気の圧力が第3の圧力P3以下の低真空状態において、支持台700上の基板100xを加熱するベーク処理を施すことによって、発光層123を形成する。ベーク処理は、所定条件の焼成工程(加熱温度約150℃、加熱時間約60分で真空焼成する工程)により行う。
【0131】
焼成工程が終了すると、チャンバ500内に気体を導入し(ステップS624)、支持台700を駆動手段(不図示)により、チャンバ500の外に移動させて、発光層123が形成された基板100xをチャンバ500外に搬出し(ステップS625)、インク乾燥工程を終了する。
【0132】
(5)電子輸送層124、対向電極層125および封止層126の形成
図8(d)に示すように、間隙522z内、及び列バンク522Y上にベタ膜として真空蒸着法などを用い電子輸送層124を形成する(ステップS70)。間隙522z内、及び列バンク522Y上にベタ膜として電子輸送層124を被覆するように、対向電極層125および封止層126を順に積層形成する(ステップS80、S90)。対向電極層125および封止層126は、CVD法、スパッタリング法などを用い形成できる。
【0133】
(6)CF基板131の形成
次に、CF基板131を形成する(ステップS100)。
図11(a)〜(d)は、有機EL表示パネル10の製造におけるCF基板131製造の各工程での状態を示す模式断面図である。
【0134】
CF基板131の形成では、先ず、透明な上部基板130を準備する(
図11(a))。次に、上部基板130表面に、紫外線硬化樹脂成分を主成分とするカラーフィルタ層128(例えば、G)の材料を溶媒に分散させ、ペースト128Xを塗布し(
図11(b))、溶媒を一定除去した後、所定のパターンマスクPM2を載置し、紫外線照射を行う(
図11(c))。その後はキュアを行い、パターンマスクPM2及び未硬化のペースト128Xを除去して現像すると、カラーフィルタ層128(G)が形成される(
図11(d))。この
図11(b)、(d)の工程を各色のカラーフィルタ材料について同様に繰り返すことで、カラーフィルタ層128(R)、128(B)を形成する。なお、ペースト127Xを用いる代わりに市販されているカラーフィルタ製品を利用してもよい。
【0135】
(7)CF基板131と背面パネルとの貼り合わせ
次に、CF基板131と背面パネルとの貼り合わせる(ステップS110)。
【0136】
工程では、先ず、基板100xから封止層126までの各層からなる背面パネルに、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの紫外線硬化型樹脂を主成分とする接合層127の材料を塗布する(
図12(a))。
【0137】
続いて、塗布した材料に紫外線照射を行い、背面パネルとCF基板131との相対的位置関係を合せた状態で両基板を貼り合わせる。このとき、両者の間にガスが入らないように注意する。その後、両基板を焼成して封止工程を完了すると、表示パネル10が完成する(
図12(b))。
【0138】
5.インク乾燥工程による効果について
以下、表示パネル10から得られる効果について説明する。
【0139】
5.1 膜厚評価試験
発明者は、表示パネル10における発光層123の膜厚の分布を測定した。
図13は、実施例、比較例1、2におけるインク乾燥工程におけるチャンバ内圧力の時間変化を示す図であり、
図14は、膜厚の測定位置を示す模式平面図である。本試験では、表示パネル10の実施例における、区画領域10aのX方向中心線上における基板100x上の発光層123の膜厚の分布を、列バンク522Yの列方向端部522Yeから端部522Yeまで測定した。
【0140】
(1)供試サンプル
次に、実施例、比較例1から2の仕様について説明する。
【0141】
実施例は、インク乾燥工程において、チャンバ内圧力の時間変化が
図6に示したプロファイルとなるインク乾燥装置900を用いて製造した表示パネル10である。
【0142】
比較例1は、インク乾燥工程において、チャンバ500内の圧力を、標準大気圧1×10
5Paから急激に減圧し、減圧開始から60秒以内に約10Pa(P2)に、さらに、減圧開始から150秒以内に約1Pa(P3)に減圧し、その後、減圧開始から600秒付近で約0.1Paまで減圧する構成としたインク乾燥装置を用いて製造した表示パネルである。
【0143】
比較例2は、インク乾燥工程において、チャンバ500内の圧力を、標準大気圧1×10
5Paから急激に減圧し、減圧開始から30秒以内に約450Paに減圧し、その後、減圧開始から600秒までの間約450Paを維持するインク乾燥装置を用いて製造した表示パネルである。450Paとは、インクに用いることができる複数種類の溶媒が有する蒸気圧の範囲に含まれる圧力であり、最大の蒸気圧Vpmaxより低く最小の蒸気圧Vpminより高い圧力である。そして、その後、30秒以内に1Pa(P3)まで減圧し、その後、減圧開始から900秒付近で約0.1Paまで減圧する構成としたインク乾燥装置を用いて製造した表示パネルである。
【0144】
(2)測定結果
図15(a)(b)(c)は、表示パネル10の実施例、及び比較例1、2における膜厚の測定結果である。
【0145】
比較例1では、
図15(b)に示すように、列バンク522Yの上端部(5mm位置)から約45mmの位置では、上端部から約110mmの位置と比較して膜厚が最大10nm減少している。また、列バンク522Yの上端部から約200mmの位置では、上端部から約100mmの位置と比較して膜厚が最大12nm減少している。また、比較例1では、列バンク522Yの上端部から下端部までの範囲における膜厚の変動は、最大12nmであることが観測された。
【0146】
比較例2では、
図15(c)に示すように、列バンク522Yの上端部(5mm位置)から約5mmの位置では、上端部から約40mmの位置と比較して膜厚が最大12nm減少している。また、列バンク522Y上端部から約150mmの位置にて、上端部から約200mmの位置と比較して膜厚が最大8nm減少している。また、比較例2では、列バンク522Yの上端部から下端部までの範囲における膜厚の変動は最大12nmであることが観測された。
【0147】
一方、表示パネル10の実施例では、
図15(a)に示すように、列バンク522Yの上端部から下端部までの範囲における膜厚の変動は最大3nm程度しか観測されなかった。
【0148】
以上の結果より、表示パネル10の実施例では、比較例1、2に対して、隣接する列バンク522Y間の間隙522YZに沿った列状塗布領域内で機能層の膜厚の均一性が向上したことが確認された。
【0149】
5.2 インク膜厚の変動要因について
表示パネル10から得られた発光層123の膜厚変動要因は、以下のとおりである。
【0150】
A)吐出口ごとのインク吐出量バラツキに起因するインク塗布直後の局所的な膜厚変動)
本実施の形態で用いたインクジェット方式では、
図9に示すように、基板100xは、列バンク522YがY方向に沿った状態で液滴吐出装置の作業テーブル上に載置され、Y方向に沿って複数の吐出口624d1がライン状に配置されたインクジェットヘッド622をX方向に走査しながら、各吐出口624d1から列バンク522Y同士の間隙522z内に設定された着弾目標を狙ってインクを着弾させることによって行う。一般に、ライン状に配置された複数の吐出口624d1には、吐出口624d1ごとにインク吐出量のバラツキがあり、また、吐出口624d1の中には事前に行った吐出品質検査により一部の吐出口624d1からのインク吐出を停止する場合もある。そのため、間隙522zに沿って、吐出口624d1毎のインク吐出量のバラツキや不吐出等に起因した膜厚バラツキが生じ、この膜厚バラツキはインク塗布直度においてより一層顕著である。この吐出量バラツキに起因する膜厚バラツキは、時間の経過に伴い間隙522z内のインクが列方向に移動することによりレべリングされるので膜厚バラツキは減少する。
【0151】
B)行列方向における基板中央部と周辺部とのインク溶媒の蒸気濃度分布に起因する膜厚変動
発明者は、基板上にインクを充填し乾燥する方法で機能層を形成する湿式成膜プロセスに於いて、基板上の表示領域の中央部分と表示領域の周縁部分での乾燥速度差による成膜形状にばらつきについて検討を行った。
【0152】
図16(a)(b)は、表示領域の中央部分と表示領域の周縁部分との間の成膜形状の違いを示す説明図である。
図16(a)において、100xは基板、522Yは基板100xに配設される列バンクであって、隣接する列バンク522Y間の間隙522zを規定する。123は発光層を形成するために間隙522zに充填されたインクである。
図16(b)に示すように、列バンク522Yの高さを面内で均一に素子を作製した場合、インクの溶媒の蒸気濃度が高く乾燥の遅い表示領域の中央部分A1のサブ画素では、区画領域10aの外周付近に位置するために相対的に蒸気濃度が低く乾燥の速い表示領域の周縁部分B1又はC1のサブ画素に比べ、発光層123は側壁近傍が薄膜化し画素中央が厚膜化するという結果となった。
【0153】
その理由は、乾燥の遅い中央部分A1では、溶媒が蒸発する過程で、発光層123インクを構成する固形成分が沈降し間隙522zの底部に移動し、底部の膜厚を増加させるためであると考えられる。中央部分A1において、周縁部分B1又はC1との比較において、溶媒が蒸発する過程で、発光層123インクを構成する固形成分が沈降し間隙522zの底部に移動し、底部の膜厚が増加するものと考えられる。
【0154】
このように、湿式成膜プロセスを用いて成膜する構成では、行列方向における基板中央部と周辺部とのインク溶媒の蒸気濃度分布に伴う溶媒蒸発速度のアンバランスに起因する膜厚変動が発生する。
【0155】
C)列方向における基板中央部と周辺部とのインク表面張力のアンバランスに起因する膜厚変動
図17(a)は、基板100x上の列バンク522Yの端部522Ye付近の基板100Xの模式平面図であり、(b)は(a)におけるY2−Y2で切った模式側断面図である。(c)は、時間経過に伴う発光層123Yの膜厚の変化を示す(a)におけるY2−Y2で切った模式側断面図である。
図17(a)(b)に示すように、基板100Xには、列バンク522Y及び行バンク122Xが配設されている。
【0156】
図17(c)に示すように、基板100x上の間隙522z内に塗布された発光層123Yのインクは、列バンク522Yの端部522Yeから溶媒の乾燥は始まる。その理由は、上述のとおり、湿式成膜プロセスに於いては、インクの溶媒を蒸発乾燥させるプロセスにおいて、成膜エリアの中央部分と周縁部分とでは、周縁部分の方が中央部分よりも溶媒蒸気圧が低くなることにより溶媒の乾燥速度が大きいためである。成膜エリアとは、湿式成膜プロセスによりインクを塗布するエリアであり、
図1に示した区画領域10aと同じ領域である。そのため、乾燥により溶媒の蒸発が進み、単位面積あたりの残存溶媒量が少ない端部522Ye付近のインクよりも、溶媒の蒸発が遅く単位面積あたりの残存溶媒量が多い端部522Yeより内方のインクの表面張力が不均一となる。そして、端部522Ye付近のインクは端部522Yeより内方のインクからの表面張力によって内方に引っ張られ内方に向けたインク対流が生じる。その結果、端部522Ye付近のインクは端部522Yeより内方へ移動し、端部522Yeより内方におけるインク膜厚は増加する。
【0157】
図17(c)の上段から下段に向けて段階的に示すように、時間経過に伴い端部522Yeから内方に向けて徐々に溶媒の乾燥が進行し、これに伴い、端部522Yeから内方に向けたインクの移動により端部522Yeから内方に向けてインク膜厚も徐々に増加する。最終的には、成膜エリアの中央部分においてインク膜厚が最大となり、
図18に示すように、形成される発光層123Yの膜形状も同様に成膜エリアの列方向の中央部分において膜厚が最大となる形状になる。
【0158】
このように、湿式成膜プロセスによりインクを塗布する構成では、列方向における基板中央部と周辺部とのインク表面張力のアンバランスに起因する膜厚変動が発生する。
【0159】
5.3 膜厚測定結果の考察
表示パネル10から得られた発光層123の膜厚測定結果について考察する。
【0160】
(1)比較例1について
比較例1では、列バンク522Yの範囲における膜厚の変動は、最大12nmであり、実施例に比べて大きな値を示すという結果になった。その理由は、主に上記Aの要因により、列状塗布領域を構成する間隙522z内において、吐出直後の吐出量バラツキに起因する膜厚バラツキが固定化されたものと考えられる。
【0161】
すなわち、比較例1では、上述のとおり、インク乾燥工程において、チャンバ500内の圧力を、標準大気圧1×10
5Paから減圧開始から60秒以内に約10Pa(P2)に急激に減圧する圧力プロファイルを採る。10Paは、インクに用いることができる複数種類の溶媒が有する蒸気圧の範囲中最小の蒸気圧Vpminより低い圧力である。この圧力への急激な減圧により基板100xに塗布されたインク中に含まれる複数種類の溶媒は減圧開始から60秒以内に急激に蒸発すると考えられる。上述のとおり、吐出口624d1毎のインク吐出量のバラツキや不吐出等に起因した膜厚バラツキが生じ、この膜厚バラツキはインク塗布直度においてより顕著である。比較例1では、間隙522z内のインクが列方向に移動して膜厚バラツキがレべリングされる前に、インクに含まれる溶媒の蒸発が進んだ結果、間隙522z内列方向へのインクの移動が制限され吐出直後の吐出量バラツキに起因する膜厚バラツキが固定されたものと考えられる。
【0162】
(2)比較例2について
比較例2では、列バンク522Yの範囲における膜厚の変動は、最大12nmであり、実施例に比べて大きな値を示すという結果になった。その理由は、主に上記B及びCの要因により、列状塗布領域を構成する間隙522z内でインク表面張力のアンバランスの起因するインク対流による膜厚変動が増大したものと考えられる。
【0163】
すなわち、比較例2では、上述のとおり、インク乾燥工程において、チャンバ500内の圧力を、標準大気圧1×10
5Paから急激に減圧し、減圧開始から30秒以内に約450Paに減圧し、その後、減圧開始から600秒までの間、インクに用いることができる複数種類の溶媒が有する蒸気圧の範囲に含まれる約450Paに維持する圧力プロファイルを採る。約450Paとは、最大の蒸気圧Vpmaxより小さく最小の蒸気圧Vpminより大きい圧力である。列状塗布領域を構成する間隙522z内に塗布されたインクは、上記したBの要因によって時間経過に伴い端部522Yeから内方に向けて徐々に溶媒の乾燥が進行する。そして、上記したCの要因によって、端部522Yeから内方に向けたインクの移動により端部522Yeから内方に向けてインク膜厚も徐々に増加する。このとき、複数種類の溶媒が有する蒸気圧の範囲に含まれる圧力を一定期間維持することにより、基板100xの間隙522z内からのインクの溶媒の蒸発が抑制され、間隙522z内のインクは列方向に移動することが長い時間許容される。その結果、間隙522z内の表面張力のアンバランスによるインクの移動が促進される。
【0164】
すなわち、インク塗布から一定時間、基板100xが含まれる雰囲気の蒸気濃度付近に維持することにより、基板上の列状塗布領域内でインク表面張力のアンバランスの起因するインク対流の発生を長い時間許容することとなる。その結果、表示パネル10の成膜エリアの周縁部分と中央部分において発光層123の膜厚の不均一性が増加すると考えられる。
【0165】
(3)実施例について
実施例では、列バンク522Yの範囲における膜厚の変動は、最大3nm程度となり、比較例1、2と比べて小さな値を示すという結果になった。その理由は、主に上記Aの要因の大きさを縮小したことにより、列状塗布領域を構成する間隙522z内において、吐出直後の吐出量バラツキに起因する膜厚バラツキを減少させたこと。および、主に上記Cの要因の大きさを縮小したことにより、列状塗布領域を構成する間隙522z内でインク表面張力のアンバランスの起因するインク対流による膜厚変動が減少したことに基づくと考えられる。
【0166】
図19(a)〜(d)は、有機EL表示パネル10の実施例における膜形状を示す模式図である。実施例では、先ず、チャンバ500内の圧力を、期間T1において、標準大気圧1×10
5Paから、インクに含まれている複数種類の溶媒それぞれの蒸気圧VP1、VP2、・・・VPn中、最大の蒸気圧VPmaxよりも高いP1まで減少する圧力プロファイルを採る。これにより、基板100xが含まれる雰囲気の蒸気濃度を高い状態に保持して、基板100x上の区画領域10aからインクの溶媒の蒸発を抑制することができる。そのため、
図19(a)に示すように、インク吐出直後においては、列状塗布領域を構成する間隙522z内において、の吐出量バラツキに起因する膜厚バラツキが生じるが、基板100xの間隙522z内のインクの列方向への移動が許容されるので、間隙522z内のインクは列方向に移動して膜厚バラツキが期間T1内にレべリングされる(
図19(b))。その結果、インクジェット方式における吐出口のインク吐出量のバラツキや不吐出等に起因するインク塗布直度の列方向に沿った膜厚バラツキは減少すると考えられる。
【0167】
次に、実施例では、期間T1の後に、期間T2における減圧の開始から期間T2内に、チャンバ500内の圧力を、複数種類の溶媒それぞれの蒸気圧VP1、VP2、・・・VPn中、最小の蒸気圧VPminよりも低いP2まで減圧する圧力プロファイルを採る。P2への急激な減圧により基板100xに塗布されたインク中に含まれる複数種類の溶媒は期間T2における減圧開始から期間T2内に急激に蒸発すると考えられる。これにより、基板100xの間隙522z内のインクは列方向に移動することが抑制され、間隙522z内の表面張力のアンバランスによるインクの移動が抑制される。すなわち、インク塗布から一定時間経過した後に、基板100xが含まれる雰囲気の蒸気濃度を、インクに含まれている複数種類の溶媒それぞれの蒸気圧VP1、VP2、・・・VPn中、最小の蒸気圧VPminよりも低いP2まで短時間で減圧することにより、
図19(c)に示すように、基板上の列状塗布領域内で基板中央部と周辺部とのインク表面張力のアンバランスの起因するインク対流の影響を受ける時間を期間T2内に留めることができる。すなわち、インク表面張力のアンバランスの起因するインク対流の生じる時間を短縮することにより、表示パネル10の成膜エリアの周縁部分と中央部分において発光層123の膜厚の不均一性が減少することができたと考えられる。
【0168】
このように、上記A及びCの要因の大きさを縮小したことにより、実施例では、
図19(d)に示すように、比較例1、2と比べて、形成される発光層123の膜形状も同様に成膜エリアの周縁部分と中央部分において膜厚が等価な形状になる。
【0169】
すなわち、本実施の形態では、インクジェット方式における吐出口のインク吐出量のバラツキや不吐出等に起因するインク塗布直度の列方向に沿った膜厚バラツキは減少するとともに、基板上の列状塗布領域内に有機機能材料を含むインクを塗布して製造する際に、列状塗布領域内でインク表面張力のアンバランスの起因するインク対流の生じる時間を短縮して、インク対流の影響を縮小することができる。その結果、上記実施の形態に係るインク乾燥装置900を用いたインク乾燥工程を含む有機EL表示パネル10の製造方法によれば、成膜エリアの周縁部分と中央部分との間の発光層の膜厚差について、基板上の列状塗布領域内及び列状塗布領域間において発光層123の膜厚の均一性を向上し、膜厚の不均一性に起因して生じる輝度ムラを改善することができる。
【0170】
6.総 括
以上説明したように、実施の形態1に係る表示パネル10の製造方法では、基板100x上に複数の画素100seが行列状に配された有機EL表示パネル10の製造方法であって、基板100xを準備する工程と、基板100x上に行列状に複数の画素電極層119を形成する工程と、少なくとも画素電極層119の行方向外縁間に位置する基板100x上方に列方向に延伸して行方向に複数の列バンク522Yを並設する工程と、行方向に隣接する列バンク522Y間の間隙522zそれぞれに、列バンク522Yの列方向端部間にわたり列方向に連続して有機機能材料を含む溶質と2種類以上の溶媒とを含むインクを塗布する工程と、基板100xを含む雰囲気から気体を排気する工程と、雰囲気の圧力が所定圧力以下の状態において基板100xを置くことによりインクを乾燥させて有機機能層123を形成する工程と、有機機能層123上方に透光性の対向電極層125を形成する工程とを含み、気体を排気する工程は、雰囲気の圧力を、標準大気圧から複数の溶媒それぞれの蒸気圧中、最大の蒸気圧よりも高い第1の圧力P1まで減圧する第1の期間T1と、第1の期間の後に、雰囲気の圧力を、複数の溶媒それぞれの蒸気圧中、最小の蒸気圧よりも低い第2の圧力P2まで減圧する第2の期間T2とを含み、雰囲気の圧力を10
XPa(Xは実数)と表したとき、期間T2における単位時間当たりのXの値の変化量の平均値は、期間T1における単位時間当たりのXの値の変化量の平均値よりも絶対値が大きいことを特徴とする。また、別の態様では、第1の期間T1は、雰囲気の圧力の減少を開始した後、30秒以上300秒以下の時間であってもよい。また、別の態様では、期間T2は、期間T1の終了から30秒以上120秒以下の時間であってもよい。
また、別の態様では、第1の圧力P1は、1×10
4Pa以上3×10
4Pa(10
4.47712Pa)以下の範囲から選択される圧力であってもよい。また、別の態様では、第2の圧力P2は、10Paであってもよい。
【0171】
係る構成を用いた有機EL表示パネル10の製造方法によれば、形成される発光層123の膜形状は、成膜エリアの周縁部分と中央部分において膜厚が等価な形状になる。すなわち、基板上の列状塗布領域内に有機機能材料を含むインクを塗布して製造する表示パネルにおいて、インク吐出直後の吐出量バラツキに起因する膜厚バラツキをレべリングして減少させるとともに、基板上の列状塗布領域内に有機機能材料を含むインクを塗布して製造する際に、列状塗布領域内でインク表面張力のアンバランスの起因するインク対流が生じる時間を短縮しその影響を縮小することができる。その結果、成膜エリアの周縁部分と中央部分との間の発光層の膜厚差について、基板上の列状塗布領域内及び列状塗布領域間において発光層の膜厚の均一化を図ることにより、表示パネル10の発光層123の膜厚の不均一性に起因して生じる輝度ムラを改善することができる。
【0172】
7.変形例
実施の形態では、本実施の形態に係る表示パネル10を説明したが、本発明は、その本質的な特徴的構成要素を除き、以上の実施の形態に何ら限定を受けるものではない。例えば、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。以下では、そのような形態の一例として、変形例に係るインク乾燥装置を用いた表示パネル10の製造方法について説明する。
【0173】
実施の形態1に係るインク乾燥装置900を用いた表示パネル10の製造方法では、インク乾燥工程において、均一な密度で複数の貫通孔が開設された整流板が複数の列バンクから所定距離離間した状態でインクが塗布された基板と対向して配される構成とした。しかしながら、整流板の形状は上記に限らず適宜変更してもよい。
【0174】
インク乾燥装置900は、基板100x上の列バンク522Yから所定距離離間した状態で基板100xに対し対向配置される整流板(不図示)、整流板を列バンク522Yから所定距離離間させて基板100xに対向させるスペーサ(不図示)とを備えた構成としてもよい。この場合、整流板は、耐溶剤性を有するステンレス、アルミ、銅、鉄等の金属、又はセラミックの板からなり、貫通孔が複数開設されている構成としてもよい。整流板は、昇降手段(不図示)により支持台700の上方をZ方向に双方向に移動可能に構成されていることが好ましい。また、スペーサは、支持台700の外周近傍に複数設けられた金属による支柱状の間隙形成手段であり、昇降手段により整流板が下方に移動し支持台700に近接したときに、整流板を保持することにより支持台700と整流板との間隙を所定距離に規制する構成とすることが好ましい。
【0175】
さらに、変形例では、整流板は、複数の列バンク522Yと対向する整流板面上の領域を囲繞する周壁を有し、インクを乾燥させる工程において、基板100xの平面視したとき周壁は複数の列バンク522Yを囲繞している構成としてもよい。
【0176】
係る構成により、主に上記Bの要因を縮小することができ、行列方向における基板中央部と周辺部とのインク溶媒の蒸気濃度分布に伴う溶媒蒸発速度のアンバランスに起因する膜厚変動がより一層解消することができる。
【0177】
他方、列方向における基板中央部と周辺部とのインク表面張力のアンバランスに起因する膜厚変動についても、変形例は実施例に対し改善すると考えられる。変形例では、基板中央部と周辺部とのインク溶媒の蒸気濃度分布に起因する膜厚変動が減少したことによって、列状塗布領域内でのインク表面張力のアンバランスがさらに減少するためである。
【0178】
その結果、成膜エリアの周縁部分と中央部分において発光層123の膜厚の不均一性に起因して生じる輝度ムラをより一層改善することができる。
【0179】
≪その他の変形例≫
(1)実施の形態では、表示パネル10の量産工程において1枚の基板から表示パネル10を同時に形成する枚数について、枚数を特定した説明は行わなかった。しかしながら、表示パネル10の量産工程において1枚の基板から複数の表示パネル10を同時に形成する多面取りを行う場合にも、各表示パネル10に対するそれぞれの区画領域10aが1つの成膜エリアとなることは言うまでもない。多面取りの場合でも隣接する成膜エリア(区画領域10a)が所定の距離以上離間している場合には、各成膜エリアにおいて周縁部分の方が中央部分よりも溶媒蒸気圧が低くなるからである。
(2)上記実施の形態では、
図1に示すように、表示パネル10では、基板100x上の区画領域10aの外縁から所定の区画数だけ、各区画に有機EL表示素子100が形成されていない非発光領域10neが形成された構成とした。しかしながら、列バンク522Yの端部522Yeまで、基板100x上の各区画に画素電極層119を配設して表示素子配列領域10eとしてもよい。基板上の成膜エリアを有効に活用することができ表示素子配列領域10eを拡大することができコスト削減に資する。
(3)表示パネル10では、行方向に隣接する列バンク522Y間の間隙522zに配されたサブ画素100seの発光層123が発する光の色は互いに異なる構成とし、列方向に隣接する行バンク122X間の間隙に配されたサブ画素100seの発光層123が発する光の色は同じである構成とした。しかしながら、上記構成において、行方向に隣接するサブ画素100seの発光層123が発する光の色は同じであり、列方向に隣接するサブ画素100seの発光層123が発する光の色が互いに異なる構成としてもよい。また、行列方向の両方において隣接するサブ画素100seの発光層123が発する光の色が互いに異なる構成としてもよい。係る構成によっても、インクの溶媒の蒸気濃度の分布に起因する輝度ムラを改善することができる。
【0180】
(4)その他
実施の形態に係る表示パネル10では、画素100eには、赤色画素、緑色画素、青色画素の3種類があったが、本発明はこれに限られない。例えば、発光層が1種類であってもよいし、発光層が赤、緑、青、黄色に発光する4種類であってもよい。
【0181】
また、上記実施の形態では、画素100eが、マトリクス状に並んだ構成であったが、本発明はこれに限られない。例えば、画素領域の間隔を1ピッチとするとき、隣り合う間隙同士で画素領域が列方向に半ピッチずれている構成に対しても効果を有する。高精細化が進む表示パネルにおいて、多少の列方向のずれは視認上判別が難しく、ある程度の幅を持った直線上(あるいは千鳥状)に膜厚むらが並んでも、視認上は帯状となる。したがって、このような場合も輝度むらが上記千鳥状に並ぶことを抑制することで、表示パネルの表示品質を向上できる。
【0182】
また、表示パネル10では、すべての間隙522zに画素電極層119が配されていたが、本発明はこの構成に限られない。例えば、バスバーなどを形成するために、画素電極層119が形成されない間隙522zが存在してもよい。
【0183】
また、上記実施の形態では、画素電極層119と対向電極層125の間に、ホール注入層120、ホール輸送層121、発光層123及び電子輸送層124が存在する構成であったが、本発明はこれに限られない。例えば、ホール注入層120、ホール輸送層121及び電子輸送層124を用いずに、画素電極層119と対向電極層125との間に発光層123のみが存在する構成としてもよい。また、例えば、ホール注入層、ホール輸送層、電子輸送層、電子注入層などを備える構成や、これらの複数又は全部を同時に備える構成であってもよい。また、これらの層はすべて有機化合物からなる必要はなく、無機物などで構成されていてもよい。
【0184】
また、上記実施の形態では、発光層123の形成方法としては、印刷法、スピンコート法、インクジェット法などの湿式成膜プロセスを用いる構成であったが、本発明はこれに限られない。例えば、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、イオンプレーティング法、気相成長法等の乾式成膜プロセスを用いることもできる。さらに、各構成部位の材料には、公知の材料を適宜採用することができる。
【0185】
上記の形態では、EL素子部の下部にアノードである画素電極層119が配され、TFTのソースに画素電極層119を接続する構成を採用したが、EL素子部の下部に対向電極層、上部にアノードが配された構成を採用することもできる。この場合には、TFTにおけるドレインに対して、下部に配されたカソードを接続することになる。
【0186】
さらに、上記実施の形態では、トップエミッション型のEL表示パネルを一例としたが、本発明はこれに限定を受けるものではない。例えば、ボトムエミッション型の表示パネルなどに適用することもできる。その場合には、各構成について、適宜の変更が可能である。
【0187】
≪補足≫
以上で説明した実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、工程、工程の順序などは一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない工程については、より好ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。
【0188】
また、上記の工程が実行される順序は、本発明を具体的に説明するために例示するためのものであり、上記以外の順序であってもよい。また、上記工程の一部が、他の工程と同時(並列)に実行されてもよい。
【0189】
また、発明の理解の容易のため、上記各実施の形態で挙げた各図の構成要素の縮尺は実際のものと異なる場合がある。また本発明は上記各実施の形態の記載によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0190】
また、各実施の形態及びその変形例の機能のうち少なくとも一部を組み合わせてもよい。
【0191】
さらに、本実施の形態に対して当業者が思いつく範囲内の変更を施した各種変形例も本発明に含まれる。