(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688910
(24)【登録日】2020年4月8日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】法線力が低減された端子
(51)【国際特許分類】
H01R 13/115 20060101AFI20200421BHJP
H01R 13/11 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
H01R13/115 B
H01R13/11 303C
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-568944(P2018-568944)
(86)(22)【出願日】2017年6月27日
(65)【公表番号】特表2019-520681(P2019-520681A)
(43)【公表日】2019年7月18日
(86)【国際出願番号】IB2017053844
(87)【国際公開番号】WO2018007900
(87)【国際公開日】20180111
【審査請求日】2019年1月18日
(31)【優先権主張番号】15/203,024
(32)【優先日】2016年7月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】399132320
【氏名又は名称】ティーイー・コネクティビティ・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】TE Connectivity Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(74)【代理人】
【識別番号】100121533
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 まどか
(72)【発明者】
【氏名】ディドナート,マイケル エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ハンフリー,デイヴィッド
【審査官】
杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】
実公昭59−011414(JP,Y2)
【文献】
実開昭58−130373(JP,U)
【文献】
特開平07−183054(JP,A)
【文献】
特開2004−158236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/11
H01R 13/115
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手端子を受け取るためのレセプタクル端子(10)であって、コンタクト部分(12)を有し、前記コンタクト部分(12)は、
底壁(20)を備え、前記底壁(20)の両側から弾性接触アーム(22)が延び、
前記弾性接触アーム(22)のそれぞれを通って開口(23)が延び、前記開口(23)の両側に第1の弾性接触部(25a)および第2の弾性接触部(25b)が延び、
前記第1の弾性接触部(25a)および前記第2の弾性接触部(25b)は、前記底壁(20)から相手端子係合部材(50)へ延びる弧状部分を有し、
前記相手端子係合部材(50)は、前記開口(23)をまたがって前記第1の弾性接触部(25a)から前記第2の弾性接触部(25b)へ延び、
前記第1の弾性接触部(25a)および前記第2の弾性接触部(25b)のそれぞれは、台形の構成を有し、前記底壁(20)に近接する幅が、相手端子係合部材(50)に近接する幅より大きく、
前記第1の弾性接触部(25a)および前記第2の弾性接触部(25b)は、相手端子が前記端子(10)に挿入されると接触力を生成する、端子(10)。
【請求項2】
前記底壁(20)から、ばねアーム(42)が延びている、請求項1に記載の端子(10)。
【請求項3】
前記底壁(20)の前記ばねアーム(42)から突起が形成され、前記突起は、前記ばねアーム(42)から延びて、前記ばねアーム(42)の内面に持上り領域をもたらす、請求項2に記載の端子(10)。
【請求項4】
前記第1の弾性接触部(25a)および前記第2の弾性接触部(25b)は、異なるサイズを有する、請求項1に記載の端子(10)。
【請求項5】
前記第1の弾性接触部(25a)および前記第2の弾性接触部(25b)のうち前記底壁(20)に近接する幅は、同じサイズである、請求項1に記載の端子(10)。
【請求項6】
前記第1の弾性接触部(25a)は、前記コンタクト部分(12)の嵌合端(36)に近接して位置決めされている、請求項1に記載の端子(10)。
【請求項7】
前記相手端子係合部材(50)は、前記弾性接触アーム(22)から前記底壁(20)の方へ延び、前記相手端子係合部材(50)の相手端子係合面(52)が、嵌合スロット(46)の頂部に位置決めされ、前記弾性接触アーム(22)は、前記相手端子が前記嵌合スロット(46)に挿入されると前記相手端子係合部材(50)が前記底壁(20)に対して動くことを可能にする弾力性を提供する、請求項1に記載の端子(10)。
【請求項8】
前記相手端子係合面(52)は、弧状の構成を有する、請求項7に記載の端子(10)。
【請求項9】
前記相手端子係合部材(50)は、前記相手端子を前記嵌合スロット(46)へ案内するのを助けるために設けられた引込み面(44)を有する、請求項7に記載の端子(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相手端子との迅速な接続および接続解除に適したソケット端子が知られている。この種の端子は、オスまたはスペース端子に対して電気的に接続するために使用され、オス端子は、ソケット端子に挿入されて摩擦によって保持される。このタイプのソケット端子は、米国特許第3,086,193号に示されている。
【背景技術】
【0002】
そのような端子は、多くの場合、たとえば試験の目的で、そのような端子が使用されている製品の最終的な検査および出荷の前に、複数回にわたって切断および再接続する必要がある。また、そのような端子同士の接続は、後のサービス中、振動およびおそらくは張りのある条件下で維持される必要がある。従来、これらの端子は挿入嵌合力が強く、これは相手コネクタがソケット端子に挿入されるとき、挿入に伴う人間工学的問題を引き起こし、望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、コンタクトばね定数が低減されたコンタクトばねを有し、それによって接触法線力を同じ製造公差でより正確に制御することを可能にするソケット型端子を提供することが有益となるはずである。より制御された法線力により、嵌合中に必要とされる挿入力を低減させながら、最小の接触法線力を確実に維持することが可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この解決策は、相手端子を受け取るためのレセプタクル端子によって提供される。レセプタクル端子は、コンタクト部分を含み、コンタクト部分は、底壁および弾性接触アームを有する。底壁の両側から弾性接触アームが延びる。弾性接触アームのそれぞれを通って開口が延び、開口の両側に第1の弾性接触部および第2の弾性接触部が延びる。第1の弾性接触部および第2の弾性接触部は、底壁から相手端子係合部材へ延びる弧状部分を有する。第1の弾性接触部および第2の弾性接触部は、相手端子が端子に挿入されると接触力を生成する。
【0005】
本発明について、添付の図面を参照しながら例として次に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明による端子の例示的な実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の原理による例示的な実施形態の説明は、添付の図面に関連して読まれることを意図するものであり、添付の図面は、記載する説明全体の一部と見なされる。本明細書に開示する本発明の実施形態の説明において、方向または向きに対するあらゆる言及は、説明を簡単にすることだけを意図するものであり、本発明の範囲を限定することを何ら意図するものではない。「下(lower)」、「上(upper)」、「水平」、「垂直」、「上(above)」、「下(below)」、「上(up)」、「下(down)」、「頂部(top)」、および「底部(bottom)」などの相対的な用語、ならびにこれらの派生語(たとえば、「水平に」、「下方へ」、「上方へ」など)は、そのとき説明されるまたは議論中の図面に示される向きを指すと解釈されるべきである。これらの相対的な用語は、説明を簡単にすることだけを目的とし、そのように明示的に指示されない限り、その装置が特定の向きで構築または動作されることを必要とするものではない。「取り付けられる」、「固定される」、「接続される」、「結合される」、「相互接続される」などの用語、および類似語は、別途明示的に記載されない限り、構造が互いに直接または介在する構造を介して間接的に固定されまたは取り付けられる関係、ならびに可動または固定両方の取付けまたは関係を指す。さらに、本発明の特徴および利益は、好ましい実施形態を参照することによって説明される。したがって、本発明は明示的に、そのような好ましい実施形態に限定されるべきではなく、そのような好ましい実施形態は、特徴のいくつかの可能な非限定的な組合せを示し、これらの特徴は単独で、または複数の特徴の他の組合せで存在することができ、本発明の範囲は、本明細書に添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0008】
本発明は、法線力が低減された端子を対象とする。特に、本発明は、湾曲した片持ちばねのコンタクトばね定数が低減されたソケット型端子を対象とする。
【0009】
図1〜4に最もよく示されているように、レセプタクル、ソケット、またはメス端子10は、コンタクト部分12と、コンタクト部分12の後ろに位置するワイヤバレル14と、ワイヤバレル14の後ろに位置する絶縁バレル16とを含む。ワイヤバレル14は、絶縁ワイヤの導電コアの端部と圧着接続するように構成される。絶縁バレル16は、ワイヤの絶縁被覆またはジャケットの端部と圧着接続するように構成される。ワイヤバレル14および絶縁バレル16が示されているが、コンタクト部分12は、本発明の範囲から逸脱することなく、他のタイプの終端部材とともに使用することができる。図示の例示的な実施形態では、端子10は、良好な導電性を有する金属板から打ち抜いて形成される。
【0010】
図1、
図5、および
図6を参照すると、コンタクト部分12は、底壁20と、底壁20の両側24、26から延びる弾性接触アーム22とを含む。
図6に最もよく示されているように、底壁20にはばねアーム42が設けられる。ばねアーム42は、底壁20から打ち抜いて形成される。
【0011】
ばねアーム42は、底壁20から延びて、底壁20の内面から弾性アーム22の方へ延びる持上り部分またはアームをもたらす。ばねアーム42は、それだけに限定されるものではないが、戻り止め、くぼみ、またはランス41(
図6に最もよく示されている)などの突起または隆起を含み、ランス41は、ばねアーム42の内面に持上り領域をもたらすように、ばねアーム42から形成される。ランス41は、より詳細に後述するように、相手端子が端子10に挿入されると相手端子に係合する。
【0012】
図示の例示的な実施形態では、各弾性アーム22は、開口または切抜き23を有し、第1の弾性接触部25aおよび第2の弾性接触部25bが、開口23の両側に延びる。第1の弾性接触部25aは、コンタクト部分12の嵌合端36に近接して位置決めされる。第2の弾性接触部25bは、嵌合端36からワイヤバレル14の方へ離されている。開口は、弾性接触部25aと弾性接触部の25bの間に延び、それらを分離する。図示の実施形態では、開口23は、端子を形成する前の素材片から材料を除去することによって形成される。除去された材料は、追加の端子の製造で再利用することができる。本発明の範囲から逸脱することなく、開口23を形成する他の方法を使用することもできる。
【0013】
図5に最もよく示されているように、弾性接触部25aおよび弾性接触部25bは、底壁20から相手端子係合部材50へ延びる弧状のまたは丸い部分を有する。1つの例示的な実施形態では、弾性接触部25aおよび弾性接触部25bの1つまたはすべてが、テーパ形または台形の構成を有することができ、それによって底壁20に接続する根元またはベース60(
図3)のそれぞれのアームの幅が、それぞれのアームのうち相手端子係合部材50に近接する部分62(
図3)の幅より大きくなる。しかし、他の構成を使用することもできる。弾性接触アーム22のそれぞれのコンタクト部25a、25bの構成により、それぞれの弾性接触部25a、25bおよび弾性接触アーム22の剛性およびばね定数を制御することが可能になる。より広い根元またはベース60は、より高いばね定数およびそれぞれの弾性接触部25a、25bから底壁20への力のより均一な分布を可能にする。逆に、それぞれの弾性接触部25a、25bが狭ければ狭いほど、アームのばね定数が低くなり、弾性接触アーム22の有効ばね定数も低くなる。したがって、それぞれの弾性接触部25a、25bは、異なる接触力を生成するように構成することができ、その結果、弾性接触アーム22に対して異なる接触力を得ることができる。
【0014】
様々な例示的な実施形態では、弾性接触部25bは、端子10の長手方向軸に本質的に直交する方向に延びる後面または縁部66を有する。これにより、端子10をハウジング内に位置決めするときまたは相手端子を端子10に嵌合するときに使用することができる基準面が提供される。
【0015】
弾性接触アーム22の相手端子係合部材50は、弾性接触部25aおよび弾性接触部25bから延び、開口23にまたがる。図示の例示的な実施形態では、相手端子係合部材50は非対称であり、嵌合端36に近接して位置決めされた引込み面44を有する。引込み面44は、相手コンタクトが弾性アーム22の縁部にぶつかるのを防止し、相手端子をコンタクト部分12の嵌合スロット46へ案内するのを助け、相手端子をスロット46に挿入するために必要とされる挿入力を低減させるために提供される。各相手端子係合部材50には、相手端子係合面52が設けられる。図示の実施形態では、相手端子係合部材50は、弾性接触アーム22から延び、相手端子係合面52を嵌合スロット46の頂部に位置決めする。弾性接触アーム22の構成により、相手端子がスロット46に挿入されると相手端子係合部材50が底壁20に対して動くことを可能にするために必要とされる弾力性が提供される。
図5に最もよく示されているように、相手端子係合面52は、弧状のまたは丸い構成を有する。しかし、係合面52の他の構成を使用することもできる。
【0016】
図示の例示的な実施形態では、ばねアーム42は、底壁20から打ち抜いて形成される。ばねアーム42は、ばねアーム42の自由端43が底壁20に対して動きまたは弾性変形することを可能にするように形成され、それによりばねアーム42およびランス41は、相手端子係合部材50に向かう方および相手端子係合部材50から離れる方へ動くことが可能になる。
【0017】
図示の例示的な実施形態では、ばねアーム42には端壁40が設けられる。端壁40は、ばねアーム42から延びて、ばねアーム42の内面から相手端子係合部材50の方へ延びる停止部分をもたらす。端壁40は、相手端子をスロット46に挿入することができる距離を制限するために提供される。
【0018】
弾性接触アーム22およびばねアーム42の構成により、コンタクト部分12は、相手端子のわずかな位置ずれまたは相手端子に付随するわずかな反りもしくは不備を補償することが可能になる。
【0019】
本発明の教示による端子のばね定数は、周知の端子のばね定数より低い。コンタクト部25a、25bおよび開口23の空間およびサイズを制御することによって、端子10と相手端子との間の適切な電気的接続を可能にしながら、弾性接触アーム22の法線力および挿入力を制御することができる。たとえば、本発明によって形成される端子の挿入力は、開口23によって分離された個々のコンタクト部25a、25bをもたない端子に比べて低減させることができる。
【0020】
加えて、ばね定数が低減されると、弾性アーム22は、永久歪みが生じる前に、より大きいばねの撓みを可能にする。これにより、製造公差にある程度の差異を有する相手端子とともに、端子を使用することが可能になる。言い換えれば、弾性アーム22が永久歪みを生じることなくより大きい距離にわたって撓む能力を有するため、相手端子の厚さを精密に制御する必要はない。
【0021】
完全に挿入された位置で、ばねアーム42のランス41および相手端子係合面52はすべて、相手端子と電気的かつ機械的に接触した状態で提供される。複数の接触領域により、それだけに限定されるものではないが15〜20アンペアまたはそれ以上などのより高い電流レベルの応用例で、レセプタクルコンタクト10を使用することが可能になる。ばねアーム42および相手端子係合面52の構成により、相手端子と端子10との間に安定的かつ確実な電気的接続が提供される。ばねアーム42のランス41および相手端子係合面52の構成により、より高いヘルツ応力が提供され、それによって端子10と相手端子との間のフレッティングコロージョンが解消または最小化され、それによって相手端子と端子10との間に安定的かつ確実な電気的接続が提供される。
【0022】
ランス41および相手端子係合面52の協働は、互いに対して横方向に隔置され、相手端子とレセプタクル端子10との間の接続をあらゆる環境で安定させることが可能になり、それによって振動が生じても相手端子がレセプタクル端子10内に適切に位置決めされたままであることを保証する。
【0023】
ばねアーム42のランス41および相手端子係合面52が互いに横方向にずれると、レセプタクル端子10は、相手端子が曲がっている場合でも、複数の接触領域を提供する。加えて、複数の接触領域は、相手端子の捩じれまたは位置ずれに耐える。
【0024】
一実施形態では、弾性アーム22は、ばねアーム42のランス41によって生成される力に耐えるために、相手端子係合面52の接触領域が等しくかつ逆方向の力を生成するように構成される。加えて、弾性アーム22は、相手端子係合面52によって生成される力に耐えるために、ばねアーム42のランス41の接触領域が等しくかつ逆方向の力を生成するように構成される。しかし、弾性アーム22の構成は、接触領域に伴う力が変動することを可能にするように変更することもできる。特に、ばねアーム42のランス41の位置決めにより、各接触領域によって印加される力を変えることができる。
【0025】
弾性接触アーム22およびばねアーム42の構成、ならびに複数の接触領域の使用により、相手端子の嵌合およびレセプタクルコンタクト10からの嵌合解除中により低い法線力が可能になる。これにより、より低い嵌合または法線力によってめっき摩耗がより少なくなるため、相手端子およびレセプタクルコンタクト10を多数の周期にわたってより耐久性のあるものにすることが可能になる。また複数の接触領域により、高い電流レベルに伴う極度の熱を分散させることが可能になり、それによってコンタクトの凹凸の溶接を防止するため、より高い電流レベルでレセプタクルコンタクト10を使用することが可能になる。
【0026】
本発明の端子は、コンタクトばね定数が低減された弾性接触アームを有し、それによって接触法線力を同じ製造公差でより正確に制御することが可能になる。より制御された法線力により、嵌合中に必要とされる挿入力を低減させながら、最小の接触法線力を確実に維持することが可能になる。弾性接触アームは、ソケット端子への相手端子のより低い挿入力を可能にしながら、安定的な電気的接続を提供する。