【実施例】
【0064】
以下、本発明の実施例について詳細に説明することとする。実施例のシラン変性ポリエチレンとしては、TSC社製のSH−100XおよびMCPP社製のXHE740Nをそれぞれ単独でまたは混合して使用し、比較例のシラン変性ポリエチレンとしては、三菱ケミカル株式会社製のリンクロン(登録商標)HF−700Nを使用した。
【0065】
(実施例1)
重量平均分子量(M
w)が350,000であり、分子量分布(M
w/M
n)が5である高密度ポリエチレン(High density polyethylene、HDPE)25質量部、シラン変性ポリエチレン0.5質量部、および40℃での動粘度が70cStであるパラフィンオイル70質量部を混合して、二軸押出機(内径58mm、L/D=56、ツインスクリューエクストルーダー)に投入した。この混合物を200℃、スクリュー回転速度40rpmの条件で、二軸押出機から幅が300mmのTダイ(T−die)で吐出させた。その後、温度が40℃のキャスティングロールを通過させて、厚さが800μmのベースシートを製造した。得られたベースシートを110℃のロール延伸機で縦方向(MD)に6倍延伸し、125℃のテンター延伸機で横方向(TD)に7倍延伸して、延伸フィルムを製造した。延伸フィルムを25℃のジクロロメタン浸出槽に含浸して、1分間パラフィンオイルを抽出、除去して、多孔膜を製造した。多孔膜を50℃の条件で乾燥した後、多孔膜をテンター延伸機で125℃に加熱し、横方向(TD)に1.45倍延伸した。その後、弛緩させて、延伸前に比べて1.25倍になるように熱固定させた。多孔膜を温度85℃、相対湿度85%RHの恒温恒湿槽で72時間架橋させて、分離膜を製造した。
【0066】
(実施例2)
重量平均分子量(M
w)が350,000であり、分子量分布(M
w/M
n)が5である高密度ポリエチレン29.5質量部、シラン変性高密度ポリエチレン0.5質量部、および40℃での動粘度が70cStであるパラフィンオイル70質量部を混合して、二軸押出機(内径58mm、L/D=56)に投入した。架橋触媒であるジブチルチンジラウレートをパラフィンオイルのうち一部に予め分散させ、二軸押出機を通過する混合物の総質量を基準として0.5質量%になるように、二軸押出機のサイドインジェクターを介して投入した。この混合物を200℃、スクリュー回転速度40rpmの条件で二軸押出機から幅が300mmのTダイで吐出させた。その後、温度が40℃のキャスティングロールを通過させて、厚さが800μmのベースシートを製造した。得られたベースシートを110℃のロール延伸機で縦方向(MD)に6倍延伸し、125℃のテンター延伸機で横方向(TD)に7倍延伸して、延伸フィルムを製造した。前記延伸フィルムを25℃のジクロロメタン浸出槽に含浸して、1分間パラフィンオイルを抽出、除去して、多孔膜を製造した。多孔膜を5分間50℃の条件で乾燥した後、多孔膜をテンター延伸機で125℃に加熱し、横方向(TD)に1.45倍延伸し、1.25倍に弛緩させた。多孔膜を温度85℃、相対湿度85%RHの恒温恒湿槽で72時間架橋させて、分離膜を製造した。
【0067】
(実施例3)
重量平均分子量(M
w)が350,000であり、分子量分布(M
w/M
n)が5である高密度ポリエチレンの代わりに、重量平均分子量(M
w)が250,000であり、分子量分布(M
w/M
n)が6である高密度ポリエチレンを用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で、分離膜を製造した。
【0068】
(実施例4)
重量平均分子量(M
w)が350,000であり、分子量分布(M
w/M
n)が5である高密度ポリエチレンの代わりに、重量平均分子量(M
w)が250,000であり、分子量分布(M
w/M
n)が6である高密度ポリエチレンを用いたことを除いて、実施例2と同様の方法で、分離膜を製造した。
【0069】
(実施例5)
多孔膜を恒温恒湿槽で架橋させずに、架橋槽に投入し、連続式で30分間通過させて架橋させたことを除いては、実施例1と同様の方法で、分離膜を製造した。架橋槽には、プロピレングリコールを添加した後、120℃に加熱した。
【0070】
(実施例6)
多孔膜を恒温恒湿槽で架橋させずに、架橋槽に投入し、連続式で10分間通過させて架橋させたことを除いては、実施例1と同様の方法で、分離膜を製造した。架橋槽には、プロピレングリコールおよびジブチルチンジラウレートがそれぞれ95:5の質量比で混合された溶液を添加した後、120℃に加熱した。
【0071】
(実施例7)
多孔膜を恒温恒湿槽で架橋させずに、架橋槽に投入し、連続式で60分間通過させて架橋させたことを除いては、実施例1と同様の方法で、分離膜を製造した。架橋槽には、エチレングリコールを添加した後、120℃に加熱した。
【0072】
(実施例8)
多孔膜を恒温恒湿槽で架橋させずに、架橋槽に投入し、連続式で15分間通過させて架橋させたことを除いては、実施例1と同様の方法で、分離膜を製造した。架橋槽には、エチレングリコールおよびジブチルチンジラウレートがそれぞれ90:10の質量比で混合された溶液を添加した後、120℃に加熱した。
【0073】
(実施例9)
重量平均分子量(M
w)が350,000であり、分子量分布(M
w/M
n)が5である高密度ポリエチレン35質量部、シラン変性ポリエチレン15質量部、および40℃での動粘度が70cStであるパラフィンオイル50質量部を混合して、二軸押出機(内径58mm、L/D=56)に投入した。この混合物を210℃、スクリュー回転速度45rpmの条件で二軸押出機から幅が300mmのTダイ(T−die)で吐出させた。その後、温度が40℃のキャスティングロールを通過させて、厚さが800μmのベースシートを製造した。得られたベースシートを110℃のロール延伸機で縦方向(MD)に6倍延伸し、125℃のテンター延伸機で横方向(TD)に7倍延伸して、延伸フィルムを製造した。延伸フィルムを25℃のジクロロメタン浸出槽に含浸して、1分間パラフィンオイルを抽出、除去して、多孔膜を製造した。多孔膜を50℃の条件で乾燥した後、多孔膜をテンター延伸機で125℃に加熱し、横方向(TD)に1.45倍延伸した。その後、弛緩させて、延伸前に比べて1.25倍になるように熱固定させた。上記多孔膜を温度85℃、相対湿度85%RHの恒温恒湿槽で72時間架橋させて、分離膜を製造した。
【0074】
(比較例1)
溶融指数0.8g/10min、密度0.958g/cm
3のシラン変性ポリエチレン45質量部と40℃での動粘度が70cStであるパラフィンオイル55質量部とを混合して、二軸押出機(内径58mm、L/D=56)に投入した。この混合物を160℃、スクリュー回転速度40rpmの条件で二軸押出機から幅が300mmのTダイで吐出させた。その後、温度が40℃のキャスティングロールを通過させて、厚さが60μmのベースシートを製造した。得られたベースシートを温度が110℃の延伸機で縦方向(MD)に3.5倍延伸し、温度が80℃の延伸機で横方向(TD)に1.4倍延伸した。ベースシートの両面に濃度30質量%のジブチルチンジラウレート水分散液を塗布した後、温度が85℃の温水で1時間シラン架橋反応を進めて、架橋フィルムを製造した。架橋フィルムを25℃のジクロロメタン浸出槽に含浸して、30分間パラフィンオイルを抽出、除去した。架橋フィルムを温度が80℃のオーブンで30分間乾燥して、架橋分離膜を製造した。
【0075】
(比較例2)
溶融温度が135℃であり、重量平均分子量が300,000である高密度ポリエチレン29質量部、40℃での動粘度が40cStであるパラフィンオイル65質量部、トリメトキシビニルシラン2質量部、ジブチルチンジラウレート2質量部、および2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン2質量部を混合して、二軸押出機内径58mm、L/D=56)に投入した。この混合物を200℃、スクリュー回転速度30rpmの条件で二軸押出機で反応押出させて、シラン変性ポリオレフィン組成物を製造し、幅が300mmのTダイで吐出した後、温度が40℃のキャスティングロールを通過させて、厚さが800μmのベースシートを製造した。得られたベースシートを108℃のロール延伸機で縦方向(MD)に5.5倍延伸し、123℃のテンター延伸機で横方向(TD)に5.5倍延伸して、延伸フィルムを製造した。延伸フィルムを25℃のジクロロメタン浸出槽に含浸して、10分間パラフィンオイルを抽出、除去して、多孔膜を製造した。多孔膜を127℃に熱固定して、多孔性分離膜を製造した。多孔性分離膜を温度80℃、相対湿度90%RHの恒温恒湿槽で24時間架橋させて、架橋分離膜を製造した。
【0076】
(比較例3)
重量平均分子量が500,000である高密度ポリエチレン5質量部、溶融指数が0.5g/10minであり、密度が0.942g/cm
3であるシラン変性ポリエチレン10質量部、および40℃での動粘度が60cStであるパラフィンオイル85質量部を混合して、二軸押出機(内径58mm、L/D=56)に投入した。この混合物を160℃、スクリュー回転速度40rpmの条件で二軸押出機から幅が300mmのTダイで吐出させた。その後、温度が40℃のキャスティングロールを通過させ、115℃で圧延して、厚さが500μmのベースシートを製造した。ベースシートの製造過程で一部の不良が発生した場合、廃棄し、正常な外観を有するベースシートを選定して使用した。
【0077】
前記ベースシートを115℃のロール延伸機で縦方向(MD)に3.5倍延伸し、115℃のテンター延伸機で横方向(TD)に3.5倍延伸して、延伸フィルムを製造した。延伸フィルムを25℃のジクロロメタン浸出槽に含浸して、1分間パラフィンオイルを抽出、除去して多孔膜を製造した。多孔膜を5分間50℃の条件で乾燥し、前記フィルムを温度90℃、相対湿度95%RHの恒温恒湿槽で24時間架橋させた。その後、110℃で30分間熱処理して、架橋分離膜を製造した。
【0078】
(比較例4)
多孔膜を恒温恒湿槽で架橋させずに、沸騰水が添加された架橋槽に投入し、連続式で通過させて架橋させたことを除いては、実施例1と同様の方法で、分離膜を製造した。
【0079】
(比較例5)
多孔膜を恒温恒湿槽で架橋させずに、80℃に加熱した温水が添加された架橋槽に投入し、連続式で通過させて架橋させたことを除いては、実施例1と同様の方法で分離膜を製造した。
【0080】
(実験例1)
本発明で測定した物性に対する試験方法は、下記の通りである。温度に対する別途の言及がない場合、常温(25℃)で測定した。
【0081】
−重量平均分子量(g/mol):ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel permeation chromatography,GPC)を利用してMacromolecules,Vol.34,No.19,pp.6,812〜6,820(2001)に記載された方法に基づいてポリスチレン標準試料を利用して測定した。
【0082】
−溶融指数(g/10min):190℃に設定された溶融指数測定機のシリンダーにオリフィスを投入し、試料を充填した後、シリンダー内部にピストンを入れ、2.16kgの重りを乗せて荷重を付加した。10分間で通過した試料の量を測定して、溶融指数を測定した。
【0083】
−密度(g/cm
3):ASTM D1238に基づいて測定した。
【0084】
−厚さ(μm):微細厚さ測定機を利用して、分離膜試験片の厚さを測定した。
【0085】
−気孔率(%):ASTM F316−03に基づいて、PMI社のキャピラリー・フロー・ポロメーターを使用して、半径が25mmの分離膜試験片の気孔率を測定した。
【0086】
−通気度(Gurley,sec/100ml):旭精工株式会社製のガーレー測定機(Densometer)EGO2−5モデルを利用して、測定圧力0.025MPaで100mlの空気が直径29.8mmの分離膜試験片を通過する時間を測定した。
【0087】
−架橋度(ゲル分率、%):分離膜試験片100mg(W
0)を1,2,4−トリクロロベンゼンに浸漬した後、130℃で2時間熱処理した。試験片を分離した後、50℃で24時間乾燥し、乾燥した試験片の重量(W)を測定し、下記計算式を使用して架橋度を計算した。
【0088】
【数1】
【0089】
−引張強度(kgf/cm
2):引張強度測定機を利用して、サイズが20×200mmの分離膜試験片に応力を加えて、試験片の破断が発生するまで加えられた応力を測定した。
【0090】
−引張伸び率(%):引張強度測定機を利用して、サイズが20×200mmの分離膜試験片に応力を加えて、試験片の破断が発生するまで伸びた最大長さを測定し、下記計算式を使用して引張伸び率を計算した。
【0091】
【数2】
【0092】
上記計算式で、l
1は、伸張前の試験片の横または縦方向の長さであり、l
2は、破断直前の試験片の横または縦方向の長さである。
【0093】
−穿孔強度(gf):カトーテック株式会社製の穿孔強度測定機KES−G5モデルを利用して、サイズが100×50mmの分離膜試験片に直径0.5mmのスティック(Stick)で0.05cm/secの速度で力を加えて、試験片が穿孔される時点で加えられた力を測定した。
【0094】
−メルトダウン温度(℃):熱機械分析装置(Thermomechanical analysis、TMA)を利用して、分離膜試験片に0.01Nの力を加えた後、5℃/分の速度で昇温させて、試験片の変形程度を測定した。試験片が破断される温度をメルトダウン温度とした。
【0095】
−熱収縮率(%):120℃のオーブンで1時間、サイズが200×200mmの分離膜試験片をA4サイズの紙の間に入れて放置した。その後、常温冷却させて、試験片の横方向および縦方向の収縮した長さを測定し、下記計算式を使用して熱収縮率を計算した。
【0096】
【数3】
【0097】
前記計算式で、l
3は、収縮前の試験片の横または縦方向の長さであり、l
4は、収縮後の試験片の横または縦方向の長さである。
【0098】
上記の実施例および比較例によって製造された分離膜の物性を測定し、その結果を下記表1および表2に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
(実験例2)
実施例2、比較例1、および比較例2の試験片をジクロロメタン浸出槽で抽出した後、回収されたパラフィンオイルを誘導結合型プラズマ発光分析(Inductively coupled plasma atomic emission spectroscopy,ICP)により分析して、その結果を下記表3に示した。
【0102】
【表3】
【0103】
上記表3を参照すると、シラン変性ポリオレフィンを使用した実施例2および比較例1では、パラフィンオイル1kg当たりのSi含量が5mg以下であって、測定誤差以内に該当する。しかしながら、トリメトキシビニルシランを使用した比較例2は、パラフィンオイル1kg当たり220mgのSiが検出された。また、比較例2のパラフィンオイルを追加分析した結果、トリメトキシビニルシランのグラフト過程でポリエチレンの他にパラフィンオイルに多数のシランがグラフトされたことを確認することができた。このシラン変性パラフィンオイルは、再生が不可能であるので、全量廃棄した。
【0104】
(実験例3)
実施例2〜4および比較例2〜3によって製造された分離膜を、横方向(TD)に三等分して、各部分から分離膜試験片を取り出して、架橋度、穿孔強度およびメルトダウン温度を測定して、下記表4に示した。下記表4で、Lは、一側の分離膜、Rは、他側の分離膜、Mは、中央側の分離膜の試験片で測定された値を意味する。最大差異は、M値とL値またはR値との差異のうち大きい値である。
【0105】
【表4】
【0106】
(実験例4)
実施例および比較例の分離膜の架橋において、架橋時間による分離膜のゲル分率を測定して、架橋方法および条件の違いによる反応速度の違いを評価し、その結果を下記表5に示した。
【0107】
【表5】
【0108】
上記表5を参照すると、プロピレングリコール(沸点:188.2℃)が添加された架橋槽で、連続式で架橋反応が行われた実施例5〜6の場合、比較例4に比べて約70%の架橋度を達成するのにかかる時間が最大1/3以下と短縮された。プロピレングリコールに比べて沸点がさらに高いエチレングリコール(沸点:197.3℃)が添加された架橋槽で、連続式で架橋反応が行われた実施例7〜8の場合、比較例5に比べて約60%の架橋度を達成するのにかかる時間が1/10以下と短縮された。
【0109】
前述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で容易に変形が可能であることを理解することができる。したがって、以上で記述した実施例は、すべての面において例示的なものであり、限定的でないものと理解しなければならない。例えば、単一型と説明されている各構成要素は、分散して実施されることもでき、同様に分散したものと説明されている構成要素も、結合した形態で実施されることができる。
【0110】
本発明の範囲は、後述する特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲の意味および範囲そしてその均等概念から導き出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解すべきである。