(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688980
(24)【登録日】2020年4月9日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】可変容量型ピストンポンプ
(51)【国際特許分類】
F04B 1/30 20200101AFI20200421BHJP
F04B 1/22 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
F04B1/30
F04B1/22
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-62274(P2016-62274)
(22)【出願日】2016年3月25日
(65)【公開番号】特開2017-172562(P2017-172562A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2019年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100156649
【弁理士】
【氏名又は名称】野原 淳史
(74)【代理人】
【識別番号】100158355
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100192614
【弁理士】
【氏名又は名称】梅本 幸作
(72)【発明者】
【氏名】池生 慎一
【審査官】
田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−177704(JP,A)
【文献】
特開平05−133321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 1/30
F04B 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ本体と、
前記ポンプ本体に回転自在に支持された駆動軸と、
前記駆動軸とともに回転可能に前記ポンプ本体内で支持されたシリンダバレルと、
前記駆動軸と平行に摺動可能に前記シリンダバレルに挿入された複数のプランジャと、
前記複数のプランジャと摺接する平面を有するとともに、前記駆動軸に垂直な回転軸の軸周りに傾転可能に支持された斜板と、を有し、
前記複数のプランジャの合力によって前記斜板の傾転角を減少させる向きに前記斜板に傾転モーメントが作用する可変容量型ピストンポンプであって、
前記ポンプ本体内に組み込まれ、一端で前記斜板の傾転角を増大させる向きに前記斜板を押すばね部材と、
前記ばね部材の他端側に配置されたコントロールピストンと、
前記コントロールピストンを内部に摺動自在に設けるとともに前記ポンプ本体に嵌挿され、かつ前記ポンプ本体にねじで固定されたシリンダ本体と、
前記シリンダ本体に設けられ、前記シリンダ本体の内部に油を導入する横穴と、
前記コントロールピストンに設けられ、前記シリンダ本体の内部から前記シリンダ本体の外部かつ前記ポンプ本体の内部に油を導出する絞りと、を有し、
前記横穴から前記シリンダ本体と前記コントロールピストンとの間隙に流入した油の圧力で前記コントロールピストンが前記ばね部材に向かって摺動し、前記コントロールピストンによって前記横穴が遮蔽されて油の流入が減少するとともに前記絞りから油が漏れることにより前記コントロールピストンの位置が自動制御されることを特徴とする可変容量型ピストンポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可変容量型ピストンポンプに関し、さらに詳細には、ポンプの吸収トルクが一定で制御される定馬力制御型ピストンポンプにおいて、外部からの信号や指令によって、
ポンプの吸収トルクを大幅に小さくし、エンジンなどポンプを駆動する原動機エンジンの負荷を軽減する可変容量型ピストンポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の可変容量型ピストンポンプは、ポンプの吸収馬力を制御するためのばね部材の反斜板側にピストンを設け、そのピストンを油圧力により該ばね部材の荷重を軽減せる向きに作動させ、該ばね部材の荷重(弾発力)を多段階に制御していた(例えば、特許文献1参照。)。
さらに、ピストンが前進しばね部材の弾発力を強くする
際の位置決め方法として、ばね部材の代わりのピストンを設け、その圧力を制御する技術や、機械的の位置決めすることが用いられている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−194374号公報
【特許文献2】特許第5347512号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2では圧力制御するための減圧弁要素が必要であり、圧力振動による不安定があるなどの問題がある。また、位置決め機構や調整機構が複雑となり、ポンプの大型化を招き、コストの上昇を招く要因になる。
本発明は係る課題を解決するためになされたもので、位置決め機構や調整機構を簡素化してポンプの大型化、コストの上昇幅を抑制することを特徴とする可変容量型ピストンポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために
本発明は、
ポンプ本体と、
前記ポンプ本体に回転自在に支持された駆動軸と、
前記駆動軸とともに回転可能に前記ポンプ本体内で支持されたシリンダバレルと、
前記駆動軸と平行に摺動可能に前記シリンダバレルに挿入された複数のプランジャ
と、
前記複数のプランジャと摺接する平面を有するとともに、前記駆動軸に垂直な回転軸の軸周りに傾転可能に支持された斜板と、を有し、
前記複数のプランジャの合力によって
前記斜板の傾転角
を減少
させる向きに
前記斜板
に傾転モーメントが作用する
可変容量型ピストンポンプ
であって、
前記ポンプ本体内に組み込まれ、一端で前記斜板の傾転角を増大させる向きに前記斜板を押すばね部材
と、
前記ばね部材の他端側に配置されたコントロールピストンと、
前記コントロールピストンを内部に摺動自在に設け
るとともに前記ポンプ本体に嵌挿され、かつ前記
ポンプ本体にねじで固定されたシリンダ本体と、
前記シリンダ本体に設けられ、前記シリンダ本体の内部に油を導入する横穴と、
前記コントロールピストンに設けられ、前記シリンダ本体の内部から前記シリンダ本体の外部かつ前記ポンプ本体の内部に油を導出する絞りと、を有し、
前記横穴から前記シリンダ本体と前記コントロールピストンとの間隙に流入した油の圧力で前記コントロールピストンが前記ばね部材に向かって摺動し、前記コントロールピストンによって前記横穴が遮蔽されて油の流入が減少するとともに前記絞りから油が漏れることにより前記コントロールピストンの位置が自動制御されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明
によれば、位置決め機構や調整機構を簡素化した可変容量型ピストンポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施の形態に係る可変容量型ピストンポンプが増馬力状態を示す略縦断面図である。
【
図2】可変容量型ピストンポンプが減馬力状態を示す概略構造を示す略縦断面である。
【
図3】本実施例における可変容量型ピストンポンプのポンプ流量とポンプ圧力の特性を示す関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態に係る可変容量型ピストンポンプ10(以下、ピストンポンプ10という)につき好適な実施の形態を挙げ、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1において、ピストンポンプ10は、駆動軸13と共に回転可能にポンプケーシング11、ケーシング12内に支持されたシリンダバレル14と、前記シリンダバレル14に軸方向に摺動可能に挿入された複数個のプランジャ15の頭部(図示しない)、シュー16及びシューホルダ21を介して摺接可能にされ、かつ駆動軸13の回転に対して相対回転不能にポンプケーシング11、ケーシング12に支持された斜板18と、を備える。
【0009】
前記プランジャ15は、駆動軸13と直角(
図1で紙面に対して垂直方向)に指向する回転軸19を有する前記斜板18に摺接し、駆動軸13が1回転すると駆動軸13の軸心方向にストロークする。そして、プランジャ15の軸心方向の往復によるプランジャ室20の容積変化とシリンダバレル14に摺接するピストンポンプ10を構成している。
前記斜板18の回転軸19は、前記プランジャ15が摺接する斜板18の平面30の反プランジャ側に位置している。
【0010】
そして、前記プランジャ室20の内圧による複数本のプランジャ15による合力25の中心は、
図1において概ねプランジャ15の球中心26を通る直線27と駆動軸13との交点28にあり、斜板18のプランジャ15が摺接する平面30に垂直に作用する。そのため、複数本のプランジャ15の合力25により斜板18の傾転角を減少せしめるモーメントの腕の長さ:lは、斜板18の傾転角:αによって変化する。
【0011】
前記斜板18の傾転角:αを減少させるモーメントに対抗し、駆動軸13と並行に設けられたコントロールシリンダ31が配置されている。このコントロールシリンダ31はハウジング12に例えば、ねじ機構により締結されたシリンダ本体32と、該シリンダ本体32に摺動自在に嵌挿されたコントロールピストン33(以下、ピストン33という)と、前記シリンダ本体32に螺合し該シリンダ本体32の可動位置を調整する調整ねじ部材34と、を備える。前記シリンダ本体32には半径方向に横穴35が穿設され、パイロット油圧源45に接続するソレノイドバルブ36に連通している。
【0012】
よって、前記コントロールシリンダ31の17制御室はソレノイドバルブ36のON/OFFによってパイロット圧力を導いたり抜いたり出来るようになっている。
二次圧力を調整することが可能なソレノイドバルブ36の二次圧力を導くようになっている。
前記ピストン33は二つのランド37a,37bが軸心方向に形成されており、ランド37aには絞り38が軸心方向に形成され、ランド37bには油路39が軸心方向に形成されている。
【0013】
斜板18の傾転角を変化させて該傾転角を制御してピストンポンプ10の流量を制御する該斜板18と一体になった可変部材40は、斜板18を回転軸19の回りで駆動軸13の軸心よりばね部材41側にずれて傾転させる傾転面42と、斜板18と一体になったアーム43と、ばね部材受け44を介してポンプケーシング11に対しアーム43を押す前記ばね部材41と、により構成される。
【0014】
コントロールシリンダ31による斜板18の傾転角:αを増大させる方向に作用するモーメントは、ばね部材41の荷重とコントロールシリンダ31と斜板18の回転軸19との距離;Lによって決定される為、ほぼ一定のモーメントを保つ。そのため、斜板18の回転軸19の位置、駆動軸13とコントロールピストン33の位置によって決定されるばね部材41の荷重次第によって、
図2に示す定馬力特性が得ることが出来る。
【0015】
本発明の実施の形態に係るピストンポンプ10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作について説明する。
図1は、増馬力状態を表し、
図2は、減馬力状態を表しており、馬力設定のばね部材41の荷重設定(ばね部材41の弾発力)が小さい状態であり、調整ねじ部材34によって設定されている。
【0016】
図2の状態で、パイロットをON、すなわちソレノイドバルブ36をONにすると、リシリンダ本体32の横穴35を通過した油は、ピストン33の油路39を通り、該ピストン33の右端に導かれる。ピストン33は、ばね部材41の荷重(弾発力)29(
図1参照)に抗して左へ移動し、該ばね部材41の荷重(弾発力)を強くする方向に移動する。
このため、ピストン33が左行すると該ピストン33が横穴35を塞ぎ、ピストン33右端の圧力は横穴35から入る油量と絞り38を通過してポンプケーシング11内に漏れる油量のバランスする位置で位置決めされる。
【0017】
増馬力時のスプリング荷重、すなわちばね部材41の弾発力は、シリンダ本体32の位置によって決定するため、要求されるポンプ吸収トルク設定の調整のため、シリンダ本体32は、ケーシング12と該シリンダ本体32との外周のねじによって結合され、調整ができるようになっている。
【符号の説明】
【0018】
10 可変容量型ピストンポンプ 11 ポンプケーシング
12 ケーシング 13 駆動軸
14 シリンダバレル 17 制御室
18 斜板 19 回転軸
20 プランジャ室 25 合力
26 球中心 27 直線
28 交点 29 荷重
30 平面 31 コントロールシリンダ
32 シリンダ本体 33 コントロールピストン
34 調整ねじ部材 35 横穴
36 ソレノイドバルブ 37a,37b ランド
38 絞り 39 油路
40 可変部材 41 ばね部材
42 傾転面 43 アーム
44 ばね部材受け 45 パイロット油圧源