特許第6689021号(P6689021)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6689021
(24)【登録日】2020年4月9日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】建物
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/02 20060101AFI20200421BHJP
【FI】
   E04H1/02
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-236691(P2013-236691)
(22)【出願日】2013年11月15日
(65)【公開番号】特開2015-96679(P2015-96679A)
(43)【公開日】2015年5月21日
【審査請求日】2016年10月12日
【審判番号】不服2019-1233(P2019-1233/J1)
【審判請求日】2019年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100133307
【弁理士】
【氏名又は名称】西本 博之
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(72)【発明者】
【氏名】藤田 耕一郎
【合議体】
【審判長】 森次 顕
【審判官】 秋田 将行
【審判官】 有家 秀郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−149231(JP,A)
【文献】 特開2007−138661(JP,A)
【文献】 特開2012−82586(JP,A)
【文献】 米国特許第4596097(US,A)
【文献】 横山浩介建築設計事務所「ライトコートのある家「回遊リビングの家」」[オンライン]2018年4月17日、https://yokoyama08.com/portfolio/living/
【文献】 横山浩介建築設計事務所「祝!竣工」[オンライン]2018年4月17日、https://ameblo.JP/ky080608/entry−11238996605.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/02
E04H 17/14 - 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下階床と、
前記下階床の上方に配置された上階床と、
上下方向において前記下階床と前記上階床との間に位置する中間階床の上に形成された第1居室と、
平面視において前記第1居室に隣接し且つ前記第1居室に連通する吹抜け部と、
平面視において前記吹抜け部に隣接し且つ前記上階床と略等しい高さに形成された外部床と、
第1窓を有し前記吹抜け部と前記外部床とを区画する第1外周壁とを備え、
平面視において第1方向に前記外部床、前記吹抜け部、前記中間階床の順に並んで配置され、
前記中間階床と前記上階床とを連絡する第1階段と、
前記上階床の上に形成され平面視において前記第1方向と交差する第2方向に前記吹抜け部及び前記外部床に隣接する第2居室と、
出入口を兼ねる第2窓を有し前記第2居室と前記外部床とを区画すると共に、前記第1方向に沿って配置された第2外周壁とを更に備え、
平面視において前記第1外周壁と前記第2外周壁とは直交して入隅を形成し、
前記第1階段は、平面視において直線状であり、前記吹抜け部内で前記第2居室に隣接して前記第1方向に沿って配置されていると共に、前記第2外周壁の延長線に沿って配置されており、
前記第1階段は、平面視矩形状の踊り場を上部に備え、
前記踊り場の前記第1方向に沿う辺及び前記第2方向に沿う辺の2辺が前記上階床に接していることを特徴とする建物。
【請求項2】
前記下階床と前記中間階床とを連絡する第2階段を更に備え、
前記第2階段は、平面視及び側面視とも直線状に配置され、前記第1方向に沿って配置されていると共に、平面視した場合に、前記第2方向において前記第1階段と隣接して配置されていることを特徴とする請求項に記載の建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下階床と上階床との間に中間階床を備える建物に関する。
【背景技術】
【0002】
上階の床よりも低く下階の床よりも高い位置に配置されたスキップ床(中間階床)を備えた住宅が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載の住宅では、南側に配置されたスキップ床上に、通常の約1.5倍の天井高さのリビングルームが形成されている。この住宅の1階床上には、リビングルームの北側に隣接する吹抜け部を挟んでダイニングキッチンが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−350880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の従来技術では、リビングルームが建物の内部の南側に配置されているので、都市部の狭隘な敷地に建築された場合には、南側の隣家との離隔距離を充分に確保できずプライバシーを確保することが難しかった。本発明は居室のプライバシーを確保しやすい建物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の建物は、下階床と、下階床の上方に配置された上階床と、上下方向において下階床と上階床との間に位置する中間階床の上に形成された第1居室と、平面視において第1居室に隣接し且つ第1居室に連通する吹抜け部と、平面視において吹抜け部に隣接し且つ上階床と略等しい高さに形成された外部床と、第1窓を有し吹抜け部と外部床とを区画する第1外周壁とを備え、平面視において第1方向に外部床、吹抜け部、中間階床の順に並んで配置され、中間階床と上階床とを連絡する第1階段と、上階床の上に形成され平面視において第1方向と交差する第2方向に吹抜け部及び外部床に隣接する第2居室と、出入口を兼ねる第2窓を有し第2居室と外部床とを区画する第2外周壁とを更に備え、平面視において第1外周壁と第2外周壁とは直交して入隅を形成し、第1階段は、吹抜け部内で第2居室に隣接して第1方向に沿って配置されていることを特徴としている。
【0006】
この建物では、第1居室と隣地との間に外部床に加えて吹抜け部が介在し、隣地から第1居室を遠ざけて配置することができる。更に、この建物では第1居室の床が上階床よりも低く設定されているので、隣地側に配置された外部床よりも第1居室の床面が低くなり、隣地の住宅から第1居室の床面を見にくくすることができ、第1居室のプライバシーが確保されやすくなる。また、第1窓が吹抜け部と外部床とを仕切る第1外周壁に設けられているので、第1居室からみると相対的に高いに位置に第1窓が配置されることになり、第1居室に対して斜め上方から第1窓を通じて太陽光を採り入れることができる。そのため、第1居室のプライバシーを確保しつつ採光性能を向上させることができる。また、第1窓を有する第1外周壁は吹抜け部に隣接して配置されているので、第1窓を通じて採り入れられた太陽光は吹抜け部を通過して下階床上に到達する。これにより下階床上の室内空間においても採光性能が向上される。なお、上階床と略等しい高さとは、上階床と等しい高さを含み、雨仕舞い等の都合上高さが若干異なる(上階床よりも低い)ものを含む。例えば、上階床から0〜100mm程度低いものでもよい。
【0007】
ここで、中間階床と上階床とを連絡する第1階段と、上階床の上に形成され平面視において前記第1方向と交差する第2方向に吹抜け部及び外部床に隣接する第2居室と、出入口を兼ねる第2窓有し第2居室と外部床とを区画する第2外周壁とを更に備え、平面視において第1外周壁と第2外周壁とは直交して入隅を形成し、第1階段は、吹抜け部内で第2居室に隣接して第1方向に沿って配置されているこの構成の建物では、中間階床と上階床とを連絡する第1階段を用いて第1方向に吹抜け部を通過して第1居室から第2居室に到達することができる。第2居室からは第2窓を通り外部床に出ることができるので、第1居室は外部床に隣接していないものの、半階分昇るだけで外部床に容易にアクセスすることができる。
【0008】
また、第1階段は、平面視において直線状であり、第2外周壁から第1方向に延びる仮想の直線から吹抜け部側に突出しないように配置されていてもよい。また、第1階段は、平面視矩形状の踊り場を上部に備え、踊り場の第1方向に沿う辺及び第2方向に沿う辺の2辺が上階床に接していてもよい。
【0009】
また、本発明の建物は、下階床と前記中間階床とを連絡する第2階段を更に備え、第2階段は、平面視及び側面視とも直線状に配置され、第2方向において第1階段と隣接して配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、居室のプライバシーを確保しやすい建物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態の建物の1階部分を示す平面図である。
図2図1に示す建物の2階部分を示す平面図である。
図3図1に示す建物のIII−III線矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る建具の実施形態について詳細に説明する。図1及び図2では、建物1の北側の領域が上側になるように図示している。
【0013】
(躯体基本構成)
建物1は、例えば305mmの平面モジュール(いわゆる「尺モジュール」)を有する梁勝ち工法が採用された鉄骨造2階建て、陸屋根形式の工業化住宅である。建物1の基礎は、格子状に構築された鉄筋コンクリート造の布基礎であり、H型鋼からなる基礎梁が適宜架け渡されている。建物1の軸組架構は、規格化された複数の梁及び柱が剛接合されて構成され、1階及び2階の柱の長さは等しくなっている。規格化された柱の長さは1階及び2階とも単一種類であり建物1の高さは固定され、基本的には、2階床3は階高を2等分する高さに配置されている。
【0014】
各階の床は各階の梁で支持された複数のALC(軽量気泡コンクリート)パネルからなり、1階床(下階床)2は基礎梁に支持され、2階床(上階床)3は2階の梁に支持されている。建物1の外周壁4は各階の梁で支持された複数のALCパネルからなり、ALCパネルの上端及び下端はそれぞれ、上下方向に対向する梁に支持されている。1階部分の外周壁4は基礎梁及び2階の梁に支持され、2階部分の外周壁4は2階の梁及び天井側の梁に支持されている。
【0015】
建物1では、1階及び2階で上下に連続して配置された四隅の柱の内側の領域である平面視矩形状の複数のグリッドを備え、複数のグリッドのうちの一つのグリッドにおいて、2階床3(及び小梁)が取り除かれ、この取り除かれた領域内に中間階床5が設置されている。「2階床が取り除かれ」とは、2階床3が設置されていないことをいう。同様に、「小梁が取り除かれ」とは、小梁が設置されていないことをいう。また、中間階床5が設置されるグリッド(領域)を中間階グリッド6という。
【0016】
建物1は、2階床3の床面よりも約800mm低い高さに中間階床5を設けることができるように規格化されたものである。建物1の軸組架構は、中間階床5を支持する中間梁及び中間柱を有する。中間階床5は、1階床2及び2階床3と同様にALCからなり、中間梁によって支持されている。中間階床5は1階床2よりも2090mm高く、2階床3よりも800mm低い位置に配置されている。
【0017】
建物1は、図1及び図2に示されるように、平面視において略矩形状を成している。建物1を田の字状に南北方向(第1方向)に2分割し東西方向(第2方向)に2分割して4分割した場合の北東角部を含む領域に中間階グリッド6が配置されている。中間階グリッド6内の北寄りの領域に中間階床5が配置され、中間階グリッド6内において中間階床5が配置されていない南寄りの領域が吹抜け部8となる。
【0018】
(建物の全体構成)
建物1は、夫婦と2人の子供とからなる4人家族の居住が想定された間取りを有している。例えば、建物1の南の隣地には住宅が存在し、建物1の西側には南北方向に延在する道路が配置されている場合が想定されている。
【0019】
建物1の1階部分には、図1に示されるように、玄関10、シューズクローゼット11、ホール12、トイレ13、廊下14、子供室15、寝室16、WIC(walk-in closet)17及びライブラリー(図書室)18が配置され、建物1の2階部分には、図2に示されるように、ベランダ(外部床)21、DK22(台所部23、食堂部24)、水回り25(トイレ26、洗面室27、浴室28)が配置されている。ている。また、中間階床5上の空間すなわち中間階には、居間(第1居室)7が形成されている。吹抜け部8内には階段室19(下階段41、上階段42)が配置されている。
【0020】
(1階の構成)
玄関10は、平面視において建物1の西側の略中央で、外周壁4aに接するように配置されており、当該外周壁4aには玄関ドア10aが設けられている。玄関10の床は玄関ポーチ10bに連続してタイル等の外装床材で仕上げられ、その高さは1階床2の一般部よりも200mm弱低く設定されている。
【0021】
シューズクローゼット11は玄関10の北側に隣接している。シューズクローゼット11及び玄関10は同一の床仕上げ及び同一の床高さを有し、玄関10とシューズクローゼット11との間の間仕切り壁31には開き戸形式の建具31aを備えた出入口が形成されている。
【0022】
玄関10の東側には上がり框を挟んで玄関10に連通するホール12が配置されている。ホール12には、洗面化粧台12aが設置されている。ホール12の東側に隣接してトイレ13が配置されている。トイレ13は上階段42下の空間を利用して設けられており、上階段42の段部下方の天井は階段形状に対応して傾斜している。ホール12とトイレ13との間の間仕切り壁32には開き戸形式の建具32aを備えた出入口が形成されている。
【0023】
ホール12に連続して東西方向に延びる廊下14が配置されている。ホール12と廊下14とは引戸形式の建具33によって区画されている。廊下14は南北方向に昇降可能な下階段41に連通している。下階段41は廊下14と中間階床5とを接続している。平面視において、トイレ13の東側に隣接して下階段41が配置されている。廊下14上の人は下階段41を北向きに昇り中間階床5上の居間7に行くことができる。
【0024】
南側には子供室15が配置されている。子供室15と廊下14との間の間仕切り壁34には3枚引戸形式の天地丈の建具34aが配置されている。建具34aは半透明の素材からなり、廊下14側から子供室15の内部の様子をうかがうことができる。子供室15は、2人の子供が共用する1室の空間として使用可能であるが、将来的に2室に仕切って使用することができる広さを有する。また、子供室15にはダブルベッド15aが設置されている。
【0025】
北西の角部には寝室16が配置され、寝室16はホール12の北側に隣接している。寝室16とホール12との間の間仕切り壁35には開き戸形式の建具35aを備えた出入口が形成されている。
【0026】
北東の角部にはWIC17が配置され、WIC17は寝室16の東側に隣接している。WIC17は中間階床5下及び下階段41下に位置している。WIC17の床は、1階床2の一般部より400mm低く設定されており、WIC17の天井高さは2100mm確保されている。WIC17と寝室16との間の間仕切り壁36には開き戸形式の建具36aを備えた出入口が形成されている。なお、寝室16におけるWIC17の出入口近傍の領域の床も1階床2の一般部よりも400mm低く設定され、人の出入りに支障がない高さに設定されている。
【0027】
東側でWIC17と廊下14との間にはライブラリー18が配置されている。ライブラリー18は書斎兼子供の勉強室として利用可能である。ライブラリー18の一部の領域(北側の約3分の1)は中間階床5下に位置し、残りの領域(南側の約3分の1)が吹抜け部8の下に位置している。WIC17とライブラリー18との間の間仕切り壁37に沿って書棚18aが設置され、東側の外周壁4bに沿って床面から400mmの高さにカウンター18bが設置されている。
【0028】
ライブラリー18の床は、WIC17と同様に1階床2の一般部よりも400mm低く設定されている。ライブラリー18の西側の間仕切り壁38には開き戸形式の建具38aを備えた出入口が形成されている。ライブラリー18と廊下14との間には間仕切り壁はなく、ライブラリー18と廊下14とは連通されている。また、子供室15の3枚の引戸形式の建具34aを西側に引き寄せることで、1800mm弱の幅で開放されて、ライブラリー18と子供室15とは廊下14を介して一体の空間となる。
【0029】
(中間階及び2階の構成)
図2に示されるように、北東角部を含む領域に中間階床5が配置され、西側の領域に2階床3が配置され、中間階床5及び2階床3は平面視においてL字状を成すように配置されている。また、南東角部を含む領域にベランダ21が配置されている。南北方向(第1方向)において南からベランダ21、吹抜け部8、中間階床5の順に並んで配置されている。
【0030】
居間7は中間階床5上の中間階空間の全領域を含むものであり、居間7の天井7a(図3参照)は2階床3上の天井と等しい高さとなっている。2階床3上の天井、居間7の天井7a、吹抜け部8の天井8a及びベランダ21上の天井21aは、全て同じ高さに配置されている。中間階床5の床面から居間7の天井7aまでの高さは約3200mmである。居間7の北側の外周壁4cには窓43が設けられている。
【0031】
居間(中間階床5)7の吹抜け部8側の端縁5aのうち下階段41及び上階段42との接続部分以外の部分には透明パネル51が設けられている。透明パネル51に代えて複数の縦桟からなり透視性を有する手摺が配置されていてもよい。
【0032】
階段室19は、吹抜け部8内の西寄りの領域に配置されている。階段室19内の東寄りの領域に下階段(第2階段)41が配置され、階段室19内の西寄りの領域に上階段(第1階段)42が配置され、これらの下階段41及び上階段42は南北方向に昇降するように設置されている。下階段41の開放側(東側)の側面に沿って腰壁形式の手摺41aが設けられ、上階段42の開放側(東側)の側面に沿って腰壁形式の手摺41bが設けられている。下階段41は平面視及び側面視ともに直線状に配置された階段であり、上階段42は平面視において直線状であり、側面視において「ヘ」字状の階段であり、段部を昇り切った上端部分に2階床3と等しい高さで連続する平面視矩形状の踊場42bを有する。踊場42bの西側の長辺及び南側の短辺がDK22の床面に接している。
【0033】
吹抜け部8とベランダ21とを区画する外周壁(第1外周壁)4eには窓(第1窓)44が設けられている。窓44は透明ガラスが嵌め込まれた嵌め殺し形式の窓である。窓44の下端44aは2階床3の床面近傍の高さであり2階床3の床面から約180mmの高さに位置し、窓44の上端44bは2階の天井の近傍の高さであり天井から約70mm低い位置に配置されている。
【0034】
DK(第2居室)22は2階床3上の空間のうち南寄りの領域に配置され、水回り25は2階床3上の空間のうち北寄りの領域に配置されている。DK22内の南寄りの領域に食堂部24が配置され、DK22内の北寄りの領域に台所部23が配置されている。台所部23にはペニンシュラ形式のキッチンセット23aが設置され、このキッチンセット23aは使用者が東を向いて調理できるように配置されている。キッチンセット23aの背面側には、西側の外周壁4aに沿って、冷蔵庫23b、食器棚23c及び食品庫23dが設置されている。また、食堂部24にはダイニングテーブル24aが配置されている。
【0035】
DK22の北側にはトイレ26、洗面室27及び浴室28からなる水回り25が配置されている。水回り25は居間7の西側に隣接している。居間7に隣接する洗面室27には洗面化粧台27aが設置されていると共に、洗濯機用の給排水設備を備えた洗濯コーナー27bが設けられている。浴室28は洗面室27の西側に隣接して配置されている。洗面室27及び浴室28の北側にはベランダ29が設けられている。北側の外周壁4cにはベランダ29と洗面室27とを連通する出入口を兼ねる窓45が設けられている。洗面室27とDK22との間の間仕切り壁61には片引き形式の建具61aを備えた出入口が設けられている。
【0036】
トイレ26は南北方向において浴室28と台所部23との間に配置されている。また、東西方向においてトイレ26の出入口に対向し2階床3の居間7側の端縁には透明パネル52が設けられている。透明パネル52は、東西方向において居間7と洗面室27との間の間仕切り壁62と略同じ位置に配置されている。また、トイレ26と台所部23との間の間仕切り壁63は、南北方向において居間7の吹抜け部8側の端縁5aと略同じ位置に配置されている。
【0037】
食堂部24の東側に隣接してベランダ21が配置されている。ベランダ21の床面は2階床3の床面と略等しい高さに設定されている。食堂部24とベランダ21とを区画する外周壁(第2外周壁)4fには透明ガラスを有する折り畳み形式の窓(第2窓)46が設けられている。窓46の下端は2階床3の床面近傍の高さであり2階床3の床面から約180mmの高さに位置し、窓46の上端は2階の天井の近傍の高さであり天井から約70mm低い位置に配置されている。窓46はDK22とベランダ21との間の出入口を兼ねている。ベランダ21には窓46から出入り可能である。
【0038】
ベランダ21において、窓44,46側の領域は屋根9(図3参照)によって覆われ、その他の南東角部の領域は開放されている。
【0039】
ベランダ21の東側の端縁(外周壁4fに対向する端縁)に沿って外部壁55が設けられている。外部壁55は、ベランダ21の床面から屋根9に到達する高さを有する。外部壁55の上端55aは、屋根9より上方に配置されている。外部壁55は、ベランダ21の東側の側面を覆うように配置されている。
【0040】
また、ベランダ21の南側の端縁には外部壁は設置されておらず外部に対して開放されている。ベランダ21の南側の側面は、床面近傍から軒天井近傍まで略全面的に開放されている。ベランダ21の南側の端縁(外周壁4eに対向する端縁)に沿ってスクリーン56が設置されている。スクリーン56は、上下方向に延在する複数の縦桟57を備え、縦桟57はベランダ21の南側の端縁に沿って並べられている。
【0041】
縦桟57の長手方向(上下方向)に直交する断面は長方形であり、長方形の長辺同士が東西方向に対向して配置されている。対向する長辺の間隔は、長辺の長さより短くなっている。また、縦桟57の下端は、1階の子供室15の窓47の下端より低い位置に配置され、縦桟57の上端は、屋根9に略等しい高さに配置されている。
【0042】
また、ベランダ21の北側の外周壁(第1外周壁)4eと西側の外周壁(第2外周壁)4fとは、入隅59を形成するように交差している。外周壁4eは南北方向において、DK22の中央に対応する位置に配置され、外周壁4fは東西方向において、上階段42と下階段41との境界(手摺42a)と略等しい位置に配置されている。
【0043】
上階段42は、図2に示されるように、東西方向において、外周壁4fと中間階床5の西側の端縁との間に配置されて、南北方向に延在して中間階床5と2階床3とを連絡している。上階段42の踊場42bは、北東角部と南西角部とを結ぶ対角線上であり、DK22と中間階床5との間に配置されている。踊場42bの南側の端縁でありDK22の床との接続部分は、入隅59の近傍に配置されている。また、踊場42bはキッチンセット23aの東側に位置している。
【0044】
次に建物1の作用について説明する。この建物1では、建物1の南側の隣地と居間7との間にベランダ21に加えて吹抜け部8が介在し、隣地から居間7を遠ざけて配置することができる。更に、この建物1では居間7の床が南の隣地側のベランダ21の床面よりも低く設定されているので、隣地の住宅の2階から居間7の床面を見にくくすることができ、居間7におけるプライバシーが確保される。
【0045】
また、建物1では、ベランダ21の上方の屋根が開放されており、吹抜け部8とベランダ21とを仕切る外周壁4eに窓44が設けられているので、居間7からみると相対的に高いに位置に窓44が配置されることになり、居間7に対して斜め上方から窓44を通じて太陽光を採り入れることができる。そのため、居間7のプライバシーを確保しつつ採光性能を向上させることができる。また、窓44を有する外周壁4eは吹抜け部8の南側に隣接して配置されているので、窓44を通じて採り入れられた太陽光は吹抜け部8を通過してライブラリー18に到達する。これにより1階の室内空間であるライブラリー18においても採光性能が向上される。ベランダ21の上方が開放されているので、ベランダ21、居間7、吹抜け部8及びDK22への採光が確保されている。
【0046】
また、建物1では、中間階床5上にいる人は、上階段42を昇ることで、吹抜け部8を南北方向に通過して居間7からDK22の入隅59近傍に到達することができ、DK22から外周壁4fの窓46を出入口としてベランダ21に出入りすることができる。そのため、居間7はベランダ21に隣接していないものの、半階分昇るだけで容易にベランダ21にアクセルすることができる。
【0047】
建物1では、ベランダ21における東側の端縁に沿って外部壁55が配置され、外部壁55は人の背丈よりも高く設定されているので、建物1の東側の隣地からの視線を遮ることができる。これにより、DK22及びベランダ21におけるプライバシーが確保されている。
【0048】
建物1では、ベランダ21における南側の端縁に沿って並べられスクリーン56が配置され、スクリーン56は複数の縦桟57を有し、複数の縦桟57の長辺同士が対向するように並べられ、隣り合う縦桟57間の隙間が長辺よりも短くなっているので、南北方向に対して傾斜する視線を遮ることができる。これにより、南の隣地の住宅から窓46へ向かう視線遮ることができ、DK22におけるプライバシーを確保することができる。また、縦桟57間の隙間を通じて空気が流通可能であるので、通風性を向上させることができ、窓44,46を開放することで、建物1内に空気を流入させることができる。また、スクリーン56によって、居間7に向かう方向への採光を妨げることなくDK22に向かう視線を遮ることができる。
【0049】
また、建物1では、吹抜け部8内において入隅59近傍に踊場42bが配置され、踊場42b近傍から居間7及びライブラリー18の様子をうかがうことができる。これにより、DK22から隣接する踊場42bに移動して居間7及びライブラリー18の様子を容易に確認することができる。
【0050】
また、建物1では、台所部23のキッチンセット23aから居間7が配置された方向を見た場合に間仕切り壁などの視線を遮るものが配置されていないので、キッチンセット23aを利用しながら、居間7の様子をうかがうことができる。
【0051】
また、建物1では、居間7と吹抜け部8との境に透明パネル51が設けられているので、居間7にいる人は、吹抜け部8を通じて斜め下方を見るだけでライブラリー18及び子供室15の様子をうかがうことができる。また、子供室15の建具34aは半透明の素材で形成されているので、子供室15の出入口が閉じられた状態であってもシルエットにより、子供室15内の子供の気配を確認することができる。
【0052】
また、建物1では、寝室16からWIC17を通りライブラリー18に行くことができると共に、子供室15から廊下14を通りライブラリー18に行くことができる。これにより、2方向から容易にライブラリー18に出入りすることができる。また、ライブラリー18において親子の交流を図り易くすることができる。
【0053】
また、廊下14とライブラリー18との間には、間仕切り壁はなく、建具34aを開放することで、子供室15、廊下14及びライブラリー18を一体の空間として利用することができるので、子供室15に子供用の学習机を設置する必要がなく、スペースの有効利用を図ることができる。また、子供がライブラリー18に行きやすくなるので、子供室15内に子供がこもってしまうことを防止することができる。
【0054】
本発明は、前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で下記のような種々の変形が可能である。
【0055】
上記の実施形態では、第1方向を南北方向として説明しているが、第1方向は南北方向から例えば45度程度ずれた方向でもよい。また、第1方向を東西方向としてもよい。隣地に近い方向にベランダ21が配置され、隣地から遠い方に中間階床5が配置されていればよい。
【0056】
また、中間階床5の居室は居間7に限定されず、例えば、食堂やライブラリーなどその他の交流スペースとしてもよく、中間階床5上の第1居室として食堂を配置して、2階床3上の第2居室として居間を配置してもよく、第2居室を第1居間として、第2居室を第2居間としてもよい。
【0057】
また、中間階床5と2階床3とを連絡する階段として、吹抜け部8内に配置されていない階段が設けられていてもよい。
【0058】
また、外部壁55は、ベランダ21の床面からの高さが1600mm程度のものでもよく、少なくとも人の背丈程度の高さを有するものでもよい。外部壁55に代えて、スクリーンなどが設けられていてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、下階床を1階の床とし、上階床を2階の床としているが、下階床を2階の床とし、上階床を3階の床としてもよい。また、下階床を地面より低いと高さに配置してもよい。
【0060】
また、建物1が建築される敷地は矩形状に限定されず、その他の形状でもよい。隣地の家及び道路の配置は、いずれの方向に配置されていてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、ベランダ21の上方は部分的に開放されているが、全面的に開放されているものでもよい。
【0062】
また、窓(第1窓)44の形式は嵌め殺し形式に限定されず、採光が得られるものであればいずれの形式でもよい。
【0063】
また、窓(第2窓)46の形式は折り畳み形式に限定されず、引き違い形式など人が通行可能な出入口として利用できればいずれの形式でもよい。
【0064】
また、下階段41は、上階段42に隣接して配置されていないものでもよい。例えば、東側の外周壁4bに沿って配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…建物、2…1階床(下階床)、3…2階床(上階床)、4e…外周壁(第1外周壁)、4f…外周壁(第2外周壁)、5…中間階床、7…居間(第1居室)、8…吹抜け部、21…ベランダ(外部床)、22…DK(第2居室)、44…窓(第1窓)、46…窓(第2窓)、55…外部壁、56…スクリーン、59…入隅。
図1
図2
図3