(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ロック解除部材が、前記ハウジングの前記上面の長手方向における一方側に位置する第1の押圧操作面と、他方側に位置する第2の押圧操作面と、前記ハウジングの前記上面の長手方向に沿って前記第1及び前記第2の押圧操作面に掛け渡す連結部と、を有する請求項1〜請求項12何れか1項記載のコネクタ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなロック部材の係止部は操作部に連結しており、操作部の押圧方向と同じ方向に変位する。従って、係止部を平型導体の凹部から外すためには、操作部を押圧して、係止部を平型導体から離間する方向に大きく変位させる必要がある。よって、基板の板面に対して直交する方向でコネクタに平型導体を挿入する場合には、コネクタの周囲に操作部が変位するための広い空間が必要となるという課題がある。
【0006】
以上のような従来技術を背景になされたのが本発明であり、その目的は、コネクタの周辺に広い空間がない場合であってもロック部材による平型導体の係止を解除する操作を容易に行えるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本発明は以下のように構成される。
本発明は、上面に平型導体の挿入口が開口する嵌合室を有しており、下側が基板に設置されるハウジングと、前記嵌合室に対して平型導体を抜け止めするロックばねとを備えるコネクタについて、前記基板に向けた押圧操作により変位するロック解除部材を備えており、前記ロックばねは、ハウジングに対する固定部と、固定部を回動支点として平型導体から離間する方向へ回動変位する弾性腕と、平型導体に設けた貫通形状のロック部と係止する係止片と、押圧操作により変位するロック解除部材に対して斜めに摺動接触して、前記固定部を回動支点として前記弾性腕を前記離間する方向へ回動させるとともにロック部から係止片を抜去させる摺動接触部を有することを特徴とするコネクタを提供する。
【0008】
本発明によれば、基板に向けた押圧操作により変位するロック解除部材を押圧することで、平型導体のロック部から係止片を抜去させ、係止を解除することができる。よって、例えばコネクタの周辺に実装部品が密集しており、平型導体から離間する方向にロック解除部材を押圧して変位させる空間が無い場合であっても、平型導体に対する係止を容易に解除することができる。また、基板に向けた押圧操作は作業者にとって感覚的に可能であるため、容易に作業を行うことができる。
【0009】
前記本発明のハウジングが、ハウジングの外面に開口しておりハウジングの外方に変位可能にロックばねを収容する溝部を有するものとすることができる。
【0010】
ハウジングが、ハウジングの外面に開口しておりハウジングの外方に変位可能にロックばねを収容する溝部を有するため、変位するロックばねをハウジングの溝部から外部に向けて変位させることができる。したがって、ハウジングの内部にロックばねを変位させる空間を確保する必要がないことから、ハウジングを小型化することができる。
【0011】
前記本発明のロックばねが平板形状であるものとすることができる。
【0012】
ロックばねが平板形状であるため、ハウジングの幅方向で小型化することができる。このような平板形状のロックばねは、いわゆる平板状の金属板を打ち抜いてなる抜き端子として構成することができる。
【0013】
前記本発明のハウジングが前記挿入口の幅方向における両端側に複数のロックばねを備えるものとすることができる。
【0014】
ハウジングが複数のロックばねを備えるので、平型導体に対して複数個所で確実に抜け止めすることができる。
【0015】
前記本発明の摺動接触部が、弾性腕の先端側から斜めに突出する突出片に形成した斜縁であるものとすることができる。
【0016】
摺動接触部が弾性腕の先端側から斜めに突出する突出片に形成した斜縁であるため、ロック解除部材に加える押圧操作力を、斜縁に対して斜めに摺動接触させて弾性腕を回動させる回転変位力へと、スムーズに転換することができる。
【0017】
前記本発明の係止片が、前記斜縁の下端側から前記嵌合室に向けて突出するものとすることができる。
【0018】
係止片が、斜縁の下端側から前記嵌合室に向けて突出するため、係止片が弾性腕の回転と確実に連動するため、係止片をロック部から確実に抜去することができる
【0019】
前記本発明のロック解除部材が、前記挿入口が開口するハウジングの上面側に押圧操作面を有するものとすることができる。
【0020】
ロック解除部材が、ハウジングの上面側に押圧操作面を有するので、ハウジングの上方から押圧操作面を押し下げることができるので、押圧操作を容易に行うことができる。
【0021】
前記本発明の押圧操作面が、ハウジングの上面よりも上方に位置するものとすることができる。
【0022】
押圧操作面がハウジングの上面より上方に位置するので、押圧操作する指を押圧操作面に対して接触し易くすることができ、押圧操作を確実に行うことができる。
【0023】
前記本発明の押圧操作面が、ハウジングの上面の長手方向における両端側に位置するものとすることができる。
【0024】
押圧操作面がハウジングの上面の長手方向における両端側に位置するので、その複数の押圧操作面を操作することで、押圧操作を確実に行うことができる。
【0025】
前記本発明の押圧操作面が、ハウジングの上面の長手方向における両端の側方に突出して位置するものとすることができる。
【0026】
押圧操作面が、ハウジングの上面の側方に突出して位置するので、押圧操作する指をハウジングの上面とできるだけ干渉させずに押圧操作面に対して接触し易くすることができ、押圧操作を確実に行うことができる。
【0027】
前記本発明の押圧操作面が、平坦面であるものとすることができる。
【0028】
自動実装において平坦面の押圧操作面を吸着箇所として吸着して自動実装することが可能となる。
【0029】
前記本発明のロック解除部材が、ハウジングの上面の長手方向における一方側に位置する第1の押圧操作面と、他方側に位置する第2の押圧操作面と、ハウジングの上面の長手方向に沿って第1及び第2の押圧操作面に掛け渡す連結部と、を有するものとすることができる。
【0030】
ロック解除部材が、第1及び第2の押圧操作面が連結部を介して繋がる一体形状であるため、一つのロック解除部材への押圧操作によって平型導体に対するロックばねの抜け止めを解除することが可能であり、解除操作を容易に行うことができる。
【0031】
前記本発明のロック解除部材が、弾性腕の上端側を挿通する挿通部を有しており、係止片がロック部から抜去する位置までロック解除部材が押圧操作により変位すると、当該挿通部から弾性腕の上端が突出するようになっているものとすることができる。
【0032】
本発明では、弾性腕の上端が挿通部から突出していることで、係止片がロック部から抜去していることを確認することができるため、それを目視することで平型導体を適切に抜き取ることができる。
【0033】
前記本発明の一対のロックばねが、複数配列されて平型導体と導通接触する端子の両端側に配置されるものとすることができる。
【0034】
こうすることで、ロックばねの間に配置される端子の数が変更された場合であっても、ロックばねの形状を変更することなく容易に対応することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、平型導体に対するロック部材の係止を容易に解除できるコネクタを提供することができる。これにより、例えば実装部品が密集している位置にコネクタが実装されていても容易に平型導体に対する解除を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明のコネクタの好適な実施形態を図面を参照しつつ説明する。以下の実施形態で示すコネクタ1は、基板2に実装されて、FPCや、FFC等の平型導体3を基板回路に導通接続する。
【0038】
また、本明細書中では、コネクタ1において端子5の配列方向(幅方向、長手方向)をX方向、前後方向(短手方向)をY方向、コネクタ1の高さ方向(上下方向)をZ方向として説明する。また、コネクタ1の前後方向Yにおいて正面壁4gが設けられる側を「前側」とし、反対側を「後側」として説明する。さらに、高さ方向Zにおける基板2の側を「下側」とし、コネクタ1側を「上側」として説明する。しかし、これらによってコネクタ1の基板2への実装方法や使用方法を限定するものではない。なお、左側面図は右側面図とは左右対称に表されるため、記載を省略する。
【0039】
実施形態〔図1〜図19〕:
本実施形態におけるコネクタ1は、基板2に対して縦置きして実装された状態で平型導体3を挿入し、基板2と平型導体3とを導通接続させるコネクタである。平型導体3はコネクタ1の上面に設けられる挿入口4aから嵌合室4b内に、高さ方向Zに沿って上側から下側に向けて挿入される。
【0040】
以下、本実施形態のコネクタ1の構成について詳細に説明する。コネクタ1は
図1〜
図7で示すように、ハウジング4と、端子5と、補強部材6と、ロックばね7と、ロック解除部材8とを備える。
【0041】
〔ハウジング〕
ハウジング4は、絶縁性の樹脂でなり、
図8,
図9で示すように略直方体状に形成されている。また、ハウジング4は、正面壁4gと、側壁部4fと、平型導体3の挿入口4aと、嵌合室4bと、端子収容部4cとを有する。
【0042】
正面壁4gは、X−Z平面を有する。正面壁4gには高さ方向Zに沿う細長い溝でなる「溝部」としての収容溝4g1が設けられている。本実施形態では収容溝4g1が幅方向Xにおける両端側に配置されている。収容溝4g1には、ロックばね7の基端部7c1と、第1の弾性腕7dと、第2の弾性腕7eとが収容されている。基端部7c1と、第1の弾性腕7dと、第2の弾性腕7eとは、弾性変位する際に収容溝4g1から外部に向けて変位することができる。よって、ハウジング4の内部にロックばね7の変位空間を設ける必要がないため、コネクタ1を前後方向Yで小型化することができる。
【0043】
側壁部4fは、ハウジング4の幅方向Xにおける両端に1つずつ設けられる。そしてスライダー固定部4dと、補強部材固定部4d4とを有する。
【0044】
スライダー固定部4dはハウジング4の側壁部4fに設けられ、線状凹部4d1を有する。
【0045】
線状凹部4d1は高さ方向Zに沿う凹状部でなる。線状凹部4d1の高さ方向Zにおける略中央には外方に向かう突状部4d3が設けられる。線状凹部4d1にはロック解除部材8のスライダー部8aが部分的に収容される。また、突状部4d3にはスライダー部8aの係止部8a1が引っかかることで、スライダー部8aが線状凹部4d1に対して抜け止めされる。
【0046】
補強部材固定部4d4は側壁部4fの下側に、スライダー固定部4dから幅方向Xで外側に向けて飛び出すように設けられている。補強部材固定部4d4の幅方向Xにおける外側面には補強部材6が固定されている。補強部材固定部4d4にはスライダー挿入孔4d2が設けられており、ロック解除部材8のスライダー部8aの先端側が挿入されている。スライダー部8aをこうしたスライダー挿入孔4d2に挿入することで、スライダー部8aを確実にハウジング4に対して固定することができる。
【0047】
挿入口4aは、ハウジング4の上側に設けられる天面壁4eの上面に形成される。そして挿入口4aは、ハウジング4の内部で嵌合室4bと連通する。
【0048】
嵌合室4bは、ハウジング4の内部に設けられ、高さ方向Zに沿って設けられる内壁4b1に囲まれて形成される。嵌合室4bの下側には、ロックばね固定部4b2が設けられており、後述するロックばね7が固定される。
【0049】
端子収容部4cは、嵌合室4bを形成する内壁4b1にハウジング4の幅方向Xに沿って複数並列に配置される。端子収容部4cは嵌合室4bと連通しており、端子5は端子収容部4cに1つずつ収容される。
【0050】
〔端子〕
端子5は導電性の金属板を曲げ加工することで形成されており、端子収容部4cに1つずつ収容された状態で、ハウジング4の幅方向Xに沿って複数並列に配置される。また、端子5は
図10で示すように、基板接続部5aと、固定部5bと、弾性片部5cと、接触部5dとを有する。
【0051】
基板接続部5aは、端子5の前後方向Yにおける一端側に設けられている。全ての端子5は同形状でなり、端子収容部4cに端子5を固定した状態で全ての端子5の基板接続部5aが正面壁4gの下側から突出する。また、基板接続部5aが基板2に半田付けされることで、端子5が基板2に固定される。
【0052】
固定部5bは基板接続部5aに繋がり、ハウジング4の下側に設けられる奥壁4b3を貫通しており、ここでハウジング4に対して固定される。固定部5bは基板接続部5aの側から前後方向Yに沿って伸長し、さらに屈曲して高さ方向Zに沿って伸長することで、略L字状をなす。
【0053】
弾性片部5cは、固定部5bの上端から上側に向けて、高さ方向Zに沿って片持ち梁状に伸長する。また、弾性片部5cの先端側には接触部5dが弾性支持されている。弾性片部5cは、嵌合室4b内部で、固定部5bとの連結部分を回動支点として、コネクタ1の前後方向Yに沿って回動するように弾性変形する。
【0054】
接触部5dは、平型導体3との接触方向に向けて山型状に屈曲し、平型導体3と導通接続する接点部5d1が形成される。接点部5d1は、端子収容部4cから嵌合室4bの内部に突出しており、嵌合室4bの内部で平型導体3と導通接触する。
【0055】
〔補強部材〕
補強部材6は金属板を折り曲げ加工してなる。
図1,
図2で示すように、基板固定部6aと、補強板6bとを有しており、断面略L字状でなる。補強部材6の補強板6bはハウジング4の側壁部4fの補強部材固定部4d4に取り付けられて、ハウジング4を補強する。また、基板固定部6aは基板2に対して半田付けされることで、ハウジング4を基板2に対して固定することができる。
【0056】
〔ロックばね〕
ロックばね7は金属板を打ち抜いて設けられる平板形状でなり、Y―Z平面に沿う板面を有する板状片でなる。よって、幅方向Xに沿う板面を有する場合と比較して、コネクタ1を幅方向Xで小型化することができる。ロックばね7は、
図13で示すように、基板固定部7bと、「固定部」としてのハウジング固定部7cと、第1の弾性腕7dと、「突出片」としての第2の弾性腕7eと、係止片7aと、位置決め部7fとを有する。
【0057】
基板固定部7bは、ロックばね7の前後方向Yにおける前側に配置される。基板固定部7bは基板2に平行な板縁を有しており、基板固定部7bが基板2に半田付けされることで、ロックばね7が基板2に対して固定される。
【0058】
ハウジング固定部7cは基板固定部7bに繋がる基端部7c1と、基端部7c1から伸長する第1の固定片部7c2と、第2の固定片部7c3とを有する。基端部7c1は、基板固定部7bの後端側に繋がって高さ方向Zにおける上側に向けて伸長する。
【0059】
第1の固定片部7c2は、基端部7c1から前後方向Yにおいて基板固定部7bが設けられる側とは反対側の、後側に向けて伸長する。第1の固定片部7c2の下端には突部7c4が設けられている。
【0060】
第2の固定片部7c3もまた、基端部7c1から前後方向Yにおいて第1の固定片部7c2と同じ側に向けて伸長する。
【0061】
第1の固定片部7c2と、第2の固定片部7c3とは互いに平行になるように設けられている。そして、第1の固定片部7c2と、第2の固定片部7c3とがハウジング4のロックばね固定部4b2を挟持し、第1の固定片部7c2の突部7c4がロックばね固定部4b2に対して噛み込むことで、ロックばね7がハウジング4に対して確実に固定される。
【0062】
第1の弾性腕7dは、ハウジング固定部7cに繋がって設けられる。本実施形態では特に基端部7c1の上端から高さ方向Zに沿って上側に向けて伸長し、挿入状態における平型導体3に対して接離する方向で弾性変形する。第1の弾性腕7dは基端側から先端側に向けて板幅が短くなる。よって、基端側よりも先端側でより柔らかく弾性変形することができる。
【0063】
第2の弾性腕7eは、第1の弾性腕7dの上側に繋がって設けられる。また、その板幅は、第1の弾性腕7dの先端側と略同じ長さでなる。第2の弾性腕7eは、本実施形態では特に高さ方向Zにおける下側かつ嵌合室4bの内側に向けて傾斜して伸長する。第2の弾性腕7eは、第1の弾性腕7dに対して接離する方向で弾性変形する。第2の弾性腕7eの上側の斜縁には、摺動接触部7gが形成されている。
【0064】
係止片7aは、第2の弾性腕7eの下端側に繋がって設けられ、第2の弾性腕7eによって弾性的に支持されている。係止片7aはその下側の端面に平型導体3の板厚方向に沿う係止端部7a1を有しており、係止片7aが平型導体3のロック部3cの内側に入り込んで、係止端部7a1がロック部3cの係止縁3eに係止することで、平型導体3をハウジング4に抜け止めする。
【0065】
位置決め部7fは、第1の弾性腕7dに繋がって設けられる。位置決め部7fは第1の弾性腕7dの上端から上側に向けて伸長する突状部でなる。
【0066】
ロックばね7は、複数配列される端子5の端子列5Aの両端側に1つずつ設けられる。よってコネクタ1が備える端子5の数や、ハウジング4の幅方向Xにおける長さが変更された場合であっても同じロックばね7を使用することができるため、端子5の数が異なるバリエーションのコネクタ1を容易に製造することができる。
【0067】
〔ロック解除部材〕
ロック解除部材8は、連結部8bと、第1の押圧操作面8cと、第2の押圧操作面8eと、スライダー部8aとを有する。ロック解除部材8は、上面がハウジング4の天面壁4eよりも上側に突出して設けられている。
【0068】
連結部8bは、幅方向Xに沿う棒状に設けられる。また、前後方向Yにおける前側であって、正面壁4gの上側に配置されている。連結部8bは、幅方向Xにおける両端側に溝状の挿通部8dを1つずつ有する。挿通部8dの内側にはロックばね7の位置決め部7fが1つずつ配置されており、ロックばね7がロック解除部材8に対して位置ずれしないようになっている。また、挿通部8dの内側であって、下端側に設けられる押圧部8d1がロックばね7の摺動接触部7gを押圧しつつ、摺動接触部7gの上を滑るように摺動して移動することができる。
【0069】
第1の押圧操作面8cと第2の押圧操作面8eは、連結部8bにおいて幅方向Xにおける両端側にそれぞれ配置される。特に本実施形態では、挿入口4aの両側に配置される。このように配置することで、押圧操作面8c,8eを前後方向Yに向けて突出させずに設けることができるため、コネクタ1を前後方向Yで小型化することができる。また、こうした配置とすることで、押圧操作する指をハウジング4の上面とできるだけ干渉させずに押圧操作面8c,8eに対して接触し易くすることができ、押圧操作を確実に行うことができる。さらに、上記のようにロック解除部材8の上面がハウジング4の天面壁4eよりも上側に突出しており、押圧操作面8c,8eもまた、天面壁4eよりも上側に突出している。そのため、作業者が押圧しやすい押圧操作面8c,8eとなっている。こうした押圧操作面8c,8eは平坦面でなる。よって、自動実装時においては吸着面とすることができる。
【0070】
スライダー部8aは、連結部8bの幅方向Xにおける両端側であって、押圧操作面8c,8eの下側から高さ方向Zに沿って下側に向けて伸長する長片部でなる。その先端にはハウジング4に対する係止部8a1が設けられており、ハウジング4の線状凹部4d1に設けられる突状部4d3に対して係止する。
【0071】
ロック解除部材8は、押圧部8d1に対してロックばね7の摺動接触部7gが下側から接触した状態で、ロックばね7によって支持されている(
図15参照)。
【0072】
本実施形態ではロック解除部材8をハウジング4とは別体として設けている。よって、成形金型をより単純にすることができるため、製造が容易である。また、例えばロック解除部材8とハウジング4とを異なる色に塗り分けることで、作業者にとって視覚的にロック解除部材8とハウジング4を見分けやすくすることができる。さらに、ハウジング4に対して可動するロック解除部材8を一体とすると、その連結部分がもろく破断しやすくなるが、それらを別体とすることで、より壊れにくくすることができる。
【0073】
〔平型導体〕
本実施形態におけるコネクタ1の接続対象物である平型導体3の構成について説明する。
図14で示すように、平型導体3は、導電部3aと、絶縁層3bと、ロック部3cとを有する。
【0074】
導電部3aは導電性の金属薄板でなり、絶縁層3bによって表裏両面を覆われている。ハウジング4への挿入端となる先端部3fの側では、導電部3aが絶縁層3bから外部に露出し、この露出部分でコネクタ1の端子5と導通接触する。本実施形態では端子5が導電部3aに対して一面側から接触するため、導電部3aは一面側のみが絶縁層3bから露出する。
【0075】
絶縁層3bは、絶縁被覆でなり、上述のように導電部3aの表裏両面に積層されて形成される。
【0076】
ロック部3cは、
図14で示すように、平型導体3の挿入方向に沿う両側の側縁部3d,3dにおいて先端部3f側に1つずつ設けられる凹部でなる。ロック部3cは、平型導体3の側縁部3dを凹状に切り欠いた切欠部として形成したものである。また、ロック部3cは平型導体3の幅方向Xに沿う板縁でなる係止縁3eを有する。この係止縁3eには、ロックばね7の係止片7aが係止する。ロック部3cは、本実施形態では凹部でなるが、係止片7aが係止できる貫通形状であれば、例えば貫通孔とすることもできる。
【0077】
〔平型導体の嵌合方法の説明〕
次に、コネクタ1の使用方法について説明する。
【0078】
まず、
図15,
図16で示すように、平型導体3を挿入口4aから嵌合室4bに挿入する。平型導体3の先端部3fは、まずロックばね7の係止片7aに接触して押圧し、第1の弾性腕7dが前後方向Yにおいて平型導体3から離間する方向に回動するように弾性変形する。その際、第2の弾性腕7eもまた、平型導体3から離間する方向であって第1の弾性腕7dに近づく方向に弾性変形する。こうして係止片7aが平型導体3から前後方向Yで平型導体3から離間する方向に変位して、平型導体3の先端が係止片7aを乗り越える。その際、第1の弾性腕7d及び第2の弾性腕7eには、係止片7aが前後方向Yにおける平型導体3の側に戻るように復元力が働いている。そのため、平型導体3は係止片7aによって内壁4b1に対して押圧されており、この状態で平型導体3は嵌合室4bの内壁4b1に沿いながらコネクタ1の嵌合室4bに挿入される。なお、第1の弾性腕7dは、ハウジング4に設けられる収容溝4g1に収容されているため、幅方向Xでの変形は規制されている。
【0079】
その後、ロックばね7の係止片7aを弾性変位させた状態で、さらに平型導体3を嵌合室4bの奥側に向けて挿入すると、平型導体3の先端部3fは端子5の接触部5dに上側から接触し、接触部5dを前後方向Yにおいて端子5の基板接続部5aから離間する方向に向けて弾性変位させる。こうして平型導体3の先端部3fは接点部5d1を乗り越える。さらに接触部5dが平型導体3を内壁4b1に対して押圧した状態で平型導体3の導電部3aと端子5の接点部5d1とが導通接触する。
【0080】
〔平型導体の抜け止め構造〕
上記のように、平型導体3を嵌合室4bの奥まで挿入すると、平型導体3のロック部3cがロックばね7の係止片7aに到達する。係止片7aは第1の弾性腕7dと第2の弾性腕7eの復元力によって前後方向Yにおける平型導体3の側に向けて変位して、ロック部3cの内側に入り込む。この際、ロックばね7の係止片7aに設けられる係止端部7a1の端面は、平型導体3の板厚方向、即ち、平型導体3の挿入方向に対して直交する方向に沿う状態となる。この状態で平型導体3が抜去方向に向けて引っ張られると、係止端部7a1がロック部3cの係止縁3eに当接係止することで、コネクタ1に対して平型導体3を抜け止めする(
図16)。これによりコネクタ1と平型導体3の接続状態を維持することができる。このように本実施形態のコネクタ1では、平型導体3をコネクタ1に挿入するという一つの動作だけで上記の抜け止めが可能となるため、嵌合作業が容易である。
【0081】
また、本実施形態では平型導体3を嵌合室4bに挿入する際には、アクチュエータやスライダ等のガタが生じる可能性のある可動構造の部材に沿わせるのではなく、ハウジング4自体の嵌合室4bの内壁4b1の面に平型導体3を沿わせて嵌合させるので、ガタの発生等の不安定要素の無い信頼性のある嵌合状態を維持することができる。
【0082】
〔平型導体の抜去方法〕
基板2に対して直交する方向で平型導体3を挿入する縦置きタイプのコネクタでは、前後方向Yの長さに対して高さ方向Zの長さが長く高背である場合がある。そうした縦置きタイプのコネクタでは、基板2からの突出量が大きいため基板2に対して傾倒しやすい。よって、前後方向Yで強い力を受けると、コネクタが反対側に向けて倒れ込む場合がある。また、基板2上において他の実装部品が近接している場合には、ロック解除部材8の押圧操作面8c,8eを前後方向Yで押圧するよりも高さ方向Zで押圧する方が、基板2の板面方向で広い空間を必要としないため、押圧作業を行いやすい。さらに、基板2に向けた押圧操作は作業者にとって感覚的に可能であるため、容易に作業を行うことができる。そこで、本実施形態では、ロック解除部材8を高さ方向Zに沿って基板2に向けて押圧することで、平型導体3のロック部3cに対する係止片7aの係止の解除を可能としている。以下、平型導体3の抜去方法について具体的に説明する。
【0083】
平型導体3を抜去する際には、ロック解除部材8の押圧操作面8c,8eを矢示Aのように上から押し下げるように押圧する(
図18,
図19)。これにより、ロック解除部材8の押圧部8d1がロックばね7の第2の弾性腕7eに設けられる摺動接触部7gを押圧する。
【0084】
摺動接触部7gは高さ方向Zに対して傾斜しているため、押圧操作力を、摺動接触部7gに押圧部8d1を斜めに摺動接触させて、第1の弾性腕7dと第2の弾性腕7eを回動させる回転変位力へと、スムーズに転換させることができる。よって、ロック解除部材8の押圧部8d1によって高さ方向Zにおける下側に向けた押圧操作力を受けた摺動接触部7gは、下側かつ前後方向Yにおいて平型導体3から離間する方向(本実施形態では前側)に向けて回動変位する。第1の弾性腕7dがハウジング固定部7cの、特に基端部7c1を回動支点として倒れ込むように回動する。また、第1の弾性腕7dの先端側に繋がる第2の弾性腕7eも第1の弾性腕7dと連動して同じ方向に向けて回動する。そして、ロック解除部材8の押圧部8d1は摺動接触部7gの上を滑るように摺動接触する。こうして係止片7aが平型導体3のロック部3cから抜けて、平型導体3に対するロックばね7の係止が解除される。この間に平型導体3をハウジング4の嵌合室4bから抜去する。その際、ロックばね7の位置決め部7fの先端はロック解除部材8の挿通部8dよりも上方に突出する。よって、作業者がロック解除部材8を十分に押圧したことを視覚的に確認することができる。
【0085】
その後、ロック解除部材8の押圧操作面8c,8eに対する押圧を止めると、ロックばね7の第1の弾性腕7dが押圧前の状態、すなわち高さ方向Zに沿う状態に復元しようとする。そして、第2の弾性腕7eも同様に高さ方向Zに対して傾斜した状態に復元しようとする。その際、ロック解除部材8は全体がロックばね7の摺動接触部7gによって持ち上げられるように高さ方向Zにおける上側に向けて変位する。
【0086】
このように、本実施形態によれば、ロック解除部材8の押圧操作面8c,8eを高さ方向Zにおける下側に向けて押圧することで、第1の弾性腕7dと、第2の弾性腕7eとが、ハウジング固定部7cの、特に基端部7c1を回動支点として回動し、係止片7aによる平型導体3の係止を解除できる。
【0087】
なお、ロック解除部材8はスライダー部8aを有しており、ハウジング4が有する線状凹部4d1に入り込んでいる。そのため、スライダー部8aが線状凹部4d1の内側を高さ方向Zに沿って変位することで、ロック解除部材8も同様にスムーズに変位させることができる。こうしたスライダー部8aや線状凹部4d1を有することで、ロック解除部材8の操作をより容易に行うことができる。
【0088】
また、上記のようにコネクタ1は、1つのロック解除部材8が複数のロックばね7を押圧することができる。よって、複数のロックばね7を異なるロック解除部材8が押圧する場合と比較して部品点数を減らすことができる。
【0089】
以上のように、本実施形態のコネクタ1によれば、基板2上で他の実装部品が密集している場合であっても、平型導体3に対する係止を容易に解除することができる。そのため、他の実装部品と近接させて基板2に実装することができるため、基板2上の狭い空間を有効に活用することができる。
【0090】
変形例:
前記本実施形態では、押圧操作面8c,8eがロック解除部材8の幅方向Xにおける両端側にそれぞれ設けられる例を示した。これに対して、例えば幅方向Xにおいて連結部8bの中央側に1つだけ押圧操作面を有するものとすることができる。こうすることで、1つの押圧操作面を押圧することで、2つのロックばね7を操作するものとすることができる。
【0091】
前記本実施形態では、挿通部8dが溝状でなる例を示した。これに対し、ロック解除部材8に設けられる貫通孔として設けても良い。この場合にも、押圧操作面8c,8eを押圧されてロック解除部材8が押し込まれた状態で、挿通部に収容されている位置決め部7fの上端がロック解除部材8の上方に突出することで、作業者がロック解除部材8が十分に押し込まれたことを目視で確認することができる。