(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6689097
(24)【登録日】2020年4月9日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】弁上側部分
(51)【国際特許分類】
F16K 11/074 20060101AFI20200421BHJP
E03C 1/04 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
F16K11/074 Z
E03C1/04
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-32286(P2016-32286)
(22)【出願日】2016年2月23日
(65)【公開番号】特開2016-156502(P2016-156502A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2018年10月24日
(31)【優先権主張番号】15156614.8
(32)【優先日】2015年2月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511174513
【氏名又は名称】フリュース ドレーテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Fluehs Drehtechnik GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ ランゲ
【審査官】
小岩 智明
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第6394127(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0345730(US,A1)
【文献】
特開2012−057665(JP,A)
【文献】
特表2012−515309(JP,A)
【文献】
特開2014−145411(JP,A)
【文献】
特開2014−185698(JP,A)
【文献】
実開平03−130974(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/074
E03C 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの流入通路と少なくとも1つの第1の流出通路とを有するベースピースを収容するヘッドピースと、
回動可能に支持されるスピンドルを介して、回動不能に配置される通流ディスクに対して相対回動可能とされている制御ディスクを有するディスク制御部と、
を備え、取水用に第2の流出通路が配置されている、
衛生器具用の弁上側部分であって、
前記制御ディスク(3)に接続通路(31)が設けられており、前記接続通路(31)を介して第1の流入通路(51)と前記第1の流出通路(53)とが、前記通流ディスク(4)に対して相対的な前記制御ディスク(3)の一回動位置で接続可能であり、
前記通流ディスク(4)は、前記通流ディスク(4)の、前記制御ディスク(3)に対面した側に凹部(44)を有し、前記凹部(44)は、前記通流ディスク(4)の中心を取り巻く中央領域を少なくとも一方の側で周面(45)に接続する、
ことを特徴とする、弁上側部分。
【請求項2】
前記接続通路(31)は、円弧状に形成されている、請求項1に記載の弁上側部分。
【請求項3】
前記第2の流出通路は、前記ヘッドピース(1)に設けられた少なくとも1つの側方の窓(11)により形成されており、前記制御ディスク(3)には、切欠き(32)が設けられており、前記切欠き(32)を介して第2の流入通路(52)は、前記ヘッドピース(1)の前記側方の窓(11)に、前記制御ディスク(3)の一回動位置で接続可能である、請求項1又は2に記載の弁上側部分。
【請求項4】
前記接続通路(31)及び前記切欠き(32)は、前記通流ディスク(4)に対して相対的な前記制御ディスク(3)の一回動位置で前記第1の流入通路(51)が閉鎖されている一方、前記第2の流出通路(54)が少なくとも部分的に前記第2の流入通路(52)に接続されており、別の一回動位置では前記第1の流入通路(51)と前記第2の流入通路(52)とが閉鎖されているように、前記制御ディスク(3)に配置されている、請求項3に記載の弁上側部分。
【請求項5】
前記第2の流出通路(54)は、前記第1の流出通路(53)に対して付加的に前記ベースピース(5)に配置されており、前記制御ディスクには、2つの接続通路(31)が設けられており、前記接続通路(31)を介して前記第1の流入通路(51)と前記第1の流出通路(53)とは、前記通流ディスク(4)に対して相対的な前記制御ディスク(3)の一回動位置で接続可能であり、第2の流入通路(52)と前記第2の流出通路(54)とは、前記通流ディスク(4)に対して相対的な前記制御ディスク(3)の一回動位置で接続可能である、請求項1又は2に記載の弁上側部分。
【請求項6】
前記2つの接続通路(31)は、前記通流ディスク(4)に対して相対的な前記制御ディスク(3)の一回動位置で前記第1の流入通路(51)が閉鎖されている一方、前記第2の流出通路(54)が少なくとも部分的に前記第2の流入通路(52)に接続されており、別の一回動位置では前記第1の流入通路(51)と前記第2の流入通路(52)とが閉鎖されているように、前記制御ディスク(3)に配置されている、請求項5に記載の弁上側部分。
【請求項7】
前記凹部(44)は、前記通流ディスク(4)の周面(45)を、互いに間隔を置いて配置された2つの箇所で貫き、前記通流ディスク(4)の中央領域を通るように形成されている、請求項1から6までのいずれか1項に記載の弁上側部分。
【請求項8】
前記周面(45)の、互いに間隔を置いて配置された2つの箇所は、互いに反対側に配置されている、請求項7に記載の弁上側部分。
【請求項9】
前記ヘッドピース(1)は、金属から製造されている、請求項1から8までのいずれか1項に記載の弁上側部分。
【請求項10】
前記ヘッドピース(1)内に、前記スピンドル(2)の回動を所定の回動角に制限する2つのストッパ(15)が配置されている、請求項1から9までのいずれか1項に記載の弁上側部分。
【請求項11】
前記スピンドル(2)は、扇形の区分(28)を有し、前記扇形の区分(28)は、互いに角度をなして延びる2つの真っ直ぐな側面(29)を有し、両前記側面(29)は、前記ヘッドピース(1)のそれぞれ1つのストッパ(15)に当接可能であり、これにより前記スピンドル(2)の回動角は、制限されている、請求項10に記載の弁上側部分。
【請求項12】
前記側面(29)は、45°の角度をなしており、前記スピンドル(2)の最大の回動角が45°に制限されているように前記ヘッドピースの前記ストッパ(15)と協働する、請求項11に記載の弁上側部分。
【請求項13】
請求項3から6までのいずれか1項に記載の、あるいは、請求項3から6までのいずれか1項を引用する請求項7から12までのいずれか1項に記載の弁上側部分を収容する弁座を備える衛生器具であって、前記弁座(7)は、水道水流入接続部(71)並びにフィルタモジュール流入接続部(72)及びフィルタモジュール流出接続部(73)を有し、前記水道水流入接続部(71)は、前記弁上側部分の前記ベースピース(5)の前記第1の流入通路(51)に、前記フィルタモジュール流入接続部(72)は、前記弁上側部分の前記ベースピース(5)の前記第1の流出通路(53)に、前記フィルタモジュール流出接続部(73)は、前記弁上側部分の前記ベースピース(5)の前記第2の流入通路(52)に接続されていることを特徴とする、衛生器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載の特徴を備える、衛生器具(Sanitaerarmatur)用の弁上側部分に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生器具において頻用される弁上側部分には、制御ディスク及び通流ディスクを有するディスク制御部が配置されており、ディスク制御部は、スピンドルを介して操作可能であり、水の流出をスピンドルの回動を介して制御することができる。例えば下記特許文献1に記載されているようなこの種の交換可能な弁上側部分は、様々に構成された器具ハウジング内で使用可能である。器具から取り出される水は、水質を改善するために予めフィルタモジュールに供給されることが多くなっている。この場合、フィルタモジュールは、一般に弁上側部分の上流に接続されているため、フィルタモジュールには、連続的に水圧がかかっており、これにより、フィルタモジュールの耐久性は損なわれてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国実用新案第202005003127号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この点について本発明は対策を講じるものであり、本発明の根底にある課題は、フィルタモジュールの中間接続を可能にする弁上側部分を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明により上記課題は、請求項1の特徴部に記載の特徴により解決される。
【0006】
本発明により、フィルタモジュールの中間接続を可能にする弁上側部分が提供されている。制御ディスクに凹部が設けられており、凹部を介して水道水流入部のための第1の流入通路と、フィルタモジュールのための流入部として使用可能な第1の流出通路とが、通流ディスクに対して相対的な制御ディスクの一回動位置で接続可能となっていることで、通流ディスクに対して相対的に制御ディスクを回動させて、第1の流入通路を閉鎖することにより、同時にフィルタモジュールへの水流入部も遮断されている。
【0007】
外的な影響、特に温度変化及び/又は圧力変化に基づいて、フィルタモジュール内にある水が膨張し、意図せず器具を通して流出することが起こり得る。特に瞬間湯沸かし器(Durchlauferhitzer)でも知られるこの作用は、多くの利用者にとって煩わしく感じられてしまう。
【0008】
このことを背景として、本発明の一態様において、第2の流出通路は、ヘッドピースに設けられた少なくとも1つの側方の窓により形成されており、制御ディスクには、通流通路が設けられており、通流通路を介して第2の流入通路(フィルタ水流入部)は、ヘッドピースの側方の窓に、制御ディスクの一回動位置で接続可能である。これにより、フィルタモジュールの流出部に接続可能な第2の流入通路(フィルタ水流入部)は、制御ディスクを介して閉鎖可能であり、これにより第2の流出通路あるいは器具からの意図しない水の流出は、防止されている。
【0009】
本発明の択一的な態様において、第2の流出通路は、ヘッドピースに設けられた少なくとも1つの側方の窓により形成されており、制御ディスク
には、通流通路が設けられており、通流通路を介して第2の流入通路は、ヘッドピースの側方の窓に、制御ディスクの一回動位置で接続可能である。これによっても、フィルタモジュールの流出部に接続可能な第2の流入通路は、制御ディスクを介して閉鎖可能であり、これにより第2の流出通路あるいは器具からの意図しない水の流出は、防止されている。
【0010】
本発明の別の態様において、凹部及び通流通路あるいは両凹部は、通流ディスクに対して相対的な制御ディスクの一回動位置で第2の流入通路が閉鎖されている一方、第2の流出通路が少なくとも部分的に開放されており、別の一回動位置では第2の流入通路と第2の流出通路とが閉鎖されているように、制御ディスクに配置されている。これにより、水道水流入部の閉鎖後、制御ディスクが通流ディスクに対して相対的にさらに回動して、第2の流出通路も閉鎖されてしまう前に、第2の流出通路あるいは器具を介したフィルタモジュールの圧力補償が可能である。
【0011】
本発明の一態様において、通流ディスクは、通流ディスクの、制御ディスクに対面した側に凹部を有し、凹部は、通流ディスクの中心を取り巻く中央領域を少なくとも一方の側で周面に接続する。これにより、制御ディスクと通流ディスクとの間に存在する異物残渣又は油分残渣の導出が実現されている。好ましくは、凹部は、通流ディスクの周面を、互いに間隔を置いて配置された2つの箇所、好ましくは互いに反対側に配置された2つの箇所で貫き、通流ディスクの中央領域を通るように形成されている。
【0012】
本発明の一態様において、ヘッドピースは、金属、好ましくは黄銅から製造されている。これにより、器具に対する弁上側部分の予圧によるヘッドピースの変形は、長期的に防止されている。
【0013】
さらに、上述の形態の弁上側部分を収容する弁座を備える衛生器具であって、弁座は、水道水流入接続部並びにフィルタモジュール流入接続部及びフィルタモジュール流出接続部を有し、水道水流入接続部は、弁上側部分のベースピースの第1の流入通路に、フィルタモジュール流入接続部は、弁上側部分のベースピースの第1の流出通路に、フィルタモジュール流出接続部は、弁上側部分のベースピースの第2の流入通路に接続されている、衛生器具も、本発明の対象である。弁上側部分の構成次第で、衛生器具は、弁上側部分のベースピース内に配置される第2の流出通路に接続されている取水接続部か、又は弁上側部分の側方の窓から流出する水のための側方の流出部として形成されている取水接続部を有していることができる。
【0014】
本発明の別の形態及び態様は、その他の従属請求項に記載されている。本発明の一実施の形態を図面に示し、以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】弁上側部分の概略図であり、a)は、部分縦断面図であり、b)は、下面図である。
【
図2】
図1に示した弁上側部分のヘッドピースの概略図であり、a)は、縦断面図であり、b)は、a)に示したA−A横断面図である。
【
図3】
図1に示した弁上側部分のスピンドルの概略図であり、a)は、部分縦断面図であり、b)は、下面図である。
【
図4】
図1に示した弁上側部分の制御ディスクを示す図であり、a)は、下面図であり、b)は、上面図であり、c)は、縦断面図である。
【
図5】
図1に示した弁上側部分の通流ディスクを示す図であり、a)は、下面図であり、b)は、縦断面図であり、c)は、上面図であり、d)は、b)の図示に対して90°ずらした縦断面図である。
【
図6】
図1に示した弁上側部分のベースピースを示す図であり、a)は、上面図であり、b)は、側面図であり、c)は、a)に示したA−A縦断面図である。
【
図7】
図6に示したベースピースのリップシールを示す図であり、a)は、上面図であり、b)は、縦断面図である。
【
図8】
図7に示したリップシールの支持リングを示す図であり、a)は、上面図であり、b)は、縦断面図である。
【
図9】
図1に示した弁上側部分の制御ディスク及び通流ディスク(ディスク制御部)を重ねて、a)は、水道水流入部及びフィルタ水流入部が閉鎖されている位置、b)は、水道水流入部が閉鎖され、フィルタ水流入部が開放されている位置、c)は、水道水流入部及びフィルタ水流入部が開放されている位置、で、それぞれ示す概略図である。
【
図10】
図1に示した弁上側部分を収容する器具の弁座の概略図であり、a)は、縦断面図であり、b)は、上面図である。
【
図11】中間接続されたフィルタモジュールとともに、
図10に示した弁座内での
図1に示した弁上側部分の組み付け・接続状況を示す概略図である。
【
図12】別の実施の形態における弁上側部分の概略図であり、a)は、部分縦断面図であり、b)は、下面図である。
【
図13】
図12に示した弁上側部分の制御ディスクを示す図であり、a)は、下面図であり、b)は、上面図であり、c)は、縦断面図である。
【
図14】択一的な実施の形態における
図12に示した弁上側部分の制御ディスクを示す図であり、a)は、下面図であり、b)は、上面図であり、c)は、縦断面図である。
【
図15】
図12に示した弁上側部分の通流ディスクを示す図であり、a)は、下面図であり、b)は、縦断面図であり、c)は、上面図であり、d)は、b)の図示に対して90°ずらした縦断面図である。
【
図16】
図1に示した弁上側部分のベースピースを示す図であり、a)は、上面図であり、b)は、側面図であり、c)は、a)に示したA−A縦断面図である。
【
図17】
図13に示した制御ディスクとともに、
図12に示した弁上側部分の制御ディスク及び通流ディスク(ディスク制御部)を重ねて、a)は、水道水流入部及びフィルタ水流入部が開放されている位置、b)は、水道水流入部が閉鎖され、フィルタ水流入部が開放されている位置、c)は、水道水流入部及びフィルタ水流入部が閉鎖されている位置、で、それぞれ示す概略図である。
【
図18】
図14に示した制御ディスクとともに、
図12に示した弁上側部分の制御ディスク及び通流ディスク(ディスク制御部)を重ねて、a)は、水道水流入部及びフィルタ水流入部が開放されている位置、b)は、水道水流入部が閉鎖され、フィルタ水流入部が開放されている位置、c)は、水道水流入部及びフィルタ水流入部が閉鎖されている位置、で、それぞれ示す概略図である。
【
図19】
図12に示した弁上側部分を収容する、側方の流出部を有する器具の弁座の概略図であり、a)は、縦断面図であり、b)は、上面図である。
【
図20】
図1に示した弁上側部分を収容する、底側の流出部を有する器具の弁座の概略図であり、a)は、縦断面図であり、b)は、上面図である。
【
図21】中間接続されたフィルタモジュールとともに、
図19又は
図20に示した弁座内での
図12に示した弁上側部分の組み付け・接続状況を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態として選択した弁上側部分は、主としてヘッドピース1からなっている。ヘッドピース1は、ヘッドピース1内において半径方向で案内されるスピンドル2により中央を貫かれている。スピンドル2には、制御ディスク3が形状結合(formschluessig:形状による束縛)を介して結合されており、制御ディスク3は、ヘッドピース1内において半径方向で案内されている。制御ディスク3の、スピンドル2から背離した側には、通流ディスク4が回動不能にヘッドピース1内に配置されている。ヘッドピース1には、ベースピース5が接続している。ベースピース5には、リップシール6が設けられており、リップシール6を介してベースピース5は、通流ディスク4及び弁座7に対してシールされている。これによりベースピース5は、軸方向で弁座7と通流ディスク4との間で「宙に浮いて」いる。
【0017】
ヘッドピース1は、両端面が開放された対称の中空体からなっている。本実施の形態においてヘッドピース1は、黄銅旋削部材として製造されている。ヘッドピース1は、ベースピース5側にスリーブ状の部分10を有している。スリーブ状の部分10内には、対向するように2つの通流窓11が配置されている。スリーブ状の部分の内側の端部側には、周囲を取り巻くように延びる係止溝17が配置されており、係止溝17は、ベースピース5に一体成形される係止突起を収容する。さらに端部側には、直径方向で相対するように2つの長方形の切欠き18が設けられており、切欠き18は、通流ディスク4の突起46及びベースピース5の突起55を収容する。
【0018】
ヘッドピース1は、通流窓11とは反対側の端部に、減径された区分12を有している。減径された区分12の内側には、周囲を取り巻くように延びる溝13が形成されている。周囲を取り巻くように延びる溝13を画定するように、その手前に、4分の3円形のランド14が一体成形されている。ランド14により2つの半径方向のストッパ15が形成されている。ストッパ15は、スピンドル2の回動を制限するために用いられる。内部には、減径された区分により、ランド14に段部16が形成されている。
【0019】
スピンドル2は、実質的に中実に構成されている。スピンドル2は、ヘッドピース1から背離した端面の外側で多角柱部21として構成されている。スピンドル2の外部には、続いて円筒面22が設けられている。円筒面22によりスピンドル2は、ヘッドピース1内において半径方向で案内されている。円筒面22と多角柱部21との間には、溝23が設けられている。溝23内には、スナップリングの形態の軸保持手段24が、弾発作用をもって装入されている。軸保持手段24は、スピンドル2がヘッドピース1内に所定量を超えて進入することを防止する。さらに円筒面22は、2つのリング溝25を有している。リング溝25は、Oリング61を収容する。スピンドル2の、多角柱部21とは反対側には、ディスク26が一体成形されている。ディスク26は、多角柱部21から背離した側に連行体27を有している。連行体27を囲むように、ディスク26上には、高さの低い減径された段部261が、一体成形されている。円筒面22とディスク26との間において、スピンドルは、円セグメント状の区分28を有している。円セグメント状の区分28の真っ直ぐな側面29は、45°の角度をなしている。側面29は、4分の3円形のランド14により形成されたストッパ15と協働して、スピンドル2の回動角を45°に制限する。
【0020】
制御ディスク3は、実質的に円形のセラミックディスクとして形成されており、このセラミックディスク内には、その外縁部に対して間隔を置いて、円弧状の凹部の形態の接続通路31が設けられている。接続通路31は、90°の角度にわたって延在している。制御ディスク内には、通流通路31とは反対側に、円セグメント状の扇形切欠き32が設けられている。扇形切欠き32は、軸方向で制御ディスク3の周面33の略半分にわたって延在している。制御ディスク3は、スピンドル2に対面した側に、スピンドル2の連行体27を収容する直方体状の係合部34を有している。直方体状の係合部34は、深さの浅い円筒状のくぼみ35に囲まれており、くぼみ35の内径は、スピンドル2のディスク26の、このくぼみ35により収容される段部261の外径に実質的に等しい。
【0021】
通流ディスク4は、実質的に、制御ディスクと比較して遙かに薄い円形のセラミックディスクとして形成されており、このセラミックディスク内には、互いに間隔を置いて3つの孔41,42,43が設けられている。通流ディスク4内には、制御ディスク3に対面した側に、深さの浅い通路状の凹部44が設けられている。凹部44は、通流ディスク4の中心を取り巻く中央領域を、互いに反対側に配置された2つの側において、周面45に接続している。凹部は、周面45に開口している(
図5a)参照)。ヘッドピース1内に通流ディスク4を回動不能に固定すべく、通流ディスク4の側方には、直径方向で相対するように2つの長方形の突起46が一体成形されており、突起46は、ヘッドピース1の切欠き18に係合する。
【0022】
ベースピース5は、実質的に円形のディスクの形態で形成されている。ベースピース5内には、それぞれ、孔の形態で第1の流入通路51及び第2の流入通路52並びに第1の流出通路53が設けられている。それらの中心軸線は、二等辺三角形を画定している。通路51,52,53の両側には、通路51,52,53を囲むようにベースピース5にそれぞれ環状のくぼみ56が設けられており、くぼみ56は、それぞれ1つのリップシール6を収容する。リップシール6は、それぞれ1つの支持リング62を収容し、ベースピースを通流ディスク4及び器具の弁座7に対してシールする。ベースピース5の側方には、直径方向で相対するように2つの長方形の突起55が一体成形されており、突起55は、ヘッドピース1の切欠き18に係合する。突起55の側方には、さらに複数の係止突起58が一体成形されており、係止突起58は、ヘッドピース1の係止溝17に係合する。これらの係止突起58は、ベースピース5とヘッドピース1との間の係止結合を可能にする。ベースピース5には、ヘッドピース1から背離した下面に、さらに1つの位置決めピン57が一体成形されており、位置決めピン57は、器具の弁座7の、位置決めピン57に対応する位置決め孔75に係合する。
【0023】
図10は、前述の弁上側部分を収容する器具の弁座7を例示している。弁座7は、実質的に中空円筒状に形成されている。弁座7の上側の端部には、雌ねじ山70が配置されており、雌ねじ山70内には、弁上側部分を固定する図示しない固定リングがねじ込まれる。弁座7の底側には、水道水流入接続部71と、フィルタモジュール流入接続部72と、フィルタモジュール流出接続部73とが開口している。それらの中心軸線は、二等辺三角形を画定している。さらに盲孔として形成された位置決め孔75が設けられており、位置決め孔75は、弁上側部分のベースピース5の位置決めピン57を収容する。弁座7内には、側方より流出管路76が開口している。流出管路76は、収容される弁上側部分のヘッドピース1の通流窓11と略同じ高さに配置されている。
【0024】
図11は、様々な閉鎖位置を略示している。水道水(矢印1)は、第1の遮断箇所S1を介してフィルタモジュール8に達し(矢印2)、フィルタモジュール8から(矢印3)第2の遮断箇所S2を介して器具の流出管路76に達する。
【0025】
図9は、スピンドル2を介して回動可能な制御ディスク3と、回動不能に配置される通流ディスク4とから形成されるディスク制御部の様々な位置を略示している。
図9a)に示した位置では、ベースピース5の第1の流入通路51に整合している通流ディスク4の第1の孔41と、ベースピース5の第2の流入通路52に整合している通流ディスク4の第2の孔42とが、制御ディスク3に覆われている。水道水流入部(遮断箇所S1)とフィルタモジュール流出部8(遮断箇所S2)とは、閉鎖されている。水の通流は起こらない(閉鎖位置)。
【0026】
図9b)に示したディスク制御部の位置では、
図9a)に示した位置に対して、ベースピース5の第2の流入通路52に整合している通流ディスク4の第2の孔42が、制御ディスク3の扇形切欠き32により部分的に接続されており、これによりフィルタモジュール流出部は、開放されている(遮断箇所S2は、開放されている)。この位置では、フィルタモジュール流出部を介したフィルタモジュール8の圧力補償が、水道水流入部が同時に閉鎖されているときに可能である(圧力補償位置)。
【0027】
図9c)に示した位置では、ベースピース5の第1の流入通路51に整合している第1の孔41と、ベースピース5の第1の流出通路53に整合している第3の孔43とが、制御ディスク3の接続通路31を介して接続されている。これにより水道水は、フィルタモジュール8に流入可能である(遮断箇所S1は、開放されている)。ベースピース5の第2の流入通路52に整合している通流ディスク4の第2の孔42も、制御ディスク3の扇形切欠き32に接続されており(遮断箇所S2は、開放されており)、これによりフィルタモジュール8からヘッドピース1の通流窓11を通した水道水の流出が可能であり、水道水は、その後、弁座7の流出管路76に達する(開放位置)。
【0028】
図12は、別の実施の形態における弁上側部分を示している。本実施の形態は、前述の弁上側部分とは、制御ディスク3、通流ディスク4及びベースピース5の構成が異なる点で相違する。変更が加えられたこれらの構成部分について以下に詳細に説明する。変更が加えられた実施の形態の符号には、シングル又はダブルのアポストロフィを付した。
【0029】
この別の実施の形態(
図13参照)に係る制御ディスク3’は、やはり実質的に円形のセラミックディスクとして形成されており、セラミックディスク内には、その外縁部に対して間隔を置いて、円弧状の凹部の形態の通流通路31’が設けられている。制御ディスク3’には、接続通路31’とは反対側に、円セグメント状の扇形切欠き32’が設けられている。扇形切欠き32’は、軸方向で制御ディスク3’の周面33’の略半分にわたって延在している。
図1に示した実施の形態と比較して、円セグメント状の扇形切欠き32’は、遙かに大きく形成されている。扇形切欠き32’は、本実施の形態では120°の角度にわたって延在している。制御ディスク3’の、スピンドル2に対面した側は、
図1に示した制御ディスク3と同様に形成されている。
【0030】
図14は、
図12に示した弁上側部分のための制御ディスク3’の択一的な構成を示している。この制御ディスク3”の場合、円セグメント状の扇形切欠き32’の代わりに、第2の接続通路31”が直径方向で第1の接続通路31”の反対側に配置されている。
【0031】
通流ディスク4’は、実質的に、
図1に示した実施の形態の通流ディスク4に応じて形成されているが、本実施の形態では、付加的な第4の孔47’が設けられている。4つの孔41’,42’,43’,47’は、それらの中心点が正方形を画定するように配置されている。さらに凹部44’は、この通流ディスク4’の場合、円形に形成されており、通流ディスク4’の、制御ディスク3’に対面した側の中央に配置されている(
図15参照)。
【0032】
ベースピース5’は、やはり実質的に、
図1に示した弁上側部分のベースピース5に応じて形成されており、通流ディスク4’の構成に応じて同様に付加的な孔が、第2の流出通路54’として設けられている。両流入通路51’,52’と、両流出通路53’,54’とは、通流ディスク4’の4つの孔41’,42’,43’,47’に整合するように配置されている。
【0033】
図19及び
図20は、
図12に示した弁上側部分を収容する器具の弁座を例示している。
図19に示した弁座が実質的に、
図1に示した弁上側部分を収容する
図10に示した前述の弁座に相当する一方、
図20に示した弁座では、側方の流出管路76の代わりに、底側に付加的な水道水流出接続部74が配置されている。
【0034】
図19に示した弁座内で
図12に示した弁上側部分を使用した場合、ベースピース5’の第2の流出通路54’は、弁座7の底により遮断されている。水道水は、制御ディスク3’の、拡大されて形成された円セグメント状の扇形切欠き32’を介して、弁上側部分のヘッドピース1の通流窓11を通して、側方に配置された流出管路76に達する。
【0035】
図20に示した弁座内で
図12に示した弁上側部分を使用した場合、弁上側部分のヘッドピース1の通流窓11は、弁座7の側壁により遮断されており、ベースピース5’の第2の流出通路54’は、弁座の底側の水道水流出接続部74に直接接続されている。
【0036】
図21は、様々な閉鎖位置を略示している。水道水(矢印1)は、第1の遮断箇所S1を介してフィルタモジュール8に達し(矢印2)、フィルタモジュール8から(矢印3)第2の遮断箇所S2を介して、通流窓11を通して器具の弁座7の流出管路76に達する(破線の矢印)か、又はしかし、直接、底側の水道水流出接続部74に達する(矢印4)。
図14に示した制御ディスク3”は、水道水流出接続部74を介した水流出だけを可能にする。
【0037】
図17は、
図12に示した弁上側部分の、
図13に示した構成の制御ディスク3’と、回動不能に配置される通流ディスク4’とから形成されるディスク制御部の様々な位置を略示している。
【0038】
図17a)に示した位置では、ベースピース5’の第1の流入通路51’に整合している第1の孔41’と、ベースピース5の第1の流出通路53’に整合している第3の孔43’とが、制御ディスク3’の接続通路31’を介して接続されており、これにより水道水は、フィルタモジュール8に流入可能である(遮断箇所S1は開放されている)。ベースピース5’の第2の流入通路52’に整合している通流ディスク4’の第2の孔42’も、制御ディスク3’の扇形切欠き32’に接続されており(遮断箇所S2は、開放されており)、これによりフィルタモジュール8からの水道水の流出は、弁座7の構成次第で、ヘッドピース1の通流窓11を通してか、又は水道水流出接続部74に接続されるベースピース5’の第2の流出通路54’を通して可能である(開放位置)。
【0039】
図17b)に示したディスク制御部の位置では、
図17a)に示した位置に対して、ベースピース5’の第2の流入通路52’に整合している通流ディスク4’の第2の孔42’が、制御ディスク3’の扇形切欠き32’に接続されており、これによりフィルタモジュール流出部は、開放されている(遮断箇所S2は、開放されている)。この位置では、フィルタモジュール流出部を介したフィルタモジュール8の圧力補償が、水道水流入部が同時に閉鎖されているときに可能である(圧力補償位置)。
【0040】
図17c)に示したディスク制御部の位置では、ベースピース5’の第1の流入通路51’に整合している通流ディスク4’の第1の孔41’と、ベースピース5’の第2の流入通路52’に整合している通流ディスク4’の第2の孔42’とが、制御ディスク5’に覆われている。水道水流入部(遮断箇所S1)とフィルタモジュール流出部(遮断箇所S2)とは、閉鎖されている。水の通流は起こらない(閉鎖位置)。
【0041】
図18は、
図12に示した弁上側部分の、
図14に示した構成の制御ディスク3”と、回動不能に配置される通流ディスク4’とから形成されるディスク制御部の様々な位置を略示している。この場合、
図18a)〜c)に示した位置は、
図17a)〜c)に示した位置に相当し、
図18a)には、ベースピース5’の第2の流入通路52’に整合している通流ディスク4’の第2の孔42’が、制御ディスク3’の接続通路31”を介して、ベースピース5’の第2の流出通路54’に整合している第4の孔47’に接続されており、これによりフィルタモジュールからの水道水の流出は、ベースピース5’の、水道水流出接続部74に接続される第2の流出孔54’を通してのみ可能である(開放位置)。
図18b)では、ベースピース5’の第2の流入通路52’に整合している通流ディスク4’の第2の孔42’が、制御ディスク3”の接続通路31”にあるいは接続通路31”により接続される。
【符号の説明】
【0042】
1 ヘッドピース、 2 スピンドル、 3 制御ディスク、 4 通流ディスク、 5 ベースピース、 6 リップシール、 7 弁座、 8 フィルタモジュール、 10 スリーブ状の部分、 11 通流窓、 12 減径された区分、 13 周囲を取り巻くように延びる溝、 14 ランド(3/4円形)、 15 ストッパ、 16 段部、 17 係止溝(ベースピース用)、 18 切欠き、 21 多角柱部、 22 円筒面、 23 溝、 24 軸保持手段、 25 リング溝、 26 ディスク、 261 段部、 27 連行体、 28 円セグメント状の区分、 29 側面、 31 接続通路、 32 扇形切欠き、 33 周面、 34 係合部、 35 くぼみ、 41 第1の孔、 42 第2の孔、 43 第3の孔、 44 凹部、 45 周面、 46 突起、 47 第4の孔、 51 第1の流入通路、 52 第2の流入通路、 53 第1の流出通路、 54 第2の流出通路、 55 突起、 56 くぼみ、 57 位置決めピン、 58 係止突起、 70 雌ねじ山、 71 水道水流入接続部、 72 フィルタモジュール流入接続部、 73 フィルタモジュール流出接続部、 74 水道水流出接続部、 75 位置決め孔、 76 流出管路、 S1 第1の遮断箇所、 S2 第2の遮断箇所