特許第6689098号(P6689098)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6689098
(24)【登録日】2020年4月9日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】移乗支援装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 7/053 20060101AFI20200421BHJP
   A61G 7/14 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
   A61G7/053
   A61G7/14
【請求項の数】7
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-32512(P2016-32512)
(22)【出願日】2016年2月23日
(65)【公開番号】特開2017-148194(P2017-148194A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2019年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】南川 達浩
(72)【発明者】
【氏名】梶 雄登
【審査官】 小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−084001(JP,A)
【文献】 特開平09−000570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 7/053
A61G 7/10 −7/16
A61G 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能な台車部と、
搭乗した被介護者の上体を胸側から保持する上体保持面を有する身体保持部と、
前記身体保持部を前記台車部に対して支持する支持部と、
前記上体保持面の傾き角度を維持したまま前記身体保持部を昇降させる昇降機構と、
を具備し、
前記支持部は、
前記台車部に接続された第一部分と、
前記身体保持部を前記第一部分に対して支持する第二部分と、
を具備し、
前記昇降機構は、
前記第一部分に対して前記第二部分を移動させることで前記身体保持部を昇降させるように形成されており、
前記身体保持部を前記第二部分に対して移動可能に支持する位置調整機構を具備する、
移乗支援装置。
【請求項2】
前記昇降機構は、
前記身体保持部を前記被介護者から見て斜め前方に上昇させ、斜め後方に下降させるように形成されている、
請求項1に記載の移乗支援装置。
【請求項3】
前記位置調整機構は、
前記上体保持面と平行な方向に前記身体保持部を移動可能に形成されている、
請求項1又は請求項2に記載の移乗支援装置。
【請求項4】
前記支持部は、
側面視において、搭乗した前記被介護者の足関節の近傍に設けられた揺動軸を中心として前記台車部に対して前後に揺動可能に形成されている、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の移乗支援装置。
【請求項5】
移動可能な台車部と、
搭乗した被介護者の上体を胸側から保持する上体保持面を有する身体保持部と、
前記身体保持部を前記台車部に対して支持する支持部と、
前記上体保持面の傾き角度を維持したまま前記身体保持部を昇降させる昇降機構と、
を具備し、
前記支持部は、
側面視において、搭乗した前記被介護者の足関節の近傍に設けられた揺動軸を中心として前記台車部に対して前後に揺動可能に形成されている、
移乗支援装置。
【請求項6】
前記支持部は、
側面視において、搭乗した前記被介護者の膝関節の近傍に設けられ、当該被介護者の膝を受ける膝受け部を具備する、
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の移乗支援装置。
【請求項7】
前記膝受け部は、
前記支持部のうち当該膝受け部を支持する部分に対して移動可能に形成されている、
請求項6に記載の移乗支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被介護者の移乗を支援する移乗支援装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被介護者の移乗を支援する移乗支援装置の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、支持部と、一端が支持部に揺動可能に接続されるアーム部と、アーム部の他端に接続される前面保持部(身体保持部)と、アーム部を揺動させるアーム軸モータと、を具備する移乗支援装置が記載されている。
【0004】
このように構成された移乗支援装置において、前面保持部によって被介護者の上体を保持した状態で、アーム軸モータによりアーム部を揺動させることで、当該被介護者の上体を任意の高さに持ち上げることができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、アーム部がその一端を中心として揺動することでその他端に接続される前面保持部を持ち上げる。このため、前面保持部は、持ち上げられる際に、曲線的に動作することとなる。このとき、被介護者の身体(上体)に無理な動きを強いることがあり、ゆえに被介護者の身体にかかる負担が大きいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−90845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、移乗の際の被介護者の身体にかかる負担を軽減することができる移乗支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、移動可能な台車部と、搭乗した被介護者の上体を胸側から保持する上体保持面を有する身体保持部と、前記身体保持部を前記台車部に対して支持する支持部と、前記上体保持面の傾き角度を維持したまま前記身体保持部を昇降させる昇降機構と、を具備し、前記支持部は、前記台車部に接続された第一部分と、前記身体保持部を前記第一部分に対して支持する第二部分と、を具備し、前記昇降機構は、前記第一部分に対して前記第二部分を移動させることで前記身体保持部を昇降させるように形成されており、前記身体保持部を前記第二部分に対して移動可能に支持する位置調整機構を具備するものである。
【0010】
請求項2においては、前記昇降機構は、前記身体保持部を前記被介護者から見て斜め前方に上昇させ、斜め後方に下降させるように形成されているものである。
【0011】
請求項3においては、前記位置調整機構は、前記上体保持面と平行な方向に前記身体保持部を移動可能に形成されているものである。
【0012】
請求項4においては、前記支持部は、側面視において、搭乗した前記被介護者の足関節の近傍に設けられた揺動軸を中心として前記台車部に対して前後に揺動可能に形成されているものである。
【0013】
請求項5においては、移動可能な台車部と、搭乗した被介護者の上体を胸側から保持する上体保持面を有する身体保持部と、前記身体保持部を前記台車部に対して支持する支持部と、前記上体保持面の傾き角度を維持したまま前記身体保持部を昇降させる昇降機構と、を具備し、前記支持部は、側面視において、搭乗した前記被介護者の足関節の近傍に設けられた揺動軸を中心として前記台車部に対して前後に揺動可能に形成されているものである。
【0014】
請求項6においては、前記支持部は、側面視において、搭乗した前記被介護者の膝関節の近傍に設けられ、当該被介護者の膝を受ける膝受け部を具備するものである。
【0015】
請求項7においては、前記膝受け部は、前記支持部のうち当該膝受け部を支持する部分に対して移動可能に形成されているものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0018】
請求項1においては、移乗の際の被介護者の身体にかかる負担を軽減することができる。また、身体保持部を昇降させるための機構を身体保持部に形成する必要がないので、身体保持部の構造を簡素化することができる。また、被介護者の体格に応じて身体保持部の位置を調整することができる。
【0019】
請求項2においては、身体保持部を上昇させたとき被介護者の臀部が持ち上がり易くなり、被介護者の移乗作業を容易とすることができる。
【0020】
請求項3においては、被介護者の上体が身体保持部で適切に保持されるように、被介護者の体格に応じて身体保持部の位置を調整することができる。
【0021】
請求項4においては、身体保持部の位置を細かく調整することができる。
【0022】
請求項5においては、身体保持部の位置を細かく調整することができる。
【0023】
請求項6においては、被介護者の身体に加わる負担を軽減することができる。
【0024】
請求項7においては、被介護者の体格に応じて膝受け部の位置を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係る移乗支援装置の前方斜視図。
図2】同じく、後方斜視図。
図3】被介護者が搭乗した状態の移乗支援装置を示した左側面図。
図4図3の左側面図において、手前の外側フレームを除去した状態の図。
図5図3におけるA矢視図。
図6】本発明の一実施形態に係る移乗支援装置の部分後方斜視図。
図7】下腿シリンダを伸縮させる様子を示した移乗支援装置の左側面図。
図8】上体シリンダを伸縮させる様子を示した移乗支援装置の左側面図。
図9】上体保持部の位置を調整する様子を示した移乗支援装置の左側面図。
図10】膝受け部の位置を調整する様子を示した移乗支援装置の左側面図。
図11】(a)着座部及び着座部駆動機構の左側面図。(b)操作部を後方に引っ張る様子を示す着座部及び着座部駆動機構の左側面図。
図12】操作部を後方に引っ張って着座部を上方に移動させる様子を示す着座部及び着座部駆動機構の左側面図。
図13】(a)着座部が揺動する途中の状態を示す着座部及び着座部駆動機構の左側面図。(b)着座部が収納された状態を示す着座部及び着座部駆動機構の左側面図。
図14】(a)着座部が収納された移乗支援装置を示した左側面図。(b)移乗支援装置を被介護者に近づける様子を示した左側面図。
図15】(a)被介護者を正面保持部にもたれ掛けさせる様子を示した左側面図。(b)被介護者の重心位置を前方に移動させる様子を示した左側面図。
図16】(a)被介護者の膝を伸ばす様子を示した左側面図。(b)着座部を被介護者が着座できる状態にする様子を示した左側面図。
図17】(a)被介護者を着座部に着座させる様子を示した左側面図。(b)支持部を後方に揺動させる様子を示した左側面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、図中の矢印に基づいて、前後方向、左右方向及び上下方向を定義して説明を行う。
【0028】
まず、図1から図4までを用いて、本発明の実施の一形態に係る移乗支援装置1の概略について説明する。
【0029】
移乗支援装置1は、被介護者(介護を受ける者)Pを乗せて移動することにより、当該被介護者Pの移乗(例えば、ベッドとトイレ間の移乗、ベッドと車椅子間の移乗や、移乗支援装置自体への移乗等)を支援するものである。移乗支援装置1は、主として台車部2、支持部3、上体保持部4、下腿駆動機構5、上体駆動機構6、着座部駆動機構7及び保持部調整機構8を具備する。また、支持部3は、主として外側フレーム31、内側フレーム32及び着座部37を具備する。
【0030】
台車部2は、地面(床面)上を移動することができる。台車部2の上部には、支持部3が設けられる。支持部3の上部には、上体保持部4が設けられる。上体保持部4は、移乗支援装置1に搭乗した被介護者Pの身体(特に上体)を保持することができる。
【0031】
台車部2には、下腿駆動機構5によって、支持部3が前後に揺動可能に連結される。支持部3の外側フレーム31には、上体駆動機構6によって内側フレーム32が昇降可能に連結される。内側フレーム32には、保持部調整機構8によって、上体保持部4が略前後方向に移動可能に連結される。下腿駆動機構5、上体駆動機構6及び保持部調整機構8をそれぞれ任意に駆動させることで、上体保持部4の位置(高さ、傾き等)を細かく調節することができる。
【0032】
また、支持部3には、着座部駆動機構7によって、着座部37が上下に揺動可能に連結される。着座部37を揺動させることで、着座部37を収納することができる。
【0033】
次に、図1から図6までを用いて、移乗支援装置1の各部の構成について説明する。なお、図6においては、適宜部材の図示を省略している。
【0034】
台車部2は、移乗支援装置1の最下部を形成するものであり、地面(床面)上を移動可能なものである。台車部2は、主として台車部本体21、車輪22、ステップ23及び中央フレーム24を具備する。
【0035】
台車部本体21は、台車部2の主たる構造体を形成するものである。台車部本体21は、棒状の部材や板状の部材等を適宜組み合わせて形成される。台車部本体21は、平面視略矩形状の範囲に亘るように形成される。台車部本体21の後部は、被介護者Pが座る便器等の一部が挿入できるように、移乗支援装置1の左右両端部に形成されている。
【0036】
車輪22は、台車部本体21の下部に複数設けられる。これによって、台車部本体21は車輪22を介して地面(床面)上を任意の方向に移動することができる。
【0037】
ステップ23は、移乗支援装置1に搭乗する被介護者Pの足場を形成する平板状の部材である。ステップ23は、板面を上下方向に向けた状態で、台車部本体21の左右に一対形成される。
【0038】
中央フレーム24は、台車部本体21の略中央部に載置される部分である。中央フレーム24は、板状の部材等を適宜組み合わせて形成される。中央フレーム24は、左右一対のステップ23の間に配置される。
【0039】
支持部3は、台車部2の上部に設けられ、上体保持部4を支持すると共に、移乗支援装置1に搭乗した被介護者Pの身体を保持するものである。支持部3は、主として外側フレーム31、内側フレーム32、第一連結部33、第二連結部34、第三連結部35、膝受け部36、着座部37及び把手部38を具備する。
【0040】
外側フレーム31は、支持部3の左部及び右部を形成する部分である。外側フレーム31は、板面を左右方向に向けた板状に形成される。外側フレーム31は、左側面視(図3参照)において、略L字形状を180°回転させたような形状に形成される。外側フレーム31は、左右に一対形成される。外側フレーム31は、後述する第一連結部33を介して台車部2に連結される。外側フレーム31には、係合孔31aが形成される。
【0041】
図1及び図3に示す係合孔31aは、外側フレーム31を左右方向に貫通するように形成される孔である。係合孔31aは、長手方向を前後方向に向けた長孔状に形成される。係合孔31aは、外側フレーム31の前部に、且つ、被介護者Pの膝関節J2(図3参照)のやや下方に相当する高さに形成される。
【0042】
内側フレーム32は、支持部3の左右中央部を形成する部分である。内側フレーム32は、板面を左右方向に、長手方向を前上方向(後下方向)に向けた板状に形成される。内側フレーム32は、左右一対の外側フレーム31の間(内側)に設けられる。内側フレーム32の外側の板面は、外側フレーム31の内側の板面に対向するように設けられる。内側フレーム32は、外側フレーム31の後上部に設けられる。内側フレーム32は、左右に一対形成される。
【0043】
図1から図4に示す第一連結部33は、外側フレーム31と台車部2とを連結する部分である。第一連結部33は、板面を左右方向に、長手方向を略上下方向に向けた左右一対の板状部材が互いに上下中途部で連結されて形成される。第一連結部33は、左右一対の外側フレーム31の下部に設けられる。第一連結部33の上部は、外側フレーム31の下端部に固定される。第一連結部33の下部は、後述する揺動軸51を介して、台車部2の中央フレーム24の後端部と連結される。
【0044】
図4に示す第二連結部34は、外側フレーム31と後述する下腿シリンダ52とを連結すると共に、後述する上体シリンダ61を支持する部分である。第二連結部34は、板面を左右方向に、長手方向を略前後方向(前上方向)に向けた左右一対の板状部材が互いに連結されて形成される。第二連結部34は、左右一対の外側フレーム31の間に、且つ、当該外側フレーム31の上下中途部に配置される。第二連結部34は、左右一対の外側フレーム31に固定される。
【0045】
図2から図4及び図6に示す第三連結部35は、外側フレーム31と後述する着座部37とを連結する部分である。第三連結部35は、板面を左右方向に向けた左右一対の板状部材が互いに連結されて形成される。第三連結部35は、左右一対の外側フレーム31の間に、且つ、当該外側フレーム31の上下中途部に配置される。第三連結部35は、第二連結部34の後方に設けられる。第三連結部35は、左右一対の外側フレーム31に固定される。
【0046】
図1から図3に示す膝受け部36は、移乗支援装置1に搭乗した被介護者Pの膝を受ける部分である。膝受け部36は、側面視において、移乗支援装置1に搭乗した被介護者Pの膝関節J2の近傍に、左右一対設けられる(図3参照)。膝受け部36は、膝受け部本体36a及び係合部36bを具備する。
【0047】
膝受け部本体36aは、被介護者Pの膝を受ける部分を構成するものである。膝受け部本体36aは、被介護者Pの膝を受ける面を略後方に向けた略直方体状に形成される。膝受け部本体36aは、外側フレーム31の側方に、且つ、外側フレーム31の上下中途部に設けられる。
【0048】
図1及び図3に示す係合部36bは、膝受け部36を支持する部分である。係合部36bは、膝受け部本体36aの前上部に固定され、当該前上部から前方に延びるように形成される。係合部36bは、その一部が外側フレーム31の係合孔31aに挿入及び係合されて、当該係合孔31aを前後方向にスライド可能に形成される。また、係合部36bは、係合孔31aにおいて段階的に位置を固定(調整)できるように形成されている。この構成により、被介護者Pの体格に応じて、膝受け部本体36aを、手動で任意の前後方向の位置に調整することができる。
【0049】
着座部37は、移乗支援装置1に搭乗した被介護者Pが着座可能なものである。着座部37は、適宜被介護者Pが着座しやすい形状に形成される。着座部37は、側面視において、膝受け部36の後方に配置される。着座部37は、左右方向において、左右一対の膝受け部36の間に形成される。着座部37の前端は、後述する揺動軸72を介して、第三連結部35に連結される。
【0050】
把手部38は、介助者が移乗支援装置1を移動させる際に掴む部分である。把手部38は、棒状の部材を適宜組み合わせて、介助者が掴み易い形状に形成される。具体的には、把手部38は主として、左右一対の略L字状の部分と、当該略L字状の部分の上端部に形成された略楕円環状の部分とにより形成される。把手部38は、外側フレーム31の前上部に固定される。介助者は、把手部38を掴むことで、移乗支援装置1を容易に移動させることができる。
【0051】
上体保持部4は、移乗支援装置1に搭乗した被介護者Pの身体(上体)を保持する部分である。上体保持部4は、主として正面保持部41及び側面保持部42を具備する。
【0052】
正面保持部41は、移乗支援装置1に搭乗した被介護者Pの胸部から腹部に亘る部分を保持する部分である。正面保持部41は、被介護者Pの上体を胸側から保持する上体保持面41aを後上方に向けた略直方体状に形成される。正面保持部41は、内側フレーム32の上方に設けられる。
【0053】
側面保持部42は、移乗支援装置1に搭乗した被介護者Pを左右両側方から保持する部分である。側面保持部42は、長手方向を上体保持面41aに対して垂直方向に向けた略直方体状に形成される。側面保持部42は、左右方向において正面保持部41を挟むようにして左右一対設けられる。
【0054】
下腿駆動機構5は、支持部3を台車部2に対して前後に揺動させるためのものである。下腿駆動機構5は、揺動軸51及び下腿シリンダ52を具備する。
【0055】
図1から図4に示す揺動軸51は、台車部2と支持部3とを連結するものである。揺動軸51は、軸線を左右方向に向けた状態で配置される。揺動軸51は、台車部2の中央フレーム24(の後部)に対して支持部3の第一連結部33(の下部)を前後回動可能に連結する。これによって、第一連結部33に固定された外側フレーム31を、ひいては支持部3を、揺動軸51を中心として台車部2に対して前後に揺動させることができる。
【0056】
図1から図4に示す下腿シリンダ52は、支持部3(外側フレーム31)を台車部2に対して前後に揺動させるための駆動源である。下腿シリンダ52は、長手方向に伸縮可能なアクチュエータであって、本実施形態においては、電動シリンダが用いられる。下腿シリンダ52は、長手方向を前下方向(後上方向)に向けて配置される。下腿シリンダ52の下端部(前端部)は、台車部2の台車部本体21の前端部に前後回動可能に連結される。下腿シリンダ52の上端部(後端部)は、支持部3の第二連結部34に前後回動可能に連結される。
【0057】
上体駆動機構6は、内側フレーム32を外側フレーム31に対してスライドさせるためのものである。上体駆動機構6は、上体シリンダ61及びスライドレール62を具備する。
【0058】
図1及び図3から図6(特に図4及び図5)に示す上体シリンダ61は、内側フレーム32を外側フレーム31に対して昇降させるための駆動源である。上体シリンダ61は、長手方向に伸縮可能なアクチュエータであって、本実施形態においては、電動シリンダが用いられる。上体シリンダ61は、長手方向を略上下方向(前上方向)に向けて配置される。上体シリンダ61の下端部は、第二連結部34に前後回動可能に連結される(図4参照)。上体シリンダ61の上端部は、左右一対の内側フレーム32の前端部に前後回動可能に連結される(図4及び図5参照)。
【0059】
図4から図6に示すスライドレール62は、内側フレーム32を外側フレーム31に対して略上下方向(前上方向)に直線的に往復移動させるものである。スライドレール62は、ガイド部62a及びスライド部62bを具備する。
【0060】
ガイド部62aは、後述するスライド部62bをスライド可能とすると共に、スライド部62bのスライド方向を規制するものである。ガイド部62aは、長手方向を略上下方向(前上方向)に向けた棒状に形成される。ガイド部62aは、外側フレーム31の内側の板面に固定される。ガイド部62aは、外側フレーム31の上端部近傍から上下中途部まで延びるように形成される。
【0061】
スライド部62bは、ガイド部62aに沿ってスライドするものである。スライド部62bは、内側フレーム32の外側の板面に固定され、ガイド部62aに沿って(ガイド部62aの長手方向に)スライド可能に形成される。つまり、スライド部62bは、ガイド部62aによって、ガイド部62aの長手方向にのみスライド可能となるように規制される。
【0062】
このように構成される上体駆動機構6により、内側フレーム32を外側フレーム31に対してスライドさせることで、内側フレーム32により支持された上体保持部4を、被介護者Pから見て斜め前方に上昇させ、斜め後方に下降させることができる。
【0063】
着座部駆動機構7は、着座部37を支持部3(外側フレーム31)に対して上下(前後)に揺動させるためのものである。着座部駆動機構7は、上側支持部71、揺動軸72、下側支持部73、連結部74、回動軸75、ガイド部76、操作部77及びばね78を具備する。
【0064】
図1から図4及び図6に示す上側支持部71は、着座部37を支持するものである。上側支持部71は、板面を上下方向に、且つ、長手方向を前後方向に向けた平板状の部材の左右両端部を下方に折り曲げて形成される。上側支持部71は、着座部37の下方に設けられ、上側の板面に着座部37が載置されるように形成される。上側支持部71の前端は、後述する揺動軸72を介して、第三連結部35に連結される。
【0065】
図1図3図4及び図6に示す揺動軸72は、支持部3の第三連結部35と上側支持部71とを連結するものである。揺動軸72は、軸線を左右方向に向けた状態で、搭乗した被介護者Pの膝関節J2の近傍に設けられる(図3参照)。揺動軸72は、支持部3の第三連結部35に対して上側支持部71を上下(前後)回動可能に連結する。これによって、上側支持部71によって支持された着座部37は、揺動軸72を中心として支持部3に対して上下(前後)回動可能に連結される。
【0066】
図2から図4及び図6に示す下側支持部73は、上側支持部71を支持するものである。下側支持部73は、板面を左右方向に、且つ、長手方向を後上方向に向けた板状に形成される。下側支持部73は、前後中途部において後部が上方に屈曲するように形成される。下側支持部73の後端は、上側支持部71のすぐ下に位置するように設けられる。下側支持部73の前端は、側面視において、外側フレーム31の下端近傍に位置するように設けられる。下側支持部73には、上側ピン73a及び下側ピン73bが設けられる。
【0067】
上側ピン73aは、下側支持部73の上部に固定される。上側ピン73aは、軸線方向を左右方向に向けて、下側支持部73の左方に突出するように設けられる。
【0068】
下側ピン73bは、下側支持部73の下部に固定される。下側ピン73bは、軸線方向を左右方向に向けて、下側支持部73の右方に突出するように設けられる。
【0069】
図3図4及び図6に示す連結部74は、上側支持部71と下側支持部73とを連結するものである。連結部74は、板面を左右方向に向けた板状部を有する形状に形成される。連結部74は、上側支持部71の下部に固定される。連結部74は、右側の板面が下側支持部73の左側の板面と対向するように設けられる。連結部74には、ピン74aが設けられる。
【0070】
図6に示すピン74aは、連結部74の上部に固定される。ピン74aは、軸線方向を左右方向に向けて、連結部74の左方に突出するように設けられる。ピン74aは、前後に2ヶ所設けられる。
【0071】
図3図4及び図6に示す回動軸75は、下側支持部73と連結部74とを連結するものである。回動軸75は、軸線を左右方向に向けた状態で配置される。回動軸75は、下側支持部73と連結部74とを上下回動可能に連結する。
【0072】
図4及び図6に示すガイド部76は、下側支持部73を支持するものである。ガイド部76は、板面を左右方向に、且つ、長手方向を略前後方向(前上方向)に向けた板状に形成される。ガイド部76は、その後端部が側面視において外側フレーム31の下端近傍に(揺動軸51の略上方に)位置するように設けられる。ガイド部76は、右側の外側フレーム31の内側に固定される。ガイド部76は、左側の板面が下側支持部73の右側の板面と対向するように設けられる。ガイド部76には、ガイド孔76aが形成される。
【0073】
ガイド孔76aは、下側支持部73を支持すると共に、当該下側支持部73の軌道を規制するものである。ガイド孔76aは、ガイド部76を左右方向に貫通するように形成される。ガイド孔76aは、ガイド部76の後部から上方(後上方向)に延びて、その上端が前方(前上方向)に屈曲し、ガイド部76の前部まで延びるように形成される(図4参照)。側面視において、揺動軸72を中心としてガイド孔76aの屈曲する部分を通る仮想円を定義した場合、ガイド孔76aの前方に延びる部分(前部)は、ガイド孔76aの屈曲する部分における当該仮想円の接線方向に対して略平行に延びるように形成される。一方、ガイド孔76aの上方に延びる部分(後部)は、当該接線方向に対して略垂直に延びるように形成される。ガイド孔76aには、下側支持部73の下側ピン73bが挿入される。これにより、下側支持部73は、ガイド孔76aに沿って移動可能に形成される。
【0074】
図1図3図4及び図6に示す操作部77は、着座部37を回動させる際に操作する部分である。操作部77は、板面を左右方向に、且つ、長手方向を前後方向に向けた板状部を有する形状に形成される。操作部77は、着座部37の下方に配置される。操作部77は、右側の板面が連結部74の左側の板面と対向するように設けられる。操作部77には、係合孔77a、規制孔77b及びハンドル77cが形成される。
【0075】
図6に示す係合孔77aは、操作部77を上側支持部71とを連結するためのものである。係合孔77aは、操作部77を左右方向に貫通するように形成される。係合孔77aは、長手方向を前後方向に向けて形成される。係合孔77aには、下側支持部73に固定された上側ピン73aが脱落しないように挿入される。
【0076】
図6に示す規制孔77bは、操作部77の移動方向を規制するためのものである。規制孔77bは、操作部77を左右方向に貫通するように形成される。規制孔77bは、長手方向を前後方向に向けて形成される。規制孔77bは、係合孔77aを挟んで前後に2ヶ所設けられる。規制孔77bには、連結部74に固定されたピン74aが脱落しないように挿入される。
【0077】
ハンドル77cは、介助者が操作部77を操作するときに掴む部分である。ハンドル77cは、介助者が掴み易いように適宜曲げられた棒状部材により形成される。ハンドル77cは、操作部77の後端に設けられる。
【0078】
図6に示すばね78は、操作部77を付勢するものである。ばね78は、引張ばねである。ばね78は、自由長よりも伸長された状態で、伸縮方向を前後方向に向けて設けられる。ばね78の前端は、上側支持部71に固定される。ばね78の後端は、操作部77に固定される。このように設けられたばね78により、操作部77は、上側支持部71に対して前方に付勢される。
【0079】
保持部調整機構8は、上体保持部4を支持部3(内側フレーム32)に対してスライドさせるためのものである。保持部調整機構8は、主としてスライド機構81及びスライド支持部82を具備する。
【0080】
図1図3図4及び図6に示すスライド機構81は、上体保持部4を内側フレーム32に対して略前後方向(前上方向)に直線的に往復移動させるものである。スライド機構81は、ガイド部81a及びスライド部81bを具備する。
【0081】
図6に示すガイド部81aは、後述するスライド部81bをスライド可能とすると共に、スライド部81bのスライド方向を規制するものである。ガイド部81aは、後述するスライド部81bを挿通すると共に、当該スライド部81bがスライドできるように適宜加工された貫通孔を有するブロック状の部材により形成される。ガイド部81aは、当該貫通孔の軸線方向を略前後方向に、且つ、上体保持面41aと平行な方向に向けて設けられる。ガイド部81aは、後述するスライド支持部82に載置される。
【0082】
図6に示すスライド部81bは、ガイド部81aに沿ってスライドするものである。スライド部81bは、上体保持部4の正面保持部41の下部に固定される。スライド部81bは、軸線方向を略前後方向に向けた棒状部材により形成される。スライド部81bは、ガイド部81aの貫通孔に挿通されるように設けられる。これにより、スライド部81bは、ガイド部81aによって、ガイド部81aの長手方向にのみスライド可能となるように規制される。また、スライド部81bは、ガイド部81aの長手方向において任意の位置で固定(調整)できるように形成されている。
【0083】
スライド支持部82は、スライド機構81を支持するものである。スライド支持部82は、板面を略前後方向(上体保持面41aと平行な方向)に向けた平板状の部材の左右両端部を上方に折り曲げて形成される。スライド支持部82は、左右一対の内側フレーム32の上端部に載置及び固定される。スライド支持部82には、ガイド部81aが載置される。
【0084】
このように構成される保持部調整機構8において、ガイド部81aに対してスライド部81bを手動でスライドさせることにより、上体保持部4を、内側フレーム32に対して略前後方向における任意の位置に移動させることができる。ひいては、被介護者Pの体格に応じて上体保持部4の前後方向の位置を調整することができる。
【0085】
次に、図7から図10までを用いて、移乗支援装置1の各部が揺動又は移動する様子について説明する。
【0086】
移乗支援装置1においては、下腿シリンダ52を伸縮させることで、支持部3を前後に揺動させることができる。下腿シリンダ52は、図示せぬリモコン等の操作具を操作することにより、任意に伸縮させることができる。
【0087】
具体的には、図7に示すように、下腿シリンダ52を伸縮させることで、外側フレーム31を台車部2に対して前後に揺動させることができる。この場合、揺動軸51が外側フレーム31の揺動中心となる。内側フレーム32、第一連結部33、第二連結部34、第三連結部35、膝受け部36、着座部37及び把手部38は外側フレーム31に支持されているため、外側フレーム31が揺動すると、当該外側フレーム31と一体的に内側フレーム32等も揺動する。上体保持部4、上体駆動機構6及び保持部調整機構8もまた内側フレーム32等を介して外側フレーム31に支持されているため、外側フレーム31が揺動すると、当該外側フレーム31と一体的に上体保持部4等も揺動する。なお、下腿シリンダ52を最大限伸張させた状態では、上体保持部4の上体保持面41aの傾きが鉛直方向に対して約65°となる(図3及び図4参照)。
【0088】
ここで、左側面視(図3参照)において揺動軸51は、被介護者Pの足関節J1(足首にある関節(内果点))の近傍に位置する。このように、揺動軸51を足関節J1の近傍に配置することで、外側フレーム31を揺動させる際に、被介護者Pの身体(足関節J1)を自然に曲げたり伸ばしたりすることができる。これによって、被介護者Pの身体にかかる負担を軽減することができる。
【0089】
また、図8に示すように、上体シリンダ61を伸縮させることで、内側フレーム32を外側フレーム31及び台車部2に対して上下(前後)にスライドさせることができる。上体シリンダ61は、図示せぬリモコン等の操作具を操作することにより、任意に伸縮させることができる。上体保持部4は内側フレーム32に支持されているため、内側フレーム32が外側フレーム31に対してスライドすると、当該内側フレーム32と一体的に上体保持部4もスライドする。このスライドにより、上体保持部4を昇降させることができる。
【0090】
このように、上体保持部4を昇降させることで、被介護者Pの身体(膝関節J2)を自然に曲げたり伸ばしたりすることができる。このとき、上体保持部4は、上体保持面41aの傾き角度を維持したまま昇降するので、被介護者Pの身体に加わる負担を軽減することができる。
【0091】
また、図9に示すように、保持部調整機構8が構成されていることにより、内側フレーム32に対して、上体保持部4の前後(上下)の位置を、手動で容易に調整することができる。また、上体保持部4を上体保持面41aと平行な方向に移動させることができるので、被介護者Pにかかる負担を軽減することができる。
【0092】
また、図10に示すように、外側フレーム31の係合孔31aに対して膝受け部36の係合部36bをスライドさせることで、外側フレーム31に対して膝受け部36の前後の位置を、手動で容易に調整することができる。
【0093】
次に、図11から図13までを用いて、着座部37を揺動(回動)させて収納する様子について説明する。なお、図11から図13においては、主に着座部37の揺動に係る部材のみ図示しており、他の部材の図示は省略している。
【0094】
まず、図11(a)に示すように、被介護者Pが着座しているとき(着座部37が着座位置にあるとき)は、着座部37は、その着座面を上方に向けて配置されている。このとき、下側支持部73の前端部(下側ピン73b)は、ガイド部76のガイド孔76aの下端部に位置しており、ガイド孔76aの後部(略上方に延びる部分)に沿う方向にしか移動できないように移動方向を規制されている。また、当該ガイド孔76aの後部は、前述の仮想円の接線方向に対して略垂直に延びている。これにより、上側支持部71(着座部37)は、下側支持部73によって、上下に揺動できない状態(ロック状態)で、着座位置に保持されている。
【0095】
図11(b)に示すように、介助者は、ばね78の前方への付勢力に抗して、ハンドル77cを後方へ引っ張る。すると、操作部77は、規制孔77bと連結部74のピン74aとにより上下方向の位置を規制されながら、後方へ移動する。そして、操作部77は、下側支持部73の上側ピン73aが係合孔77aの前端に当接する位置まで、後方へ移動する。
【0096】
図12に示すように、さらに介助者がハンドル77cを後方へ引っ張ると、上側ピン73aを介して下側支持部73に後方への力が付加される。すると、下側支持部73の前端部(下側ピン73b)は、回動軸75を中心として、上向きに(左側面視において時計回りに)回動しようとする。ここで、介助者がハンドル77cを少し持ち上げるようにすると、下側支持部73の前端部(下側ピン73b)は、回動軸75を中心として上向きに(左側面視において時計回りに)回動しながら、ガイド部76のガイド孔76aの屈曲する部分まで、ガイド部76のガイド孔76aに沿って上方(後上方向)に移動する。ガイド孔76aの前部(略前方に延びる部分)は、前述の仮想円の接線方向に対して略平行に延びている。よって、下側支持部73の前端部(下側ピン73b)は、ガイド孔76aに沿って略前方へ移動できるようになる。これにより、上側支持部71(着座部37)は、揺動軸72を中心として下向きに回動可能な状態(ロック解除状態)となる。
【0097】
このように、着座部駆動機構7は、着座部37が着座位置から後述する収納位置へと移動するのを規制する機能(ロック機能)を有しているので、被介護者Pが着座しているときに、着座部37が意図せず収納位置に移動してしまうのを防ぐことができる。したがって、被介護者Pの利便性を確保することができる。
【0098】
図13(a)に示すように、介助者は、ロック解除状態となった上側支持部71(着座部37)を、揺動軸72を中心として、下向きに(左側面視において時計回りに)回動させる。これに伴って、下側支持部73は、ガイド部76のガイド孔76aに沿って前方(前上方向)に移動する。
【0099】
図13(b)に示すように、下側支持部73は、ガイド部76のガイド孔76aに沿ってさらに前方(前上方向)に移動する。上側支持部71(着座部37)は、下側支持部73の下側ピン73bがガイド部76のガイド孔76aの前端部に当接するまで、下向き(左側面視において時計回り)に回動する。
【0100】
このようにして、着座部37を、揺動軸72を中心として下向きに回動させることで、外側フレーム31の後方において、当該外側フレーム31の後端部に沿う収納位置に収納させることができる(図14等参照)。このとき、台車部2は、前記収納位置にあるときの着座部37よりも後方に位置する部分には、部材が位置しないように形成されている。よって、着座部37の近くまで、被介護者Pが座る便器等の一部を侵入させることができる。また、前記収納位置において、着座部37は、着座面が側面視において搭乗した被介護者Pの下腿と略平行となるように収納される。また、前記収納位置において、着座部37は、その下端部が被介護者Pの足関節J1の近傍に位置するように収納される(図15(a)参照)。
【0101】
次に、着座部37を収納位置から着座位置に戻す場合について説明する。
【0102】
介助者は、着座部37が収納位置にあるとき(図13(b)参照)、着座部37を、ハンドル77cを掴んで持ち上げるようにして、揺動軸72を中心として上向きに(左側面視において反時計回りに)回動させる。そうすると、下側支持部73の前端部(下側ピン73b)は、ガイド孔76aの屈曲する部分まで、当該ガイド孔76aに沿って後方に移動する(図12参照)。次に、介助者は、着座部37を持ち上げるのを止めて、着座部37を揺動軸72を中心として下向きに(左側面視において時計回りに)回動させる。そうすると、下側支持部73の前端部(下側ピン73b)は、ガイド孔76aの下端部まで、当該ガイド孔76aに沿って後方に移動する(図11参照)。このようにして、着座部37を着座位置に戻すことができる。
【0103】
次に、図14から図17までを用いて、上述の如く構成された移乗支援装置1を用いた移乗作業の一例について具体的に説明する。なお、以下の説明では、便宜上、移乗支援装置1を操作する者(介助者)の図示は省略している。
【0104】
まず、図14(a)に示すように、介助者は、着座部37を収納状態としておく。またこの際、介助者は、下腿シリンダ52を最大限伸長させておく。このとき、正面保持部41の上体保持面41aの鉛直方向に対する前方向への傾斜角度a1は、約65度となる。以下では、この状態の移乗支援装置1を、初期姿勢と称する。
【0105】
次に、図14(b)に示すように、介助者は、移乗支援装置1を前方から被介護者Pに近づける。
【0106】
次に、図15(a)に示すように、介助者は、被介護者Pの膝を膝受け部36で受けるようにしながら、被介護者Pの上体を正面保持部41にもたれ掛けさせる。この際、介助者は、側面保持部42を被介護者Pの脇の下に挿通する。このとき、正面保持部41は傾斜角度a1だけ前方向に傾斜しているため(図14(a)参照)、被介護者Pは正面保持部41に楽にもたれることができる。
【0107】
次に、図15(b)に示すように、介助者は、下腿シリンダ52を収縮させ、外側フレーム31を台車部2に対して角度a2だけ前方に揺動させる。角度a2は、具体的には約25度になるように調節される。このように外側フレーム31を揺動させると、当該外側フレーム31と共に上体保持部4も一体的に揺動する。このため、被介護者Pの身体全体が前方に揺動する。これによって、被介護者Pの重心位置が前方(移乗支援装置1側)に移動し、当該被介護者Pは身体を完全に移乗支援装置1に預けることができる。なお、この状態では、正面保持部41の水平方向に対する傾斜角度a3は、0〜5度になる。
【0108】
次に、図16(a)に示すように、介助者は、上体シリンダ61を伸長させ、内側フレーム32を外側フレーム31に対して上方(前方)にスライドさせる。これによって、被介護者Pの膝が伸ばされると共に、被介護者Pの臀部が持ち上げられる。なお、この際のスライド量は、後述するように着座部37を着座状態に戻す際(図16(b)参照)に、被介護者Pの臀部が当該着座部37と干渉しない程度のスライド量(例えば、約180mm)に調節される。このとき、正面保持部41の上体保持面41aの水平方向に対する傾斜角度a3は、0〜5度のままである。
【0109】
次に、図16(b)に示すように、介助者は、着座部37を上向きに揺動させ、着座部37を被介護者Pが着座できる状態とする。
【0110】
次に、図17(a)に示すように、介助者は、上体シリンダ61を収縮させて、内側フレーム32を外側フレーム31に対して下方(後方)にスライドさせる。これにより、上体保持部4は、内側フレーム32と一体的にスライドする。介助者は、内側フレーム32(上体保持部4)を、被介護者Pが着座部37に着座するまでスライドさせる。
【0111】
次に、図17(b)に示すように、介助者は、下腿シリンダ52を最大限伸長させる。すなわち介助者は、角度a2(約25度)だけ、支持部3(外側フレーム31)を台車部2に対して後方に揺動させる。このようにして、介助者は移乗支援装置1を初期姿勢に戻す。初期姿勢に戻った移乗支援装置1を移動させることで、被介護者Pを任意の場所に容易に移動させることができる。
【0112】
このように、移乗支援装置1を用いることで、力のない介助者でも容易に被介護者Pの移乗作業を行うことができる。また、大がかりな装置等も必要ないため、室内等の限られたスペースであっても移乗作業を行うことができる。
【0113】
また、移乗支援装置1が図16に示す状態にある場合には、被介護者Pの膝が伸ばされて臀部がやや浮いた状態になっている。したがって、介助者は、この状態で被介護者Pのズボンの上げ下げを容易に行うこともできる。
【0114】
また、上体保持部4は、図16(a)から図17(a)に示すように、上体駆動機構6により直線的に上昇する。これにより、自然と被介護者Pの膝が伸ばされて臀部が浮いた状態となる。このとき、上体保持部4は直線的に移動するだけなので、被介護者Pの上体の傾斜角度は概ね変わることがない。このため、被介護者Pの身体(上体)に無理な動きを強いることなく、被介護者Pの臀部を浮かすことができる。したがって、移乗支援装置1への移乗の際の被介護者Pの身体にかかる負担を軽減することができる。
【0115】
また、上体保持部4は、図16(a)から図17(a)に示す状態において、上体駆動機構6(スライドレール62)により、上下方向(上下方向と前後方向との間の斜め方向)に沿ってスライドする。これにより、被介護者Pの上体が左右方向にぶれることなく、被介護者Pの臀部を浮かすことができる。したがって、容易に被介護者Pの移乗作業を行うことができる。
【0116】
また、図14(b)に示すように、着座部37を収納させた状態で、移乗支援装置1を被介護者Pに接近させることができるので、被介護者Pは楽に移乗支援装置1に身体を預けることができる。また、まず被介護者Pの身体を移乗支援装置1に預けて、その後に被介護者Pを着座部37に着座させることができる(図17(a)参照)ので、介助者或いは被介護者P自身が、当該被介護者Pの身体を支える必要がない。したがって、容易に被介護者Pの移乗作業を行うことができる。
【0117】
また、図16(b)に示すように、被介護者Pが上体保持部4及び膝受け部36に身体が保持された状態で、着座部37を回動させて着座位置とすることで、被介護者Pは、移乗支援装置1に身体を預けたまま着座部37に着座することができる(図17(a)参照)。また、着座部37は、被介護者Pの膝関節J2近傍に設けられた揺動軸72を中心として回動するので、被介護者Pの臀部や上腿に沿わせ易くすることができる。
【0118】
以上の如く、本実施形態に係る移乗支援装置1は、移動可能な台車部2と、搭乗した被介護者Pの上体を胸側から保持する上体保持面41aを有する上体保持部4(身体保持部)と、前記上体保持部4を前記台車部2に対して支持する支持部3と、前記上体保持面41aの傾き角度を維持したまま前記上体保持部4を昇降させる上体駆動機構6(昇降機構)と、を具備するものである。
このように構成することにより、移乗の際の被介護者Pの身体にかかる負担を軽減することができる。
【0119】
また、前記上体駆動機構6は、前記上体保持部4を前記被介護者Pから見て斜め前方に上昇させ、斜め後方に下降させるように形成されているものである。
このように構成することにより、上体保持部4を上昇させたとき被介護者Pの臀部が持ち上がり易くなり、被介護者Pの移乗作業を容易とすることができる。
【0120】
また、前記支持部3は、前記台車部2に接続された外側フレーム31(第一部分)と、前記上体保持部4を前記外側フレーム31に対して支持する内側フレーム32(第二部分)と、を具備し、前記上体駆動機構6は、前記外側フレーム31に対して前記内側フレーム32を移動させることで前記上体保持部4を昇降させるように形成されているものである。
このように構成することにより、上体保持部4を昇降させるための機構を上体保持部4に形成する必要がないので、上体保持部4の構造を簡素化することができる。具体的には、上体駆動機構6を移乗支援装置1の比較的低い位置に配置することができるので、移乗支援装置1を低重心化することができる。
【0121】
また、本実施形態に係る移乗支援装置1は、前記上体保持部4を前記内側フレーム32に対して移動可能に支持する保持部調整機構8(位置調整機構)を具備するものである。
このように構成することにより、被介護者Pの体格に応じて上体保持部4の位置を調整することができる。
【0122】
また、前記保持部調整機構8は、前記上体保持面41aと平行な方向に前記上体保持部4を移動可能に形成されているものである。
このように構成することにより、被介護者Pの上体が上体保持部4で適切に保持されるように、被介護者Pの体格に応じて上体保持部4の位置を調整することができる。
【0123】
また、前記支持部3は、側面視において、搭乗した前記被介護者Pの足関節J1の近傍に設けられた揺動軸51を中心として前記台車部2に対して前後に揺動可能に形成されているものである。
このように構成することにより、上体保持部4の位置を細かく調整することができる。
【0124】
また、前記支持部3は、側面視において、搭乗した前記被介護者Pの膝関節J2の近傍に設けられ、当該被介護者Pの膝を受ける膝受け部36を具備するものである。
このように構成することにより、被介護者Pの身体に加わる負担を軽減することができる。
【0125】
また、前記膝受け部36は、前記支持部3のうち外側フレーム31(当該膝受け部36を支持する部分)に対して移動可能に形成されているものである。
このように構成することにより、被介護者Pの体格に応じて膝受け部36の位置を調整することができる。
【0126】
なお、本実施形態に係る上体保持部4は、本発明に係る身体保持部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る上体駆動機構6は、本発明に係る昇降機構の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る保持部調整機構8は、本発明に係る位置調整機構の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る外側フレーム31は、本発明に係る第一部分の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る内側フレーム32は、本発明に係る第二部分の実施の一形態である。
【0127】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0128】
例えば、本実施形態に係る外側フレーム31及び内側フレーム32の構成(形状、大きさ等)は、限定されるものではなく、任意の形状等に適宜変更することが可能である。
【0129】
また、本実施形態における上体駆動機構6においては、上体シリンダ61を駆動源としたが、上体駆動機構6の駆動源はこれに限定されるものではない。すなわち、上体駆動機構6の駆動源としては、支持部3を揺動させることができるものであれば、その構成を限定するものではない。例えば、上体駆動機構6の駆動源として、各種シリンダ(電動シリンダ、空圧シリンダ、油圧シリンダ等)やモータ等を用いることも可能である。下腿シリンダ52についても同様である。
【0130】
また、本実施形態においては、保持部調整機構8は、上体保持部4を手動で位置調整可能なものとしたが、上体保持部4を電動で位置調整するものであってもよい。また、膝受け部36は手動で位置調整可能なものとしたが、電動で位置調整するものであってもよい。
【0131】
また、本実施形態における上体駆動機構6は、外側フレーム31に対して内側フレーム32をスライドさせることで上体保持部4を昇降させるものとしたが、上体保持部4を昇降させる機構はこれに限定されるものではなく、支持部3に対して上体保持部4を直接移動させるものであってもよい。
【0132】
また、本実施形態においては、上体保持部4は被介護者Pを前方及び左右両側方から保持するものとしたが、被介護者Pの身体を保持する構成はこれに限るものではない。すなわち、上体保持部4は、被介護者Pの身体の少なくとも一部分を保持することができるものであれば、その構成(形状、大きさ、被介護者Pの保持方法等)を限定するものではない。
【0133】
また、本実施形態においては、傾斜角度a1、角度a2及び傾斜角度a3の値を具体的に例示して、移乗支援装置1を用いた移乗作業について説明したが、これらの角度は限定されるものではない。すなわち、これらの角度は、被介護者Pの体格や移乗作業の内容(場所や目的等)に応じて任意に調節することが可能である。
【0134】
また、本実施形態においては、上体駆動機構6は、上体保持部4を、被介護者Pから見て斜め前方に上昇させ、斜め後方に下降させるものとしたが、上体保持部4の昇降方向は限定されるものではない。上体保持部4の昇降方向の角度は、任意に調節することが可能であり、例えば、上下方向(鉛直方向)であってもよい。
【0135】
また、本実施形態において説明した移乗作業(図14から図17まで)の流れは一例であり、移乗支援装置1を用いた移乗作業は、介助者及び被介護者Pに応じて任意の方法で行うことが可能である。この際、本実施形態に係る移乗支援装置1は、外側フレーム31の揺動及び内側フレーム32の昇降を独立して任意に行うことができるため、上体保持部4の位置を細かく調整しながら移乗作業を行うことができる。
【0136】
また、本実施形態においては、着座部駆動機構7によって着座部37を揺動させるものとしたが、着座部37を変位させる機構はこれに限定されるものではなく、任意の構造を採用することができる。
【符号の説明】
【0137】
1 移乗支援装置
2 台車部
3 支持部
4 上体保持部
6 上体駆動機構
8 保持部調整機構
31 外側フレーム
32 内側フレーム
36 膝受け部
41a 上体保持面
51 揺動軸
図1
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