特許第6689528号(P6689528)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6689528
(24)【登録日】2020年4月10日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】吸気ダクト
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/16 20060101AFI20200421BHJP
   F02M 35/10 20060101ALI20200421BHJP
   B60K 13/02 20060101ALI20200421BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
   F02M35/16 S
   F02M35/10 101F
   F02M35/10 301V
   F02M35/16 E
   B60K13/02 D
   B62D25/08 B
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-83594(P2016-83594)
(22)【出願日】2016年4月19日
(65)【公開番号】特開2017-193975(P2017-193975A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2019年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 昌裕
(72)【発明者】
【氏名】松橋 高広
【審査官】 篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】 英国特許出願公開第02011273(GB,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0101014(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0267655(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/094334(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0151308(US,A1)
【文献】 実開昭63−064527(JP,U)
【文献】 実開昭60−139626(JP,U)
【文献】 実開平04−005119(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/16
F02M 35/10
B60K 13/02
B62D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のキャブの上面に乗り上げたヘッド部の車幅方向外側に開口した空気取入口から外気をエンジン用吸気として取り入れる吸気ダクトであって、前記ヘッド部の後部下面から前記キャブの後面に沿い下方へ延びるダクト部の直上を避けて前記空気取入口を開口し且つ前記ヘッド部を前記空気取入口の後方端を境界として前後に分割構成し、その分割したヘッド部の後方部分における開放端面の下側に前記ヘッド部の底面に溜まる水を堰き止める竪壁を備えたことを特徴とする吸気ダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気ダクトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、トラック等の大型の運搬車両は、普通乗用車と比べて未舗装の悪路を走行する機会が多いため、エンジンの吸気としては、塵埃が多く含まれている地面付近の外気ではなく、地面から十分高い部分の清浄な外気を取り入れることが好ましく、また、地面付近では雨水や積雪の跳ね上げを一緒に取り込んでしまう虞れもあるため、地面から十分高い部分で外気だけを確実に取り入れることが好ましい。
【0003】
そこで、大型の運搬車両においては、キャブの後面に上下方向に長く延在する吸気ダクトを据え付けるようにしているが、図2に示す如く、近年においては、より清浄な外気を取り込み得るようキャブ1の上面で空気取入口2を開口した吸気ダクト3が提案されている。
【0004】
斯かる吸気ダクト3によれば、エンジンルームからの熱気の影響の少ない十分に冷えた外気を取り込めることでエンジンの各気筒への吸気の充填効率を高め、しかも、より高い位置で清浄な外気を取り込めることでエアクリーナの長寿命化を図り、圧力損失の少ない運転状態を長期に亘り維持させて燃費の向上を図るといったメリットが得られる。
【0005】
ここで、前記吸気ダクト3の外殻構造を成しているダクト本体4は、キャブ1の後面側から上面に乗り上げて前記空気取入口2を車幅方向外側(図2中における左側)へ開口したヘッド部4aと、該ヘッド部4aの後部下面から下方に延びて前記キャブ1の後面に沿うダクト部4bとで構成されているが、空気取入口2から車幅方向内側へ向けて取り込まれた外気がヘッド部4a内で車両後方へ回り込むように流れることになるため、図3に分解図を示す如く、外気の流れの回り込みを円滑に誘導するための仕切板5が前記ヘッド部4aに内蔵されるようになっている。
【0006】
従来、この種の仕切板5は、別部品の分割ピース5a,5bを前記ヘッド部4aのブロー成形後に空気取入口2から挿入して組み付けるようにしており、その組み付け後に前記空気取入口2をルーバー6で被覆して雨水の直接的な降り込みを阻む(雪の侵入も同様にして阻まれる)ようにしている。
【0007】
このようにした場合、空気取入口2から車幅方向内側へ向けて取り込まれた外気の流れが仕切板5により車両後方へ円滑に回り込むように誘導されるだけでなく、その回り込みの間に雨や雪が仕切板5の壁面に衝突したり底面に落下したりすることで外気の流れから逸脱してダクト部4bへの侵入を阻まれることになる。
【0008】
ここで、仕切板5の分割ピース5aには、その底面に溜まる水を空気取入口2側へ流し戻す傾斜が付されており、該空気取入口2の下端付近に設けた図示しない排水口からヘッド部4aの外へ排出し得るようにしてある。
【0009】
尚、本発明に関連する一般的な既存技術について説明されている先行技術文献情報としては、本発明と同じ出願人による下記の特許文献1、2等が既に存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第5485685号公報
【特許文献2】特許第5697941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前述した如き従来構造にあっては、ヘッド部4aの底面と仕切板5の分割ピース5aとの間に僅かな隙間ができてしまうことが避けられないため、この隙間に入り込んだ雨や雪の解け水が毛細管現象によりダクト部4bまで導かれて流れ落ちてしまうという問題があり、仮に仕切板5が装備されていなかったとしても、ヘッド部4a内に入り込んでしまった雨や雪の解け水がダクト部4bへ向かうことを傾斜だけで防ぎきることは困難であった。
【0012】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、雨や雪の解け水がダクト部まで導かれて流れ落ちてしまうことを確実に防止し得る吸気ダクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、車両のキャブの上面に乗り上げたヘッド部の車幅方向外側に開口した空気取入口から外気をエンジン用吸気として取り入れる吸気ダクトであって、前記ヘッド部の後部下面から前記キャブの後面に沿い下方へ延びるダクト部の直上を避けて前記空気取入口を開口し且つ前記ヘッド部を前記空気取入口の後方端を境界として前後に分割構成し、その分割したヘッド部の後方部分における開放端面の下側に前記ヘッド部の底面に溜まる水を堰き止める竪壁を備えたことを特徴とするものである。
【0014】
而して、このようにすれば、空気取入口がダクト部の直上を避けて開口されているので、外気がヘッド部の前方側から回り込んでダクト部に向かう流れとなり、その回り込みの間に雨や雪が壁面に衝突したり底面に落下したりすることで外気の流れから逸脱してダクト部への侵入を阻まれると共に、空気取入口からダクト部への直接的な雨や雪の侵入も阻止され、しかも、ヘッド部内に残った雨や雪の解け水が竪壁によりダクト部側へ入り込まないように確実に堰き止められる。尚、竪壁により堰き止められてヘッド部内に残った雨や雪の解け水は、該ヘッド部の底面に傾斜を付したり排水口を設けたりすることで前記ヘッド部の外へ排出できるようにしておけば良い。
【0015】
更に、本発明においては、ヘッド部を空気取入口の後方端を境界として前後に分割構成し、その分割したヘッド部の後方部分における開放端面の下側に竪壁を形成しているので、ヘッド部の後方部分を含むダクト部のブロー成形時に竪壁を簡単に一体成形することが可能であり、竪壁を別部品として後加工で取り付ける場合であっても、ヘッド部の前方部分を組み付ける前の段階であれば簡単に竪壁の取り付けを行うことが可能である。
【0016】
尚、ヘッド部を前後に分割した構造とすれば、外気を円滑に回り込ませるための仕切板をインサート品として溶融樹脂で包み込んで固化させることで前記仕切板を一体化したヘッド部の前方部分を簡単に成形することが可能となり、別部品の仕切板を後加工で組み付ける場合よりも流路断面積を効率良く大きく確保することも可能となる。
【発明の効果】
【0017】
上記した本発明の吸気ダクトによれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0018】
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、外気をヘッド部の前方側から回り込ませてダクト部に向かう流れとし、その回り込みの間に雨や雪を外気の流れから逸脱させてダクト部への侵入を阻止することができると共に、空気取入口からダクト部への直接的な雨や雪の侵入も阻止することができ、しかも、ヘッド部内に残った雨や雪の解け水を竪壁によりダクト部側へ入り込まないように確実に堰き止めることができるので、雨や雪の解け水がダクト部まで導かれて流れ落ちてしまうことを確実に防止することができる。
【0019】
(II)本発明の請求項に記載の発明によれば、ヘッド部の後方部分を含むダクト部のブロー成形時に竪壁を簡単に一体成形することができ、また、竪壁を別部品として後加工で取り付ける場合でもヘッド部の前方部分を組み付ける前に簡単に竪壁の取り付けを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明を実施する形態の一例を分解した状態で示す斜視図である。
図2】従来例を示す斜視図である。
図3図2の吸気ダクトを分解した状態で示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図2及び図3と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0023】
本形態例における吸気ダクト7は、先に図2及び図3で説明した従来の吸気ダクト3の場合と略同様に、運搬車両のキャブ1(図2参照)の後面に据え付けられて上下方向に延在し且つ該キャブ1の上面に乗り上げたヘッド部4aの車幅方向外側に開口した空気取入口2から外気をエンジン用吸気として取り入れるように構成されているが、前記ヘッド部4aの後部下面から前記キャブ1の後面に沿い下方へ延びるダクト部4bの直上を避けて前記空気取入口2を開口し、空気取入口2の後方端と隣接する位置に前記ヘッド部4aの底面11に溜まる水を堰き止める竪壁10を備えている。
【0024】
しかも、ヘッド部4aにおけるダクト部4bの直上に当たる後方部分4arと、その前方に延びてキャブ1の上面に乗り上げることになる前方部分4afとに前記ヘッド部4aが分割構成されており、前記後方部分4arの車幅方向外側に側面8を残す一方、前記前方部分4afの車幅方向外側を開放して空気取入口2を形成するようにしている。
【0025】
即ち、本形態例におけるヘッド部4aは、空気取入口2の後方端を境界として前後に分割構成された構造となっており、その分割したヘッド部4aの後方部分4arにおける開放端面9の下側に車幅方向に亘る竪壁10が形成されていて、該竪壁10により前記ヘッド部4aの底面11に溜まる水を堰き止め得るようにしてある。
【0026】
ここで、後方部分4arの開放端面9の下側に竪壁10を形成するにあたっては、ヘッド部4aの後方部分4arを含むダクト部4bのブロー成形時に竪壁10を一体成形するようにすれば良いが、ヘッド部4aの前方部分4afを組み付ける前に竪壁10を別部品として後加工で取り付けることも可能である。
【0027】
また、前記ヘッド部4aの底面11には、該底面11に溜まる水を空気取入口2側へ流し戻す傾斜が付されており、該空気取入口2下端に設けたドリップチャンネル12により前記水を回収して竪壁10側へ導き、排水口13からヘッド部4aの外へ排出できるようにしてある。
【0028】
尚、水を排出するための排水口13を形成するにあたっては、ヘッド部4aの前方部分4afにおける後方部分4arとの嵌め合わせ部分の最下位置に凹み部を形成しておき、前方部分4afを後方部分4arに嵌め合わせた時に前記凹み部により前記竪壁10との間に隙間が形成されるようにし、該隙間を排水口13として利用するようにすれば良い。
【0029】
更に、本形態例においては、空気取入口2から車幅方向内側へ向けて取り込まれた外気がヘッド部4a内で車両後方へ回り込む流れとなるので、この回り込みを円滑に誘導し得るよう前記ヘッド部4aに仕切板14が内蔵されているが、この仕切板14を内蔵させるにあたっては、該仕切板14をインサート品として溶融樹脂で包み込んで固化させ、これにより前記仕切板14を一体化したヘッド部4aの前方部分4afとして成形することが可能である。
【0030】
而して、このように吸気ダクト7を構成すれば、空気取入口2がダクト部4bの直上を避けて開口されているので、外気がヘッド部4aの前方側から回り込んでダクト部4bに向かう流れとなり、その回り込みの間に雨や雪が壁面に衝突したり底面に落下したりすることで外気の流れから逸脱してダクト部4bへの侵入を阻まれると共に、空気取入口2からダクト部4bへの直接的な雨や雪の侵入も阻止され、しかも、ヘッド部4a内に残った雨や雪の解け水が竪壁10によりダクト部4b側へ入り込まないように確実に堰き止められることになる。
【0031】
尚、ダクト部4bへの侵入を阻まれてヘッド部4a内に残った雨や雪の解け水は、該ヘッド部4aの底面11に付された傾斜によりドリップチャンネル12に流下して回収され、該ドリップチャンネル12により竪壁10側へ導かれて排水口13からヘッド部4aの外へ排出される。
【0032】
従って、上記形態例によれば、外気をヘッド部4aの前方側から回り込ませてダクト部4bに向かう流れとし、その回り込みの間に雨や雪を外気の流れから逸脱させてダクト部4bへの侵入を阻止することができると共に、空気取入口2からダクト部4bへの直接的な雨や雪の侵入も阻止することができ、しかも、ヘッド部4a内に残った雨や雪の解け水を竪壁10によりダクト部4b側へ入り込まないように確実に堰き止めることができるので、雨や雪の解け水がダクト部4bまで導かれて流れ落ちてしまうことを確実に防止することができる。
【0033】
更に、特に本形態例においては、ヘッド部4aを空気取入口2の後方端を境界として前後に分割構成し、その分割したヘッド部4aの後方部分4arにおける開放端面の下側に竪壁10を形成するようにしているので、ヘッド部4aの後方部分4arを含むダクト部4bのブロー成形時に竪壁10を簡単に一体成形することができ、竪壁10を別部品として後加工で取り付ける場合であっても、ヘッド部4aの前方部分4afを組み付ける前の段階であれば簡単に竪壁10の取り付けを行うことができる。
【0034】
また、ヘッド部4aが前後に分割構成されていれば、外気を円滑に回り込ませるための仕切板14をインサート品として溶融樹脂で包み込んで固化させることで前記仕切板14を一体化したヘッド部4aの前方部分4afを簡単に成形することができ、別部品の仕切板14を後加工で組み付ける場合よりも流路断面積を効率良く大きく確保することができる。
【0035】
尚、本発明の吸気ダクトは、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0036】
1 キャブ
2 空気取入口
4a ヘッド部
4ar 後方部分
4b ダクト部
7 吸気ダクト
9 開放端面
10 竪壁
図1
図2
図3