(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記基板の表面状態の良否の判定において、前記評価パターンの大きさが許容範囲に納まっているか否か、前記評価パターンの周囲の滲みの幅が許容範囲に納まっているか否か、及び平面形状の歪みが許容範囲に納まっているか否かの少なくとも1つの判定条件に基づいて良否の判定を行う請求項2に記載の膜形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1〜
図7を参照して、実施例による膜形成装置及び膜形成方法について説明する。
【0010】
図1は、本実施例による膜形成装置の概略正面図である。基台20に移動機構21を介してステージ23が支持されている。ステージ23は、その上面(支持面)に基板50を支持する支持部としての機能を有する。移動機構21は、ステージ23を支持面に平行な2次元方向に移動させることにより、基板50を2次元方向に移動させることができる。移動機構21及びステージ23に、例えばXYステージを用いることができる。通常、ステージ23の支持面は水平に保たれる。
【0011】
ステージ23に支持された基板50の上方に複数のインクジェットヘッド26及び複数の撮像装置27が配置されている。インクジェットヘッド26及び撮像装置27は、門型フレーム24により基台20に支持されている。インクジェットヘッド26の各々に複数のノズル孔が設けられている。ノズル孔から基板50に向けて膜材料の液滴が吐出される。インクジェットヘッド26、ステージ23、及び移動機構21は、基板に膜を形成する膜形成部として機能する。撮像装置27は、ステージ23に支持された基板50の一部分を撮像し、取得された2次元画像の画像データを制御装置(制御部)30に送信する。
【0012】
基板50に付着した液状の膜材料を硬化させることにより膜を形成することができる。膜材料として、光硬化性の樹脂、熱硬化性の樹脂等を用いることができる。インクジェットヘッド26の側方に、基板50に付着した膜材料を硬化させる光源または熱源が配置されている。
【0013】
制御装置30が移動機構21によるステージ23の移動、及びインクジェットヘッド26のノズル孔からの膜材料の吐出を制御する。制御装置30は記憶装置31を含み、記憶装置31に、形成すべき膜のパターンデータが格納されている。パターンデータは、例えば行列状に配置された複数の画素(ピクセル)で構成される。制御装置30がパターンデータに基づいて移動機構21及びインクジェットヘッド26を制御することにより、基板50に所望のパターンの膜を形成することができる。
【0014】
入力装置35から制御装置30に、種々のコマンドやデータが入力される。入力装置35には、例えばキーボード、ポインティングデバイス、USBポート、通信装置等が用いられる。出力装置(出力部)36が、制御装置30からの指令に基づき、膜形成装置の動作に関する種々の情報を出力する。出力装置36には、例えば液晶ディスプレイ、スピーカ、USBポート、通信装置等が用いられる。
【0015】
図2は、タッチパネルの透明電極膜をパターニングするときにエッチングマスクとして用いられるレジスト膜53の平面図である。ITO等からなる透明導電膜を、レジスト膜53をエッチングマスクとしてエッチングすることにより透明電極が形成される。
図2において、レジストが塗布されている領域にドットパターンが付されている。
図1に示した膜形成装置は、基板50にレジスト膜53を形成する。
【0016】
レジスト膜53は、行列状に配置された複数のパッド部51、及び複数のパッド部51を列方向に接続する接続部52を含む。行方向に隣り合う2つのパッド部51を隔てる間隔Gが、パターンの最小寸法となる。
【0017】
図3を参照して、
図1に示した膜形成装置を用いて膜を形成する方法について説明する。
【0018】
図3は、本実施例による膜形成方法のフローチャートである。まず、ステップS1において、膜を形成すべき基板50(
図1)をステージ23の支持面の上に置き、真空チャック等により基板50を固定する。ステップS2において、制御装置30が、基板50の位置合わせが必要か否かを判定する。位置合わせが必要であるか否かは、基板50の種類によって決まっており、位置合わせ要否の情報は記憶装置31(
図1)に記憶されている。
【0019】
例えば、基板50に既に何らかのパターンが形成されている場合には、既に形成されているパターンと新たに形成する膜との位置合わせが必要になる。この場合、基板50に形成されているアライメントマークに対して位置決めして新たな膜を形成する。基板50に何らパターンが形成されていない場合、例えば、基板50の全面にパターニングすべき膜が形成されている場合には、位置合わせは不要である。この場合、ステージ23に対して定義されたステージ座標を基準として新たな膜を形成する。
【0020】
基板50の位置合わせが必要である場合には、ステップS3において、ステージ23の支持面内における基板50の位置を検出する。具体的には、基板50に設けられているアライメントマークを撮像装置27(
図1)で撮像し、画像解析を行うことにより、基板50の位置を検出する。
【0021】
基板50の位置を検出した後、ステップS4において、膜を形成すべき領域の内部に評価パターンを形成する。基板50の位置合わせを行う必要がない場合には、ステップS3を実行することなくステップS4を実行する。
【0022】
図4を参照して、ステップS4の処理について説明する。
図4は、形成すべきレジスト膜53と評価パターン55との位置関係を示す平面図である。制御装置30が、形成すべきレジスト膜53のパターンデータに基づいて、評価パターン55を形成すべき少なくとも1つの位置を決定する。評価パターン55は、パターンデータに基づいてレジスト膜53を形成するときに膜材料を塗布すべき領域の内部に配置される。例えば、1つの評価パターン55は、相互に離間した複数のドットパターンで構成される。
図4では、評価パターン55が、1つのパッド部51の内部に配置された5個のドットパターンで構成される例を示している。評価パターン55に含まれる1つのドットパターンは、1つのノズル孔から吐出された液滴により形成される大きさである。
【0023】
制御装置30は、評価パターン55を形成すべき位置を決定した後、インクジェットヘッド26及び移動機構21(
図1)を制御して、基板50に評価パターン55を形成する。
【0024】
評価パターン55を形成した後、制御装置30は、ステップS5(
図3)において、形成された評価パターン55を撮像装置27の撮像範囲内に移動させ、評価パターン55を撮像する。その後、ステップS6において、評価パターン55の画像に基づいて基板50の表面状態の良否を判定する。制御装置30は表面状態の良否の判定結果に基づいて異なる処理を実行する。
【0025】
図5A〜
図5Dを参照して基板50の表面状態の良否を判定する方法について説明する。基板50の表面に着弾した液滴は、表面状態に応じて面内方向に広がったり、滲みが生じたり、歪んだりする。本実施例では、形成された評価パターン55の大きさ、滲みの幅、形状の歪み等に基づいて表面状態の良否を判定する。例えば、形成された評価パターン55の大きさ、滲みの幅、形状の歪み等が予め定義された許容範囲に納まっている場合に、表面状態を「良」と判定し、許容範囲から外れている場合に、表面状態を「不良」と判定する。
【0026】
図5Aは、1つの液滴により形成される正常なドットパターン56の平面図を示す。正常なドットパターン56の平面形状はほぼ真円である。
【0027】
図5Bは、評価パターン55(
図4)の1つのドットパターン57が正常なドットパターン56より大きい例の平面図を示す。大きなドットパターン57の大きさが許容範囲から外れている場合、制御装置30は基板50の表面状態が不良であると判定する。大きなドットパターン57の大きさは、例えば相互に直交する2方向の直径で代表させることができる。
【0028】
図5Cは、評価パターン55(
図4)の1つのドットパターン58に滲み58bが生じている例の平面図を示す。ドットパターン58の本体58aの周囲に滲み58bが観察される。例えば、滲み58bの幅(径方向の寸法)が許容範囲の上限を超えているとき、制御装置30は基板50の表面状態が不良であると判定する。
【0029】
図5Dは、評価パターン55(
図4)の1つのドットパターン59の平面形状が歪んだ例の平面図を示す。例えば、ドットパターン59は、正常なドットパターン56よりも一方向(
図5Dにおいて左右方向)に広がっているが、それに直交する方向(
図5Dにおいて上下方向)には縮んでいる。歪んだドットパターン59の歪み量が許容範囲から外れているとき、制御装置30は、基板50の表面状態が不良であると判定する。歪み量を表す指標として、長径と短径との比等を採用することができる。
【0030】
上述の許容範囲は、例えば
図2に示したパターンの最小寸法に相当する間隔Gの両側のレジスト膜53が接触しないという条件を満たすように設定することが好ましい。一例として、形成されたドットパターン57(
図5B)、ドットパターン58(
図5C)、及びドットパターン59(
図5D)が正常なドットパターン56の外周線からはみ出している部分のはみ出し量の上限値が、パターンの最小寸法の1/2未満になるように許容範囲を設定することができる。
【0031】
その他に、予め表面状態が良好であるとわかっている複数の基板にドットパターンを形成して、その寸法のばらつきに基づいて許容範囲を設定してもよい。例えば、形成されたドットパターンの寸法の平均値に、標準偏差の3倍を加算した寸法を許容範囲の上限値としてもよい。
【0032】
制御装置30は、基板50の表面状態の良否の判定において、評価パターン55の大きさが許容範囲に納まっているか否か、評価パターン55の周囲の滲みの幅が許容範囲に納まっているか否か、及び平面形状の歪みが許容範囲に納まっているか否かの少なくとも1つの判定条件に基づいて良否の判定を行う。
【0033】
制御装置30は、基板50の表面状態を「良」と判定した場合、ステップS7において、基板50にパターンデータに基づいてレジスト膜53(
図2)を形成する。レジスト膜53を形成した後、ステップS9において基板50を膜形成装置から搬出する。
【0034】
制御装置30は、基板50の表面状態を「不良」と判定した場合、ステップS8において、表面状態が不良であることを示す情報を出力装置36から出力させる。この情報の出力の態様として、例えば音による出力、画像による出力、発光による出力等を採用することができる。
【0035】
次に、
図6A〜
図6Dを参照して、基板50に膜を形成して基板50の透明電極膜をエッチングする方法について説明する。
図6A〜
図6Dは、
図4の一点鎖線6−6の位置における断面図に相当する。
【0036】
図6Aは、基板50に評価パターン55を形成した状態(
図3のステップS4)の基板50の断面図である。基板50は、ガラス基板50a、及びその表面に形成されたITOからなる透明導電膜50bを含む。透明導電膜50bの上にレジスト材料からなる評価パターン55が形成されている。評価パターン55は孤立した5個のドットパターンで構成される。各ドットパターンは、インクジェットヘッド26の1つのノズル孔から吐出された1つの液滴により形成される。
図6Aにおいて、1つの液滴の吐出に対応して1本の矢印が示されている。
【0037】
図6Bは、基板50にレジスト膜53を形成した状態(
図3のステップS7)の基板50の断面図である。制御装置30が、形成すべきレジスト膜の形状を定義するパターンデータに基づいて移動機構21及びインクジェットヘッド26を制御することにより、レジスト膜53を形成する。
図6Bにおいて、1つの液滴の吐出に対応して1本の矢印が示されている。評価パターン55の各ドットパターンが形成されている位置に、重ねて液滴が塗布されるため、レジスト膜53の表面に評価パターン55の形状を反映した盛り上がり54が形成されている。
【0038】
図6Cに示すように、レジスト膜53をエッチングマスクとして用いて透明導電膜50bをエッチング(パターニング)する。レジスト膜53が形成されていない領域の透明導電膜50bがエッチングして除去される。
【0039】
図6Dに示すように、エッチングマスクとして用いたレジスト膜53を除去する。レジスト膜53(
図6C)が形成されていた領域に透明導電膜50bが残っている。
【0040】
次に、
図7A及び
図7Bを参照して、上記実施例の優れた効果について説明する。
【0041】
図7A及び
図7Bは、形成すべきレジスト膜53の一部分を拡大した平面図である。
図7A及び
図7Bにおいて、形成すべきレジスト膜53の目標とする形状53aを破線で示す。
【0042】
図7Aは、基板50の表面の濡れ性が標準の値より高い場合に形成されたレジスト膜53の平面図を示す。形成されたレジスト膜53が目標とする形状53aよりも広がっている。膜材料の面内方向への広がりが許容範囲を超えると、形成されたレジスト膜53の行方向に隣り合う2つのパッド部51が相互に接触してしまう。
【0043】
図7Bは、基板50の表面が滲みの生じやすい状態である場合に形成されたレジスト膜53の平面図を示す。目標とする形状53aの周囲に滲み53bが発生している。行方向に隣り合う2つのパッド部51が滲み部分53bを介して連続してしまっている。
【0044】
図7A及び
図7Bに示した状態で透明導電膜50b(
図6C)をエッチングすると、透明導電膜50bの短絡故障が発生する可能性が高い。
【0045】
本実施例では、レジスト膜53を形成する前に基板50の表面状態の良否を検査し、濡れ性が高すぎる状態、滲みが生じやすい状態、膜形状に歪みが生じやすい状態を検出する。ステージ23に支持された基板50の表面状態が不良である場合には、膜形成装置は、継続して膜形成を行うことなく、表面状態が不良であることをオペレータに通知する(
図3のステップS8)。オペレータは、この通知に気付くと、表面状態が不良の基板50を膜形成装置から搬出し、表面の洗浄等による表面改質処理を行うことができる。これにより、製品の歩留まりの低下を抑制することができる。
【0046】
本実施例では、
図6Bに示したように、レジスト膜53の表面に評価パターン55(
図6A)の形状を反映した盛り上がり54が形成される。ただし、透明導電膜50bがエッチングされた後このレジスト膜53が除去される。また、評価パターン55は、レジスト膜53を形成すべき領域の内部に配置されるためレジスト膜53の平面形状に影響を及ぼさない。従って、評価パターン55は、エッチング後の透明導電膜50b(
図6D)の形状に影響を及ぼさない。
【0047】
次に、本実施例の種々の変形例について説明する。
【0048】
上記実施例では、評価パターン55(
図4)として孤立した複数のドットパターンを用いたが、その他のパターンを用いてもよい。例えば、レジスト膜53の最小寸法となる間隔Gと同一の間隔を持つ2本の帯状パターンを評価パターン55として用いてもよい。形成された帯状パターンの間隔が許容範囲に収まっているか否かによって基板50の表面状態の良否を判定してもよい。
【0049】
上記実施例では、評価パターン55(
図4)を基板50の少なくとも1箇所に形成した。本願の発明者による評価実験によると、1枚の基板50でも、表面内の位置によって表面状態が異なることがわかった。例えば、基板50の周辺部よりも内部の方が高い濡れ性を示す傾向にある場合がある。
【0050】
1枚の基板50の表面内における表面状態のばらつきを考慮して、表面状態の良否の判定精度を高めるために、評価パターン55(
図4)を基板50の表面内に一様に分布させることが好ましい。例えば、基板50の表面を行方向及び列方向に等間隔に区分し、1つの区画内に1つの評価パターン55を形成するようにするとよい。
【0051】
上記実施例では、インクジェットヘッド26を基台20に対して静止させ、ステージ23を移動させることにより、レジスト膜53を形成したが、その反対に、ステージ23を基台20に対して静止させ、インクジェットヘッド26を移動させてもよい。すなわち、インクジェットヘッド26及び基板50の一方を他方に対して移動させればよい。
【0052】
次に、
図8A及び
図8Bを参照して他の実施例による膜形成方法について説明する。以下、
図1〜
図7に示した実施例との相違点について説明し、共通の構成については説明を省略する。
【0053】
図8Aは、基板50に評価パターン55を形成した状態(
図3のステップS4)の基板50の断面図である。この工程は、
図6Aに示した実施例の工程と同一である。
【0054】
図8Bは、基板50にレジスト膜53を形成した状態(
図3のステップS7)の基板50の断面図である。
図8Bに示した矢印は、レジスト膜53の液滴を吐出する箇所に対応して表示されている。本実施例においては、制御装置30(
図1)は、形成すべきレジスト膜53のパターンデータの画素のうち評価パターンを定義する画素を塗布対象から除外して修正パターンデータを作成する。この修正パターンデータに基づいてインクジェットヘッド26を制御することによりレジスト膜53を形成する。
図8Bに矢印で示したように、評価パターン55(
図8A)のドットパターンが形成されている箇所には液滴を重ねて塗布しない。
【0055】
本実施例においては、評価パターン55(
図8A)を形成した画素に、レジスト膜53を形成する際に液滴を重ね塗りしない。このため、
図6Bに示した実施例で現れていた盛り上がり54の発生を防止することができる。
【0056】
図1〜
図7に示した実施例のように、最終的にレジスト膜53を除去する場合には、盛り上がり54が形成されていても問題はないが、最終製品に残留する膜を形成する場合には、
図8A及び
図8Bに示した実施例を適用することが好ましい。
【0057】
上述の各実施例は例示であり、異なる実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。複数の実施例の同様の構成による同様の作用効果については実施例ごとには逐次言及しない。さらに、本発明は上述の実施例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。