特許第6689562号(P6689562)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6689562
(24)【登録日】2020年4月10日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】高屈折性薄板ガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/066 20060101AFI20200421BHJP
   C03C 3/068 20060101ALI20200421BHJP
   C03C 3/093 20060101ALI20200421BHJP
   C03C 3/095 20060101ALI20200421BHJP
   C03C 3/097 20060101ALI20200421BHJP
   G02B 1/00 20060101ALI20200421BHJP
   H01L 51/44 20060101ALI20200421BHJP
   H01L 31/0392 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
   C03C3/066
   C03C3/068
   C03C3/093
   C03C3/095
   C03C3/097
   G02B1/00
   H01L31/04 132
   H01L31/04 284
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-55045(P2014-55045)
(22)【出願日】2014年3月18日
(65)【公開番号】特開2014-196238(P2014-196238A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2017年2月6日
(31)【優先権主張番号】10 2013 102 848.9
(32)【優先日】2013年3月20日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505458670
【氏名又は名称】ショット・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(72)【発明者】
【氏名】カール・メネマン
(72)【発明者】
【氏名】ウベ・コルベルグ
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー・ベゲナー
(72)【発明者】
【氏名】モニカ・ギルケ
(72)【発明者】
【氏名】ウテ・ベルフェル
(72)【発明者】
【氏名】ヨルグ・フェヒナー
【審査官】 吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−060640(JP,A)
【文献】 特開平11−043344(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/055860(WO,A2)
【文献】 国際公開第2012/157695(WO,A1)
【文献】 特開2011−213568(JP,A)
【文献】 特開2013−047167(JP,A)
【文献】 特開2012−221591(JP,A)
【文献】 米国特許第05300467(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0114904(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0144505(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 3/062 − 3/068
C03C 3/076 − 3/097
G02B 1/00
H01L 31/0392
H01L 51/42 − 51/56
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分をmol%で含む、1.60より高い屈折率を有する薄板ガラスであって、物質BaO対ZnOの量のモル比は、少なくとも0.8であり、1.2より低く、ZnOとBaOの合計量は、少なくとも25mol%である、薄板ガラス。
【表1】
【請求項2】
請求項1に記載の薄板ガラスであって、少なくとも6mol%の含有量のB23を有する薄板ガラス。
【請求項3】
求項1または2に記載の薄板ガラスであって、BaO、SrO、CaO、MgOおよびZnOの含有量の合計が、少なくとも30mol%かつ最大で50mol%である薄板ガラス。
【請求項4】
求項1〜3何れか1項に記載の薄板ガラスであって、TiO2、ZrO2、Y23、La23およびNb25の含有量の合計が、少なくとも2.5mol%かつ最大で12mol%である薄板ガラス。
【請求項5】
求項1〜4何れか1項に記載の薄板ガラスであって、下記成分をmol%で含む薄板ガラス。
【表2】
【請求項6】
求項1〜5何れか1項に記載の薄板ガラスであって、少なくとも1つの火炎研磨された表面を有する薄板ガラス。
【請求項7】
求項1〜6何れか1項に記載の薄板ガラスおよび少なくとも1つの半導体層を含む、層複合体アセンブリ、特にOLED。
【請求項8】
請求項1〜6何れか1項に記載の薄板ガラスの製造のための方法であって、
a.下記成分をmol%で含むガラス混合物を溶融する工程、
【表3】
ここで、ZnOとBaOの合計量は、少なくとも25mol%である
b.ガラス溶融物を加工して薄板ガラスにする工程
を含む方法。
【請求項9】
サブストレートまたはスーパーストレートとしての薄板ガラスの形態での請求項1〜6何れか1項に記載のガラスの使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、高い屈折率(nd)を有する薄板ガラス、これらの薄板ガラスを含む層複合体アセンブリ、薄板ガラスの製造のための方法、およびそれらの使用に関する。
【0002】
d=1.5より高くて最大nd=1.7の屈折率を有するガラスがよく知られている。しかしながら、工業用ガラスの分野では、これらの値は、多量の酸化鉛の添加により実現され、これは生態学的観点からは非常に疑問で経済的な大規模プロセスの場合には有害でもある。光および画像のガイド用に使用され、したがって古典的な応用分野(とりわけ、イメージング、顕微鏡法、医療技術、デジタル式投影、フォトリソグラフィ、光通信工学、自動車部門における光学部品/照明)の要件を満たす、より高い屈折率の領域に光学的位置(optical positions)がある公知の古典的な光学ガラスは通常、それらから製造されるそれらの製品(レンズ、プリズム、繊維がとりわけ)の幾何形状のため、バルク材料として製造される。そのため、光学ガラスの製造プロセスの標準的なフォーマットは、連続式棒材製造による棒材の切片、ファイバーコア型ガラスロッドならびに光学ブロックである。最小の幾何学的寸法に関しては、通常、20mmの厚さ(棒材の切片)または直径(ファイバーコア型ガラスロッド)が、経済的および実用的観点において有意義と考えられる最低寸法であり、40mm以上の厚さが望ましく、光学ブロックの場合はこれらの値は約150mmから始まる。
【0003】
工業用ガラス(熱間成形の工業用プロセスに従って製造)は、典型的には、約1.50の屈折率を有する。1.6より高い屈折率を有するガラスは通常、熱間成形の工業用プロセスに適しておらず、その理由は、大抵はそれらが「急勾配の」粘度曲線(温度に伴う粘度の大きな変化)を有し、かつ大抵は結晶化への高い傾向を有するためである。棒材の製造の場合、結晶化への傾向は問題ではなく、その理由は、ガラス溶融物が、結晶化が起きないように短時間で冷却されるためである。これに関連して、温度の低下に伴う粘度の迅速な増大は、実際に利点である。
【0004】
正確には、古典的な光学ガラスに関するこれらの特性は、工業用の標準的なガラスの特性とは異なっており、その物理化学的特性プロファイルは、工業用ガラス、例えばフラットガラス、薄板ガラスおよび管状ガラスの製造用アグリゲート(manufacturing aggregates)の技術パラメータ用に特別に調整され、これは、光学ガラスの製造用アグリゲートに比較して顕著により大きい。
【0005】
工業用ガラスは通常「長い」粘度プロファイルを有し、これは、それらの粘度が温度の変化に伴ってあまり変化しないことを意味する。これが、各単一プロセスのより長い時間および全体的に上昇したプロセス温度の理由であり、これは、大型の工業用アグリゲートの場合、収益性への著しい悪影響がより少なくなる。さらに、流動条件およびアグリゲートのサイズのため、アグリゲートをなす材料の顕著に延長された寿命も同様にある。これは、結晶化への高い傾向を有するガラスに関する、非常に決定的な点である。長いガラスは、連続的な大型アグリゲートにおいて有利であり、その理由は、これらのガラスが、より大きな温度範囲で加工され得るためである。そのため、方法が、まだ熱いガラスの可能な限り速い加工に対して調節されることは必要でない。
【0006】
フラットガラスの製造のための工業用の標準的なプロセス(例えばドロー法、オーバーフローフュージョン、ダウンドロー、ロール法)を用いて古典的な光学材料を製造しようとするであろう場合、光学ガラスの化学的組成が変更されなければならず、通常、所望の光学的特性を光学ガラスに付与する成分のその含有量を低減しなければならない。このような方策は、例えば、TiO2、ZrO2、Nb25、BaO、CaO、ZnO、SrOまたはLa23の比率の低下であろう。これは、実際に、結晶化へのより少ない感受性を有するより長いガラスをもたらすが、屈折率および分散特性の著しい損失もまたもたらす。
【0007】
さらなる問題は、経済的な理由から現時点で好まれているフラットガラス/薄板ガラスプロセスが、加工しようとするガラスに関するある種の化学的要求を伴うことであり、これは古典的な光学ガラスによって満たされ得ない。例えば、フロート法プロセスでは、酸化還元反応に対して感受性のある成分は、ガラス中に存在することが許されない。したがって、例えば、光学的な標準の成分、例えば鉛、ビスマス、タングステンの酸化物ならびに古典的な多価清澄剤(ヒ素)を使用することは許されず、その実際の作用は、正確には、酸化還元平衡の転換である。
【0008】
そのため、全体では相容れない様式で、これら2つの古典的なグループの材料、すなわち光学および工業用ガラスは、それらの加工性に関して異なる。
【0009】
高い屈折率を有する薄板ガラスに関しては、古典的な応用分野の他にも数多くの用途がある。当然ながら、光学ガラスの棒材を再加工することにより、このような薄板ガラスを製造する可能性がある。しかし、このような棒材切片の切断および研磨の工程は極めて高価であるし、さらに、ガラスに非常に強力に圧力を加えてしまうことは明かである。したがって、大きな寸法を有する非常に小さな厚さのガラスは、実現され得ない。薄板ガラスが機械的に研磨される場合は、表面特性が最適でない。
【0010】
WO 2012/055860 A2は、1.6より高い屈折率を有する光学工業用ハイブリッドガラスを含む、透明な層複合体アセンブリに関する。しかし、そこで記述されたハイブリッドガラスは、酸化亜鉛を含有しない。理由は、酸化亜鉛が熱間成形工程中に結晶化をもたらすであろうと想定されていたからである。しかし、実際は、適切な量の酸化バリウムと組み合わせた酸化亜鉛は、結晶化を効果的に阻止することができ、したがって、経済的な製造を可能にし得る。
【0011】
GB 2,447,637 Bは、照明またはディスプレイ目的に使用されてもよい、OLED層複合体アセンブリに関する。しかし、この場合、約1.5にすぎない屈折率を有するサブストレートガラスが使用される。それに関連した欠点は、反射防止層によって弱めなければならない。
【0012】
US 2012/0114904 A1は、OLEDに使用されていてもよい、酸化鉄を含有するフラットガラスに関する。このガラスでは、BaO対ZnOの特別な比が満たされておらず、その理由は、ガラスが、ZnOよりはるかに多いBaOを含有するためである。異なる組成のため、これらのガラスは、本発明による薄板ガラスに比較して、はるかにより高い溶融温度、およびさらには熱間加工温度を有する。結果として、各溶融物は、使用されている耐火材を顕著により強力に侵食する。さらに、最終製品における筐体の不在および最終製品の幾何学的均一性が損なわれる。
【0013】
US 2012/194064 A1は、OLED用の拡散層を記述している。そこで使用されるガラスは、多量のBi23と、より少ないSiO2およびBaOとを含有する。同じことが、US 2011/287264 A1にも当てはまる。
【0014】
特に、OLEDまたは光電池モジュールにおけるサブストレートまたはスーパーストレートとしての使用に関しては、全反射がフラットガラスと隣接層との間で起きないまたはより少なくしか起きないことは重要である。使用されるガラスの屈折率は可能な限り高くすべきであり、その理由は、層複合体アセンブリにおける多くの用途では、ガラスは、高い屈折率を有する層、例えば例としてはOLEDにおけるITOに隣接するためである。OLEDにおいて生じた光が出て行く場合は、ITO層からの光が、ガラス製のスーパーストレートに入りこまなければならない。ITO層とガラスとの間の屈折率の差異がより大きいほど、界面での全反射がより明瞭になる。したがって、ここで経済的に製造された高い屈折率を有する薄板ガラスが有利に使用され得る。
【0015】
インライン式製造プロセスにより加工できるのと同時に古典的な光学ガラスの光学的特性を有する薄板ガラスを提供することが、本発明の目的である。言い換えると、ガラスは、工業用ガラスの加工性と、光学ガラスの光学的特性とを兼ね備えるべきである。
【0016】
この目的は、特許請求の範囲の主題により解決される。
【0017】
本発明の薄板ガラスは、非常に透明で、結晶化耐性、耐薬品性、そして高屈折性である。それらの粘度/温度挙動は、インライン式フラットガラス方法の製造プロセスに対して調節される。
【0018】
本発明のガラスは、フラットガラス、特に、好ましくは2mm未満の薄い厚さを有するフラットガラス(以後、「薄板ガラス」)である。本発明による薄板ガラスは、それらの厚さだけでなく、それらの表面特性も古典的な光学ガラスとは異なる。これは、本薄板ガラスを得ることができる、本薄板ガラスの製造方法の結果である。2mm以下の厚さを有する古典的な光学ガラスを製造する実験では、ある種の問題が、選択された製造プロセスに応じて発生するであろう。上述したように、大規模インライン式製造方法におけるガラスの短さおよび結晶化へのそれらの傾向のため、満足でないであろう結果が、実現されるであろう。しかし、他方では、ガラスが棒材切片から切断および研磨により製造されるであろう場合、これは、高コストをもたらすであろうし、同様に、このようなガラスの要件をほとんど満たさない表面特性もまたもたらすであろう。本発明の薄板ガラスは、>1.60の、好ましくは>1.65でさえある屈折率を有する。
【0019】
本発明の薄板ガラスは、それらの組成のため、インライン式製造方法により製造することができる。本発明のインライン式製造方法は、特にダウンドロー、オーバーフローフュージョン、フロート法およびロール法である。ダウンドローおよびオーバーフローフュージョンが特に好ましい。これらの製造方法により、特定の表面特性を有する薄板ガラスが製造され得る。薄板ガラスは、それらを得ることができる製造方法のため、1つ以上の、特に2つの火炎研磨された表面を含む。火炎研磨された表面は非常に平滑であり、すなわち、それらの粗さが非常に低い。火炎研磨の場合、機械的研磨とは対照的に、表面は被削されないが、研磨しようとする材料は、それが流動して結果として平滑になるような高温まで加熱される。したがって、火炎研磨による平滑な表面の製造のためのコストは、非常に平滑な機械的に研磨された表面の製造のためのコストよりはるかに低い。
【0020】
本発明によるインライン式製造方法により、1つ以上の火炎研磨された表面を有する薄板ガラスが得られる。製造のためにダウンドローまたはオーバーフローフュージョン法が使用される場合は、得られるガラスは、2つの火炎研磨された表面を有しさえする。
【0021】
本発明による薄板ガラスに言及するとき、用語「表面」は、上側および/または下側の側面を、したがって、残りの面に比較して最大である両面を意味する。
【0022】
火炎研磨された表面は、特に低い粗さにより特徴づけられる。火炎研磨された表面の粗さは、機械的に研磨された表面の粗さより低い。
【0023】
本発明の薄板ガラスの火炎研磨された1または複数の表面は、好ましくは、5nm以下、好ましくは3nm以下、特に好ましくは1nm以下の二乗平均平方根粗さ(RqまたはRMSも)を有する。薄板ガラスの粗さRtの深さは、好ましくは6nm以下、さらに好ましくは4nm以下、特に好ましくは2nm以下である。粗さの深さは、DIN EN ISO 4287に従って測定される。
【0024】
機械的に研磨された表面の場合、粗さ値がより悪い。さらに、機械的に研磨された表面の場合、原子間力顕微鏡(AFM)の助けにより、研磨痕が観察され得る。しかも、AFMの助けによってもまた、機械式研磨剤、例えばダイヤモンド粉末、酸化鉄および/またはCeO2の残渣が観察され得る。機械的に研磨された表面は研磨工程後に清浄化されなければならないため、ガラスの表面におけるある種のイオンの浸出が起きる。ある種のイオンのこの消耗は、二次イオン質量分析法(ToF−SIMS)の助けにより検出することができる。このようなイオンは、例えばCa、Zn、Baおよびアルカリ金属である。
【0025】
本発明の薄板ガラスは、2mm未満、好ましくは最大でも0.8mm、より好ましくは最大でも0.6mmの厚さを有する。特に好ましくは、厚さは、最大でも0.35mm、特に最大でも0.2mmである。このような薄板ガラスは、例えば可撓性OLED層複合体アセンブリを可能にするほど十分に弾性である。十分な安定性を保証するために、厚さは、好ましくは、少なくとも0.02mmにすべきである。
【0026】
本発明の薄板ガラスがインライン式製造方法により製造され得るためには、それらの結晶化特性に関して、本薄板ガラスは、ある種のパラメータを満たすべきである。古典的な光学ガラスの場合、これらのパラメータはあまり重要ではなく、その理由は通常、光学ガラスが非常に迅速に冷却されるためである。したがって、光学ガラスは、失透上限(OEG:upper devitrification limit)より高い温度から、失透下限(UEG:lower devitrification limit)より低い温度まで迅速に冷却される。
【0027】
しかし、インライン式製造方法による加工中、ガラスは、長期の時間の間、比較的高い温度にある。したがって、本発明による薄板ガラスは、それらが60分の時間の期間の間800℃〜1050℃(OEG/60)の温度に曝されたときに、それらがいかなる結晶も示しさえせず、または、可視結晶を示さないような、結晶化に対する抵抗性を有すべきである。この試験は、Pt支持金属シート方法に従って、較正された勾配炉内で実施される。本発明によれば、可視結晶は、10μmより大きい直径を有する結晶である。
【0028】
本発明の薄板ガラスは、比較的少ない量のSiO2を含有する。一方では、SiO2は、粘度曲線の急勾配を低減するのでガラスにおける重要な成分である。しかし、他方では、SiO2の量が多い場合、比較的より少ない量の、屈折率を効果的に増大させるような成分のみが添加され得る。したがって、本発明の薄板ガラスは、最大60mol%、好ましくは最大56mol%にすぎない、さらに好ましくは最大52mol%、特に好ましくは最大50mol%の量のSiO2を含有するだけである。しかし、本発明の薄板ガラスはまた、化学的安定性および粘度曲線の急勾配に関する、ある種の要件も満たさなければならず、その結果、少なくとも30mol%、好ましくは少なくとも32mol%、さらに好ましくは少なくとも38mol%、特に好ましくは少なくとも43mol%のSiO2が薄板ガラスに含有される。
【0029】
本発明の薄板ガラスは、好ましくは少なくとも6mol%かつ最大で20mol%の割合で、B23を含有していてもよい。好ましい態様では、この成分の量は、最大で17mol%、さらに好ましくは最大で15mol%、特に好ましくは最大で8mol%である。好ましいガラスにおけるB23の割合が低すぎる場合は、ガラスの粘度が高すぎる。しかし、B23の量が多すぎる場合は、必要とされる耐薬品性が実現され得ない。これは、例えば半導体プロセス(例えば精製)において、ガラスの加工性に関する決定的な点である。さらに、ガラスにおけるB23の高い割合は、耐火材を有するガラスの汚染をその製造中に増大させる。これは、不均一性、散乱、不均質核を、次いで結晶化をもたらす。
【0030】
23は(SiO2と同様に)ガラス形成剤であり、SiO2およびB23の含有量が、SiO2とB23との合計が40〜65mol%の範囲になるように選択される場合、有利である。45〜60mol%の範囲の、特に好ましくは48〜55mol%の範囲の合計であるのがさらに好ましい。この量がこれらの好ましい値を超過する場合は、低すぎる屈折率を有するガラスが得られる。この量がこれらの値未満に低下した場合は、これは、結晶化の傾向があり、不良な耐薬品性を有するであろうガラスをもたらすことになろう。
【0031】
所望の屈折率および必要な結晶化安定性に関する重要な基準は、本発明による薄板ガラスにおける、成分SiO2とBaOとのバランスがとれた比である。SiO2対BaOのこの比は、物質の量のモル比であり、好ましくは少なくとも1.5かつ最大でも3.8、さらに好ましくは少なくとも1.8かつ最大でも3.0、特に好ましくは少なくとも2.5である。
【0032】
成分BaOは、本発明による薄板ガラスの本質的な構成要素である。BaOは、高い屈折率を支援する。この目的のために、BaOは、本発明による薄板ガラスに、少なくとも10mol%かつ最大でも25mol%の比率で含有される。好ましくは、BaOの含有量は、少なくとも12重量%かつより好ましくは少なくとも15mol%である。しかし、高すぎる割合は、ガラスの減少された耐薬品性および結晶化への増大された傾向をもたらすことがあり、これは、本発明による好ましい製造方法が使用される場合、絶対に回避しなければならない。したがって、BaOの含有量は、好ましくは、最大でも22mol%、さらに好ましくは最大でも19mol%に限定される。
【0033】
本発明のガラスは、少なくとも10mol%で最大でも25mol%の含有量のZnOを含む。少なくとも12mol%、より好ましくは少なくとも14mol%、特に好ましくは少なくとも16mol%というZnOの最低含有量がさらに好ましい。ZnOの最低含有量は、高い屈折率を得るために必要である。含有量は高すぎるべきでなく、その理由は、その場合ガラスが「短く」なりすぎ、工業用のHFGプロセスによりもはや製造できなくなってしまうためである。したがって、ZnOの含有量は、21mol%、特に好ましくは19mol%の値を超過すべきでない。
【0034】
良好な粘度挙動および良好な結晶化安定性の他にも非常に良好な屈折率の調節のためには、ZnOを、SiO2に対して、ZnO対SiO2の物質の量のモル比が少なくとも0.1かつ最大でも0.8、さらに好ましくは少なくとも0.25かつ最大でも0.65になるような量で使用するのが有意義なことがわかった。特に好ましい態様では、この比は最大でも0.5である。
【0035】
最適な屈折率は、屈折率を増大させる成分ZnOおよびBaOが薄板ガラスに好ましくは少なくとも25mol%、より好ましくは少なくとも30mol%の合計量で使用される場合に実現される。上述したように、SiO2の含有量を犠牲にして多すぎかつ不可避的になっているこれらの成分の含有量は、低減された結晶化安定性をもたらすリスクがある。したがって、成分ZnOとBaOとの合計量は、好ましくは、最大でも40mol%、特に最大でも35mol%に限定される。
【0036】
結晶化、粘度および屈折率の特性に関する最適な結果が、屈折率を増大させる成分の混合物により実現されており、ここで、物質BaO対ZnOの量のモル比は、1.5未満、好ましくは1.2未満、ならびに特に好ましくは1.05未満だった。物質の量のこのモル比は、好ましくは少なくとも0.5、特に好ましくは少なくとも0.8、または少なくとも0.9にさえすべきである。明らかに、この比の順守は、特に、インライン式製造プロセスを用いた本発明によるガラスの生産効率に寄与する。
【0037】
Al23は、ガラスの耐薬品性を増大させる。Al23は、本発明による薄板ガラスに、好ましくは最大6mol%、さらに好ましくは最大4mol%、特に好ましくは最大<1mol%の量で含有される。Al23の割合が高すぎる場合は、ガラスの溶融温度が上昇して、増大されたエネルギー消費および減少されたアグリゲート寿命をもたらす。したがって、本発明の態様では、本発明による薄板ガラスは、Al23を含んでいない。
【0038】
本発明による薄板ガラスは、Li2Oを0〜2mol%にすぎない含有量で含むことが好ましい。この成分は、粘度特性の正確な調節のために使用されてもよい。B23と組み合わせると、この成分は、製造施設を強力に侵食する恐れがあり、これは、混濁、不均質核の形成、および、アグリゲートの短い寿命をもたらす。さらに、Li2Oは、増大されたイオン移動度をもたらし、さらに、それは、結晶化へのガラスの傾向を増大させる。さらに、ガラスの耐薬品性が低下する。したがって、好ましい薄板ガラスは、Li2Oを含んでいない。
【0039】
本発明による薄板ガラスは、K2Oを含んでいてもよい。K2Oは、粘度の正確な調節のために使用される。好ましくは、K2Oは、ガラスに、0〜8mol%、特に最大4mol%、または最大1mol%にすぎない量で含有される。Li2Oの場合と同様にガラスにおける高すぎる比率は、増大されたイオン移動度および低い耐薬品性をもたらし、その結果、好ましい薄板ガラスは全くK2Oを含有しない。
【0040】
本発明による薄板ガラスは、Na2Oを含有していてもよい。Na2Oは、粘度の正確な調節のために使用される。好ましくは、Na2Oは、ガラスに、0〜10mol%、特に最大4mol%、または最大1mol%にすぎない量で含有される。Li2Oの場合と同様に、ガラスにおける高すぎる割合は増大されたイオン移動度および低い耐薬品性をもたらす。したがって、好ましい態様は、Na2Oを含んでいない。
【0041】
上記の段落からは、本発明による薄板ガラスにおけるアルカリ金属酸化物の含有量は、その加工中での浸出作用を回避するように限定すべきであることを知ることができる。これは、なぜアルカリ金属酸化物Li2O、Na2OおよびK2Oの割合が、好ましくは4mol%以下、さらに好ましくは2mol%以下の含有量に限定されるかの理由である。したがって、本発明による薄板ガラスは、好ましくは、不可避不純物により原材料中に導入され得るアルカリ金属酸化物を含まない、または低い割合でしか含まない。アルカリ金属酸化物は、ガラスの耐薬品性を低下させる。
【0042】
薄板ガラスのいくつかの態様は、MgOを含む。好ましくは、その含有量は最大3mol%、さらに好ましくは最大2mol%である。MgOは、ガラスの粘度の調節のために使用される。MgOの量が多すぎる場合は、結晶化へのガラスの傾向が増大する。したがって、好ましい態様は、MgOを含んでいない。
【0043】
薄板ガラスは、SrOを含んでいてもよい。その場合、SrOは、ガラスの粘度を調節するために、最大12mol%または最大11mol%の量で含有されるが、好ましい態様では、含有量は、10mol%以下または8mol%以下である。SrOの量が多すぎる場合は、これは、短すぎるガラスをもたらす。
【0044】
本発明の薄板ガラスは、粘度の温度依存性を調節するためにCaOを含有していてもよい。この目的のために、CaOが最大10mol%の量で使用され、ここで、好ましい態様は最大8mol%を含む。CaOの量が多すぎる場合は、これは、短すぎるガラスをもたらす。
【0045】
ガラスの長さの最適な調節のためには、酸化物BaO、SrO、CaO、MgOおよびZnOを合わせた合計の割合は、好ましくは30〜50mol%、さらに好ましくは35〜46mol%、最も好ましくは39〜44mol%の値にすべきである。
【0046】
薄板ガラスの屈折率を増大させるために、TiO2および/またはZrO2が使用されていてもよい。このような場合、TiO2の含有量は、好ましくは0〜9mol%、特に好ましくは1〜6mol%である。特に好ましい態様では、少なくとも3mol%のTiO2が使用される。TiO2および/またはZrO2の添加により、同様に化学的安定性も改善される。
【0047】
ZrO2の含有量は、好ましくは0〜5mol%、特に好ましくは0.25〜4mol%、または最大3mol%である。これらの成分が多すぎる量で使用される場合は、結晶化へのガラスの傾向が増大する。本発明の特に好ましい一態様では、薄板ガラスは両方の成分、TiO2およびZrO2を含み、ここで、好ましくは、TiO2の含有量は常に、ZrO2の含有量より高い。特に好ましい態様では、TiO2の含有量は、ZrO2のそれの2倍より高くさえある。
【0048】
本発明によるガラスは、Y23を0〜7mol%の量で含んでいてもよい。しかし、好ましい態様は、Y23を含んでいない。さらに、薄板ガラスは、Nb25を、好ましくは0〜9mol%の割合で、さらに好ましくは0.25〜5mol%、または最大3.5mol%または最大3mol%で含有していてもよい。さらなる任意の成分は、0〜10mol%、特に好ましくは0.1〜5mol%の含有量で使用されてもよい、La23である。この段落で言及した成分は、本発明によって必要とされる高い屈折率の調節のために使用される。しかし、使用されるこれらの成分の量は限定されなければならず、その理由は、さもなければ結晶化への傾向が増大しすぎてしまうためであることを、考慮しなければならない。ここで述べた酸化物(Y23、Nb25、La23)を本発明による薄板ガラスにおいて0〜8mol%、好ましくは0〜5mol%の合計量で使用するのが有利であることが示された。ここで言及したこれらの成分は極めて高価であり、さらにはこの理由のため、使用量が限定されるべきであることもまた、考慮しなければならない。
【0049】
本発明による薄板ガラスの高い屈折率が実現され得るために、ガラス組成は、好ましくは、屈折率を強力に増大させる成分、TiO2、ZrO2、Nb25、La23、Y23の合計が少なくとも2.5mol%、さらに好ましくは少なくとも3mol%、より好ましくは少なくとも4mol%になるように選択される。しかし、この合計は、結晶化への傾向を制限するために好ましくは15mol%、さらに好ましくは12mol%、より好ましくは9.5mol%、特に好ましくは8mol%の値を超過すべきでない。
【0050】
この記述において、ガラスがある成分を含んでいない、または、それらがある種の成分を含有しないと言及された場合は、これは、この成分がガラス中に不純物としてのみ存在していてよいことを意味する。これは、それが顕著な量で添加または含有されていないことを意味する。本発明によれば、微々たる量とは、1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、最も好ましくは100ppm未満の量である。好ましくは、本発明による薄板ガラスは、ガラス構成要素としてこの記述において言及されていない成分を含んでいない。特に、本発明の薄板ガラスは、好ましくはPbOを含んでおらず、その理由は、PbOが環境および健康に有害な成分のためである。さらに、ガラスは、好ましくはBi23を含んでおらず、その理由は、この成分が、結晶化への傾向およびガラスの原材料のコストを強力に増大させ、かつ透過率を低下させるためである。ガラスは、好ましくはFe23を含有しておらず、その理由は、Fe23が透過率を低下させるためである。
【0051】
さらに、一般的な清澄剤、例えば特にSnO2、Sb23、硫酸塩および/または塩化物が、清澄のために薄板ガラスに添加されていてもよい。
【0052】
As23もまた添加されていてよいが、毒性学的な理由および環境への有害性の理由のため、それは、好ましくは省かれる。
【0053】
上記で先述したように、本発明によるガラスは、比較的低い溶融温度および熱間加工温度を有する。本発明によるガラスの熱間加工温度(VA)は、好ましくは1000℃より低く、さらに好ましくは800℃〜1000℃の範囲、特に好ましくは820℃〜970℃の範囲である。低い加工温度は、アグリゲートが損傷するのを阻止し、したがって、製造のコスト有効性を増大させる。
【0054】
本発明によるガラスの溶融温度(ガラスが102dPasの粘度を有する温度により表されている)は、好ましくは少なくとも800℃、最大で1150℃の範囲、さらに好ましくは少なくとも900℃、最大で1100℃の範囲である。
【0055】
本発明によるガラスのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは550℃より高く、さらに好ましくは600℃より高くかつ好ましくは750℃より低く、さらに好ましくは700℃より低い範囲である。
【0056】
好ましくは、本発明の薄板ガラスは、フラットガラス方法により調製される。本発明による方法は、
a.下記成分をmol%で含むガラスの混合物を溶融する工程、
【表1】
【0057】
b.ガラス溶融物を加工して薄板ガラスにする工程
を含む。
【0058】
薄板ガラスへのガラス溶融物の加工は、好ましくは、インライン式製造方法またはフラットガラス方法により実施される。それは特に、前もってのいかなる冷却もない、溶融状態のガラス溶融物の加工の工程により特徴づけられる。
【0059】
好ましくは、フラットガラス方法は、ダウンドローまたはオーバーフローフュージョンである。その他の方法、例えばフロート法およびロール法もまた可能であるが、より悪いガラス表面への傾向のため、それらは好ましくない。ガラスがフロートされるべきならば、さらに、ある種の単一成分の酸化還元特異的な特性が考慮されなければならない。したがって、この熱間成形プロセスは好ましくない。
【0060】
本発明によるフラットガラス方法は、好ましくは、薄板ガラスが溶融されてその直後に成形されるいわゆるインライン式方法である。そのため、薄板ガラスは、先ずキャストされて棒材になり、その後で加工されるのではなく、溶融工程の直後にそれが薄板ガラスに成形される。
【0061】
好ましい方法は、ダウンドローならびにオーバーフローフュージョン法である。ダウンドロー法は、WO 02/051757 A1に記述されており、オーバーフローフュージョン法は、WO 03/051783 A1に記述されている。
【0062】
ダウンドロー法では、ドロータンク(drawing tank)からノズルを通って流れ出てくるガラス溶融物は、任意にドローバーの使用により、成形されてガラスシートになり、これは、側面に配置されたロールにより下側に引き伸ばされて、所望の厚さおよび幅になる。
【0063】
オーバーフローフュージョン法では、ガラス溶融物がオーバーフロートレイに誘導され、そこから、2つ以上の側面のガラス溶融物がその縁からあふれ出る(オーバーフロー)。下側に流れて行くガラス溶融物の両方のシートは、オーバーフロートレイの壁を流れ落ち、先がとがった壁(pointed walls)の下側部分で合わせられ(フュージョン)、ガラスシートになる。
【0064】
両方の方法において、ガラス溶融物は、比較的長期の時間の間、液体状態で維持されて移動する。このため、結晶化のリスクが比較的高い。したがって、結晶化の側面は、特に考慮しなければならない。別の重要な側面は、ガラスの温度/粘度プロファイルである。加工は、温度を低下させる場合のガラスが短期の時間で粘性になりすぎない場合、かつ加工温度が高すぎない場合、はるかに良好な結果を示す。本発明のガラスは、これらの特性により特徴づけられ、結果として、プロセスの運営がより安定に設計され得るのと同様に、使用される製造施設(ドロータンク、オーバーフローフュージョン用流路など)の耐用年数予測値も明瞭に増大され得る。
【0065】
1つ以上の本発明の薄板ガラスを含む、層複合体アセンブリもまた、本発明によっている。層複合体アセンブリは、好ましくは、透明または1つ以上の側面から少なくとも透明である。
【0066】
本発明による層複合体アセンブリは、好ましくは、半導体層および2つの電極を含む。このような場合、電極は、導電性の透明な酸化物層(例えばITO)であってもよいし、または、その構成を介して電気伝導を可能にする銀ナノワイヤーの電極であってもよい。層複合体アセンブリは、好ましくは、サブストレートまたはスーパーストレート層をさらに含み、ここで、サブストレート層またはスーパーストレート層は、本発明による薄板ガラスを含むまたはからなる。
【0067】
本発明による薄板ガラスは通常、非常に少ない量のアルカリ金属酸化物しか含有しないため、層複合体アセンブリの好ましい一態様では、薄板ガラスと半導体層との間にブロッキングまたはバリア層は必要でない。通常、ある種の半導体層の場合、このブロッキング層が、半導体層中へのアルカリイオンの拡散を回避するために必要である。半導体層中へ拡散したアルカリイオンは、システムの完全な故障に至る欠陥をもたらし得る(例えば、TFTディスプレイにおける使用の場合)。
【0068】
層複合体アセンブリの両側面にガラスサブストレートを有するシステムもまた可能であり、ここで、このようなシステムは、透明なOLED照明システムにおいて、または、ガラスによりOLEDまたはPVシステムの密封式封入を実現するためにも、特に好ましい。
【0069】
好ましい態様では、層複合体アセンブリは、発光用OLEDシステムのアセンブリのために使用される。
【0070】
本発明による薄板ガラスをサブストレートまたはスーパーストレート層として含む、本発明による層複合体アセンブリは、一般に、放射線、例えば例としては可視光、UV、IRまたは他の放射線がシステムにより誘導されるべきでありかつ1つ以上の層が増大された屈折率を有する、すべての使用に特に適しており、ここで、1または複数の層の間の界面において反射が起きてもよい。
【0071】
一般に、これらの使用は、例えば光学的、特に半導体的使用、例えばOLEDシステム(ディスプレイとして、特に領域照明のための光源としても)である。別の半導体用途は、例えば薄層光電池、特に好ましい有機薄層PVである。
【0072】
代替的態様では、本発明による層複合体アセンブリはまた、ソーラーモジュール(solar module)においてまたはソーラーモジュールとして使用されていてもよい。ソーラーモジュールのためにもまた本発明によって使用されるガラスの助けにより、層複合体アセンブリにおける有利な特性が実現され得、その理由は、やはりこの場合でも、妨害なしでサブストレートガラスを介した光の通過が重要であることが明かである。したがって、これらの層複合体アセンブリの使用により、改善された有効性を有するソーラーモジュールが得られ得る。同様にこのようなソーラーモジュールにおいて、層複合体アセンブリは、電極と組み合わせて使用される。
【0073】
本発明による薄板ガラスは、フラットガラスプロセスにより製造することができる。本発明によれば、「フラットガラスプロセス」は、好ましくは、後述するアスペクト比(厚さ対表面積)のペーン(panes)を有するガラスをもたらすプロセスを意味する。これらのペーンは、0.1〜1mmの標準的な厚さに優る0.02mmの最低厚さ(最も薄いガラス)から最大で3mmまでの厚さにより特徴づけられる。好ましくは、幅は0.1〜3mである。フラットガラスプロセスの種類は、好ましい方法、ダウンドローおよびオーバーフローフュージョンならびに関連するプロセスの間で、所期のアスペクト比に伴って変化する。そのため、本発明によれば、サブストレート層における薄板ガラスの必要とされる厚さが実現される。>1.6の屈折率を有する一般的な光学ガラスによると、これらのフラットガラスプロセスは実施され得ず、その理由は、それらが、ガラスの低い結晶化安定性をもたらす成分を含有しかつ/または組成物を含むためである。
【0074】
層複合体アセンブリ中のサブストレート層は、好ましくは、3mm未満の層厚さを有する。さらに好ましくは、この層厚さは、2mm未満、特に好ましくは1mm未満、または0.5mm未満である。層アセンブリの好ましい可撓性形態では、層厚さは、好ましくは<500μm、特に好ましくは<200μmである。これは有利であり、その理由は、ガラスの弾性が厚さの低下に伴って増大するためである。そのため、厚さの増大に伴って、層複合体アセンブリ全体は、より弾性でなくなるであろう。しかし、層厚さが小さいように選ばれた場合は、一方では加工性が妨げられ、他方では層複合体アセンブリ全体が損傷に対してより抵抗性でなくなる。したがって、サブストレート層の層厚さは、好ましくは少なくとも0.03mm、さらに好ましくは少なくとも0.05mmである。薄板ガラスの有利な弾性は、成分の適切な選択により実現される。
【0075】
好ましくは、層複合体アセンブリは、OLED照明システム(光源)の構成要素である。OLED用のおよび/またはOLED照明システムにおけるサブストレートガラスとしての本発明によるガラスの使用もまた、本発明によっている。
【0076】
特に半導体層を含む層複合体アセンブリにおける、サブストレートまたはスーパーストレートとしての、薄板ガラスの形態の本発明によるガラスの使用もまた、本発明によっている。上述した層複合体アセンブリにおける使用が好ましい。
【0077】
[実施例]
下記の例は、本発明の薄板ガラスの合成組成、ならびにこれらのガラスに関するいくつかのパラメータを示している。与えられているデータはmol%においてであるが、比データは除く。与えられている比は、物質の量のモル比を表している。
【表2】
【表3】
【0078】
すべての例のガラスは、本発明によるインライン式製造方法により、結晶化の発生なしでそれらを加工して本発明の薄板ガラスにすることが可能だった。
以下に、本発明の実施態様を付記する。
1 下記成分をmol%で含む、1.60より高い屈折率を有する薄板ガラスであって、物質BaO対ZnOの量のモル比は1.5より低い薄板ガラス。
【表a】
2 1に記載の薄板ガラスであって、下記成分をmol%で含む薄板ガラス。
【表b】
3 1または2に記載の薄板ガラスであって、少なくとも6mol%の含有量のB23を有する薄板ガラス。
4 先行する項の1項に記載の薄板ガラスであって、BaO、SrO、CaO、MgOおよびZnOの含有量の合計が、少なくとも30mol%かつ最大で50mol%である薄板ガラス。
5 先行する項の少なくとも1項に記載の薄板ガラスであって、TiO2、ZrO2、Y23、La23およびNb25の含有量の合計が、少なくとも2.5mol%かつ最大で12mol%である薄板ガラス。
6 先行する項の少なくとも1項に記載の薄板ガラスであって、下記成分をmol%で含む薄板ガラス。
【表c】
7 先行する項の少なくとも1項に記載の薄板ガラスであって、少なくとも1つの火炎研磨された表面を有する薄板ガラス。
8 先行する項の1項に記載の薄板ガラスおよび少なくとも1つの半導体層を含む、層複合体アセンブリ、特にOLED。
9 項1〜7の1項に記載の薄板ガラスの製造のための方法であって、
a.下記成分をmol%で含むガラス混合物を溶融する工程、
【表d】
b.ガラス溶融物を加工して薄板ガラスにする工程
を含む方法。
10 サブストレートまたはスーパーストレートとしての薄板ガラスの形態での1〜7の1項に記載のガラスの使用。