特許第6689567号(P6689567)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6689567改善された酸素透過を有するコンタクトレンズ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6689567
(24)【登録日】2020年4月10日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】改善された酸素透過を有するコンタクトレンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20200421BHJP
【FI】
   G02C7/04
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-236365(P2014-236365)
(22)【出願日】2014年11月21日
(65)【公開番号】特開2015-102871(P2015-102871A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2017年9月7日
(31)【優先権主張番号】14/087,625
(32)【優先日】2013年11月22日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510294139
【氏名又は名称】ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・エフ・ジュビン
(72)【発明者】
【氏名】ピエール−イーブス・ジェルリガン
(72)【発明者】
【氏名】ファン・ユアン
(72)【発明者】
【氏名】ラドハクリシュナン・ダモドハラン
(72)【発明者】
【氏名】ノエル・エイ・ブレナン
【審査官】 小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/129052(WO,A1)
【文献】 特表2014−508974(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/061790(WO,A1)
【文献】 特開2013−205845(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0290883(US,A1)
【文献】 国際公開第89/007281(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00 − 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科用装置であって、
目の角膜に各々適合するコンタクトレンズであって、各前記コンタクトレンズが、光学ゾーン、前記光学ゾーンを包囲する周縁ゾーン、前方湾曲面、及び後方湾曲面を含む、コンタクトレンズと、
前記周縁ゾーン内の複数の離散的薄化領域であって、前記離散的薄化領域が、前記離散的薄化領域及び前記離散的薄化領域を包囲する区域内の酸素透過率を増大させるように構成され、前記複数の離散的薄化領域が、前記周縁ゾーンの表面積の5%〜75%を占め、各前記離散的薄化領域が、5マイクロメートル〜300マイクロメートルの深さを有する、複数の離散的薄化領域と、
を含み、
前記複数の離散的薄化領域が、前記光学ゾーンを囲んで並んだ2列のくぼみのリングを含み、
前記リングのうち外側リングは、内側リングの前記くぼみの深さよりも大きい深さを有するくぼみを含む、眼科用装置。
【請求項2】
前記くぼみが、円形断面形状を備える、請求項1に記載の眼科用装置。
【請求項3】
前記くぼみが、凹状及び/又はフィレット付きの断面形状を備える、請求項1に記載の眼科用装置。
【請求項4】
前記くぼみが、非球面の断面形状を備える、請求項1に記載の眼科用装置。
【請求項5】
前記光学ゾーンが、単一の視力矯正をもたらすように構成されている、請求項1に記載の眼科用装置。
【請求項6】
前記光学ゾーンが、乱視矯正をもたらすように構成されている、請求項1に記載の眼科用装置。
【請求項7】
前記光学ゾーンが、老眼矯正をもたらすように構成されている、請求項1に記載の眼科用装置。
【請求項8】
前記光学ゾーンが、特注の視力矯正をもたらすように構成されている、請求項1に記載の眼科用装置。
【請求項9】
前記装置が、美容上の効果をもたらすように構成されている、請求項1に記載の眼科用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本発明は、眼科用レンズに関し、より具体的には、角膜に対する酸素透過を改良する機能を組み込んだコンタクトレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
近視(myopia)又は近視(nearsightedness)は、目の視力欠陥又は屈折欠陥であり、画像からの光線は、それらが網膜に到達する前に一点に集中する。近視は、概して、眼球(eyeball)若しくは眼球(globe)が長すぎるため、又は角膜の傾斜が急すぎるために生じる。マイナスの屈折力の球面レンズを利用して、近視を矯正することができる。遠視又は遠眼は、像からの光線が網膜の後方の点に焦点を結ぶ目の光学又は屈折異常である。遠視は、概して、眼球(eyeball)若しくは眼球(globe)が短すぎるか、又は角膜が平らすぎるために生じる。プラスパワーの球面レンズを利用して、遠視を矯正することができる。乱視は、視力欠陥又は屈折欠陥であり、目が点物体に焦点を合わせて、網膜上で焦点が合った画像にすることができないため、個人の視野がぼやけている。近視及び/又は遠視とは異なり、乱視は、眼球の大きさ又は角膜の傾斜とは無関係であるが、むしろ、角膜の異常な湾曲によって引き起こされる。完璧な角膜は球面であるが、乱視の人では角膜は球面ではない。言い換えると、角膜は、実際には、他方向よりも一方向で更に湾曲しているか、又は傾斜が急であり、それによって、画像を一点に集中させずに広がらせる。乱視を解消するためには、球面レンズではなく円柱レンズを用いることができる。
【0003】
コンタクトレンズは、近視、遠視、乱視、並びに他の視力障害を補正するために利用されてもよい。コンタクトレンズはまた、着用者の目の自然な外観を向上させるために利用されてもよい。換言すれば、コンタクトレンズは、目の外見に多様な効果をもたらすように色付け又は着色され得る。個人の目の色を強調するかあるいは完全に変化させるために、多種多様なタイプの着色コンタクトレンズが現在、入手可能となっている。美容改善用の色合いを備えたコンタクトレンズは、その人生来の眼色を強調するように設計されたものであり、青色、緑色、ハシバミ色、及び灰色など、淡色の目に最も適している。くすんだ色合いを備えたコンタクトレンズは、濃色の目の色を変化させるように設計されたものである。これらのレンズは、自然な見た目をもたらすと同時に光彩を被覆するように設計されたものである。コンタクトレンズはまた、眼色に対して識別可能でない効果に対処する際にレンズを視認可能にするように設計された、視感度用の色合いを備え得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記に基づくと、コンタクトレンズの主要な機能は、視力の矯正及び/又は性能向上、美容改善並びに/若しくは視力矯正及び美容改善の双方である。しかしながら、コンタクトレンズはまた、角膜の健康及び成長を促進するために、十分なレベルの酸素が目に、特に角膜に供給されることを確実にするために設計されることが好ましい。角膜に供給される酸素量が不十分なとき、浮腫を含めて、目の健康に悪影響が結果する場合がある。ソフトコンタクトレンズは、ハードコンタクトレンズに比べて酸素透過率に関して顕著な改善を表したが、ソフトコンタクトレンズを通して透過される酸素の量は、材料酸素透過率、Dkと、材料厚さ、tの双方によって制限されている。結果的に、装着が快適であり、それらを通してより多くの酸素を容易かつ迅速に拡散させるソフトコンタクトレンズへの要求が存在する。より具体的には、所定の材料を組成変更することによって、増大した酸素透過率が達成され得るが、既存の実証済みの材料、例えば、ヒドロゲル及びシリコーンヒドロゲルを利用する、増大した酸素透過率を有するソフトコンタクトレンズへの要求も存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の眼科用レンズは、簡単に上述したような先行技術に関連する酸素透過率の欠点を克服する。
【0006】
一態様に従って、本発明は、眼科用装置を対象とする。この眼科用装置は、コンタクトレンズを含み、各コンタクトレンズは、光学ゾーン、光学ゾーンを包囲する周縁ゾーン、前方湾曲面及び後方湾曲面、並びに周縁ゾーン内の少なくとも1つの離散的薄化領域(これは、離散的薄化領域及び離散的薄化領域を包囲する区域内の酸素透過率を増大させるように構成されている)を含む。少なくとも1つの離散的薄化領域は、周縁ゾーンの表面積の約5%〜約75%を占め、5マイクロメートルと300マイクロメートルの間の深さを有する。
【0007】
コンタクトレンズ(contact lenses)又はコンタクト(contacts)は、単に、眼上に設置されるレンズである。コンタクトレンズを医療装置と見なし、視力を矯正するために、及び/又は美容上若しくは他の治療上の理由から装着してもよい。コンタクトレンズは、視力を向上させるために、1950年以降商業的に利用されている。初期のコンタクトレンズは、硬質材料から作製又は製造され、比較的高価で脆弱であった。加えて、これらの初期のコンタクトレンズは、コンタクトレンズを通して結膜及び角膜に十分な酸素を透過しない材料から作製され、このことは、いくつかの臨床的副作用を引き起こす可能性があった。これらのコンタクトレンズが依然として利用されているが、それらは、初期快適性が低いため、すべての患者に適していない。当分野における最近の開発によって、ヒドロゲル系のソフトコンタクトレンズが生み出され、これは現在非常に好評であり、広く利用されている。具体的には、現在利用可能なシリコーンヒドロゲルのコンタクトレンズは、非常に高い酸素透過率を有するシリコーンの利点を、ヒドロゲルの実証された快適性及び臨床成績と組み合わせている。本質的に、これらのシリコーンヒドロゲル系コンタクトレンズは、高い酸素透過率を有し、一般に、初期の硬質材料で作製されたコンタクトレンズよりも着用が快適である。
【0008】
現在利用可能なコンタクトレンズは、依然として、視力矯正の費用効果的な手段である。薄いプラスチックレンズは、近視(myopia)又は近眼(nearsightedness)、遠視(hyperopia)又は遠視(farsightedness)、乱視(すなわち、角膜が一方向でより湾曲しているか傾斜している)、及び老眼、すなわち、遠近調節をする水晶体の能力の喪失を含む、視力欠陥を矯正するために、目の角膜に適合する。コンタクトレンズには、様々な形態のものがあり、様々な材料で作製されて、異なる機能性を提供する。終日装用ソフトコンタクトレンズは、典型的には、酸素透過性を目的として水と合わせられた軟質ポリマー材料から作製される。終日装用ソフトコンタクトレンズは、1日使い捨て又は長期装用使い捨てであってもよい。終日装用使い捨てコンタクトレンズが、通常、1日間装着されて捨てられる一方で、長期装用使い捨てコンタクトレンズは、通常、最大30日間装着される。カラーソフトコンタクトレンズは、異なる材料を使用して、異なる機能性を提供する。例えば、視認性カラーコンタクトレンズは明るい色合いを用いることで装用者が落としたコンタクトレンズを探す助けとなり、強調カラーコンタクトレンズは、装用者の自然の眼の色を強調することを目的とした半透明の色合いを有し、着色カラーコンタクトレンズは、装用者の眼の色を変えることを目的としたより濃く、不透明な色合いを含み、光濾過カラーコンタクトレンズは、所定の色を強調する一方で他の色を弱めるように機能する。硬質ガス透過性ハードコンタクトレンズは、シロキサン含有ポリマーから作製されるが、ソフトコンタクトレンズよりも硬く、したがって、それらの形状を保持し、より耐久性がある。二重焦点及び多焦点のコンタクトレンズは、老眼を有する患者用に特に設計され、ソフトとハードの両方がある。円環状コンタクトレンズは、乱視を有する患者用に設計され、同様に、ソフトとハードの両方がある。上の異なる態様を合わせたコンビネーションレンズもあり、例えば、ハイブリッドコンタクトレンズが挙げられる。
【0009】
本発明によると、コンタクトレンズの設計が、レンズが作製されている材料を変更することなく、酸素透過率を増大させるよう変更される。本発明の基礎的原理は、レンズの厚さを局部的に薄くすることによって、コンタクトレンズを通過する酸素透過を増大させることである。換言すれば、厚さを減らした局部区域を作成することによって、すなわち、レンズの表面内のくぼみ(ディンプル)によって、コンタクトレンズを通過する酸素透過を増大させることが可能である。
【0010】
所定の材料を通過する酸素透過率は、比Dk/tによって表され、このDは、拡散率、すなわち、どれほど速く酸素がこの材料を通して移動するかの尺度を表し、このkは、溶解度、すなわち、どれほど多くの酸素が材料内にあるかの尺度を表し、tは材料の厚さである。この比が示す通りに、酸素透過率は、材料の酸素透過率Dkが増加することによって、又はレンズ厚さが減少することによって増大することが可能である。材料が変更されないと仮定すれば、最低Dk/t比を有するレンズの最も厚い領域で、比を増加させることが好ましい。本発明によると、レンズの表面内のくぼみは、厚さが薄くなった局部的区域を作成し、これによって、酸素透過率を増大させる。
【0011】
コンタクトレンズ内の厚さの局部的減少は、材料を変更する必要がなく、目に対して増大した酸素透過を可能にする。厚さの局部的減少は、レンズの光学品質に影響を与えず、作製に簡潔かつ安価である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の前述の特徴及び利点、並びに他の特徴及び利点は、以下の添付図面に示される本発明の好ましい実施態様のより詳細な説明から明らかとなるであろう。
図1】例示のコンタクトレンズの平面図である。
図2】本発明による、中央−周縁区域において、レンズ中心からくぼみを有するレンズエッヂまでのレンズ厚さのプロットである。
図3A】本発明による、コンタクトレンズ内の例示のくぼみパターンを図示する。
図3B】本発明による、コンタクトレンズ内の例示のくぼみパターンを図示する。
図3C】本発明による、コンタクトレンズ内の例示のくぼみパターンを図示する。
図4】本発明による、コンタクトレンズの中央−周縁区域内の単一のくぼみの断面図である。
図5A】本発明による、くぼみの例示の断面形状である。
図5B】本発明による、くぼみの例示の断面形状である。
図5C】本発明による、くぼみの例示の断面形状である。
図5D】本発明による、くぼみの例示の断面形状である。
図6】本発明による、くぼみをつけたコンタクトレンズを通過する酸素流束のChhabraモデルである。
図7】本発明による、眼上の例示のコンタクトレンズの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
コンタクトレンズ(contact lenses)又はコンタクト(contacts)は、単に、眼上に設置されるレンズである。コンタクトレンズを医療装置と見なし、視力を矯正するために、及び/又は美容上若しくは他の治療上の理由から装着してもよい。コンタクトレンズは、視力を向上させるために、1950年以降商業的に利用されている。初期のコンタクトレンズは、硬質材料から作製又は製造され、比較的高価で脆弱であった。加えて、これらの初期のコンタクトレンズは、コンタクトレンズを通して結膜及び角膜に十分な酸素を透過しない材料から作製され、このことは、いくつかの臨床的副作用を引き起こす可能性があった。これらのコンタクトレンズが依然として利用されているが、それらは、初期快適性が低いため、すべての患者に適していない。当分野における最近の開発によって、ヒドロゲル系のソフトコンタクトレンズが生み出され、これは現在非常に好評であり、広く利用されている。具体的には、現在利用可能なシリコーンヒドロゲルのコンタクトレンズは、非常に高い酸素透過率を有するシリコーンの利点を、ヒドロゲルの実証された快適性及び臨床成績と組み合わせている。本質的には、これらのシリコーンヒドロゲルベースのコンタクトレンズは、以前の硬質材料で作製されたコンタクトレンズよりも高い酸素透過率を有し、概して、着け心地がよい。しかしながら、これらの新しいコンタクトレンズに制約がまったくないわけではない。
【0014】
現在利用可能なコンタクトレンズは、依然として、視力矯正の費用対効果が高い手段である。薄いプラスチックレンズは、近視(myopia)又は近眼(nearsightedness)、遠視(hyperopia)又は遠視(farsightedness)、乱視、すなわち、角膜における非球面性、及び老眼、すなわち、遠近調節をする水晶体の能力の喪失を含む、視力欠陥を矯正するように、目の角膜に適合する。コンタクトレンズには、様々な形態のものがあり、様々な材料で作製されて、異なる機能性を提供する。終日装用ソフトコンタクトレンズは一般的に、水と組み合わせることで酸素透過性を与えるソフトポリマープラスチック材料から製造される。終日装用ソフトコンタクトレンズは、1日使い捨て又は長期装用使い捨てであってもよい。終日装用使い捨てコンタクトレンズが、通常、1日間装着されて捨てられる一方で、長期装用使い捨てコンタクトレンズは、通常、最大30日間装着される。カラーソフトコンタクトレンズは、異なる材料を使用して、異なる機能性を提供する。例えば、視認性カラーコンタクトレンズは明るい色合いを用いることで装用者が落としたコンタクトレンズを探す助けとなり、強調カラーコンタクトレンズは、装用者の自然の眼の色を強調することを目的とした半透明の色合いを有し、着色カラーコンタクトレンズは、装用者の眼の色を変えることを目的としたより濃く、不透明な色合いを含み、光濾過カラーコンタクトレンズは、所定の色を強調する一方で他の色を弱めるように機能する。硬質ガス透過性ハードコンタクトレンズは、シリコーンポリマーから作製されるが、ソフトコンタクトレンズよりも剛性であり、水を含有せず、それ故に、それらの形状が保持され、より耐久性があるが、概して、あまり快適ではない。二重焦点コンタクトレンズは、老眼を有する患者用に設計され、ソフトとハードの両方がある。円環状コンタクトレンズは、乱視を有する患者用に設計され、同様に、ソフトとハードの両方がある。上の異なる態様を合わせたコンビネーションレンズもあり、例えば、ハイブリッドコンタクトレンズが挙げられる。
【0015】
ソフトコンタクトレンズは、典型的には、硬質ガス透過性ハードコンタクトレンズよりも快適である。現在利用可能なコンタクトレンズは、エタフィルコン、ガリフィルコン、セノフィルコン及びナラフィルコンを含むシリコーンヒドロゲルから作製される。他のシリコーンヒドロゲルとしては、ロトラフィルコン、バラフィルコン、バイフィルコン、及びオマフィルコンが挙げられる。これらの材料は、一般に低弾性率を有し、例えば、エタフィルコンAは、約0.3×10Paのヤング係数を有し、ガリフィルコンAは、約0.43×10Paのヤング係数を有し、セノフィルコンAは、約0.7×10Paのヤング係数を有し、バラフィルコンAは、約1.1×10Paのヤング係数を有し、ロトラフィルコンAは、約1.4×10Paのヤング係数を有する。これら材料のいくつかについては、弾性率が低過ぎるために、許容し得るレンズの剛性を達成するように、レンズの厚さを特定の領域内で増加させねばならないことがある。例えば、乱視矯正においては、必要な視力矯正のために、眼上の回転安定性を達成するよう機械的特性が、コンタクトレンズの周縁部に設計される。これらの機械的特性は、典型的には、レンズの周縁部の周りに異なる厚さを組み込み、これによって、酸素透過を潜在的に変更する。他のタイプのレンズはまた、種々の理由で、より厚い又はより薄い領域を有する。結果的に、周知の材料から製造された快適な実証済みのコンタクトレンズを通過する酸素透過を増大させるために、例えば、以下に詳細に説明されるようなくぼみの使用を通して、局部的薄化領域が作成され得る。
【0016】
ここで図1を参照すると、例示のコンタクトレンズ100の平面図が示されている。コンタクトレンズ100は、光学ゾーン102、光学ゾーン102を包囲する周縁ゾーン104、装着時に個人の目に接触するよう設計された後方湾曲面、及び後方湾曲面と反対側の前方湾曲面を含む。光学ゾーン102は、それを通して視力矯正が得られるコンタクトレンズ100の部分である。言い換えると、光学ゾーン102は、視力矯正を提供し、単焦点の近視又は遠視の矯正、乱視の視力矯正、二焦点の視力矯正、多焦点の視力矯正、カスタム矯正等の特定のニーズ、又は視力矯正を提供し得る任意の他のデザインのために設計される。周縁ゾーン104は、光学ゾーン102を包囲し、眼上のコンタクトレンズ100に機械的安定性を提供する。言い換えると、周縁ゾーン104は、セントレーション及び配向等の眼上でのコンタクトレンズ100の位置決め及び安定化に影響を及ぼす機械的特性を提供する。配向は、光学ゾーン102が乱視矯正及び/又は高次収差等の非回転対称特性を含むとき、基本となる。いくつかのコンタクトレンズ設計では、光学ゾーン102と周縁ゾーン104との間の任意の中間ゾーンが利用されてもよい。任意の中間ゾーンは、光学ゾーン102及び周縁ゾーン104が穏やかに混合されることを確実にする。
【0017】
光学ゾーン102及び周縁ゾーン104の両方は、それらのデザインが、特定の必要条件が必要であるときに強く関連することがあるとはいえ、独立して設計され得ることに留意することが重要である。例えば、乱視用の光学ゾーンを有する円環状コンタクトレンズの設計では、コンタクトレンズを眼上で所定の方向に維持するための特定の周縁ゾーンを必要とする場合がある。円環状コンタクトレンズは、球面コンタクトレンズとは異なる設計を有する。円環状コンタクトレンズの光学ゾーン部分は、2つの度数(球面及び円柱)を有し、一般に互いに直交する湾曲部で作製される。これらの度数は、眼上で特定の角度の位置に円柱軸を維持することによって、必要な乱視補正を与えるために必要とされる。円環状コンタクトレンズの機械的ゾーン又は外側の周縁ゾーンは、通常、眼上に装用されている間に、円柱軸又は乱視軸を適所に適切に回転及び方向付けする安定化手段を備えている。コンタクトレンズが移動するとき、又はコンタクトレンズが最初に挿入されるとき、コンタクトレンズのその適切な位置への回転は、円環状コンタクトレンズを生産する時、重要である。この安定化ゾーンは、任意の好適な構成、例えば、より厚く戦略的に配置された領域を備えてもよい。他のレンズ、例えば老眼用レンズは、周縁ゾーン104内に機能を必要とする場合もある。これら機能は、視線が変更する場合、光学ゾーン102の特定の部分が正確に配置されることを確実にするよう作用する。これら機能は、周縁ゾーン104の切断部又は厚くなったセクションを備えてもよい。図1に示した例示のコンタクトレンズ100は、円形及び/又は環状として図示されているが、非円形及び/又は非環状の形状も可能である。加えて、周縁のエッヂは、平面又は非平面であってもよい。
【0018】
上述したように、所定の材料を通過する酸素透過率は、非Dk/tによって表される(このDは拡散率であり、kは溶解度であり、tは厚さである)。材料を変更することなく、コンタクトレンズを通過する酸素透過率を増大させることを望むならば、この場合、レンズの厚さtが変更されることが好ましい。最低のDk/tを有する、レンズの最も厚い領域内のDk/t比を増加させることが特に有利である。結果的に、コンタクトレンズを通過する酸素透過又は酸素透過率を増大させるために、レンズ厚さが局部的に減らされることが好ましい。これを局部的薄化に限定することによって、レンズ設計の基礎的特性は、変更されないまま残り、例えば、レンズの剛性又は周縁ゾーン内の機械的特性に対して変更されない。コンタクトレンズの局部的厚さを減らすための1つの方法は、表面凹部又はくぼみを形成することである。例えば、レンズの後方湾曲面にくぼみを加える影響が、図2に図示され、図2は、レンズの中心からレンズのエッヂまでのレンズ厚さのプロットである。縦軸は厚さであり、横軸はレンズ中心からレンズエッヂまでの距離である。このプロットは、レンズ中心、点aからレンズエッヂ、点bまでの断面厚さを図示し、中央−周縁部厚さ、点cに及ぼすくぼみの影響を示している。
【0019】
図3A、3B及び3Cをここで参照すると、コンタクトレンズ300の周縁ゾーン304内のくぼみ306の図示された種々の例示の構成がある。くぼみ306は、光学ゾーン302内に配置され得るが、光学干渉を回避するために、くぼみをコンタクトレンズ300の周縁ゾーン304内に配置することが好ましい。しかしながら、くぼみ306は、後方又は前方湾曲面のいずれか又は両方に配置されてもよい。図4は、後方湾曲面内の単一のくぼみ406を図示する、コンタクトレンズ400の1/2断面図又はプロファイルである。くぼみの数、寸法、深さ、形状及び分布は、所望の局部的Dk/tを最大化するためではあるが、取り扱い特性、生理学及び快適性に対する影響を最小限に抑えるために、好ましく最適化されるべきである。くぼみの数及び位置は、所望のカバレージエリア及び各くぼみの寸法による。装着の際に余り大きく移動しないコンタクトレンズについては、より多くの酸素が角膜に到達するように、より大きなカバレージエリアが望ましい。眼上を中程度に移動するコンタクトレンズについては、レンズの移動が本質的により大きなカバレージエリアをもたらすために、より小さいカバレージエリアで十分である。くぼみのカバレージの好ましい範囲は、周縁領域の表面積の約5%〜約75%である。
【0020】
くぼみの深さは、Dk/t(これは本明細書で説明されるように、材料及びコンタクトレンズ設計の厚さの関数である)における所望の増加に応じる。くぼみの深さの好ましい範囲は、約5マイクロメートル〜約300マイクロメートルである。各くぼみの直径は、占める表面積の所望の大きさ及びくぼみの数を含める多数の因子に応じて変動してもよい。各くぼみは、同一の寸法であってもよく、又はこれらは異なる寸法であってもよい。くぼみの直径の好ましい範囲は、約20マイクロメートル〜約1,000マイクロメートルである。くぼみは、前方及び/又は後方湾曲面上のいずれか又は両方にあってもよい。しかしながら、前方湾曲面のくぼみは、レンズ表面に対する涙の正常な流れを妨害することなく、並びにレンズの快適性及び/又は瞼の生理学に影響を及ぼすことがないような寸法及び形状である必要があることに留意するべきである。
【0021】
コンタクトレンズ表面上のくぼみの分布は、構造化、又は規則的構造を有することが必ずしも必要ではなく、すなわち、要求されたレンズ表面積を占める限りにおいて、ランダム分布であってもよい。加えて、くぼみの断面形状は、任意の好適な構成を備えてもよい。図5A〜5Cを参照すると、いくつかの例示の実施形態が図示されている。図5Aでは、くぼみ500の断面形状は円形である。図5Bでは、くぼみ502の断面形状は凹状である。図5Cでは、くぼみ504の断面形状は、非球面である。図5Dでは、くぼみ506の断面形状は、下にある基材との滑らかな移行をもたらすようにフィレット508を用いる。形状は、増大した酸素透過率と快適性のバランスを取るよう改善されてもよい。
【0022】
Chhabraモデル(Mahendra Chhabra,John M.Prausnitz及びClayton J.Radke:「Modeling Corneal Metabolism and Oxygen Transport during Contact Lens Wear」,Optometry and Vision Sciences,第86巻,no.5,454〜466頁,(2009))を利用して計算された、コンタクトレンズを通過する酸素流束に及ぼすくぼみの影響が、図6に図示されている。x軸もy軸もmmの単位である。この例示の実施形態では、コンタクトレンズの周縁ゾーン内の後方湾曲面内に2列のくぼみが形成されている。内側リングのくぼみ602は、くぼみ602を越える追加の材料の約100マイクロメートルの厚さを伴い、約100マイクロメートルの深さを有するくぼみを含む。内側リングのくぼみ602の中心は、レンズの幾何学的中心から約5ミリメートルにある。外側リングのくぼみ604は、くぼみ604を越える追加の材料の約100マイクロメートルの厚さを伴い、約140マイクロメートルの深さを有するくぼみを含む。外側リングのくぼみ604の中心は、レンズの幾何学的中心から約6ミリメートルにある。図示したように、酸素流束は、くぼみ608を有さない表面領域と比較して、くぼみ606の下で二倍大きい。酸素流束又は透過率は、毎秒マイクロモル−センチメートル又はμMcm/sで測定される。
【0023】
上述したように、最低のDk/t値を有するこれら領域などのコンタクトレンズの最も厚い領域でくぼみ又は他の好適な凹部を形成することが好ましい。しかしながら、コンタクトレンズは眼上を移動し続けるために(例えば、回転し、水平及び垂直の両方向で平行移動するために)、くぼみ又は凹状面による酸素透過率の増加は、各くぼみの厳密な位置に限定されるのではなく、むしろ、装着する間のいずれの時点においても占め得る目の区域に限定される。まばたきの際のくぼみの領域内の酸素の水平な拡散に加えてある程度の涙の混合は、くぼみによって占められていないコンタクトレンズの領域の下にある組織を更に酸素添加するであろう。図7は、眼701上のコンタクトレンズ700の図式の表現である。矢印703によって示すように、コンタクトレンズ700は、水平に、垂直に、かつ回転して移動することができる。くぼみ702はレンズと共に移動し、これによって、目701のより多くの部分を高透過区域にさらす。
【0024】
本発明のコンタクトレンズには、角膜に対する酸素透過率を改善するために、凹部又はより薄い領域が組み込まれる。この機能を実行する好ましい設計特徴は、周縁ゾーン内のレンズの後方湾曲面上のくぼみである。好ましいくぼみは、上から見たとき、円形であるが、このくぼみは、三角形、正方形、五角形、六角形、七角形、八角形又は任意の好適な形状であってもよい。これらの放射対称形状に加えて、くぼみはまた、卵形、楕円形、又は不規則なパターンなどの形状を有してもよい。可能な横断面形状には、円弧、円錐台、扁平な台形、及び、放物曲線、楕円、半球形の曲線、ソーサー形状の曲線、正弦曲線、又は、懸垂曲線をその対称軸の周りに回転させることによって生成される形状で規定される輪郭が挙げられる。考えられる他のくぼみ設計には、くぼみ内のくぼみ、及び一定の深さのくぼみが挙げられる。加えて、複数の形状又はタイプのくぼみが単一の表面上で利用されてもよい。
【0025】
これがコンタクトレンズの光学特性、機械的特性、性能性及び快適性特性を妨害することがない限りにおいて、任意のタイプの薄化機能が利用されてもよいことに留意することが重要である。加えて、くぼみは、実質的に円形の配列に配置されているが、ランダム、フラクタル及び位置偏向を含める、任意の好適な配列が可能である。
【0026】
本発明のコンタクトレンズは、コンタクトレンズ製造について任意の既知のプロセスを使用して作製され得る。好ましくは、レンズは、レンズ組成物を光硬化させ、硬化したレンズにコーティングを施すことによって作製される。スピンキャスティング及びスタティックキャスティングを含めて、コンタクトレンズの製造において反応混合物を成形するための様々なプロセスが知られている。本発明のコンタクトレンズを製造するための好しい方法は、シリコーンハイドロゲルのダイレクトモールディングによるものであり、このダイレクトモールディングは経済的であり、水和したレンズの最終形状を正確に制御することを可能にする。この方法の場合、反応混合物は、シリコーンハイドロゲル、すなわち水膨潤したポリマーの最終的な所望の形状を有する金型内に置かれ、また、その反応混合物は、単量体が重合する条件に暴露されて、最終的な所望の製品のおおよその形状をなす高分子が生成される。そのような重合の条件は当該技術分野で周知である。その高分子混合物は任意選択により、溶媒で、次いで水で処理されて、元の成形高分子物品の寸法及び形状と類似した最終的な寸法及び形状を有するシリコーンハイドロゲルが生成される。成形などのプロセスにおいて、くぼみパターンは、くぼみの形状と深さを有する成形型を使用することによって金型に付与される。成形プロセスは一般に、中間的な鋳型を用いた、2段階又はより好ましくは3段階のプロセスである。3段階のプロセスにおいて、くぼみは、裏面の凹状のマスター型にあるくぼんだ部分として形成される。マスター型は好ましくは金属製であるが、セラミック製であってもよい。金属製のマスター型は、鋼、真ちゅう、アルミニウムなどから機械加工される。マスター型は次いで、中間的な鋳型を創成するために使用され、この中間的な鋳型において、曲線は凸状となり、くぼみは、中間的な逆曲線状の鋳型にある隆起部分として存在する。最終的なレンズは、逆曲線状の鋳型から鋳造され、同じプロレスで生成された曲線状の固定側金型と共に組み立てられる。その2段階のプロセスにおいて、水和されていないレンズ用高分子材料は、最も好ましくは精密旋盤によって直接的に処理される。この場合、くぼみは、水和されていない高分子材料に機械加工され、くぼみは凹状の表面上のへこみとなる。
【0027】
図示及び説明されたものは、最も実用的かつ好ましい実施形態であると考えられるが、本明細書に説明及び図示した特定の設計及び方法からの変更はそれ自体当業者にとって自明であり、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく使用できることは明らかであろう。本発明は、説明及び図示される特定の構造に限定されるものではないが、添付の特許請求の範囲に含まれ得るすべての改変例と一貫性を有するものとして解釈されなければならない。
【0028】
〔実施の態様〕
(1) 眼科用装置であって、
コンタクトレンズであって、各コンタクトレンズが、光学ゾーン、前記光学ゾーンを包囲する周縁ゾーン、並びに前方湾曲面及び後方湾曲面を含む、コンタクトレンズと、
前記周縁ゾーン内の少なくとも1つの離散的薄化領域及び前記離散的薄化領域を包囲する区域であって、前記離散的薄化領域が、前記離散的薄化領域内の酸素透過率を増大させるように構成され、前記少なくとも1つの離散的薄化領域が、前記周縁ゾーンの表面積の約5%〜約75%を占め、5マイクロメートル〜300マイクロメートルの深さを有する、前記周縁ゾーン内の少なくとも1つの離散的薄化領域及び前記離散的薄化領域を包囲する区域と、
を含む、眼科用装置。
(2) 前記コンタクトレンズが、多数の離散的薄化領域を含む、実施態様1に記載の眼科用装置。
(3) 前記多数の離散的薄化領域が、前記コンタクトレンズの周囲に配置されている、実施態様2に記載の眼科用装置。
(4) 前記多数の離散的薄化領域が、くぼみを備える、実施態様2に記載の眼科用装置。
(5) 前記くぼみが、円形断面形状を備える、実施態様4に記載の眼科用装置。
【0029】
(6) 前記くぼみが、凹状及び/又はフィレット付きの断面形状を備える、実施態様4に記載の眼科用装置。
(7) 前記くぼみが、非球面の断面形状を備える、実施態様4に記載の眼科用装置。
(8) 前記光学ゾーンが、単一の視力矯正をもたらすように構成されている、実施態様1に記載の眼科用装置。
(9) 前記光学ゾーンが、乱視矯正をもたらすように構成されている、実施態様1に記載の眼科用装置。
(10) 前記光学ゾーンが、老眼矯正をもたらすように構成されている、実施態様1に記載の眼科用装置。
【0030】
(11) 前記光学ゾーンが、特注の視力矯正をもたらすように構成されている、実施態様1に記載の眼科用装置。
(12) 前記装置が、美容上の効果をもたらすように構成されている、実施態様1に記載の眼科用装置。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7