(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6689580
(24)【登録日】2020年4月10日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】濃縮飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/00 20060101AFI20200421BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
A23L2/00 A
A23L2/52
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-137025(P2015-137025)
(22)【出願日】2015年7月8日
(65)【公開番号】特開2017-18015(P2017-18015A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2018年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】春成 亜紀子
【審査官】
柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】
特表2015−509383(JP,A)
【文献】
特開平10−084887(JP,A)
【文献】
特開2004−166632(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/004509(WO,A1)
【文献】
特開2006−050986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00−2/84
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5倍以上200倍以下に希釈されて喫飲される濃縮飲料であって、
前記濃縮飲料は乳化香料を含み、
当該乳化香料は、非水溶性溶媒としてグリセロールを含み、
前記乳化香料の含有量が当該濃縮飲料全量に対して0.1重量%以上1重量%以下であり、
前記グリセロールの含有量が当該濃縮飲料全量に対して0.079〜0.79vol%である、オイル浮きおよび沈殿発生が抑制された濃縮飲料。
【請求項2】
前記乳化香料が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、キラヤサポニンおよびアラビアガムからなる群より選択される1種以上の乳化剤を含む、請求項1に記載の濃縮飲料。
【請求項3】
当該濃縮飲料中に含まれている乳化粒子の平均粒子径d50が、10nm以上200nm以下である、請求項1または2に記載の濃縮飲料。
【請求項4】
高甘味度甘味料をさらに含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の濃縮飲料。
【請求項5】
前記高甘味度甘味料の含有量が、当該濃縮飲料全量に対して0.001重量%以上1重量%以下である、請求項4に記載の濃縮飲料。
【請求項6】
クエン酸をさらに含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の濃縮飲料。
【請求項7】
前記乳化香料が、非水溶性溶媒としてプロピレングリコール、エタノール、ベンジルアルコール、およびイソプロパノールを含まない、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の濃縮飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃縮飲
料に関する。
【背景技術】
【0002】
濃縮飲料は、消費者自身が望む濃度となるように希釈した上で喫飲することを想定したものである。そのため、濃縮飲料は、市場に流通している各種容器詰め飲料と比べて、当該濃縮飲料全量に対する各種配合成分の濃度が高くなるよう調製されている。こうした事情に鑑みて、従来から、濃縮飲料に配合する各種成分については、喫飲時に希釈せずに飲用する各種容器詰め飲料と同程度の香味感を呈するよう種々の工夫されてきた。たとえば、従来の濃縮飲料では、各種配合成分の濃度を低下させることなく十分な香味感を付与すべく、たとえば、フレーバーなどの香味オイルを配合することが一般的であった。
【0003】
また、濃縮飲料は、希釈せずに飲用することを想定した各種容器詰め飲料と比べて、開封してから再度閉栓して保存する可能性が高いという事情を有している。そのため、従来の濃縮飲料では、保存時に上述した香味オイル等に起因するオイル成分が液面に浮いてしまうという不都合が生じてしまうことがあった。すなわち、従来の濃縮飲料は、保存安定性という観点において改善の余地を有していた。こうした事情に鑑みて、濃縮飲料の保存安定性については、従来から種々の検討がなされてきた。
【0004】
たとえば、特許文献1には、酸味料と、香味料と、水と、プロピレングリコール、グリセロール、エタノール、トリアセチン、酢酸エチル、ベンジルアルコール、イソプロパノール、1,3−プロパンジオール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される両親媒性の非水性液体と、を含む濃縮飲料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2014−522670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の濃縮飲料は、長期保存時に、依然として、微量のオイル成分が分離して液面に浮いてしまうという不都合が生じる場合があった。具体的には、本発明者は、従来の濃縮飲料において香味オイル等に起因するオイル成分が液面に浮いてしまった場合、味および香りのバランスや、見栄えという観点において品質が低下する可能性があることを知見した。
【0007】
以上を踏まえ、本発明は、保存安定性に優れた濃縮飲料、および濃縮飲料の品質改善方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、保存安定性に優れた濃縮飲料を提供すべく、鋭意検討した。その結果、乳化香料と、非水性液体とを併用し、かつ上記非水性液体の含有量と、その組成とが所定の条件を満たすように制御することがその設計指針として有効であることを見出し、本発明に至った。
【0009】
本発明によれば、5倍以上200倍以下に希釈
されて喫飲
される濃縮飲料であって、
前記濃縮飲料
は乳化香
料を含み、
当該乳化香料は、非水溶性溶媒としてグリセロールを含み、
前記乳化香料の含有量が当該濃縮飲料全量に対して
0.1重量%以上
1重量%以下であ
り、
前記グリセロールの含有量が当該濃縮飲料全量に対して0.079〜0.79vol%である、
オイル浮きおよび沈殿発生が抑制された濃縮飲料が提供される。
【0010】
さらに、本発明によれば、5倍以上200倍以下に希釈して喫飲する濃縮飲料の品質改善方法であって、
前記濃縮飲料は、プロピレングリコール、グリセロール、エタノール、グリセリン酢酸エステル、酢酸エチル、ベンジルアルコールおよびイソプロパノールからなる群より選択される1種以上の溶媒を含む非水性溶媒と、乳化香料と、を含み、
前記濃縮飲料全量に対する前記非水性溶媒の含有量が20vol%以下となるように調製し、
かつ前記非水性溶媒が前記グリセロールを含むように調製し、かつ前記非水性溶媒が前記プロピレングリコールを含む場合、前記プロピレングリコールの含有量は、当該濃縮飲料全量に対して0.6vol%以下となるよう調製し、前記非水性溶媒が前記エタノールを含む場合、前記エタノールの含有量は、当該濃縮飲料全量に対して1vol%以下となるよう調製し、前記非水性溶媒が前記ベンジルアルコールを含む場合、前記ベンジルアルコールの含有量は、当該濃縮飲料全量に対して1vol%以下となるよう調製し、前記非水性溶媒が前記イソプロパノールを含む場合、前記イソプロパノールの含有量は、当該濃縮飲料全量に対して1vol%以下となるよう調製
し、前記乳化香料の含有量が当該濃縮飲料全量に対して0.05重量%以上4重量%以下となるように調製する、濃縮飲料の品質改善方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、保存安定性に優れた濃縮飲料、および濃縮飲料の品質改善方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の濃縮飲料は、5倍以上200倍以下に希釈してから喫飲することを想定したものである。かかる濃縮飲料は、プロピレングリコール、グリセロール、エタノール、グリセリン酢酸エステル、酢酸エチル、ベンジルアルコールおよびイソプロパノールからなる群より選択される1種以上の溶媒を含む非水性溶媒と、乳化香料と、を含み、当該濃縮飲料全量に対する非水性溶媒の含有量が20vol%以下であるものである。こうすることで、保存時にオイル成分の浮きが発生することを抑制できる程度に保存安定性に優れた濃縮飲料を実現することができる。なお、上記非水性溶媒は、いずれも、両親媒性の溶媒である。
【0013】
特に、本発明の濃縮飲料においては、かかる飲料中に配合する非水性溶媒の種類に応じて、その含有量をも制御することが重要である。具体的には、非水性溶媒がプロピレングリコールを含む場合、プロピレングリコールの含有量は、当該濃縮飲料全量に対して0.6vol%以下である。同様に、非水性溶媒がエタノール、ベンジルアルコールおよびイソプロパノールのいずれか1種以上を含む場合、各成分の含有量は、当該濃縮飲料全量に対してそれぞれ1vol%以下である。こうすることで、非水性溶媒と、上記非水性溶媒とともに濃縮飲料中に配合している乳化香料との相乗効果を最大限に発揮することができる。また、当該濃縮飲料全量に対するプロピレングリコール、エタノール、ベンジルアルコールおよびイソプロパノールの含有量の下限値は、いずれも、0vol%に近ければ近いほど好ましい。
【0014】
上記発明が解決しようとする課題の項で述べたとおり、特許文献1に記載の濃縮飲料は、長期保存時に、依然として、微量のオイル成分が分離して液面に浮いてしまうという不都合が生じる場合があった。具体的には、本発明者は、従来の濃縮飲料において香味オイル等に起因するオイル成分が液面に浮いてしまった場合、味および香りのバランスや、見栄えという観点において品質が低下する可能性があることを知見した。
【0015】
そこで、本発明者は、上述した不都合が生じることのない保存安定性に優れた濃縮飲料を提供すべく、その設計指針について鋭意検討した。その結果、本発明者は、乳化香料と、非水性液体とを併用し、かつ上記非水性液体の含有量と、その組成とが所定の条件を満たすように制御することが設計指針として有効であることを見出した。ここで、上記乳化香料とは、食品に香気を付与増強する食品香料であるフレーバーを水に乳化させ微粒子状態にしたものを指す。
【0016】
具体的には、本発明に係る濃縮飲料は、非水性溶媒と、乳化香料と、を含むものであり、かつ当該濃縮飲料全量に対する非水性溶媒の合計含有量が20vol%以下となるように制御されたものである。こうすることで、上述した乳化香料による乳化・分散作用を最大限に発現させることが可能となる。それ故、本発明によれば、保存時にオイル成分が浮いてしまうことを抑制した保存安定性に優れた濃縮飲料を実現することができる。なお、本発明に係る濃縮飲料において、原材料として使用する水の形態は特に限定されない。上記原材料として使用する水の形態の具体例としては、市水、井水、蒸留水、ミネラルウォーター、イオン交換水、脱気水等が挙げられる。また、本発明によれば、上述したように、保存時にオイル成分が浮いてしまうことを抑制できるため、結果として、味および香りのバランスや、見栄えという観点において品質の経時安定性に優れた濃縮飲料を実現可能である。
【0017】
ここで、本発明に係る濃縮飲料において、非水性溶媒の合計含有量は、上述した通り、当該濃縮飲料全量に対して20vol%以下であるが、乳化香料による乳化・分散作用を最大限に発現させる観点から、好ましくは、17vol%以下であり、さらに好ましくは、13vol%以下である。なお、下限値は、3vol%以上であれば十分に乳化・分散作用を発現させることができる。
【0018】
また、本発明に係る濃縮飲料は、5倍以上200倍以下に希釈してから喫飲することを想定したものであるが、その濃縮率は、好ましくは、5倍以上100倍以下であり、さらに好ましくは、5倍以上50倍以下である。つまり、本発明に係る濃縮飲料は、5倍以上200倍以下に希釈してから喫飲することが好ましく、5倍以上50倍以下に希釈してから喫飲するとさらに好ましい。こうすることで、呈味の嗜好性にバラつきのない濃縮飲料を実現することが可能である。
【0019】
また、本発明に係る濃縮飲料において乳化香料の含有量は、当該濃縮飲料の保存安定性をより一層向上させる観点から、当該濃縮飲料全量に対して、好ましくは、0.05重量%以上4重量%以下であり、さらに好ましくは、0.1重量%以上2重量%以下である。
【0020】
本発明における乳化香料は、ポリグリセリン脂肪酸エステル、キラヤサポニンおよびアラビアガムからなる群より選択される1種以上の乳化剤を含むことが好ましい。ここで、ポリグリセリン脂肪酸エステルは、植物油由来のグリセリンを脱水縮合したポリグリセリンと植物油由来の脂肪酸をエステル結合させた乳化剤である。ポリグリセリン脂肪酸エステルは、HLB値の幅が広いため濃縮飲料の配合成分の種類に関係なく使用可能である点において汎用性に優れた乳化剤である。キラヤサポニンは、界面活性および均質性という観点において優れた植物由来の乳化剤である。アラビアガムは、水に対する溶解性に優れ、かつ良好な乳化安定性を示す乳化剤である。
【0021】
ここで、本発明に係る濃縮飲料において、乳化香料中に含まれる乳化剤は乳化粒子(エマルション)の形態をとっている。本発明に係る濃縮飲料中に含まれている乳化粒子の平均粒子径d50は、好ましくは、10nm以上200nm以下であり、さらに好ましくは、10nm以上150nm以下である。こうすることで、乳化粒子の分散安定性に優れ、かつ長期間保存した際においてもオイル浮きや沈殿といった不都合が生じにくい品質の経時安定性に優れた濃縮飲料を実現することができる。
【0022】
本発明に係る濃縮飲料には、当該濃縮飲料に甘味を付与する甘味成分として、天然甘味料または合成甘味料を含んでいてもよい。こうすることで、嗜好性に優れた濃縮飲料とすることができる。上述した天然甘味料としては、ショ糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、麦芽糖、果糖ブドウ糖液糖等の糖類、キシリトール、D−ソルビトール等の低甘味度甘味料、タウマチン、ステビア抽出物、グリチルリチン酸二ナトリウム、ステビア抽出物等の高甘味度甘味料などが挙げられる。他方、上述した合成甘味料としては、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、ネオテーム、サッカリンナトリウム等の高甘味度甘味料が挙げられる。これらの甘味料は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合してもよい。中でも、濃縮飲料に甘味を付与する成分として、高甘味度甘味料を含有させることが好ましい。こうすることで、当該濃縮飲料中に配合される甘味成分を除く他成分の濃度を大幅に変動させることなく、十分な甘味を付与することができる。そのため、保存安定性能を損なうことなく、嗜好性に優れた濃縮飲料を実現することができる。
【0023】
また、上述した高甘味度甘味料の含有量は、本発明に係る濃縮飲料全量に対して、好ましくは、0.001重量%以上1重量%以下であり、さらに好ましくは、0.005重量%以上0.6重量%以下である。こうすることで、保存安定性能を損なうことなく、より一層嗜好性に優れた濃縮飲料を実現することができる。
【0024】
本発明に係る濃縮飲料には、たとえば、無水クエン酸、クエン酸、クエン酸カリウム、クエン酸三ナトリウム、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、又はそれらの塩類等の酸味料を含有させてもよい。こうすることで、保存安定性能を損なうことなく、呈味性という観点において優れた濃縮飲料を実現することができる。
【0025】
本発明に係る濃縮飲料のpHは、当該濃縮飲料の配合成分同士が化学に相互作用して生じた生成物が沈殿してしまうことを抑制する観点から、好ましくは、2以上6以下であり、さらに好ましくは、2.4以上5以下であり、最も好ましくは、3以上4以下である。
【0026】
本発明に係る濃縮飲料は、果汁を含んでいてもよい。ここで、果汁とは、果実を粉砕して搾汁、裏ごし等をし、皮、種子等を除去したものだけでなく、果実を粉砕しただけのピューレ状の果肉も含む。また、果実の種類としては、特に限定されるものではないが、たとえば、マスカットや巨峰等のぶどう類、みかん、オレンジ、レモン、グレープフルーツ、ライム、マンダリン、ユズ、シークワーサー、タンジェリン、テンプルオレンジ、タンジェロ、カラマンシー、デコポン、ポンカン、イヨカン、バンペイユ等の柑橘類、イチゴ、ブルーベリー、ラズベリー、アサイー、キウイフルーツ、ブドウ、マスカット、モモ、リンゴ、パイナップル、グアバ、バナナ、マンゴー、アセロラ、プルーン、パパイヤ、パッションフルーツ、ウメ、ナシ、アンズ、ライチ、メロン、スイカ、サクランボ、西洋ナシ、スモモ等が挙げられる。これらの果実は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0027】
また、本発明に係る濃縮飲料に含有させる果汁としては、上記果物由来の果汁に限定されず、以下に挙げる野菜由来の野菜汁を含有させてもよい。野菜の種類としては、スィートコーン、エダマメ、ダイコン、ニンジン、ゴボウ、ラディッシュ、カブ、サツマイモ、ジャガイモ、ナガイモ、ヤマイモ、サトイモ、ジネンジョ、ヤマトイモ、ピーマン、パプリカ、シシトウ、キュウリ、セロリ、ケール、ネギ、キャベツ、ハクサイ、シュンギク、サラダナ、サンチュ、オオバ、ホウレンソウ、コマツナ、ミズナ、ミブナ、アスパラガス、クウシンサイ、レタス、タイム、セージ、パセリ、イタリアンパセリ、ローズマリー、オレガノ、レモンバーム、チャイブ、ラベンダー、サラダバーネット、ラムズイヤー、ロケット、ダンディライオン、ナスタチューム、バジル、ルッコラ、クレソン、モロヘイヤ、フキ、ナバナ、チンゲンサイ、ミツバ、セリ、メキャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、ミョウガ、ナス、トマト、ミニトマト、カボチャ、ゴーヤ、オクラ、サヤエンドウ、サヤインゲン、ソラマメ等が挙げられる。また、野菜由来の果汁についても、果物と同様に、1種を単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。さらに、野菜由来の果汁と果物由来の果汁を混合して使用してもよい。
【0028】
本発明に係る濃縮飲料は、ミネラル成分を含んでいてもよい。具体的には、上記ミネラル成分は、カルシウム、鉄、ナトリウム、マグネシウムおよびカリウム等が挙げられる。こうすることで、かかる濃縮飲料を、スポーツ飲料および熱中症対策飲料等の機能性飲料として提供することが可能となる。ここで、上記ミネラル成分の含有量は、本発明に係る濃縮飲料100mLあたり、5mg以上80mg以下とすることが好ましく、さらに好ましくは、10mg以上70mg以下とするとさらに好ましい。こうすることで、本発明に係る濃縮飲料を喫飲した際に、消費者が、水分、電解質分およびミネラル分等の栄養成分を体内に補給しやすい配合組成とすることができる。
【0029】
本発明に係る濃縮飲料は、アミノ酸を含んでいてもよい。かかるアミノ酸としては、アルギニン、リジン、オルニチン、ヒスチジンおよびトリプトファン等の塩基性アミノ酸が好ましい。かかる塩基性アミノ酸は、アンチエイジング、生活習慣病の予防、疲労回復、成長ホルモンの分泌等の体内機能改善に役立つ成分として知られている。そのため、上記塩基性アミノ酸を本発明に係る濃縮飲料中に含有させた場合、かかる濃縮飲料は、体内機能改善効果を有するものとすることができる。なお、本発明に係る塩基性アミノ酸とは、分子構造中に官能基としてカルボキシル基と、2以上のアミノ基を有する有機化合物のことを指す。そして、本実施形態に係る塩基性アミノ酸は、α−アミノ酸であってもよく、β−アミノ酸であってもよいし、γ−アミノ酸であってもよい。
【0030】
本発明に係る濃縮飲料にアミノ酸を含有させる場合、上記アミノ酸の含有量は、好ましくは、1.0g/L以上4.0g/L以下であり、さらに好ましくは、1.5g/L以上3.0g/L以下である。こうすることで、保存安定性能を損なうことなく、体内機能改善効果に優れた濃縮飲料を実現することができる。
【0031】
また、本発明に係る濃縮飲料は、カフェイン、高麗人参エキス、ガラナ・マカエキス、ローヤルゼリー粉末等の天然活力素材を含んでいてもよい。こうすることで、本発明に係る濃縮飲料をエナジードリンクの形態として市場に流通させることが可能となる。
【0032】
本発明に係る濃縮飲料に上述した天然活力素材を含有させる場合、上記天然活力素材の含有量は、好ましくは、1.0g/L以上4.0g/L以下であり、さらに好ましくは、1.5g/L以上3.0g/L以下である。こうすることで、保存安定性能を損なうことなく、体内への栄養補給効果に優れた濃縮飲料を実現することができる。
【0033】
なお、本発明に係る濃縮飲料には、以上に説明した成分の他にも、本発明の目的を損なわない範囲で各種栄養成分、抽出物、香料、着色剤、希釈剤、酸化防止剤等の食品添加物を添加することもできる。
【0034】
本発明における濃縮飲料を封入する容器は、飲料業界で公知の密封容器であれば、適宜選択して用いることができる。その具体例としては、ガラス、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート(PET)、等)、アルミ、スチール等の単体もしくは複合材料又は積層材料からなる密封容器が挙げられる。また、容器形状は、特に限定されるものではないが、たとえば、缶容器、ボトル容器等が挙げられる。
【0035】
<炭酸飲料の品質改善方法>
5倍以上200倍以下に希釈して喫飲する濃縮飲料について、保存時にオイル成分が浮いてしまうという不都合が生じ、結果として、味および香りのバランスや、見栄えという観点において品質が低下することのないものを実現するためには、プロピレングリコール、グリセロール、エタノール、グリセリン酢酸エステル、酢酸エチル、ベンジルアルコールおよびイソプロパノールからなる群より選択される1種以上の溶媒を含む非水性溶媒と、乳化香料と、を含み、かつ濃縮飲料全量に対する上記非水性溶媒の含有量が20vol%以下となるように調製することが重要である。ただし、上記非水性溶媒がプロピレングリコールを含む場合、かかるプロピレングリコールの含有量は、当該濃縮飲料全量に対して0.6vol%以下となるよう調製する必要が有り、上記非水性溶媒がエタノールを含む場合、エタノールの含有量は、当該濃縮飲料全量に対して1vol%以下となるよう調製する必要が有り、上記非水性溶媒がベンジルアルコールを含む場合、ベンジルアルコールの含有量は、当該濃縮飲料全量に対して1vol%以下となるよう調製する必要が有り、上記非水性溶媒がイソプロパノールを含む場合、イソプロパノールの含有量は、当該濃縮飲料全量に対して1vol%以下となるよう調製する必要が有る。こうすることで、従来の濃縮飲料と比べて、味および香りのバランスや、見栄えという観点において品質の経時安定性に優れた濃縮飲料を実現することができる。
【0036】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、本発明の参考形態の一例を示す。
<1>
5倍以上200倍以下に希釈して喫飲する濃縮飲料であって、
当該濃縮飲料は、
プロピレングリコール、グリセロール、エタノール、グリセリン酢酸エステル、酢酸エチル、ベンジルアルコールおよびイソプロパノールからなる群より選択される1種以上の溶媒を含む非水性溶媒と、
乳化香料と、
を含み、
当該濃縮飲料全量に対する前記非水性溶媒の含有量が20vol%以下であり、
前記非水性溶媒が前記プロピレングリコールを含む場合、前記プロピレングリコールの含有量は、当該濃縮飲料全量に対して0.6vol%以下であり、
前記非水性溶媒が前記エタノールを含む場合、前記エタノールの含有量は、当該濃縮飲料全量に対して1vol%以下であり、
前記非水性溶媒が前記ベンジルアルコールを含む場合、前記ベンジルアルコールの含有量は、当該濃縮飲料全量に対して1vol%以下であり、
前記非水性溶媒が前記イソプロパノールを含む場合、前記イソプロパノールの含有量は、当該濃縮飲料全量に対して1vol%以下である、濃縮飲料。
<2>
前記乳化香料が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、キラヤサポニンおよびアラビアガムからなる群より選択される1種以上の乳化剤を含む、<1>に記載の濃縮飲料。
<3>
当該濃縮飲料中に含まれている乳化粒子の平均粒子径d50が、10nm以上200nm以下である、<1>または<2>に記載の濃縮飲料。
<4>
前記乳化香料の含有量が当該濃縮飲料全量に対して0.05重量%以上4重量%以下である、<1>乃至<3>のいずれか一つに記載の濃縮飲料。
<5>
高甘味度甘味料をさらに含む、<1>乃至<4>のいずれか一つに記載の濃縮飲料。
<6>
前記高甘味度甘味料の含有量が、当該濃縮飲料全量に対して0.001重量%以上1重量%以下である、<5>に記載の濃縮飲料。
<7>
クエン酸をさらに含む、<1>乃至<6>のいずれか一つに記載の濃縮飲料。
<8>
5倍以上200倍以下に希釈して喫飲する濃縮飲料の品質改善方法であって、
前記濃縮飲料は、プロピレングリコール、グリセロール、エタノール、グリセリン酢酸エステル、酢酸エチル、ベンジルアルコールおよびイソプロパノールからなる群より選択される1種以上の溶媒を含む非水性溶媒と、乳化香料と、を含み、
前記濃縮飲料全量に対する前記非水性溶媒の含有量が20vol%以下となるように調製し、かつ前記非水性溶媒が前記プロピレングリコールを含む場合、前記プロピレングリコールの含有量は、当該濃縮飲料全量に対して0.6vol%以下となるよう調製し、前記非水性溶媒が前記エタノールを含む場合、前記エタノールの含有量は、当該濃縮飲料全量に対して1vol%以下となるよう調製し、前記非水性溶媒が前記ベンジルアルコールを含む場合、前記ベンジルアルコールの含有量は、当該濃縮飲料全量に対して1vol%以下となるよう調製し、前記非水性溶媒が前記イソプロパノールを含む場合、前記イソプロパノールの含有量は、当該濃縮飲料全量に対して1vol%以下となるよう調製する、濃縮飲料の品質改善方法。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
<実施例1〜4および比較例1〜4>
まず、実施例及び比較例の濃縮飲料を作製するための配合原料である、クエン酸、クエン酸三カリウム、アセスルファムカリウム、スクラロース、香料(ジボダン社製)および乳化香料(ジボダン社製)を、それぞれ純水に溶解させた。なお、香料(ジボダン社製)は、蒸留酒抽出物、オレンジ分画物およびオレンジ精油を全量に対して9vol%、エタノールを84.2vol%および水を6.8vol%含むエタノール基材のエッセンス香料である。また、乳化香料(ジボダン社製)は、当該乳化香料全量に対して、ポリグリセリン脂肪酸エステルを6vol%、オレンジフレーバー(蒸留酒抽出物、オレンジ分画物およびオレンジ精油)を6vol%、非水性溶媒としてグリセロールを79vol%含み、かつ、乳化粒子の平均粒子径d50が120nmであるものである。また、乳化香料中には、上記成分の他に、食品素材、トコフェノール等の成分が含まれている。
【0039】
次に、準備した配合原料を用い、下記表1に示す配合比率となるように混合して実施例1および比較例1の濃縮飲料を作製した。なお、実施例2〜4および比較例2〜4の濃縮飲料については、かかる実施例1および比較例1の濃縮飲料を純水で希釈して作製した。
【0040】
得られた各濃縮飲料について、以下に示す官能評価を行った。なお、評価に用いた濃縮飲料は、製造直後に20℃で48時間以上静置保管したものを使用した。
【0041】
(評価項目)
・官能評価試験1(オイル浮き):実施例1〜4および比較例1〜4の濃縮飲料を、熟練したパネラーが目視にて観察した。パネラーは、各濃縮飲料について、以下の評価基準に従って3段階評価を実施した。
○:オイル浮き無し。
△:飲料の表面がギラついている。
×:飲料の表面に油滴が浮いている。
【0042】
・官能評価試験2(沈殿):実施例1〜4および比較例1〜4の濃縮飲料を、熟練したパネラーが目視にて観察した。パネラーは、各濃縮飲料について、以下の評価基準に従って2段階評価を実施した。
○:沈殿なし。
×:飲料中に沈殿が生じている。
【0043】
上記評価項目に関する官能評価結果を、以下の表1に各成分の配合比率と共に示す。なお、下記表1における「n.d.」という表記は、検出されなかったことを示す。
【0044】
【表1】
【0045】
上記表1に示すように、実施例の濃縮飲料は、いずれも、保存安定性に優れた飲料であった。また、実施例の濃縮飲料は、いずれも、喫飲時の味および香りのバランスや、見栄えという観点において良好な品質を実現したものであった。一方、比較例の飲料は、いずれも、オイル浮きが生じ、保存安定性という観点において要求水準を満たすものではなかった。また、比較例の飲料は、少なくとも見栄え(品質)という観点において要求水準を満たすものではなかった。
【0046】
また、実施例の濃縮飲料は、いずれも、濃縮率が異なるものではあるが、喫飲時の味および香りのバランスという観点において呈味の嗜好性にバラつきの無いものであった。一方、比較例の濃縮飲料は、呈味の嗜好性(味および香りのバランス)にバラつきが生じ、結果として、品質という観点において要求水準を満たすものではなかった。