特許第6689596号(P6689596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6689596
(24)【登録日】2020年4月10日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】3次元造形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/393 20170101AFI20200421BHJP
   B29C 64/165 20170101ALI20200421BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20200421BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20200421BHJP
【FI】
   B29C64/393
   B29C64/165
   B33Y30/00
   B33Y50/02
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-228565(P2015-228565)
(22)【出願日】2015年11月24日
(65)【公開番号】特開2017-94587(P2017-94587A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年10月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】小林 光一
【審査官】 神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−186889(JP,A)
【文献】 特開2002−067174(JP,A)
【文献】 特開2003−145744(JP,A)
【文献】 特開2004−230895(JP,A)
【文献】 特表2006−515813(JP,A)
【文献】 国際公開第03/016031(WO,A1)
【文献】 特開2016−107582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00−64/40
B33Y 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末材料をバインダにより結合させて所定の断面形状の粉末固化層を積層することにより3次元造形物を造形する3次元造形装置であって、
前記粉末材料が供給されて造形が行われる造形槽と、
前記造形槽に供給された前記粉末材料に前記バインダを液滴として供給するバインダ供給ヘッドと、
造形する3次元造形物を複数の断面層にスライスした断面画像データを記憶する第1記憶部と、
前記断面画像データのラスタ画像データを記憶する第2記憶部と、
前記ラスタ画像データに基づき、前記バインダ供給ヘッドを所定方向に移動させるとともに、前記バインダ供給ヘッドからの前記バインダの前記液滴の供給を制御する制御装置と、
を備え、
前記ラスタ画像データは、前記所定方向に沿った前記液滴の供給領域の端部位置に相当する端部画素と、前記液滴の供給領域の前記端部位置以外の領域に相当する非端部画素とを含み、
前記制御装置は、
前記バインダ供給ヘッドから、少なくとも第1の量の液滴である第1液滴と、前記第1の量とは異なる量の液滴である調整液滴とのいずれかを供給させる液滴制御部と、
前記所定方向における前記液滴の供給領域の最端部である端部位置に、前記第1液滴または前記調整液滴を供給させるヘッド制御部と、
前記断面画像データと前記ラスタ画像データとを比較し、前記断面画像データから把握される前記断面層の端部位置と、前記ラスタ画像データの前記端部画素の位置と、の前記所定方向における差分が、所定の許容誤差よりも大きいか否かを判断する判断部と、
を備え、
前記液滴制御部は、
前記端部位置以外の領域に前記第1液滴を供給し、
前記判断部が、前記差分が前記許容誤差以下であると判断したとき、前記端部位置に前記第1液滴を供給し、
前記判断部が、前記差分が前記許容誤差よりも大きいと判断したとき、前記端部位置に前記調整液滴を供給するよう構成されている、3次元造形装置。
【請求項2】
前記調整液滴は、前記第1液滴よりも多い量の液滴である第2液滴および前記第1の量よりも少ない第3の量の液滴である第3液滴の少なくとも一方を含む、請求項1に記載の3次元造形装置。
【請求項3】
前記液滴制御部は、前記差分と、前記バインダの液滴数を調整する際の基準となる調整基準との大きさを比較する液滴数判断部を備え、
前記液滴数判断部が、少なくとも前記差分が前記調整基準よりも大きいと判断したとき、前記端部位置を前記所定方向で前記ラスタ画像データにおける一画素分ずらして新端部位置とし、
前記ヘッド制御部は、前記新端部位置に前記調整液滴を供給させるよう構成されている、請求項1または2に記載の3次元造形装置。
【請求項4】
前記調整液滴は前記第1液滴よりも多い量の液滴である第2液滴を含み、
前記液滴制御部は、
ラスタ画像データの一画素あたりの寸法の1/2の値を、前記バインダの液滴数を調整する際の基準となる調整基準として設定したとき、前記差分と前記調整基準との大きさとを比較する液滴数判断部と、
前記端部画素が、前記断面画像データから把握される前記断面層の断面領域内にあるか否かを判断する位置判定部と、
前記液滴数判断部が、前記差分が前記調整基準よりも小さいと判定し、かつ、前記位置判定部が、前記端部画素が前記断面領域内にあると判定した場合に、前記端部位置に前記第2液滴を供給させる第1ドット制御部と、
を備える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の3次元造形装置。
【請求項5】
前記調整液滴は前記第1液滴よりも少ない量の液滴である第3液滴を含み、
前記液滴制御部は、
ラスタ画像データの一画素あたりの寸法の1/2の値を、前記バインダの液滴数を調整する際の基準となる調整基準として設定したとき、前記差分と前記調整基準との大きさとを比較する液滴数判断部と、
前記端部画素が、前記断面画像データから把握される前記断面層の断面領域内にあるか否かを判断する位置判定部と、
前記液滴数判断部が、前記差分が前記調整基準以上であると判定し、かつ、前記位置判定部が、前記端部画素が前記断面領域内にあると判定した場合に、前記端部位置を前記非端部画素位置とは前記所定方向の反対側に前記ラスタ画像データにおける一画素分ずらして新端部位置とし、前記新端部位置に前記第3液滴を追加で供給させる第2ドット制御部と、
を備える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の3次元造形装置。
【請求項6】
前記調整液滴は前記第1液滴よりも少ない量の液滴である第3液滴を含み、
前記液滴制御部は、
ラスタ画像データの一画素あたりの寸法の1/2の値を、前記バインダの液滴数を調整する際の基準となる調整基準として設定したとき、前記差分と前記調整基準との大きさとを比較する液滴数判断部と、
前記端部画素が、前記断面画像データから把握される前記断面層の断面領域内にあるか否かを判断する位置判定部と、
前記液滴数判断部が、前記差分が前記調整基準よりも小さいと判定し、かつ、前記位置判定部が、前記端部画素の位置が前記断面領域外にあると判定した場合に、前記端部位置に、前記第3液滴を供給させる第3ドット制御部と、
を備える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の3次元造形装置。
【請求項7】
前記調整液滴は前記第1液滴よりも多い量の液滴である第2液滴を含み、
前記液滴制御部は、
ラスタ画像データの一画素あたりの寸法の1/2の値を、前記バインダの液滴数を調整する際の基準となる調整基準として設定したとき、前記差分と前記調整基準との大きさとを比較する液滴数判断部と、
前記端部画素が、前記断面画像データから把握される前記断面層の断面領域内にあるか否かを判断する位置判定部と、
前記液滴数判断部が、前記差分が前記調整基準よりも大きいと判定し、かつ、前記位置判定部が、前記端部画素の位置が前記断面領域外にあると判定した場合に、前記端部画素位置に隣接する前記非端部画素を新端部位置とし、前記新端部位置に第2液滴を供給させる第4ドット制御部と、
を備える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の3次元造形装置。
【請求項8】
前記第2液滴における前記バインダの液滴量Qは、前記第1液滴における前記バインダの液滴量をQとしたとき、次式:1.2×Q≦Q≦1.5×Q;で表される、請求項2、4、7のいずれか1項に記載の3次元造形装置。
【請求項9】
前記第3液滴における前記バインダの液滴量Qは、前記第1液滴における前記バインダの液滴量をQとしたとき、次式:0.5×Q≦Q≦0.8×Q;で表される、請求項2、5−6のいずれか1項に記載の3次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式を採用した3次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、粉末材料をバインダで結合させて所定の断面形状の粉末固化層を形成し、順次積層することにより、所望の立体形状の造形物(3次元造形物)を造形する3次元造形装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、3次元造形物を構成する粉末材料が貯留される粉末材料槽と、粉末材料が供給されて造形が行われる造形槽と、粉末材料槽に貯留された粉末材料を造形槽に供給する供給部材と、造形槽の上方に配置され、未硬化で液体状態のバインダを供給するバインダ供給ヘッドと、を備える3次元造形装置が開示されている。この種の3次元造形装置では、予め、所望の3次元造形物を所定の厚みでスライスしたスライスモデルについての空間データ(スライスデータ)を用意している。そして、バインダ供給ヘッドは、造形槽に収容された粉末材料のうち、スライスデータに対応する部分にバインダを供給する。粉末材料のうちバインダが供給された部分では、バインダが固化することで粉末を構成する粒子が結合される。これにより、スライスデータに対応した断面形状の粉末固化層が造形される。
【0004】
形成された粉末固化層は造形槽内で硬化され、粉末固化層の上には新たな粉末材料がスライスデータに対応した厚みで供給される。そしてバインダ供給ヘッドは、供給された粉末材料のうち、次のスライスデータに対応する部分にバインダを供給する。このことを繰り返すことにより、粉末固化層が一体的に積み重ねられて、3次元造形物が完成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−137173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、バインダ供給ヘッドは、バインダを液滴化して粉末材料に吐出する、いわゆるインクジェット方式によりバインダを供給する。また、スライスデータとしては、スライスした3次元造形物の断面形状を、バインダ供給ヘッドの解像度に応じた微細な画素(ドット)により構成したラスタ画像データが用いられる。バインダの液滴は、このラスタ画像データに基づき粉末材料の表面にドット状に供給される。したがって、3次元造形装置により形成される粉末固化層には、スライスしたスライスモデルの形状を厳密に再現することができず、形状誤差が生じるという課題が存在する。例えば、スライスモデルの輪郭が滑らかな曲線であっても、ラスタ画像データには凹凸の形成が避けられず、結果として3次元造形物においてもラスタ画像データに対応した凹凸が形成され得る。このような凹凸は、従来の2次元平面に対する印刷体などにおいても潜在的に発生するものである。
【0007】
しかしながら、粉末固化層は、実際には人の目に知覚可能な厚みを有していることがある。この場合、上記の凹凸は立体的な形状として現出される。このような凹凸や段差等の立体的な形状誤差は、所定の方向から光が照射された場合に、本来ならば見られない位置に影を形成する。そのため、3次元造形物には、2次元平面における印刷体とは異なり、凹凸や段差等の立体的な形状誤差がより一層際立ってしまうという特有の問題があった。また、3次元造形物の用途によっては、より形状精度の高い3次元造形物を造形することが求められる。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、インクジェット方式を採用した3次元造形装置において、表面の凹凸や段差等の立体的な形状誤差を軽減して3次元造形物を造形することができる3次元造形装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ここに開示される技術は、粉末材料をバインダにより結合させて所定の断面形状の粉末固化層を積層することにより3次元造形物を造形する3次元造形装置を提供する。この3次元造形装置は、造形槽と、バインダ供給ヘッドと、第1記憶部と、第2記憶部と、制御装置とを備えている。造形槽は、粉末材料が供給されて、造形が行われる。バインダ供給ヘッドは、造形槽に供給された粉末材料にバインダを液滴として供給する。第1記憶部は、造形する3次元造形物を複数の断面層にスライスした断面画像データを記憶する。第2記憶部は、断面画像データのラスタ画像データを記憶する。そして、制御装置は、バインダ供給ヘッドから、少なくとも第1の量の液滴である第1液滴と、第1の量とは異なる量の液滴である調整液滴とのいずれかを供給させる液滴制御部と、所定方向における液滴の供給領域の最端部である端部位置に、第1液滴または調整液滴を供給させるヘッド制御部と、を備えている。
【0010】
本発明の3次元造形装置によれば、制御部は、ラスタ画像データに基づいてバインダ供給ヘッドを制御し、造形槽に収容された粉末材料にバインダを供給する。これにより、ラスタ画像データに対応する所定の断面形状の粉末固化層を順次形成することができ、3次元造形物を造形することができる。そしてこのバインダの供給に際し、制御装置は、3次元造形物の表面となる端部位置において、供給するバインダの液滴量を異ならせることができる。これにより、ラスタ画像データのみに従って3次元造形物を作製した場合に比べて、断面画像データにより近い粉末固化層を形成することができる。換言すると、端部位置における立体的な形状誤差を軽減することができる。したがって、表面における本来不要な凹凸が緩和されて、より形状精度の高い3次元造形物を造形することが可能となる。
【0011】
本発明の一態様において、ラスタ画像データは、所定方向に沿った液滴の供給領域の端部位置に相当する端部画素と、液滴の供給領域の端部位置以外の領域に相当する非端部画素とを含む。制御装置は、断面画像データとラスタ画像データとを比較し、断面画像データから把握される断面層の端部位置と、ラスタ画像データの端部画素と、の位置の所定方向における差分が、所定の許容誤差よりも大きいか否かを判断する判断部を備えている。そして、液滴制御部は、端部位置以外の領域に前記第1液滴を供給する。また、液滴制御部は、端部位置以外の領域に前記第1液滴を供給し、判断部が、差分が許容誤差以下であると判断したとき、端部位置に第1液滴を供給し、判断部が、差分が許容誤差よりも大きいと判断したとき、端部位置に調整液滴を供給するよう構成されている、
するよう構成されている。
【0012】
上記態様によれば、制御部は、通常は粉末材料に対して第1液滴を供給する。そして端部位置において、目的とする3次元造形物に対するラスタ画像データの形状誤差が許容誤差を超えたときに、バインダの液滴量を変化させて補正する。これにより、形状誤差に応じて供給するバインダの液滴量を制御することができ、3次元造形物の形状誤差を低減することができる。
【0013】
本発明の一態様において、調整液滴は、第1液滴よりも多い量の液滴である第2液滴および第1の量よりも少ない第3の量の液滴である第3液滴の少なくとも一方を含む。
【0014】
上記態様によれば、液滴制御部は、3通りの液量の液滴を粉末材料に供給することができる。液滴制御部は、通常は粉末材料に対して第1液滴を供給する。そして端部位置において、目的とする3次元造形物に対するラスタ画像データの形状誤差が許容誤差を超えたときに、バインダの液滴量を増大させたり減少させたりしてバインダの供給量を補正する。これにより、供給するバインダの液滴量を更に適切に制御して、3次元造形物の形状誤差を低減することができる。
【0015】
本発明の一態様において、液滴制御部は、差分と、バインダの液滴数を調整する際の基準となる調整基準との大きさを比較する液滴数判断部を備えている。そして液滴数判断部が、少なくとも差分が調整基準よりも大きいと判断したとき、端部位置を所定方向でラスタ画像データにおける一画素分ずらして新端部位置とし、ヘッド制御部は、この新端部位置に調整液滴を供給させるよう構成されている。
【0016】
上記態様によれば、液滴数を変更することによっても、ラスタ画像データにおける形状誤差を補正することができる。これにより、寸法精度をより高めて形状誤差を軽減するための処理を実行することができる。
【0017】
本発明の一態様において、調整液滴は第1液滴よりも多い量の液滴である第2液滴を含む。また液滴制御部は、液滴数判断部と、位置判定部と、第1ドット制御部と、を備えている。液滴数判断部は、ラスタ画像データの一画素あたりの寸法の1/2の値を調整基準として設定したとき、差分と調整基準との大きさとを比較する。位置判定部は、端部画素が、断面画像データから把握される断面層の断面領域内にあるか否かを判断する。第1ドット制御部は、液滴数判断部が、差分が調整基準よりも小さいと判定し、かつ、位置判定部が、端部画素が断面領域内にあると判定した場合に、端部位置に第2液滴を供給させる。
【0018】
上記態様によれば、ラスタ画像データが断面画像データよりも小さいとき、液滴制御部は、粉末材料の端部画素に対応する位置により大きな第2液滴を供給して、粉末固化層の形状を断面画像データに近づける。これにより、形状誤差を低減することができる。
【0019】
本発明の一態様において、調整液滴は第1液滴よりも少ない量の液滴である第3液滴を含む。また、液滴制御部は、液滴数判断部と、位置判定部と、第2ドット制御部と、を備えている。液滴数判断部は、ラスタ画像データの一画素あたりの寸法の1/2の値を調整基準として設定したとき、差分と調整基準との大きさとを比較する。位置判定部は、端部画素が、断面画像データから把握される断面層の断面領域内にあるか否かを判断する。第2ドット制御部は、液滴数判断部が、差分が調整基準以上であると判定し、かつ、位置判定部が、端部画素が断面領域内にあると判定した場合に、端部位置を非端部画素位置とは所定方向の反対側にラスタ画像データにおける一画素分ずらして新端部位置とし、この新端部位置に第3液滴を追加で供給させる。
【0020】
上記態様によれば、ラスタ画像データが断面画像データよりも十分に小さいとき、液滴制御部は、粉末材料の端部画素に対応する位置に第2液滴を供給したうえで、より小さな第3液滴を追加して、粉末固化層の形状を断面画像データに近づける。これにより、形状誤差を低減することができる。
【0021】
本発明の一態様において、調整液滴は第1液滴よりも少ない量の液滴である第3液滴を含む。また、液滴制御部は、液滴数判断部と、位置判定部と、第3ドット制御部と、を備えている。液滴数判断部は、ラスタ画像データの一画素あたりの寸法の1/2の値を調整基準として設定したとき、差分と調整基準との大きさとを比較する。位置判定部は、端部画素が、断面画像データから把握される断面層の断面領域内にあるか否かを判断する。第3ドット制御部は、液滴数判断部が、差分が調整基準よりも小さいと判定し、かつ、位置判定部が、端部画素の位置が断面領域外にあると判定した場合に、端部位置に、第3液滴を供給させる。
【0022】
上記態様によれば、ラスタ画像データが断面画像データよりも大きいとき、液滴制御部は、粉末材料の端部画素に対応する位置により小さな第3液滴を供給して、粉末固化層の形状を断面画像データに近づける。これにより、形状誤差を低減することができる。
【0023】
本発明の一態様において、調整液滴は第1液滴よりも多い量の液滴である第2液滴を含む。液滴制御部は、液滴数判断部と、位置判定部と、第4ドット制御部と、を備えている。液滴数判断部は、ラスタ画像データの一画素あたりの寸法の1/2の値を調整基準として設定したとき、差分と調整基準との大きさとを比較する。位置判定部は、端部画素が、断面画像データから把握される断面層の断面領域内にあるか否かを判断する。第4ドット制御部は、位置判定部が、液滴数判断部が、差分が調整基準よりも大きいと判定し、かつ、端部画素の位置が断面領域外にあると判定した場合に、端部画素位置に隣接する非端部画素を新端部位置とし、この新端部位置に第2液滴を供給させる。
【0024】
上記態様によれば、ラスタ画像データが断面画像データよりも十分に大きいとき、液滴制御部は、粉末材料の端部画素に対応する位置にはバインダ液滴を供給しない。そして端部画素の隣の非端部画素に対応する位置に、より大きな第2液滴を供給して、粉末固化層の形状を断面画像データに近づける。これにより、形状誤差を低減することができる。
【0025】
本発明の一態様によれば、第2液滴におけるバインダの液滴量Qは、第1液滴におけるバインダの液滴量をQとしたとき、次式:1.2×Q≦Q≦1.5×Q;で表される。
【0026】
上記態様によれば、ラスタ画像データにおける非端部画素に供給される第1液滴の液滴量を基準として、端部画素に供給される第2液滴の液滴量を適切に調整することができる。これにより、3次元造形物の表面における本来不要な凹凸がより適切に緩和されて、より形状精度の高い3次元造形物を造形することが可能となる。
【0027】
本発明の一態様によれば、第3液滴におけるバインダの液滴量Qは、第1液滴におけるバインダの液滴量をQとしたとき、次式:0.5×Q≦Q≦0.8×Q;で表される。
【0028】
上記態様によれば、ラスタ画像データにおける非端部画素に供給される第1液滴の液滴量を基準として、端部画素に供給される第3液滴の液滴量を適切に調整することができる。これにより、3次元造形物の表面における本来不要な凹凸がより適切に緩和されて、より形状精度の高い3次元造形物を造形することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態に係る3次元造形システムの断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る3次元造形システムの平面図である。
図3】第1記憶部に記憶される断面画像データと、第2記憶部に記憶されるラスタ画像データと、のイメージ図である。
図4】本発明の一実施形態に係る3次元造形装置のブロック図である。
図5】バインダ液滴の供給状態を説明する模式図である。
図6】端部画素に(a)第2液滴、(b)第1液滴、(c)第3液滴を供給した状態を示す模式図である。
図7】(1A)〜(7A)はラスタ画像データに基づくバインダ液滴の供給の様子を示し、(1B)〜(6B)は一実施形態に係るバインダ液滴の供給の様子を示す模式図である。
図8】制御部における液滴量の調整方法の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る3次元造形装置について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0031】
また、本明細書において「インクジェット方式」とは、インクやバインダ等の液体を、微細な液滴として吐出することで、目的の位置に該液体を供給する液体供給手法を意味する。液滴化の手法は特に制限されない。例えば、二値偏向方式あるいは連続偏向方式などの各種の連続方式や、サーマル方式あるいは圧電素子方式などの各種のオンデマンド方式を含む、従来より公知の各種の手法を特に制限なく採用することができる。
【0032】
図1は、一実施形態に係る3次元造形装置10の断面図である。図2は、図1の3次元造形装置10に対応する平面図である。3次元造形装置10は、所望の3次元造形物1を造形するための装置である。なお、図面中の符号F、Re、L、R、Up、Dnは、それぞれ前、後、左、右、上、下を示している。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、3次元造形装置10の設置態様を何ら限定するものではない。
【0033】
3次元造形装置10は、粉末材料2を結合させた粉末材料層1Aを形成し、積層してゆくことで、目的の3次元造形物1を造形する装置である。3次元造形装置10は、造形部20と、粉末材料貯留部30と、バインダ供給ヘッド40と、制御装置50と、第1記憶装置61と、第2記憶装置62と、を備えている。以下、各部の構成と、3次元造形装置10の大まかな動作について説明する。
【0034】
造形部20は、造形槽22と、造形テーブル24と、テーブル昇降装置26とを備えている。造形槽22の内部には、造形槽22の底面に対応した形状の造形テーブル24が設けられている。造形テーブル24は、造形槽22の内部側壁と隙間なく形成されている。この造形槽22と造形テーブル24の上面とで囲まれた領域が造形エリア28となる。そして造形エリア28に粉末材料2を収容して、3次元造形物1の造形を行う。造形テーブル24は、造形槽22の内部を上下方向に昇降移動可能なように構成されている。造形テーブル24は、テーブル昇降装置26に接続されている。テーブル昇降装置26は、造形テーブル24を上下方向に移動させることができる。テーブル昇降装置26としては特に限定されないが、ここではシリンダ機構を採用している。
【0035】
粉末材料貯留部30の内部には、3次元造形物1の主たる構成材料である粉末材料2が貯留される。粉末材料貯留部30は、粉末材料貯留槽32と、粉末材料供給テーブル34と、テーブル昇降装置36と、粉末材料供給ローラ38とを備えている。粉末材料貯留槽32の内部には、粉末材料貯留槽32の底面に対応した形状の粉末材料供給テーブル34が設けられている。粉末材料供給テーブル34は、粉末材料貯留槽32の内部側壁と隙間なく形成されている。粉末材料供給テーブル34は、粉末材料貯留槽32の内部を上下方向に昇降移動可能なように構成されている。粉末材料供給テーブル34は、テーブル昇降装置36に接続されている。テーブル昇降装置36は、粉末材料供給テーブル34を上下方向に移動させるためのものである。テーブル昇降装置36としては特に限定されないが、ここではシリンダ機構を採用している。粉末材料供給ローラ38は、図示しないモータにより粉末材料貯留槽32および造形槽22の上端に沿って左右方向に移動可能なように構成されている。粉末材料供給ローラ38は、未使用時には粉末材料貯留部30に設けられたローラ載置部39に位置している。
【0036】
造形槽22に粉末材料2を供給する際には、まず、造形部20において、テーブル昇降装置26が造形テーブル24を造形槽22の上端から所定の幅(例えば、0.1mm)だけ下方に位置させる。例えば、造形テーブル24を造形槽22の上端から所定の幅(寸法)だけ下降させる。造形槽22の上端から造形テーブル24の上面までの幅は、断面画像データのスライス厚さに基づいて予め定められている。これにより、所定高さ(厚み)の造形エリア28が用意される。
【0037】
また、粉末材料貯留部30においては、テーブル昇降装置36が粉末材料供給テーブル34を所定の高さ分だけ上方に移動(上昇)させる。粉末材料供給テーブル34の上昇幅は、造形エリア28に供給する粉末材料2の体積に対応して決定することができる。すなわち、造形テーブル24の下降幅に対応して予め定めることができる。これにより、供給粉末材料貯留槽32に貯留された粉末材料2は、所定の分量だけ粉末材料貯留槽32から押し出される。本実施形態では、粉末材料供給テーブル34の上昇幅が造形テーブル24の下降幅と略等しくなるよう、造形槽22および粉末材料貯留槽32の平面視における面積が設定されている。
【0038】
テーブル昇降装置36によって粉末材料供給テーブル34が上方に移動されると、粉末材料供給ローラ38はローラ載置部39から右方に移動する。これにより、粉末材料貯留槽32から押し出された粉末材料2が、粉末材料供給ローラ38に運ばれて造形槽22内の造形エリア28に供給される。粉末材料供給ローラ38は、造形槽22を右方に通過すると、その後、逆方向に回転して左方に移動する。粉末材料供給ローラ38が、造形槽22の上端に沿って(例えば水平に)移動することで、造形エリア28に供給された粉末材料2の表面が均一に均される。これにより、造形エリア28に所定の厚みで粉末材料2が敷き詰められる。粉末材料供給ローラ38は、粉末材料貯留槽32の上面を左方に通過すると、ローラ載置部39に戻される。
【0039】
造形部20の上方には、未硬化で液体状態のバインダを供給するバインダ供給ヘッド40が配設されている。バインダ供給ヘッド40は、図示しない駆動装置に接続されている。バインダ供給ヘッド40は、後述の制御装置50により制御されて、造形槽22に対して前後方向(X軸方向)および左右方向(Y軸方向)に移動自在に構成されている。また、バインダ供給ヘッド40は、バインダを吐出するノズル40Aを備えている。ノズル40Aは、図示しないバインダ収容タンクに接続されている。バインダ供給ヘッド40は、後述の制御装置50によりラスタ画像データに基づいて制御されて、ノズル40Aからバインダを液滴の状態で吐出することができる。これにより、バインダ供給ヘッド40は、造形エリア28に供給された粉末材料2の所定の位置に、バインダの液滴を供給することができる。本例では、例えば、バインダ供給ヘッド40は、前後方向(X軸方向)を所定の方向とし、前後方向に沿って移動しながら、ラスタ画像データに基づき所定の一列にバインダの液滴を供給する。その後、バインダ供給ヘッド40は、左右方向(Y軸方向)に一列分だけ移動し、再び前後方向に沿って移動しながら、ラスタ画像データに基づき次の一列にバインダの液滴を供給する。このようにして造形エリア28に供給された粉末材料2にバインダが供給される。バインダが供給された部分においては、粉末材料2を構成する粒子間にバインダが染み渡る。そして例えばバインダが固化することで、粉末材料2を構成する粒子が互いに固着される。これにより、ラスタ画像データに対応した粉末固化層1Aが形成される。
【0040】
粉末固化層1Aが形成されると、造形部20において、テーブル昇降装置26は造形テーブル24を所定の幅で下方に移動(下降)させる。造形テーブル24の下降幅は、上述のとおり、スライスデータの厚みに基づいて予め定められている。これにより、所定高さ(厚み)の造形エリア28が新しく用意される。引き続き、造形エリア28への粉末材料の供給と、次のラスタ画像データに基づく粉末固化層1Aの形成とを行う。このことを順次繰り返すことで、造形テーブル24上で高さ方向に粉末固化層1Aが一体的に積み重ねられ、所望の3次元造形物1を造形することができる。
【0041】
第1記憶部61は、3次元造形装置10が造形しようとする対象の立体構造物(3次元造形物)の属性データを記憶する。この属性データには、立体構造物を複数の断面層にスライスしたスライスモデルについてのデータ(スライスデータ)が含まれる。スライスデータには、連続的な複数の断面画像データが含まれる。立体構造物をスライスする方向は特に制限されず、例えば、水平方向や垂直方向とすることができる。断面画像データは、例えばユーザーの操作によって、図示しない記憶媒体または外部コンピュータから第1記憶部61に格納することができる。断面画像データは、少なくともスライス断面の形状や寸法に関する3次元的な空間データを含む。断面画像データは、例えばSTL(Standard Triangulated Language)形式で表される。図3に、断面画像データ61Aが備えるスライス断面の形状情報のイメージを例示した。図3において、円形の輪郭線で囲まれた内部の領域が、立体構造物をスライスしたときの断面に相当する。
【0042】
第2記憶部62は、断面画像データに基づき粉末固化層1Aを形成するためのバインダ供給条件に係る属性データを記憶する。この属性データには、例えば、少なくとも造形槽22に対するバインダの供給位置情報に関するラスタ画像データが含まれる。ラスタ画像データは、立体構造物を複数の断面層にスライスしたスライスモデルを格子状(グリッド)に並んだ画素(ピクセル,セルともいう)の集合体で表したものである。ラスタ画像データは、例えばユーザーの操作によって、図示しない記憶媒体またはコンピュータから第2記憶部62に格納することができる。あるいは、第1記憶部61に記憶された断面画像データ61Aに基づき、3次元造形装置10内の図示しないコンピュータにおいて作成(ラスタ変換)してもよい。第2記憶部62には、例えば、ラスタ画像データが記憶されている。図3に、断面画像データ61Aに対応するラスタ画像データ62Aが備えるバインダ供給位置情報のイメージを例示した。本例のラスタ画像データ62Aにおいて、画素は、XY方向の寸法が同一のマス目(画素)により表現されている。
【0043】
図3の例では、折れ線状の輪郭線で囲まれた内部の画素が、断面画像データ61Aに対応するラスタ画像データ62Aに相当する。そしてこの輪郭線で囲まれた領域(画素の集合)が、バインダ供給ヘッド40がバインダを液滴として供給する液滴の供給領域に一致する。このラスタ画像データ62Aには、バインダ供給ヘッド40がバインダを供給しながら移動する方向に一致する所定方向(図3中の矢印Xの方向)が定められる。所定方向は、例えば、バインダ供給ヘッド40の主走査方向である。ラスタ画像データ62Aは、断面層の所定方向に沿った端部に位置する端部画素G1と、断面層の端部以外の領域に相当する非端部画素G2とを含む。図3の例において、点線で示された一の断面層について、X方向のラインには少なくとも2つの端部画素G1が存在する。X方向において一群の非端部画素G2は、2つの端部画素G1に挟まれている。
【0044】
制御装置50は、3次元造形装置10の構成部材の動作を統括的に制御する。制御装置50は、バインダ供給ヘッド40、粉末材料供給ローラ38、テーブル昇降装置26、36、第1記憶部61および第2記憶部62に接続されている。制御装置50は、テーブル昇降装置26を駆動することによって、造形テーブル24を上方または下方に移動させる。制御装置50は、テーブル昇降装置36を駆動することによって、粉末材料供給テーブル34を上方または下方に移動させる。制御装置50は、バインダ供給ヘッド40のXY軸方向の移動と、バインダ供給ヘッド40からのバインダの吐出条件とを制御する。制御装置50は、粉末材料供給ローラ38の移動を制御する。この制御装置50は、公知のパーソナルコンピュータや汎用コンピュータなどに設けられるCPU(中央演算処理装置)により実現することが可能である。
【0045】
制御装置50は、図4に示すように、判断部51と、液滴制御部52と、ヘッド制御部53と、を備える。液滴制御部52は、さらに、位置判定部52aと、液滴数判断部52bと、第1ドット制御部52cと、第2ドット制御部52dと、第3ドット制御部52eと、第4ドット制御部52fと、を備えている。上記各部は、集積回路等に形成された論理回路によりハードウェアで構成されていてもよく、CPUがコンピュータプログラムを実行することにより機能的に実現されるようになっていてもよい。制御装置50は、さらに、CPUが実行するプログラムなどを格納したROMと、RAMなどを備えていてもよい。なお、コンピュータプログラムは、当該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(有線または無線による通信手段等)を介してCPUと通信可能に構成されていてもよい。なお、本実施形態において、コンピュータプログラムは、電子的伝送によって実現された搬送波に含まれるデータ信号の形態であってもよい。
【0046】
液滴制御部52は、バインダ供給ヘッド40からのバインダの液滴の吐出条件を制御する。例えば図3に示すように、断面画像データ61Aとラスタ画像データ62Aとは、完全には一致しない。すなわち、断面画像データ61Aおよびラスタ画像データ62Aのそれぞれの端部(輪郭)において完全には一致しない。したがって、液滴制御部52は、バインダ供給ヘッド40が所定方向にバインダの液滴を供給するとき、その液滴の供給領域の最端部である端部位置において、断面画像データ61Aおよびラスタ画像データ62Aとのズレが軽減されるように、供給する液滴量を制御する。液滴制御部52は、例えば、後述の判断部51の判断に基づき、液滴量の制御を実施するかどうかを決定することができる。
【0047】
図5に、粉末材料2にX軸方向に沿ってバインダの液滴を供給した場合の、バインダの着弾のイメージを示した。図5の例では、6つのバインダの液滴を連続的に供給している。供給するバインダの液滴の量は、X軸方向の最端部の液滴d1,d6であっても、これら最端部の液滴d1,d6に挟まれた中間部の液滴d2,d3,d4,d5であっても、同一である。したがって、粉末材料2に着弾するバインダ液滴の着弾イメージも、最端部d1,d6と、最端部d1,d6に挟まれた中間部d2,d3,d4,d5とで同一となる。なお、バインダの液滴の量は、通常、一定の量に定められている。例えば、ラスタ画像データの一画素の寸法が決定されると、この一画素あたりの寸法がバインダ液滴の着弾寸法となるようにバインダの液滴量が設定される。具体的には、バインダ供給ヘッド40から吐出される一滴のバインダの吐出量は、対象とする粉末材料2に供給されて着弾したときのバインダ液滴の寸法が、ラスタ画像データ62Aの一つの画素の寸法に一致するように設定される。あるいは、ラスタ画像データ62Aの一画素のマス目の寸法、すなわち、正方形の形状のマス目の1辺の長さは、バインダ供給ヘッド40の解像度に応じて決定されても良い。この場合、ラスタ画像データ62Aの一つの画素の寸法は、バインダ供給ヘッド40から吐出される一滴のバインダが、対象とする粉末材料2に供給されて着弾したときのバインダ液滴の寸法に合わせて設定される。このように、バインダの液滴の量は、粉末材料2への着弾領域がラスタ画像データ62Aの一画素のマス目に一致するように所定量が決定される。したがって、所定量のバインダの液滴は、ラスタ画像データ62Aの一画素を示すマス目m1〜m6に相応して着弾する。このような所定量のバインダの液滴を、第1液滴とする。従来の3次元造形装置において、バインダは、第1液滴のみで供給されていた。
【0048】
これに対し、液滴制御部52は、液滴量を、第1液滴の液滴量(所定量)に限定しない。例えば、液滴制御部52は、液滴量を所定量とは異なるように制御することができる。そして例えば、バインダ供給ヘッド40から吐出される液滴を、第1の量とは異なる量の液滴である調整液滴として供給することができる。調整液滴の液量は特に限定されず、例えば、液滴量のそれぞれ異なる第2液滴と、第3液滴と、に制御することができる。これにより、バインダ供給ヘッド40から吐出される液滴を、液滴量のそれぞれ異なる第1液滴と、第2液滴と、第3液滴と、に制御することができる。図6に、ラスタ画像データ62Aのマス目m1〜m6のうち最端部のマス目m6の中心に、(a)第2液滴d、(b)第1液滴d、(c)第3液滴dを着弾させたときのイメージをそれぞれ示した。(b)第1液滴dは、上記のとおり、端部位置(端部画素)以外の領域(非端部画素)に供給する液滴と同じ、所定量の液滴である。第1液滴dはマス目にほぼ一致するサイズで着弾している。(a)第2液滴dは、所定量よりも多い量の液滴である。すなわち、第1液滴dよりも多い量の液滴である。したがって、第2液滴dの着弾イメージは、マス目を大きくはみ出す傾向にある。(c)第3液滴dは、所定量よりも少ない量の液滴である。すなわち、第1液滴dよりも少ない量の液滴である。第3液滴dの着弾イメージは、マス目に満たない傾向にある。
【0049】
第1液滴に対する、第2液滴および第3液滴の液滴量の割合はそれぞれ厳密には制限されない。例えば、第2液滴におけるバインダの液滴量Qは、第1液滴におけるバインダの液滴量をQとしたとき、次式:1.2×Q≦Q≦1.5×Q;で表される量とすることが好ましい。第2液滴におけるバインダ液滴量Qは、より好ましくは、1.25×Q≦Q≦1.45×Qであり、特に好ましくは1.3×Q≦Q≦1.4×Qである。また、例えば、第3液滴におけるバインダの液滴量Qは、第1液滴におけるバインダの液滴量をQとしたとき、次式:0.5×Q≦Q≦0.8×Q;で表される量とすることが好ましい。第3液滴のバインダ液滴量Qは、より好ましくは、0.55×Q≦Q≦0.75×Qであり、特に好ましくは0.6×Q≦Q≦0.7×Qである。これらの第1液滴、第2液滴および第3液滴の液滴量は、例えば、公知のインクジェット技術を利用して制御することができる。例えば、圧電素子方式のバインダ供給ヘッド40の場合、圧電素子の伸長と収縮とを制御するパルス状の駆動電圧波形パターンを調整することで、第1液滴、第2液滴および第3液滴のバインダ液滴量を調整することができる。
【0050】
図8は、制御部50が行うバインダ液滴量の調整手順の一例を示したフロー図である。図8を適宜参照し、液滴量の調整の概要について説明する。
判断部51は、液滴制御部52がバインダの液滴の制御を実施するかどうかを判断することができる。かかる判断は、以下の手順で行うことができる。すなわち、まず、判断部51は、断面画像データ61Aとラスタ画像データ62Aとを比較する。そこで、判断部51は、断面画像データ61Aに対するラスタ画像データ62Aの形状誤差を取得する。本例では、図3に点線で示すように、ラスタ画像データ62Aのマス目の中心を通る所定方向(X軸方向)において、断面画像データ61Aに対するラスタ画像データ62Aの形状誤差を測定することとする。かかる形状誤差の測定については、簡便のため、図3の斜線で示した一の端部画素G1の位置(断面層の一の端部)を例にして説明する。すなわち、断面画像データ61Aから把握される断面層の端部位置P1と、ラスタ画像データ62Aの端部画素G1の所定方向における端部位置(マス目上)P2との差分|Δt|を取得する(S1)。この差分|Δt|は、例えば、X軸方向におけるP1の位置を示すX座標値(XP1)からP2の位置を示すX座標値(XP2)を差し引いて得られる差Δt=(XP1−XP2)の絶対値として把握することができる。この差分|Δt|は、例えば、判断部51に記憶することができる。そして判断部51は、この差分|Δt|が、予め定められた許容誤差ΔE(>0)よりも大きいか否かを判断する(S2)。ここで許容誤差ΔEは、例えば、バインダ供給ヘッド40の解像度や、第1液滴の着弾イメージ、および、これに対応するラスタ画像データ62Aの一画素あたりの寸法を考慮して、任意に設定することができる。例えば、断面画像データ61Aとラスタ画像データ62Aとの差分は一般的に1割程度であれば許容される。したがって、ラスタ画像データ62Aの一つの画素の寸法をDとしたとき、許容誤差ΔEは、例えば、次式:0<ΔE≦0.1×D;で規定することができる。そして差分|Δt|が所定の許容誤差ΔEよりも大きいと判断したとき、つまりに、判断部51が、バインダの液滴の量および液滴数を制御するように構成することができる。なお、判断部51が、バインダの液滴の量を異ならしめる必要がないと判断した場合は、断面層の所定方向において供給するバインダの液滴の量や数は変更しなくてよい(S3)。かかる様子は、例えば、図7の7Aに示される。
【0051】
差分|Δt|が所定の許容誤差ΔEよりも大きいとき、液滴制御部52は、判断部51の判断に基づき、断面層の所定方向の最端部において供給するバインダの液滴量を制御する。すなわち、S6に示したように、所定量の液滴である(b)第1液滴d、に代えて(a)第2液滴dまたは(c)第3液滴dのいずれかの液滴を供給したり、供給する液滴数を変えて、かつ、最端部に供給するバインダの液滴量を(a)第2液滴dまたは(c)第3液滴dのいずれかに変化させたりすることができる。
【0052】
液滴制御部52は、例えば、以下のようにして、バインダの液滴の供給について制御することができる。すなわち、まず、バインダの液滴数を調整する際の基準となる調整基準Sをあらかじめ設定しておく。そして液滴数判断部52bは、差分|Δt|と、この調整基準Sとの大きさを比較する(S4)。図7の例では、ラスタ画像データ62Aの一画素あたりの寸法Dの1/2の値(D/2)を、バインダの液滴数の調整基準Sとして設定している。例えば、バインダ供給ヘッド40の解像度がX軸方向とY軸方向共に720dpiである場合を例とする。すると、ラスタ画像データ62Aの1画素あたりの寸法Dは、1インチが25.4mmであることから、次式:25.4(mm)÷720(dpi);により、D=0.03527mmとなる。調整基準Sは、このDの値に基づき、(0.03527÷2)mmに設定される。そして、液滴数判断部52bは、判断部51が取得した形状誤差を示す差分|Δt|とこの調整基準Sとの大小関係を把握する。判断結果は、例えば、液滴数判断部52bに記憶することができる。
【0053】
次いで、位置判定部52aが、ラスタ画像データ62Aにおける断面層の端部画素G1の端部位置P2が、断面画像データ61Aから把握される断面層の断面領域内にあるか否かを判断する。本例では、かかる判断を、ラスタ画像データ62Aにおける断面層の端部画素G1が、断面画像データ61Aの断面層の端部位置P1よりも、断面層の中心側にあるか否かで判断を行うものとする。かかる判断は、断面画像データ61Aの輪郭のX軸上の位置データと、ラスタ画像データ62Aにおける断面層の端部画素G1のX軸上の位置データとを比較することで実施することができる。より具体的には、上記のΔtが正の値(Δt>0)か負の値(Δt<0)かで判断することができる(S5)。なお、予め言うまでもないが、このときの正または負の判断は、X座標の基準点(例えば原点)が断面層の断面領域側にあるか否かで変更され得る。また、判断結果は、例えば、位置判定部52aに記憶することができる。
【0054】
第1ドット制御部52c〜第4ドット制御部52fでは、位置判定部52aと液滴数判断部52bとの判断結果に基づき、端部画素G1に供給するバインダ液滴の態様を決定する。
【0055】
第1ドット制御部52cは、液滴数判断部52bが、差分|Δt|が調整基準Sよりも小さいと判定し、かつ、位置判定部52aが、端部画素G1の端部位置P2が断面領域内にあると判定(Δt>0)した場合のバインダ供給条件を決定する。かかる様子は、例えば、図7の1Aに示される。このとき、第1ドット制御部52cは、端部位置に第2液滴dを供給させる(S61)。つまり、端部画素G1に供給するバインダの液滴d6を、第2液滴dに変更するように制御する。かかる制御後の様子は、例えば、図7の1Bに示される。このように、端部画素G1に供給するバインダの液滴d6を、第1液滴dから第2液滴dに変更することで、P1とP2との差分Δtが縮小される。これにより、形状誤差を軽減することができる。
【0056】
第2ドット制御部52dは、液滴数判断部52bが、差分|Δt|が調整基準S以上であると判定し、かつ、位置判定部52aが、端部画素G1の端部位置P2が断面領域内にあると判定(Δt>0)した場合のバインダ供給条件を決定する。かかる様子は、例えば、図7の2Aおよび3Aに示される。このとき、第2ドット制御部52dは、端部位置を非端部画素(G2)位置とは所定方向の反対側に一画素分ずらして新端部位置とする。そして、元の端部位置は非端部画素位置として第1液滴を供給し、新端部位置に第3液滴dを追加で供給させる(S62)。換言すると、端部画素G1に供給するバインダの液滴は第1液滴dのまま、端部画素G1に対して非端部画素G2とは所定方向(X軸方向)の反対側に隣接する画素m7に、バインダの第3液滴dを追加で供給するように制御する。かかる制御後の様子は、例えば、図7の2Bおよび3Bに示される。このように、端部画素G1に隣接する画素m7に追加でバインダの第3液滴dを供給することで、P1とP2との差分|Δt|が縮小される。これにより、形状誤差を軽減することができる。
【0057】
なお、ここで図7の2Bにおいて第3液滴dが画素m7のマス目に満たないからと言って、画素m7の位置に供給されたバインダの第3液滴dにより形成される粉末硬化物と、端部画素G1の位置に供給されたバインダの第1液滴dにより形成される粉末硬化物とが、結合されないという問題は発生しない。なぜならば、図7の2Bにおいてはバインダの液滴の着弾イメージを示しているが、実際には、粉末材料2に供給されたバインダの液滴は、隣に供給される液滴が離れている場合には、着弾イメージよりも広い範囲で粉末材料2に染み渡り得る。したがって、隣り合う画素m7と端部画素G1とに着弾したバインダは、粉末材料2内で接触し得るからである。以下の説明においても、第3液滴dを供給する場合は同様である。
【0058】
第3ドット制御部52eは、液滴数判断部52bが、差分|Δt|が調整基準Sよりも小さいと判定し、かつ、位置判定部52aが、端部画素G1の端部位置P2が断面領域外にあると判定(Δt<0)した場合のバインダ供給条件を決定する。かかる様子は、例えば、図7の4Aに示される。このとき、第3ドット制御部52eは、端部位置に第3液滴dを供給させる(S63)。すなわち、端部画素G1に供給するバインダの液滴d6を、第3液滴dに変更するように制御する。かかる制御後の様子は、例えば、図7の4Bに示される。このように、端部画素G1に供給するバインダの液滴d6を、第1液滴dから第3液滴dに変更することで、P1とP2との差分|Δt|が縮小される。これにより、形状誤差を軽減することができる。
【0059】
第4ドット制御部52fは、液滴数判断部52bが、差分|Δt|が調整基準Sよりも大きいと判定し、かつ、位置判定部52aが、端部画素G1の端部位置P2が断面領域外にあると判定(Δt<0)した場合のバインダ供給条件を決定する。かかる様子は、例えば、図7の6Aに示される。このとき、第4ドット制御部52fは、端部画素位置に隣接する非端部画素を新端部位置とし、この新端部位置に第2液滴を供給させる(S64)。換言すると、端部画素G1にバインダの液滴を供給せず、端部画素G1に隣接する非端部画素G2(m5)に、バインダの第2液滴dを供給するように制御する。かかる制御後の様子は、例えば、図7の6Bに示される。このように、端部画素G1に隣接する非端部画素G2(m5)にバインダの第2液滴dを供給することで、P1とP2との差分|Δt|が縮小される。これにより、形状誤差を軽減することができる。
【0060】
なお、上記例では、液滴数判断部52bにおいて、形状誤差を示す差分|Δt|が、調整基準Sと同じであって、かつ、端部画素G1の端部位置P2が断面領域外にあると判定(Δt<0)されたときの制御を規定していなかった。しかしながら、このような条件における制御内容は特に制限されない。例えば、図7の5Aに、断面画像データ61Aにおける断面層の端部位置P1と端部画素G1の端部位置P2との関係が、図7の3Aと4Aとの間の状態であって、差分|Δt|と調整基準Sとが等しいとき(|Δt|=S)の様子が示される。この5Aに示す場合、例えば、第3ドット制御部52eによる制御を行うことができる。すなわち、端部画素G1に供給するバインダの液滴d6を、第3液滴dに変更するものである。かかる制御後の様子は、例えば、図7の5Bに示される。しかしながら、5Aに示す場合、例えば、第4ドット制御部52fによる制御を行うようにしてもよい。つまり、図7の6Bに示されるように、端部画素G1にバインダの液滴を供給せず、端部画素G1に隣接する非端部画素G2(m5)に、バインダの第2液滴dを供給するように制御してもよい。
【0061】
また、上記例では、図7の2Aに示されるように、液滴数判断部52bにおいて、形状誤差を示す差分|Δt|が調整基準Sと同じであって、かつ、端部画素G1の端部位置P2が断面領域内にあると判定(Δt>0)されたときは、第2ドット制御部52dによる制御を行っていた。しかしながら、このような条件における制御内容は必ずしもこれに制限されない。この2Aに示す場合、例えば、第1ドット制御部52dによる制御を行うこともできる。すなわち、端部画素G1に供給するバインダの液滴d6を、第2液滴dに変更するように制御するものである。かかる制御後の様子は、例えば、図7の1Bに示される。
【0062】
なお、既に述べているが、図7の7Aに示されるように、判断部51において、差分|Δt|が、所定の許容誤差ΔEよりも小さいと判断された場合は、断面層の所定方向の最端部(この場合は端部画素G1)において供給するバインダの液滴の量を異ならしめる必要はない。したがって、液滴制御部52において、バインダの液滴d6を第1液滴から変更する制御は行わない(S3)。
【0063】
上記実施形態では、ここに開示される技術を図8のフローに沿って説明した。しかしながら、ここに開示される技術はこれに限定されない。すなわち、S1において差Δtを取得したのち、S2において差分|Δt|が許容誤差ΔEよりも大きいと判断された場合は、任意の手法によりS6に進むことができる。これにより、より簡略化された手順により、バインダの液滴の量を適切に調整することができる。
【0064】
ヘッド制御部53は、ラスタ画像データ62Aに基づき、断面層に相当する画素位置にバインダの液滴を供給するよう、バインダ供給ヘッド40を制御する。例えば、図3のラスタ画像データ62Aにおける矢印Xの方向に沿って、端部画素と非端部画素とに対応する造形槽22の上面の位置に向けて、バインダの液滴を供給するよう、バインダ供給ヘッド40を制御する。そしてこのとき、液滴制御部52からバインダの液滴の量を異ならしめる旨の指示があった場合は、かかる指示に基づき、上記のとおりバインダの液滴の供給条件を補正する。これにより、断面画像データ61Aとラスタ画像データ62Aとにおける差分(形状誤差)を軽減した条件で、粉体固化層1Aを形成することができる。
【0065】
なお、本発明の3次元造形装置10においては、「粉末材料」として任意の素材からなる粉末を用いることができる。このような素材としては、例えば、石膏,セラミックス(例えば、アルミナ、ジルコニアなど)等の無機材料、金属の単体または合金等の金属材料、各種のエンジニアリングプラスチック(例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂、液晶ポリマーなど)等の有機高分子材料、およびこれらの混合物等が挙げられる。粉末材料の粒径は特に制限されないが、例えば、レーザ散乱・回折法に基づく体積基準の粒度分布における積算値50%での平均粒子径(メジアン径)が10μm以上60μm以下程度の粉末を好適に用いることができる。
【0066】
また、「バインダ」としては、未硬化の状態で液体状態であって、上記粉末材料を構成する粒子同士を結着することが可能な材料を特に制限なく使用することができる。このようなバインダとしては、結着作用を示す樹脂、光硬化性樹脂等を媒体に溶解または分散させたものや、粉末粒子の結合反応を開始させる反応開始剤を媒体に溶解または分散させたものが挙げられる。媒体としては、水を主体とする水系媒体または有機溶剤等を主体とする有機系媒体のいずれであってもよい。なお、粉末材料が石膏からなる場合には、バインダとして水を主体とする液体(典型的には水)を好ましく用いることができる。また、粉末材料がセラミック材料からなる場合には、バインダとしては、光硬化性樹脂を水系または有機系の媒体に分散させた樹脂バインダ液を好ましく用いることができる。また、ここでいう「主体とする」とは、50質量%以上が当該水または有機溶剤からなることを意味する。例えば、環境衛生の観点からは、水系媒体を用いることが好ましい。
【0067】
以上のように、本実施形態では、制御装置50は、ラスタ画像データ62Aに基づいてバインダ供給ヘッド40を制御し、造形槽22に収容された粉末材料2にバインダを供給する。そしてこのバインダの供給に際し、判断部51は、断面画像データとラスタ画像データとを比較して、実際に造形される3次元造形物の表面に見られる立体的な形状誤差を把握する。そしてこの形状誤差が補正すべきものであるときに、液滴制御部52において、かかる形状誤差を軽減するための処理を行う。すなわち、最端部のバインダの液滴量を調整する。これにより、ラスタ画像データ62Aのみに従って3次元造形物1を作製した場合に比べて、断面画像データ61Aにより近い粉末固化層1Aを形成することができる。換言すると、最端部における立体的な形状誤差を軽減することができる。これにより、表面における本来不要な凹凸が緩和されて、より形状精度の高い3次元造形物を造形することが可能となる。
【0068】
本実施形態では、断面画像データ61Aとラスタ画像データ62Aとの形状誤差の態様を的確に判断し、形状誤差を軽減するように実際に供給するバインダの液滴量と液滴数とを制御している。これにより、実際に造形される3次元造形物の形状誤差を、例えば、ラスタ画像データの一画素あたりの寸法の1/2以下に抑えることができる。これにより、適切に形状精度が高められた3次元造形物を造形することが可能となる。
【0069】
なお、上記実施形態では、バインダは粉末材料の粒子同士を結着するものが使用されていたがこれに制限されない。例えば、バインダは顔料を含むことができる。顔料を含むバインダを粉末材料に吐出することで、3次元造形物に所定の色彩を付与することができる。また、上記実施形態において、3次元造形装置では、バインダ供給ヘッド40を1つ備えていた。しかしながら、バインダ供給ヘッド40の数は1つに制限されない。例えば、異なる色彩の顔料を含むバインダを供給するために2以上のバインダ供給ヘッド40がそなえられていてもよい。これにより、所望のフルカラーの意匠を備える3次元造形物を造形することができる。なお、この場合、断面画像データ61Aおよびラスタ画像データ62Aは、さらに色データを含むことができる。色データは、例えばRGB値で表される。バインダ供給ヘッド40は、ラスタ画像データ62Aに含まれる色データに基づき、所定の顔料を含むバインダを供給することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 3次元造形物
1A 粉末固化層
10 3次元造形装置
20 造形部
22 造形槽
30 粉末材料貯留部
40 ヘッド制御部
50 制御装置
61 第1記憶部
62 第2記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8