(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エアゾール組成物が充填されるエアゾール容器と、前記エアゾール容器に取り付けられる噴射部材と、前記噴射部材に取り付けられ、噴射孔が形成された噴射治具とを備え、
前記エアゾール組成物は、対象害虫を冷却するために、ハイドロフルオロオレフィン、ジメチルエーテルおよび液化石油ガスのうち少なくとも1種を含み、
前記噴射孔の径は、0.5〜4.5mmであり、
前記噴射治具は、
前記エアゾール組成物が通過し、一端が前記噴射孔と連通する治具内通路が形成され、
前記噴射孔から50cm離れた位置における前記エアゾール組成物の噴射圧が7〜11.8gfとなるように、噴射圧を調整され、
前記治具内通路の長さは、70〜170mmである、冷却殺虫エアゾール製品。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[冷却殺虫エアゾール製品]
本発明の一実施形態の冷却殺虫エアゾール製品(以下、エアゾール製品ともいう)が、図面を参照して説明される。
図1は、本実施形態のエアゾール製品1の概略的な側面図である。
図2は、本実施形態のエアゾール製品1から噴射治具を取り外した状態の概略的な側面図である。本実施形態のエアゾール製品1は、エアゾール組成物が充填されるエアゾール容器2と、エアゾールバルブ(図示せず)を介してエアゾール容器2に取り付けられる噴射部材3と、噴射部材3に取り付けられ、噴射孔42cが形成された噴射治具4とを備える。エアゾール製品1は、エアゾール組成物を対象となる害虫に噴射することにより、エアゾール組成物に含まれる噴射剤が気化する際の気化熱を利用して対象害虫を冷却して凍結し、殺虫する。なお、以下の説明において、エアゾール容器2、エアゾールバルブおよび噴射部材3は、エアゾールの技術分野において汎用される部材である。そのため、以下の説明は例示であり、これらの部材は、適宜設計変更され得る。
【0013】
対象害虫の種類は、特に限定されない。対象害虫は、たとえば、クロゴキブリ、チャバネゴキブリ、ヤマトゴキブリ、ワモンゴキブリ、トビイロゴキブリ等のゴキブリ、クモ、ムカデ、アリ、ゲジ、ヤスデ、ダンゴムシ、ワラジムシ、シロアリ、ケムシ、ダニ、シラミ等の匍匐害虫、カ、ハエ、ガ、ハチ、カメムシ、カツオブシムシ、シバンムシ、キクイムシ、イガ、コイガ等の飛翔害虫である。
【0014】
<エアゾール容器2>
エアゾール容器2は、エアゾール組成物を加圧充填するための耐圧容器である。エアゾール容器2は、内部にエアゾール組成物が充填される空間が形成された概略筒状の容器である。エアゾール容器2の上部には開口が設けられている。開口は、後述するエアゾールバルブによって密封される。
【0015】
エアゾール容器2の材質は特に限定されない。一例を挙げると、エアゾール容器2は、耐圧性を有する各種金属製、樹脂製、ガラス製等であってもよい。
【0016】
<エアゾール組成物>
エアゾール組成物は、エアゾール製品1の内容物であり、噴射剤を含む。なお、エアゾール組成物は、噴射剤に加えて、適宜、原液を含んでもよい。
【0017】
・原液
原液は、噴射剤とともにエアゾール組成物を構成し得る任意成分である。原液は、エアゾール組成物が調製される際に、エアゾール容器2に充填される。原液は、殺虫成分等の任意成分を含む。
【0018】
殺虫成分は、対象害虫に対して殺虫効力(ノックダウン効果等)を示す成分であり、後述する噴射剤による殺虫効果を補助するために好適に使用される。殺虫成分の種類は、特に限定されず、公知の殺虫性化合物を使用できる。殺虫成分は、対象害虫の種類に合わせて適宜選択され得る。殺虫成分は、たとえば、ハッカ油、オレンジ油、ウイキョウ油、ケイヒ油、チョウジ油、テレビン油、ユーカリ油、ヒバ油、ジャスミンオイル、ネロリオイル、ペパーミントオイル、ベルガモットオイル、ブチグレンオイル、レモンオイル、レモングラスオイル、シナモンオイル、シトロネラオイル、ゼラニウムオイル、シトラール、l−メントール、酢酸シトロネリル、シンナミックアルデヒド、テルピネオール、ノニルアルコール、cis−ジャスモン、リモネン、リナロール、1,8−シネオール、ゲラニオール、α−ピネン、p−メンタン−3,8−ジオール、オイゲノール、酢酸メンチル、チモール、安息香酸ベンジル、サリチル酸ベンジル等の各種殺虫性の精油成分、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類、アジピン酸ジブチル等の二塩基酸エステル類、ピレトリン、アレスリン、フタルスリン、レスメトリン、フラメトリン、フェノトリン、ペルメトリン、エムペントリン、プラレトリン、シフェノトリン、イミプロトリン、トランスフルトリン、メトフルトリン等のピレスロイド系化合物、フェニトロチオン、ジクロルボス、クロルピリホスメチル、ダイアジノン、フェンチオン等の有機リン系化合物、カルバリル、プロポクスル等のカーバメイト系化合物、メトプレン、ピリプロキシフェン、メトキサジアゾン、フィプロニル、アミドフルメト等の殺虫性化合物である。
【0019】
殺虫成分が含有される場合、殺虫成分の含有量は、殺虫効果(ノックダウン効果等)を示す含有量であればよく、殺虫成分の含有量の上限は特に限定されない。一例を挙げると、殺虫成分の含有量は、0.0025質量/容量%以上であることが好ましく、0.005質量/容量%以上であることがより好ましい。上記の配合量であれば、充分な殺虫効果が得られ得る。
【0020】
原液は、本実施形態のエアゾール組成物の効果を阻害しない程度に、溶剤を配合することができる。溶剤は、殺虫成分を均一に配合するために好適に含有される。一例を挙げると、溶剤は、エタノール、プロパノール等の低級アルコール、グリセリン、エチレングリコール等の多価アルコール、直鎖、分岐鎖または環状のパラフィン類、灯油等の石油類、水;ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル等のエステル類等である。溶剤の含有量は、殺虫成分1質量部に対して0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましい。また、溶剤の含有量は、殺虫成分1質量部に対して1000質量部以下であることが好ましく、500質量部以下であることがより好ましい。上記範囲内であれば、原液は、エアゾール組成物の効果を阻害せず、かつ、殺虫成分を均一に配合しやすい。
【0021】
また、原液は、上記した殺虫成分、溶剤のほかに、非イオン、陰イオンまたは陽イオン界面活性剤、ブチルヒドロキシトルエン等の抗酸化剤;クエン酸、アスコルビン酸等の安定化剤;タルク、珪酸等の無機粉体、殺菌剤(防黴剤)、消臭剤、芳香剤(香料)、色素等が適宜含有されてもよい。
【0022】
エアゾール組成物に原液が含まれる場合、原液の含有量は、エアゾール組成物中に0.01容量%以上であることが好ましく、0.05容量%以上であることがより好ましい。また、原液の含有量は、エアゾール組成物中に20容量%以下であることが好ましく、5容量%以下であることがより好ましく、2容量%以下であることがさらに好ましい。原液の含有量が上記範囲内である場合、得られるエアゾール組成物は、冷却効果が充分に得られやすい。
【0023】
・噴射剤
噴射剤は、上記原液を噴射するための媒体であり、原液とともにエアゾール容器2に加圧充填される。噴射剤は、エアゾール組成物が対象害虫に噴射されると、対象害虫に付着するとともに、噴射剤の気化熱により対象害虫を凍結させ得る。本実施形態の噴射剤は、ハイドロフルオロオレフィン、ジメチルエーテル(DME)、または液化石油ガス(LPG)のうち、少なくとも1種を含む。すなわち、噴射剤は、ハイドロフルオロオレフィン、DMEまたはLPGが単独で使用されてもよく、これらが併用されてもよい。なお、噴射剤は、優れた冷却効果を有し、引火性が低い点からハイドロフルオロオレフィンを含むことが好ましい。
【0024】
ハイドロフルオロオレフィンとしては、ハイドロフルオロプロペンが例示される。具体的には、ハイドロフルオロプロペンは、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、2,3,3−トリフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロプロペン、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン等が例示される。1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンは、(E)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン等が例示される。これらの中でも、優れた冷却効果を示し、かつ、引火性が低く、さらに地球温暖化係数も低い点から、ハイドロフルオロオレフィンは、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンであることが好ましく、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの中でも(E)−1,3,3,3−テトラフルオロプロパ−1−エン(別称「トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン」、「HFO−1234ze」)がより好ましい。
【0025】
ハイドロフルオロオレフィンと、DMEまたはLPGの単剤、もしくは混合物とが併用される場合、これらの体積比は、エアゾール組成物の冷却効果や引火性を考慮して適宜設定されればよく、特に限定されない。一例を挙げると、ハイドロフルオロオレフィンとDMEとの体積比は、1:9〜9:1であることが好ましく、3:7〜8:2であることがより好ましい。
【0026】
噴射剤の含有量は、エアゾール組成物中に80容量%以上であることが好ましく、95容量%以上であることがより好ましく、98容量%以上であることがさらに好ましい。噴射剤の含有量が上記範囲内である場合、得られるエアゾール組成物は、冷却効果が充分に得られやすい。
【0027】
なお、本実施形態のエアゾール組成物は、上記噴射剤に加えて、エアゾール組成物の圧力を調整するために、炭酸ガス、窒素ガス、圧縮空気、酸素ガス等の圧縮ガスが併用されてもよい。
【0028】
原液を含む場合、エアゾール組成物の原液と噴射剤の体積比は0.001:99.999〜20:80であることが好ましく、0.01:99.99〜5:95であることがより好ましく、0.1:99.9〜2:98であることがさらに好ましい。このような体積比とすることで、エアゾール組成物は、優れた冷却効果を発現し得る。
【0029】
<エアゾールバルブ>
エアゾールバルブは、エアゾール容器2の開口を閉止する部材である。エアゾールバルブは、噴射部材3が取り付けられる。エアゾールバルブは、噴射部材3が使用者により操作されることによりエアゾール容器2内と外部との連通および遮断を切り替えるための開閉部材と、開閉部材が取り付けられるハウジングと、ハウジングをエアゾール容器2の所定の位置に保持するためのマウント部材を備える。また、開閉部材は、噴射部材3と連動して上下に摺動するステムを含む。ステムの摺動によりエアゾール組成物の連通(噴射状態)および遮断(非噴射状態)が切り替えられる。エアゾールバルブには、エアゾール容器2からエアゾール組成物を取り込むためのハウジング孔と、取り込まれたエアゾール組成物を噴射部材3に送るためのステム孔とが形成されている。ハウジングには、エアゾール容器2からエアゾール組成物を取り込むためのハウジング孔が形成されている。ステムには、ハウジング内に取り込まれたエアゾール組成物を噴射部材3に送るためのステム孔が形成されている。ハウジング孔からステム孔までの経路は、エアゾール組成物が通過する内部通路を構成する。
【0030】
<噴射部材3>
噴射部材3は、エアゾールバルブを介してエアゾール容器2に取り付けられる部材である。
図3は、本実施形態の噴射部材3の概略的な側面断面図である。噴射部材3は、使用者が操作する操作部31と、操作部31が所定の角度回動できるよう軸支されるキャップ部32とからなる。キャップ部32は、略ドーム状であり、操作部31およびエアゾールバルブを保護する。
【0031】
操作部31は、エアゾールバルブのステム孔を介してエアゾール容器2から取り込まれるエアゾール組成物が通過する操作部内通路35が形成された操作部本体33と、使用者が操作するトリガー部34とからなる。
【0032】
トリガー部34は、操作部本体33の底面から外方に延出された部位であり、操作者が適宜指等によって操作することにより、操作部31そのものを所定角度回動させる。操作部31が回動されることにより、ステムが押し下げられ、エアゾール容器2内のエアゾール組成物が噴射部材3に取り込まれる。
【0033】
操作部本体33において、操作部内通路35には、噴射冶具4を取り付けるための中継治具5が取り付けられている。操作部内通路35は、略L字状の管路であり、一端にはステムが取り付けられる開口35aが形成され、他端には中継治具5が挿入される挿入口35bが形成されている。本実施形態において、操作部本体33と中継治具5とは、操作部本体33の操作部内通路35の内周面と中継治具5の外周面とにそれぞれ形成された相補的なネジ溝(図示せず)に沿って両部材を螺合することにより接続されている。なお、操作部本体33と中継治具5とを接続する方法は特に限定されない。一例を挙げると、操作部本体33と中継治具5とは、それぞれに係合突起および係合溝(図示せず)を設け、これらを係合されることにより接続されてもよい。また、以下の説明において、異なる2つの部位を接続する場合も同様であり、接続方法は特に限定されない。
【0034】
中継治具5は、略円筒状の部材であり、噴射部材3の挿入口35bから操作部内通路35に挿入される小径部51と、後述する噴射治具4が取り付けられる取付部52とからなる。
【0035】
小径部51は、噴射部材3の操作部内通路35の内径と同程度の外径を有する略円筒状の部位である。噴射部材3の一端から取り込まれるエアゾール組成物は、小径部51内に取り込まれる。小径部51の内径d1は特に限定されない。一例を挙げると、小径部51の内径d1は、0.5〜3.5mmである。
【0036】
取付部52は、噴射部材3の挿入口から外部に露出するよう配置される、略二重円筒状の部位である。取付部52のうち、外側に位置する側周部(外側側周部52a)の内径は、内側に位置する側周部(内側側周部52b)の外径よりも大きい。そのため、外側側周部52aと内側側周部52bとの間には、後述する噴射治具4の一端が挿入される周状の挿入凹部53が形成されている。内側側周部52bの内径d2は特に限定されない。一例を挙げると、内側側周部52bの内径d2は、0.5〜4.5mmである。なお、本実施形態において、噴射治具4と取付部52とは、噴射治具4の外筒部41eの内周面と取付部52の外側側周部52aの外周面とにそれぞれ形成された相補的なネジ溝(図示せず)に沿って両部材を螺合することにより接続されている。本実施形態において、取付部52の形状は、適宜中継治具5を介して噴射治具4が取り付けられ得る形状であれば特に限定されない。一例を挙げると、取付部52は、略二重円筒状に代えて、略円筒状等の周知の他の形状であってもよい。
【0037】
<噴射治具4>
図4は、噴射治具4の概略的な断面図である。噴射治具4は、噴射部材3(
図3参照)に取り付けられる治具であり、エアゾール組成物を外部に噴射するための噴射孔42cが形成されている。また、噴射治具4は、エアゾール組成物の噴射圧を調整するための部位である。具体的には、噴射治具4は、噴射孔42cから50cm離れた位置におけるエアゾール組成物の噴射圧が7〜12.5gfとなるように、噴射圧を調整するための治具である。ところで、噴射圧は、噴射治具4そのものの構造だけではなく、エアゾール組成物の組成や、エアゾール容器2の内圧、エアゾールバルブや噴射部材3の構造等の各種要因によっても変化し得る。しかしながら、本実施形態における噴射治具4は、このような噴射治具4以外の各種要因によって変動し得る元々の噴射圧に依らず、結果として噴射治具4を取り付けたことによって、噴射孔42cから50cm離れた位置における噴射圧を上記範囲内に調整し得る構造であればよい。したがって、以下に示される噴射治具4の構造は例示であり、特に限定されない。
【0038】
噴射治具4は、噴射部材3(
図3参照)に取り付けられる基端部41と、噴射孔42cが形成される先端部42と、基端部41および先端部42を接続するチューブ部43とからなる。基端部41、チューブ部43および先端部42は、いずれも内部にエアゾール組成物が通過し得る管路を有しており、それぞれの管路は、互いに連通して噴射治具4の治具内通路を形成している。
【0039】
基端部41は、噴射部材3に取り付けられる部位であり、中継治具5が挿入される第1基端部41aと、チューブ部43が取り付けられる第2基端部41bとからなる。第1基端部41aと第2基端部41bとは、板状部材41cによって区画されている。板状部材41cには、第1基端部41aと第2基端部41bとを連通する連通孔41dが形成されている。連通孔41dは、板状部材41cのうち、後述する内筒部41fの内側に相当する位置に形成されている。連通孔41dの径d3は特に限定されない。一例を挙げると、連通孔41dの径d3は、0.5〜4.0mmである。
【0040】
第1基端部41aは、中継治具5(
図3参照)の外径よりも大きな内径を有し、中継治具5が挿入される外筒部41eと、外筒部41eの内部に形成され、中継治具5の挿入凹部53に挿入される内筒部41fとを含む。中継治具5と内筒部41fとは、係合突起および係合溝(図示せず)により係合されている。第2基端部41bは、略円筒状の部位であり、チューブ部43が挿入される。
【0041】
チューブ部43は、長尺の円筒状部材である。チューブ部43は、第2基端部41bに挿入される一端と、先端部42に挿入される他端とを有する。
【0042】
一端において、チューブ部43の外径は、第2基端部41bの内径と同程度である。チューブ部43の一端と第2基端部41bとは、係合突起および係合溝(図示せず)により係合されている。また、チューブ部43の内径d4は特に限定されない。一例を挙げると、チューブ部43の内径d4は、0.5〜4.0mmである。
【0043】
チューブ部43の長さは、所望する噴射治具4の長さに合わせて適宜選択され得る。すなわち、チューブ部43の長さを調整することにより、噴射治具4全体の長さを容易に調整し得る。また、チューブ部43の材質は特に限定されない。一例を挙げると、チューブ部43の材質は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂類、ステンレス等の金属類などである。
【0044】
先端部42は、チューブ部43の他端に取り付けられる部位であり、チューブ部43の他端が挿入される第1先端部42aと、噴射孔42cが形成された第2先端部42bとからなる。第1先端部42aと第2先端部42bとは、板状部材42dによって区画されている。板状部材42dには、第1先端部42aと第2先端部42bとを連通する連通孔42eが形成されている。連通孔42eは、後述する内筒部42gの内側に相当する位置に形成されている。連通孔42eの径d5は特に限定されない。一例を挙げると、連通孔42eの径d5は、0.5〜3.5mmである。
【0045】
第1先端部42aは、チューブ部43の他端が挿入される部位である。第1先端部42aの内径は、チューブ部43の外径と同程度である。第2先端部42bは、略二重円筒状の部位である。第2先端部42bのうち、外筒部42fの内径は、内筒部42gの外径よりも大きい。そのため、外筒部42fと内筒部42gとの間には、図示しないノズルチップ等がさらに取り付けられ得る。内筒部42gの径方向の中心には、エアゾール組成物が噴射される噴射孔42cが形成されている。なお、本実施形態において、第2先端部42bの形状は特に限定されない。一例を挙げると、第2先端部42bは、略二重円筒状に代えて、単に中央に噴射孔42cが形成された略円筒状等の周知の他の形状であってもよい。
【0046】
噴射孔42cの断面形状および個数は特に限定されない。一例を挙げると、噴射孔42cの断面形状は、略円形(楕円を含む)、略角形(三角形、四角形等)および各種不定形状であってもよい。また、噴射孔42cの個数は、2個以上であってもよい。本実施形態では、略円形の断面形状である1個の噴射孔42cが形成された噴射治具4が例示されている。噴射孔42cの数が1個である場合、本実施形態のエアゾール製品1は、対象害虫の殺虫効果に加え、引火性(爆発性)が低減され得る。
【0047】
本実施形態の噴射孔42cの総断面積(総開口面積)は特に限定されない。総断面積は、噴射圧が後述する範囲内に収まるような面積であればよい。本実施形態において、総断面積は、2mm
2以上であることが好ましく、4mm
2以上であることがより好ましい。また、総断面積は、20mm
2以下であることが好ましく、10mm
2以下であることがより好ましい。なお、本実施形態において、「総断面積」とは、噴射孔の断面積(開口面積)の合計面積である。すなわち、噴射孔が1個である場合(たとえば本実施形態の噴射孔42c)、総断面積は、噴射孔の断面積そのものであり、噴射孔が2個以上である場合、総断面積は、すべての噴射孔の断面積の和である。
【0048】
また、噴射孔42cの径d6は特に限定されない。一例を挙げると、噴射孔42cの径d6は、0.5〜4.5mmである。このように、噴射孔42cの断面形状、個数および断面積は、所望により適宜選択され得る。そのため、本実施形態のエアゾール製品1は、種々の噴射孔42cが形成された噴射治具4を採用し得る。
【0049】
噴射治具4における内部通路(基端部41の連通孔41dから先端部42の噴射孔42cまでの管路、治具内通路ともいう)の長さは特に限定されない。一例を挙げると、治具内通路の長さは、10mm以上であることが好ましく、30mm以上であることがより好ましい。また、治具内通路の長さは、300mm以下であることが好ましく、200mm以下であることがより好ましい。治具内通路の長さが上記範囲内である場合、噴射治具4は、比較的長尺となり得る。その結果、エアゾール製品1は、噴射治具4が取り付けられていない状態と比較して、対象害虫に対してより離れた位置からエアゾール組成物を噴射することができる。また、本実施形態において、治具内通路内で最小となる断面積(開口面積)は特に限定されない。一例を挙げると、治具内通路内において最小となる断面積は、3.5mm
2以上であることが好ましく、4.5mm
2以上であることがより好ましい。一方、治具内通路内において最小となる断面積は、20mm
2以下であることが好ましく、10mm
2以下であることがより好ましい。
【0050】
ここで、本実施形態の噴射治具4は、エアゾール組成物の噴射圧を調整し得る。具体的には、噴射治具4は、先端部42の噴射孔42cから50cm離れた位置におけるエアゾール組成物の噴射圧が7〜12.5gfとなるように、噴射圧を調整する。上記噴射圧は、8gf以上になるよう調整されることが好ましい。また、上記噴射圧は、12gf以下となるよう調整されることが好ましい。調整後の噴射圧が7gf未満である場合、エアゾール製品1は、噴射孔42cから50cm離れた位置にいる対象害虫にエアゾール組成物を噴射すると、対象害虫のいる位置に到達しないエアゾール組成物の量が増え、対象害虫に実質的に噴射されるエアゾール組成物の量が低減し、殺虫効果が低減しやすい。一方、調整後の噴射圧が12.5gfを超える場合、エアゾール製品1は、噴射孔42cから50cm離れた位置にいる対象害虫にエアゾール組成物を噴射すると、対象害虫のいる位置を超えてエアゾール組成物が噴射されたり、対象害虫のいる位置に到達したエアゾール組成物が噴射の勢いによって拡散したりすることにより、対象害虫に実質的に噴射されるエアゾール組成物の量が低減し、殺虫効果が低減しやすい。本実施形態のエアゾール製品1は、噴射治具4が取り付けられることにより、噴射圧が上記範囲内に適切に調整されているため、比較的遠くにいる対象害虫に対しても、所定の噴射圧でエアゾール組成物を噴射することができる。この際の噴射圧は、対象害虫を殺虫する目的において適切であり、エアゾール製品1は、対象害虫が存在する位置において好適に冷却効果を発現し得る。その結果、エアゾール製品1は、所望の殺虫効果を充分に発揮でき、対象害虫を充分に冷却して、殺虫することができる。なお、噴射圧の測定は、たとえばデジタルフォースゲージ(型番:DS2−2N (株)イマダ製)を用いることにより測定し得る。
【0051】
噴射治具4の治具内通路内の断面積および治具内通路の長さが適宜設計されることにより、エアゾール組成物の噴射圧は、調整され得る。一例をあげると、治具内通路内の断面積が小さく、または治具内通路の長さが短く設計されることにより、噴射圧は、高められ得る。一方、治具内通路内の断面積が大きく、または治具内通路の長さが長く設計されることにより、噴射圧は、低められ得る。
【0052】
以上、本実施形態のエアゾール製品1は、噴射治具4が取り付けられることにより、噴射治具4が取り付けられていない状態と比較して、対象害虫に対してより離れた位置からエアゾール組成物を噴射することができる。また、エアゾール製品1は、噴射治具4が取り付けられることにより、噴射孔42cから50cm離れた位置におけるエアゾール組成物の噴射圧が7〜12.5gfとなるように調整されている。このような噴射圧に調整されるようエアゾール組成物を噴射することにより、エアゾール製品1は、噴射治具4が取り付けられている場合であっても殺虫効果が低減しにくく、対象害虫をハイドロフルオロオレフィン、ジメチルエーテルまたはLPGによって冷却し、殺虫することができる。
【0053】
以上、本発明の一実施形態について説明した。本発明のエアゾール製品は、たとえば次のような変形実施形態を採用することができる。
【0054】
(1)上記実施形態では、噴射治具が、中継治具を介して噴射部材に取り付けられている場合について例示した。これに代えて、本発明のエアゾール製品は、中継部材が省略され、噴射治具と噴射部材とが直接取り付けられてもよい。また、本発明のエアゾール製品は、噴射部材と噴射治具とが一体的に形成されていてもよい。
【0055】
(2)上記実施形態では、噴射治具が基端部、チューブ部および先端部の3つの部位から主に構成される場合について例示した。これに代えて、本発明のエアゾール製品は、噴射治具が単なるチューブ状のノズルであってもよい。すなわち、本発明のエアゾール製品は、噴射治具の先端に形成された噴射孔を基準として、噴射孔から50cm離れた位置におけるエアゾール組成物の噴射圧が7〜12.5gfとなるように、噴射圧を調整することのできる噴射治具であれば、特に形状は限定されない。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。
【0057】
<エアゾール製品の仕様>
表1および表2に示される仕様のエアゾール製品を使用した。なお、表2中の参照符号d1〜d6は、それぞれ上記実施形態で詳述した
図3および
図4中の各部位の寸法を表す。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
(実施例1)
表1および表2に記載のエアゾール容器に、以下の表3に記載の処方に従い、原液を調製した。得られた原液をブリキ製耐圧エアゾール容器(容量:480mL)に充填した。その後、エアゾールバルブ(ハウジング孔径:2.2mm、ステム孔径:0.6mm)でエアゾール容器を閉止し、表3に記載の配合に従って、噴射剤を加圧充填した。エアゾールバルブに噴射部材および噴射治具(表2参照)を取り付け、エアゾール製品を製造した。
【0061】
【表3】
【0062】
(実施例2〜8、比較例1〜3)
表2に記載された噴射部材、噴射治具および表3に示される処方に変更した以外は、実施例1と同様の方法によりエアゾール製品を製造した。
【0063】
実施例1〜8および比較例1〜3で得られたエアゾール製品について、以下の評価方法に従って、ノックダウン率および噴射圧を評価した。評価結果を表4に示す。
【0064】
<ノックダウン率>
略円柱状のプラスチックカップ(KPカップKP860、鴻池プラスチック(株)製 内径130mm、深さ100mm)内に供試虫(雌のクロゴキブリ)を3頭入れた。プラスチックカップの内壁面には、対象害虫が逃亡しないように、炭酸カルシウムを塗布した。45°の傾斜を備える供試台にプラスチックカップを載置し、噴射孔からプラスチックカップまで50cmの距離をおいて供試虫に向かってエアゾール組成物の噴射量が約20mLとなるよう噴射した。噴射後の供試虫のノックダウンの有無を観察した。試験は3回繰り返して行った。ノックダウンした割合(ノックダウン率(%))を表4に示す。
【0065】
<噴射圧>
25℃の室温下で噴射孔から50cmの距離からデジタルフォースゲージ(型番:DS2−2N (株)イマダ製)に装着したφ40mmの円状の平板の中心に向かってエアゾール組成物を約3秒間噴射した際の最大値を噴射圧として測定した。測定は3回行い、平均を算出した。
【0066】
【表4】
【0067】
表4に示されるように、噴射治具が取り付けられた状態で噴射孔から50cm離れた位置における噴射圧が7〜12.5gfとなるように調整された実施例1〜8のエアゾール製品は、いずれもノックダウン率が100%であり、優れた殺虫効果を示した。一方、噴射圧が上記範囲から外れるよう調整された比較例1〜3のエアゾール製品は、ノックダウン率が著しく低下した。