特許第6689613号(P6689613)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6689613繊維用抗菌・抗ウイルス性組成物および繊維製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6689613
(24)【登録日】2020年4月10日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】繊維用抗菌・抗ウイルス性組成物および繊維製品
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/342 20060101AFI20200421BHJP
   D06M 13/192 20060101ALI20200421BHJP
   D06M 13/418 20060101ALI20200421BHJP
   A01N 25/34 20060101ALI20200421BHJP
   A01N 59/16 20060101ALI20200421BHJP
   A01N 59/20 20060101ALI20200421BHJP
   A01N 43/36 20060101ALI20200421BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20200421BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
   D06M13/342
   D06M13/192
   D06M13/418
   A01N25/34 B
   A01N59/16 A
   A01N59/16 Z
   A01N59/20 A
   A01N43/36 C
   A01P1/00
   A01P3/00
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-15889(P2016-15889)
(22)【出願日】2016年1月29日
(65)【公開番号】特開2017-133137(P2017-133137A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2018年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】511190018
【氏名又は名称】株式会社CSL
(73)【特許権者】
【識別番号】504446180
【氏名又は名称】ハラダ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594025069
【氏名又は名称】株式会社マルゼン
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】蜷川 博生
【審査官】 川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−190152(JP,A)
【文献】 特開平08−081880(JP,A)
【文献】 特開2013−075879(JP,A)
【文献】 特開2013−181102(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02404502(EP,A1)
【文献】 特開2011−042642(JP,A)
【文献】 特表2003−512323(JP,A)
【文献】 特開2000−256365(JP,A)
【文献】 特開2001−335405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00−13/535
A01N 1/00−65/48
A01P 1/00−23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌性および抗ウイルス性を有する繊維用抗菌・抗ウイルス性組成物であって、
ピロリドンカルボン酸銀、ピロリドンカルボン酸亜鉛、ピロリドンカルボン酸銅およびN−長鎖アシルアミノ酸カリウムを含むことを特徴とする繊維用抗菌・抗ウイルス性組成物。
【請求項2】
さらに、硫酸を含むことを特徴とする請求項1の繊維用抗菌・抗ウイルス性組成物。
【請求項3】
さらに、グルタミン酸を含むことを特徴とする請求項1または2の繊維用抗菌・抗ウイルス性組成物。
【請求項4】
さらに、クエン酸を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれかの繊維用抗菌・抗ウイルス性組成物。
【請求項5】
繊維に、請求項1から4のいずれかの繊維用抗菌・抗ウイルス性組成物が塗布または含浸されていることを特徴とする繊維製品

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維用抗菌・抗ウイルス性組成物および繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、微粒子状の銀や亜鉛などの金属を含む抗菌・抗ウイルス性組成物が知られている(例えば特許文献1〜6など)。
【0003】
また、例えば、抗菌・抗ウイルス性を有する繊維製品も提案されている(特許文献7、8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−2227号公報
【特許文献2】特表2008−520570号公報
【特許文献3】特開2010−70571号公報
【特許文献4】特表2004−528389号公報
【特許文献5】特開2014−208606号公報
【特許文献6】特表2013−503124号公報
【特許文献7】特開2010−30984号公報
【特許文献8】特開2009−57647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、特許文献1〜6の抗菌・抗ウイルス性組成物を繊維に塗布などした場合、抗菌・抗ウイルス性成分が繊維から脱落しやすく、抗菌・抗ウイルス性を長期間に亘って維持することは難しい。また、抗菌・抗ウイルス性組成物に銀などの金属が含まれる場合、変色が生じる恐れがある。
【0006】
また、特許文献7、8の繊維製品の場合も、抗菌・抗ウイルス性成分が繊維から脱落しやすく、また、抗菌・抗ウイルス性効果も次第に低下していくという問題がある。さらに、特許文献7、8の繊維製品の場合、染料や顔料を用いての染色や、柔軟化、加工溶剤の使用などによっても抗菌・抗ウイルス性効果が阻害される恐れがあるため、使用可能な材料が大きく制限されてしまうという問題もある。
【0007】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、抗菌・抗ウイルス性成分の繊維からの脱落や変色が抑制され、優れた抗菌・抗ウイルス効果を長期間維持することができ、使用可能な材料の制限も少ない繊維用抗菌・抗ウイルス性組成物と、この繊維用抗菌・抗ウイルス性組成物が塗布または含浸された繊維製品を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の繊維用抗菌・抗ウイルス性組成物は、アミノ酸銀、アミノ酸亜鉛および銅イオンを含むことを特徴としている。
【0009】
この繊維用抗菌・抗ウイルス性組成物では、アミノ酸銀およびアミノ酸亜鉛のアミノ酸は、L−ピロリドンカルボン酸であることが好ましい。
【0010】
この繊維用抗菌・抗ウイルス性組成物では、銅イオンは、ピロリドンカルボン酸銅によるものであることが好ましい。
【0011】
この繊維用抗菌・抗ウイルス性組成物では、さらに、硫酸を含むことが好ましい。
【0012】
この繊維用抗菌・抗ウイルス性組成物では、さらに、N−長鎖アシルアミノ酸カリウムを含むことが好ましい。
【0013】
この繊維用抗菌・抗ウイルス性組成物では、さらに、グルタミン酸を含むことが好ましい。
【0014】
この繊維用抗菌・抗ウイルス性組成物では、さらに、クエン酸を含むことが好ましい。
【0015】
本発明の繊維製品は、繊維に、上記の繊維用抗菌・抗ウイルス性組成物が塗布または含浸されている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の繊維用抗菌・抗ウイルス性組成物は、溶媒としての水中に、アミノ酸銀、アミノ酸亜鉛および銅イオンを含んでいる。本発明の抗菌・抗ウイルス性組成物では、配合されたアミノ酸銀、アミノ酸亜鉛のうちの少なくとも一部の銀、亜鉛はイオン化した状態で存在している。
【0017】
アミノ酸銀およびアミノ酸亜鉛におけるアミノ酸としては、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トレオニン、トリプトファン、メチオニン、アスパラギン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジンピドール酸、L−グルタミン酸、L−グルチム酸、L−グルチミン酸、L−グルタミン酸ラクタム、L−グルチミニン酸、L−ピロリドンカルボン酸、L−ピログルタミン酸、オキソプロリンのうちの1種または2種以上を例示することができる。これらの中でも、L−ピロリドンカルボン酸は、抗菌・抗ウイルス効果に優れているため、本発明の抗菌・抗ウイルス性組成物に、ピロリドンカルボン酸銀、ピロリドンカルボン酸亜鉛を配合することで、抗菌・抗ウイルス効果を確実に高めることができる。
【0018】
アミノ酸銀およびアミノ酸亜鉛の配合量は適宜設計することができるが、例えば、水1000mlに対する銀イオンおよび亜鉛イオンの合計が15000mg/L以上であることが好ましく、実際的には、水1000mlに対する銀イオンおよび亜鉛イオンの合計が、15000mg/L〜100000mg/L程度の範囲であることがより好ましい。
【0019】
本発明の繊維用抗菌・抗ウイルス性組成物に含まれる銅イオンは、各種の銅化合物によるものであってよく、具体的には、例えば、硝酸銅、塩化銅、硫酸銅、酸化銅、硫酸銅、ヨウ化銅、炭酸銅、クエン酸銅、グルタミン酸銅、アミノ酸銅等うちの1種または2種以上を例示することができ、なかでもアミノ酸銅であることが好ましい。
【0020】
アミノ酸銅のアミノ酸は、アミノ酸銀およびアミノ酸亜鉛と同様に、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トレオニン、トリプトファン、メチオニン、アスパラギン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジンピドール酸、L−グルタミン酸、L−グルチム酸、L−グルチミン酸、L−グルタミン酸ラクタム、L−グルチミニン酸、L−ピロリドンカルボン酸、L−ピログルタミン酸、オキソプロリンのうちの1種または2種以上を例示することができる。これらの中でも、L−ピロリドンカルボン酸は、抗菌・抗ウイルス効果に優れているため、本発明の抗菌・抗ウイルス性組成物に、ピロリドンカルボン酸銅を配合することで、抗菌・抗ウイルス効果を確実に高めることができる。
【0021】
アミノ酸銅の配合量は適宜設計することができるが、例えば、水1000mlに対する銅イオンが100mg/L以上であることが好ましく、実際的には、水1000mlに対する銀イオンおよび亜鉛イオンの合計が、100mg/L〜500mg/L程度の範囲であることがより好ましい。
【0022】
また、本発明の繊維用抗菌・抗ウイルス性組成物には、例えば、ニッケル、マグネシウム、鉄、チタンなどのその他の金属を適宜含むことができる。
【0023】
さらに、本発明の繊維用抗菌・抗ウイルス性組成物は、界面活性剤として、N―長錯アシルアミノ酸カリウムを含むことが好ましい。N―長錯アシルアミノ酸カリウムは、カリウムイオンが容易に抗ウイルス性組成物の銀イオン、亜鉛イオン、銅イオンと結合し、効果的に繊維と結合する。このため、N―長錯アシルアミノ酸カリウムは、抗ウイルス性成分を保持する役割を有している。また、N―長錯アシルアミノ酸カリウムは、界面活性剤として繊維の内部への繊維用抗菌・抗ウイルス性組成物の浸透性とpHによる凝集性を高めることができる。繊維用抗菌・抗ウイルス性組成物が繊維の内部へ浸透した後、凝集することで、繊維用抗菌・抗ウイルス性組成物が繊維に固定されるため、脱落が抑制され、抗菌・抗ウイルス性を長期間維持することができる。
【0024】
本発明の繊維用抗菌・抗ウイルス性組成物とN―長錯アシルアミノ酸カリウムの配合割合は、用途、目的など応じて適宜設定することができるが、例えば、抗菌・抗ウイルス性組成物に対して、0.005重量%〜10重量%の範囲内を例示することができる。N―長錯アシルアミノ酸カリウムの配合割合がこの範囲であると、上記の効果が確実に発揮される。
【0025】
また、本発明の抗菌・抗ウイルス性組成物には、塩酸、硝酸、リン酸、酢酸、硫酸などの各種の酸類を配合することで、凝集性を高めることができる。これらの中でも、金属イオンの溶解性と浸透性(浸透安定性)の観点から、硫酸が好ましい。本発明の抗菌・抗ウイルス性組成物における硫酸などの各種の酸類の濃度などは特に限定されず、抗菌・抗ウイルス性を妨げない範囲で適宜設定することができる。
【0026】
本発明の抗菌・抗ウイルス性組成物には、グルタミン酸を配合することが好ましい。グルタミン酸は、水に対する溶解性、カルボン酸系材料との相関性に優れ、ピロリドンカルボン酸の原料ともなるため、繊維に対する浸透性をさらに高めることができる。
【0027】
また、本発明の抗菌・抗ウイルス性組成物には、クエン酸を配合することが好ましい。クエン酸は溶解性に優れ、繊維への浸透性をさらに高めることができる。
【0028】
さらに、本発明の抗菌・抗ウイルス性組成物には、用途、取り扱い性、保存性などを考慮して、その他各種の添加物を配合することができる。例えば、通常製剤に用いられる配合剤、例えば、界面活性剤、油分、アルコール類、保湿剤、増粘剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、pH調整剤、香料、色素、ビタミン類、生薬、植物エキス等を配合することもできる。また、硫酸亜鉛七水和物、硫酸銅五水和物などの酸や水酸化ナトリウムなどを利用してpHを調整することもできる。
【0029】
本発明の繊維製品は、上記の通りの抗菌・抗ウイルス性組成物が、繊維に塗布または含浸されている。
【0030】
繊維製品は、抗菌・抗ウイルス性組成物が塗布または含浸された繊維を少なくとも一部に含み、糸、織編物、ウェブ、不織布、紙、ネット等に成形されたものを材料とすることができる。具体的には、例えば、繊維製品としては、例えば、衣類(帽子、手袋、ハンカチを含む)、寝具(布団、枕を含む)、カーテン、壁紙、カーペット、マット、シーツ、フィルター、マスク、ワイパー、タオル、防護衣類、防護ネットなどを例示することができ、日常の生活に供され、生活空間に飛散浮遊する菌やウイルスを不活化させることができる。
【0031】
また、繊維の材料は特に限定されないが、例えばセルロース系繊維(木綿、麻、レーヨン、パルプなど)、蛋白質系繊維(羊毛、絹など)、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリウレタン系繊維などの各種の天然繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維を使用できる。
【0032】
さらに、抗菌・抗ウイルス性組成物を繊維に塗布または含浸する方法も特に限定されない。例えば、材料となる繊維または繊維製品を抗菌・抗ウイルス性組成物を含む溶液に浸漬して乾燥させる方法や、材料となる繊維または繊維製品に対して抗菌・抗ウイルス性組成物を含む溶液を噴霧またはコーティングして乾燥させる方法などを例示することができる。
【0033】
本発明の抗菌・抗ウイルス性組成物は、アミノ酸銀、アミノ酸亜鉛および銅イオンなどを含むため、抗菌・抗ウイルス性成分の繊維からの脱落や変色が抑制され、優れた抗菌・抗ウイルス効果を長期間維持することができる。また、繊維に塗布、含浸された本発明の抗菌・抗ウイルス性組成物の抗菌・抗ウイルス効果は染料、顔料、柔軟剤、加工溶剤などの他の材料によって阻害され難く、材料の使用制限も少ない。そして、このような抗菌・抗ウイルス性組成物が塗布または含浸されている繊維製品は、生活空間に飛散浮遊する菌やウイルスを不活化させることができ、優れた抗菌・抗ウイルス性を持続することができる。
【0034】
本発明の抗菌・抗ウイルス性組成物は、以上の実施形態に限定されることはない。
【実施例】
【0035】
以下、実施例とともに本発明の抗菌・抗ウイルス性組成物について説明するが、本発明の抗菌・抗ウイルス性組成物は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0036】
<実施例1>抗菌・抗ウイルス性組成物の作製
以下の手順で、抗菌・抗ウイルス性組成物を作製した。
(1)純水1000ml中に、硝酸銀0.1molと炭酸水素ナトリウム0.1molを添加し、常温、遮光した室内で添加後10分間攪拌した。
(2)濾過紙を用いて脱水し、純水1000mlで洗浄を行った。
(3)上記(2)によって得られた乾燥重量6.75g相当のペーストと、L−ピロリドンカルボン酸6.96gとを純水1000mlに加えて、加温反応させることでピロリドンカルボン酸銀1000mg/Lを得た。
(4)上記(1)(2)(3)と同様に、硝酸亜鉛を材料として、L−ピロリドンカルボン酸と反応させ、ピロリドンカルボン酸亜鉛(亜鉛:82%、ピロリドンカルボン酸化合物:18%)16.5g(乾燥重量)を得た。
(5)ピロリドンカルボン酸銀、L−ピロリドンカルボン酸亜鉛、硫酸銅五水和物を以下のように配合し、抗菌・抗ウイルス性組成物を作製した。
水1000ml中の配合
上記記載のピロリドンカルボン酸銀 100mg/L
L−ピロリドンカルボン酸亜鉛 16500mg/L
硫酸銅五水和物 2400mg/L
なお、この組成物は長時間経過しても変色が生じないことが確認された。
【0037】
<実施例2>組成物の消臭性
(1)実施例1で作製した組成物をレーヨン原料に対し1/200の割合で混合し、以下の条件で消臭性を試験した。
【0038】
試験方法:(一社)繊維評価技術評議会SEKマーク繊維製品認証基準21.消臭試験(検知管法、ガスクロマトグラフ法)
ガス初発濃度:アンモニア100ppm、酢酸30ppm、イソ吉草酸38ppm
試験試料:検知管法100cm、ガスクロマトグラフ法50cm
測定時間:2時間後
(2)結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
表1に示したように、実施例1で作製した組成物は優れた消臭性を有していることが確認された。
【0041】
<実施例3>組成物の抗菌性1
(1)実施例1で作製した組成物を綿に対して混合し、以下の条件で抗菌性を試験した。
【0042】
試験方法:JSL1902:2008定量試験(菌液吸収法)による。また、洗濯方法は、JIS 0217 103号 の試験方法による。生菌数の測定方法は混釈平板培養法による。
【0043】
試験菌株:黄色ブドウ球菌 Staphylococcus Aureus NBRC 12732
(2)結果を表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
表2に示したように、実施例1で作製した組成物は優れた抗菌性を有していることが確認された。
【0046】
さらに、上記(1)と同様の綿からなるソックスに実施例1で作製した組成物を練り込んだものについて、界面活性剤(Tween80)0.05%を添加した試験菌液を使用して、洗濯を繰り返し行い(0〜10回)、抗菌性の変化を検討した。
【0047】
結果を表3に示す。
【0048】
【表3】
【0049】
表3に示したように、実施例1で作製した組成物が練り込まれた綿ソックスは、洗濯を10回繰り返しても抗菌性が大きく失われることはないことが確認された。
【0050】
<実施例4>組成物の抗菌性2
(1)綿に実施例1で作製した組成物を実用例1のもの、練り込み(具体的な方法について御教示下さい)、以下の条件で抗菌性を試験した。
【0051】
試験方法:JSL1902:2008定量試験(菌液吸収法)による。また、洗濯方法は、JIS 0217 103号 の試験方法による。生菌数の測定方法は混釈平板培養法による。
【0052】
試験菌株:大腸菌 Escherichia coli NBRC 3301
(2)結果を表4に示す。
【0053】
【表4】
【0054】
表4に示したように、実施例1で作製した組成物は優れた抗菌性を有していることが確認された。
【0055】
さらに、上記(1)と同様の綿からなるソックスに実施例1で作製した組成物を練り込んだものについて、界面活性剤(Tween80)0.05%を添加した試験菌液を使用して、洗濯を繰り返し行い(0〜10回)、抗菌性の変化を検討した。
【0056】
結果を表5に示す。
【0057】
【表5】
【0058】
表5に示したように、実施例1で作製した組成物が練り込まれた綿ソックスは、洗濯を10回繰り返しても抗菌性が大きく失われることはないことが確認された。
【0059】
<実施例5>組成物の抗菌性3
(1)実施例3の試験の繊維を変更して同様の試験を行った。
【0060】
結果を表6に示す。
【0061】
【表6】
【0062】
表6に示したように、実施例1で作製した組成物が練り込まれた繊維(洗濯0回)は、抗菌性が良好であることが確認された。一方、洗濯を10回行った繊維では、種類によっては抗菌性の低下が確認された。
【0063】
<実施例6>組成物の抗菌性4
(1)実施例4の試験の繊維を変更して同様の試験を行った。
【0064】
結果を表7に示す。
【0065】
【表7】
【0066】
表7に示したように、実施例1で作製した組成物が練り込まれた繊維(洗濯0回)は、抗菌性が良好であることが確認された。一方、洗濯を10回行った繊維では、種類によっては抗菌性の低下が確認された。
【0067】
<実施例7>組成物の抗カビ性
(1)表が綿100%であり、裏がポリエステル、ポリウレタンからなる繊維に実施例1で作製した組成物をリッピング加工(1/100の重量比、60℃で乾燥)したものについて、以下の条件で抗カビ性を試験した。
試験方法:約18mm角の滅菌済み試料(0.2g分)に、1/20サブローデキストロース培地にて約105個/mlに調整した胞子混濁液を0.2ml接種し、25℃で42時間培養した。培養後、試料上の胞子のATP濃度を発光測定法にて測定した(試験胞子混濁液濃度:2.0×105個/ml)。
試験菌株:白癬菌 Trichophyton mentagrophytes NBRC 32409
結果を表8、表9に示す。
【0068】
【表8】
【0069】
【表9】
【0070】
表8、表9に示したように、実施例1で作製した組成物は、50倍、100倍に希釈した場合も抗カビ性(抗菌性)を示すことが確認された。
【0071】
<実施例8>組成物の抗ウイルス性
(1)靴下の繊維に実施例1で作製した組成物をリッピング加工(1/100の重量比、60℃で乾燥)したものについて、以下の条件で抗ウイルス性を試験した。
【0072】
試験方法:ISO18184 Textiles-Determination of antivirial activity of textile productsによる。
【0073】
試験ウイルス:インフルエンザウイルス InfuenzaAvirus (H3N2) :ATCC VR-1679
結果を表10に示す。
【0074】
【表10】
【0075】
表10に示したように、実施例1で作製した組成物(100倍希釈)は、優れた抗ウイルス性を示すことが確認された。また、洗濯を10回行った場合も組成物の脱落はほとんどなく、抗ウイルス性が維持されることが確認された。
【0076】
<実施例9>組成物の消臭性2
以下に示した条件1〜6の繊維に、実施例1で作製した組成物にグルタミン酸、クエン酸を加えたものをリッピング加工(1/100の重量比、60℃で乾燥)したものについて、以下の条件で消臭性を試験した。
1.表綿100%
2.表綿100% 洗濯10回後
3.表綿100% 洗濯30回後
4.表綿 65% ポリエステル35%
5.表綿 65% ポリエステル35% 洗濯10回後
6.表綿 65% ポリエステル35% 洗濯30回後
試験方法:(一社)繊維評価技術評議会SEKマーク繊維製品認証基準21.消臭試験(検知管法、ガスクロマトグラフ法)
ガス初発濃度:アンモニア100ppm、酢酸30ppm、イソ吉草酸38ppm
試験試料:検知管法100cm、ガスクロマトグラフ法50cm
測定時間:2時間後
洗濯処理方法:JIS L 0217 103法,10、30回繰り返し,吊えい干し
洗濯使用洗剤:JAFET標準配合洗剤使用

結果を表11に示す。
【0077】
【表11】
【0078】
表11に示したように、条件1、4の結果から、実施例1で作製した組成物は優れた消臭性を有していることが確認された。また、条件2、3、5、6の結果から、洗濯を繰り返しても成分の脱落は生じ難く、消臭性が維持されることが確認された。
【0079】
<実施例9>抗菌・抗ウイルス性組成物の希釈時の成分割合
実施例1とは異なる以下の表12に示した配合で、抗ウイルス性組成物を作製した。
【0080】
【表12】
【0081】
この抗菌・抗ウイルス性組成物は、実施例1で得た組成物と同等、またはそれ以上に抗ウイルス性、抗菌性、消臭性を示すことが確認された。
【0082】
また、表12には、各成分の有効濃度の目安を示している。この濃度範囲であると抗ウイルス性、抗菌性、消臭性を確実に発揮することができる。
【0083】
なお、より好ましい配合割合としては、ピロリドンカルボン酸銀10mg/L〜100mg/L、ピロリドンカルボン酸亜鉛110mg/L〜500mg/L、硫酸銅として150mg/L〜500mg/L、グルタミン酸5mg/L〜20mg/L、クエン酸100mg/L〜1000mg/L、N−長鎖アシルアミノ酸カリウム400mg/L〜2000mg/Lを例示することができる。