(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般にモータグレーダでは、車体フレームの前端と後端との間にブレードが配置されている。前輪は、ブレードよりも前方に配置されている。モータグレーダが前進走行する場合、ブレードが整地する前の地面を前輪が通過する。前輪が凹凸のある地面を通過すると、上下方向におけるブレードの位置が地面の凹凸に対応して変動することになる。具体的には、前輪が凸部を通過すると、ブレードの位置が上方に移動し、ブレードが地面から離れて整地作業が不十分になる。前輪が凹部を通過すると、ブレードの位置が下方に移動し、ブレードが地面を侵食する。その結果、ブレードが通過した後の地面は、設計地形と合致しなくなる。
【0006】
本開示は、上記の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、整地作業の施工精度を向上させることが可能なモータグレーダおよびモータグレーダの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ある局面に従う車体に取り付けられた前輪と後輪との間に設けられたブレードと、ブレードの高さを調整する高さ調整機構とを備えたモータグレーダの制御方法であって、モータグレーダの前方の現況地形を取得するステップと、現況地形に基づいて、前輪に対するブレードの高さを調整するステップとを備える。
【0008】
したがって、現況地形に基づいてブレードの高さを調整するため整地作業の施工精度を向上させることが可能である。
【0009】
好ましくは、モータグレーダの車速を取得するステップをさらに備える。前輪に対するブレードの高さを調整するステップでは、現況地形および車速に基づいて前輪に対するブレードの高さを調整する。
【0010】
したがって、現況地形および車速に基づいて車体に対するブレードの高さを調整するためブレードの高さの変化を抑制し、整地作業の施工精度を向上させることが可能である。
【0011】
好ましくは、前輪が凹部を通過するか否かを判断するステップをさらに備える。前輪に対するブレードの高さを調整するステップでは、前輪が凹部を通過すると判断した場合、前輪に対するブレードの高さを現在の高さよりも高くする。
【0012】
したがって、前輪が凹部を通過する際に土砂を侵食することを抑制し、凹部の整地作業の施工精度を向上させることが可能である。
【0013】
好ましくは、目標地形を設定するステップをさらに備える。前輪に対するブレードの高さを調整するステップでは、前輪に対するブレードの高さを目標地形よりも上方に維持する。
【0014】
したがって、前輪に対するブレードの高さを目標地形よりも上方に維持することにより目標地形への侵食を抑制し、目標地形の整地作業の施工精度を向上させることが可能である。
【0015】
好ましくは、前輪が凹部を通過したか否かを判断するステップをさらに備える。前輪に対するブレードの高さを調整するステップでは、前輪が凹部を通過したと判断した場合、前輪に対するブレードの高さを再調整する。
【0016】
したがって、前輪が凹部を通過した場合には、ブレードの高さを再調整することにより整地作業の施工精度を向上させることが可能である。
【0017】
好ましくは、前輪が凸部を通過するか否かを判断するステップをさらに備える。前輪に対するブレードの高さを調整するステップでは、前輪が凸部を通過すると判断した場合、前輪に対するブレードの高さを現在の高さよりも低くする。
【0018】
したがって、前輪が凸部を通過する際に、整地作業が不十分になることを抑制し、凸部の整地作業の施工精度を向上させることが可能である。
【0019】
好ましくは、前輪が凸部を通過したか否かを判断するステップをさらに備える。前輪に対するブレードの高さを調整するステップでは、前輪が凸部を通過したと判断した場合、前輪に対するブレードの高さを再調整する。
【0020】
したがって、前輪が凸部を通過した場合には、ブレードの高さを再調整することにより整地作業の施工精度を向上させることが可能である。
【0021】
好ましくは、現況地形を取得するステップでは、現況地形を撮像装置で撮像することおよび現況地形をレーザでスキャンすることの少なくとも一方を実行することにより、現況地形を取得する。
【0022】
したがって、撮像装置あるいはレーザを用いて、現況地形を精度よく取得して整地作業の施工精度を向上させることが可能である。
【0023】
ある局面に従うモータグレーダは、車体と、車体に取り付けられた前輪および後輪と、前輪と後輪との間に設けられたブレードと、前輪に対するブレードの高さを調整する高さ調整機構と、モータグレーダの前方の現況地形を取得する取得部と、現況地形に基づいて、高さ調整機構に指示して前輪に対するブレードの高さを調整する制御部とを備える。
【0024】
したがって、取得した現況地形に基づいてブレードの高さを調整するため整地作業の施工精度を向上させることが可能である。
【0025】
好ましくは、制御部は、モータグレーダの車速を取得し、現況地形および車速に基づいて、高さ調整機構に指示して前輪に対するブレードの高さを調整する。
【0026】
したがって、現況地形および車速に基づいて車体に対するブレードの高さを調整するためブレードの高さの変化を抑制し、整地作業の施工精度を向上させることが可能である。
【0027】
好ましくは、制御部は、前輪が凹部を通過するか否かを判断し、前輪が凹部を通過すると判断した場合、高さ調整機構に指示して前輪に対するブレードの高さを現在の高さよりも高くする。
【0028】
したがって、前輪が凹部を通過する際に土砂を侵食することを抑制し、凹部の整地作業の施工精度を向上させることが可能である。
【0029】
好ましくは、制御部は、前輪が凹部を通過したか否かを判断し、前輪が凹部を通過したと判断した場合、高さ調整機構に指示して前輪に対するブレードの高さを再調整する。
【0030】
したがって、前輪が凹部を通過した場合には、ブレードの高さを再調整することにより整地作業の施工精度を向上させることが可能である。
【0031】
好ましくは、制御部は、前輪が凸部を通過するか否かを判断し、前輪が凸部を通過すると判断した場合、高さ調整機構に指示して前輪に対するブレードの高さを現在の高さよりも低くする。
【0032】
したがって、前輪が凸部を通過する際に、整地作業が不十分になることを抑制し、凸部の整地作業の施工精度を向上させることが可能である。
【0033】
好ましくは、制御部は、前輪が凸部を通過したか否かを判断し、前輪が凸部を通過したと判断した場合、高さ調整機構に指示して前輪に対するブレードの高さを再調整する。
【0034】
したがって、前輪が凸部を通過した場合には、ブレードの高さを再調整することにより整地作業の施工精度を向上させることが可能である。
【0035】
好ましくは、取得部は、モータグレーダに取り付けられた撮像装置およびモータグレーダに取り付けられたレーザの少なくとも一方により、現況地形を取得する。
【0036】
したがって、撮像装置あるいはレーザを用いて、現況地形を精度よく取得して整地作業の施工精度を向上させることが可能である。
【発明の効果】
【0037】
一実施形態に基づくモータグレーダの制御方法およびモータグレーダによれば、整地作業の施工精度を向上させることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、実施形態に係るモータグレーダについて説明する。以下の説明では、同一部品には、同一の符号を付している。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明については繰り返さない。
【0040】
<A.外観>
図1は、実施形態に基づくモータグレーダ1の構成を概略的に示す斜視図である。
【0041】
図2は、実施形態に基づくモータグレーダ1の構成を概略的に示す側面図である。
図1および
図2に示されるように、本実施形態のモータグレーダ1は、走行輪11,12と、車体フレーム2と、キャブ3と、作業機4とを主に備えている。また、モータグレーダ1は、エンジン室6に配置されたエンジンなどの構成部品を備えている。作業機4は、ブレード42を含んでいる。モータグレーダ1は、ブレード42で整地作業、除雪作業、軽切削、材料混合などの作業を行なうことができる。
【0042】
走行輪11,12は、前輪11と後輪12とを含んでいる。
図1および
図2においては、片側1輪ずつの2つの前輪11と片側2輪ずつの4つの後輪12とからなる全6輪の走行輪を示しているが、前輪11および後輪12の数および配置はこれに限られない。
【0043】
なお、以下の図の説明において、モータグレーダ1が直進走行する方向を、モータグレーダ1の前後方向という。モータグレーダ1の前後方向において、作業機4に対して前輪11が配置されている側を、前方向とする。モータグレーダ1の前後方向において、作業機4に対して後輪12が配置されている側を、後方向とする。モータグレーダ1の左右方向とは、平面視において前後方向と直交する方向である。前方向を見て左右方向の右側、左側が、それぞれ右方向、左方向である。モータグレーダ1の上下方向とは、前後方向および左右方向によって定められる平面に直交する方向である。上下方向において地面のある側が下側、空のある側が上側である。
【0044】
前後方向とは、キャブ3内の運転席に着座したオペレータの前後方向である。左右方向とは、運転席に着座したオペレータの左右方向である。左右方向とは、モータグレーダ1の車幅方向である。上下方向とは、運転席に着座したオペレータの上下方向である。運転席に着座したオペレータに正対する方向が前方向であり、運転席に着座したオペレータの背後方向が後方向である。運転席に着座したオペレータが正面に正対したときの右側、左側がそれぞれ右方向、左方向である。運転席に着座したオペレータの足元側が下側、頭上側が上側である。
【0045】
車体フレーム2は、リアフレーム21と、フロントフレーム22と、外装カバー25とを含んでいる。リアフレーム21は、外装カバー25と、エンジン室6に配置されたエンジンなどの構成部品とを支持している。外装カバー25はエンジン室6を覆っている。外装カバー25には、上方開口部26と、側方開口部27と、後方開口部とが形成されている。上方開口部26、側方開口部27および後方開口部は、外装カバー25を厚み方向に貫通して形成されている。
【0046】
リアフレーム21は、外装カバー25と、エンジン室6に配置されたエンジンなどの構成部品とを支持している。外装カバー25はエンジン室6を覆っている。リアフレーム21には、上記のたとえば4つの後輪12の各々がエンジンからの駆動力によって回転駆動可能に取付けられている。
【0047】
フロントフレーム22は、リアフレーム21の前方に取り付けられている。フロントフレーム22は、リアフレーム21に、回動可能に連結されている。フロントフレーム22は、前後方向に延びている。フロントフレーム22は、リアフレーム21に連結されている基端部と、基端部と反対側の先端部とを有している。フロントフレーム22は、前端を有している。前端は、フロントフレーム22の先端部に含まれている。フロントフレーム22の先端部には、上記のたとえば2つの前輪11が回転可能に取り付けられている。
【0048】
フロントフレーム22の前端(または、車体フレーム2の前端)には、カウンタウェイト51が取り付けられている。カウンタウェイト51は、フロントフレーム22に取り付けられるアタッチメントの一種である。カウンタウェイト51は、前輪11に負荷される下向きの荷重を増加して、操舵を可能にするとともにブレード42の押付荷重を増加するために、フロントフレーム22に装着されている。カウンタウェイト51には、モータグレーダ1の前方の現況地形を撮像するための撮像装置59が取り付けられている。
【0049】
撮像装置59の取付位置は、上記の位置に限定されるものではなく、モータグレーダ1の前方の現況地形を撮像できる位置であれば、特に限定されない。たとえば、フロントフレーム22の上面に設けられていてもよい。なお、撮像装置59は、典型的には、ステレオカメラである。
【0050】
キャブ3はフロントフレーム22に載置されている。キャブ3の内部には、ハンドル、変速レバー、作業機4の操作レバー、ブレーキ、アクセルペダル、インチングベダルなどの操作部(図示せず)が設けられている。なお、キャブ3は、リアフレーム21に載置されていてもよい。
【0051】
作業機4は、ドローバ40と、旋回サークル41と、ブレード42と、油圧モータ49と、各種の油圧シリンダ44〜48とを主に有している。
【0052】
ドローバ40の前端部は、フロントフレーム22の先端部に揺動可能に取付けられている。ドローバ40の後端部は、一対のリフトシリンダ44,45によってフロントフレーム22に支持されている。この一対のリフトシリンダ44,45の伸縮によって、ドローバ40の後端部がフロントフレーム22に対して上下に昇降可能である。したがって、リフトシリンダ44,45がともに縮小することにより、フロントフレーム22および前輪11に対するブレード42の高さは上方向に調整される。また、リフトシリンダ44,45がともに伸長することにより、フロントフレーム22および前輪11に対するブレード42の高さは下方向に調整される。
【0053】
また、ドローバ40は、リフトシリンダ44,45の伸縮によって、車両進行方向に沿った軸を中心に上下に揺動可能である。
【0054】
フロントフレーム22とドローバ40の側端部とには、ドローバシフトシリンダ46が取り付けられている。このドローバシフトシリンダ46の伸縮によって、ドローバ40は、フロントフレーム22に対して左右に移動可能である。
【0055】
旋回サークル41は、ドローバ40の後端部に旋回(回転)可能に取付けられている。旋回サークル41は、油圧モータ49によって、ドローバ40に対し車両上方から見て時計方向または反時計方向に旋回駆動可能である。旋回サークル41の旋回駆動によって、ブレード42のブレード推進角が調整される。
【0056】
ブレード42は、前輪11と後輪12との間に配置されている。ブレード42は、車体フレーム2の前端(または、フロントフレーム22の前端)と車体フレーム2の後端との間に配置されている。ブレード42は、旋回サークル41に支持されている。ブレード42は、旋回サークル41およびドローバ40を介して、フロントフレーム22に支持されている。
【0057】
ブレード42は、旋回サークル41に対して左右方向に移動可能に支持されている。具体的には、ブレードシフトシリンダ47が、旋回サークル41およびブレード42に取り付けられており、ブレード42の長手方向に沿って配置されている。このブレードシフトシリンダ47によって、ブレード42は旋回サークル41に対して左右方向に移動可能である。ブレード42は、フロントフレーム22の長手方向に交差する方向に移動可能である。
【0058】
ブレード42は、旋回サークル41に対して、ブレード42の長手方向に延びる軸を中心に揺動可能に支持されている。具体的には、チルトシリンダ48が、旋回サークル41およびブレード42に取り付けられている。このチルトシリンダ48を伸縮させることによって、ブレード42は旋回サークル41に対してブレード42の長手方向に延びる軸を中心に揺動して、車両進行方向に対するブレード42の傾斜角度を変更することができる。
【0059】
以上のように、ブレード42は、ドローバ40と旋回サークル41とを介して、車両に対する上下の昇降、車両進行方向に沿った軸を中心とする揺動、前後方向に対する傾斜角度の変更、左右方向の移動、および、ブレード42の長手方向に延びる軸を中心とする揺動を行なうことが可能に構成されている。
【0060】
<B.システム構成>
図3は、実施形態に基づくモータグレーダ1が備える制御系の構成を表したブロック図である。
【0061】
図3に示されるように、モータグレーダ1の制御システムは、一例として、右操作レバー33と、油圧ポンプ131と、コントロールバルブ134と、油圧アクチュエータ135と、エンジン136と、エンジンコントローラ138と、スロットルダイヤル139と、回転センサ140と、ポテンショメータ145と、スタータスイッチ146と、メインコントローラ150と、撮像装置59と、車速センサ60とを含む。
【0062】
油圧ポンプ131は、作業機4等の駆動に用いる作動油を吐出する。
油圧ポンプ131には、コントロールバルブ134を介して油圧アクチュエータ135が接続される。油圧アクチュエータ135は、リフトシリンダ44,45等を含む。
【0063】
メインコントローラ150は、右操作レバー33の操作量および操作方向に応じた出力電気信号に従う指令をコントロールバルブ134に出力する。
【0064】
斜板駆動装置132は、メインコントローラ150からの指示に基づいて駆動し、油圧ポンプ131の斜板の傾斜角度を変更する。これに伴い油圧ポンプ131からコントロールバルブ134への作動油の供給量が調整される。
【0065】
コントロールバルブ134は、電磁比例弁であり、油圧アクチュエータ135を制御する。
【0066】
具体的には、メインコントローラ150からの指令に従って作動油の供給を切り替える。たとえば、コントロールバルブ134は、メインコントローラ150からの指令に従ってリフトシリンダ44,45が伸長あるいは縮小するように作動油の供給を切り替える。また、コントロールバルブ134は、メインコントローラ150からの指令に従って油圧ポンプ131から油圧アクチュエータ135に供給する作動油の吐出量を調整する。
【0067】
エンジン136は、油圧ポンプ131と接続する駆動軸を有し、当該駆動軸に従って油圧ポンプ131が駆動される。
【0068】
エンジンコントローラ138は、メインコントローラ150からの指示に従い、エンジン136の動作を制御する。エンジン136は、一例としてディーゼルエンジンである。エンジン136のエンジン回転数は、スロットルダイヤル139等によって設定され、実際のエンジン回転数は回転センサ140によって検出される。回転センサ140は、メインコントローラ150と接続される。
【0069】
スロットルダイヤル139にはポテンショメータ145が設けられている。ポテンショメータ145は、スロットルダイヤル139の設定値(操作量)を検出する。スロットルダイヤル139の設定値は、メインコントローラ150に送信される。ポテンショメータ145は、エンジンコントローラ138に対して、エンジン136の回転数に関する指令値を出力する。当該指令値に従って、エンジン136の目標回転数が調整される。
【0070】
エンジンコントローラ138は、メインコントローラ150からの指示に従い燃料噴射装置が噴射する燃料噴射量等の制御を行うことにより、エンジン136の回転数を調節する。
【0071】
スタータスイッチ146は、エンジンコントローラ138と接続される。操作者がスタータスイッチ146を操作(スタートに設定)することにより、始動信号がエンジンコントローラ138に出力され、エンジン136が始動する。
【0072】
メインコントローラ150は、モータグレーダ1全体を制御するコントローラであり、CPU(Central Processing Unit)、不揮発性メモリ、タイマ等により構成される。なお、本例においては、メインコントローラ150と、エンジンコントローラ138とがそれぞれ別々の構成について説明しているが共通の1つのコントローラとすることも可能である。
【0073】
撮像装置59は、メインコントローラ150に接続されている。撮像装置59は、撮像によって得られたモータグレーダ1の前方の現況地形の画像データを、リアルタイムにメインコントローラ150に送信する。メインコントローラ150は、受信した画像データを解析し、現況地形の状況を判断する。
【0074】
撮像装置59は、モータグレーダ1の前方の現況地形を撮像する。詳しくは、撮像装置59は、モータグレーダ1の前方の所定の範囲の現況地形を撮像する。たとえば、撮像装置59は、モータグレーダ1の先端部から所定の距離だけ離れた範囲(たとえば、1m〜10m)の現況地形を撮像する。撮像装置59は、撮像により得られた画像データを、メインコントローラ150に送る。
【0075】
車速センサ60は、メインコントローラ150に接続されている。車速センサ60は、モータグレーダ1の速度を計測する。
【0076】
<C.ブレードの高さの制御>
図4は、実施形態に基づく現況地形の状況に応じてブレードの高さを制御する方式を説明する図である。
図4中の線Sは、目標地形(設計地形又は目標面ともいう)を示している。
【0077】
図4(A)を参照して、モータグレーダ1は、前方に取り付けられた撮像装置59に従って、モータグレーダ1の前方の現況地形の画像データを取得する。
【0078】
図4(B)を参照して、ここでは、モータグレーダ1の前輪11が現況地形である凸部を通過する際の状態が示されている。
【0079】
当該図に示されるように、前輪11が現況地形である凸部を通過する際には、凸部により車体フレーム2が持ち上がるため現況地形および目標地形に対するブレード42の高さが変化する。
【0080】
したがって、凸部により現況地形および目標地形に対するブレード42の高さが乖離する方向に離れるため、地表面付近の土砂を整地できず精度の高い整地作業ができない可能性がある。
【0081】
図4(C)を参照して、ここでは、モータグレーダ1の前輪11が現況地形である凹部を通過する際の状態が示されている。
【0082】
当該図に示されるように、前輪11が凹部を通過する際には、凹部により車体フレーム2が沈むため現況地形および目標地形に対するブレード42の高さが変化する。
【0083】
したがって、凹部により現況地形および目標地形に対するブレード42の高さが現況地形または目標地形に食い込む方向に移動するため土砂を侵食し、目標地形を傷つけてしまい精度の高い整地作業ができない可能性がある。
【0084】
図4(D)を参照して、本実施形態においては、前方の取得した現況地形に凸部を含む場合には、車体フレーム2および前輪11に対するブレード42の高さを調整する。
【0085】
具体的には、前輪11が現況地形である凸部を通過する際には、車体フレーム2および前輪11に対するブレード42の高さを現在の高さよりも低くする。これにより、モータグレーダ1は、ブレード42の高さを調整しない場合に比べて、凸部の土砂等をより均一に整地することが可能である。
【0086】
当該方式により、モータグレーダ1は、現況地形に応じた整地作業を実行することが可能となるため、施工精度を向上させることが可能である。
【0087】
モータグレーダ1は、凸部の高さを判断し、判断した高さに応じてブレード42の高さを調整するようにしても良い。これにより、凸部を通過する際においても、現況地形および目標地形に対するブレード42の高さの変化を抑制し、現況地形に応じた精度の高い整地作業を実行することが可能である。
【0088】
図4(E)を参照して、本実施形態においては、前方の取得した現況地形に凹部を含む場合には、車体フレーム2および前輪11に対するブレード42の高さを調整する。
【0089】
具体的には、前輪11が現況地形である凹部を通過する際には、車体フレーム2および前輪11に対するブレード42の高さを現在の高さよりも高くする。これにより、モータグレーダ1は、ブレード42の高さを調整しない場合に比べて、凹部の土砂等をより均一に整地することが可能である。
【0090】
当該方式により、モータグレーダ1は、現況地形に応じた整地作業を実行することが可能となるため、施工精度を向上させることが可能である。
【0091】
モータグレーダ1は、凹部の深さを判断し、判断した深さに応じてブレード42の高さを調整するようにしても良い。これにより、凹部を通過する際においても、現況地形および目標地形に対するブレード42の高さの変化を抑制し、現況地形に応じた精度の高い整地作業を実行することが可能である。
【0092】
現況地形の凹凸が原因でブレード42の位置が目標地形(設計地形)から外れることを抑制できるので、施工精度が高められ、施工後の地形を設計地形に近づけることができる。これにより、整地作業に要するモータグレーダ1の走行回数が低減できるので、施工時間を短縮することができる。
【0093】
<D.制御フロー>
図5は、実施形態に基づくモータグレーダ1におけるブレードの高さを調整するフローを説明する図である。
【0094】
図5を参照して、メインコントローラ150は、撮像装置59によって撮像された現況地形の画像データの取得を開始する(ステップS1)。メインコントローラ150は、撮像装置59からの画像データを取得する毎に解析処理を実行する。メインコントローラ150は、当該取得した画像データの解析結果に基づいてモータグレーダ1の前方の現況地形に凹凸が含まれているか否かを判断する。
【0095】
ところで、現況地形は、整地が未完成であるため、少なくとも、小さな凹凸を有する。モータグレーダ1は、このような小さな凹凸に対しては、ブレードの高さを調整する必要はない。
【0096】
従って、メインコントローラ150は、このような小さな凹凸を考慮しないようにするため、当該小さな凹凸以外の凹凸が存在するか否かを判断する。具体的には、メインコントローラ150は、所定の基準以上の凹部および凸部が前方に存在するか否かを判断し、これらが存在する場合に、凹凸があると判断する。
【0097】
次に、メインコントローラ150は、目標地形(設計地形)に従ってブレードの高さを設定する(ステップS2)。具体的には、メインコントローラ150は、現況地形が設計地形となるようにブレードの高さを設定する。なお、メインコントローラ150は、現況地形に対するブレード42の負荷も考慮して複数回の整地工程が要求される場合には、段階的に設計地形に近づくような目標地形を段階的に設定してブレードの高さを設定することが可能である。なお、本例においては、設計地形に従うブレードの高さを自動的に算出して設定する場合について説明するが、オペレータからの操作指示により設定された設計地形に従ってブレードの高さを設定するようにしても良い。具体的には、右操作レバー33の操作量および操作方向に応じた指令に基づいてブレードの高さを設定しても良い。
【0098】
次に、メインコントローラ150は、前輪11が凹部を通過するか否かを判断する(ステップS3)。具体的には、メインコントローラ150は、取得した画像データに基づいて前輪11が凹部を通過するか否かを判断する。
【0099】
ステップS3において、メインコントローラ150は、前輪11が凹部を通過すると判断した場合(ステップS3においてYES)には、車速およびモータグレーダ1と凹部との距離を取得する(ステップS4)。メインコントローラ150は、モータグレーダ1と凹部との間の距離を算出する。モータグレーダ1と凹部との距離としては、たとえば、撮像装置59から凹部までの距離とすることができる。あるいは、モータグレーダ1と凹部との距離としては、撮像装置59から凹部までの距離に、撮像装置59とブレード42との間の距離を加えたものとしてもよい。車速は、車速センサ60で計測された速度を用いることが可能である。
【0100】
メインコントローラ150は、算出された距離と、モータグレーダ1の速度とに基づき、モータグレーダ1(たとえば、ブレード42)が凹部に到達する時間を算出する(ステップS5)。
【0101】
メインコントローラ150は、ブレードの高さを上方向に調整する(ステップS6)。具体的には、メインコントローラ150は、車体フレーム2(または前輪11)に対するブレードの高さを設定されていた現在の高さから高く(上方向に調整)する。メインコントローラ150は、リフトシリンダ44,45がともに縮小するようにコントロールバルブ134に指示する。
【0102】
メインコントローラ150は、当該算出された時間に、ブレード42の高さの調整が完了するようにシリンダの伸縮速度を制御する。このような構成によれば、モータグレーダ1が凹部に到達した時点で、ブレードの高さを適切に設定することができる。また、ブレードの高さの変化を抑制し、整地作業の施工精度を向上させることが可能である。
【0103】
メインコントローラ150は、前輪11の凹部の通過が完了したかどうかを判断する(ステップS7)。具体的には、メインコントローラ150は、取得した画像データに基づいて前輪11が凹部を通過したか否かを判断する。メインコントローラ150は、凹部を通過するまでの距離を算出し、算出した距離とモータグレーダ1の速度とに基づき凹部を通過するまでの時間を算出する。そして、メインコントローラ150は、前輪11が凹部を通過し始めてから、凹部の通過が完了するまでの時間が経過したか否かを判断する。そして、メインコントローラ150は、前輪11が凹部を通過し始めてから、凹部の通過が完了するまでの時間が経過したと判断した場合に、凹部の通過が完了したと判断することが可能である。
【0104】
ステップS7において、メインコントローラ150は、前輪11の凹部の通過が完了するまでの間、ステップS7の状態を維持し(ステップS7においてNO)、前輪11の凹部の通過が完了したと判断した場合(ステップS7においてYES)には、ステップS2に戻る。具体的には、上記したようにメインコントローラ150は、設計地形に従ってブレードの高さを設定する。
【0105】
一方で、ステップS3において、メインコントローラ150は、前輪11が凹部を通過しないと判断した場合(ステップS3においてNO)には、前輪11が凸部を通過するか否かを判断する(ステップS8)。具体的には、メインコントローラ150は、取得した画像データに基づいて前輪11が凸部を通過するか否かを判断する。
【0106】
ステップS8において、メインコントローラ150は、前輪11が凸部を通過すると判断した場合(ステップS8においてYES)には、車速およびモータグレーダ1と凸部との距離を取得する(ステップS9)。メインコントローラ150は、モータグレーダ1と凸部との間の距離を算出する。モータグレーダ1と凸部との距離としては、たとえば、撮像装置59から凸部までの距離とすることができる。あるいは、モータグレーダ1と凸部との距離としては、撮像装置59から凸部までの距離に、撮像装置59とブレード42との間の距離を加えたものとしてもよい。車速は、車速センサ60で計測された速度を用いることが可能である。
【0107】
メインコントローラ150は、算出された距離と、モータグレーダ1の速度とに基づき、モータグレーダ1(たとえば、ブレード42)が凸部に到達する時間を算出する(ステップS10)。
【0108】
メインコントローラ150は、ブレードの高さを下方向に調整する(ステップS11)。具体的には、メインコントローラ150は、車体フレーム2に対するブレードの高さを設定されていた現在の高さよりも低く(下方向に調整)する。メインコントローラ150は、リフトシリンダ44,45がともに伸長するようにコントロールバルブ134に指示する。
【0109】
メインコントローラ150は、当該算出された時間に、ブレード42の高さの調整が完了するようにシリンダの伸縮速度を制御する。このような構成によれば、モータグレーダ1が凸部に到達した時点で、ブレードの高さを適切に設定することができる。
【0110】
メインコントローラ150は、前輪11の凸部の通過が完了したかどうかを判断する(ステップS12)。具体的には、メインコントローラ150は、取得した画像データに基づいて前輪11が凸部を通過したか否かを判断する。メインコントローラ150は、凸部を通過するまでの距離を算出し、算出した距離とモータグレーダ1の速度とに基づき凸部の通過するまでの時間を算出する。そして、メインコントローラ150は、前輪11が凸部を通過し始めてから、凸部の通過が完了するまでの時間が経過したか否かを判断する。そして、メインコントローラ150は、前輪11が凸部を通過し始めてから、凸部の通過が完了するまでの時間が経過したと判断した場合に、凸部の通過が完了したと判断することが可能である。
【0111】
ステップS12において、メインコントローラ150は、前輪11の凸部の通過が完了するまでの間、ステップS12の状態を維持し(ステップS12においてNO)、前輪11の凸部の通過が完了したと判断した場合(ステップS12においてYES)には、ステップS2に戻る。具体的には、上記したようにメインコントローラ150は、設計地形に従ってブレードの高さを設定する。
【0112】
当該処理により、現況地形の凹凸に合わせてブレードの高さが調整されるため、現況地形の凹凸が原因でブレード42の位置が設計地形から外れることを抑制できるので、施工精度が高められ、施工後の地形を設計地形に近づけることができる。ブレードの高さは、前輪11が現況地形の凹凸を通過することにより、目標地形に対して変動する。しかし、前輪11が現況地形の凹凸を通過する前にブレードの高さの調整準備ができる。したがって、ブレード制御の応答遅れを抑制できるので、施工精度が高められる。これにより、整地作業に要するモータグレーダ1の走行回数が低減できるので、施工時間を短縮することができる。
【0113】
<E.変形例>
上記においては、モータグレーダ1は、撮像装置59を用いて現況地形を取得した。しかしながら、これに限定されるものではない。撮像装置59の代わりに、レーザ装置を用いてもよい。この場合、レーザ装置が照射するレーザ光によって現況地形のスキャン(走査)を行なうことにより、現況地形を取得してもよい。
【0114】
また、上記においては、モータグレーダ1自体が現況地形を直接取得する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、モータグレーダ1は、通信可能なサーバ装置から現況地形の情報を得てもよい。また、現況地形の取得として、撮像装置59を用いて現況地形を取得する場合について説明したが、必ずしもモータグレーダ1に取り付けられている必要はなく、別の装置に設けられた撮像装置59の画像データを利用するようにしても良く、予め取得した画像データを利用しても良い。この点で画像データの取得の方式については何ら限定されない。この場合、予め取得した現況地形の情報とモータグレーダ1にGNSSアンテナを設けて取得したモータグレーダ1の位置情報とにより、モータグレーダ1の前方の現況地形を得てもよい。この点で画像データの取得の方式については何ら限定されない。また、目標地形(設計地形)は、予め取得した設計地形を利用してもよい。この場合、前輪11に対するブレード42の高さを目標地形よりも上方に維持するように、前輪11に対するブレード42の高さを調整するとよい。
【0115】
なお、これまでに説明した実施形態では、モータグレーダ1がキャブ3を有していたが、モータグレーダ1は、キャブ3を必ずしも有しなくてもよい。モータグレーダ1は、オペレータがモータグレーダ1に搭乗してモータグレーダ1を操作する仕様に限られず、外部からの遠隔操作によって動作する仕様であってもよい。この場合、モータグレーダ1は、オペレータが搭乗するためのキャブ3を必要としないため、キャブ3を有しなくてもよい。
【0116】
今回開示された実施の形態は例示であって、上記内容のみに制限されるものではない。本願の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。