(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一方の端面である流入端面から他方の端面である流出端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム構造部と、前記ハニカム構造部の外周面に配設された外周壁と、を備え、
前記外周壁の厚さが、1.8〜2.1mmであり、
前記外周壁内には、前記外周壁の表面に沿って空隙路が形成されており、
前記空隙路は、幅が0.7〜1.4mmであり、前記外周壁の厚さの55〜65%の高さを有し、
前記空隙路の総長さが、前記ハニカム構造部の前記セルの延びる方向の長さの1200〜1700%であるハニカム構造体。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0012】
(1)ハニカム構造体:
本発明のハニカム構造体の一実施形態は、
図1〜
図3に示すハニカム構造体100である。ハニカム構造体100は、一方の端面である流入端面11から他方の端面である流出端面12まで延びる流体の流路となる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1を有するハニカム構造部10を備えている。更に、ハニカム構造体100は、ハニカム構造部10の外周面に配設された外周壁20を備えており、この外周壁20の厚さが、
1.8〜
2.1mmである。そして、ハニカム構造体100は、外周壁20内に、外周壁20の表面に沿って空隙路30が形成されている。この空隙路30は、幅が
0.7〜
1.4mmであり且つ外周壁20の厚さの
55〜
65%の高さを有している。更に、空隙路30の総長さは、ハニカム構造部10のセル2の延びる方向の長さの
1200〜1700%である。
【0013】
このようなハニカム構造体100は、外周壁20内に空隙路30が形成されているため、この空隙路30によって、外周壁20が熱膨張した際における応力を解放することができる。そのため、ハニカム構造部10に掛かる熱応力を緩和することができる。その結果、外周壁20が高温となった際に生じる熱応力に起因するクラックの発生を抑制することができる。また、ハニカム構造体100は、アイソスタティック強度が維持されたものである。
【0014】
なお、空隙路30を形成することなく、単に外周壁20に生じたクラックによって、外周壁20が熱膨張した際における応力を解放することも考えられる。しかし、この場合には、ハニカム構造体に触媒を担持させる際にクラックから触媒が漏れ出すという問題が生じる。本発明においては、単にクラックが形成されているのではなく、空隙路としているため、ハニカム構造体に触媒を担持させる際にクラックから触媒が漏れ出すことを防止できる。
【0015】
図1は、本発明のハニカム構造体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2は、本発明のハニカム構造体の一実施形態の流入端面の外周部分を拡大して模式的に示す平面図である。
図3は、本発明のハニカム構造体の一実施形態のセルの延びる方向に垂直な断面のうち外周部分を拡大して模式的に示す断面図である。
【0016】
(1−1)外周壁:
外周壁20は、その厚さが0.5〜4.0mmであることが必要であり、1.0〜2.0mmであることが好ましく、1.4〜1.8mmであることが更に好ましい。上記外周壁20の厚さが下限値未満であると、ハニカム構造体の強度が低下するため、缶体に収納する際に破損する不具合が生じる。上限値超であると、外周コート層の体積が増加するため、耐熱衝撃性が低下し、ハニカム構造体に温度差が生じた際に外周コート層が破損する不具合が生じる。
【0017】
なお、本明細書において「外周壁の厚さ」とは、外周壁の最も厚い部分の厚さを意味する。具体的には、
図2に示すように、ハニカム構造体100のセルの延びる方向に直交する断面において、外周壁20の表面21における法線Hを描く。そして、この法線Hのうち、外周壁20の表面21からハニカム構造部10までの長さが最も長いものの長さを、「外周壁の厚さ」というものとする。
【0018】
外周壁中には空隙路が形成されており、この「空隙路」は、上述の通り、幅が0.4〜4.0mmであり且つ外周壁の厚さの50〜99%の高さを有している。このような空隙路が形成されることにより、この空隙路によって外周壁が熱膨張した際における応力を解放することができる。その結果、外周壁が高温となった際に生じる熱応力に起因するクラックの発生を抑制することができ、アイソスタティック強度が維持される。
【0019】
外周壁内の空隙路は、その幅及び高さについて以下のように測定する。まず、外周壁の表面から、外周壁の厚さの5%の厚さ分までの部分を均等に削った後、削られて露出した面における溝部を確認し、この溝部の幅と高さを測定する。このように溝部を測定するのは、空隙路作成工程によって上部を覆われる空隙の高さ(領域)は、外周壁の厚さの5%程度であるため、外周壁の表面から外周壁の厚さの5%の厚さ分までの部分を均等に削ることにより、外周壁内の空隙路が溝部として外部から視認できるようになる。そのため、この溝部について幅と高さを測定することで、空隙路を確認することができる。
【0020】
「空隙路の高さ」は、外周壁20の厚さ方向における距離をいうものとする(
図3中、符号「D」で示す)。「空隙路の幅」は、空隙路30の延びる方向に直交する方向の長さをいうものとする(
図3中、符号「W」で示す)。ここで、「空隙路の高さ」及び「空隙路の幅」は、所定の位置における空隙路の高さ及び幅を測定したときの平均値である。所定の位置とは、ハニカム構造体の端面を平面視したときに隔壁の延びる方向に平行であり、上記端面の中心と上記端面の縁とを通る直線(平行直線)を描き、この平行直線と上記端面との接点(基準点)を決定する。例えば、断面形状が四角形のセルを有するハニカム構造体(四角セルハニカム構造体)の場合、平行直線は4本描くことができ、基準点は4点存在する。そして、この基準点から、ハニカム構造体の他方の端面に向かって、セルの延びる方向に直線(起立直線L(
図1参照))を描く。そして、起立直線上における「所定の3点」に位置する空隙路(溝部)の幅及び高さを測定し、これらの平均値を算出する。このようにして空隙路の高さ及び幅を決定する。起立直線上における「所定の3点」とは、ハニカム構造体の流入端面、流出端面、及び流入端面と流出端面との中間をいう。なお、起立直線上における「所定の3点」の全ては、「幅が0.4〜4.0mmであり且つ外周壁の厚さの50〜99%の高さである」条件を満たしている。
【0021】
なお、起立直線上に空隙路が存在し無い場合、円周方向に、起立直線上から時計回り及び反時計回りに円周長の5%以内の領域を調査し、その領域内にある空隙路と起立直線に平行な直線との上記「所定の3点」における最初の交点を決定する。交点の調査は、起立直線上から反時計回りC1(
図1参照)、起立直線上から時計回りC2(
図1参照)の順に行う。
【0022】
外周壁20中の空隙路30の総長さは、ハニカム構造部10のセルの延びる方向の長さの1000%以上であることが必要であり、1000〜1500%であることが好ましく、1000〜1200%であることが更に好ましい。空隙路30の総長さがハニカム構造部10のセルの延びる方向の長さの1000%未満であると、熱応力緩衝部となる外周壁内の空隙が不足するため、耐熱衝撃性が低下する。空隙路30の総長さは、以下のようにして測定した値である。外周壁を、その表面から外周壁厚さの5%の厚さ分の部分までを削った後、削られて露出した面における空隙路(溝部)の総長さを測定する。このようにして測定された値を、空隙路の総長さとする。空隙路の総長さは、画像解析を使用して測定する。なお、空隙路の総長さの測定においては、削られた外周壁の表面の窪みを空隙路(溝部)とする。画像解析の条件としては、溝部を黒、その他を白となるように二値化し、黒の部分の総長さを算出させる。
【0023】
本発明のハニカム構造体は、外周壁の厚さが0.5〜3.0mmであり且つ空隙路の高さが外周壁の厚さの80〜99%であることが好ましい。このような条件を満たすことにより、外周壁内の空隙路が熱応力を緩衝するため、ESP安全温度が上がることになる。即ち、耐熱衝撃性が向上するため、温度差が生じた際にも破損せず、ハニカム構造体を保持できる。なお、「ESP安全温度」とは、耐熱衝撃性を示す指標のことである。具体的には、ハニカム構造体を所定の温度まで昇温させた電気炉に入れ、1時間加熱する。その後、25℃に保った室内に取り出し、金網の上に置いて自然冷却する。そして、15分経過した後、ハニカム構造体を目視にて検査し、クラックが確認できなければ、当該温度に関しては「合格」とする。その後、50℃ずつ電気炉を昇温させ、上記の加熱及び自然冷却の操作を、クラックが最初に確認されるまで(不合格となるまで)繰り返す(ESP試験)。そして、最後に「合格」となった温度を「ESP安全温度」とする。例えば、室温(25℃)と電気炉内の温度との温度差が400℃のESP試験ではクラックが確認できず、その後、温度差が450℃のESP試験でクラックが確認された場合、ESP安全温度は400℃となる。
【0024】
(1−2)ハニカム構造部:
ハニカム構造部10は、上述の通り、一方の端面である流入端面11から他方の端面である流出端面12まで延びる流体の流路となる複数のセル2(
図2参照)を区画形成する多孔質の隔壁1(
図2参照)を有するものである。
【0025】
隔壁1の厚さは、64〜135μmであることが好ましく、89〜135μmであることが特に好ましい。隔壁1の厚さが上記下限値未満であると、ハニカム構造体100の強度が低くなることがある。上記上限値超であると、圧力損失が高くなることがある。
【0026】
ハニカム構造部10のセル密度については、特に制限はない。ハニカム構造部10のセル密度は、46〜186個/cm
2であることが好ましく、62〜116個/cm
2であることが特に好ましい。セル密度が下限値未満であると、排ガスを流通させたときに、短時間で圧力損失が大きくなったり、ハニカム構造体100の強度が低くなったりすることがある。セル密度が上限値超であると、圧力損失が大きくなることがある。
【0027】
隔壁1の気孔率は、25〜55%が好ましく、35〜50%が特に好ましい。このような範囲とすることにより、熱容量が低下するため、触媒の温度が上がりやすく、排ガスの浄化性能が向上する。隔壁の気孔率が、25%未満であると、隔壁の熱容量が増加するため、触媒の温度が上がり難く、排ガスの浄化性能が低下するおそれがある。55%超であると、強度が低下するため、缶体にハニカム構造体を収納する際にハニカム構造体が破損するおそれがある。気孔率は、水銀ポロシメータによって測定した値である。
【0028】
隔壁1における細孔の平均細孔径は、3〜40μmが好ましく、5〜25μmが特に好ましい。このような範囲とすることにより、触媒がハニカム構造体の隔壁内に充填し易くなるため、排ガスの浄化性能が向上する。平均細孔径が、3μm未満であると、触媒が細孔内に浸入し難くなり、主に隔壁の表面(壁面)上に担持されことになるため、排ガスの浄化性能が低下するおそれがある。40μm超であると、強度が低下するため、缶体にハニカム構造体を収納する際にハニカム構造体が破損するおそれがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータによって測定した値である。
【0029】
ハニカム構造部10のセル形状(セルが延びる方向に直交する断面におけるセル形状)としては、特に制限はない。セル形状としては、三角形、四角形、六角形、八角形、円形、あるいはこれらの組合せを挙げることができる。四角形のなかでは、正方形または長方形が好ましい。
【0030】
ハニカム構造部10は、コージェライト、炭化珪素、ムライト、アルミニウムチタネート及びアルミナからなる群より選択される少なくとも一種を主成分とすることができる。また、ハニカム構造部10は、コージェライト、炭化珪素、ムライト、アルミニウムチタネート及びアルミナからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。ここで、本明細書において「主成分」は、全体の中の50質量%を超える成分を意味する。
【0031】
ハニカム構造部10の形状は、特に限定されない。ハニカム構造部10の形状としては、円柱状、端面が楕円形の柱状、端面が「正方形、長方形、三角形、五角形、六角形、八角形等」の多角形の柱状、等が好ましい。
図1に示すハニカム構造体100においては、ハニカム構造部10の形状は円柱状である。
【0032】
(2)ハニカム構造体の製造方法:
本発明のハニカム構造体は、以下の方法で製造することができる。即ち、本発明のハニカム構造体は、ハニカム焼成体作製工程と、切削工程と、外周壁形成工程と、空隙路作成工程と、を有する方法により製造できる。ハニカム焼成体作製工程は、ハニカム焼成体を作製する工程である。「ハニカム焼成体」は、流体の流路となる複数のセルを区画形成する、セラミック原料が焼成されて形成された多孔質の隔壁を備えるものである。切削工程は、ハニカム焼成体作製工程で作製したハニカム焼成体の外周部を切削してハニカム焼成体の外周形状を整える工程である。外周壁形成工程は、切削工程によってハニカム焼成体の外周部を切削した後、ハニカム焼成体の外周に外周コート材を塗工して乾燥させることで表面が開口している溝状の空隙路が生じた外周壁を有するハニカム焼成体を得る工程である。空隙路作成工程は、表面が開口している溝付きのハニカム焼成体の「表面が開口している溝状の空隙路」の開口を塞ぎ、内部に空隙路を形成する工程である。
【0033】
以下、本発明のハニカム構造体の製造方法について、工程毎に説明する。
【0034】
(2−1)ハニカム焼成体作製工程:
ハニカム焼成体作製工程は、セラミック原料が焼成されて形成された多孔質の隔壁を備えたハニカム焼成体を作製する工程である。ハニカム焼成体を作製する方法は、特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。このハニカム焼成体作製工程は、具体的には、成形工程と、焼成工程とを有する。
【0035】
(2−1−1)成形工程:
まず、成形工程において、セラミック原料を含有するセラミック成形原料を成形して、流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁を備えるハニカム成形体を形成する。
【0036】
セラミック成形原料に含有されるセラミック原料としては、コージェライト化原料、コージェライト、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、ムライト、チタン酸アルミニウム、からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。なお、コージェライト化原料とは、シリカが42〜56質量%、アルミナが30〜45質量%、マグネシアが12〜16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミック原料である。そして、コージェライト化原料は、焼成されてコージェライトになるものである。
【0037】
また、セラミック成形原料は、上記セラミック原料に、分散媒、有機バインダ、無機バインダ、造孔材、界面活性剤等を混合して調製することができる。各原料の組成比は、特に限定されず、作製しようとするハニカム構造体の構造、材質等に合わせた組成比とすることが好ましい。
【0038】
セラミック成形原料を成形する際には、まず、セラミック成形原料を混練して坏土とし、得られた坏土をハニカム形状に成形する。セラミック成形原料を混練して坏土を形成する方法としては、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。坏土を成形してハニカム成形体を形成する方法としては、例えば、押出成形、射出成形等の公知の成形方法を用いることができる。具体的には、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形してハニカム成形体を形成する方法等を好適例として挙げることができる。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。
【0039】
ハニカム成形体の形状としては、円柱状、楕円状、端面が「正方形、長方形、三角形、五角形、六角形、八角形等」の多角柱状等を挙げることができる。
【0040】
また、上記成形後に、得られたハニカム成形体を乾燥してもよい。乾燥方法は、特に限定されるものではない。例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができる。これらのなかでも、誘電乾燥、マイクロ波乾燥または熱風乾燥を単独でまたは組合せて行うことが好ましい。
【0041】
(2−1−2)焼成工程:
次に、ハニカム成形体を焼成してハニカム焼成体を作製する。ハニカム成形体の焼成(本焼成)は、仮焼したハニカム成形体を構成する成形原料を焼結させて緻密化し、所定の強度を確保するために行われる。焼成条件(温度、時間、雰囲気等)は、成形原料の種類により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。例えば、コージェライト化原料を使用している場合には、焼成温度は、1410〜1440℃が好ましい。また、焼成時間は、最高温度でのキープ時間として、4〜8時間が好ましい。仮焼、本焼成を行う装置としては、電気炉、ガス炉等を用いることができる。
【0042】
(2−2)切削工程:
切削工程は、ハニカム焼成体の外周部を切削する工程である。ハニカム焼成体を切削する方法は、従来公知の方法を適宜採用できる。例えば、ハニカム焼成体を回転させながら、ダイヤモンドをまぶした砥石を、押し当てる手法を好適に採用できる。
【0043】
なお、切削は、ハニカム成形体の焼成前後のいずれにおいて行ってもよく、焼成後に行うことが好ましい。焼成後に切削することにより、焼成によってハニカム焼成体が変形した場合でも、ハニカム焼成体の形状を切削によって整えることが可能となる。
【0044】
(2−3)外周壁形成工程:
本工程では、切削工程によってハニカム焼成体の外周部を切削した後、ハニカム焼成体の外周に外周コート材を塗工して乾燥させることで、表面が開口している溝状の空隙路が生じた外周壁を有するハニカム焼成体を得る。外周壁を形成することにより、ハニカム構造体に外力が加わった際にハニカム構造体が欠けてしまうことを防止できる。
【0045】
外周コート材としては、無機繊維、コロイダルシリカ、粘土、SiC粒子等の無機原料に、有機バインダ、発泡樹脂、分散剤等の添加材を加えたものに水を加えて混練したものなどを挙げることができる。外周コート材を塗布する方法は、「切削されたハニカム焼成体」をろくろ上で回転させながらゴムへらなどでコーティングする方法等を挙げることができる。
【0046】
外周コート材の乾燥方法は、得られる外周壁に表面が開口している溝状の空隙路が生じる限り特に制限はない。例えば、常温(25℃)にある「外周コート材を塗工したハニカム焼成体」を、100〜150℃に熱せられた乾燥機内に入れることで外周コート材を急速に加熱し乾燥させる方法を採用できる。
【0047】
外周コート材の塗工厚さは、所望の外周壁の厚さが得られる限り特に制限はないが、0.5〜4.0mmとすることができる。
【0048】
(2−4)空隙路作成工程:
本工程では、外周壁形成工程で得られた表面が開口している溝状の空隙路付きのハニカム焼成体の開口を塞ぎつつ、外周壁の内部に所定の空隙路を形成する。
【0049】
空隙路の作成には、上述した外周コート材を用いることができ、表面が開口している溝状の空隙路に外周コート材を塗り込むようにして表面が開口している溝状の空隙路の開口を塞ぐことができる。その後、表面が開口している溝状の空隙路内に塗り込んだ外周コート材を乾燥させることにより、外周壁内に空隙路を有するハニカム構造体を得ることができる。なお、外周壁中が中空になるように注意が必要である。即ち、表面が開口している溝状の空隙路を完全に塞がないようにする。
【0050】
(2−5)その他の方法:
上記方法では、外周壁形成工程により外周壁に表面が開口している溝状の空隙路を形成させ、その後、空隙路作成工程によって、表面が開口している溝状の空隙路の開口を塞ぐことで空隙路を形成しているが、その他の方法により空隙路を形成してもよい。例えば、ハニカム焼成体の外周面上に、加熱により消滅する物質(スペーサ)を予め配置し、その後、外周コート材を塗工する。その後、加熱することにより、外周コート材を乾燥させるとともに上記スペーサを消滅させることにより、外周壁内に所望の空隙路を形成することができる。
【0051】
スペーサは、室温で流動しないものが好ましく、比較的低い温度、例えば45℃以上の温度で流動化するものが好ましい。具体的には、パラフィンワックス、蝋(ろう)、ステアリン酸などの脂肪酸類、ステアリン酸アミドなどの酸アミド類、ステアリン酸ブチルなどのエステル類等が挙げられる。また、より高温、例えば300〜400℃程度の温度で飛散・消失するものも好適に用いることができる。このような温度で分解し消失するプラスチックなどの高分子材料も好適に用いることができる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を、実施例により更に具体的に説明する。本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0053】
(
参考例1)
まず、セラミック原料を含有する成形原料を用いて、ハニカム成形体を成形するための坏土を調製した。セラミック原料として、コージェライト化原料を用いた。コージェライト化原料に、分散媒、有機バインダ、分散剤、造孔材を添加して、成形用の坏土を調製した。分散媒の添加量は、コージェライト化原料100質量部に対して、50質量部とした。有機バインダの添加量は、コージェライト化原料100質量部に対して、5量部とした。造孔材の添加量は、コージェライト化原料100質量部に対して、5質量部とした。得られたセラミック成形原料を、ニーダーを用いて混練して、坏土を得た。
【0054】
次に、得られた坏土を、真空押出成形機を用いて押出成形し、四角柱状のハニカム成形体を得た。
【0055】
次に、得られたハニカム成形体を高周波誘電にて加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥した。その後、1400℃で8時間焼成して、四角柱状のハニカム焼成体を得た。その後、得られたハニカム焼成体の外周部を研削して円柱状のハニカム焼成体を得た。
【0056】
次に、得られた円柱状のハニカム焼成体の外周面に外周コート材を塗布し、その後、この外周コート材を乾燥させた。外周コート材を急速に乾燥させることにより、得られる外周コート層に「表面が開口している溝状の空隙路」を発生させた。このようにして、ハニカム焼成体を得た。外周コート材を乾燥させる条件としては、以下の条件を採用した。具体的には、まず、130℃で0.5時間加熱し、その後、25℃で1時間保持した。
【0057】
次に、得られたハニカム焼成体の外周コート層に形成された「表面が開口している溝状の空隙路」の開口を塞ぎつつ、内部は塞がれずに空隙路が形成されるように、外周コート材を塗工した。そして、その後、25℃で24時間保持した。このようにして、外周壁を有するハニカム構造体を作製した。
【0058】
得られたハニカム構造体は、セルの延びる方向に直交する断面の直径が330.2mmの円形であった。また、ハニカム構造体は、セルの延びる方向における長さが203.2mmであった。また、ハニカム構造体は、隔壁の厚さが0.089mmであり、セル密度が116個/cm
2であった。また、ハニカム構造体の隔壁の気孔率は、50%であった。ハニカム構造体の隔壁中の細孔の平均細孔径は、20μmであった。また、ハニカム構造体の各測定値を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
更に、得られたハニカム構造体における空隙路は、外周壁の厚さの50%の高さを有し、幅Wが1.0mmであった。また、空隙路の総長さは、ハニカム構造部のセルの延びる方向の長さの1500%であった。外周壁の厚さTは、1.8mmであった。結果を表3に示す。
【0062】
なお、外周壁の表面から外周壁厚さの5%の厚さ分の部分までを均等に削った後、削られて露出した面における溝部を確認し、この溝部の所定の位置の幅と高さを測定して、空隙路の幅と高さとした。「所定の位置」とは、ハニカム構造体の端面を平面視したときに隔壁の延びる方向に平行で上記端面の縁を通る直線(平行直線)を4本描き、この平行直線と上記端面との接点(基準点)を4点決定する。そして、これら基準点から、それぞれハニカム構造体の他方の端面に向かって、セルの延びる方向に直線(起立直線)を描く。そして、起立直線上における「所定の3点」に位置する空隙路(溝部)の幅及び高さを測定し、これらの平均値を算出する。このようにして空隙路の高さ及び幅を決定した。起立直線上における「所定の3点」とは、ハニカム構造体の流入端面、流出端面、及び流入端面と流出端面との中間をいう。
【0063】
空隙路の総長さは、外周壁を、その表面から外周壁厚さの5%の厚さ分を削った後、削られて露出した面における溝部の総長さを測定した。
【0064】
得られたハニカム構造体について、以下に示す方法で、「ESP安全温度」、及び「アイソスタティック強度」の各評価を行った。結果を表3に示す。
【0065】
[ESP安全温度]
ESP安全温度は、以下のようにして測定した。まず、ハニカム構造体を室温(25℃)との差が300℃の電気炉(電気炉内の温度325℃)に入れて1時間加熱した。次に、ハニカム構造体を電気炉から取り出し、金網の上に常温で15分間、自然冷却した。その後、クラックの有無を目視にて観察した。そして、クラックが確認できない場合を合格とし、電気炉の温度を50℃上げて再度、加熱及び自然冷却の操作を行った(ESP試験を実施した)。クラックが確認されるまで(不合格となるまで)、電気炉内の温度を50℃ずつ昇温させ、上記加熱及び自然冷却の操作を繰り返した。そして、最後に合格となったときの電気炉の温度をESP安全温度(℃)とした。
【0066】
その後、得られたESP安全温度に基づいて、以下の基準で評価を行った。450℃未満であった場合を「D」とする。450℃以上〜550未満℃であった場合を「C」とする。550℃以上〜650℃未満であった場合を「B」とする。650℃以上であった場合を「A」とする。
【0067】
[アイソスタティック強度]
アイソスタティック強度の測定は、社団法人自動車技術会発行の自動車規格(JASO規格)のM505−87で規定されているアイソスタティック破壊強度試験に基づいて行った。アイソスタティック破壊強度試験は、ゴムの筒状容器に、ハニカム構造体を入れてアルミ製板で蓋をし、水中で等方加圧圧縮を行う試験である。
【0068】
即ち、アイソスタティック破壊強度試験は、缶体に、ハニカム構造体が外周面把持される場合の圧縮負荷加重を模擬した試験である。このアイソスタティック破壊強度試験によって測定されるアイソスタティック強度は、ハニカム触媒体が破壊したときの加圧圧力値(MPa)で示される。
【0069】
アイソスタティック強度が、1.0MPa以上の場合を「OK」(合格)、1.0MPa未満の場合を「NG」(不合格)とした。
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】
(実施例
7〜
10,12、参考例2〜6,11,13〜19、比較例1〜64)
表1,表2に示すように条件を変更した以外は、
参考例1と同様にしてハニカム構造体を得た。空隙路は、外周壁の乾燥条件の変更、加熱により消失するスペーサの配置によって、高さ、幅、総長さを変更して形成した。スペーサとしては、400℃での熱処理することで熱分解及び燃焼するパラフィンワックスを用いた。得られたハニカム構造体の測定結果を表1,表2に示す。そして、ハニカム構造体について、「ESP安全温度」、及び「アイソスタティック強度」の各評価を行った。結果を表3,表4に示す。なお、スペーサを用いたのは、
参考例1〜3,15〜16、比較例25〜56である。
【0073】
表3,表4から、実施例
7〜
10,12、参考例2〜6,11,13〜19のハニカム構造体は、比較例1〜64のハニカム構造体に比べて、クラックが発生し難いことが分かる。