(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
最初に、
図1を参照して、本発明の実施例に係るショベル(掘削機)について説明する。
図1はショベルの側面図である。
図1に示すショベルの下部走行体1には旋回機構2を介して上部旋回体3が旋回可能に搭載されている。上部旋回体3にはブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられ、アーム5の先端にバケット6が取り付けられている。ブーム4、アーム5、バケット6は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。上部旋回体3には、キャビン10が設けられ且つエンジン11等の動力源が搭載される。
【0010】
次に、
図2を参照し、
図1のショベルに搭載される人検知システム50について説明する。
図2は、人検知システム50の構成例を示す機能ブロック図である。
【0011】
人検知システム50は、ショベル周辺に存在する人を検知するシステムであり、主に、画像センサ20、物体検出センサ21、出力装置22、制御装置30等で構成される。
【0012】
画像センサ20は、ショベル周辺の画像を取得するための装置である。画像センサ20は、例えば、CCD、CMOS等の撮像素子で構成され、制御装置30に対して撮像画像を出力する。本実施例では、画像センサ20は、キャビン10にいる操作者の死角を撮像できるように上部旋回体3の上面の左側端部、右側端部、及び後側端部に取り付けられた3台の単眼カメラであり、3台の単眼カメラのそれぞれには広い範囲を撮像できるよう広角レンズが装着されている。
【0013】
物体検出センサ21はショベル周辺に存在する物体を検出する。物体検出センサ21は、例えば、キャビン10にいる操作者の死角に存在する物体を検出できるよう上部旋回体3の左側面、右側面、及び後面に取り付けられる。物体検出センサ21は、例えば、超音波センサ、レーザレーダセンサ、ミリ波センサ等であり、ショベルから所定距離範囲内に存在する樹木、建物、人等を検出し、人とそれ以外の物体とを区別しない。また、物体検出センサ21は、対応する監視空間内のエネルギ変化を検出するセンサであってもよい。具体的には、焦電型赤外線センサ、ボロメータ型赤外線センサ、赤外線カメラ等であってもよい。本実施例では、物体検出センサ21は、焦電型赤外線センサであり、動体(移動する熱源)を物体として検出する。
【0014】
「監視空間」は、物体検出センサ21が監視する空間を意味し、例えば、物体検出センサ21が所定サイズ以上の物体を検出できる範囲を含む。監視空間は、例えば、最大検出距離、水平検出角度、垂直検出角度等を用いて定められる。
【0015】
出力装置22は、各種情報を出力する装置であり、例えば、キャビン10内に設置されたLEDランプ、車載スピーカ、車載ディスプレイ等である。
【0016】
制御装置30は、CPU、揮発性記憶装置、不揮発性記憶装置等を備えたコンピュータである。本実施例では、制御装置30は、例えば、第1判定部31、第2判定部32、第3判定部33、処理内容変更部34、画像生成部35等の機能要素のそれぞれに対応するプログラムをCPUに実行させて各機能要素に対応する機能を実現する。
【0017】
第1判定部31は、画像センサ20の出力に基づいてショベル周辺における人の存否を判定する。すなわち、第1判定部31は、樹木、建物等の人以外の物体と人とを区別する。第1判定部31は、例えば、HOG特徴量等の画像特徴量を利用して撮像画像中の人画像を見つけ出すことでショベル周辺における人の存否を判定する。第1判定部31は、他の公知の画像認識技術を用いてショベル周辺における人の存否を判定してもよい。
【0018】
第1判定部31は、例えば、画像センサ20が撮像した撮像画像から画像部分を抽出し、画像部分毎に人の存否を判定する。画像部分は、撮像画像のサイズより小さい画像領域であり、撮像画像中の位置によってその形状及び大きさが異なる。撮像画像ではショベルから遠い位置に存在する人ほど小さく表示され、画像中心から遠い位置に存在する人ほど歪んで表示されるためである。本実施例では、撮像画像中に1000個以上の画像部分が設定されており、その形状及び大きさは予め設定されている。
【0019】
第1判定部31は実空間における人の位置を特定できる。各画像部分は実空間における各位置に対応づけられているためである。具体的には、ある画像部分が人の画像を含むと判定された場合には、その画像部分に対応付けられている実空間の位置に実際に人が存在すると推定されるためである。
【0020】
第2判定部32は、物体検出センサ21の出力に基づいてショベル周辺における物体の存否を判定する。第2判定部32は、例えば、監視空間内のエネルギ変化が所定の閾値を上回った場合にその監視空間内に物体が進入したと判定する。
【0021】
本実施例では、第2判定部32は、実空間における物体の位置を特定しない。物体検出センサ21としての焦電型赤外線センサは、監視空間内に物体が存在するか否かを判定するのみであり、監視空間内の物体の位置までは特定していないためである。但し、物体検出センサ21が監視空間内の物体の位置を特定できるタイプのものであれば、第2判定部32は、物体検出センサ21の出力に基づいて実空間における物体の位置を特定してもよい。
【0022】
第3判定部33は、第1判定部31の判定結果と第2判定部32の判定結果とに基づいてショベル周辺における人の存否を判定する。すなわち、第3判定部33は、画像センサ20の出力と物体検出センサ21の出力とに基づいて人の存否を判定する。
【0023】
第3判定部33は、例えば、画像センサ20の撮像空間と物体検出センサ21の監視空間との位置関係に基づいて第1判定部31の判定結果と第2判定部32の判定結果とを使い分けるようにする。第3判定部33の詳細については後述する。
【0024】
「撮像空間」は、画像センサ20が撮像する空間を意味し、例えば、画像センサ20が人を識別可能に撮影できる範囲を含む。撮像空間は、例えば、画像センサ20の解像度、水平画角、垂直画角等を用いて定められる。
【0025】
処理内容変更部34は、所定条件が満たされた場合に、第1判定部31による判定処理の内容、又は、第2判定部32による判定処理の内容を変更する。
【0026】
例えば、処理内容変更部34は、第2判定部32で物体が存在すると判定された場合に、第1判定部31による判定処理の内容を変更する。判定処理の内容の変更は、例えば、撮像画像中のどの画像部分を優先的に抽出するかといった画像部分の抽出順の変更、画像特徴量を用いて人画像であるか否かを判定する際に用いられる閾値の増減等を含む。また、処理内容変更部34は、第1判定部31で人が存在すると判定された場合に、第2判定部32による判定処理の内容を変更してもよい。なお、処理内容変更部34の詳細については後述する。
【0027】
画像生成部35は、画像センサ20が撮像した撮像画像に基づいて車載ディスプレイに表示するための出力画像を生成する。画像生成部35は、例えば、3台のカメラが出力する3つの撮像画像を合成し且つ視点変換処理を施して出力画像を生成する。3つの撮像画像が合成され且つ視点変換処理が施された出力画像は、例えば、ショベルのCG画像の少なくとも一部を包囲するように配置された俯瞰画像である。また、画像生成部35は、3台のカメラのうちの1台が出力する1つの撮像画像に基づいて出力画像を生成してもよい。
【0028】
ここで、
図3を参照し、画像センサ20の撮像空間と物体検出センサ21の監視空間の配置例について説明する。
図3は、
図1のショベルの上面図であり、上部旋回体3の左側に取り付けられた左カメラ20L及び左物体検出センサ21L、21La、上部旋回体3の後側に取り付けられたバックカメラ20B及び後方物体検出センサ21B、21Ba、並びに、上部旋回体3の右側に取り付けられた右カメラ20R及び右物体検出センサ21R、21Raを示す。また、
図3は、キャビン10内に設置された車載スピーカ22A、車載ディスプレイ22V、及び制御装置30を示す。
【0029】
図3の一点鎖線で囲まれた範囲は画像センサ20の撮像空間を示す。具体的には、撮像空間CLは左カメラ20Lの撮像空間を示し、撮像空間CBはバックカメラ20Bの撮像空間を示し、撮像空間CRは右カメラ20Rの撮像空間を示す。
【0030】
破線で囲まれた範囲は物体検出センサ21の監視空間を示す。具体的には、監視空間ZLは左物体検出センサ21Lの監視空間を示し、監視空間ZLaは左物体検出センサ21Laの監視空間を示す。また、監視空間ZRは右物体検出センサ21Rの監視空間を示し、監視空間ZRaは右物体検出センサ21Raの監視空間を示す。また、監視空間ZBは後方物体検出センサ21Bの監視空間を示し、監視空間ZBaは後方物体検出センサ21Baの監視空間を示す。
図3の例では、監視空間ZL、ZLaは撮像空間CLの端に配置され、監視空間ZR、ZRaは撮像空間CRの端に配置され、監視空間ZB、ZBaは撮像空間CBの端に配置されている。例えば、監視空間ZLは、撮像空間CLの端を含む空間であり、遠方に延びる撮像空間CLの一端の境界を挟んだ撮像空間CL側(撮像空間CLの内部)の空間とその反対側(撮像空間CLの外部)の空間とを含む。監視空間ZLa、ZB、ZBa、ZR、ZRaについても同様である。
【0031】
斜線ハッチングが付された範囲は、画像センサ20の撮像空間と物体検出センサ21の監視空間とが重複する重複空間を示す。具体的には、重複空間SLは撮像空間CLと監視空間ZLとが重複する重複空間を示し、重複空間SLaは撮像空間CLと監視空間ZLaとが重複する重複空間を示す。また、重複空間SRは撮像空間CRと監視空間ZRとが重複する重複空間を示し、重複空間SRaは撮像空間CRと監視空間ZRaとが重複する重複空間を示す。また、重複空間SBは撮像空間CBと監視空間ZBとが重複する重複空間を示し、重複空間SBaは撮像空間CBと監視空間ZBaとが重複する重複空間を示す。
【0032】
なお、各空間の範囲を示す円弧部分は便宜上描かれたものであり、各空間の半径方向の境界は実際にはより遠いところ(例えば無限遠方)に位置する。
【0033】
第3判定部33は、例えば、左カメラ20Lの撮像空間CL内であって左物体検出センサ21L、21Laの監視空間ZL、ZLa内でない空間(撮像空間CLのうち重複空間SL、SLa以外の空間)に関しては、第1判定部31の判定結果をそのまま最終的な判定結果として採用する。或いは、監視空間ZL、ZLa内に物体が存在すると第2判定部32が判定している場合、第3判定部33は、撮像空間CLのうち重複空間SL、SLa以外の空間に関しては、処理内容変更部34を用いて第1判定部31による人検知の判定条件を緩和させてもよい。例えば、超音波センサのみで物体を検出している場合、画像処理で人が存在すると判定するまでは警告音を出力しないが、画像処理で人が存在すると判定され易くしてもよい。
【0034】
なお、例えば左物体検出センサ21Lで既に物体を検出している場合、第1判定部31は、左物体検出センサ21Lで既に検出された物体に関する画像部分に関して人の存否を判定できるため、撮像画像のみから人の存否を判定する場合よりも高い信頼性で人の存否を判定できる。これは、誤検知の頻度を低減させる効果を有する。誤検知は、人でないものを人と判定してしまうこと、及び、人を人でないと判定してしまうことを含む。
【0035】
また、第3判定部33は、例えば、左物体検出センサ21Lの監視空間ZL内であって左カメラ20Lの撮像空間CL内でない空間(監視空間ZLのうち重複空間SL以外の空間)に関しては、第2判定部32の判定結果をそのまま最終的な判定結果として採用する。監視空間ZLaのうち重複空間SLa以外の空間についても同様である。
【0036】
また、第3判定部33は、例えば、左カメラ20Lの撮像空間CL内であり且つ左物体検出センサ21Lの監視空間ZL内である重複空間SLに関しては、第1判定部31で人が存在すると判定され、且つ、第2判定部32で物体が存在すると判定された場合に人が存在すると判定する。左カメラ20Lの撮像空間CL内であり且つ左物体検出センサ21Laの監視空間ZLa内である重複空間SLaについても同様である。
【0037】
また、第3判定部33は、画像センサ20の撮像空間内に人が存在すると判定した場合、出力装置22に制御指令を出力し、その撮像空間内に人が存在することをショベルの操作者に伝える。例えば、第3判定部33は、左カメラ20Lの撮像空間CL内に人が存在すると判定した場合、撮像空間CL内に人が存在することを伝える音声メッセージを車載スピーカから出力させ、且つ、撮像空間CL内に人が存在することを伝えるテキストメッセージを車載ディスプレイ22Vに表示させる。車載ディスプレイ22Vにショベル周辺の画像が表示されている場合には、その人の画像部分を強調表示してもよい。
【0038】
なお、上述の説明は、左カメラ20L及び左物体検出センサ21L、21Laに関する第3判定部33の判定方法に適用されている。しかしながら、バックカメラ20B及び後方物体検出センサ21B、21Baに関する第3判定部33の判定方法、並びに、右カメラ20R及び右物体検出センサ21R、21Raに関する第3判定部33の判定方法にも同様に適用される。
【0039】
また、左カメラ20Lの撮像空間CL内であり且つ左物体検出センサ21L、21Laの監視空間ZL、ZLa内である重複空間SL、SLaに関する第3判定部33の判定方法は、撮像空間CL内であり且つ監視空間ZB内である重複空間に適用されてもよい。撮像空間CB内であり且つ監視空間ZLa内である重複空間、撮像空間CB内であり且つ監視空間ZRa内である重複空間、及び、撮像空間CR内であり且つ監視空間ZBa内である重複空間についても同様である。
【0040】
この構成により、人検知システム50は、画像センサ20の出力に基づく判定結果と物体検出センサ21の出力に基づく判定結果とを有効に利用しながら、より迅速且つ正確にショベル周辺に存在する人を検知できる。
【0041】
また、人検知システム50は、撮像画像の端で第1判定部31による人検知能力が低下してしまうという欠点(画像センサ20の弱みに起因する欠点)を補うことができる。具体的には、撮像画像の端では人の全体が映っておらず体の一部のみが映っていること(画素欠け)が多いため、撮像画像の中心部で人の存否を判定するときと同様の判定基準で判定処理を行うと誤検知の頻度を増大させてしまう。その結果、撮像画像の端に人の体の一部の画像が現れた場合であっても、人であるとの判定が遅れてしまい、或いは、人であるとの判定が行われない場合がある。これに対し、撮像空間の端に配置された監視空間で物体を検出した場合に第1判定部31が採用している判定基準を緩和することで、誤検知の頻度を低減させながら、より早期に且つ正確に人を検知できる。
【0042】
このように、人検知システム50は、画像センサ20の弱みを補うことでより確実に人を検知できる。そして、撮像空間の端から進入してくる人を高い信頼性で検知することができる。なお、「撮像空間の端から進入してくる人」は、静止している撮像空間に進入してくる人、及び、撮像空間が動いたために撮像空間に入った人(静止している人を含む。)を含む。撮像空間はショベルの走行又は旋回に伴って移動するためである。
【0043】
また、人検知システム50は、撮像空間の端に監視空間をもたらす物体検出センサ21を必要とするのみで、撮像空間の全体をカバーする広い監視空間をもたらすような物体検出センサ21を必要としない。そのため、低コスト且つ簡易な構成を実現できる。
【0044】
次に、
図4を参照し、画像センサ20の撮像空間と物体検出センサ21の監視空間の別の配置例について説明する。
図4は、
図1のショベルの上面図であり、
図3に対応する。
【0045】
図4の配置例は、左物体検出センサ21La、右物体検出センサ21Ra、及び後方物体検出センサ21B、21Baが省略された点で
図3の配置例と異なる。
【0046】
このように、互いに重複して配置される撮像空間CL、CB、CRを1つの撮像空間として捉え、その撮像空間の両側に物体検出センサの監視空間ZL、ZRが配置されるようにしてもよい。
図3の配置例を用いた場合とほぼ同様の効果を得ながら物体検出センサの数を低減させるためである。なお、左物体検出センサ21La、右物体検出センサ21Ra、及び後方物体検出センサ21B、21Baの全てが省略された場合ばかりでなく、そのうちの少なくとも1つが省略された場合にも同じことが言える。
【0047】
また、
図4の二点鎖線で囲まれた範囲は画像センサ20の撮像空間内に予め設定された部分空間DL、DRを示す。部分空間DLは、撮像空間CL内に予め設定された、監視空間ZLの側にある部分空間を示す。また、部分空間DRは、撮像空間CR内に予め設定された、監視空間ZRの側にある部分空間を示す。部分空間の利用方法については後述する。
【0048】
次に、
図5を参照し、人検知システム50がショベル周辺に存在する人を検知する処理(以下、「人検知処理」とする。)の一例について説明する。
図5は、人検知処理のフローチャートであり、人検知システム50は、所定の制御周期で繰り返しこの人検知処理を実行する。
【0049】
最初に、制御装置30の第3判定部33は、第2判定部32で物体が存在すると判定したか否かを確認する(ステップST1)。例えば、第3判定部33は、
図4に示すような左物体検出センサ21Lの監視空間ZL及び右物体検出センサ21Rの監視空間ZRのうちの少なくとも1つで第2判定部32によって物体が存在すると判定されたか否かを確認する。
【0050】
第2判定部32で物体が存在すると判定していた場合(ステップST1のYES)、処理内容変更部34は、画像センサ20の撮像空間内における所定の部分空間に関する画像部分の第1判定部31による抽出の優先順位を高くする(ステップST2)。
【0051】
例えば、処理内容変更部34は、監視空間ZLで第2判定部32によって物体が存在すると判定された場合、撮像空間CL内の部分空間DLに関する画像部分の第1判定部31による抽出の優先順位を高くする。
【0052】
第1判定部31は、撮像空間CL内の部分空間DL以外の空間に関する画像部分よりも優先的に、部分空間DLに関する画像部分を抽出して人の存否を判定する。監視空間ZLに存在する物体が部分空間DLに進入する可能性が高いと考えられるためである。
【0053】
一方、第2判定部32で物体が存在しないと判定していた場合(ステップST1のNO)、第3判定部33は、抽出の優先順位を変更することなく、ステップST3に移行する。例えば、第1判定部31は、画像センサ20が撮像した撮像画像で画像部分がn行m列の配列を構成するように配置されている場合、1行目の1列目にある左上隅の画像部分からn行目のm列目にある右下隅の画像部分まで順番に抽出する。具体的には、1行目の左端の画像部分から右端の画像部分を順番に抽出した後、2行目の左端の画像部分から右端の画像部分を順番に抽出し、以降も同様の順番で画像部分を抽出する。
【0054】
その後、第3判定部33は、第1判定部31で人が存在すると判定したか否かを確認する(ステップST3)。例えば、第3判定部33は、
図4に示すような左カメラ20Lの撮像空間CL、バックカメラ20Bの撮像空間CB、及び右カメラ20Rの撮像空間CRのうちの少なくとも1つで第1判定部31によって人が存在すると判定されたか否かを確認する。
【0055】
第1判定部31で人が存在すると判定していた場合(ステップST3のYES)、第3判定部33は、画像センサ20の撮像空間内に人が存在するとの判定結果を出力する(ステップST4)。例えば、第3判定部33は、音声メッセージを車載スピーカから出力させることで、ショベル周辺に人が存在することを操作者に伝える。
【0056】
一方、第1判定部31で人が存在しないと判定している場合(ステップST3のNO)、第3判定部33は、今回の人検知処理を終了させる。
【0057】
この構成により、人検知システム50は、上述の効果に加え、監視空間ZLを通って撮像空間CLに進入する物体に関する画像部分をより早期に抽出して撮像空間CL内の人の存否をより早期に判定できるという追加的な効果を実現する。
【0058】
ステップST2では、処理内容変更部34は、部分空間DLに関する画像部分の第1判定部31による判定基準を緩和してもよい。例えば、第1判定部31が画像特徴量を用いて人画像であるか否かを判定する際に用いられる閾値を増減させてもよい。
【0059】
次に、
図6を参照し、画像センサ20の撮像空間と物体検出センサ21の監視空間との重複部分である重複空間における人検知処理について説明する。
図6は、重複空間における人検知処理のフローチャートである。人検知システム50は、所定の制御周期で繰り返しこの処理を実行する。
【0060】
最初に、制御装置30の第3判定部33は、第1判定部31で人が存在すると判定したか否かを確認する(ステップST11)。例えば、第3判定部33は、
図3又は
図4に示すような左カメラ20Lの撮像空間CL、バックカメラ20Bの撮像空間CB、及び右カメラ20Rの撮像空間CRのうちの少なくとも1つで第1判定部31によって人が存在すると判定されたか否かを確認する。
【0061】
第1判定部31で人が存在すると判定していた場合(ステップST11のYES)、第3判定部33は、その人の存在位置が物体検出センサ21の監視空間内であるか否かを判定する(ステップST12)。例えば、第3判定部33は、第1判定部31が撮像空間CLに人が存在すると判定していた場合、その人の存在位置が左物体検出センサ21Lの監視空間ZL内、すなわち重複空間SL内であるか否かを判定する。
【0062】
その人の存在位置が監視空間内であると判定した場合(ステップST12のYES)、第3判定部33は、第2判定部32で物体が存在すると判定したか否かを確認する(ステップST13)。例えば、第3判定部33は、第1判定部31によって重複空間SL内に人が存在すると判定されていた場合には、第2判定部32によって左物体検出センサ21Lの監視空間ZL内に物体が存在すると判定されたか否かを確認する。
【0063】
第2判定部32で物体が存在すると判定していた場合(ステップST13のYES)、第3判定部33は、重複空間に人が存在するとの判定結果を出力する(ステップST14)。例えば、第3判定部33は、第2判定部32によって監視空間ZL内に物体が存在すると判定されたことを確認した場合に、重複空間SLに人が存在することを伝える音声メッセージを車載スピーカ22Aから出力させ、且つ、重複空間SLに人が存在することを伝えるテキストメッセージを車載ディスプレイ22Vに表示させる。
【0064】
この構成により、第3判定部33は、重複空間に関しては、例えば、第1判定部31で人が存在すると判定され且つ第2判定部32で物体が存在すると判定された状態(第1状態)で人が存在すると判定する。そのため、第1判定部31では人が存在すると判定されたが第2判定部32では物体が存在しないと判定された状態(第2状態)、或いは、第1判定部31では人が存在しないと判定されたが第2判定部32では物体が存在すると判定された状態(第3状態)に比べ、信頼性の高い判定結果を出力できる。
【0065】
画像センサ20の出力に基づいて人の存否を判定する第1判定部31は人の形状に似た地面の模様を人であると誤検知する場合があるが、物体検出センサ21の出力に基づいて物体の存否を判定する第2判定部32はこのような地面の模様を物体として誤検知することはないためである。また、第2判定部32は人と人以外の物体とを区別せずにその存否を判定するが、第1判定部31は、樹木、建物等の明らかに人とは見た目の異なる物体を人として誤検知することはないためである。
【0066】
なお、第3判定部33は、重複空間に関しては、判定結果の信頼度に応じて出力内容を段階的に変更してもよい。例えば、第3判定部33は、重複空間に人が存在することを知らせる警告音を出力する場合、第1状態のときの警告音を第2状態又は第3状態のときの警告音より緊急性の高い警告音としてもよい。緊急性の高い警告音は、例えば、緊急性の低い警告音に比べ音量が大きく、周波数が高く、或いは、出力間隔が短い。この場合、第3判定部33は、ステップST11で撮像空間内に人が存在すると判定した場合に第2状態のときの警告音を出力し、その後にステップST13で監視空間内に物体が存在すると判定した場合に第1状態のときの警告音を出力してもよい。視覚的な警告を出力する場合についても同様である。
【0067】
また、第3判定部33は、第1状態であっても人とショベルとの間の距離に応じて出力内容を段階的に変更してもよい。例えば、その距離が所定距離以上の場合には、その距離が所定距離未満の場合に比べ、緊急性の低い警告音を出力してもよい。
【0068】
また、
図6の処理は、第1判定部31が人の存在位置を特定し、第2判定部32が物体の存在位置を特定しない構成を前提とするが、第2判定部32が物体の存在位置を特定する場合でも同様に実行される。その場合、第3判定部33は、第2判定部32で物体が存在すると判定したか否かを確認した後で、第1判定部31で人が存在すると判定したか否かを確認してもよい。
【0069】
次に、
図7及び
図8を参照し、人検知処理の別の一例について説明する。
図7は人検知処理の別の一例のフローチャートであり、
図8はその処理を実行するショベルの上面図である。なお、この例では、第2判定部32は物体の存在位置を特定できるように構成される。そのため、例えば2次元走査式のレーザレーダセンサが物体検出センサ21として採用される。
【0070】
図7の処理は、ステップST21及びステップST22を有する点で
図5の処理と異なる。そのため、共通部分の説明を省略し、相違部分を詳細に説明する。
【0071】
図5の人検知処理と同様、第3判定部33は、第2判定部32で物体が存在すると判定したか否かを確認する(ステップST1)。例えば、第3判定部33は、
図8に示すような左物体検出センサ21Lの監視空間ZL及び右物体検出センサ21Rの監視空間ZRのうちの少なくとも1つで第2判定部32によって物体が存在すると判定されたか否かを確認する。
【0072】
第2判定部32で物体が存在すると判定していた場合(ステップST1のYES)、制御装置30は、撮像空間内での物体の移動経路を予測する(ステップST21)。例えば、制御装置30は、物体検出センサ21の過去の出力を用いて物体の移動経路を予測する。
【0073】
例えば
図8に示すように、制御装置30は、時刻t1において物体検出センサ21が検出した物体の位置P1と、現在時刻t2において物体検出センサ21が検出した物体の位置P2とに基づいて物体のその後の移動経路TRを予測する。
【0074】
その後、制御装置30は、予測した移動経路に基づいて部分空間を導き出す(ステップST12)。部分空間は、物体検出センサ21によって検出された物体が進入する可能性が高い撮像空間内の空間である。例えば
図8に示すように、制御装置30は、予測した移動経路TRから所定距離範囲内の空間(斜線ハッチングで示す空間)を部分空間PLとして導き出す。
【0075】
その後、処理内容変更部34は、部分空間に関する画像部分の第1判定部31による抽出の優先順位を高くする(ステップST2)。
【0076】
例えば
図8に示すように、処理内容変更部34は、左カメラ20Lの撮像空間CL内における移動経路TRが導き出された場合、部分空間PLに関する画像部分の第1判定部31による抽出の優先順位を高くする。
【0077】
その結果、第1判定部31は、撮像空間CL内の部分空間PL以外の空間に関する画像部分よりも優先的に部分空間PLに関する画像部分を抽出して人の存否を判定する。監視空間ZLに存在する物体が部分空間PLに進入する可能性が高いと考えられるためである。
【0078】
一方、第2判定部32で物体が存在しないと判定していた場合(ステップST1のNO)、第3判定部33は、抽出の優先順位を変更することなく、ステップST3に移行する。
【0079】
この構成により、人検知システム50は、監視空間ZLを通って撮像空間CLに進入する物体に関する画像部分をより早期に抽出して撮像空間CL内の人の存否をより早期に判定できる。また、左物体検出センサ21Lで検出された物体に関する画像部分に基づいて人の存否を判定するため、撮像画像のみから人の存否を判定する場合よりも正確に人の存否を判定できる。これは、誤検知の頻度を低減させる効果を有する。
【0080】
また、移動経路TR内に人が存在すると第1判定部31が判定した場合の判定結果の信頼性は、移動経路TR外に人が存在すると第1判定部31が判定した場合の判定結果の信頼性よりも高い。移動経路TR内に存在する人は、左物体検出センサ21Lによってもその存在が確認されているためである。
【0081】
なお、処理内容変更部34は、部分空間PLに関する画像部分の第1判定部31による判定基準を緩和してもよい。例えば、第1判定部31が画像特徴量を用いて人画像であるか否かを判定する際に用いられる閾値を増減させてもよい。
【0082】
次に、
図9を参照し、物体検出センサ21の別の配置例について説明する。
図9はショベルの上面図であり、
図4に対応する。
【0083】
図9のショベルは、左後方物体検出センサ21BL及び右後方物体検出センサ21BRを備える点で
図4のショベルと異なる。そのため、共通部分の説明を省略し、相違部分を詳細に説明する。
【0084】
図9のハッチングが付された範囲は2つの撮像空間が重複する重複撮像空間を示す。具体的には、重複撮像空間CBLは撮像空間CLと撮像空間CBとが重複する重複撮像空間を示し、重複撮像空間CBRは撮像空間CRと撮像空間CBとが重複する重複撮像空間を示す。
【0085】
左後方物体検出センサ21BLは、監視空間ZBL内の物体を検出できるように上部旋回体3の左側面の後端に取り付けられている。監視空間ZBLは撮像空間CLの端に配置されている。そのため、監視空間ZBLは、重複撮像空間CBLの一部を含む。
【0086】
右後方物体検出センサ21BRは、監視空間ZBR内の物体を検出できるように上部旋回体3の右側面の後端に取り付けられている。監視空間ZBRは撮像空間CRの端に配置されている。そのため、監視空間ZBRは、重複撮像空間CBRの一部を含む。
【0087】
この構成により、人検知システム50は、例えば、撮像空間CBから撮像空間CLに移動する人を重複撮像空間CBLのところで一時的に見失ってしまうのを防止できる。重複撮像空間CBLに関する画像部分は、2つの撮像画像を合成する際の人画像の消失を防止するための画像処理が施されるため、非重複撮像空間に関する画像部分に比べ、画像処理によって合成出力画像から人の画像を見つけ出すことが困難である。これに対し、左後方物体検出センサ21BLがあれば、撮像空間CBから撮像空間CLに移動する人を画像処理以外の方法で検出できる。そのため、左後方物体検出センサ21BLで物体を検出した場合には、重複撮像空間CBLに関する画像部分については、第1判定部31が人画像であると判定する際の判定基準を緩和させる等により第1判定部31で人を検知し易くできる。その結果、誤検知の頻度を抑えることができる。この場合、
図8を用いて説明した物体の移動経路を利用してもよい。
【0088】
撮像空間CLから撮像空間CBに移動する人、撮像空間CBから撮像空間CRに移動する人、撮像空間CRから撮像空間CBに移動する人についても同様である。また、「1の撮像空間から別の撮像空間に移動する人」は、撮像空間が動いたために、見かけ上、1の撮像空間から別の撮像空間に移動した人(静止している人を含む。)を含む。
【0089】
以上、本発明を実施するための形態について詳述したが、本発明は上述のような特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0090】
例えば、上述の実施例では、画像センサ20は、左カメラ20L、バックカメラ20B、及び右カメラ20Rの3台で構成されるが、画像センサ20は1つのカメラで構成されてもよい。物体検出センサ21についても同様である。
【0091】
また、上述の実施例では、撮像空間CLと監視空間ZLとが重複するように配置されるが、重複しないように配置されてもよい。撮像空間CRと監視空間ZRとの位置関係についても同様である。