(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6689695
(24)【登録日】2020年4月10日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】抜き出し可能なスライドレール
(51)【国際特許分類】
A47B 88/57 20170101AFI20200421BHJP
【FI】
A47B88/16 B
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-141141(P2016-141141)
(22)【出願日】2016年7月19日
(65)【公開番号】特開2018-11628(P2018-11628A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2019年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】390002255
【氏名又は名称】日本アキュライド株式会社
(72)【発明者】
【氏名】津村 優
【審査官】
下井 功介
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭58−97872(JP,U)
【文献】
米国特許第4610487(US,A)
【文献】
実開昭61−73243(JP,U)
【文献】
実開昭61−139642(JP,U)
【文献】
実開昭63−157347(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B88/00〜88/994
A47F 5/00〜 8/02
H05K 5/00〜 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側部材に連結される固定側レールと、ボールを回転自在に保持するボ−ルリテーナを介して固定側レールに対して引き出し可能に支持される移動側レールと、固定側レールより移動側レールを抜き出し可能とする抜け止め解除用レバー等から成る抜き出し可能なスライドレールにおいて、移動側レールに連結された移動側部材が固定側部材に収納された状態であっても、移動側部材が固定側部材から最大引き出された状態であっても、固定側レールは、移動側部材によって隠蔽される長さに設定され、移動側レールが移動側部材と共に固定側レールから抜き出されたとき、抜け止め解除用レバーは、固定側レールの先端側で、固定側レールと共に固定部材側に残ることを特徴とする抜き出し可能なスライドレール。
【請求項2】
ボ−ルリテーナは移動側レールと共に固定側レールより抜き出されることを特徴とする請求項1に記載の抜き出し可能なスライドレール。
【請求項3】
抜け止め解除用レバーのストッパー部に衝突して、移動側レールが一旦停止するストッパー突部がボ−ルリテーナに形成されていることを特徴とする請求項2に記載の抜き出し可能なスライドレール。
【請求項4】
ストッパー突部の通過可能位置までストッパー部を弾性変移させる抜け止め解除用レバーの操作部が、外部から操作可能に移動側レールの外方に突出して設けられ、移動側部材に上方から隠蔽されていることを特徴とする請求項3に記載の抜き出し可能なスライドレールである。
【請求項5】
抜け止め解除用レバーの操作部と、操作部に連設された弾性変移部と、弾性変移部に連設された取り付け用基板は、固定側レールの基板の裏面側に位置し、ストッパー部は固定側レールの基板の表面側に位置するよう合成樹脂材にて一体に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の抜き出し可能なスライドレール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抽斗、機器類等が本体より最も引き出された状態で一旦停止し、必要に応じて簡単な操作で、抽斗、機器類等(移動側レール)を本体(固定側レール)から抜き出すことが出来ると共に、その装着が容易な抜き出し可能なスライドレールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来上記スライドレールは、家具本体等の固定側部材に設けられた固定側レールと、固定側レールに摺動自在とした移動側レールと、両レール間でボールを回転自在に保持するボールリテーナからなり、固定側レールの前端部内面にストッパー突部を有する案内部材を設け、案内部材に対応して、ストッパー部材の後端部が移動側レールの後端部内面に回動自在に取り付けられたスライドレールにおいて、ストッパー部材は移動側メンバーが引き出された時に、ストッパー突部の後面に当接するストッパー段部と、ストッパー突部の当接状態を解除する操作部と、ストッパー段部を常にストッパー突部の当接位置に維持する弾性脚部が合成樹脂材にて一体に形成されたものである。
(特許文献1参照)
【0003】
この場合、移動側部材(移動側レール)の引き出し途中から、移動側部材(移動側レール)の引き出し最大位置(ストッパー突部にストッパー段部が当接した状態)までの間、常に、固定側レールは固定側部材内に露呈することと成っていた。
すなわち、上方から内部を覗き込むように展示される陳列ケース、例えば貴金属の陳列ケースに上記スライドレールが使用されている場合、客が手にとって見たり、あるいは身につけたりするため、貴金属が収納された陳列トレーを陳列ケース内のから取り出す必要が生じたとき、陳列トレー(移動側部材)を陳列ケール外に引き出すと、引き出された元の位置に固定側レールが露呈し、陳列ケース内の美観を損なうことにもなっていた。
【0004】
又、スライドレールの上下間の寸法が小さく、奥行寸法の大きい収納体に使用されている場合、移動側レール(抽斗等の移動側部材)をすべて抜き出したとき、この上下方向に複数段、且つ、奥行き方向ほぼ全幅に渡って配設された固定側レールが、収納体内部の清掃の妨げとなり、清掃に必要以上の手間と時間がかかっていた。
【0005】
一方、上記スライドレールの場合、移動側レールが抜き出された状態で、ボールリテーナが固定側レールに配設された状態で残留する。そして、抜き出された移動側レールを再び固定側レールに装着する時には、残留したボールリテーナが固定側レールの前端部に位置させておく必要がある。(固定側レールと移動側レール間にボールリテーナに回動自在に保持されたボールを介在させる構成であるから。)このため、固定側レールとボールリテーナ間にそのための不用意にボールリテーナが後方に移動しないよう、ボールリテーナを固定側レールの前端部に保持するための保持部材を設ける必要があり、コストアップにつながっていた。
【0006】
一方、保持部材を設けない場合、抜き出された移動側レールを再び固定側レールに装着する時、ボールリテーナが固定側レールの前端部に位置しているかどうかの確認、あるいは、前端部に位置させる作業が必要となり、非常に煩雑であった。
さらに、上記スライドレールの場合、抜き出された移動側レールにストッパー部材が取り付けられているので、移動側レールが抜き出されて状態でストッパー部材が外部に直接露呈する。したがって、移動側レールが移動側部材と共に持ち運びされたとき、他物品との衝突などのよって、不測にストッパー部材が破損することもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公平5−13223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題に鑑み、簡単な構成で、スライドストロークに影響を与えず、移動側レールの摺動途中は、固定側レール、及び、ストッパー部材が露呈することなく、移動側レールが抜き出された状態で、固定側部材内の清掃も容易で、抜き出された移動側レールにボールリテーナを保持することで、ボールリテーナの位置確認、及び、固定側レールへの装着も容易で、ストッパー部材は、移動側レールが抜き出された状態で、固定部材側(固定側レール)に位置しているので、外部要因による破損事故の恐れも低下する、抜き出し可能なスライドレールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する為、本発明が第1の手段として構成したところは、固定側部材に連結される固定側レールと、ボールを回転自在に保持するボ−ルリテーナを介して固定側レールに対して引き出し可能に支持される移動側レールと、固定側レールより移動側レールを抜き出し可能とする抜け止め解除用レバー等から成る抜き出し可能なスライドレールにおいて、移動側レールに連結された移動側部材が固定側部材に収納された状態であっても、移動側部材が固定側部材から最大引き出された状態であっても、固定側レールは、移動側部材によって隠蔽される長さに設定され、移動側レールが移動側部材と共に固定側レールから抜き出されたとき、抜け止め解除用レバーは、固定側レールの先端側で、固定側レールと共に固定部材側に残るものである。
【0010】
上記課題を解決する為、本発明が第2の手段として構成したところは、上記第1の手段としての構成に加え、ボ−ルリテーナは移動側レールと共に固定側レールより抜き出されるものである。
【0011】
上記課題を解決する為、本発明が第3の手段として構成したところは、上記第2の手段としての構成に加え、抜け止め解除用レバーのストッパー部に衝突して、移動側レールが一旦停止するストッパー突部がボ−ルリテーナに形成されているものである。
【0012】
上記課題を解決する為、本発明が第4の手段として構成したところは、上記第3の手段としての構成に加え、ストッパー突部の通過可能位置までストッパー部を弾性変移させる抜け止め解除用レバーの操作部が、外部から操作可能に移動側レールの外方に突出して設けられ、移動側部材に上方から隠蔽されているものである。
【0013】
上記課題を解決する為、本発明が第5の手段として構成したところは、上記第4の手段としての構成に加え、抜け止め解除用レバーの操作部と、操作部に連設された弾性変移部と、弾性変移部に連設された取り付け用基板は、固定側レールの基板の裏面側に位置し、ストッパー部は固定側レールの基板の表面側に位置するよう合成樹脂材にて一体に形成されているものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1の手段として構成したところによると、移動側レールに連結された移動側部材が固定側部材に収納された状態であっても、移動側部材が固定側部材から最大引き出された状態であっても、固定側レールは、移動側部材によって隠蔽される長さに設定されているから、移動側部材が引き出された状態であっても、固定側部材(陳列ケース)内に収納された展示商品の美観を損なうことなく、移動側部材(移動側レール)を抜き出した状態で、固定側部材内の清掃も容易である。
又、移動側レールが移動側部材と共に固定側レールから抜け出したとき、抜け止め解除用レバーは、固定側レールの先端側で、固定側レールと共に固定部材側に残るもので外部要因による破損事故の恐れも低下する。
【0015】
本発明の第2の手段として構成したところによると、第1の手段として構成したところの効果に加え、ボ−ルリテーナは移動側レールと共に固定側レールより抜き出されるので、ボールリテーナの位置確認、あるいは移動側レールの後端部側への移動も指先で目視しながら行えるので、移動側レールの固定側レールへの装着も容易である。
【0016】
本発明の第3の手段として構成したところによると、第2の手段として構成したところの効果に加え、抜け止め解除用レバーのストッパー部に衝突して、移動側レールが一旦停止するストッパー突部がボ−ルリテーナに形成されているから、ボールリテーナは、常に移動側レールの後端部に保持された状態で抜き出されるので、固定側レールに再び装着するとき、段取り良く装着することが出来る。
【0017】
本発明の第4の手段として構成したところによると、第3の手段として構成したところの効果に加え、ストッパー突部の通過可能位置までストッパー部を弾性変移させる抜け止め解除用レバーの操作部が、移動側部材に隠蔽され、外部から操作可能に移動側レールの外方に突出して設けられているので、移動側部材が引き出された状態で、不用意に抜き出される恐れはなく、又、操作するときは容易に行うことが出来る。
【0018】
本発明の第5の手段として構成したところによると、第4の手段として構成したところの効果に加え、抜け止め解除用レバーの操作部と、弾性変移部と、取り付け用基板は、固定側レールの基板の裏面側に位置し、ストッパー部は固定側レールの基板の表面側に位置するよう構成されているので、ボールリテーナのストッパー突部がストッパー部に当接した状態で移動側レールが強く引き出されようとしても、ストッパー部と取り付け用基板等で固定側レールの基板前端部を挟持する状態となっているので、ストッパー突部が容易に変移することがなく確実に移動側レールの一旦停止状態を維持する。
又、操作部と、弾性変移部と、取り付け用基板と、ストッパー部は合成樹脂材にて一体に成形されているので、部品点数が少なくてすみ、安価に製作でき、部品管理も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明のスライドレールの移動側レール収納状態の斜視図である。
【
図3】本発明のスライドレールの移動側レールの引き出し状態の斜視図である。
【
図4】
図3に対応する状態の裏面側の斜視図である。
【
図5】本発明のスライドレールの分解斜視図である。
【
図7】抜け止め解除用レバーの裏面側の斜視図である。
【
図9】抜け止め解除用レバー操作時の
図8に対応する断面図である。
【
図10】移動側レール装着時の
図8に対応する断面図である。
【
図12】スライドレールの配設状態を示す裏面側の斜視図である。
【
図13】スライドレールの配設状態を示す要部正面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
固定側部材に連結される固定側レールと、ボールを回転自在に保持するボ−ルリテーナを介して固定側レールに対して引き出し可能に支持される移動側レールと、固定側レールより移動側レールを抜き出し可能とする抜け止め解除用レバー等から成る抜き出し可能なスライドレールにおいて、移動側レールに連結された移動側部材が固定側部材に収納された状態であっても、移動側部材が固定側部材から最大引き出された状態であっても、固定側レールは、移動側部材によって隠蔽される長さに設定され、移動側レールが移動側部材と共に固定側レールから抜き出されたとき、抜け止め解除用レバーは、固定側レールの先端側で、固定側レールと共に固定部材側に残り、ボ−ルリテーナは抜け止め解除用レバーのストッパー部に衝突して、移動側レールを一旦停止させるストッパー突部を有し、移動側レールと共に固定側レールより抜き出され、ストッパー突部の通過可能位置までストッパー部を弾性変移させる抜け止め解除用レバーの操作部は、外部から操作可能に移動側レールの外方に突出して設けられると共に、移動側部材に上方から隠蔽され、抜け止め解除用レバーは操作部と、操作部に連設された弾性変移部と、弾性変移部に連設された取り付け用基板と、ストッパー部が合成樹脂材にて一体に形成され、弾性変移部と、取り付け用基板は固定側レールの基板の裏面側に位置し、ストッパー部は固定側レールの基板の表面側に位置しているものである。
【実施例】
【0021】
実施例のスライドレールの基本的構成を
図1、
図5に基づいて説明する。
スライドレール100は、家具等の本体の固定側部材Eの上面に連結ネジ等で連結される固定側レール取り付け基台10の上面に固着された固定側レール1と、固定側レール1に対し、ボールリテーナ3に回転自在に保持された複数個のボール30・・・を介して摺動自在に設けられた移動側部材Fと連結される移動側レール2と、固定側(固定側レール1及び固定側レール取り付け基台10)の先端部に設けられた抜け止め解除用レバー5より構成されている。
以下、
図1において左側斜め下方向を引き出し側(先端側)、右側斜め上方向を収納側(後端側)として説明する。
【0022】
固定側レール1は、固定側レール取り付け基台10とほぼ同等の長さで、金属製の細長条板の短手両端部(左右両端部)を外向き円弧状に折り曲げて形成された外面長手方向(摺動方向)にボール案内溝を有する左右折曲縁11、11と、基板12より断面略上向きC字形に形成されている。
そして、移動側レール2が収納状態に移動する時、ボール30・・・がスリップしてもボールリテーナ3を所定位置まで強制的に移動させるためのリテーナ移動用突部121と、抜け止め解除用レバー5を取り付けるためのレバー連結孔122、122(
図5)が基板12の所定位置に設けられている。
連結孔122、122が基板12の左右端部側に左右対称に設けられているのは、固定側レール1を左右兼用として使用するためである。
【0023】
固定側レール1が固着されている固定側レール取り付け基台10は、固定側レール1の基板12が固着される、基板12とほぼ同長の上面板101と、上面板101の左右端部を前後方向に所定間隔を有して下方に折り曲げられた略L字形の連結用脚部102・・・と、連結用脚部102・・・間で、移動側レール2の左右端部側に、上面板101から上方に突出する左右の変形防止突片103・・・より形成されている。
【0024】
そして、上面板101には固定側レール1のレバー連結孔122、122に対応してレバー取り付け孔104、104と、抜け止め解除用レバー5の取り付け時の位置決めを行うための位置決め孔105が形成され、連結用脚部102・・・には固定側部材に連結するための固定側レール取り付け孔106・・・が形成されている。
尚、左右の変形防止突片103は、不測の力よって移動側レール2が変形し、固定側レール1から移動側レール2が脱落する(例えば、移動側レール2が最も引き出された際に、先端部分に不用意に重量物が載置され、移動側レール2の後端部が浮き上がるとき、移動側レール2の左右端部が広がる)のを防止するため設けられたものである。
【0025】
移動側レール2は、実施例では固定側レール1の約5倍弱の長さで、金属製の細長条板の短手両端部を内向き円弧状に折り曲げて形成された内面長手方向(摺動方向)にボール案内溝を有する左右折曲縁21、21と、基板22より固定側レール1に対向する断面略下向きC字形に形成されている。
【0026】
そして、基板22の引き出し側端部には、前記固定側レール1方向に突出し、移動側レール2が収納方向に最も移動した状態(移動側レール2の収納状態。
図1に示す状態。)
で、抜け止め解除用レバー5の先端部分に衝突して、移動側レール2の摺動が停止するレール収納時ストッパー220が形成され、基板22の収納側端部には前記固定側レール1方向に突出し、移動側レール2が引き出し方向に最も移動した状態(移動側レール2の引き出し状態。
図3に示す状態。)で、ボールリテーナ3の後端部が当接し、ボールリテー3の停止と共に移動側レール2の摺動が停止するレール引き出し時ストッパー221が形成されている。
【0027】
ボールリテーナ3は帯条金属板にて移動側レール2より所定寸法短くした、固定側レール1と移動側レール2間に挿入可能な大きさの基板31と、固定側レール1と固定側レール2の各左右折曲縁11、11、21、21間に位置する左右突出縁32、32より断面下向き略コ字形に形成され、左右突出縁32、32の長手方向(摺動方向)数個所でボール30・・・を回転自在に保持している。
【0028】
そして、基板31の先端部側には前記固定側レール1のリテーナ移動用突部121に対応してリテーナ移動用突起311が形成され、基板31の後端部には移動側レール2の引き出し時ストッパー221に対応して、リテーナ引き出し時ストッパー312が形成され、移動側レール2が最も引き出された時に、リテーナ出し時ストッパー312に移動側レール2の引き出し時ストッパー221が当接すると、同時に抜け止め解除用レバー5の一部に当接し、移動側レール2の摺動を停止させるストッパー突部313が、基板31の後端部よりに形成されている。
ストッパー突部313は収納側端部に案内円弧部314が形成された収納側に向かって先細り状に形成されている。
【0029】
符号314は、固定側レール1のリテーナ移動用突部121に対応して形成されたリテーナ強制移動突起を示し、符号310は、リテーナ出し時ストッパー312に移動側レール2の引き出し時ストッパー221が当接した状態で、ボール30・・が移動側レール2の左右折曲縁21、21の後端部に位置し、抜き出された移動側レール2とボールリテーナ3を固定側レール1に装着する際、ボール30・・が固定側レール1のボール案内溝に容易に位置するよう、基板31の後端部に形成されたリテーナ位置決め用切り欠き部を示している。
尚、リテーナ位置決め用切り欠き部310を設けることによって、ボールリテーナ3の左右突出縁32、32の収納側端部が強度的に低下するので、これを避けるため切り欠き部310を形成しない場合は、移動側レール2の収納側端部に実公昭62−11481号公報に示すような案内部材を設けてもよい。
また、前記案内の役割の他、切り欠き310を設けることによってボールリテーナ3を移動側レール2の端部まで延ばすことができるので、ボールリテーナ3に保持されるボール30の個数を多くできる。したがって、固定側レール1を保持するボール30の個数が多くなるので、移動側レール2をより安定的に動作させることが可能である。
【0030】
抜け止め解除用レバー5は、固定側レール1の基板12の裏面側(実施例では、固定側レール取り付け基台10の上面板101の下面)に連結される取り付け用基板51と、取り付け用基板51の引き出し側に連設された弾性変移部52と、弾性変移部52の引き出し側に連設された変移ストッパー部6が合成樹脂材にて一体に成形されている。
そして、変移ストッパー部6には、浮き上がり防止部60と、浮き上がり防止部60の引き出し側端部で固定側レール1の引き出し側の外部に位置する操作部61と、補強突部62と、収納当接部64と、収納当接部64の収納側で、固定側レール1の基板12の表面側に位置してストッパー部63が設けられている。
【0031】
取り付け用基板51には、前記固定側レール取り付け基台10の位置決め孔105に対応して、位置決め用突起511、511と、レバー取り付け孔104、104に対応して、前記固定側レール取り付け基台10を介して固定側レール1にリベット止めするためのリベット孔512、512が形成されている。
【0032】
弾性変移部52は、中央部に中央変移用間隙521を有する横向きU字形で、取り付け用基板51間と、変移ストッパー部6間に、第1、第2変移用間隙522、523を有している。
変移ストッパー部6の浮き上がり防止部60は、取り付け用基板51、弾性変移部52と共に、固定側レール取り付け基台10の上面板10の裏面側に位置し、ストッパー部63と共に、固定側レール1の基板12の引き出し側端部(上面板10の引き出し側端部)を挟持し、ストッパー部63にボールリテーナのストッパー突部313が衝突したときに、ストッパー部63が上下方向に変移するのを防止している。
符号601は、成形時にストッパー部63を形成するための抜き穴を示している。
【0033】
操作部61は、浮き上がり防止部60の引き出し側の右側端部から、固定側レール1の引き出し側の外部に位置して、右側外方に突出し、移動側レール2の右折曲縁21の外側で、移動側レール3に連結される移動側部材Fの下面から操作可能な位置で、且つ、移動側部材Fに上方から隠蔽されている。
【0034】
補強突部62は、操作部61の付け根側下面から下向きに突出し、下面がほぼ固定側部材Fの上面に当接する厚みに形成され、移動側レール2に不測の引き出し力が付加され、ストッパー部63にボールリテーナのストッパー突部313が衝突したとき、下面が固定側部材Fの上面に当接して、ストッパー突部313がストッパー部63を乗り越えるのを防止している。
【0035】
収納当接部64は、操作部61の付け根側で引き出し側の前面に設けられ、前面に波形突部641が形成され、移動側レール2の収納時に、移動側レール2のレール収納時ストッパー220が衝突した時の衝撃を緩和している。
【0036】
ストッパー部63は、収納当接部64の上端部から、収納側に突出し後半部が基板12の引き出し側端部の上面と重合する、引き出し側を頂点とする、左右傾斜部630、631、当接ストッパー部632より平面視略三角形状に形成されている。
そして、右傾斜部631の引き出し側端部は、ストッパー突部313の左側に位置し、収納側端部はストッパー突部313の右側に突出する位置に形成されている。
【0037】
抜き出された移動側レ−ル2と移動側レール2に保持されたボールリテーナ3が固定側レ−ル1に装着されるとき、ストッパー突部313の案内円弧部314が接触して、
図10において、ストッパー部63を左側方向押しやりながら収納方向に移動し、ストッパー突部313の引き出し側端部が傾斜部631の収納側端部より収納側に位置すると同時に弾性によって、所定位置に戻り当接ストッパー部632がストッパー突部313の移動線上に位置し、ボールリテーナ3(移動側レール2)が不用意に抜け出すのを防止する。
【0038】
本発明は以上の如く構成され、固定側レール1から移動側レール2が抜き出された状態で、抜け止め解除用レバー5が連結され、固定側レール1に固着された固定側レール取り付け基台10を固定側部材Fにネジ留め連結し、次に、移動側部材Eに連結された移動側レール2と、ボールリテーナ3を前述したように固定側レール1に装着し、移動側部材Eが固定側部材Fに最も収納された状態とする。
【0039】
この状態で、固定側レール1(固定側レール取り付け基台10)、抜け止め解除用レバー5は移動側部材Eの移動側左右端部下面に位置し、移動側部材Eによって隠蔽された状態となっている。
この状態から、移動側部材Eを引き出していくと、移動側部材Eに連結された移動側レール2は引き出し方向に摺動し、同時にボールリテーナ3も移動側レールの移動距離の2分の1移動し、やがて、移動側レールのレール引き出し時ストッパー221、221が、
リテーナ引き出し時ストッパー312、312に当接すると同時に、ボールリテーナ3のストッパー突部313が抜け止め解除用レバー5のストッパー部63の当接ストッパー部632に当接して、移動側レール2とボールリテーナ3(移動側部材E)の摺動(引き出し移動)は停止する。
【0040】
この状態で、固定側レール1(固定側レール取り付け基台10)、抜け止め解除用レバー5は移動側部材Eの収納側左右端部下面に位置し、移動側部材Eによって隠蔽された状態となっている。
そして、移動側部材Eを固定側部材Fより抜き出すときは、移動側部材Eの収納側左右端部の下面側より指先で、抜け止め解除用レバー5の操作部61の先端側を引き出し方向で内側(
図8において時計廻りの方向)に押しやると、弾性変移部52の中央変移用間隙521が開くように弾性変形し、ストッパー部63の当接ストッパー部632がボールリテーナ3のストッパー突部313に移動線上から退避する(
図9に示す状態)ので、この状態を維持しながら、移動側部材E(移動側レール2、ボールリテーナ3)を固定側部材Fz8固定側レール1(固定側レール取り付け基台10)より抜き出す。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上詳述したように、本発明は、貴金属の陳列ケース内から陳列トレーを取り出し際スライドレールとして使用することができ、広範囲で利用可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 固定側レール
11、11 上下折曲縁
100 スライドレール
2 移動側レール
21、21 上下折曲縁
3 ボールリテーナ
313 ストッパー突部
5 抜け止め解除用レバー
51 取り付け用基板
52 弾性変移部
6 変移ストッパー部
61 操作部
63 ストッパー部