(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者の検討によれば、特許文献1には、内燃機関の燃焼室を画成する壁部の温度を検出する壁部温度センサの異常を検出することは何等開示、示唆されていない。特にサーミスタを用いた壁部温度センサでは、電源電圧側(ハイ側)や接地電位側(ロー側)へのショートによる電圧張り付き(ハイ/ロー故障)の検出を行うことになるが、このようにハイ/ロー故障のみを検出した場合、耐久劣化や腐食、他ハーネスへのショート等、中間電位で異常出力している状態は検出できない。また、壁部温度センサの出力に基づいて点火補正や内燃機関保護制御に移行するため、センサ出力が誤っていると内燃機関の運転状態が適切に制御されない可能性がある。
【0006】
本発明は、以上の検討を経てなされたものであり、簡便な構成で、内燃機関の運転状態をも考慮して、内燃機関の代表温度及び内燃機関の燃焼室を画成する壁部の温度を検出する検出系のショート以外の異常をも検出することができて、かかる検出系を含む内燃機関の制御システムの異常をより正確に判定することができ、併せて、内燃機関の運転状態を適切なものとすることができる内燃機関制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の目的を達成するべく、本発明は、内燃機関の燃焼室を画成する壁部の温度と、前記内燃機関の代表温度と、に基づき、前記内燃機関の運転状態を制御する制御部を有する内燃機関制御装置において、前記制御部は、前記内燃機関の暖機完了を判定した状態で、前記壁部の前記温
度に基づいて、前記内燃機関の代表温度及び前記壁部の前記温度を検出する検出系を含む前記内燃機関の制御システムの異常を判定し、前記暖機完了の判定を、前記代表温度及び代表温度計時部が計時する前記内燃機関の始動時からの計時時間に基づいて行い、前記内燃機関の運転状態が前記内燃機関が発生する熱量が相対的に少ない運転状態にあると判定したときは、前記計時時間を保持又は短縮させることを特徴とすることを第1の局面とする。
【0008】
本発明は、第1の局面に加えて、前記制御部は、前記内燃機関の前記暖機完了を判断する際に、前記代表温度が第1所定温度以上であることを判断条件とし、前記内燃機関の前記暖機完了を判断した状態で、前記壁部の前記温度が第2所定温度を超えていない場合に、前記検出系の異常と判定することを第2の局面とする。
【0009】
本発明は、第2の局面に加えて、前記第2所定温度は、前記第1所定温度より高いことを第3の局面とする。
【0010】
本発明は、第1の局面に加えて、前記制御部は、前記壁部の前記温度と前記代表温度との差分又は比率に対応する値が所定値以上となったときに、異常判定用計時部の計時を開始し、前記異常判定用計時部の所定時間の経過時に前記値が前記所定値以上であるときは、前記制御システムの異常と判定することを第4の局面とする。
【発明の効果】
【0011】
以上の本発明の第1の局面にかかる内燃機関制御装置によれば、制御部が、内燃機関の暖機完了を判定した状態で、壁部の温
度に基づいて、内燃機関の代表温度及び壁部の温度を検出する検出系を含む内燃機関の制御システムの異常を判定し、暖機完了の判定を、代表温度及び代表温度計時部が計時する内燃機関の始動時からの計時時間に基づいて行い、内燃機関の運転状態がその内燃機関が発生する熱量が相対的に少ない運転状態にあると判定したときは、計時時間を保持又は短縮させるものであるので、簡便な構成で、内燃機関の運転状態をも考慮して、内燃機関の代表温度及び内燃機関の燃焼室を画成する壁部の温度を検出する検出系の異常を、ショート以外の異常であっても検出することができて、かかる検出系を含む内燃機関の制御システムの異常をより正確に判定することができ、併せて、内燃機関の運転状態を適切なものとすることができる。
【0012】
本発明の第2の局面にかかる内燃機関制御装置によれば、制御部が、内燃機関の暖機完了を判断する際に、代表温度が第1所定温度以上であることを判断条件とし、内燃機関の暖機完了を判断した状態で、壁部の温度が第2所定温度を超えていない場合に、検出系の異常と判定するものであるので、簡便な構成で、内燃機関の代表温度及び内燃機関の燃焼室を画成する壁部の温度を検出する検出系の異常をより正確に検出することができる。
【0013】
本発明の第3の局面にかかる内燃機関制御装置によれば、第2所定温度が、第1所定温度より高くなるように設定されるものであるため、より信頼性が高い態様で、内燃機関の代表温度及び内燃機関の燃焼室を画成する壁部の温度を検出する検出系の異常を判定することができ、内燃機関の運転状態に不要な影響が生じることを抑制することができる。
【0014】
本発明の第4の局面にかかる内燃機関制御装置によれば、制御部が、壁部の温度と代表温度との差分又は比率に対応する値が所定値以上となったときに、異常判定用計時部の計時を開始し、異常判定用計時部の所定時間の経過時に値が所定値以上であるときは、制御システムの異常と判定するものであるので、より信頼性が高い態様で、内燃機関の代表温度及び内燃機関の燃焼室を画成する壁部の温度を検出する検出系を含む内燃機関の制御システムの異常を判定することができ、内燃機関の運転状態に不要な影響が生じることを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を適宜参照して、本発明の実施形態における内燃機関制御装置につき、詳細に説明する。
【0017】
[構成]
まず、
図1を参照して、本実施形態における内燃機関制御装置の構成について説明する。
【0018】
図1は、本実施形態における内燃機関制御装置の構成を示すブロック図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態における内燃機関制御装置1は、電子制御システムSに含まれて二輪自動車等の車両に搭載され、車両の内燃機関の運転状態を制御する。本実施形態における内燃機関制御装置1は、スロットル開度センサ20、クランク角センサ30、壁部温度センサ40、及び冷却水温センサ50に電気的に接続されたECU(Electronic Control Unit)60を備えている。なお、説明の便宜上、車両や内燃機関の構成についての具体的な図示は、省略している。また、内燃機関に適用される燃料としては、原理的には、現在入手可能なものが適用でき、例えば、ガソリン、エタノール及びメタノール等の種別を問わず、ガソリンのオクタン価の種別も問わないものである。
【0020】
スロットル開度センサ20は、内燃機関のスロットル装置の本体部に装着され、スロットルバルブの開度をスロットル開度として検出し、このように検出したスロットル開度を示す電気信号をECU60に入力する。
【0021】
クランク角センサ30は、内燃機関において、リラクタの外周面に形成されている歯部に対向した態様でシリンダブロックの下部に組み付けられたロアケース等に装着され、クランクシャフトの回転に伴って回転する歯部を検出することによって、クランクシャフトの回転速度を内燃機関の回転速度として検出する。クランク角センサ30は、このように検出した内燃機関の回転速度を示す電気信号をECU60に入力する。
【0022】
壁部温度センサ40は、内燃機関の燃焼室を画成する部材、つまりシリンダブロック又はシリンダヘッドの壁部に装着されてその壁部の温度を検出し、このように検出した壁部の温度を示す電気信号をECU60に入力する。
【0023】
冷却水温センサ50は、内燃機関の冷却水通路に配置された態様でシリンダブロックに装着され、冷却水通路内を流通する冷却水の温度を検出し、このように検出した冷却水の温度を示す電気信号をECU60に入力する。
【0024】
ECU60は、車両が備えるバッテリからの電力を利用して動作する。ECU60は、A/D変換回路601a、601b及び601c、波形整形回路602、スロットル開度算出部603、壁部温度算出部604、冷却水温算出部605、運転状態制御部606、並びに駆動回路607a、607b及び607cを備えている。なお、スロットル開度算出部603、壁部温度算出部604、冷却水温算出部605、及び運転状態制御部606は、ECU60が備えるCPU(Central Processing Unit )等の演算処理装置が図示を省略するメモリから必要な制御プログラム及び制御データを読み出して内燃機関の運転状態を制御する際の機能ブロックとして示している。
【0025】
A/D変換回路601aは、スロットル開度センサ20から入力されたアナログ形態の電気信号をデジタル形態に変換してスロットル開度算出部603に入力する。
【0026】
A/D変換回路601bは、壁部温度センサ40から入力されたアナログ形態の電気信号をデジタル形態に変換して壁部温度算出部604に入力する。
【0027】
A/D変換回路601cは、冷却水温センサ50から入力されたアナログ形態の電気信号をデジタル形態に変換して冷却水温算出部605に入力する。
【0028】
波形整形回路602は、クランク角センサ30から入力された電気信号に対して整形処理を施した後に電気信号を運転状態制御部606に入力する。
【0029】
スロットル開度算出部603は、A/D変換回路601aから入力された電気信号を用いてスロットル開度を算出し、このようにスロットル開度算出部603が算出したスロットル開度は、運転状態制御部606で用いられる。
【0030】
壁部温度算出部604は、A/D変換回路601bから入力された電気信号を用いて内燃機関の燃焼室を画成する壁部の温度を算出し、このように壁部温度算出部604が算出した壁部の温度は、運転状態制御部606で用いられる。かかる壁部の温度は、内燃機関の燃焼状態を直接的に反映する内燃機関の温度であって、内燃機関のシリンダ内で発生する発生熱量を直接的に反映した温度であると評価され得るものである。
【0031】
冷却水温算出部605は、A/D変換回路601cから入力された電気信号を用いて冷却水の温度を内燃機関の温度(内燃機関の代表温度)として算出し、このように冷却水温算出部605が算出した内燃機関の代表温度は、運転状態制御部606で用いられる。かかる冷却水の温度は、内燃機関の温度を代表的に示す内燃機関の代表温度であって、内燃機関のシリンダを冷却する冷却熱量を反映した温度であると評価され得るものである。なお、かかる内燃機関の代表温度としては、冷却水の温度の他に、内燃機関の潤滑油の温度等を用いてもよい。
【0032】
運転状態制御部606は、差分温度算出部606a、運転状態判断部606b、センサ異常判定部606c、システム異常判定部606d、代表温度計時部606e、暖機判断部606f、及び差分温度計時部606gを備え、内燃機関制御装置1全体の動作を制御すると共に、内燃機関の代表温度及び内燃機関の燃焼室を画成する壁部の温度に基づいて、内燃機関の運転状態を制御する。運転状態制御部606及びこれら各部の機能の詳細については後述する。
【0033】
駆動回路607aは、運転状態制御部606から入力された制御信号に従ってスロットルモータ70を駆動することによってスロットル開度を制御する。
【0034】
駆動回路607bは、運転状態制御部606から入力された制御信号に従って点火栓80を駆動することによって内燃機関の点火時期を制御する。
【0035】
駆動回路607cは、運転状態制御部606から入力された制御信号に従って燃料噴射弁90を駆動することによって内燃機関の燃料噴射量を制御する。
【0036】
なお、スロットル開度算出部603、壁部温度算出部604、冷却水温算出部605、及び運転状態制御部606に加え、差分温度算出部606a、運転状態判断部606b、センサ異常判定部606c、システム異常判定部606d、代表温度計時部606e、暖機判断部606f、及び差分温度計時部606gも、運転状態制御部606内の機能ブロックとして示している。
【0037】
このような構成を有する内燃機関制御装置1は、以下に示す異常判定処理を実行することによって、内燃機関の代表温度及び内燃機関の燃焼室を画成する壁部の温度を検出する検出系を含む内燃機関の電子制御システムSの異常を判定する。以下、
図2から
図4をも更に参照して、この異常判定処理を実行する際の内燃機関制御装置1の動作について、詳細に説明する。
【0038】
[異常判定処理]
図2は、本実施形態における内燃機関制御装置1が実行する異常判定処理の流れを示すフローチャートである。
図3(a)は、本実施形態における内燃機関制御装置1が実行する異常判定処理の流れを示す一例としてのタイムチャートであり、
図3(b)は、
図3(a)の後に本実施形態における内燃機関制御装置1が実行する異常判定処理の流れを示す一例としてのタイムチャートである。また、
図4(a)は、本実施形態における内燃機関制御装置1が実行する異常判定処理での計時後時間の調整例を示す図であり、
図4(b)は、本実施形態における内燃機関制御装置1が実行する異常判定処理での計時後時間の別の調整例を示す図である。
【0039】
図2に示すフローチャートは、車両のイグニッションスイッチがオフ状態からオン状態に切り替えられてECU60が起動したタイミングで開始となり、異常判定処理はステップS1の処理に進む。かかる異常判定処理は、ECU60が起動状態である間、メモリから必要な制御プログラム及び制御データを読み出して所定の制御周期毎に繰り返し実行される。
【0040】
ここで、
図3(a)及び
図4において、車両のイグニッションスイッチがオフ状態からオン状態に切り替えられてECU60が起動したタイミングは、時刻t=t1で示される。
【0041】
ステップS1の処理では、運転状態制御部606が、冷却水温算出部605によって算出された温度である内燃機関の代表温度TWが所定代表温度以上であるか否かを判別する。判別の結果、内燃機関の代表温度TWが所定代表温度未満である場合(ステップS1:No)、運転状態制御部606は、今回の一連の異常判定処理を終了する。一方、内燃機関の代表温度TWが所定代表温度以上である場合には(ステップS1:Yes)、運転状態制御部606は、異常判定処理をステップS2の処理に進める。
【0042】
ここで、
図3(a)において、内燃機関の代表温度TWはラインL1で示されて、それが所定代表温度に到達するタイミングは、時刻t=t1’で示される。
【0043】
ステップS2の処理では、運転状態判断部606bが、現在の内燃機関の運転状態がその内燃機関が発生する熱量が相対的に少ない運転状態であるか否かを判別することによって、代表温度計時部606eが計時する内燃機関始動時からの経過時間(計時後時間TM)を調整する必要があるか否かを判別する。ここで、内燃機関の運転状態がその内燃機関が発生する熱量が相対的に少ない運転状態は、内燃機関が停止して燃焼していない運転状態をも含み、かかる内燃機関の運転状態がその内燃機関が発生する熱量が相対的に少ない運転状態としては、例えば、内燃機関の運転の停止状態、燃料カットでの運転状態、点火カットでの運転状態、及び所定スロットル開度以下での運転状態が挙げられる。また、代表温度計時部606eは、減算タイマとして例示している。判別の結果、現在の内燃機関の運転状態が、内燃機関の運転状態がその内燃機関が発生する熱量が相対的に少ない運転状態にない場合(ステップS2:No)、運転状態判断部606bは、計時後時間TMを調整する必要はないと判断し、異常判定処理をステップS4の処理に進める。一方、現在の内燃機関の運転状態が、内燃機関の運転状態がその内燃機関が発生する熱量が相対的に少ない運転状態にある場合には(ステップS2:Yes)、運転状態判断部606bは、冷却水温の低下に伴う壁部温度センサ40の低温度検出異常を回避するために計時後時間TMを調整する必要があると判断し、異常判定処理をステップS3の処理に進める。
【0044】
ステップS3の処理では、運転状態制御部606が、内燃機関の運転状態がその内燃機関が発生する熱量が相対的に少ない運転状態にある期間に相当する時間長さに応じて、代表温度計時部606eが計時する計時後時間TMの計時処理を停止又は短縮することによって、計時後時間TMを調整する。具体的には、運転状態判断部606bは、内燃機関の運転状態がその内燃機関が発生する熱量が相対的に少ない運転状態を内燃機関の燃料カットでの運転状態であるとすれば、
図4(a)に示すように、内燃機関の燃料カットでの運転状態の終了時(時刻t=t3)に計時後時間TMを内燃機関の燃料カットでの運転状態の開始時の計時後時間TM1に戻す、又は
図4(b)に示すように、内燃機関の燃料カットでの運転状態の開始時(時刻t=t2)から内燃機関の燃料カットでの運転状態の終了時(時刻t=t3)までの期間、計時後時間TMを内燃機関の燃料カットでの運転状態の開始時の計時後時間TM1に保持する例が挙られる。なお、
図4(a)及び
図4(b)に示す例において、調整後の計時後時間TMの値を内燃機関の燃料カットでの運転状態の開始時の計時後時間TM1に相当する値から増加又は減少させてもよい。これにより、ステップS3の処理は完了し、異常判定処理はステップS4の処理に進む。
【0045】
ステップS4の処理では、暖機判断部606fが、計時後時間TMが内燃機関の始動時から所定時間以上経過したか否かを判別する。判別の結果、計時後時間TMが内燃機関の始動時から所定時間以上経過していない場合(ステップS4:No)、暖機判断部606fは、内燃機関の暖機が完了していないと判断し、今回の一連の異常判定処理を終了する。一方、計時後時間TMが内燃機関の始動時から所定時間以上経過した場合には(ステップS4:Yes)、暖機判断部606fは、内燃機関の暖機が完了したと判断し、異常判定処理をステップS5の処理に進める。
【0046】
ここで、
図3(a)及び
図4において、計時後時間TMが内燃機関の始動時から所定時間経過するタイミングは、時刻t=t4で示される。
【0047】
ステップS5の処理では、運転状態制御部606が、壁部温度算出部604によって算出された壁部の温度TCCが所定壁部温度以上であるか否かを判別する。ここで、所定壁部温度は、外気温が低い中で低速走行中(走行風があたる状態)等、内燃機関の運転中で最も壁部温度センサ40が温まらない条件に基づいて設定されることが好ましい。また、壁部の温度TCCは、内燃機関の燃焼状態を直接的に反映する内燃機関の温度であって、内燃機関のシリンダ内で発生する発生熱量を直接的に反映した温度であると評価され得るものであることを考慮して、所定壁部温度は、所定代表温度より高い温度に設定されることが好ましい。判別の結果、壁部の温度TCCが所定壁部温度以上である場合(ステップS5:Yes)、運転状態制御部606は、今回の一連の異常判定処理を終了する。一方、壁部の温度TCCが所定壁部温度未満である場合には(ステップS5:No)、運転状態制御部606は、異常判定処理をステップS6の処理に進める。
【0048】
ここで、
図3(a)において、壁部の温度TCCの一例を示すラインL2では、時刻t=t4の前に壁部の温度TCCが所定壁部温度に到達しているが、壁部の温度TCCの別の例を示すラインL3では、時刻t=t4の時点で壁部の温度TCCが所定壁部温度に到達していない。
【0049】
ステップS6の処理では、センサ異常判定部606cが、壁部温度センサ40及び冷却水温センサ50並びにこれらの電気経路を含む検出系のいずれかに、つまり内燃機関の代表温度及び内燃機関の燃焼室を画成する壁部の温度を検出する検出系のいずれかに異常が発生していると判定する。ここで、また、内燃機関が多気筒の場合、気筒毎に壁部温度センサを搭載するために、気筒間の壁部温度の温度差を考慮して、かかる異常を検出することが好ましい。また、内燃機関の気筒間の比較対象は、気筒間の温度差が少ない気筒同士で比較することが好ましい。例えば、内燃機関が直列4気筒である場合、各気筒における通常状態の温度差が少ない1番気筒及び4番気筒間、並びに2番気筒及び3番気筒間で比較することが好ましい。これにより、ステップS6の処理は完了し、異常判定処理はステップS7の処理に進む。
【0050】
ここで、
図3(a)において、壁部の温度TCCの一例を示すラインL2では、時刻t=t4の前に壁部の温度TCCが所定壁部温度に到達しているため、壁部温度センサ40及び冷却水温センサ50並びにこれらの電気経路を含む検出系のいずれかに異常が発生していると判定されることはないが、壁部の温度TCCの別の例を示すラインL3では、時刻t=t4の時点で壁部の温度TCCが所定壁部温度に到達していないため、壁部温度センサ40及び冷却水温センサ50並びにこれらの電気経路を含む検出系のいずれかに異常が発生していると判定されることになる。
【0051】
ステップS7の処理では、運転状態制御部606が、代表温度TWが所定代表温度以上であるか否かを判別する。判別の結果、代表温度TWが所定代表温度未満である場合(ステップS7:No)、運転状態制御部606は、今回の一連の異常判定処理を終了する。一方、代表温度TWが所定代表温度以上である場合には(ステップS7:Yes)、運転状態制御部606は、異常判定処理をステップS8の処理に進める。
【0052】
ここで、典型的には、
図3(a)において、内燃機関の代表温度TWは、時刻t=t1’で既に所定代表温度に到達しているため、ステップS7の処理の実行時点では、内燃機関の代表温度TWは、時刻t=t1’で既に所定代表温度以上となっている。
【0053】
ステップS8の処理では、運転状態制御部606が、差分温度算出部606aが算出した代表温度TWと壁部の温度TCCとの差分値である差分温度TCCDが所定差分温度以上であるか否かを判別する。判別の結果、差分温度TCCDが所定差分温度以上である場合(ステップS8:Yes)、運転状態制御部606は、異常判定処理をステップS9の処理に進める。一方、差分温度TCCDが所定差分温度未満である場合には(ステップS8:No)、運転状態制御部606は、今回の一連の異常判定処理を終了する。なお、かかる場合、差分温度算出部606aが算出した代表温度TWと壁部の温度TCCとの差分値である差分温度TCCDに代えて、差分温度算出部606aが算出した代表温度TWと壁部の温度TCCとの比率を用いてもよい。
【0054】
ここで、
図3(b)において、差分温度TCCDはラインL4で示されて、それが所定差分温度に到達するタイミングは、時刻t=t5で示される。
【0055】
ステップS9の処理では、運転状態制御部606が、差分温度計時部606gが差分温度TCCDが所定差分温度以上になったタイミングで計時を開始した計時後時間TM’が所定時間以上経過したか否かを判別する。判別の結果、差分温度計時部606gが計時する計時後時間TM’が所定時間以上経過していない場合(ステップS9:No)、運転状態制御部606は、今回の一連の異常判定処理を終了する。一方、差分温度計時部606gが計時する計時後時間TM’が所定時間以上経過している場合には(ステップ9:Yes)、運転状態制御部606は、異常判定処理をステップS10の処理に進める。
【0056】
ここで、
図3(b)において、計時後時間TM’が差分温度TCCDが所定差分温度以上になったタイミングから所定時間経過するタイミングは、時刻t=t6で示される。
【0057】
ステップS10の処理では、システム異常判断部606dが、内燃機関の電子制御システムSに異常が発生したと判定し、異常が発生したことを運転者等に報知すると共に、運転状態制御部606が、必要な異常対応処理を実行する。これにより、ステップS10の処理は完了し、今回の一連の異常判定処理は終了する。
【0058】
ここで、
図3(b)において、差分温度TCCDを示すラインL4では、時刻t=t6の時点でも所定差分温度以上になっているため、内燃機関の電子制御システムSに異常が発生していると判定されることになる。
【0059】
以上の説明から明らかなように、本実施形態における内燃機関制御装置1では、制御部606が、内燃機関の暖機完了を判定した状態で、壁部の温度と代表温度とに基づいて、内燃機関の代表温度及び壁部の温度を検出する検出系を含む内燃機関の制御システムSの異常を判定し、暖機完了の判定を、代表温度及び代表温度計時部が計時する内燃機関の始動時からの計時時間に基づいて行い、内燃機関の運転状態がその内燃機関が発生する熱量が相対的に少ない運転状態にあると判定したときは、計時時間を保持又は短縮させるものであるので、簡便な構成で、内燃機関の運転状態をも考慮して、内燃機関の代表温度及び内燃機関の燃焼室を画成する壁部の温度を検出する検出系の異常を、ショート以外の異常であっても検出することができて、かかる検出系を含む内燃機関の制御システムSの異常をより正確に判定することができ、併せて、内燃機関の運転状態を適切なものとすることができる。
【0060】
また、本実施形態における内燃機関制御装置1では、制御部606が、内燃機関の暖機完了を判断する際に、代表温度が第1所定温度以上であることを判断条件とし、内燃機関の暖機完了を判断した状態で、壁部の温度が第2所定温度を超えていない場合に、検出系の異常と判定するものであるので、簡便な構成で、内燃機関の代表温度及び内燃機関の燃焼室を画成する壁部の温度を検出する検出系の異常をより正確に検出することができる。
【0061】
また、本実施形態における内燃機関制御装置1では、第2所定温度が、第1所定温度より高くなるように設定されるものであるため、より信頼性が高い態様で、内燃機関の代表温度及び内燃機関の燃焼室を画成する壁部の温度を検出する検出系の異常を判定することができ、内燃機関の運転状態に不要な影響が生じることを抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態における内燃機関制御装置1では制御部606が、壁部の温度と代表温度との差分又は比率に対応する値が所定値以上となったときに、異常判定用計時部の計時を開始し、異常判定用計時部の所定時間の経過時に値が所定値以上であるときは、制御システムSの異常と判定するものであるので、より信頼性が高い態様で、内燃機関の燃焼室を画成する壁部の温度を検出する検出系を含む内燃機関の制御システムSの異常を判定することができ、内燃機関の運転状態に不要な影響が生じることを抑制することができる。
【0063】
なお、本実施形態では、差分温度TCCDに対応する値に基づいて制御を行ったが、壁部の温度と代表温度との比率に対応する値に基づいて同様の制御を行ってもよい。
【0064】
なお、本発明は、部材の種類、形状、配置、個数等は前述の実施形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。