【実施例】
【0076】
試薬および溶媒は全て、標準的な販売元から入手し、特記しない限り、受領したままの状態で使用した。
【0077】
1Hスペクトルおよび
13Cスペクトルを、Varian FT−NMR 400またはVarian FT−NMR 500(Varian、California USA)を用いて記録した。
1H−NMRスペクトルは、400または500MHzで取得し、
13C−NMRスペクトルは101または125MHzで取得した。NMRスペクトルは全て、特記しない限り25℃で記録した。報告された化学シフト(百万分率において)は、残留溶媒シグナルに関して記載されている。
【0078】
非タンパク質サンプルのESI−MSを、Agilent 6510 ESI−TOF LC/MS Mass Spectrometer(Agilent、California USA)で記録した。
【0079】
分析用逆相HPLCをAgilent 1100 Seriesで行った。Agilent 6220 ESI−TOF LC/MS Mass Spectrometerを、Agilent 1200 LCシステムに連結させて(Agilent、PaloAlto、CA)使用して、タンパク質サンプルを分析した。全てのデータが得られ、参照質量をデュアルスプレーエレクトロスプレーイオン化(ESI)源によって補正した。データ取得はAgilent Mass Hunter AcquisitionソフトウェアバージョンB.02.01(B2116.30)を使用して行った。イオン化モード:エレクトロスプレーイオン化;乾燥ガス流量:7L/分;ネブライザー:35psi;乾燥ガス温度:325℃;キャピラリー電圧(Vcap):4000V;フラグメンター:300V;スキマー:65V;OCT RFV:250V;得られたスキャン範囲:300〜3200m/z;内部基準イオン:陽イオンモード=m/z=121.050873および922.009798。
【0080】
タンパク質の脱塩およびクロマトグラフィーの分離を、Agilent Poroshell C18 2.1×75mm、5μmカラムを使用し、5%(v/v)アセトニトリルを送液してなくなるまで(0〜5分)使用して、行った。サンプルを脱塩した後、流れをESI源に戻し入れ、次に(5%(v/v)〜100%(v/v))アセトニトリル/0.1%ギ酸を用いて8分にわたり0.25mL/分で勾配溶離を行った。Mass HunterバージョンB.06.00をBioConfirmソフトウェアとともに使用し、最大エントロピータンパク質デコンボリューションアルゴリズム;質量ステップ(mass step)1Da;ベースライン係数3.00;不確定に設定したピーク幅を用いて分析を行った。
【0081】
サイズ排除HPLCを、Shimadzu SCL−10A VP/LC−10 AT VPシステムとShimadzu SPD−10A VP UV検出器とで行い、次いで放射線検出器(前置増幅器であるOrtec 925−SCINT ACE mate前置増幅器を接続したOrtecモデル276光電子増倍管ベース、BIAS supply and SCA、Bicron 1M 11/2光電子増倍管)で行った。Biosuite 125 HR SEC 5μm 7.8×300mmカラムを、流速0.6mL/分で、溶離液として5%イソプロパノールを含むダルベッコPBSとともに使用した。Raytest Rita−Star TLCスキャナーを使用してラジオ−iTLCを分析した。
【0082】
DFO−スクアルアミド(DFOSq)の合成
【化7】
デスフェリオキサミンBメシラート(0.20g、0.31mmol)とDIPEA(0.05mL、0.3mmol)との混合物をEtOH(6mL)中で50℃において撹拌した。1時間後、EtOH(9mL)中3,4−ジエトキシ−3−シクロブテン−1,2−ジオン(0.1mL、0.7mmol)を添加した。50℃でさらに30分撹拌してから、溶媒を減圧留去し、残渣をEtOH(3×10mL)でトリチュレートした。生成物を真空乾燥して、DFOSqを白色粉末(0.17g、83%)として得た。
【0083】
1H NMR(d
6−DMSO,500MHz)δ 9.61(s,6H),8.77(t,J=5.8Hz,1H),8.58(t,J=5.7Hz,1H),7.77(d,J=4.7Hz,5H),4.64(p,J=6.9Hz,5H),3.45(t,J=7.0Hz,3H),3.38(s,5H),3.26(dd,J=13.0,6.6Hz,1H),3.00(dd,J=12.7,6.4Hz,10H),2.56(d,J=6.5Hz,1H),2.26(t,J=7.2Hz,1H),1.96(s,7H),1.50(d,J=6.6Hz,3H),1.42−1.31(m,3H),1.24(ddd,J=20.2,14.7,8.0Hz,2H);
13C NMR(d
6−DMSO,101MHz)δ 189.39,189.30,182.05,181.84,176.93,176.47,172.58,172.17,171.97,171.30,170.13,70.18,68.77,68.73,47.09,47.01,46.79,43.68,43.39,39.52,38.42,30.10,29.90,29.60,28.82,27.56,26.04,25.82,23.50,22.92,20.35,15.64;HRMS ESI[M+H
+]:685.3768,(C
31H
53N
6O
11)
+の計算値:685.3767,[M+Na
+]:707.3589,(C
31H
52NaN
6O
11)
+の計算値:707.3586。
【0084】
放射標識
Na
2CO
3水溶液(2M、4.5μL)を、
89Zrの1Mシュウ酸(10MBq、10μL)溶液に、pHが増加して10になるまで添加した。次いでHEPES緩衝液(0.5M、pH7、50μL)を添加し、この溶液を5分間静置した。中性pHを確認し、次いでDFOSqのDMSO(1μL、0.18μmol)溶液を添加した。1時間後、反応完了をラジオ−iTLC(シリカ注入ガラス繊維プレート、20mM pH5クエン酸緩衝液、生成物R
f=0)およびSEHPLC(BioSuite 125、5μm HR SEC 7.8×300mmカラム、溶離液として5%i−PrOHを含む20mM pH7ダルベッコPBS、0.6mL/分、生成物保持時間21.80分)によって確認した。
【0085】
ラジオ−iTLC
対照(即ちDFOSqなし)のクロマトグラムが
図4に示されている。これは、DFOSqが存在しない場合、ジルコニウムを含有する溶液が溶媒先端とともに動く(予測どおり)ことを示している。
【0086】
89Zr DFOSq錯体のクロマトグラム(
89Zrの添加から60分後)が
図5に示されている。これは、ジルコニウムがDFOSqに錯体化されているため、この場合はジルコニウムが基線(即ち「原点」)に保持されていることを示している。
【0087】
サイズ排除HPLC
対照のUV−Visクロマトグラム(280および254nmの2つの異なる吸収波長での)および放射線クロマトグラム(検出器としてガイガー計数管を使用して取得)が
図6に示されている。
【0088】
89Zr DFOSq錯体のUV−Visクロマトグラムおよび放射線クロマトグラム(
89Zrの添加から78時間後)が
図7に示されている。
【0089】
89Zr DFOSq−cRGDfKの合成および分析
DFOSq(5mg、7μmol)のDMSO(35μL)溶液をpH9ホウ酸緩衝液(0.5M、965μL)中cRGDfK(3mg、5μmol)に添加した。反応混合物を室温で5日間静置し、次いでセミ分取HPLC(ProteCol C18カラム)で精製してDFOSq−cRGDfKを白色固体(0.002g、32%)として得た。
【0090】
HRMS ESI[M+H
+]:604.3196、(C
27H
42N
9O
7)
+の計算値:604.3202、[M+2H
+]:302.6637、(C
27H
43N
9O
7)
2+の計算値:302.6638。
【0091】
放射標識するため、Na
2CO
3水溶液(2M、4.5μL)を、
89Zrの1Mシュウ酸(10MBq、10μL)溶液に、pHが増加して10になるまで添加した。次いでHEPES緩衝液(0.5M、pH7、50μL)を添加し、この溶液を5分間静置した。中性pHを確認し、次いでDFOSq−cRGDfKのH
2O溶液(10μL、0.008μmol)を添加した。70分後、反応完了をラジオ−iTLC(シリカ注入ガラス繊維プレート、溶離液として0.1M pH6クエン酸緩衝液、生成物R
f=0)によって確認した。
【0092】
89Zr標識DFOSq−cRGDfKのラジオ−iTLCクロマトグラム(
89Zrの添加から60分後に取得)が
図8に示されている。
【0093】
89Zr DFOSq−トランスフェリンの合成および分析
DFOSq(0.17mg、0.25μmol)のDMSO/H
2O(1:10、26μL)溶液をヒトホロ−トランスフェリン(1.0mg、0.013μmol)のpH9ホウ酸緩衝液(0.5M、974μL)溶液に添加した。反応混合物を室温で17時間静置し、次いでAmicon 10kDa遠心分離フィルターを使用して濾過した。粗生成物をNaCl溶液(0.9%w/v、2×400μL)で洗浄し、濃縮物を回収してDFOSq−トランスフェリン(1.25mg、0.012μmol)を得た。生成物をLCMS(Agilent Poroshell C18 5μm 2.1 75mmカラム)で分析し、その分析により、トランスフェリン(Tf)と2〜8個のキレーターとの混合物および平均4.5個のキレーター/タンパク質が示された(
図9を参照)。
【0094】
放射標識するために、Na
2CO
3水溶液(2M、10μL)を、
89Zrの1Mシュウ酸(1.2MBq、20μL)溶液に、pHが増加して10になるまで添加した。次いでHEPES緩衝液(0.5M、pH7、30μL)を添加し、この溶液を5分間静置した。中性pHを確認し、次いでDFOSq−Tfの0.9%NaCl(2μL、100μg)溶液を添加した。20分後、反応が完了し、これをラジオ−iTLC(シリカ注入ガラス繊維プレート、溶離液として0.1M pH6クエン酸緩衝液、生成物Rf=0)およびSEHPLC(BioSuite 125、5μm HR SEC 7.8×300mmカラム、溶離液として5%iPrOHを含む20mM pH7ダルベッコPBS、生成物保持時間12.56分)によって確認した。
【0095】
89Zr標識DFOSq−Tfのラジオ−iTLCクロマトグラム(
89Zrの添加から20分後に取得)が
図10に示されている。
【0096】
89Zr標識DFOSq−TfのUV−Visクロマトグラムおよび放射線クロマトグラム(
89Zrの添加から20分後)が
図11に示されている。
【0097】
BT474腫瘍担持マウスにおける
89Zr DFOSq−ハーセプチンの合成および分析 − 試験1
DFOSq(0.46mg、0.67μmol)のDMSO/H
2O(1:10、228μL)溶液を臨床グレードのトラスツズマブ(5.0mg、0.034μmol)の溶液に添加し、反応混合物を周囲温度でpH9ホウ酸緩衝液(0.5M、総体積1.0mL)に入れて静置した。16時間後、この溶液を、Amicon 50kDa遠心分離フィルターを使用して濃縮した。次いでフィルターを使用して、粗生成物をNaCl/DMSO溶液(0.9%w/v NaCl、5%DMSO、4×400μL)で洗浄し、次いでNaCl溶液(0.9%w/v、400μL)で洗浄し、濃縮物を回収して、DFOSq−ハーセプチン(1.4mg、0.0093μmol、28%)を得た。生成物をLCMS(Agilent Poroshell C18 5μm 2.1 75mmカラム)で分析し、その分析により、ハーセプチン(Herc)と2〜7個のキレーターとの混合物および平均4.5個のキレーター/抗体が示された(
図12を参照)。
【0098】
放射標識するために、Na
2CO
3水溶液(2M、25μL)を、
89Zrの1Mシュウ酸(55MBq、75μL)溶液に、pHが増加して10になるまで添加した。次いでHEPES緩衝液(0.5M、pH7、100μL)を添加し、この溶液を5分間静置した。中性pHを確認し、次いでDFOSq−Hercの0.9%NaCl(4μL、225μg)溶液を添加した。25分後、反応完了をラジオ−iTLC(シリカ注入ガラス繊維プレート、溶離液として0.1M pH6クエン酸緩衝液、生成物R
f=0)によって確認した。反応混合物を、PD−10サイズ排除カラムにおいて、溶離液としてpH7のPBS(20mM、5%ゲンチジン酸ナトリウムを含む)を使用して精製した。カラム充填後、素通り画分を廃棄し、第1の画分(1.5mL、45MBq)を回収した。生成物をラジオ−iTLCおよびSEHPLC(BioSuite 125、5μm HR SEC 7.8×300mmカラム、溶離液として5%iPrOHを含む20mM pH7ダルベッコPBS、生成物保持時間12.55分)で分析した。
【0099】
89Zr標識DFOSq−Hercのラジオ−iTLCクロマトグラム(
89Zrの添加から25分後に取得)が
図13に示されている。
【0100】
精製した
89Zr標識DFOSq−Hercのラジオ−iTLCクロマトグラムが
図14 に示されている。
【0101】
非放射性(即ち非標識の)DFOSq−HercのUV−Visクロマトグラムおよび放射線クロマトグラムが
図15に示されている。
【0102】
89Zr標識DFOSq−HercのUV−Visクロマトグラムおよび放射線クロマトグラム(精製から24時間後に取得)が
図16に示されている。
【0103】
89Zr DFOSq−ハーセプチンを使用したマウスイメージング
5%ゲンチジン酸ナトリウム(200μL、6.0MBqずつ)を含む
89ZrDFOSq−ハーセプチンの20mM PBS(pH7)溶液を2用量調製し、BT474腫瘍担持マウスに尾静脈注射によって投与した。PET画像を、投与後22時間、46時間、94時間および8日の間隔で取得した(
図17および18を参照)。
【0104】
下表(表1)に各マウスの各時点での標準取込値(SUV)を記載している。
【0105】
【表1】
【0106】
比較試験も行い、腫瘍イメージング剤としての本発明の化合物(特に
89Zr(DFO−スクアラート−トラスツズマブ))の有効性を、他の2種のイメージング剤(
89Zr(DFO−マレイミド−トラスツズマブ)および
9ZrCl)と比較した。
89Zr(DFO−マレイミド−トラスツズマブ)は、50倍過剰のDFO−マレイミドを水に溶解し、これをPBS緩衝液中トラスツズマブ(ハーセプチン)に添加して調製した。未反応のDFO−マレイミドをスピン濾過によって除去し、精製したコンジュゲート体を、DFO−スクアラートについて上に記載したように
89Zr(ox)
4で放射標識した。
【0107】
HER2陽性腫瘍を有するマウスに、5%ゲンチジン酸ナトリウム(200μL、6.0MBqずつ)を伴う、
89Zr(DFO−スクアラート−トラスツズマブ)、
89Zr(DFO−マレイミド−トラスツズマブ)または
89ZrClを含有する20mM PBS(pH7)溶液2用量を注射した。PET画像を、
89Zr(DFO−スクアラート−トラスツズマブ)で処置したマウスについては投与後22時間、46時間、94時間および8日の間隔で取得し、
89Zr(DFO−マレイミド−トラスツズマブ)で処置したマウスおよび
89ZrClで処置したマウスについては24時間で取得した(それぞれ
図1、2および3を参照)。
【0108】
BT474腫瘍担持マウスにおいて
89Zr DFOSq−ハーセプチンを使用したイメージング試験 − 試験2
トラスツズマブ(2mg)をpH9.0ホウ酸緩衝液(0.5M、355μL)に希釈し、DFOSqのDMSO(1mg/mL、45μL、5当量)溶液を添加した。この混合物を周囲温度で40時間インキュベートし、50kDa Amiconスピンフィルターを使用して精製し、4%DMSOの生理食塩水溶液(3×300μL)で洗浄し、次いで生理食塩水のみ(300uL)で洗浄した。精製したコンジュゲート体のESI MS分析により、0〜5個のキレーターの結合および平均2個のキレーター/mAbが示された。精製したDFOSq−トラスツズマブ溶液を直ちに使用して放射標識した。
【0109】
DFOSq−トラスツズマブの
89Zr放射標識
89Zrの1Mシュウ酸(150MBq、112μL)溶液をMilliQ水(250μL)で希釈し、pHが増加して7になるまでNa
2CO
3水溶液(2M、32.5μL)を少量ずつ添加した。次いでHEPES緩衝液(0.5M、pH7、120μL)を添加し、この溶液を5分間静置した。0.9%NaCl(56μL、675μg)中DFOSq−トラスツズマブを添加した。30分後、反応完了をラジオ−iTLC(シリカ注入ガラス繊維プレート、溶離液として0.1M pH6クエン酸緩衝液、生成物R
f=0)によって確認した。反応混合物を、PD−10サイズ排除カラムにおいて、溶離液としてpH7ダルベッコPBS(20mM、5%ゲンチジン酸ナトリウムを含む)を使用して精製した。カラム充填後、素通り画分を廃棄し、2つの画分(画分A:0.5mL、画分B:1.0mL、90.2MBq)を回収した。画分BをSE−HPLC(BioSuite 125、5μm HR SEC 7.8×300mmカラム、溶離液として5%iPrOHを含む20mM pH7ダルベッコPBS、生成物保持時間約12.5分)で分析した。
【0110】
89Zr−DFOSq−トラスツズマブ:マウスPETイメージング(BT474)
4用量(7.5MBqずつ)を、精製したmAb溶液から引き上げ、BT474腫瘍担持NOD/SCIDマウスに投与した。PETイメージングを24時間、48時間および96時間時点で行った。96時間で生体内分布データを取るためにマウスを処分した。
【0111】
【表2】
【0112】
SKOV3またはLS174T腫瘍担持マウスにおける
89Zr DFOSq−ハーセプチンの合成、分析およびイメージング試験
DFOSqのトラスツズマブへのコンジュゲート
トラスツズマブ(10mg)をpH9.0ホウ酸緩衝液(0.5M、1.5mL)に希釈し、DFOSqのDMSO(2mg/mL、455μL、16当量)溶液を添加した。この混合物を周囲温度で終夜インキュベートし、50kDa Amiconスピンフィルターを使用して精製し、4%DMSOの生理食塩水(2×300μL)溶液で洗浄し、次いで生理食塩水のみ(300uL)で洗浄した。精製したコンジュゲート体のESI MS分析により、1〜6個のキレーターの結合および平均3.4個のキレーター/mAbが示された。精製したDFOSq−トラスツズマブ溶液を4℃で8〜9日間保管してから放射標識した。
【0113】
DFOSq−トラスツズマブの
89Zr放射標識
89Zrの1Mシュウ酸(150MBq、195μL)溶液をMilliQ水(350μL)で希釈し、pHが増加して8になるまでNa
2CO
3水溶液(2M、65μL)を少量ずつ添加した。次いでHEPES緩衝液(0.5M、pH7、200μL)を添加し、この溶液を5分間静置した。0.9%NaCl(8μL、675μg)中DFOSq−トラスツズマブを添加した。1時間後、反応完了をラジオ−iTLC(シリカ注入ガラス繊維プレート、溶離液として0.1M pH6クエン酸緩衝液、生成物R
f=0)によって確認した。反応混合物を、PD−10サイズ排除カラムにおいて、溶離液としてpH7ダルベッコPBS(20mM、5%ゲンチジン酸ナトリウムを含む)を使用して精製した。カラム充填後、素通り画分を廃棄し、第1の画分(1.0mL、54MBq)を回収した。生成物をSEHPLC(BioSuite 125、5μm HR SEC 7.8×300mmカラム、溶離液として5%iPrOHを含む20mM pH7ダルベッコPBS、生成物保持時間約12.5分)によって分析した。
【0114】
89Zrの1Mシュウ酸(145MBq、195μL)溶液をMilliQ水(400μL)で希釈し、pHが増加して10になるまでNa
2CO
3水溶液(2M、75μL)を少量ずつ添加した。次いでHEPES緩衝液(0.5M、pH7、250μL)を添加し、この溶液を5分間静置した。0.9%NaCl(8μL、675μg)中DFOSq−トラスツズマブを添加した。1.5時間後、反応完了をラジオ−iTLC(シリカ注入ガラス繊維プレート、溶離液として0.1M pH6クエン酸緩衝液、生成物R
f=0)によって確認した。反応混合物を、PD−10サイズ排除カラムにおいて、溶離液としてpH7ダルベッコPBS(20mM、5%ゲンチジン酸ナトリウムを含む)を使用して精製した。カラム充填後、1mLの素通り画分を廃棄し、第1の画分(1.0mL、47MBq)を回収した。生成物をSEHPLC(BioSuite 125、5μm HR SEC 7.8×300mmカラム、溶離液として5%iPrOHを含む20mM pH7ダルベッコPBS、生成物保持時間約12.5分)によって分析した。11分時点でのシグナルは、放射標識前の保管中の振動により生じた抗体の凝集によるものと推定される。
【0115】
89Zr−DFOSq−トラスツズマブ:マウスPETイメージング(SKOV3)
3用量(7.5MBqずつ)を、精製したmAb溶液から引き上げ、SKOV3腫瘍担持NOD/SCIDマウスに投与した。PETイメージングを24時間、48時間および96時間時点で行った。96時間で生体内分布データを取るためにマウスを処分した。
【0116】
【表3】
【0117】
【表4】
【0118】
89Zr−DFOSq−トラスツズマブ:マウスPETイメージング(LS174T)
3用量(7.5MBqずつ)を、精製したmAb溶液から引き上げ、LS174T腫瘍担持BALB/cヌードマウスに投与した。PETイメージングを24時間、48時間および96時間時点で行った。96時間で生体内分布データを取るためにマウスを処分した。
【0119】
【表5】
【0120】
【表6】
【0121】
SKOV3腫瘍担持マウスにおける
89Zr DFO−Ph−NCS−ハーセプチンの合成、分析およびイメージング試験
DFOPhNCSの合成
【化8】
デスフェリオキサミン(203mg、0.309mmol)をiPrOH/H
2O(32:3mL)中で撹拌し、Ph(NCS)
2(271mg、1.41mmol)のCHCl
3(20mL)溶液を添加した。トリエチルアミン(100μL、0.717mmol)を直ちに添加し、反応混合物を周囲温度で1.5時間撹拌した。HCl(0.1M、25mL)を添加し、有機層を分離した。溶媒を蒸発させてベージュ色固体を得、これをCH
2Cl
2でトリチュレートした。残留固体を濾別し、乾燥させてDFOPhNCSを白色粉末(207mg、89%)として得た。ESIMS[M+H]
+:753.34、(C
33H
53N
8O
8S
2)
+の計算値:753.34。分析用HPLC:方法A、保持時間8.95分。
1H NMR(500MHz,dmso)δ 7.98(s,1H),7.78(s,2H),7.57(d,J=8.8Hz,2H),7.36(d,J=8.9Hz,2H),3.52−3.39(m,J=13.9,7.0Hz,8H),3.00(dd,J=12.7,6.5Hz,4H),2.61−2.54(m,J=3.9Hz,4H),2.31−2.24(m,J=10.4,5.4Hz,4H),1.96(s,3H),1.59−1.45(m,J=22.1,14.6,7.3Hz,8H),1.42−1.33(m,4H),1.30−1.16(m,J=18.8,15.3,7.1Hz,8H)。
【0122】
DFOPhNCSのトラスツズマブへのコンジュゲート
手順はVosjan,M.J.W.D.;Perk,L.R.;Visser,G.W.M.;Budde,M.;Jurek,P.;Kiefer,G.E.;van Dongen,G.A.M.S.,Nat.Protocols 2010,5(4),739−743のとおりに従った。
【0123】
トラスツズマブ(3.03mg)を生理食塩水(1mL)に希釈し、この溶液を0.1M Na
2CO
3でpH9に調整した。DMSO(2.3mg/mL、20μL)中3倍過剰のDFOPhNCSを、小分けにして継続的に緩やかに振盪させながらmAb溶液に添加した。この混合物を37℃において550rpmで30分間インキュベートし、PD−10カラムにおいて、溶離液としてゲンチジン酸(5mg/mL)/酢酸ナトリウム(0.25M)緩衝液(pH5.5)を使用して精製した。精製したDFOPhNCS−mAb溶液を−20℃で5日間保管してから放射標識した。コンジュゲート体のESI MS分析により、0〜1個のキレーター結合および平均0.2個のキレーター/mAbが示された。
【0124】
DFOPhNCS−トラスツズマブの
89Zr放射標識
手順はVosjan、M.J.W.D.et al(上記)のとおりに従った。
【0125】
Na
2CO
3(2M、90μL)を
89Zr(200μL、55MBq)のシュウ酸(1M)溶液に添加した。この混合物を周囲温度で3分間、緩やかに振盪させながらインキュベートした。次に、HEPES緩衝液(0.5M、pH7.2、300μL)、次いでDFOPhNCS−トラスツズマブ溶液(710μL)、次いでHEPES緩衝液(0.5M、pH7.0、700μL)を添加した。反応混合物を、周囲温度で頻繁に緩やかに振盪しながらインキュベートした。iTLC分析(溶離液として20mMクエン酸、pH5)を様々な時点で行い、放射標識の進行をモニターした(1時間:30%標識、1.5時間:53%標識、2時間:%標識)。
【0126】
2時間の反応時間後、混合物を、新たに作製した酢酸ナトリウム(0.25M)/ゲンチジン酸(5mg/mL)緩衝液、pH5〜6を用いて調整したPD−10カラムを使用して精製した。精製した
89Zr−DFOPhNCS−トラスツズマブ(1mL、21.8MBq)をiTLCおよびSEC−HPLCによって分析した。
【0127】
89Zr−DFOPhNCS−トラスツズマブ:マウスPETイメージングSKOV3
3用量(3.5MBqずつ)を、精製したmAb溶液から引き上げ、SKOV3腫瘍担持NOD/SCIDマウスに投与した。PETイメージングを24時間、48時間および96時間時点で行った。96時間で生体内分布データを取るためにマウスを処分した。
【0128】
【表7】
【0129】
競争試験1
DFO−cRGDfK誘導体の合成
炭酸ナトリウム溶液を使用して、cRGDfK(100uL、2mg、2μmol)の水溶液のpHを9まで増加させた。DMSO(100uL、2当量)中DFOSqのpH9ホウ酸緩衝液(0.5M、100μL)溶液である。反応混合物を室温で終夜静置し、次いでセミ分取HPLC(ProteCol C18カラム、H
2O/MeCN、0.1%TFA)によって精製し、凍結乾燥して、DFOSq−cRGDfKを白色固体として得た。同様の手順を使用してDFOPhNCS−cRGDfKをDFO−Ph−NCSから調製したが、沈殿したため、精製する前にこれを遠心分離し、可溶性の物質のみを精製した。各DFO−cRGDfK誘導体の水溶液を等濃度で調製し、これをFe
3+滴定によってUV−Vis分光法(425nm)を使用して確認した。
【0130】
競争実験
89Zr(2uL、約2MBq)の1Mシュウ酸溶液をH
2O(50uL)で希釈し、2M Na
2CO
3(1uL)を使用して中和し、次いでpH7.4のHEPES緩衝液(5uL)で緩衝した。次いで、緩衝したZr溶液少量(5uL)を各DFO−cRGDfK溶液(50uLずつ)に添加した。20分後、反応完了をラジオ−iTLCで確認した。各サンプルを標準としてHPLC(Phenomenex Lunaカラム)に供した。DFOPhNCS−cRGDfK配位子は20.1分で溶出し、Zr錯体は18.5分で溶出する(
図39)。DFOSq−cRGDfK配位子は18.0分で溶出し、Zr錯体は15.5分で溶出する(
図40)。DFOSq−cRGDfK配位子溶液中の未同定の不純物も18.0分で溶出したが、これにZrは結合していなかった。
【0131】
両配位子の等濃度の溶液(40uLずつ)を調製し、完全に混合し、緩衝したZr溶液5uLを添加した。45分後に反応混合物をHPLCによって分析し、その分析により、専らZrDFOSq−cRGDfK錯体のみが形成されていることが示された(
図41)。
【0132】
競争試験2
DFO−SO
3H誘導体の合成:DFOSqTaur
【化9】
トリエチルアミン少量(5滴)をタウリン(18mg、0.14mmol)のH
2O溶液に添加した。DFOSq(100mg、0.15mmol)をDMSOに溶解し、タウリン溶液に添加し、反応混合物を周囲温度で終夜撹拌した。この溶媒を蒸発させ、粗製物質を緩やかに加熱しながらH
2Oに溶解し、未反応のDFOSqはいずれも遠心分離で除去した。溶媒を蒸発させて白色粉末を得た。
図42および43は、DFOSqTaurの
1H NMRおよびESI−MSスペクトルを示している。
【0133】
DFO−SO
3H誘導体の合成:DFOPhSO
3H
【化10】
トリエチルアミン少量(5滴)を、イソチオシアン酸4−スルホフェニルナトリウム塩一水和物(38mg、0.15mmol)のMeOH溶液に添加した。DFOメシラート(100mg、0.15mmol)をこの溶液に添加し、溶解性を高めるためにH
2O(1mL)を添加した。反応混合物を周囲温度で終夜撹拌した。溶媒を蒸発によって除去し、粗製白色粉末をMeOHで40℃において完全に洗浄して、生成物を白色粉末として得た。
図44および45は、DFOPhSO
3Hの
1H NMRおよびESI−MSスペクトルを示している。
【0134】
競争実験
各配位子、即ちDFOPhSO
3HおよびDFOSqTaurの3mMストック溶液をH
2OとMeOHとの混合液中で調製した(希釈する前に、濃度をUV−Vis H
2O中Fe
3+滴定によって確認した、430nm)。両溶液(25uLずつ)の混合物を完全に混合し、50℃まで加熱した。ZrCl
4(THF)
2のH
2O/MeOH(3mM)中ストック溶液も調製し、この20uLを配位子混合物に添加した。この混合物を50℃で7時間インキュベートした。この混合物の7時間でのESI−MS分析(
図46)により、ZrDFOSqTaur錯体(
図46)、[M]+m/z(計算値)=850.22の存在が示された。