特許第6689837号(P6689837)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6689837ポップ音雑音を最小限にし、または排除するための調節可能なランプアップ/ダウン利得を伴う増幅器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6689837
(24)【登録日】2020年4月10日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】ポップ音雑音を最小限にし、または排除するための調節可能なランプアップ/ダウン利得を伴う増幅器
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/00 20060101AFI20200421BHJP
   H03F 3/217 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
   H03F1/00 210
   H03F3/217
【請求項の数】13
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-521563(P2017-521563)
(86)(22)【出願日】2015年10月22日
(65)【公表番号】特表2017-531963(P2017-531963A)
(43)【公表日】2017年10月26日
(86)【国際出願番号】US2015057001
(87)【国際公開番号】WO2016065197
(87)【国際公開日】20160428
【審査請求日】2017年5月31日
(31)【優先権主張番号】62/068,245
(32)【優先日】2014年10月24日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504371240
【氏名又は名称】シラス ロジック、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】ザン, リングリ
(72)【発明者】
【氏名】ワン, フアン
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ヨンジェ
(72)【発明者】
【氏名】ラーセン, クリスチャン
【審査官】 及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−236208(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/132202(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/161911(WO,A1)
【文献】 特表2003−534692(JP,A)
【文献】 特開2008−148288(JP,A)
【文献】 特開2013−223202(JP,A)
【文献】 特開2009−147731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00−3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
変換器による再現のために入力アナログ信号を受信するように構成された入力ノードと、
前記入力ノードに結合された前置電力段ブロックであって、前記前置電力段ブロックは、前記入力アナログ信号を処理するように構成されており、前記前置電力段ブロックは、構成可能利得を有するパルス幅変調(PWM)発生器を備え、前記PWM発生器は、前記入力アナログ信号を処理することの少なくとも一部を実行する、前置電力段ブロックと、
前記前置電力段ブロックに結合された電力段ブロックであって、前記電力段ブロックは、前記入力アナログ信号を処理することを増幅させるように構成されている、電力段ブロックと、
前記電力段ブロックの出力と前記前置電力段ブロックの入力との間に結合されたフィードバック経路と、
前記前置電力段ブロックに結合されたコントローラであって、前記コントローラは、前記フィードバック経路を含むフィードバックループの状態の遷移の間、前記前置電力段ブロックに起因する電圧オフセットが低減される態様で、前記前置電力段ブロックの前記PWM発生器の前記構成可能利得をランプアップ/ランプダウンさせることにより、前記PWM発生器において生成されるランプ波形の傾きを変動させるように構成されている、コントローラと
を備える、装置。
【請求項2】
前記PWM発生器は、前記前置電力段ブロックのループフィルタの複数のループフィルタ積分器の外側にある、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記コントローラは、閉ループ拡大状態から閉ループ定常状態への前記フィードバックループの状態の遷移の間、前記前置電力段ブロックの前記構成可能利得をランプアップ/ランプダウンさせるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記構成可能利得をランプアップ/ランプダウンさせることにより、前記電力段ブロックの出力におけるポップ音レベルまたはクリック音レベルを減衰させるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
方法であって、
増幅器によって、増幅のための入力アナログ信号を受信することと、
前記入力アナログ信号を前置電力段ブロック内で処理することであって、前記処理するステップは、前記前置電力段ブロックの処理することに起因する電圧オフセットが低減される態様で、前記前置電力段ブロックのパルス幅変調(PWM)発生器の構成可能利得をランプアップ/ランプダウンさせることにより、前記PWM発生器において生成されるランプ波形の傾きを変動させることを含み、前記PWM発生器は、前記入力アナログ信号を処理することの少なくとも一部を実行する、ことと、
前記処理された信号を電力段ブロック内で増幅させることと、
フィードバック経路を通して、前記増幅された信号を前記前置電力段ブロックにフィードバックすることであって、前記前置電力段ブロックの前記PWM発生器の前記構成可能利得をランプアップ/ランプダウンさせるステップは、前記フィードバック経路を含むフィードバックループの状態の遷移の間に生じる、ことと
を含む、方法。
【請求項6】
前記構成可能利得をランプアップ/ランプダウンさせるステップは、前記前置電力段ブロックのPWM発生器の構成可能利得をランプアップ/ランプダウンさせることを含み、前記PWM発生器は、前記前置電力段ブロックのループフィルタの複数のループフィルタ積分器の外側にある、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記構成可能利得をランプアップ/ランプダウンさせるステップは、前記フィードバックが閉ループ拡大状態から閉ループ定常状態に遷移する時間の間、コントローラが前記構成可能利得をランプアップ/ランプダウンさせることによって実行される、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記構成可能利得をランプアップ/ランプダウンさせるステップは、閉ループ拡大状態から閉ループ定常状態への前記フィードバックループの状態の遷移の間、前記構成可能利得をランプアップ/ランプダウンさせることを含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記構成可能利得をランプアップ/ランプダウンさせるステップは、前記構成可能利得をランプアップ/ランプダウンさせることにより、前記電力段ブロックの出力におけるポップ音レベル/クリック音レベルを減衰させることを含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
装置であって、
前記装置は、増幅器回路に結合するように構成されたコントローラを備え、
前記コントローラは、
前記増幅器回路の前置電力段ブロックおよび電力段ブロックの周囲にあり、かつ、前記増幅器回路の前記電力段ブロックの出力と前記前置電力段ブロックの入力との間に結合されたフィードバック経路を含むフィードバックループが事実上閉鎖したことを判定するステップであって、前記前置電力段ブロックは、入力アナログ信号を処理するように構成されており、前記前置電力段ブロックは、構成可能利得を有するパルス幅変調(PWM)発生器を含み、前記PWM発生器は、前記入力アナログ信号を処理することの少なくとも一部を実行する、ステップと、
前記フィードバックループが事実上閉鎖したことを判定した後、前記前置電力段ブロックの前記PWM発生器の利得を判定するステップと、
前記判定された利得に対して、前記フィードバックループが第1のステータスから第2のステータスに状態が遷移している間、前記前置電力段ブロックに起因する電圧オフセットが低減される態様で、前記前置電力段ブロックの前記構成可能利得をランプアップ/ランプダウンさせることにより、前記PWM発生器において生成されるランプ波形の傾きを変動させるステップと
を含むステップを実行するように構成されている、装置。
【請求項11】
前記コントローラは、閉ループ拡大状態の第1のステータスから閉ループ定常状態の第2のステータスへの前記フィードバックループの状態の遷移の間、前記PWM発生器の利得を判定するように構成されている、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記コントローラは、前記増幅器回路のループフィルタの複数のループフィルタ積分器の外側のPWM発生器の利得を判定するように構成されている、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記増幅器回路による増幅のための入力アナログ信号を受信するように構成された入力ノードであって、前記入力ノードは、前記増幅器回路に結合され、前記増幅器回路は、前記入力ノードに結合された前記前置電力段ブロックと、前記前置電力段ブロックに結合された前記電力段ブロックであって、前記フィードバックループは、前記電力段ブロックの出力を前記前置電力段ブロックの入力に結合する、前記電力段ブロックとを備える、入力ノードと、
前記増幅器回路の出力に結合された変換器であって、前記変換器は、前記前置電力段ブロックによって処理され、かつ、前記電力段ブロックによって増幅された前記入力アナログ信号の表現を再現するように構成されている、変換器と
をさらに備える、請求項10に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2014年10月24日に出願された、Lingli Zhangらによる「Methods and Apparatuses for Minimizing or Eliminating Pop Noise for an Amplifier」という題名の米国仮特許出願第62/068,245号の優先権の利益を主張する。上記文献は、参照することによって本明細書において援用される。
【0002】
(開示の分野)
本開示は、電力増幅器に関する。より具体的には、本開示の一部は、限定ではないが、開ループ増幅器および閉ループ増幅器を含む、増幅器に対するポップ音雑音を最小限にする、または排除することに関わる、もしくはそれに関連する、方法、装置、および/または実装に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
増幅器は、信号の振幅を増加させること等によって信号を増幅させる、または信号の他の処理を行うために使用され得る、電子デバイスである。2つの例示的増幅器として、開ループ増幅器および閉ループ増幅器が挙げられる。閉ループ増幅器の具体的実施例の1つは、D級増幅器である。図1は、先行技術によるそのような例示的閉ループD級増幅器アーキテクチャを示す。閉ループD級増幅器100は、入力利得ブロック122と、加算器102と、ループフィルタ104と、パルス幅変調器(PWM)変調器106と、電力段ブロック108とを含む、フィードフォワード経路を含む。増幅器100はまた、電力段ブロック108の出力から開始し、加算器102に戻るように結合される、フィードバック経路110を含む。電力段ブロック108の出力は、スピーカ112または他の変換器を駆動させることができる。ループフィルタ104は、いくつかの積分器を含んでもよく、PWM発生器106は、PWM信号へのループフィルタ104出力を変調させる。
【0004】
増幅器の別の実施例は、図1の増幅器100に類似し得るが、フィードバック経路110を有しておらず、ループフィルタ104が、代わりに、アナログフィルタと置換されるであろう、開ループ増幅器である。閉ループ増幅器は、閉ループ増幅器が、概して、より優れた全高調波歪(THD)性能を提供し、より優れた電源電圧変動除去比(PSRR)を有し得るため、開ループ増幅器より好ましくあり得る。
【0005】
図1に示されるような閉ループ増幅器または開ループ増幅器(図示せず)のいずれにおいても、ループフィルタ104またはアナログフィルタ(図示せず)は、ループフィルタ104の入力またはアナログフィルタの入力における第1の積分器からの直流(DC)オフセットVOS1と、フィルタ出力において反射された他の下流積分器からの直流(DC)オフセットVOS2とを有する。DCオフセットは、次いで、閉ループ増幅器が閉ループ拡大状態から閉ループ定常状態に遷移するときのスピーカ電源投入および/または切断の間、PWM変調器/発生器106によって拡大され、次いで、PWM変調器/発生器106の固定利得とともに、スピーカ112に直接印加され得る。「閉ループ拡大状態」は、任意のループフィルタ減衰を伴わずに、DCオフセットが増幅器出力において拡大される状態を指す。「閉ループ定常状態」は、ループフィルタがオフセットVOS2をほぼゼロまで減衰させ、増幅器出力がDCオフセットVOS1のみに対応する、状態を指す。ループフィルタ104の単位利得帯域幅に応じて、拡大DCオフセットが抑制される前に、多くのサイクルを受け得る。遅延サイクルの間、拡大DCオフセットは、完全に抑制されず、増幅器の出力は、アーチファクトを呈し得る。増幅器が、オーディオ増幅器内等のスピーカを駆動させるために使用されるとき、スピーカは、可聴ポップ音および/またはクリック音雑音を生成し得る。したがって、DCオフセットVOS1およびVOS2をさらに低減または排除する必要がある。
【0006】
従来のループフィルタ104、すなわち、アナログフィルタでは、DCオフセットVOS1は、典型的には、ポップ音雑音を低減させるために、はるかに低いレベルで設計されるが、DCオフセットVOS2は、閉ループ定常状態動作では、DCオフセットVOS2からの寄与が第1の積分器によって減衰され、ほぼゼロであるため、対処されない。
【0007】
DCオフセットならびに増幅器出力における可聴ポップ音およびクリック音を取り扱う方法の1つは、二重ループ増幅器アーキテクチャを使用することである。一実施例は、米国特許第8,686,789号(参照することによって本明細書に組み込まれる)に提供されている。図2は、先行技術による二重ループ増幅器を図示する、ブロック図である。二重ループ増幅器200は、一次ループ204と、二次ループ206とを含む。二重ループ増幅器200は、入力レジスタRINを通してアナログ入力250を受信し、出力信号252を提供し、スピーカ202を駆動させる。一次ループ204は、ループフィルタ208と、パルス幅変調(PWM)変調器/発生器210と、基準発生器212と、電力ドライバ214とを含む。
【0008】
基準発生器212は、基準信号256を提供し、PWM変調器/発生器210は、対応する変調信号258を提供する。一次ループ204はさらに、電力ドライバ214の出力およびループフィルタ208の入力に結合される、フィードバックレジスタRFDBKを有する。フィードバックレジスタRFDBKは、入力レジスタRINおよび/またはプログラム可能利得と併せて、一次ループ204の利得を判定する。二次ループ206は、ループフィルタ208と、PWM変調器/発生器210と、基準発生器212と、補助ドライバ216とを含む。二次ループ206はまた、補助レジスタRAUXを含む。補助レジスタRAUXは、補助ドライバ216の出力とループフィルタ208の入力との間に結合される。補助レジスタRAUXは、入力レジスタRINおよびプログラム可能利得と併せて、二次ループ206の利得を判定する。
【0009】
図3は、例えば、図1のPWM変調器/発生器106として使用され得る、先行技術による例示的固定利得PWM変調器/発生器300を示す。PWM変調器/発生器300は、固定電流源302および304と、コンデンサCと、増幅器306と、コンパレータ308および310とを含む。電流源302および304からの電流信号は、増幅器306の反転入力においてPWM変調器/発生器300への入力の1つを提供し、非反転入力は、接地に結合されることができる。増幅器306の出力は、三角またはランプ基準信号Vrampであり、電圧信号Vrampは、コンパレータ308および310のための個別の反転入力のそれぞれにフィードされる。ループフィルタ出力VsigPおよびVsigMもまた、対応するコンパレータ308および310にフィードされる。コンパレータ308および310は、ループフィルタ出力VsigPおよびVsigMと基準電圧Vrampを比較し、デジタルPWM信号PWM_MおよびPWM_Pをもたらす。
【0010】
図4は、先行技術による図3におけるPWM変調器/発生器300のためのコンパレータ308および310の電圧入力VsigPおよびVsigMならびに出力PWM_PおよびPWM_Mに関する例示的信号タイミング図および例示的関係を示す。図4の略図に関して、PWM変調器/発生器300は、図1に示される閉ループアーキテクチャ内で構成されると仮定される。線402に示される変調器出力PWM_Diffの平均電圧は、以下の方程式に従って判定される。
【数1】
式中、Tは、ランプ周期または三角周期の半分であり、VDDは、変調器供給電圧である。PWM変調器/発生器利得が、次いで、以下の方程式によって定義される。
【数2】
【0011】
線404として示されるランプ基準信号Vrampの傾きは、PWM発生器300の利得が固定され、変動しないため、固定される。Vrampの傾きは、固定され、図1の増幅器100のループは、限定された帯域幅を有するため、ループ電源投入または切断の間、ループフィルタ104の出力における任意のオフセット電圧または信号は、ループフィルタ104が閉ループ拡大状態から閉ループ定常状態に遷移するとき、フィードフォワード経路を通して増幅され、電力段ブロック108から出力されるであろう。本増幅されたオフセットは、可聴ポップ音またはクリック音の形態等において、スピーカ112を通して聞こえ得る。
【0012】
図4に戻って参照すると、閉ループ増幅器は、時間412として示される時間tにおいて電源がオンされる。電源がオンされる前、ループフィルタ差動出力は、ゼロであり、PWM_Diffも、ゼロである。時間tとt(時間414として示される)との間において、増幅器が閉ループ拡大状態にあるとき、直流(DC)オフセットが、ループフィルタ出力VsigPおよびVsigMにおいて現れ、PWM発生器によって増幅され、非ゼロPWM_Diffを発生させる。時間t後、ループフィルタは、オフセットの減衰を開始する。時間416における時間t後、ループフィルタは、オフセットVOS2が低レベルまで減衰され、わずかな残留オフセットVOS1のみがPWM_Diff信号内に残ると、閉ループ定常状態で起動する。
【0013】
ここに記載された欠点は、代表にすぎず、単に、改良された電気構成要素、特に、携帯電話およびメディアプレーヤ等の消費者レベルデバイス内で採用される増幅器の必要性があることを強調するために含まれている。本明細書に説明される実施形態は、ある欠点に対処するが、必ずしも、ありとあらゆるものが、ここに説明される、または当技術分野において公知であるわけではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第8,686,789号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
(要約)
本開示の実施形態は、オーディオ増幅器の前置電力段ブロック内の可変ランプアップ/ダウン利得と、オーディオ増幅器の動作の間、可変ランプアップ/ダウン利得を調節する、コントローラとを提供することによって、オーディオ増幅器に関連する可聴ポップ音およびクリック音の問題を排除または有意に低減させる、すなわち、解消する。一実施形態では、可変ランプアップ/ダウン利得は、コントローラの制御下でランプアップおよびランプダウン利得を用いる、パルス幅変調(PWM)発生器として実装されてもよい。可変ランプアップ/ダウン利得は、オフセットVOS1およびVOS2の遷移を平滑にし、したがって、オーディオ増幅器の電力段ブロック内で増幅されるオフセットVOS1およびVOS2を低減させることによって、可聴ポップ音およびクリック音を低減させることができる。
【0016】
一実施形態によると、装置は、変換器による再現のために入力アナログ信号を受信するように構成される、入力ノード、入力ノードに結合され、入力アナログ信号を処理するように構成される、前置電力段ブロックであって、構成可能ランプアップ/ダウン利得を伴う構成要素を備える、前置電力段ブロック、前置電力段ブロックに結合され、処理入力アナログ信号を増幅させるように構成される、電力段ブロック、および/または電力段の出力と前置電力段ブロックの入力との間に結合される、フィードバックループ、および/または前置電力段ブロックに結合され、フィードバックループの遷移の間、前置電力段ブロックの構成可能利得を変動させるように構成される、コントローラを含んでもよい。
【0017】
ある実施形態では、前置電力段ブロックのパルス幅変調(PWM)変調器/発生器は、構成可能利得を有してもよい、構成可能利得は、前置電力段ブロックのループフィルタの複数のループフィルタ積分器の外側にあってもよい、コントローラが、前置電力段ブロックの構成可能ランプアップ/ダウン利得を変動させ、前置電力段ブロックに起因する電圧オフセットを低減させるように構成されてもよい、コントローラは、閉ループ拡大状態から閉ループ定常状態へのフィードバックループの遷移の間、前置電力段ブロックの構成可能ランプアップ/ダウン利得を変動させるように構成されてもよい、および/またはコントローラは、構成可能ランプアップ/ダウン利得を変動させ、電力段の出力におけるポップ音/クリック音レベルを減衰させるように構成されてもよい。
【0018】
別の実施形態によると、方法は、増幅のための入力アナログ信号を受信すること、入力アナログ信号を前置電力段ブロック内で処理することであって、処理するステップは、前置電力段ブロックの構成可能ランプアップ/ダウン利得を変動させることを含む、こと、処理された信号を電力段ブロック内で増幅させること、および/またはフィードバックループを通して、増幅された信号を前置電力段ブロックにフィードバックすることであって、前置電力段ブロックの構成可能ランプアップ/ダウン利得を変動させるステップは、フィードバックループの遷移の間に生じる、ことを含んでもよい。
【0019】
ある実施形態では、構成可能ランプアップ/ダウン利得を変動させるステップは、前置電力段ブロックのパルス幅変調(PWM)変調器/発生器の構成可能ランプアップ/ダウン利得を変動させることを含んでもよい、構成可能ランプアップ/ダウン利得を変動させるステップは、前置電力段ブロックのループフィルタの複数のループフィルタ積分器の外側の構成可能ランプアップ/ダウン利得を変動させることを含んでもよい、構成可能ランプアップ/ダウン利得を変動させるステップは、フィードバックが、前置電力段ブロックおよび電力段ブロックの周囲のループを事実上閉鎖する、または閉ループ拡大状態から閉ループ定常状態に遷移した時点で、コントローラが始動することによって行われてもよい、構成可能ランプアップ/ダウン利得を変動させることを判定するステップは、構成可能ランプアップ/ダウン利得を変動させ、前置電力段ブロック内の処理に起因する電圧オフセットを低減させることを含んでもよい、構成可能ランプアップ/ダウン利得を変動させることを判定するステップは、閉ループ拡大状態から閉ループ定常状態へのフィードバックループの遷移の間、構成可能ランプアップ/ダウン利得を変動させることを含んでもよい、および/または構成可能ランプアップ/ダウン利得を変動させることを判定するステップは、構成可能ランプアップ/ダウン利得を変動させ、電力段の出力におけるポップ音/クリック音レベルを減衰させることを含んでもよい。
【0020】
別の実施形態によると、装置は、増幅器回路に結合するように構成されるコントローラを含んでもよい。コントローラは、増幅器回路の前置電力段ブロックおよび電力段ブロックの周囲のフィードバックループが閉ループ拡大状態から閉ループ定常状態に遷移する、開始時間を判定するステップ、フィードバックループ遷移の開始時間を判定後、増幅器回路の前置電力段ブロックの構成可能ランプアップ/ダウン利得要素のランプアップ/ダウン利得を判定するステップ、および/または判定されるランプアップ/ダウン利得に対して、フィードバックループが第1のステータスから第2のステータスに遷移する間、前置電力段ブロックの構成可能ランプアップ/ダウン利得を調節するステップを含む、ステップを行うように構成されてもよい。
【0021】
ある実施形態では、コントローラは、構成可能ランプアップ/ダウン利得要素のランプアップ/ダウン利得を判定し、前置電力段ブロックに起因する電圧オフセットを低減させるように構成されてもよい、コントローラは、閉ループ拡大状態から閉ループ定常状態へのフィードバックループの遷移の間、構成可能ランプアップ/ダウン利得要素の利得を判定するように構成されてもよい、コントローラは、増幅器回路のパルス幅変調(PWM)発生器のランプアップ/ダウン利得を判定するように構成されてもよい、および/またはコントローラは、増幅器回路のループフィルタの複数のループフィルタ積分器の外側の構成可能ランプアップ/ダウン利得要素のランプアップ/ダウン利得を判定するように構成されてもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、本装置はまた、増幅器回路による増幅のために入力アナログ信号を受信するように構成される、入力ノードであって、増幅器回路に結合される、入力ノードと、増幅器回路の出力に結合される変換器であって、前置電力段ブロックによって処理され、電力段ブロックによって増幅された入力アナログ信号の表現を再現するように構成される、変換器とを含んでもよい、および/または増幅器回路は、入力ノードに結合される前置電力段ブロック、および/または前置電力段ブロックに結合される電力段ブロックであって、フィードバックループは、電力段ブロックの出力を前置電力段ブロックの入力に結合する、電力段ブロックを含んでもよい。
【0023】
前述は、続く発明を実施するための形態がより深く理解され得るために、本発明の実施形態のある特徴および技術的利点をかなり広範に概略している。本発明の請求項の主題を形成する、付加的特徴および利点は、本明細書に後述されるであろう。開示される概念および具体的実施形態は、同一または類似目的を実施するために修正もしくは他の構造を設計するための基礎として容易に利用され得ることが、当業者によって理解されるはずである。また、そのような均等物構造は、添付の請求項に記載の本発明の精神および範囲から逸脱しないことが、当業者によって認識されるはずである。付加的特徴は、付随の図と併せて検討されることによって、以下の説明からより深く理解されるであろう。しかしながら、図はそれぞれ、例証および説明の目的のためだけに提供されており、本発明を限定することを意図するものではないことが、明示的に理解されるはずである。
例えば、本願は以下の項目を提供する。
(項目1)
装置であって、
変換器による再現のために入力アナログ信号を受信するように構成された入力ノードと、
前記入力ノードに結合され、前記入力アナログ信号を処理するように構成されている、前置電力段ブロックであって、前記前置電力段ブロックは、構成可能ランプアップ/ダウン利得を伴う構成要素を備える、前置電力段ブロックと、
前記前置電力段ブロックに結合され、前記入力アナログ信号を処理することを増幅させるように構成されている、電力段ブロックと、
前記電力段の出力と前記前置電力段ブロックの入力との間に結合されたフィードバックループと、
前記前置電力段ブロックに結合され、前記フィードバックループの遷移の間、前記前置電力段ブロックの構成可能利得を変動させるように構成されている、コントローラと
を備える、装置。
(項目2)
前記前置電力段ブロックのパルス幅変調(PWM)発生器は、前記構成可能利得を有する、項目1に記載の装置。
(項目3)
前記構成可能利得は、前記前置電力段ブロックのループフィルタの複数のループフィルタ積分器の外側にある、項目1に記載の装置。
(項目4)
前記コントローラは、前記前置電力段ブロックの構成可能ランプアップ/ダウン利得を変動させ、前記前置電力段ブロックに起因する電圧オフセットを低減させるように構成されている、項目1に記載の装置。
(項目5)
前記コントローラは、閉ループ拡大状態から閉ループ定常状態への前記フィードバックループの遷移の間、前記前置電力段ブロックの構成可能ランプアップ/ダウン利得を変動させるように構成されている、項目1に記載の装置。
(項目6)
前記コントローラは、前記構成可能ランプアップ/ダウン利得を変動させ、前記電力段の出力におけるポップ音またはクリック音レベルを減衰させるように構成されている、項目1に記載の装置。
(項目7)
方法であって、
増幅器によって、増幅のための入力アナログ信号を受信することと、
前記入力アナログ信号を前置電力段ブロック内で処理することであって、前記処理するステップは、前記前置電力段ブロックの構成可能ランプアップ/ダウン利得を変動させることを含む、ことと、
前記処理された信号を電力段ブロック内で増幅させることと、
フィードバックループを通して、前記増幅された信号を前記前置電力段ブロックにフィードバックすることであって、前記前置電力段ブロックの構成可能ランプアップ/ダウン利得を変動させるステップは、前記フィードバックループの遷移の間に生じる、ことと
を含む、方法。
(項目8)
前記構成可能ランプアップ/ダウン利得を変動させるステップは、前記前置電力段ブロックのパルス幅変調(PWM)発生器の構成可能ランプアップ/ダウン利得を変動させることを含む、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記構成可能ランプアップ/ダウン利得を変動させるステップは、前記前置電力段ブロックのループフィルタの複数のループフィルタ積分器の外側の構成可能ランプアップ/ダウン利得を変動させることを含む、項目7に記載の方法。
(項目10)
前記構成可能ランプアップ/ダウン利得を変動させるステップは、前記フィードバックが閉ループ拡大状態から閉ループ定常状態に遷移する時間の間、コントローラが前記ランプアップ/ダウン利得を変動させることによって行われる、項目7に記載の方法。
(項目11)
前記構成可能ランプアップ/ダウン利得を変動させることを判定するステップは、前記構成可能ランプアップ/ダウン利得を変動させ、前記前置電力段ブロック内で処理することに起因する電圧オフセットを低減させることを含む、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記構成可能ランプアップ/ダウン利得を変動させることを判定するステップは、閉ループ拡大状態から閉ループ定常状態への前記フィードバックループの遷移の間、前記構成可能ランプアップ/ダウン利得を変動させることを含む、項目10に記載の方法。
(項目13)
前記構成可能ランプアップ/ダウン利得を変動させることを判定するステップは、前記構成可能ランプアップ/ダウン利得を変動させ、前記電力段の出力におけるポップ音/クリック音レベルを減衰させることを含む、項目10に記載の方法。
(項目14)
装置であって、
増幅器回路に結合するように構成されたコントローラを備え、前記コントローラは、
前記増幅器回路遷移の前置電力段ブロックおよび電力段ブロックの周囲のフィードバックループが事実上閉鎖したことを判定するステップと、
前記フィードバックループが事実上閉鎖したことを判定した後、前記増幅器回路の前置電力段ブロックの構成可能ランプアップ/ダウン利得要素のランプアップ/ダウン利得を判定するステップと、
前記判定されたランプアップ/ダウン利得に対して、前記フィードバックループが第1のステータスから第2のステータスに遷移している間、前記前置電力段ブロックの構成可能ランプアップ/ダウン利得を調節するステップと
を含むステップを行うように構成されている、装置。
(項目15)
前記コントローラは、前記構成可能ランプアップ/ダウン利得要素のランプアップ/ダウン利得を判定し、前記前置電力段ブロックに起因する電圧オフセットを低減させるように構成されている、項目14に記載の装置。
(項目16)
前記コントローラは、閉ループ拡大状態の第1のステータスから閉ループ定常状態の第2のステータスへの前記フィードバックループの遷移の間、前記構成可能ランプアップ/ダウン利得要素の利得を判定するように構成されている、項目14に記載の装置。
(項目17)
前記コントローラは、前記増幅器回路のパルス幅変調(PWM)発生器のランプアップ/ダウン利得を判定するように構成されている、項目14に記載の装置。
(項目18)
前記コントローラは、前記増幅器回路のループフィルタの複数のループフィルタ積分器の外側の構成可能ランプアップ/ダウン利得要素のランプアップ/ダウン利得を判定するように構成されている、項目14に記載の装置。
(項目19)
前記増幅器回路による増幅のための入力アナログ信号を受信するように構成された入力ノードであって、前記入力ノードは、前記増幅器回路に結合され、
前記増幅器回路は、
前記入力ノードに結合された前置電力段ブロックと、
前記前置電力段ブロックに結合された電力段ブロックであって、前記フィードバックループは、前記電力段ブロックの出力を前記前置電力段ブロックの入力に結合する、電力段ブロックと
を備える、入力ノードと、
前記増幅器回路の出力に結合された変換器であって、前記変換器は、前記前置電力段ブロックによって処理され、かつ前記電力段ブロックによって増幅された前記入力アナログ信号の表現を再現するように構成されている、変換器と
をさらに備える、項目14に記載の装置。
【0024】
開示されるシステムおよび方法のより完全な理解のために、ここで、付随の図面と関連して検討される以下の説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、先行技術による、例示的閉ループD級増幅器アーキテクチャを図示する、ブロック図である。
図2図2は、先行技術による、二重ループ増幅器を図示する、ブロック図である。
図3図3は、先行技術による、例示的固定利得PWM変調器/発生器を図示する、回路図である。
図4図4は、先行技術による、D級増幅器内の信号に関する例示的信号タイミング図および例示的関係を図示する、グラフである。
図5図5は、本開示の一実施形態による、可変ランプアップ/ダウン利得を伴う例示的閉ループD級増幅器アーキテクチャを図示する、ブロック図である。
図6図6は、本開示の一実施形態による、D級増幅器の例示的出力波形を図示する、グラフである。
図7図7は、本開示の一実施形態による、例示的可変またはランプ利得パルス幅変調(PWM)変調器を図示する、回路図である。
図8図8は、本開示の一実施形態による、D級増幅器内の信号に関する例示的信号タイミング図および例示的関係を図示する、グラフである。
図9図9は、本開示の一実施形態による、例示的可変電流源を図示する、回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(詳細な説明)
増幅器内の構成要素間の電圧オフセットは、可変ランプアップ/ダウン利得PWM変調器/発生器等の可変ランプアップ/ダウン利得を伴う構成要素の使用を通して低減され得る。本電圧オフセットは、増幅器によって拡大されると、オーディオ増幅器内でクリック音およびポップ音として聞こえ得る、非意図的アーチファクトを出力信号内に生じさせ得る。したがって、オーディオ増幅器内で使用される本開示の実施形態は、例えば、ランプアップおよびランプダウン利得を伴うPWM変調器/発生器を提供することによって、可聴ポップ音およびクリック音の問題を排除または低減させ得る。
【0027】
可変利得アップ/ダウンPWM発生器を伴う閉ループD級増幅器の例示的実施形態が、図5に示される。閉ループD級増幅器500は、図1の閉ループD級増幅器100に類似するが、固定利得PWM発生器106は、可変ランプアップ利得および/またはランプダウン利得を伴うPWM変調器/発生器506と置換される。閉ループD級増幅器500は、加算器102を含む、フィードフォワード経路と、ループフィルタ104および可変利得を伴うパルス幅変調(PWM)変調器/発生器506を含む、前置電力段ブロック504と、電力段ブロック108とを含む。増幅器500はまた、電力段ブロック108の出力から開始し、加算器102に戻るように結合される、フィードバック経路110を含む。電力段ブロック108の出力は、スピーカ112または他の変換器もしくは他の負荷を駆動させてもよい。ループフィルタ104は、積分器を含んでもよく、ランプアップ利得および/またはランプダウン利得を伴うPWM変調器/発生器506は、PWM波に、入力ノード522で受信され、入力利得ブロック502内で増幅されたアナログ入力信号を変調させ得る。
【0028】
PWM変調器/発生器506は、可変ランプアップ/ランプダウン利得を単一ループ増幅器システム内で提供してもよい。可変ランプアップ/ランプダウン利得は、スピーカ出力におけるポップ音/クリック音レベルを減衰させるために、閉ループ拡大状態等の第1のステータスから閉ループ定常状態等の第2のステータスへの平滑遷移を提供することに役立つ。ある実施形態では、可変またはランプ利得PWM変調器/発生器506は、単純可変利得段の一部であってもよい。D級増幅器500のループフィルタ104は、積分器に近似する、理想的低域通過フィルタであり得る。
【0029】
PWM変調器/発生器506の可変ランプアップ/ダウン利得等の前置電力段ブロック504の可変利得は、コントローラ532によって変動されてもよい。コントローラ532は、閉ループが閉ループ拡大状態から閉ループ定常状態に遷移する等、ループがある状態から別の状態への遷移を開始するように制御されると、利得のランプアップ/ダウンを開始してもよい。利得のランプアップ/ダウンは、線形ランプ、5−ステップランプ、10−ステップランプ、または任意の他のランプ構成を含んでもよい。ランプ時間は、例えば、200マイクロ秒、400マイクロ秒、600マイクロ秒、800マイクロ秒、および1ミリ秒から選択されてもよい。
【0030】
図6は、固定利得PWM変調器/発生器106を実装する、D級増幅器100の出力電圧(例えば、図1の電力段ブロック108の出力)と、可変利得PWM変調器/発生器506を実装する、D級増幅器500の出力電圧を比較する、例示的波形を示す。波形602は、固定利得PWM変調器/発生器106を伴うD級増幅器100の例示的出力電圧を示す。波形604は、ランプアップ利得および/またはランプダウン利得を伴うPWM変調器/発生器506を用いるD級増幅器500の例示的出力電圧を示す。波形602は、利得がPWM発生器106に対して固定されると、10mVに等しいまたは約10mVである、オフセット電圧603が、増幅器100の出力において明らかになることを示す。出力電圧は、閉ループ拡大状態の間、約25マイクロ秒間、オフセット電圧603によって影響される。200マイクロ秒時またはその辺りにおいて、PWM発生器106の出力電圧は、閉ループ定常状態条件の間、211マイクロ秒時またはその辺りにおいて、ゼロに向かって低下し始め、そこに落ち着く。
【0031】
D級増幅器500への類似入力は、増幅器に最終的に到達するオフセットを低減させる改良された能力を示す。波形604は、利得が可変またはランプ(ランプアップまたはランプダウン等)するとき、そのようなオフセット電圧603が、D級増幅器500の出力電圧に存在しない、または事実上明らかではないことを示す。そのようなオフセット電圧は、出力に存在しない場合、公称値である、または波形602のオフセット電圧603と比較して非常にわずかである。波形604は、例示的可変またはランプPWM発生器506が200マイクロ秒以内にゼロ(0)利得から4(4)の利得にランプアップするときの挙動を示す。可変またはランプ利得のため、波形604は、D級増幅器500の出力電圧が比較的に平坦であることを示す。公称またはわずかなオフセット電圧(例えば、概して、波形604内に認められ得ない)が存在し得るが、波形602内のオフセット電圧603と比較して明らかではない。波形606は、波形604の一部の分解図を示し、増幅器500が閉ループ拡大状態にある間、約200マイクロ秒で生じる、D級増幅器500の出力内のわずかな増加およびランプアップを示す。203マイクロ秒時またはその辺りにおいて、増幅器500の出力電圧は、低下し、出力電圧は、次いで、214マイクロ秒時またはその辺りにおいて、横ばいになり、約0ボルトに落ち着く。約203〜214マイクロ秒周期の間に生じる低下は、概して、増幅器500のループが閉ループ拡大状態から閉ループ定常状態に遷移することと、閉ループが、増幅器500の出力電圧の提供を引き継ぎ始めることとに起因する。波形606に示される電圧ランプアップおよびランプダウンの量は、30マイクロボルトに近く、これは、波形602の10mVオフセット電圧603と比較して、50dB低い。
【0032】
前述され、図5の増幅器500に示される、可変ランプアップ/ダウン利得は、PWM変調器/発生器506によって提供されてもよい。他の実施形態では、可変ランプアップ/ダウン利得は、前置電力段ブロックのループフィルタの複数のループフィルタ積分器の外側にある構成要素等、増幅器500の他の構成要素内で提供されてもよい。可変ランプアップ/ダウン利得を伴うPWM変調器/発生器506の実施形態は、図7に示される。図7は、本開示の一実施形態による例示的可変またはランプ利得パルス幅変調(PWM)変調器を図示する、回路図である。PWM変調器/発生器506は、図3のものに類似するが、電流源302および304を含む代わりに、PWM変調器/発生器506は、代わりに、可変またはランプ(ランプアップおよび/またはランプダウン)電流源702および704を含む。PWM変調器/発生器506はまた、コンデンサCと、増幅器306と、コンパレータ308および310とを含む。
【0033】
電流源702および704からの電流信号は、増幅器306の反転入力におけるPWM変調器/発生器506への1つの入力を提供し、非反転入力は、接地に結合されてもよい。増幅器306の出力は、三角またはランプ基準信号Vrampであってもよく、電圧信号Vrampは、対応するコンパレータ308および310のための個別の負の入力のそれぞれにフィードされる。ループフィルタ出力信号VsigPおよびVsigMは、対応するコンパレータ308および310に提供される。コンパレータ308および310は、ループフィルタ出力および三角またはランプ基準電圧Vrampを比較し、デジタルPWM信号PWM_MおよびPWM_Pをもたらす。
【0034】
増幅器500の例示的動作は、図8の波形を通して示される。図8は、PWM変調器/発生器506のためのコンパレータ308および310の電圧入力VsigPおよびVsigMならびに出力PWM_PおよびPWM_Mに関する例示的信号タイミング図および例示的関係を図示する、グラフである。波形802として示される変調器出力PWM_Diffの平均電圧は、以下の方程式に従って判定されてもよい。
【数3】
【0035】
PWM発生器利得が、次いで、以下の方程式に従って算出されてもよい。
【数4】
【0036】
波形804として示されるVramp信号の傾きは、PWM変調器/発生器506の利得が変動またはランプアップ/ランプダウンするため、変動するように示される。いくつかの実施形態では、Vramp信号の傾きは、8I/Cから4I/Cから2I/CからI/Cと経時的に変動する。図5のコントローラ532は、増幅器500が閉ループ拡大状態から閉ループ定常状態に遷移する時間後に開始して、8I/CからI/CへとVramp信号ランプ率を制御してもよい。
【0037】
閉ループ増幅器は、時間812における時間tで電源がオンにされる。電源がオンにされた後、ループフィルタ差動出力は、ゼロとなり得、したがって、PWM_Diffは、ゼロである。時間tとt(時間814)との間において、増幅器が閉ループ拡大状態にあるとき、PWM変調器/発生器506の利得は、著しいオフセットまたは電圧ジャンプが回避もしくは最小限にされるような様式で変動またはランプされてもよい。時間t後、ループフィルタは、オフセットを減衰させ始める。時間t(時間816)後、ループフィルタは、オフセットVOS2が低減されたレベルに減衰されると、閉ループ定常状態で起動する。さらに、非常にわずかな残留オフセットVOS1のみ、PWM_Diffに関して存在する。著しいオフセットまたは電圧ジャンプを回避もしくは最小限にすることによって、増幅器500のスピーカ112における出力は、減衰されるピークを有し得る。
【0038】
可変電流源702および704は、いくつかの実施形態では、図9に図示される回路によって実装されてもよい。図9は、本開示の一実施形態による例示的可変電流源を図示する、回路図である。可変電流源900は、演算増幅器(op amp)902と、個別の電流信号I、I、2I、4I、8I、...、2を提供する、複数の電界トランジスタ904、906、908、912、...、914とを含んでもよい。op−amp902の入力における基準電圧VrefおよびレジスタRは、可変電流源900から電流レベルを判定し得る。一実施形態では、図5のコントローラ532は、制御信号を通して基準電圧Vrefを制御することによって、ランプアップ/ダウン利得を変動させてもよい。
【0039】
ファームウェアおよび/またはソフトウェア内に実装される場合、前述の機能は、コンピュータ可読媒体上の1つ以上の命令もしくはコードとして記憶され得る。実施例として、データ構造でエンコードされた非一過性コンピュータ可読媒体およびコンピュータプログラムでエンコードされたコンピュータ可読媒体が挙げられる。コンピュータ可読媒体は、物理的コンピュータ記憶媒体を含む。記憶媒体は、コンピュータによってアクセスされ得る、任意の利用可能な媒体であってもよい。一例として、限定ではないが、そのようなコンピュータ可読媒体は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取専用メモリ(ROM)、電気消去可能プログラム可能読取専用メモリ(EEPROM)、コンパクトディスク読取専用メモリ(CD−ROM)、または他の光ディスク記憶、磁気ディスク記憶もしくは他の磁気記憶デバイス、または命令もしくはデータ構造の形態で所望のプログラムコードを記憶するために使用され得、かつコンピュータによってアクセスされ得る、任意の他の媒体を備えることができる。ディスク(Diskおよびdisc)は、コンパクトディスク(CD)、レーザディスク、光学ディスク、デジタル多用途ディスク(DVD)、フロッピー(登録商標)ディスク、およびブルーレイディスクを含む。概して、ディスク(disk)は、データを磁気的に再現し、ディスク(disc)は、データを光学的に再現する。前述の組み合わせもまた、コンピュータ可読媒体の範囲内に含まれるべきである。
【0040】
コンピュータ可読媒体上の記憶に加え、命令および/またはデータは、通信装置内に含まれる伝送媒体上の信号として提供されてもよい。例えば、通信装置は、命令およびデータを示す信号を有する、送受信機を含んでもよい。命令およびデータは、1つ以上のプロセッサに、請求項に概略される機能を実装させるように構成される。
【0041】
本開示およびある代表的利点が、詳細に説明されたが、種々の変更、代用、ならびに改変が、添付の請求項によって定義される本開示の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に成され得ることを理解されたい。さらに、本願の範囲は、明細書に説明されるプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法、およびステップの特定の実施形態に限定されることを意図するものではない。例えば、オーディオ増幅器は、発明を実施するための形態全体を通して説明されたが、本発明の側面は、無線電気通信回路のための増幅器および/または小信号を感知するための増幅器等の他の増幅器の設計に適用されてもよい。当業者が本開示から容易に理解するであろうように、本明細書に説明される対応する実施形態と実質的に同一機能を果たす、または実質的に同一結果を達成する、現在既存のもしくは後に開発されたプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法、またはステップが、利用されてもよい。故に、添付の請求項は、その範囲内に、そのようなプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法、またはステップを含むことが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9