【文献】
Journal of Medicinal Chemistry,1996年,Vol.39, No.13,p.2594-2608
【文献】
Journal of the Chemical Society, Perkinson Transactions I,1984年,Vol.1984,p.29-39
【文献】
Advances in Experimental Medicine and Biology,1986年,Vol.198A,p.427-433
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の化合物の薬学的に許容可能な塩であって、該薬学的に許容可能な塩が薬学的に許容可能な酸性塩及び薬学的に許容可能な塩基性塩を含み、前記薬学的に許容可能な酸性塩が以下の酸:硫酸、硫酸水素塩、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、炭酸、ホウ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ピルビン酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、安息香酸、樟脳酸、フマル酸、シュウ酸、コハク酸、カンファースルホン酸、マレイン酸、サリチル酸又はα−乳酸の1つにより形成される塩を含み、前記薬学的に許容可能な塩基性塩が以下の塩基:リチウム、ナトリウム及びカリウムを含むアルカリ金属;マグネシウム及びカルシウムを含むアルカリ土類金属;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化リチウム、水素化ナトリウム、ブチルリチウム、アンモニウム、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、オルニチン、アルギニン、リシン又はヒスチジンの1つにより形成される塩を含む、薬学的に許容可能な塩。
請求項1に記載の化合物の溶媒和混合物であって、溶媒和物が水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、酢酸エチル及びDMSOから選択される1つ、又はそれらの組合せである、溶媒和混合物。
高血圧及びその合併症の予防法、治療又は遅延のための薬剤の製造における請求項1に記載の化合物の使用であって、該合併症が冠動脈性心疾患、狭心症、急性心不全、慢性鬱血性心不全、心筋梗塞及び後遺症、鬱血性心疾患、心筋虚血、心筋炎、心筋線維症、心筋肥大、アテローム性動脈硬化症、良性小動脈性腎硬化症、悪性小動脈性腎硬化症、血管増殖異常及びリモデリング、血管新生関連疾患(新生血管黄斑症等)、高アルドステロン症、不整脈、腎疾患、糖尿病、脳卒中、血栓症、腎不全(糖尿病性腎症等)、高脂血症、肥満、高血糖、網膜動脈硬化症並びに高血圧性眼底病変の1つ又は複数を含む、使用。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、式(1)の構造を有するトリペプチド化合物を提供する:
【化1】
(ここで式(I)において、
Rは式(II):
【化2】
によって表され、
ここで式(II)において、
R
1は水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、アルケニル、アルキニル、アシル、アロイル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール又はヘテロアラルキルから選択され、
R
2は水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、アルケニル、アルキニル、アシル、アロイル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、アルキルチオ、アラルキルチオ、アリールチオ、F、Cl、Br、I、NO
2又はCNから選択され、
R
1及びR
2は同じであるか又は異なり、
n=0、1、2、3、4又は5であり、n≧2である場合、複数のR
1は同じであるか又は異なり、
m=0、1、2、3、4又は5であり、m≧2である場合、複数のR
2は同じであるか又は異なり、
Wは、
【化3】
から選択され、ここで、
【化4】
はその左側がベンゼン環に連結し、ここでZは酸素又は窒素から選択され、R
6は水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール又はヘテロアラルキルから選択され、
Xは酸素又は水素から選択され、
ここで式(I)において、
R’は式(III):
【化5】
に示されるようにL−アミノ酸若しくはD−アミノ酸、若しくはアミノ酸誘導体の残基であるか、又はR’は存在せず、
R’がL−アミノ酸若しくはD−アミノ酸、又はアミノ酸誘導体の残基である場合、
【化6】
のC末端は、
【化7】
のN末端に連結し、
【化8】
のN末端は、
【化9】
のC末端に連結し、
R’が存在しない場合、
【化10】
はアミド結合又はC−N結合を介して、
【化11】
に連結し、
ここで式(III)においてR
4及びR
5は各々独立して水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール又はヘテロアラルキルから選択され、R
4及びR
5は同じであるか又は異なり、
ここで式(I)において、
R’’は式(IV):
【化12】
によって表され、
ここで式(IV)において、
Yは酸素、窒素又は硫黄から選択され、
Yが窒素である場合、R’’’’はR
7及びR
8であり、R’’は、
【化13】
であり、
Yが酸素である場合、R’’’’はR
9であり、R’’は−OR
9であり、
Yが硫黄である場合、R’’’’はR
10であり、R’’は−SR
10であり、
ここでR
7、R
8、R
9及びR
10は同じであっても又は異なっていてもよく、各々独立して水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール又はヘテロアラルキルから選択され、
ここで式(I)において、
R’’’は水素又はアルキルから選択され、
A=炭素であり、
Lは水素、アルキル、置換アルキル、アリール又は置換アリールから選択され、
Dは炭素であるか又は存在せず、t=0、1、2、3であり、
Dが炭素であり、かつBが炭素である場合、Aは炭素−炭素二重結合若しくは炭素−炭素単結合によってBに連結し、K及びB及びDは環系内にあるか、又はAは炭素−炭素二重結合若しくは炭素−炭素単結合によってBに連結し、KはBに連結し、Dに連結せず、
K及びB及びDが環系内にある場合、Kは炭素数2〜8のアルキル若しくはヘテロアルキル若しくは炭素数3〜8のアルケニルから選択されるか、又はKがB及びDとともにアリール、置換アリール、ヘテロアリール若しくは置換ヘテロアリールを形成し、
KがBに連結し、Dに連結しない場合、Kは水素、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アリール、アラルキル、ヘテロアリール又はヘテロアラルキルから選択され、
Dが炭素であり、かつBが硫黄である場合、Aは炭素−硫黄単結合を介してBに連結し、Kは存在せず、
Dが存在しない場合、Bは炭素であり、Kは水素であり、
ここでアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロアルキル基、ヘテロシクリル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基及びヘテロアラルキル基は各々非置換であっても、又はヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、チオ基、チオアルキル基、アリールチオ基、アミノ基、アミド基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホンアミド基、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、ケト基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキサミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アルキルウレイド基、アリールウレイド基、ハロ基、シアノ基若しくはニトロ基から選択される1つ若しくは複数の置換基で任意に置換されていてもよい)。
【0006】
任意に、R基:
【化14】
が、以下の構造:
【化15】
から選択される。
【0007】
任意に、R’基:
【化16】
が、以下の構造:
【化17】
(ここで「
*」は不斉中心を表し、「
*」を含む化合物にはその構造式の全てのキラル異性体が含まれる)から選択される。
【0008】
任意にYが酸素である場合、R
9はメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル又は以下の構造:
【化18】
から選択される基である。
【0009】
任意にYが窒素である場合、R’’は、
【化19】
(ここで「
*」は不斉中心を表し、「
*」を含む化合物にはその構造式の全てのキラル異性体が含まれる)から選択される基である。
【0010】
任意にYが硫黄である場合、R’’は、
【化20】
(ここで「
*」は不斉中心を表し、「
*」を含む化合物にはその構造式の全てのキラル異性体が含まれる)から選択される基である。
【0011】
任意に式(I)が以下の式の構造:
【化21】
(ここで「
*」は不斉中心を表し、「
*」を含む化合物にはその構造式の全てのキラル異性体が含まれる)から選択される。
【0012】
任意に上に記載のトリペプチド化合物は、以下の構造:
【0013】
【表1】
(ここで「
*」は不斉中心を表し、「
*」を含む化合物にはその構造式の全てのキラル異性体が含まれる)の化合物から選択される。
【0014】
本発明はまたYが酸素である上に記載の化合物の加水分解物を提供する。
【0015】
本発明はまた上に記載の化合物の鏡像異性体、互変異性体、立体異性体、回転異性体、ジアステレオ異性体又はラセミ体を提供する。
【0016】
本発明はまた上に記載の化合物の薬学的に許容可能な塩及び薬学的に許容可能なエステルであって、該薬学的に許容可能な塩が薬学的に許容可能な酸性塩及び薬学的に許容可能な塩基性塩を含み、薬学的に許容可能な酸性塩が以下の酸:硫酸、硫酸水素塩、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、炭酸、ホウ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ピルビン酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、安息香酸、樟脳酸、フマル酸、シュウ酸、コハク酸、カンファースルホン酸、マレイン酸、サリチル酸又はα−乳酸の1つにより形成される塩を含み、薬学的に許容可能な塩基性塩が以下の塩基:リチウム、ナトリウム及びカリウムを含むアルカリ金属;マグネシウム及びカルシウムを含むアルカリ土類金属;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化リチウム、水素化ナトリウム、ブチルリチウム、アンモニウム、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、オルニチン、アルギニン、リシン又はヒスチジンの1つにより形成される塩を含み、該薬学的に許容可能なエステルが化合物中のヒドロキシル基又はフェノール性ヒドロキシル基と酸とにより形成されるエステルを含む、薬学的に許容可能な塩及び薬学的に許容可能なエステルを提供する。
【0017】
本発明はまた上に記載の化合物の溶媒和混合物であって、溶媒和物が水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、酢酸エチル及びDMSOから選択される1つ、又はそれらの組合せである、溶媒和混合物を提供する。
【0018】
本発明はまた上に記載の化合物を調製する方法であって、
【化22】
を含む、方法(ここで、
Yが窒素又は硫黄から選択される場合、工程(2)は化合物(I’)の合成後に終了するか、又は工程(2’)は化合物(I’’)の合成後に終了し、
A、B、D、L、K、n、m、R
1、R
2、R
4、R
5、R’’’、R’’’’、t、W及びYは請求項1〜7のいずれか一項に記載の通りである;
a:α−アミノ酸のアミノの保護;Pは好適な保護基を表し、tert−ブトキシカルボニル(Boc)、アリルオキシカルボニル(Alloc)、ベンジルオキシカルボニル、トリチル、ベンジルオキシメチル、フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、フタロイル、ジチオスクシニル、メトキシホルミル、エトキシホルミル、ベンゼンスルホニル、p−トルエンスルホニル、2−(トリメチルシリル)エタンスルホニル、ベンジル(Bn)、トリチル(Tr)又はアリルから選択される;
b:ペプチド結合の合成の条件;
c:工程aに対応する脱保護;
e:bと同じ;
f:cと同じ;
g:bと同じ;
g’:還元的アミノ化;
h:エステル加水分解の条件;
ここで「
*」は不斉中心を表し、「
*」を含む化合物にはその構造式の全てのキラル異性体が含まれる)を提供する。
【0019】
他の態様において、本発明は、高血圧及びその合併症の予防法、治療又は遅延のための薬剤の製造における上に記載の化合物の使用であって、該合併症が冠動脈性心疾患、狭心症、急性心不全、慢性鬱血性心不全、心筋梗塞及び後遺症、鬱血性心疾患、心筋虚血、心筋炎、心筋線維症、心筋肥大、アテローム性動脈硬化症、良性小動脈性腎硬化症、悪性小動脈性腎硬化症、血管増殖異常及びリモデリング、血管新生関連疾患(新生血管黄斑症等)、高アルドステロン症、不整脈、腎疾患、糖尿病、脳卒中、血栓症、腎不全(糖尿病性腎症等)、高脂血症、肥満、高血糖、網膜動脈硬化症並びに高血圧性眼底病変の1つ又は複数を含む、使用を提供する。
【0020】
他の態様において、本発明は、上に記載の化合物、請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物の薬学的に許容可能な塩、上に記載の化合物の薬学的に許容可能な担体、賦形剤及び希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
【0021】
他の態様において、本発明は、高血圧及びその合併症の予防法、治療又は遅延のための薬剤の製造における上に記載の医薬組成物の使用であって、該合併症が冠動脈性心疾患、狭心症、心不全(急性又は慢性鬱血性心不全)、心筋梗塞及び後遺症、鬱血性心疾患、心筋虚血、心筋炎、心筋線維症、心筋肥大、アテローム性動脈硬化症、良性小動脈性腎硬化症、悪性小動脈性腎硬化症、血管増殖異常及びリモデリング、血管新生関連疾患(新生血管黄斑症等)、高アルドステロン症、不整脈、腎疾患、糖尿病、脳卒中、血栓症、腎不全(糖尿病性腎症等)、高脂血症、肥満、高血糖、網膜動脈硬化症並びに高血圧性眼底病変の1つ又は複数を含む、使用を提供する。
【0022】
本発明に関わる化合物はアンジオテンシン変換酵素の生物学的活性を阻害する効果を有し、化合物自体及びその医薬組成物が高血圧、並びに他の心血管疾患及び脳血管疾患に対して予防効果及び治療効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
伝統中国医学の一つであるタンジン(ラテン名:サルビア・ミルティオリザ・ブンゲ(Salvia miltiorrhiza Bunge))が心血管疾患及び脳血管疾患の治療に使用されている。近年、高血圧の治療におけるタンジンの相乗効果が多くの文献で報告されている(Biological & Pharmaceutical Bulletin, 2011, 34 (10), 1596-1601.、Phytotherapy Research, 2010, 24(5), 769-774.、American Journal of Physiology, 2007, 292(5, Pt. 2), H2131-H2137.、Chinese Journal of Clinical Rehabilitation, 2006, 10(23), 73-75、Medicinal and Aromatic Plants-Industrial Profiles, 2000, 14(Sage), 193-205)。プリル(pril)及びサルタン(sartan)抗高血圧薬との組合せで、タンジン薬は特に糖尿病を伴う高血圧患者において顕著な臨床効果を有する。
【0025】
ダンシェンスはタンジンの水溶性抽出物の主成分であり、そのカテコール及び乳酸構造から抗酸化、心血管保護、血管拡張の促進、血圧低下等の独自の効果を有する(Characterization of the Radical Scavenging and Antioxidant Activities of Danshensu and Salvianolic Acid B. Food and Chemical Toxicology, 2008, 46(1), 73-81、Protective effect of danshensu on endothelial vascular activity in rats with isoproterenol-induced injury and its mechanism, Chinese herbal medicine, 2013, 1: 59-64)。ポリフェノール性天然産物がアンジオテンシン変換酵素に対する阻害効果を有することが見出されている(Angiotensin-Converting Enzyme Inhibitory Effects by Plant Phenolic Compounds: A Study of Structure Activity Relationships. J. Agric. Food Chem. 2013, 61, 11832-11839.、Inhibition of Angiotesin-Converting Enzyme by Quercetin Alters the Vascular Response to Brandykinin and Angiotensin I. Pharmacology, 2002, 65, 182-186.、Ferulic Acid Improves Cardiovascular and Kidney Structure and Function in Hypertensive Rats. J. Cardiovasc. Pharmacol. 2013, 61, 240-249.、Tannic Acid, an Inhibitor for Renal Angiotensin Type 1 Receptor and Hypertension in Spontaneously Hypertensive Rats. Endocr. Rev. 2012, 33, SAT-248.)。本発明では、以前の研究(中国特許出願公開第1868998号、ボルネオールβ−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−α−ヒドロキシプロピオネート、その合成方法及び使用(borneol β-(3,4-dihydroxyphenyl)-α-hydroxypropionate, its synthesis method and use))の結果を参照することにより、従来のACE薬の分子骨格にダンシェンス基及び他のフェノール基を導入し、同時に「君薬−使薬対(monarch drug-conductant drug pair)」及びプロドラッグ設計の概念に従ってボルネオール、メントール及び他の基を導入することで、アンジオテンシン変換酵素阻害活性を有する新しいクラスの薬物を設計した。
【0026】
本発明は、カプトプリル、エナラプリル、リシノプリル、ペリンドプリル、アラセプリル、デラプリル、キナプリル、ラミプリル、シラザプリル、ベナゼプリル、ホシノプリル、ゾフェノプリル、トランドラプリル、イミダプリル、テモカプリル、スピラプリル及びモエキシプリル等の開示のアンジオテンシン変換酵素阻害薬の化学構造に言及する。
【0027】
本発明は、抗高血圧メルカプトアシルアミノ酸誘導体及びそれらの使用(Antihypertensive mercaptoacylamino acid derivatives and their use)(1980年、欧州特許出願公開第9898号)、変換酵素阻害薬5,6−ジヒドロ[1,4]チアジノ[4,3−a]キノリン−1(2H),4(4aH)−ジオンの調製(Preparation of converting enzyme inhibitor 5,6-dihydro[1,4]thiazino[4,3-a]quinoline-1(2H),4(4aH)-dione)(1981年、米国特許第4273927号)、[4R]−3−(ω−アロイルプロピオニル)−4−チアゾリジンカルボン酸及びエステル([4R]-3-(ω-Aroylpropionyl)-4-thiazolidinecarboxylic acids and esters)(1983年、米国特許第4374249号)等のアンジオテンシン変換酵素阻害薬に関する特許文献も参照する。
【0028】
本発明は、以下の化合物を開示する国際公開第9302679号(1993年)、アンジオテンシン変換酵素阻害薬の投与によって月経前症候群を治療する方法(Method of treating premenstrual syndrome by administration of an angiotensin-converting enzyme inhibitor)も参照する。
【化23】
【0029】
本発明は、以下の化合物を開示する米国特許出願公開第20070032661号(2007年)、ペリンドプリルの中間体を調製するプロセス(Process for the preparation of intermediates of perindopril)も参照する。
【化24】
【0030】
本発明の全文で他に指定のない限り、以下の名称又は用語の定義は本発明の全ての態様に適用される。
【0031】
「アルキル」という用語はメチル、エチル、プロピル及びイソプロピルを含むが、これらに限定されない、1個〜15個の炭素原子、好ましくは1個〜6個の炭素原子を含有する直鎖又は分岐の脂肪族炭化水素基を意味する。
【0032】
「置換アルキル」という用語は1つ又は複数の置換基で置換されたアルキル基を意味し、該置換基は同じであっても又は異なっていてもよく、それぞれ独立してアルキル、シクロアルキル、アリール、シアノ、ニトロ、ハロ、アルコキシ、アミノ、アルキルで置換された第一級、第二級若しくは第三級アミノ、又はシクロアルキルで置換された第一級、第二級若しくは第三級アミノ、ヒドロキシ、メルカプト、アルキルチオ、アルキルケト及びカルボキシルからなる群から選択される。
【0033】
「アルケニル」という用語は少なくとも1つのC=C二重結合と2個〜15個の炭素原子、好ましくは2個〜8個の炭素原子とを含有する直鎖又は分岐又は環状の脂肪族炭化水素ラジカルを指す。
【0034】
「置換アルケニル」という用語は1つ又は複数の置換基で置換されたアルケニル基を指し、該置換基は同じであっても又は異なっていてもよく、それぞれ独立してアルキル、シクロアルキル、アリール、シアノ、ニトロ、ハロ、アルコキシ、アミノ、アルキルで置換された第一級、第二級若しくは第三級アミノ、又はシクロアルキルで置換された第一級、第二級若しくは第三級アミノ、ヒドロキシ、メルカプト、アルキルチオ、アルキルケト及びカルボキシルからなる群から選択される。
【0035】
「アルキニル」という用語は少なくとも1つのC≡C二重結合と2個〜15個の炭素原子、好ましくは2個〜8個の炭素原子とを含有する直鎖又は分岐又は環状の脂肪族炭化水素ラジカルを指す。
【0036】
「置換アルキニル」という用語は1つ又は複数の置換基で置換されたアルキニル基を指し、該置換基は同じであっても又は異なっていてもよく、それぞれ独立してアルキル、シクロアルキル、アリール、シアノ、ニトロ、ハロ、アルコキシ、アミノ、アルキルで置換された第一級、第二級若しくは第三級アミノ、又はシクロアルキルで置換された第一級、第二級若しくは第三級アミノ、ヒドロキシ、メルカプト、アルキルチオ、アルキルケト及びカルボキシルからなる群から選択される。
【0037】
「アリール」という用語は6個〜14個の炭素原子、好ましくは6個〜12個の炭素原子を含む芳香族の単環又は多環構造を指す。
【0038】
「置換アリール」という用語は1つ又は複数の置換基で置換されたアリール基を指し、該置換基は同じであっても又は異なっていてもよく、それぞれ独立してアルキル、シクロアルキル、アリール、シアノ、ニトロ、ハロ、アルコキシ、アミノ、アルキルで置換された第一級、第二級若しくは第三級アミノ、又はシクロアルキルで置換された第一級、第二級若しくは第三級アミノ、ヒドロキシ、メルカプト、アルキルチオ、アルキルケト及びカルボキシルからなる群から選択される。
【0039】
「ヘテロアリール」という用語は5個〜14個の炭素原子、好ましくは5個〜12個の炭素原子を含み、環の1つ又は複数の炭素原子が窒素、酸素及び硫黄を含むが、これらに限定されない他の元素で置換されている芳香族の単環又は多環構造を指す。好ましいヘテロアリール基としては、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、インドリル、キノリル、イソキノリル、ピラゾリル、フリル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、ピロリル、ベンゾフラニル及びベンゾチエニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
「置換ヘテロアリール」という用語は1つ又は複数の置換基で置換されたヘテロアリール基を指し、該置換基は同じであっても又は異なっていてもよく、それぞれ独立してアルキル、シクロアルキル、アリール、シアノ、ニトロ、ハロ、アルコキシ、アミノ、アルキルで置換された第一級、第二級若しくは第三級アミノ、又はシクロアルキルで置換された第一級、第二級若しくは第三級アミノ、ヒドロキシ、メルカプト、アルキルチオ、アルキルケト及びカルボキシルからなる群から選択される。好ましい置換アラルキル基としては、テトラメチルピラジンアルコール基が挙げられるが、これに限定されない。
【0041】
「アラルキル」という用語はアリール−アルキル基を意味する。ここでアリール及びアルキルは上記の通りである。好ましいアラルキル基としては、ベンジル及びフェネチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
「置換アラルキル」という用語は1つ又は複数の置換基で置換されたアラルキル基を指し、該置換基は同じであっても又は異なっていてもよく、それぞれ独立してアルキル、シクロアルキル、アリール、シアノ、ニトロ、ハロ、アルコキシ、アミノ、アルキルで置換された第一級、第二級若しくは第三級アミノ、又はシクロアルキルで置換された第一級、第二級若しくは第三級アミノ、ヒドロキシ、メルカプト、アルキルチオ、アルキルケト及びカルボキシルからなる群から選択される。好ましい置換アラルキル基としては、p−メチルベンジル及びアサルム(asarum:カンアオイ)アルコール基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
「シクロアルキル」という用語は通例、3個〜10個の炭素原子、好ましくは3個〜7個の炭素原子を含有する非芳香族の単環又は多環構造を指し、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
「置換シクロアルキル」という用語は1つ又は複数の置換基で置換されたシクロアルキル基を指し、該置換基は同じであっても又は異なっていてもよく、それぞれ独立してアルキル、シクロアルキル、アリール、シアノ、ニトロ、ハロ、アルコキシ、アミノ、アルキルで置換された第一級、第二級若しくは第三級アミノ、又はシクロアルキルで置換された第一級、第二級若しくは第三級アミノ、ヒドロキシ、メルカプト、アルキルチオ、アルキルケト及びカルボキシルからなる群から選択される。好ましい置換シクロアルキル基は3個〜7個の炭素原子を含み、デキストロボルニル(dextrobornyl)、レボメントール及びノルボルニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
「ハロゲン」という用語はフッ素、塩素、臭素及びヨウ素を意味する。好ましいハロゲンとしてはフッ素、塩素及び臭素が挙げられる。
【0046】
「ヘテロシクリル」という用語は概して、10個以下の環原子、好ましくは4個〜10個の環原子を含有し、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等の1つ又は複数の非炭素原子(単独であっても又は組み合わせて存在していてもよい)を含有する非芳香族の飽和単環式又は多環式環系であって、該環系には隣接する酸素−酸素、酸素−硫黄又は硫黄−硫黄基が存在しない、環系を意味する。好ましいヘテロシクリル基としてはピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピペリジニル、ピロリル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
「置換ヘテロシクリル」という用語は1つ又は複数の置換基で置換されたヘテロシクリル基を指し、該置換基は同じであっても又は異なっていてもよく、それぞれ独立してアルキル、シクロアルキル、アリール、シアノ、ニトロ、ハロ、アルコキシ、アミノ、アルキルで置換された第一級、第二級若しくは第三級アミノ、又はシクロアルキルで置換された第一級、第二級若しくは第三級アミノ、ヒドロキシ、メルカプト、アルキルチオ、アルキルケト及びカルボキシルからなる群から選択される。好ましい置換ヘテロシクリル基としては、N−メチルピペラジニル、3−フルオロピペリジニル、2,6−ジメチルモルホリニル、2−メチルピロリル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
「ヘテロアリールアルキル」という用語はヘテロアリール−アルキル基を指す。ここでヘテロアリール及びアルキルは上記の通りである。好ましいヘテロアリールアルキル基としては、2−ピリジルメチル、3−ピリジルメチル及び4−ピリジルメチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
「アシル」という用語はアルキル−C(O)−、置換アルキル−C(O)−、シクロアルキル−C(O)−、置換シクロアルキル−C(O)−及びヘテロシクリル−C(O)−を指す。ここで各基は上記の通りである。好ましいアシル基としてはアセチル、プロピオニル及びシクロブタノイルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
「アロイル」という用語はアリール−C(O)−及び置換アリール−C(O)−を指す。ここで各基は上記の通りである。好ましいアロイル基としてはベンゾイル及びp−メチルベンゾイルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
「アルコキシ」という用語はアルキル−O−及び置換アルキル−O−を指す。ここで各基は上記の通りである。好ましいアルキル基としては、メトキシ、エトキシ、イソプロピル、デキストロボルニルオキシ、レボメントールオキシ、2,3,4−トリメトキシベンゼン−2’−アリルオキシ(アサルムアルコール(asary-alcohol)オキシ基)及びテトラメチルピラジンオキシ基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
「アラルキルオキシ」という用語はアラルキル−O−及び置換アラルキル−O−を指す。ここで各基は上記の通りである。好ましいアラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ及び,3,4−トリメトキシベンゼン−2’−アリルオキシ(アサルムアルコールオキシ基)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
「アリールオキシ」という用語はアリール−O−及び置換アリール−O−を指す。ここで各基は上記の通りである。好ましいアリールオキシ基としては、フェノキシ及びp−メチルフェノキシが挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
「アルキルチオ」という用語はアルキル−S−基を指す。ここでアルキル部分は上記の通りである。好ましいアルキルチオ基としては、メチルチオ、エチルチオ及びプロピルチオが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
「アラルキルチオ」という用語はアラルキル−S−基を指す。ここで「アラルキル部分」は上記の通りである。好ましいアラルキルチオ基としては、フェニルメチルチオ及びフェニルエチルチオが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
「アリールチオ」という用語はアリール−S−基を指す。ここでアリール基は上記の通りである。好ましいアリールチオ基としては、フェニルチオが挙げられるが、これに限定されない。
【0057】
「アルキルスルホニル」という用語はアルキル−S(O
2)−基を指す。ここでアルキルは上記の通りである。好ましいアルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル及びエチルスルホニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
「アリールスルホニル」という用語はアリール−S(O
2)−基を指す。ここでアリールは上記の通りである。好ましいアリールスルホニル基としては、ベンゼンスルホニル及びナフチルスルホニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
「少なくとも1つ」という用語は1つ又は複数を意味する。
【0060】
「置換された」という用語は、特定の原子の通常の原子価を満たし、安定な化合物をもたらす限りにおいて指定の基が特定の原子上の1つ又は複数の水素に置き換わることを意味する。
【0061】
「任意に置換された」という用語は特定の基、ラジカル又は部分を置換に選択することを意味する。
【0062】
3. 塩及び溶媒和物
本発明において設計されるトリペプチド及びその類似体には、その「プロドラッグ」、「溶媒和物」、「塩」(「酸性塩」、「塩基性塩」及び分子内塩を含む)及び「エステル」も含まれる。トリペプチドの「プロドラッグ」、「溶媒和物」、「塩」及び「エステル」は全て本発明の範囲内に含まれる。「溶媒和物」及び「塩」は対応する化合物の遊離形態に相当する。
【0063】
「プロドラッグ」という用語は、式(I)の化合物又は塩、その溶媒和物若しくはそのエステルへと代謝されるか、又はin vivoで化学的に変換され得る薬物の前駆体化合物を指す。
【0064】
「溶媒和物」という用語は、本発明の化合物が1つ又は複数の溶媒分子と物理的に会合していることを意味する。この物理的会合は、水素結合、ファンデルワールス力等を含む様々な程度のイオン結合及び共有結合を伴う。「溶媒和物」は溶液相及び単離可能な溶媒和物という2つの部分からなる。好適な溶媒和物としては、水和物、メタノレート、エタノレート、DMSO溶媒和物及び酢酸エチル溶媒和物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
「塩」という用語は酸性塩、塩基性塩及び分子内塩を含み、本発明において設計されるトリペプチド化合物(式(I))と無機酸又は有機酸とによって形成される酸性塩、無機塩基及び有機塩基とによって形成される塩基性塩、並びにトリペプチド化合物(式(I))中に含有される塩基性基(例えばアミノ基、グアニジノ基、イミダゾリル基又はインドリル基等)と酸性基(例えばカルボン酸、スルホン酸アルキル又はリン酸等)とによって形成される分子内塩を意味する。
【0066】
酸性塩を形成するのに使用される酸としては、下記酸が挙げられるが、これらに限定されない:
硫酸、硫酸水素塩、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、炭酸、ホウ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ピルビン酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、安息香酸、樟脳酸、フマル酸、シュウ酸、コハク酸、カンファースルホン酸、マレイン酸、サリチル酸及びα−乳酸。加えて、P. Stahl, Camille G. eds. Handbook of Pharmaceutical Salts. Properties, Selection and Use, 2002, Zurich: Wiley-VCHに記載の薬学的に許容可能な塩を形成する酸が引用することにより本明細書の一部をなす。
【0067】
塩基性塩を形成するのに使用される塩基としては、下記塩基が挙げられるが、これらに限定されない:
リチウム、ナトリウム及びカリウム等のアルカリ金属;マグネシウム及びカルシウム等のアルカリ土類金属;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化リチウム、水素化ナトリウム、ブチルリチウム、アンモニウム、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、オルニチン、アルギニン、リシン又はヒスチジン等の塩基性アミノ酸。
【0068】
加えて、本発明のトリペプチド化合物によって形成される薬学的に許容可能なエステルは、化合物中のヒドロキシル基又はフェノール性ヒドロキシル基とカルボン酸(アルキルカルボン酸、置換アルキルカルボン酸、アリールカルボン酸、置換アリールカルボン酸、アラルキルカルボン酸、置換アラルキルカルボン酸、シクロアルキルカルボン酸、置換シクロアルキルカルボン酸、複素環カルボン酸及びヘテロアリールアルキルカルボン酸、例えば酢酸エステル、プロピオン酸エステル、安息香酸エステル及びニコチン酸エステルを含むが、これらに限定されない)とから形成されるカルボン酸エステル;化合物中のヒドロキシル基又はフェノール性ヒドロキシル基とスルホン酸(アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸及び置換アリールスルホン酸エステル、例えばメタンスルホン酸エステル、ベンゼンスルホン酸エステル、p−トルエンスルホン酸エステルを含むが、これらに限定されない)とから形成されるスルホン酸エステル;及び化合物中のヒドロキシル基又はフェノール性ヒドロキシル基とアミノ酸(α−アミノ酸、β−アミノ酸、ω−アミノ酸、例えばアラニンエステル及びグルタミン酸エステルを含むが、これらに限定されない)とから形成されるエステル;及び化合物中のヒドロキシル基又はフェノール性ヒドロキシル基とリン酸、モノアルキルリン酸、ジアルキルリン酸、亜リン酸(亜リン酸ジエチル等)とから形成されるリン酸エステルを意味する。
【0069】
加えて、本発明のトリペプチド化合物、並びに薬学的に許容可能な(非毒性の生理学的に許容可能な)「溶媒和物」、「塩」(「酸性塩」、「塩基性塩」及び分子内塩を含む)、「エステル」、関連する「プロドラッグ」、並びに関係のある鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、位置異性体及びラセミ体が本発明の範囲内に含まれる。
【0070】
加えて、合成プロセスにおいて対象の分子上の感受性又は反応性基を保護することが可能である。代表的な保護基は、T. W. Greene and P. G. M. Wuts "Protective Groups in Organic Synthesis" John Wiley & Sons, Inc., New York, 1999(その内容全体が引用することにより本明細書の一部をなす)に記載されている。対応する保護基は当該技術分野で既知の方法を用いて付加又は除去することができる。
【0071】
4. 医薬組成物
「組成物」という用語は特定の量の特定の成分を含む生成物、及び特定の量の特定の成分の組合せにより直接又は間接的に形成される任意の生成物を指す。
【0072】
「哺乳動物」はヒト及び他の哺乳動物を意味する。
【0073】
「患者」はヒト(people)及び動物を含む。
【0074】
「有効量」という用語は、アンジオテンシン変換酵素を阻害し、それにより予防法、治療、改善又は阻害の所望の効果をもたらすのに効果的な本明細書に記載の化合物又は医薬組成物の量を意味する。
【0075】
「薬学的に許容可能な担体」という用語は、動物に投与した場合に有害反応をもたらさず、医薬担体として働く、本発明の組成物の配合に十分な純度及び品質を有する化合物及び組成物を指す。
【0076】
「薬学的に許容可能な希釈剤」という用語は、動物に投与した場合に有害反応をもたらさず、医薬希釈剤として働く、本発明の組成物の配合に十分な純度及び品質を有する化合物及び組成物を指す。
【0077】
医薬組成物は概して、少なくとも1つの本発明の化合物と1つ又は複数の薬学的に許容可能な担体とを含む。固体剤形には、充填剤(例えばデンプン、微結晶性セルロース、スクロース、グルコース、ラクトース、ソルビトール、マンニトール等)、結合剤(ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、アカシアゴム)、保湿剤(グリセロール)、崩壊剤(炭酸カルシウム、デンプン、寒天、アルギン酸)、溶解遅延剤(パラフィン)、吸収促進剤(第四級アンモニウム化合物)、湿潤剤(セチルアルコール、モノステアリン酸グリセリル)、吸着剤(カオリン、ベントナイト)、滑沢剤(タルク;ポリエチレングリコール固体;ステアリン酸のカリウム塩、カルシウム塩又はマグネシウム塩;ラウリル硫酸塩;塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムを含む水溶性滑沢剤)、着色剤(クレイ、アルミナ)及び緩衝剤が含まれていてもよい。
【0078】
本発明の化合物は、従来の医薬プロセスに従って錠剤及びカプセル等の好適な剤形へと配合することができる。
【0079】
5. 障害及び疾患
本発明の化合物(I)、並びに薬学的に許容可能な(非毒性の生理学的に許容可能な)塩、エステル及び医薬組成物は心血管疾患及び脳血管疾患、特に高血圧と関連する心血管疾患及び脳血管疾患、並びにその合併症の予防、治療又は遅延に有用である。
【0080】
障害及び疾患には、高血圧、冠動脈性心疾患、狭心症、心不全(急性又は慢性鬱血性心不全)、心筋梗塞及び後遺症、鬱血性心疾患、心筋虚血、心筋炎、心筋線維症、心筋肥大、アテローム性動脈硬化症、良性小動脈性腎硬化症、悪性小動脈性腎硬化症、血管増殖異常及びリモデリング、血管新生関連疾患(新生血管黄斑症等)、高アルドステロン症、不整脈、腎疾患、糖尿病、脳卒中、血栓症、腎不全(糖尿病性腎症等)、高脂血症、肥満、高血糖、網膜動脈硬化症並びに高血圧性眼底病変の1つ又は複数が含まれる。
【0081】
6. 本発明に関するアサルムアルコールを調製する方法は、
(1)化合物Vと化合物VIとを脂肪アルコール及び触媒の存在下で反応させて、化合物VIIを得ることと:
【化25】
(式中、R
1は直鎖又は分岐C
1〜C
5アルキルから選択される)、
(2)化合物VIIを還元して化合物VIIIを得ることと:
【化26】
を含む。
【0082】
工程(1)において化合物VIと脂肪族アルコールとをキシレン、トルエン又はベンゼン中で3時間〜12時間、好ましくは4時間〜10時間還流下において反応させる。室温まで冷却した後、2,4,5−トリメトキシベンズアルデヒド(化合物V)及び触媒を反応混合物に添加し、混合物を5時間〜24時間、好ましくは8時間〜14時間更に還流させて化合物VIIを得る。工程(1)に使用される脂肪族アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、n−アミルアルコール及びイソアミルアルコールの1つ、又はそれらの任意の組合せ、好ましくはメタノール及びエタノールの1つ、又はそれらの任意の組合せである。脂肪族アルコールと化合物VIとのモル比は1:1〜1:10であり、好ましくは脂肪族アルコールと化合物VIとのモル比は1:1〜1:4である。使用される触媒はピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、2,6−ジメチルピリジン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルピリジン、4−ジメチルピリジン、ピペリジン及びテトラヒドロピロールの1つ、又はそれらの任意の組合せである。触媒と2,4,5−トリメトキシベンズアルデヒドとのモル比は0.1:1〜2:1である。
【0083】
工程2において使用される還元剤は水素化ホウ素ナトリウム、ジヒドロ−ビス(2−メトキシエトキシ)アルミン酸ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム又は水素化ジイソブチルアルミニウムであり、還元剤と化合物VIIとのモル比は1:1〜10:1である。使用される溶媒はテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメチルエチルエーテル、トルエン、ベンゼン、キシレン、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン及びn−ヘキサンの1つ、又はそれらの任意の組合せである。反応温度は78℃〜25℃であり、反応時間は0.5時間〜24時間である。
略称:
EDCI 1−エチル−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩
DCC ジシクロヘキシルカルボジイミド
Alloc アリルオキシカルボニル
Fmoc フルオレニルメトキシカルボニル
Bn ベンジルトリチル
Tr トリチル
T3P(商標) 1−プロピルリン酸無水物
HOBt 1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
THF テトラヒドロフラン
EtOAc 酢酸エチル
MeOH メタノール
EtOH エタノール
TFA トリフルオロ酢酸
DCM ジクロロメタン
DIPEA ジイソプロピルエチルアミン
DMF N,N−ジメチルアセトアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
DMAP 4−N,N−ジメチルピリジン
HATU 2−(7−アゾベンゾトリアゾール)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
PyBOP 1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリピロリジルヘキサフルオロホスフェート
Boc tert−ブトキシカルボニル
Cbz ベンジルオキシカルボニル
NMR 核磁気共鳴
MS 質量分析
【0084】
以下、本発明の具体的な調製及び実施例を記載する。他に指定のない限り、これらの具体的な実施例は本発明の範囲を限定することを何ら意図するものではなく、実施例に使用される様々な材料及び方法は当業者の知識の範囲内にある。
【実施例】
【0085】
実施例1:
【化27】
工程1:
【化28】
温度計を備える1000ml容の三つ口フラスコに、L−プロリン(115.1g、1.0mol)、1,4−ジオキサン(300mL)及び2mol/L水酸化ナトリウム水溶液(400mL)を添加した。混合物を0℃に冷却し、10分間撹拌した。二炭酸ジ−tert−ブチル(283.8g、1.3mol)を(60分間にわたって)滴加し、混合物をゆっくりと温め、室温で6時間又は一晩撹拌した。反応溶液を4mol/Lの希塩酸でpH=4に調整し、酢酸エチル/水系で抽出し、3回洗浄した。有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、189.2gの221S−1a−1を白色の固体として88%の収率で得た。
【0086】
工程2:
【化29】
温度計を備える500ml容の三つ口フラスコに、221S−1a−1(2.15g、10.0mmol)、テトラヒドロフラン(35mL)、D−ボルネオール(1.39g、9mmol)及びDMAP(0.12g、1mmol)を添加した。混合物を0℃に冷却し、5分間撹拌した。EDCI(2.30g、12mmol)を(15分間にわたって)少しずつ(portionwise)添加した後、混合物を24時間かけてゆっくりと室温まで温めた。反応溶液を酢酸エチル/水系で抽出し、3回洗浄した。有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、吸引濾過した。得られる固体をシリカゲルクロマトグラフィーカラムによって分離して、2.28gの221S−1a−2を60%の収率で得た。
【0087】
工程3:
【化30】
500ml容の一つ口フラスコに、221S−1a−2(3.51g、10mmol)、トリフルオロ酢酸(8mL)及びジクロロメタン(16mL)を添加した。混合物を室温、窒素雰囲気下で5時間撹拌し、減圧下で濃縮し、酢酸エチル(50mL)、水(50mL)及び飽和重炭酸ナトリウム水溶液(50mL)の添加後に3回抽出した。有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、吸引濾過し、減圧下で濃縮して、2.2gの221S−1a−3を淡黄色の油又は半固体として88%の収率で得た。生成物を更に精製することなく次の工程に直接使用した。
【0088】
工程4:
【化31】
250ml容の一つ口フラスコに、221S−1a−3(2.51g、10mmol)、N−Boc−Ala(2.08g、11mmol)、ジクロロメタン(50mL)、HOBT(1.49g、11mmol)及びEDCI(2.30g、12mmol)を添加した。混合物を室温、窒素雰囲気下で一晩撹拌し、減圧下で濃縮し、酢酸エチル(50mL)、水(50mL)及び飽和重炭酸ナトリウム水溶液(50mL)の添加後に3回抽出した。有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、吸引濾過し、減圧下で濃縮した。得られる粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーカラムによって単離して、3.85gの221S−1a−4を淡黄色の油として91.2%の収率で得た。
【化32】
【0089】
工程5:
【化33】
4.22gの221S−1a−4を実施例1の工程3に記載の手順に従って添加して、2.93gの221S−1a−5を薄黄色又はオフホワイト色の固体として91%の収率で得た。生成物を更に精製することなく次の工程に直接使用した。
【化34】
【0090】
工程6:
【化35】
100ml容の一つ口フラスコに、221S−1a−5(0.322g、1.0mmol)、D−ダンシェンス(0.22g、1.1mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド(5mL)/ヘキサメチルホスホルアミド(5mL)、HOBT(0.15g、1.1mmol)及びEDCI(0.18g、1.3mmol)を添加した。混合物を室温、窒素雰囲気下で36時間撹拌し、酢酸エチル(50mL)、水(50mL)及び飽和重炭酸ナトリウム水溶液(50mL)の添加後に3回抽出した。有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、吸引濾過し、減圧下で濃縮した。得られる粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって単離して、0.28gの221S−1aをオフホワイト色又は薄白色の泡状固体として56%の収率で得た。
【化36】
【0091】
工程7:
【化37】
100ml容の一つ口フラスコに、221S−1a(0.251g、0.5mmol)、水酸化リチウム(0.05g、2.0mmol)、3:1:1の水:メタノール:テトラヒドロフラン(10mL)を添加した。混合物を室温、窒素雰囲気下で16時間撹拌し、酢酸エチル(30mL)及び水(30mL)の添加後に3回抽出した。有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、吸引濾過し、減圧下で濃縮した。得られる粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって単離して、0.14gの221S−1a−6をオフホワイト色又は薄白色の泡状固体として76%の収率で得た。
【化38】
【0092】
以下の実施例2〜実施例28の式(I)の化合物を上記実施例1に記載の手順に従い、適切な出発物質及び試薬を用いて調製した。
【化39】
【0093】
【表2】
【0094】
221S−2a及び221S−144aの合成に使用したカップリング剤はT3P(商標)であり、7aの合成に使用したカップリング剤はHATUであり、使用した塩基はDIPEAであり、221S−119aの合成に使用したカップリング剤はPyBOPであり、221S−11a及び221S−12aの合成に使用したカップリング剤はDCCであった。
【0095】
重要中間体L−ダンシェンスの合成は中国特許出願公開第103288630号に見ることができ、リグストラジン(ligustrazine)アルコールの合成はJournal of Natural Products, 2012, 75 (9), 1589-1594に見ることができ、シクロヘキサンプロリンの合成はOrg. Biomol. Chem., 2012, 10, 2840-2846に見ることができる。アサルムアルコールの合成経路は以下の通りである:
【化40】
i:(1)メタノール、トルエン、110℃、4時間;(2)ピリジン、ヘキサヒドロピリジン、18時間の還流;j:LiAlH
4、THF、氷、AlCl
3、0℃、30分間
【0096】
実施例29:
【化41】
工程1:
【化42】
温度計を備える500ml容の三つ口フラスコに、N−Cbzプロリン(2.49g、10mmol)、DCM(50mL)、1−メチルピペラジン(1.10g、11mmol)及びDMAP(0.12g、1.0mmol)を添加した。混合物を0℃に冷却し、5分間撹拌した。EDCI(2.30g、12mol)を(15分間にわたって)少しずつ添加した後、混合物を24時間かけて室温でゆっくりと温めた。反応溶液を酢酸エチル/水系で抽出し、3回洗浄した。有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、吸引濾過した。得られる固体をシリカゲルクロマトグラフィーカラムによって分離し、2.91gの221S−151a−1を88%の収率で得た。
【0097】
工程2:
【化43】
500ml容の三つ口フラスコに、221S−151a−1(1.66g、5mmol)、パラジウム炭素(0.16g)及びメタノール(25mL)を添加し、水素ガスを導入した。混合物を室温、標準圧下で24時間撹拌した。パラジウム炭素を濾過によって除去し、濾液を減圧下で回転蒸発に供した。得られる油をシリカゲルクロマトグラフィーカラムによって分離して、0.89gの221S−151a−2を90%の収率で得た。
【0098】
工程3:
【化44】
温度計を備える500ml容の三つ口フラスコに、221S−151a−2(1.97g、10mmol)、DCM(50mL)、N−Cbzアラニン(2.45、11mmol)及びDMAP(0.12g、1.0mmol)をそれぞれ添加した。混合物を0℃に冷却し、5分間撹拌した。EDCI(2.30g、12mol)を(15分間にわたって)少しずつ添加した後、混合物を24時間かけて室温でゆっくりと温めた。反応溶液を酢酸エチル/水系で抽出し、3回洗浄した。有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、吸引濾過した。得られる固体をシリカゲルクロマトグラフィーカラムによって分離して、3.26gの221S−151a−3を81%の収率で得た。
【0099】
工程4:
【化45】
実施例29の工程2と同じ手順に従って、4.02gの221S−151a−3を添加し、2.01gの221S−151a−4を75%の収率で得た。
【0100】
工程5:
【化46】
実施例1の工程6と同じ手順に従って、0.27gの221S−151a−4を添加し、0.27gの221S−151aを61%の収率で得た。
【0101】
工程6:
【化47】
500ml容の三つ口フラスコに、221S−151a(0.45g、1mmol)及びメタノール(25mL)を添加した。混合物を0℃まで冷却し、5分間撹拌し、塩酸ガスをゆっくりと導入した後、2℃〜4℃で4時間撹拌し、次いで吸引濾過して、0.40gの221S−151a−5を83%の収率で得た。
【0102】
アミンを含有する他の化合物を同様に塩酸塩へと調製することができる。加えて、他の酸性塩を同様の方法で調製することができる。この場合、対応する酸を、アミン化合物を含有する溶媒にゆっくりと添加し、混合物を低温(2℃〜4℃)又は室温で2時間〜10時間撹拌して、対応する酸性塩を得た。
【0103】
実施例30〜実施例35
上述の実施例19に記載の手順に従い、以下の化合物を適切な出発物質及び試薬を用いて調製した。
【0104】
【表3】
【0105】
221S−153aの合成では、プロリン及びアラニンをBocで保護し、Boc脱保護反応を実施例1の工程2に従って行った。
【0106】
実施例36:
【化48】
工程1:
【化49】
N−Bocプロリン(21.5g、0.1mol)、DCC(20.6g、1.0mol)、DMAP(1.22g、0.01mmol)を150mLのDMFに順次添加した。反応混合物を室温で10分間撹拌した後、0℃で冷却した。エタンチオール(6.82g、0.11mol)を滴加した後、反応物を一晩置いた。200mLの水を反応系に添加して、反応をクエンチした。反応混合物を濾過し、濾過ケーキを酢酸エチルで洗浄して、DCUを除去した。有機相を合わせ、飽和炭酸ナトリウム水溶液(20mL×3)、水及び飽和塩化ナトリウム水溶液で続けて洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。低圧カラムクロマトグラフィーによる精製後に、18.4gの生成物221S−177a−1を71%の収率で得た。
【0107】
工程2:
【化50】
221S−177a−1(2.59g、10mmol)をEtOAc(25mL)に溶解し、よく撹拌した。HClガスを室温で30分間バブリングした後、残留HClガスを窒素ガスにより吹き払った。混合物を減圧下で回転蒸発に供し、続いて真空乾燥して、1.66gの221S−177a−2を白色の固体として85%の収率で得た。
【0108】
工程3:
【化51】
250mL容の一つ口フラスコに、221S−117a−2(1.98g、10mmol)、N−Boc−アラニン(2.08g、11mmol)、DCM(50mL)、HOBT(1.49g、11mmol)及びEDCI(2.30g、12mmol)を添加した。混合物を室温、窒素ガス保護下で一晩撹拌し、減圧下で濃縮し、酢酸エチル(50mL)、水(50mL)及び飽和重炭酸ナトリウム水溶液(50mL)の添加後に3回抽出した。有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、吸引濾過し、減圧下で濃縮した。得られる粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって単離して、2.51gの221S−177a−3を淡黄色の油として76%の収率で得た。
【0109】
工程4:
【化52】
実施例1の工程5と同じ手順に従って3.3gの221S−177a−3を添加し、1.66gの221S−177a−4をオフホワイト色の固体として74%の収率で得た。
【化53】
生成物を更に精製することなく次の工程に直接使用した。
【0110】
工程5:
【化54】
実施例1の工程6と同じ手順に従って0.23gの221S−177a−4を添加し、0.22gの221S−177aを51%の収率で得た。
【化55】
【0111】
実施例37:
【化56】
工程1:
【化57】
乾燥THF(40mL)中にN−Boc(2.15g、10mmol)を溶解した後、2,2’−ジチオピリジン(2.20g、10mmol)及びトリフェニルホスフィン(3.14g、12mmol)を添加した。混合物を室温で3時間撹拌し、酢酸エチル/水系で抽出した。有機相を合わせ、水、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。低圧カラムクロマトグラフィーによる精製後に、2.46gの生成物221S−181a−1を80%の収率で添加した。
【0112】
工程2:
【化58】
実施例1の工程3と同じ手順に従って3.08gの221S−181a−1を添加し、1.62gの221S−181a−2を78%の収率で得た。
【化59】
【0113】
工程3:
【化60】
実施例1の工程4と同じ手順に従って2.08gの221S−181a−2を添加し、3.31gの221S−181a−3を87%の収率で得た。
【化61】
【0114】
工程4:
【化62】
実施例1の工程3と同じ手順に従って3.80gの221S−181a−3を添加し、2.0gの221S−181a−4を73%の収率で得た。
【化63】
【0115】
工程5:
【化64】
実施例1の工程6と同じ手順に従って0.28gの221S−181a−4を添加し、0.22gの221S−181を48%の収率で得た。
【化65】
【0116】
実施例37:
工程1:
【化66】
250mL容の一つ口フラスコに、221S−1a−5(0.32g、1.0mmol)、プロトカテクアルデヒド(0.166g、1.2mmol)、ジクロロエタン(25mL)、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(0.10g、1.5mmol)及び2滴の酢酸を添加した。混合物を室温、窒素ガス保護下で6時間、減圧下で濃縮し、酢酸エチル(50mL)、水(50mL)及び飽和重炭酸ナトリウム水溶液(50mL)の添加後に3回抽出した。有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、吸引濾過し、減圧下で濃縮した。得られる粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーカラムによって単離して、0.15gの221S−221を淡黄色の油として34%の収率で得た。
【0117】
工程2:
【化67】
実施例1の工程7と同じ手順に従って0.44gの221S−221を添加し、0.16gの221S−221−1を52%の収率で得た。
【化68】
【0118】
本発明に記載される具体的な実施例は、単に本発明の趣旨の例示的な説明にすぎない。本発明の又は添付の特許請求の範囲に規定の趣旨を逸脱することなく、記載の具体的な実施形態に対して様々な変更、追加及び代替を行うことができることは本発明が属する技術分野の当業者には明らかである。
【0119】
本発明のLC−MS試験方法
LC−QTOF MS & MS/MS条件:HPLC機器:Agilent 1200 Infinity LC;カラム:Agilent HC−C18 4.6×250mm、5μm;流量:0.6mL/分;カラム温度:30℃;移動相:A−H
2O、0.1%酢酸/B−メタノール、A:B=20:80;MS機器:Agilent 6520 QTOF;イオン源:Dual ESI;イオンモード:ポジティブ;イオンスプレー電圧:3500V;乾燥ガス温度:350℃;乾燥ガス流量:10.0L/分(N
2);噴霧器圧:45psi(N2);ブレーカー電圧:130V;衝突エネルギー:それぞれ10eV、25eV及び40eV。
【0120】
本発明は新規のアンジオテンシン変換酵素阻害薬に関し、それらの生物学的活性を以下のin vivo及びin vitroアッセイによって更に説明する。
【0121】
アンジオテンシン変換酵素(ACE)活性の決定
in vitro ACE活性試験
高速液体クロマトグラフィーアッセイ:Cushman et al. (Biochemical Pharmacology, 1971, 20 (7): 1637-1648.; Journal of Dairy Science, 1995, 78 (4): 777-783.)に記載の方法を参照し、本発明の化合物のアンジオテンシン変換酵素活性を報告されている方法を用いてアッセイした。この方法は、ACE活性の連続モニタリングに好適なAng I模倣ヒプリル−ヒスチジル−ロイシン(HHL)の加水分解物である馬尿酸(Hip)の含量に基づくものであった。ACE阻害薬を添加することで反応の進行を阻害し、それにより馬尿酸の産生を低減することができる。このため、ACE阻害活性は阻害薬の添加の前後に産生される馬尿酸の228nmでのUV吸光度の変化を測定することによって得られる。
【0122】
材料及び方法:
(1)材料:
実験装置:
【0123】
【表4】
【0124】
実験試薬:
【0125】
【表5】
【0126】
(2)実験方法
25μlのサンプル溶液(50mM HEPES塩酸緩衝液(pH=8.3)に溶解した、300mM NaClを含有する、50μmol)及び200μlの3%基質HHL(同じ緩衝液に溶解した)の混合物を37℃で6分間維持した。50μlのACE(0.5U、1.5mLの同じ緩衝剤に溶解した)を添加した後、反応を37℃で15分間行い、次いで250μlの1mol/L塩酸を添加して反応を停止させた。反応混合物を均一に混合し、5分間静置した。2mLの酢酸エチルを添加した後、混合物を60秒間激しく振盪し、1000×gで10分間遠心分離した。上清を15分間沸騰水浴内に入れ、3mLの脱イオン水を添加した後、混合し、静置した。馬尿酸を逆相高速液体クロマトグラフィーによって検出するために20uLの反応物をロードした(loaded)。ACEに対するサンプルの阻害効果を産生される馬尿酸の量によって判断し、緩衝液をサンプル溶液の代わりにブランク対照として使用した。ACEに対するサンプルの阻害率(%)=(対照馬尿酸のピーク値−サンプル馬尿酸のピーク値)/対照馬尿酸のピーク値×100%。
【0127】
クロマトグラフィー条件:
紫外線検出器;波長:228nm;カラム:Agilent HC−C
18 4.6×250mm、5μm;流量:1.0mL/分;注入量:20μL;カラム温度:30℃;移動相:アセトニトリル−水(80/20)。結果を表5に示す。
【0128】
【表6】
【0129】
in vivo ACE活性試験
材料及び方法:
実験装置:
【0130】
【表7】
【0131】
実験材料:
【0132】
【表8】
【0133】
実験原理:
二重抗体サンドイッチELISA法によるACE含量の決定:抗マウスACE抗体を酵素プレートにコーティングし、実験時にサンプル又は標準物質中のマウスACEがコーティングした抗体に結合し、遊離成分を洗い流した。ビオチン化抗マウスACE抗体及びホースラディッシュペルオキシダーゼ標識アビジンを順次添加した。抗マウスACE抗体がコーティングした抗体に結合したマウスACEに結合し、ビオチンがアビジンに特異的に結合することで免疫複合体が形成され、遊離成分を洗い流した。発色基質(TMB)を添加するが、これはホースラディッシュペルオキシダーゼの触媒作用下で青色を示し、停止液の添加後に黄色となった。OD値を450nmの波長でマイクロプレートリーダーを用いて測定した。ACE濃度とOD450値との間で二次非線形関係が示され、標準曲線を作成することによってサンプル中のACEの濃度を算出した。
【0134】
実験方法:
(1)実験動物の処理
体重20±2gの108匹の雄性Kunmingマウスを、それぞれ1群当たり6匹のマウスで正常対照群、陽性対照カプトプリル群及び化合物221S群を含む18個の群に無作為に分けた。各群の動物に、7日連続で1日1回0.05mmol/kg(10ml/kg)での胃内投与を行った。最終胃内投与の2時間後に、マウスを頚椎脱臼によって屠殺し、心臓、肝臓、脳、肺、腎臓及び血液を採取した。腎臓を試験に使用し、他の組織サンプルは他の実験的試験に使用した。腎臓をPBSで10倍希釈し、ホモジナイズし、遠心分離し、上清をアッセイに使用するか又は−20℃で保管した。
【0135】
(2)ELISAの操作
マウスの腎組織におけるACEのレベルをELISAによって検出した。全ての工程を取扱説明書に厳密に従って行った。主な工程は以下のようにした。
【0136】
(a)サンプルの添加:ブランクウェル(ブランク対照ウェルにはサンプル及び試薬を満たさず、他の工程は変えなかった)、標準ウェル及び測定対象サンプルウェルをそれぞれ設定した。100μLの標準溶液又は試験対象のサンプルを異なる濃度で残りのウェルに慎重に添加した。気泡が入らないようにした。次いで、混合物を穏やかに混合した。プレートを蓋で覆い、反応を37℃で90分間行った。
【0137】
(b)液体を捨て、プレートを洗浄せずにスピン乾燥した。100μLのビオチン化抗体標準溶液(使用前15分以内に調製した)を各ウェルに添加した。プレートを膜で覆い、37℃で1時間インキュベートした。
【0138】
(c)ウェル内の液体を捨て、プレートをスピン乾燥し、3回洗浄した。洗浄時に、プレートを約350μL/ウェルで1分間〜2分間浸漬し、スピン乾燥し、プレートを吸い取り紙上で軽くたたくことによってウェル内の液体を除去した。
【0139】
(d)100μLの酵素複合体標準溶液(使用前15分以内に調製した)を各ウェルに添加した。プレートを膜で覆い、37℃で30分間インキュベートした。
【0140】
(e)ウェル内の液体を捨て、プレートをスピン乾燥し、工程(c)と同じ手順で5回洗浄した。
【0141】
(f)90μLの基質溶液(TMB)を各ウェルに添加し、プレートを膜で覆い、37℃、暗所で15分間インキュベートした(実際の発色に応じて適切に短縮又は延長するが、30分を超えず、標準ウェル内に顕著な勾配が生じた時点で停止した)。
【0142】
(g)50μLの停止液を各ウェルに添加して反応を停止させると、青色が即座に黄色に変わった。停止液の添加順序は基質溶液と同じものとする。
【0143】
(h)各ウェルの光学密度(OD)を450nmでマイクロプレートリーダーを用いて決定した。計器を温め、試験手順を設定するためにマイクロプレートリーダーの電源は事前に入れておくものとする。
【0144】
上記の実験データを、
【数1】
として表す(SPSS19.0統計ソフトウェア、t検定法を統計的処理に用いた)。
【0145】
実験結果を
図1に示した。式:y=ax
2+bx+c;ここで、a:−0.0052;b:0.2556;c:−0.0233;R
2:0.9968。
【0146】
in vivo活性(ELISA)結果を表8に示した。
【0147】
【表9】
【0148】
結果から、本発明の化合物がラットの血液中のACE酵素の含量を低減することができ、減少率が陽性薬(positive drug)カプトプリルよりも高く、化合物221S−1aが最も顕著な低減効果を有することが示された。
【0149】
自然発生高血圧ラット(SHR)における血圧の決定
実験装置及び試薬
実験装置
【0150】
【表10】
【0151】
実験材料:
【0152】
【表11】
【0153】
実験方法:
SPFグレードの雄性自然発生高血圧モデルラット(SHR)(雄性、12週齢、体重200g±20g)を各群6匹のラットでブランク群、対照群及びサンプル群の3つの群に分けた。動物を西北大学生命科学院(School of Life Sciences of Northwest University)の陝西省生物医学動物実験室(Shaanxi Provincial Biomedical Animal Laboratory)に温度22℃及び湿度50%、12時間の明/暗サイクルで餌及び水を自由摂取させて収容した。SHRラットを5日間環境に適応させた後、血圧測定に適応するように訓練した。投与前に各群のラットの基礎血圧を測定し、収縮期血圧は190±5mmHgであった。
【0154】
単回投与後のSHRラットの血圧の決定:
実験ラットの収縮期血圧を尾パルス間接圧力測定(tail pulse indirect pressure measurement)によって測定した。
【0155】
SHRラットに胃内投与したが、サンプル及び参照物質(カプトプリル)はどちらも1%Tween 80を含有する蒸留水に溶解し、ブランク対照群には1%Tween 80を含有する同じ容量の蒸留水を胃内投与した。胃内投与の量は0.05mmol/kg(容量10ml/kg)とし、血圧を胃内投与のそれぞれ1時間後、2時間後、3時間後、4時間後及び6時間後に測定した。
【0156】
特定の測定工程:覚醒ラットを血圧計の固定箱内に入れた。30℃の加熱プレートを固定箱の底に取り付け、これを10分間予熱して局部血管を拡張させた。ラットが静止状態になった後、膨張式管状尾チューブ(tail tube)をSHRラットの尾根部に巻き付け、圧力電子パルス検出器をラットの尾根部に取り付けることで、シグナルがコンピューター画面に表示された。シグナルが安定化した後、血圧を測定し、10mmHg未満の血圧の変化を有する5回の読取り値を10秒間隔で記録した。平均値をラットの収縮期血圧とみなした。
【0157】
(a)SHRラットにおける221S−1aの胃内投与後6時間にわたる動脈収縮期圧の変化を
図2に示した。
【0158】
(b)SHRラットにおける異なる用量での221S−1aの胃内投与後6時間にわたる動脈収縮期圧の変化を
図3に示した。
【0159】
結果から、化合物221S−1aはSHRラットに対して良好な用量依存関係でより良好な抗高血圧効果を示し、その抗高血圧効果がカプトプリルよりも良好であることが示された。
【0160】
(2)複数回投与後のSHRラットにおける血圧の決定:
上記の方法及び用量に従ってラットに7日連続で1日1回胃内投与した。血圧を投与の2時間後に測定した。投与の終了後に、血圧を7日連続で1日1回測定し、血圧の変化を記録した。
【0161】
(a)SHRラットにおける7日間の221S−1aの胃内投与後の14日間にわたる動脈収縮期圧の変化を
図4に示した。
【0162】
(b)SHRラットにおける異なる用量での221S−1aの胃内投与後の14日間にわたる動脈収縮期圧の変化を
図5に示した。
【0163】
化合物221S−1aの7日間にわたる長期投与後に投与を止め、次いで14日間にわたる動脈収縮期圧の変化を記録した。結果から、化合物221S−1aがカプトプリルよりも良好な抗高血圧効果を有することが示された。SHRラットにおける動脈収縮期圧に対する異なる用量の221S−1aの効果は用量依存的であった。
【0164】
上記の実験データを、
【数2】
として表す(SPSS19.0統計ソフトウェア、t検定法を統計的処理に用いた)。