(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
がん細胞をある部位から血流へ動員し、前記がん細胞を前記血流中に滞留させることが望まれるがんの処置および/または予防のための組成物であって、前記組成物は、請求項1に記載の少なくとも1つの化合物および任意で少なくとも1つの追加の薬学的に許容される成分を含む組成物。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明
E−セレクチンおよびCXCR4ケモカイン受容体が役割を果たす疾患を処置するため、ならびに循環血液への放出後の細胞の滞留を促進するための化合物、組成物、および方法が本明細書で開示される。化合物は、in vitroおよびin vivoで様々な使用を有する。
【0028】
E−セレクチン阻害剤は当技術分野で公知である。いくつかのE−セレクチン阻害剤は、E−セレクチンのみに特異的である。他のE−セレクチン阻害剤は、E−セレクチンばかりでなく、これに加えてP−セレクチンもしくはL−セレクチンまたはP−セレクチンとL−セレクチンの両方を阻害する能力を有する。E−セレクチン阻害剤の例(E−セレクチン特異的またはそうではないもの)は、米国特許第7,060,685号、米国出願公開番号US−2007−0054870、米国出願公開番号US−2008−0161546およびこれらの特許文献または公開出願文献のうち任意のものに引用された参考文献に開示されている。これらの例は有機小分子である。他の公知のE−セレクチン阻害剤は、アミノ酸ベースの、例えば、抗体などである。例えば、ヒト化モノクローナル抗体CDP850はE−セレクチン阻害剤である。
【0029】
CXCR4ケモカイン受容体阻害剤は当技術分野で公知である。このような阻害剤は通常、間質由来因子−1(SDF−1)のCXCR4受容体への結合を阻止する。CXCR4ケモカイン受容体阻害剤の例は、AMD−3100(Hendrixら、Antimicrob. Agents Chemother.、44巻:1667〜1673頁、2000年);ALX40−4C(Doranzら、AIDS Research and Human Retroviruses、17巻:475〜486頁、2001年);およびT134(Arakakiら、J. Virol.、73巻:1719〜1723頁、1999年)である。これらの例として、有機小分子およびアミノ酸ベースの分子、例えば、T22ペプチドなどが挙げられる。AMD−3100はビシクラムである。2つのシクラム環のそれぞれが、メチレン基を介して同じフェニル環に結合している(各シクラム環は他方に対してパラである)。
【0030】
E−セレクチン阻害剤−リンカー−CXCR4ケモカイン受容体阻害剤を含む、E−セレクチンおよびCXCR4ケモカイン受容体の阻害のためのヘテロ二官能性化合物は当技術分野で公知である。例は、例えば、米国特許第8,410,066号において開示されている。
【0031】
一部の実施形態では、式(I):
【化2】
(式中、
R
1は、H、C
1〜8アルキル、C
2〜8アルケニル、C
2〜8アルキニル、C
1〜8ハロアルキル、C
2〜8ハロアルケニル、およびC
2〜8ハロアルキニル基から選択され、
R
2は、−OH、−NH
2、−OC(=O)Y
1、−NHC(=O)Y
1、および−NHC(=O)NHY
1基から選択され、ここで、Y
1は、C
1〜8アルキル、C
2〜8アルケニル、C
2〜8アルキニル、C
1〜8ハロアルキル、C
2〜8ハロアルケニル、C
2〜8ハロアルキニル、C
6〜18アリール、およびC
1〜13ヘテロアリール基から選択され、
R
3は、−CN、−CH
2CN、および−C(=O)Y
2基から選択され、ここで、Y
2は、C
1〜8アルキル、C
2〜8アルケニル、C
2〜8アルキニル、−OZ
1、−NHOH、−NHOCH
3、−NHCN、および−NZ
1Z
2基から選択され、ここで、Z
1およびZ
2は、同じでも異なっていてもよく、独立して、H、C
1〜8アルキル、C
2〜8アルケニル、C
2〜8アルキニル、C
1〜8ハロアルキル、C
2〜8ハロアルケニル、およびC
2〜8ハロアルキニル基から選択され、Z
1およびZ
2は、一緒になって環を形成していてもよく、
R
4は、C
3〜8シクロアルキル基から選択され、
各R
5は、独立して、H、ハロ、C
1〜8アルキル、C
2〜8アルケニル、C
2〜8アルキニル、C
1〜8ハロアルキル、C
2〜8ハロアルケニル、およびC
2〜8ハロアルキニル基から選択され、ただし、少なくとも1つのR
5はHでないことを条件とし、
nは、1〜4の範囲の整数から選択され、
Lは、リンカー基から選択される)
のヘテロ二官能性阻害剤、式(I)のプロドラッグ、および前述のもののいずれかの薬学的に許容される塩が提供される。
【0032】
一部の実施形態では、R
1は、H、C
1〜4アルキル、およびC
1〜4ハロアルキル基から選択される。一部の実施形態では、R
1は、H、メチル、エチル、−CH
2F、−CHF
2、−CF
3、−CH
2CH
2F、−CH
2CHF
2、および−CH
2CF
3から選択される。一部の実施形態では、R
1はHである。一部の実施形態では、R
1は、メチルおよびエチルから選択される。一部の実施形態では、R
1はメチルである。一部の実施形態では、R
1はエチルである。
【0033】
一部の実施形態では、R
2は、−OC(=O)Y
1および−NHC(=O)Y
1基から選択され、ここで、Y
1は、C
1〜8アルキル、C
1〜8ハロアルキル、C
6〜18アリール、およびC
1〜13ヘテロアリール基から選択される。一部の実施形態では、R
2は、
【化3】
から選択される。
【0034】
一部の実施形態では、R
3は−C(=O)Y
2であり、ここで、Y
2は、−OZ
1および−NZ
1Z
2基から選択され、ここで、Z
1およびZ
2は、同じでも異なっていてもよく、独立して、H、C
1〜8アルキル、およびC
1〜8ハロアルキルから選択され、Z
1およびZ
2が一緒になって環を形成してもよい。一部の実施形態では、R
3は−C(=O)OHである。
【0035】
一部の実施形態では、R
4は、シクロプロピルおよびシクロヘキシル基から選択される。一部の実施形態では、R
4は、
【化4】
から選択される。
【0036】
一部の実施形態では、各R
5は、独立して、H、ハロ、C
1〜8アルキル、およびC
1〜8ハロアルキル基から選択され、ただし、少なくとも1つのR
5がHではないことを条件とする。一部の実施形態では、少なくとも1つのR
5はハロである。一部の実施形態では、少なくとも1つのR
5はフルオロである。一部の実施形態では、少なくとも1つのR
5はクロロである。一部の実施形態では、少なくとも1つのR
5はブロモである。一部の実施形態では、少なくとも1つのR
5はヨードである。
【0037】
一部の実施形態では、nは2である。一部の実施形態では、nは2であり、R
5はハロである。一部の実施形態では、nは2であり、R
5はブロモである。一部の実施形態では、nは1である。一部の実施形態では、nは1であり、R
5はハロである。一部の実施形態では、nは1であり、R
5はブロモである。
【0038】
一部の実施形態では、化合物は、式(Ia)の化合物:
【化5】
から選択される。
【0039】
一部の実施形態では、化合物は、以下の式の化合物:
【化6】
から選択される。
【0040】
一部の実施形態では、化合物は、式(Ib)の化合物:
【化7】
から選択される。
【0041】
一部の実施形態では、化合物は、以下の式の化合物:
【化8】
から選択される。
【0042】
一部の実施形態では、化合物は、以下の式の化合物:
【化9-1】
【化9-2】
から選択される。
【0043】
一部の実施形態では、化合物は、以下の式の化合物:
【化10-1】
【化10-2】
から選択される。
【0044】
一部の実施形態では、リンカー基は、スペーサー基、例えば、−(CH
2)
p−および−O(CH
2)
p−(式中、pは、1〜20の範囲の整数から選択される)などのスペーサー基を含む基から選択され得る。スペーサー基の他の非限定的例として、カルボニル基およびカルボニル含有基、例えば、アミド基などが挙げられる。スペーサー基の非限定的例は、
【化11】
である。
【0045】
一部の実施形態では、リンカー基は、
【化12】
から選択される。
【0046】
他のリンカー基、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)および−C(=O)−NH−(CH
2)
p−C(=O)−NH−(式中、pは、1〜20の範囲の整数から選択される)は、当業者および/または本開示を把握している者であれば熟知している。
【0047】
一部の実施形態では、リンカー基は、
【化13】
である。
【0048】
一部の実施形態では、リンカー基は、
【化14】
である。
【0049】
一部の実施形態では、リンカー基は、−C(=O)NH(CH
2)
2NH−、−CH
2NHCH
2−、および−C(=O)NHCH
2−から選択される。一部の実施形態では、リンカー基は−C(=O)NH(CH
2)
2NH−である。
【0050】
一部の実施形態では、化合物は、以下の式の化合物:
【化15-1】
【化15-2】
【化15-3】
から選択される。
【0051】
一部の実施形態では、化合物は、以下の式の化合物:
【化16-1】
【化16-2】
から選択される。
【0052】
少なくとも1つの式(I)の化合物を含む医薬組成物もまた提供される。このような医薬組成物は、本明細書でより詳細に記載される。これらの化合物および組成物は本明細書に記載されている方法において使用することができる。
【0053】
一部の実施形態では、少なくとも1つの式(I)の化合物および/または少なくとも1つの式(I)の化合物を含む医薬組成物は、がん細胞が原発部位を離れ得るがんの処置および/または予防のために、本明細書に記載されている方法において使用することができる。原発部位は、例えば、固体組織(例えば、乳房、前立腺、または膵臓)または血流であってよい。
【0054】
乳がん、前立腺がん、および膵臓がんに加えて、浸潤性疾患の他の例として、肺がんおよび黒色腫、ならびに血液の悪性腫瘍(例えば、白血病および骨髄腫)が挙げられる。本明細書で使用される場合、「処置」(「処置する」などの変化形を含む)という用語は、疾患または疾患に伴う合併症に対する処置を含む。例えば、がんに伴う合併症は、疾患を有する個体においてそれ自体現れていない可能性があり、化合物は、個体における合併症が現れるのを阻止するために投与することができる。がん細胞が原発部位を離れ得るがんに伴う合併症として、例えば、がん細胞の他の組織への転移および浸潤が挙げられる。例えば、急性骨髄性白血病(AML)および多発性骨髄腫(MM)細胞は骨髄の骨内膜領域に移動し、そこで細胞は休止状態になり、化学療法誘発性アポトーシスから保護される。本明細書に記載の化合物の投与は、がん細胞の接着または移動を阻止し得る。このような阻止により、がん細胞が化学療法による処置により反応しやすくなり得る。予防の文脈での本明細書に記載の化合物の投与は、がんが初めて発生するまたはがんの再発のリスクがある個体に対して行ってもよい。例えば、多形神経膠芽腫などの脳がんは通常、最初の発生に対して別のタイプの療法(例えば、放射線または化学療法など)で処置するが、このような療法は通常再発を予防するのに有効ではない。
【0055】
一部の実施形態では、少なくとも1つの式(I)の化合物および/または少なくとも1つの式(I)の化合物を含む医薬組成物は、がん細胞をある部位から血流へ動員し、血流中にがん細胞を滞留させることが望ましいがんの処置および/または予防のために、本明細書に記載されている方法において使用することができる。
【0056】
このような処置のためのがんの例として、白血病および骨髄腫(例えば、AMLおよびMM)が挙げられる。がん細胞をある部位から血流へ動員し、その中に細胞を滞留させることにより、がん細胞が化学療法による処置により反応しやすくなり得る。がん細胞の動員元となる部位の例は骨である。がん細胞は、例えば、循環しており、次いで骨へとホーミングすることができる。骨の中に入ると、がん細胞は化学療法から保護される。本明細書に記載の化合物は、例えば、がん細胞を骨から血流に動員し、がん細胞が骨へとホーミングするのを阻止し、それによって、がん細胞を血流に滞留させるのに使用することができる。予防の文脈での本明細書に記載の化合物の投与は、がんが初めて発生するまたはがんの再発のリスクがある個体に対して行ってもよい。例えば、多形神経膠芽腫などの脳がんは通常、最初の発生に対して別のタイプの療法(例えば、放射線または化学療法など)で処置するが、このような療法は通常、再発を予防するのに有効ではない。
【0057】
一部の実施形態では、少なくとも1つの式(I)の化合物および/または少なくとも1つの式(I)の化合物を含む医薬組成物は、細胞(例えば、造血幹細胞など)を循環血液に放出し、血液中の細胞の滞留を促進するための方法において使用することができる。
【0058】
1つの使用方法は、例えば、幹細胞収集のためである。幹細胞は、例えば、高用量の化学療法処置後に必要となり得る。多くの化学療法は、骨髄を抑制し、これが、個体において血液のある特定の構成成分の産生を妨げる。その結果、個体は、様々な血液細胞関連障害を発症し、化学療法の継続が損なわれる可能性がある。本明細書に記載の化合物は、例えば、幹細胞を循環血液に放出し、幹細胞の血液中の滞留を促進するために使用することができる。本方法は、放出された細胞を収集するさらなるステップを含むことができる。例えば、放出された幹細胞を収集することができる。細胞を収集するための様々な技術が当技術分野で公知である。例えば、アフェレーシスを利用することができる。幹細胞の例は骨髄前駆細胞である。このような細胞の骨髄から循環血液への放出および血液中の滞留は様々な用途を有する。例えば、動員された骨髄前駆細胞は、血液から収集することができる。このような収集した細胞の使用は、個体が、骨髄が抑制されるような様式で処置を受ける前に、その個体から健康な骨髄前駆細胞を得ることである。処置後、個体は、処置前に収集した骨髄前駆細胞を利用して、骨髄移植を受けることができる。これは、例えば、個体が、骨髄を抑制する化学療法プロトコールを受ける必要がある場合に有用である。
【0059】
少なくとも1つの(すなわち、1つまたは複数の)コロニー刺激因子で個体をさらに処置することが望ましいこともある。このような因子は、例えば、上記の化合物のうちの少なくとも1つの投与の前にまたは同時に投与してもよい。投与が同時である場合、組合せは、単一の容器または2つ(またはそれ超)の別個の容器から投与することができる。適切なコロニー刺激因子の例は顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)である。G−CSFは、骨髄を増殖させ、より多くの幹細胞を産生するように誘導する。本明細書に記載の化合物は、幹細胞を循環血液に放出するのに役立つ。本明細書に記載の化合物とG−CSFとの投与の組み合わせ(別々または一緒に)の結果として、骨髄内で産生され、循環血液に放出された幹細胞は、前述のように収集することができる。このような収集した幹細胞は、例えば、化学療法後に個体に投与することができる。幹細胞は、骨髄に戻り、血液細胞を産生する。本明細書に記載の化合物を適用してG−CSFで処置した骨髄から健康な骨髄前駆細胞を動員し収集することによって、例えば、骨髄移植に有用な細胞が得られる。
【0060】
一部の実施形態では、少なくとも1つの式(I)の化合物および/または少なくとも1つの式(I)の化合物を含む医薬組成物は、腫瘍転移の処置および/または予防のための本明細書に記載されている方法において使用することができる。一部の実施形態では、腫瘍転移は膵臓がんから生じる。一部の実施形態では、腫瘍転移は前立腺がんから生じる。一部の実施形態では、腫瘍転移は膵臓がんから生じる。一部の実施形態では、腫瘍転移は乳がんから生じる。一部の実施形態では、少なくとも1つの追加の化学療法剤、例えば、ゲムシタビンなどが個体に投与される。
【0061】
一部の実施形態では、少なくとも1つの式(I)の化合物および/または少なくとも1つの式(I)の化合物を含む医薬組成物は、炎症性疾患の処置および/または予防のための方法において使用することができ、ここでこの疾患において細胞の接着または移動が生じている。
【0062】
炎症性疾患の例として、炎症性の皮膚障害、例えば、アトピー性皮膚炎および乾癬などが挙げられる。処置は、疾患またはこれに伴う合併症、例えば、疼痛などを減少させる(部分的にまたは完全に)ことができる。処置は、炎症性疾患またはこれに伴う合併症のための1つまたは複数の他の療法と併せて使用することができる。
【0063】
一部の実施形態では、式(I)の化合物および/または少なくとも1つの式(I)の化合物を含む医薬組成物は、本明細書に記載されている疾患、障害、および/または状態の少なくとも1つを処置するため、あるいは本明細書に記載されている疾患、障害、および/または状態のうちの少なくとも1つの処置における使用のための医薬の調製または製造のために使用することができる。これらの方法および使用のそれぞれがより詳細に記載される。
定義
【0064】
明細書中の用語が範囲として特定されている(例えば、C
1〜4アルキル)場合、その範囲は、この範囲の各要素を独立して開示し、これを含む。非限定的例として、C
1〜4アルキルは、独立して、C
1アルキル、C
2アルキル、C
3アルキル、およびC
4アルキルを含む。
【0065】
「少なくとも1つの」という用語は、1つまたは複数、例えば、1つ、2つなどを指す。例えば、「少なくとも1つのC
1〜4アルキル」という用語は、1つまたは複数のC
1〜4アルキル基、例えば、1つのC
1〜4アルキル基、2つのC
1〜4アルキル基などを指す。
【0066】
「アルキル」という用語は、飽和した直鎖、分枝、および環状の(シクロアルキルとしても特定される)、第1級、第2級、および第3級炭化水素基を含む。アルキル基の非限定的例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、secブチル、イソブチル、tertブチル、シクロブチル、1−メチルブチル、1,1−ジメチルプロピル、ペンチル、シクロペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、およびシクロヘキシルが挙げられる。明細書中で別途具体的に述べられていない限り、アルキル基は、任意選択で置換されていてもよい。
【0067】
「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの二重結合を含む直鎖、分枝、および環状の炭化水素基を含む。アルケニル基の二重結合は、非共役であってもよいし、別の不飽和の基と共役していてもよい。アルケニル基の非限定的例として、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、2−エチルヘキセニル、およびシクロペンタ−1−エン−1−イルが挙げられる。明細書中で別途具体的に述べられていない限り、アルケニル基は任意選択で置換されていてもよい。
【0068】
「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの三重結合を含む直鎖および分枝の炭化水素基を含む。アルキニル基の三重結合は、非共役であってもよいし、別の不飽和の基と共役していてもよい。アルキニル基の非限定的例として、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、およびヘキシニルが挙げられる。明細書中で別途具体的に述べられていない限り、アルキニル基は任意選択で置換されていてもよい。
【0069】
「アリール」という用語は、6〜18個の炭素環原子および少なくとも1つの芳香族環を含む炭化水素環系基を含む。アリール基は、縮合または架橋した環系を含んでもよい、単環式、二環式、三環式または四環式環系であり得る。アリール基の非限定的例として、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、フルオランテン、フルオレン、as−インダセン、s−インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、フェナレン、フェナントレン、プレイアデン、ピレン、およびトリフェニレンから誘導されるアリール基が挙げられる。明細書中で別途具体的に述べられていない限り、アリール基は任意選択で置換されていてもよい。
【0070】
「アリールアルキル」または「アラルキル」という用語は、本明細書で定義されたようなアルキル基を介して親分子部分に付加している、本明細書中に記載されるようなアリール基を含む。アリールアルキルまたはアラルキル基の非限定的例として、ベンジル、フェネチル、およびジフェニルメチルが挙げられる。明細書中で別途具体的に述べられていない限り、アリールアルキルまたはアラルキル基は任意選択で置換されていてもよい。
【0071】
「シクロアルキル」または「炭素環」という用語は、縮合または架橋した環系を含んでもよい、飽和した単環式または多環式の炭化水素基を含む。シクロアルキル基の非限定的例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、アダマンチル、およびノルボルニルが挙げられる。明細書中で別途具体的に述べられていない限り、シクロアルキル基は任意選択で置換されていてもよい。
【0072】
「E−セレクチンアンタゴニスト」という用語は、E−セレクチンのみの阻害剤、ならびにE−セレクチンとP−セレクチンまたはL−セレクチンのいずれかとの阻害剤、ならびにE−セレクチン、P−セレクチンおよびL−セレクチンの阻害剤を含む。
【0073】
「縮合した」という用語は、既存の環構造に縮合している、本明細書に記載されている任意の環構造を含む。縮合した環がヘテロシクリル環またはヘテロアリール環である場合、縮合したヘテロシクリル環または縮合したヘテロアリール環の一部となる既存の環構造上の任意の炭素原子が窒素原子で置き換えられていてもよい。
【0074】
「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードを含む。
【0075】
「ハロアルキル」という用語は、本明細書で定義されたような少なくとも1つのハロゲンで置換されている、本明細書で定義されたようなアルキル基を含む。非限定的例として、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリクロロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、1,2−ジフルオロエチル、3−ブロモ−2−フルオロプロピル、および1,2−ジブロモエチルが挙げられる。「フルオロアルキル」は、少なくとも1つのフルオロ基で置換されているハロアルキルである。明細書中で別途具体的に述べられていない限り、ハロアルキル基は任意選択で置換されていてもよい。
【0076】
「ハロアルケニル」という用語は、本明細書で定義されたような少なくとも1つのハロゲンで置換されている、本明細書で定義されたようなアルケニル基を含む。非限定的例として、フルオロエテニル、1,2−ジフルオロエテニル、3−ブロモ−2−フルオロプロペニル、および1,2−ジブロモエテニルが挙げられる。「フルオロアルケニル」は、少なくとも1つのフルオロ基で置換されているハロアルケニルである。明細書中で別途具体的に述べられていない限り、ハロアルケニル基は任意選択で置換されていてもよい。
【0077】
「ハロアルキニル」という用語は、本明細書で定義されたような少なくとも1つのハロゲンで置換されている、本明細書で定義されたようなアルキニル基を含む。非限定的例として、フルオロエチニル、1,2−ジフルオロエチニル、3−ブロモ−2−フルオロプロピニル、および1,2−ジブロモエチニルが挙げられる。「フルオロアルキニル」は、少なくとも1つのフルオロ基で置換されているハロアルキニルである。明細書中で別途具体的に述べられていない限り、ハロアルキニル基は、任意選択で置換されていてもよい。
【0078】
「ヘテロシクリル」または「複素環」という用語は、2〜12個の環炭素原子ならびにN、O、およびSからそれぞれ独立して選択される1〜6個の環ヘテロ原子を含む、3〜18員の飽和または部分的に不飽和の非芳香族環状基を含む。明細書中で別途具体的に述べられていない限り、ヘテロシクリル基は、単環式環系であっても、二環式環系であっても、三環式環系であっても、四環式環系であってもよく、これらは縮合した環系または架橋した環系を含み得、そして、ヘテロシクリル基内の窒素、炭素または硫黄原子は任意選択的に酸化されていてもよく、窒素原子は任意選択的に四級化されていてもよく、また、ヘテロシクリル基は部分的に飽和していても、完全に飽和していてもよい。非限定的な例として、ジオキソラニル、チエニル[1,3]ジチアニル、デカヒドロイソキノリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、イソチアゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロイソインドリル、2−オキソピペラジニル、2−オキソピペリジニル、2−オキソピロリジニル、オキサゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、4−ピペリドニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、キヌクリジニル、チアゾリジニル、テトラヒドロフリル、トリチアニル、テトラヒドロピラニル、チオモルホリニル、チアモルホリニル、1−オキソ−チオモルホリニル、および1,1−ジオキソ−チオモルホリニルが挙げられる。明細書中で別途具体的に述べられていない限り、ヘテロシクリル基は任意選択で置換されていてもよい。
【0079】
「ヘテロアリール」という用語は、1〜13個の環炭素原子、ならびにN、O、およびSからそれぞれ独立して選択される1〜6個の環ヘテロ原子、および少なくとも1つの芳香族環を含む5〜14員の環状基を含む。明細書中で別途具体的に述べられていない限り、ヘテロアリール基は、単環式環系であっても、二環式環系であっても、三環式環系であっても、四環式環系であってもよく、これらは縮合した環系または架橋した環系を含み得、そして、ヘテロアリール基内の窒素、炭素または硫黄原子が任意選択的に酸化されていてもよく、窒素原子が任意選択的に四級化されていてもよい。非限定的な例として、アゼピニル、アクリジニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾインドリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾフラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾ[b][1,4]ジオキセピニル、1,4−ベンゾジオキサニル、ベンゾナフトフラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾジオキシニル、ベンゾピラニル、ベンゾピラノニル、ベンゾフラニル、ベンゾフラノニル、ベンゾチエニル(ベンゾチオフェニル)、ベンゾトリアゾリル、ベンゾ[4,6]イミダゾ[1,2−a]ピリジニル、カルバゾリル、シンノリニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、フラニル、フラノニル、イソチアゾリル、イミダゾリル、インダゾリル、インドリル、インダゾリル、イソインドリル、インドリニル、イソインドリニル、イソキノリル、インドリジニル、イソオキサゾリル、ナフチリジニル、オキサジアゾリル、2−オキソアゼピニル、オキサゾリル、オキシラニル、1−オキシドピリジニル、1−オキシドピリミジニル、1−オキシドピラジニル、1−オキシドピリダジニル、1−フェニル−1H−ピロリル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、ピロリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル キナゾリニル、キノキサリニル、キノリニル、キヌクリジニル、イソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、チアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、トリアジニル、およびチオフェニル(すなわちチエニル)が挙げられる。明細書中で別途具体的に述べられていない限り、ヘテロアリール基は任意選択で置換されていてもよい。
【0080】
「薬学的に許容される塩」という用語は、酸付加塩と塩基付加塩との両方を含む。薬学的に許容される酸付加塩の非限定的例として、塩化物、臭化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、スルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ギ酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、およびアスコルビン酸塩が挙げられる。薬学的に許容される塩基付加塩の非限定的例として、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム(置換および非置換の)、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、およびアルミニウムの塩が挙げられる。薬学的に許容される塩は、例えば、薬学の分野で周知の標準的手順を使用して得ることができる。
【0081】
「プロドラッグ」という用語は、例えば、生理的条件下でまたは加溶媒分解により、本明細書に記載の生物活性のある化合物へと変換することができる化合物を含む。したがって、「プロドラッグ」という用語は、薬学的に許容される、本明細書に記載されている化合物の代謝前駆体を含む。プロドラッグの考察は、例えば、Higuchi, T.ら、「Pro−drugs as Novel Delivery Systems」、A.C.S. Symposium Series、14巻、およびBioreversible Carriers in Drug Design、Edward B. Roche編、American Pharmaceutical Association and Pergamon Press、1987年において見出すことができる。「プロドラッグ」という用語はまた、このようなプロドラッグが対象に投与された場合、in vivoで本明細書中に記載されているような活性化合物(複数可)を放出する共有結合した担体を含む。プロドラッグの非限定的例として、本明細書に記載されている化合物中のヒドロキシ、カルボキシ、メルカプトおよびアミノ官能基のエステルおよびアミド誘導体が挙げられる。
【0082】
「置換されている」という用語は、任意の上記の基において、少なくとも1個の水素原子が、非水素原子、例えば、ハロゲン原子、例えば、F、Cl、BrおよびIなど;例えば、ヒドロキシル基、アルコキシ基、およびエステル基などの基の中の酸素原子;例えば、チオール基、チオアルキル基、スルホン基、スルホニル基、およびスルホキシド基などの基の中の硫黄原子;例えば、アミン、アミド、アルキルアミン、ジアルキルアミン、アリールアミン、アルキルアリールアミン、ジアリールアミン、N−酸化物、イミド、およびエナミンなどの基の中の窒素原子;例えば、トリアルキルシリル基、ジアルキルアリールシリル基、アルキルジアリールシリル基、およびトリアリールシリル基などの基の中のケイ素原子;ならびに様々な他の基の中の他のヘテロ原子で置き換えられている状況を含む。「置換されている」はまた、任意の上記の基において、少なくとも1個の水素原子が、ヘテロ原子、例えば、オキソ、カルボニル、カルボキシル、およびエステル基の中の酸素、ならびに例えば、イミン、オキシム、ヒドラゾン、およびニトリルなどの基の中の窒素へのより高い次元の結合(例えば、二重結合または三重結合)で置き換えられている状況を含む。
【0083】
「チオアルキル」という用語は、−SR
a基(式中、R
aは、本明細書で定義されたようなアルキル、アルケニル、およびアルキニル基から選択される)を含む。明細書中で別途具体的に述べられていない限り、チオアルキル基は任意選択で置換されていてもよい。
【0084】
本開示は、その範囲内に化合物のすべての可能な幾何異性体、例えば、ZおよびE異性体(cisおよびtrans異性体)、ならびに化合物のすべての可能な光学異性体、例えばジアステレオマーおよびエナンチオマーを含む。さらに、本開示は、その範囲内に、個々の異性体とその任意の混合物、例えばラセミ混合物との両方を含む。個々の異性体は、対応する異性体形態の出発材料を使用して得ることができ、またはこれらは従来の分離方法に従い最終化合物の調製後に分離することができる。光学異性体、例えば、エナンチオマーをその混合物から分離するために、従来の分離方法、例えば分別結晶化を使用することができる。
【0085】
本開示は、その範囲内にすべての可能な互変異性体を含む。さらに、本開示は、その範囲内に個々の互変異性体とその任意の混合物との両方を含む。
化合物合成手順
【0086】
以下の一般反応スキームIおよびIIに従い、式(I)の化合物を調製することができる。当業者は、同様の方法により、または当業者に公知の他の方法を組み合わせることにより、これらの化合物を作製することができることを理解されたい。当業者であれば、適当な出発成分を使用し、必要な場合には合成パラメーターを修正することによって、以下に記載されているものと同様の方式で、本明細書に具体的に例示されていない式(I)の他の化合物を作製することができることも理解されたい。一般的に、出発成分は、Sigma Aldrich、Lancaster Synthesis、Inc.、Maybridge、Matrix Scientific、TCI、およびFluorochem USAなどの供給元から得てもよいし、および/または当業者に公知の出典に従い合成してもよいし(例えば、Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure、5版(Wiley、2000年12月)を参照されたい)、および/または本明細書に記載されているように調製してもよい。
【化17】
【0087】
化合物Iの脱保護により、臭素化ヒドロキシメチルアルデヒドIIを得る。適切なトリ保護シクラムでの還元的アミノ化により化合物IVを生成する。酸化によりアルデヒドVを得て、これを、還元的アミノ化を介して化合物VIにカップリングすることができる(WO2013/096926)。次いで、脱保護により本発明の化合物を得る。
【0088】
あるいは、位置異性体の臭化物をスキームIIに従い調製することができる。化合物Iの酸化によりアルデヒドIXを得る。適切なトリ保護シクラムでの還元的アミノ化により中間体Xを得る。脱保護からXIを得て、これを、還元的アミノ化を介して化合物VIにカップリングしてXIIIを得ることができる。次いで、脱保護により本発明の化合物を得る。
【化18】
【0089】
当業者であれば、本明細書に記載されているプロセスにおいて、中間体化合物の官能基は、少なくとも1つの適切な保護基で保護されることが必要であり得ることを理解する。このような官能基の非限定的例として、ヒドロキシル基、アルデヒド基、アミノ基、メルカプト基、およびカルボン酸基が挙げられる。ヒドロキシ基に対する適切な保護基の非限定的例として、トリアルキルシリルおよびジアリールアルキルシリル基(例えば、t−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジフェニルシリルまたはトリメチルシリル)、テトラヒドロピラニル、およびベンジルが挙げられる。アルデヒド基に対する適切な保護基の非限定的例として、1,3−ジオキサンおよび1,3−ジオキソランが挙げられる。アミノ、アミジノおよびグアニジノに対する適切な保護基の非限定的例として、t−ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、およびトリフルオロアセチル(trifluoracetyl)基が挙げられる。メルカプトに対する適切な保護基の非限定的例として、−C(O)−R”(式中、R”は、アルキル、アリールまたはアリールアルキルである)、p−メトキシベンジル、およびトリチル基が挙げられる。カルボン酸に対する適切な保護基の非限定的例として、アルキル、アリールおよびアリールアルキルエステルが挙げられる。保護基は、当業者に公知であり、本明細書に記載されているような標準的な技法に従い付加させても、除去してもよい。保護基の使用は、例えば、Green、T.W.およびP.G.M. Wutz、Protective Groups in Organic Synthesis(1999年)、第3版、Wileyに詳細に記載されている。当業者であれば理解すように、保護基はまた、Wang樹脂、Rink樹脂または2−クロロトリチル−塩化物樹脂などのポリマー樹脂であってもよい。
ヘテロ二官能性化合物を特徴付けるための方法
【0090】
本明細書に記載のヘテロ二官能性化合物の生物学的活性は、例えば、当技術分野で規定通りに実施されるおよび本明細書または当技術分野で記載される少なくとも1つのin vitroおよび/またはin vivoの試験を実施することにより決定することができる。in vitroアッセイとして、限定ではないものの、結合アッセイ、イムノアッセイ、競合的結合アッセイおよび細胞ベースの活性アッセイが挙げられる。
【0091】
E−セレクチンのアンタゴニストについてスクリーニングするために阻害アッセイを使用することができる。例えば、アッセイは、本明細書に記載されている化合物の、E−セレクチンとsLe
aまたはsLe
xとの相互作用を阻害する(すなわち、統計的にまたは生物学的に有意な方式で減少、遮断、低減、または阻止する)能力を特徴づけるように実施することができる。阻害アッセイは、IC
50値の測定を可能にする競合的結合アッセイであってよい。例として、E−セレクチン/Igキメラをマトリックス(例えば、ポリスチレンなどのポリマーで作製されたマルチウェルプレート;試験管などであり得る)上に固定化してもよく、非特異的結合を減少させる組成物(例えば、当業者により規定通りに使用されている無脂肪の乾燥ミルクまたはウシ血清アルブミンまたは他の遮断緩衝液を含む組成物)を添加してもよく、レポーター基を含むsLe
aの存在下で、固定化したE−セレクチンへの、sLe
aの結合を可能にするのに十分な条件下でかつ十分な時間にわたって、固定化したE−セレクチンを候補の化合物と接触させてもよく、固定化したE−セレクチンを洗浄してもよく、固定化したE−セレクチンに結合しているsLe
aの量を検出してもよい。このようなステップの変化形は、当業者により容易にかつ規定通りに達成できる。
【0092】
阻害アッセイは、CXCR4媒介性化学走性のアンタゴニズムについてスクリーニングするために使用することができる。例えば、アッセイを実施して、CXCR4リガンドCXCL12(SDF−1α)へのCCRF−CEM細胞(これらの細胞表面上にCXCR4を発現する)の膜を横切った移動を阻害する糖模倣性CXCR4アンタゴニストの能力を測定することができる。例として、CCRF−CEM細胞は細胞表面上にCXCR4を発現するヒトTリンパ芽球である。細胞を、3uM Calcein AMで標識して蛍光による検出を可能にすることができる。細胞は、CXCR4アンタゴニストで処理し、トランスウェル挿入部の上側チャンバーに配置することができる。トランスウェルは、各ウェルが600ulのRPMI 1640+2%FBSおよび50ng/mLのCXCL12(SDF1α)を含有する24ウェルプレートのウェル内に配置することができる。細胞は、5%CO2中、37℃で3時間上側チャンバーから下側チャンバーへと膜を横断して移動させることができる。トランスウェル挿入部を24ウェルプレートから取り出すことができ、励起波長485nmおよび発光波長538nmで、Molecular Devices FlexStation 3を使用して下側チャンバー内の蛍光が測定される。
【0093】
あるいは、アッセイを使用して、細胞表面上にCXCR4を発現するように遺伝子操作されたCHO細胞へのCXCL12(SDF−1α)の結合を阻害する糖模倣性CXCR4アンタゴニストの能力を測定することができる。当業者は、リガンド結合(CXCL12)によりCXCR4を活性化して、GiをCXCR4複合体から解離させることができる。活性化したCXCR4は、アデニリルシクラーゼに結合し、そうすることでこれを不活化することができ、細胞内cAMPレベルの低減をもたらす。細胞内cAMPは通常低い。よって、Gi共役受容体による低レベルのcAMPの低減は検出するのが困難である。ホルスコリンをCHO細胞に加えて、アデニリルシクラーゼを直接活性化し(すべてのGPCRを迂回する)、そうすることで、細胞内のcAMPレベルを上昇させ、これによって、Gi応答を容易に観察することができる。CXCL12のCXCR4との相互作用は、cAMPの細胞内レベルを低減させ、CXCR4アンタゴニストによる、CXCL12のCXCR4との相互作用の阻害は細胞内のcAMPレベルを増加させ、これは発光により測定される。
【0094】
あるいは、当業者は、アッセイを使用して、細胞表面上にCXCR4を発現するJurkat細胞への抗CXCR4抗体の結合を遮断する糖模倣性CXCR4アンタゴニストの能力を測定することができる。Jurkat細胞を、CXCR4アンタゴニストで処理し、これに続いてフィコエリスリンがコンジュゲートした抗CXCR4抗体で処理することができる。抗体は、4℃で1時間細胞に結合させることができる。細胞を洗浄し、抗CXCR4−PE抗体の細胞への結合をフローサイトメトリーで評価することができる。
【0095】
ある特定のアッセイに対する条件は、温度、緩衝剤(塩、カチオン、媒体を含む)、およびアッセイに使用される任意の細胞および化合物の統合性を維持する他の成分を含み、当業者であれば、これらに精通しており、そして/または容易にそれらを決定することができる。当業者はまた、本明細書に記載されているインビトロの方法およびインビボの方法を実施する場合、適当な対照をデザインすることができ、これを含めることができることを容易に理解する。
【0096】
本明細書に記載されており、そして当技術分野における少なくとも一つのアッセイおよび技法により特徴づけられる化合物の供給源は、その化合物で処置された対象から得た生物学的試料であってよい。アッセイにおいて使用することができる細胞はまた、生物学的試料において提供されてもよい。「生物学的試料」は対象からの試料を含んでもよく、血液試料(この血液試料から血清または血漿を調製できる)、生検検体、1種または複数種の体液(例えば、肺洗浄、腹水、粘膜洗浄液、滑液、尿)、骨髄、リンパ節、組織外植片、器官培養物、あるいは対象もしくは生物学的供給源に由来する任意の他の組織または細胞調製物であり得る。生物学的試料は、形態学的完全性または物理的な状態が、例えば、解剖、解離、可溶化、分画化、均質化、生化学的もしくは化学的抽出、微粉粉砕、凍結乾燥、超音波処理、または対象もしくは生物学的供給源に由来する試料を処理するための任意の他の手段により破砕されている、組織または細胞調製物をさらに含む。一部の実施形態では、対象または生物学的供給源は、ヒトもしくは非ヒト動物、初代細胞培養物(例えば、免疫細胞)、または、これらに限定されないが、染色体的に統合されたもしくはエピソーム組み換え型の核酸配列を含有し得る遺伝子操作細胞系、不死化もしくは不死化可能な細胞系、体細胞ハイブリッド細胞系、分化もしくは分化可能な細胞系、形質転換細胞系などを含めた培養馴化細胞系であってよい。
【0097】
本明細書に記載されているようにヘテロ官能性阻害剤を特徴づけるための方法は、動物モデル実験を含む。当技術分野で使用されている液体がんに対する例示的動物モデルのための非限定的な例として、多発性骨髄腫(例えば、DeWeerdt、Nature、480巻:S38−S39頁(2011年12月15日)doi:10.1038/480S38a;2011年12月14日オンライン出版; Mitsiadesら、Clin. Cancer Res.、2009年、15巻:1210021頁(2009年)を参照されたい);急性骨髄性白血病(AML)(Zuberら、Genes Dev.、2009年4月1日;23巻(7号):877〜889頁)が挙げられる。急性リンパ芽球性白血病(ALL)に対する動物モデルは、20年超にわたり当業者により使用されてきた。固形腫瘍がんに対する多くの例示的動物モデルが規定通りに使用され、当業者には周知である。
【0098】
医学的技術分野の当業者であれば理解しているように、「処置する」および「処置」という用語は、対象(すなわち、患者、個体)の疾患、障害、または状態の医学的な管理を含む(例えば、Stedman’s Medical Dictionaryを参照されたい)。一般的に、適当な用量および処置レジメンは、本明細書に記載されている少なくとも1種の本開示の化合物を、治療上および/または予防上の利点を得るのに十分な量で提供する。治療的処置と予防的または防止的手段の両方に対して、治療上および/または予防上の利点として、例えば、臨床での転帰の改善が挙げられ、この目的は、所望されない生理学的変化もしくは障害を予防もしくは減速もしくは遅らせる(低下させる)こと、またはこのような障害の拡大または重症化を予防もしくは減速もしくは遅らせる(低下させる)ことである。本明細書中で論じたように、対象を処置することによる有利なまたは所望の臨床的結果として、これらに限定されないが、処置すべき疾患、状態、または障害から生じるかまたはこれらに伴う症状の寛解、低下、または軽減;症状の発症の低減;生活の質の改善;疾患を患っていない状態の延長(すなわち、疾患の診断がなされるときの基礎である症状を対象が提示する可能性または傾向を低減させること):疾患の程度の減退;疾患の安定化した(すなわち、悪化していない)状態;疾患の進行を遅延または減速させること;疾患状態の回復または緩和;および検出可能または検出不能に関わらず、緩解(部分的または全体的)、および/または全生存期間(overall survival)が挙げられる。「処置」は、対象が処置を受けていなかった場合に予想される生存期間と比較して、生存期間を長引かせることを含み得る。処置を必要とする対象として、疾患、状態、または障害をすでに有する対象、さらに疾患、状態、または障害を発症しやすいまたは発症のリスクが高い対象、および疾患、状態、または障害を予防すべき対象(すなわち、疾患、障害、または状態の発症の可能性を低減させる)が挙げられる。
【0099】
本明細書に記載されている方法の一部の実施形態では、対象はヒトである。本明細書に記載されている方法の一部の実施形態では、対象は非ヒト動物である。本明細書に記載されている処置を必要とする対象は、本明細書に記載されている疾患、障害、または状態の少なくとも1つの症状または後遺症を示すことがあるか、または疾患、障害、もしくは状態を発症するリスクが高いことがある。処置され得る非ヒト動物として、哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類(例えば、サル、チンパンジー、ゴリラなど)、げっ歯類(例えば、ラット、マウス、アレチネズミ、ハムスター、ケナガイタチ、ウサギ)、ウサギ目の動物、ブタ(swine)(例えば、ブタ(pig)、小型ブタ(pig))、ウマ、イヌ、ネコ、ウシ属、および他の飼い慣らした動物、農場動物、および動物園の動物が挙げられる。
【0100】
本開示の化合物の、本明細書に記載されている疾患、障害または状態の処置および/または予防における有効性は、医学的および臨床的技術分野の当業者により容易に決定することができる。適当な投与計画の決定および調整(例えば、1用量当たりの化合物の量ならびに/または投与回数および投与頻度を調整すること)はまた、医学的および臨床的技術分野の当業者により容易に実施され得る。健康診断、評価および臨床症状のモニタリング、ならびに本明細書に記載されている分析試験および方法の性能を含めた診断法の一つまたは任意の組合せを対象の健康状態のモニタリングに使用することができる。
医薬組成物および医薬組成物を使用する方法
【0101】
少なくとも1つの式(I)の化合物を含む医薬組成物もまた本明細書に提供される。一部の実施形態では、医薬組成物は少なくとも1つの追加の薬学的に許容される成分をさらに含む。
【0102】
薬学的剤形において、本開示の化合物の任意の1種または複数種は、薬学的に許容される誘導体、例えば、塩などの形態で投与される、および/あるいは、これらは、単独で、および/または他の薬学的活性のある化合物を適切に伴って、ならびに他の薬学的活性のある化合物と組み合わせて使用することもできる。
【0103】
有効量または治療有効量とは、単一用量としてまたは一連の用量の一部として対象に投与した場合に少なくとも1つの治療上の効果をもたらすのに有効である、本開示の化合物、あるいは、少なくとも1種のそのような化合物を含む組成物の量を指す。最適な用量は一般的に、実験モデルおよび/または治験を使用して決定することができる。本明細書に記載されている治療剤のそれぞれ(予防的利点のために投与した場合を含む)に対する前臨床および臨床研究のデザインおよび実施は、十分に関連技術分野の当業者の範囲内である。治療剤に最適な用量は、対象の体質量、体重、および/または血液量に依存し得る。一般的には、ある用量で存在する、本明細書に記載されているような式(I)の少なくとも1種の化合物の量は、対象の体重1kg当たり約0.01μg〜約1000μgの範囲であり得る。有効な治療を提供するのに十分な最小用量が一部の実施形態において使用され得る。対象は一般的に、処置されているかまたは予防されている疾患または状態に対して適切なアッセイを使用して治療上の有効性についてモニターすることができ、このアッセイは当業者にはよく知られており、本明細書に記載されている。対象に投与する化合物のレベルは、対象由来の生物学的流体中、例えば、血液、血液画分(例えば、血清)中、および/または尿中、および/または他の生物学的試料中の化合物(または化合物の代謝物)のレベルを測定することによってモニターすることができる。化合物、またはその代謝物を検出するために当技術分野で実施されているいずれの方法も、治療的レジメンの経過中に化合物のレベルを測定するために使用することができる。
【0104】
本明細書に記載されている化合物の用量は、対象の状態、すなわち、疾患の段階、疾患により引き起こされた症状の重症度、全般的な健康状態、ならびに年齢、性別、および体重、ならびに医学的技術分野の当業者には明らかな他の要素に依存し得る。同様に、疾患または障害を処置するための治療剤の用量は、医学的技術分野の当業者により理解されているパラメーターに従い決定することができる。
【0105】
医薬組成物は、処置すべき疾患または障害に対して任意の適当な方式で、医学的技術分野の当業者により決定された通りに投与され得る。適当な用量ならびに投与の適切な継続時間および頻度は、患者の状態,患者の疾患の種類および重症度、活性成分の特定の形態、および投与方法を含めた、本明細書中で論じられたような要素により決定される。一般的に、適当な用量(または有効用量)および処置レジメンは、本明細書に記載されている医薬組成物を、治療上および/または予防上の利点(例えば、改善された臨床での転帰、例えば、より頻繁な、完全もしくは部分的な緩解、または疾患を患っていないおよび/もしくは全生存期間の延長、または症状の重症度を低下させること、または上に詳細に記載されている他の利点)を提供するのに十分な量で提供される。
【0106】
本明細書に記載されている医薬組成物は、化合物の有効量を効果的に送達するいくつかの経路のうちのいずれか一つにより、それを必要とする対象に投与され得る。非限定的な適切な投与経路として、局所的、経口、鼻、髄腔内、経腸、口腔、舌下、経皮的、直腸、経膣、眼内、結膜下、舌下、および非経口投与(これらは、皮下、静脈内、筋肉内、胸骨内、空洞内、道内(intrameatal)、および尿道内への注射および/または点滴を含む)などが挙げられる。
【0107】
本明細書に記載されている医薬組成物は、無菌の水性溶液であっても、水性懸濁液であっても、水性乳濁液であっても、無菌の非水性溶液であっても、非水性懸濁液であっても、非水性乳濁液であってもよく、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤(すなわち、活性成分の活性を妨げない無毒性材料)をさらに含んでもよい。このような組成物は、固体、液体、またはガス(エアゾール)の形態であってよい。あるいは、本明細書に記載されている組成物は、凍結乾燥物として製剤化してもよいか、または本明細書に記載されている化合物は、当技術分野で公知の技術を使用してリポソーム内に封入されてもよい。医薬組成物は、少なくとも1種の追加の薬学的に許容される成分をさらに含んでもよく、これは生物学的に活性であっても不活性であってもよい。このような成分の非限定的な例として、緩衝液(例えば、中性緩衝化食塩水またはリン酸緩衝食塩水)、炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン)、マンニトール、タンパク質、ポリペプチド、アミノ酸(例えば、グリシン)、抗酸化剤、キレート剤(例えば、EDTAおよびグルタチオン)、安定剤、色素、香味剤、懸濁化剤および保存剤が挙げられる。
【0108】
医薬組成物における使用のための、当業者に公知の任意の適切な賦形剤または担体を、本明細書に記載されている組成物において利用することができる。治療的使用のための賦形剤は周知であり、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy(Gennaro、21版、Mack Pub. Co.、Easton、PA(2005年))に記載されている。一般的に、賦形剤の種類は、投与形式、ならびに活性成分の化学組成に基づいて選択される。医薬組成物は、特定の投与形式用に製剤化することができる。非経口投与に対して、医薬組成物は、水、生理食塩水、アルコール、脂肪、ワックス、および緩衝剤をさらに含んでもよい。経口投与に対して、医薬組成物は、例えば、前記の賦形剤、固体賦形剤および担体の任意のものから選択される少なくとも1種の成分、例えば、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカム、セルロース、カオリン、グリセリン、デンプンデキストリン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、グルコース、スクロースおよび炭酸マグネシウムなどをさらに含んでもよい。
【0109】
医薬組成物(例えば、経口投与または注射による送達に対して)は液体の形態であってよい。液体医薬組成物は、例えば、少なくとも1種の以下のものを含み得る:無菌の希釈剤、例えば、注射用水、食塩水溶液、好ましくは生理食塩水、リンゲル溶液、等張性塩化ナトリウム、溶媒または懸濁媒(suspending medium)としての役目を果たすことができる不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の溶媒;抗菌剤;抗酸化剤;キレート剤;緩衝液および張度調整のための剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロースなど。非経口の調製物は、ガラスまたはプラスチックで作製されたアンプル、使い捨てシリンジまたは複数回投与用バイアルの中に封入することができる。一部の実施形態では、医薬組成物は、生理食塩水を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は注射用医薬組成物、一部の実施形態では、注射用医薬組成物は無菌である。
【0110】
経口製剤に対して、本開示の化合物のうちの少なくとも1種を、単独で、あるいは、錠剤、散剤、顆粒剤および/またはカプセル剤を作製するのに適当な少なくとも1種の添加物、例えば、任意の1種もしくは複数種の従来の添加物、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤、着色剤、および香味剤と組み合わせて使用することができる。医薬組成物は、胃の環境の低いpHからの活性成分の保護および/または腸溶コーティングを提供し得る少なくとも1種の緩衝剤を含むように製剤化され得る。医薬組成物は、経口送達用に、少なくとも1種の香味剤を用いて、例えば、液体、固体もしくは半固体製剤で、かつ/または腸溶コーティングを用いて、製剤化することができる。
【0111】
経口用製剤は、ゼラチンカプセル剤として提供され得、このゼラチンカプセル剤は、粉末状担体と共に活性化合物または生物学的化合物を含有することができる。同様の担体および希釈剤を使用して、圧縮錠を作製することができる。錠剤およびカプセル剤は、ある期間にわたる活性成分の連続放出を得るための持続放出製品として製造され得る。圧縮錠は、いずれの不快な味覚も遮蔽し、錠剤を大気から保護するために糖コーティングもしくはフィルムコーティングされ得るか、または、消化管内で選択的に崩壊するように腸溶コーティングされ得る。
【0112】
医薬組成物は、持続放出または緩徐放出するように製剤化され得る。このような組成物は一般的に周知の技術を使用して調製され得、例えば、口腔、直腸または皮下への埋込み、または所望のターゲット部位での埋込みにより投与され得る。持続放出製剤は、担体マトリックス中に分散した活性のある治療剤を含有することができ、そして/または速度制御膜に取り囲まれたリザーバー内に含有され得る。このような製剤内で使用するための賦形剤は生体適合性であり、それは、生分解性であってよい。好ましくは、製剤は、比較的一定のレベルの活性成分の放出を提供する。持続放出製剤内に含有される活性のある治療剤の量は、埋込みの部位、放出の速度および予想される継続時間、ならびに処置または予防する状態の性質に依存する。
【0113】
本明細書に記載されている医薬組成物は、様々な基剤、例えば、乳化基剤または水溶性基剤などと混合することによって坐剤として製剤化され得る。医薬組成物は、吸入によって投与されるエアゾール製剤として調製されてもよい。組成物は、加圧した、許容される噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などへと製剤化されてもよい。
【0114】
本開示の化合物およびこれらの化合物を含む医薬組成物を、局所的に(例えば、経皮的投与により)投与してもよい。局所的製剤は、経皮的パッチ剤、軟膏剤、ペースト剤、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤などの形態であってよい。局所的製剤は、浸透剤もしくは強化剤(透過促進剤とも呼ばれる)、増粘剤、希釈剤、乳化剤、分散助剤、または結合剤のうちの1種または複数種を含み得る。物理的浸透促進剤は、例えば、イオントホレーシスなどの電気泳動技法、超音波(または「音波泳動法」)の使用などを含む。化学的浸透促進剤は、治療剤の投与前、投与と同時、または投与直後のいずれかに投与される剤であり、皮膚、特に角質層の透過性を増加させて、皮膚を通しての薬物の浸透の向上を提供する。追加的な化学的および物理的浸透促進剤は、例えば、Transdermal Delivery of Drugs、A.F. Kydonieus(編)1987年、CRL Press;Percutaneous Penetration Enhancers、Smithら編(CRC Press、1995年);Lennerasら、J. Pharm. Pharmacol、54巻:499〜508頁(2002年);Karandeら、Pharm. Res.、19巻:655〜60頁(2002年);Vaddiら、Int. J. Pharm.、91巻:1639〜51頁(2002年);Venturaら、J. Drug Target、9巻:379〜93頁(2001年);Shokriら、Int. J. Pharm.、228巻(1−2号):99〜107頁(2001年);Suzukiら、Biol. Pharm. Bull、24巻:698〜700頁(2001年);Albertiら、J. Control Release、71巻:319〜27頁(2001年);Goldsteinら、Urology、57巻:301〜5頁(2001年);Kiijavainenら、Eur. J. Pharm. Sci.、10巻:97〜102頁(2000年);およびTenjarlaら、Int. J. Pharm.、192巻:147〜58頁(1999年)において記載されている。
【0115】
本開示の化合物のうちの少なくとも1種の単位用量(例えば、経口または注射用の用量)を含むキットが提供される。このようなキットは、単位用量を含む容器、対象となる病的状態の処置における治療剤の使用および付随して生じる利点を説明する情報提供のためのパッケージ挿入物、ならびに/または任意選択で少なくとも1種の化合物またはこれを含む組成物の送達のための器具または装置を含み得る。
【実施例】
【0116】
(実施例1)
E−セレクチンおよびCXCR4ケモカイン受容体のヘテロ二官能性阻害剤
(化合物9および16)
例示的な式(I)のヘテロ二官能性化合物を、実施例1〜2に記載されているように、および
図1に記載されている例示的合成スキームに示されているように合成した。
【0117】
化合物2の合成:化合物1(2.5g、8.3mmol、Qianら、Nature Communications、2巻、2011年、495頁)をジオキサン(30ml)に溶解し、室温でゆっくりと撹拌しながらH
2O(20ml)を加えた。溶液を0℃に冷却し(氷浴)、ゆっくりと撹拌しながらNaBH
4(3g、79.3mmol)を加えた。反応混合物を64℃で16時間撹拌した。反応混合物を0℃に冷却し、5N HClでクエンチした。溶液から固体の塊を沈殿させ、これを濾過で除去した。濾液をEtOAc(125ml)で希釈し、分液ロートに移した。相を分離した。有機相を生理食塩水(100ml)で洗浄し、脱水し(Na
2SO
4)、濃縮した。残渣を、ヘキサン−EtOAcを移動相として使用するカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物2を得た(1.8g、6.6mmol、79.3%)。
【0118】
化合物3の合成:化合物2(1.7g、6.2mmol)をTHF(32ml)に溶解し、室温で撹拌しながら10N HCl(30ml)を加えた。反応混合物を室温で4.5時間撹拌した。反応混合物をH
2O(150ml)で希釈し、EtOAc(3×125ml)で抽出した。合わせた有機相をNaHCO
3飽和溶液(1×125ml)およびブライン(1×125ml)で洗浄し、脱水し(Na
2SO
4)、濾過し、濃縮した。残渣を、ヘキサンおよびEtOAcを移動相として使用するカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物3を得た(1.22g、5.7mmol、91.7%)。
【0119】
化合物5の合成:化合物4(3.7g、7.58mmol、Tetrahedron Letters、2003年、44巻、2481〜2483頁)と化合物3(2.05g、9.53mmol)の混合物を、トルエン(2×40ml)と共蒸発させ、真空下で30分間保持した。混合物を1,2−ジクロロエタン、40ml)に溶解し、アルゴン下、室温で30分間撹拌し、Na(OAc)
3BH(3.2g、15mmol)を加え、反応混合物をアルゴン下、室温で終夜撹拌した。水(60ml)を加え、これに続いてCH
2Cl
2(80ml)を加えた。反応混合物を分液ロートに移し、有機相を収集した。水相をCH
2Cl
2(2×60ml)で洗浄した。合わせた有機相を冷たいNaHCO
3飽和溶液(80ml)およびブライン(80ml)で逐次的に洗浄し、脱水し(Na
2SO
4)、濾過し、濃縮した。残渣を、ヘキサンおよびEtOAcを移動相として使用するカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物5を得た(4.5g、6.54mmol、86.3%)。
【0120】
化合物6の合成:化合物5(4.5g、6.54mmol)をアルゴン下でCH
2Cl
2(50ml)に溶解し、氷浴上で冷却した。デスマーチン試薬(3.6g、8.49mmol)を加え、反応混合物をアルゴン下で3時間撹拌し、この間反応混合物はゆっくりと室温に達した。反応混合物をCH
2Cl
2(40ml)で希釈し、冷たいNaHCO
3飽和溶液および冷たいブラインで洗浄した。有機相を脱水し(Na
2SO
4)、濾過し、濃縮した。残渣を、ヘキサン−EtOAcを移動相として使用するカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物5を得た(3.6g、5.25mmol、80.28%)。
【0121】
化合物8の合成:化合物6(3.5g、5.11mmol)と化合物7(2.8g、WO2013/096926)の混合物をMeOH(3×50ml)と共蒸発させ、真空下で乾燥させた。残渣をMeOH(50ml)に溶解し、アルゴン下、室温で1時間撹拌した。Na(OAc)
3BH(3.6g、16.99mmol)を加え、反応混合物をアルゴン下、室温で17時間撹拌した。反応混合物を濃縮した。固体残渣をCHCl
3(100ml)に懸濁させ、H
2O(250ml)を撹拌しながら加えた。混合物を室温で10分間撹拌し、この間固体生成物が沈殿した。固体生成物を濾取し、水で洗浄し、真空下で乾燥させて、化合物8を得た(4.4g、3.14mmol、化合物6に基づき82.2%)。
【0122】
化合物9の合成:化合物8(4.2g、3mmol)のMeOH(100ml)中溶液に、室温で撹拌しながら1N NaOH水溶液(50ml)を加えた。反応混合物(pH12.9)を室温で2時間撹拌した。AcOH(3ml)を加えることによって、生成した反応混合物のpHを8.9に調節した。溶媒を蒸発させ、次いで凍結乾燥した。固体の塊をH
2O(20ml)に溶解し、NaOH溶液を加えることによって、溶液のpHを9.5に調節した。H
2O(各カラム150ml)、H
2O中50%MeOH(各カラム60ml)、H
2O中70%MeOH(各カラム100ml)、およびH
2O中80%MeOH(各カラム50ml)を使用する事前充填済みのSep−Pak C18カラム(2×10g)を使用することによって、脱塩を実施した。所望の化合物をH
2O中50〜80%MeOHに溶出した。これらを合わせ、全容積の1/4に濃縮した。生成した溶液を凍結乾燥して、化合物8を得た(2.9g、2.6mmol、86.7%)。m/z:C
52H
88BrN
7O
14に対する[M+H]計算値:1116.2;実測値:1116.4。
【0123】
化合物10の合成:化合物2(0.225g、0.73mmol)のCH
2Cl
2中溶液に、セライトを加え、これに続いて、室温で撹拌しながらクロロクロム酸ピリジニウム(chlorochomate)(0.28g、1.3mmol)を加えた。反応混合物を室温で2時間撹拌し、シリカおよびセライトのベッドを通して濾過した。濾液を蒸発乾固し、カラムクロマトグラフィーで精製して、化合物10を得た(0.2g)。
【0124】
化合物12の合成:シクラム(5g、25mmol)の無水CH
2Cl
2(150ml)中懸濁液に、ジアリル二炭酸(12ml、d 0.991g/ml、83.7mmol)のCH
2Cl
2(100ml)中溶液を撹拌しながら滴下添加した。反応混合物を室温で終夜撹拌し、この間反応物は薄緑色に変化し、透明な溶液をもたらした。溶媒を除去し、残渣を、CH
2Cl
2およびMeOHを移動相として使用するカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物12を得た(10.5g、23.2mmol、92.9%)。TLC:CH
2Cl
2−MeOH(95:5)。
【0125】
化合物13の合成:化合物10(0.19g、0.7mmol)および化合物12(0.45g、1mmol)のMeOH(1mlおよびTHF0.5ml)中溶液を室温で30分間撹拌した。この溶液に、Na(OAc)
3BH(0.36g、1.6mmol)を加え、反応混合物を室温で終夜撹拌した。溶液をEtOAcで希釈し、H
2Oで洗浄した。有機層を脱水し(Na
2SO
4)、濾過し、濃縮乾燥させた。残渣をカラムクロマトグラフィーで精製して化合物13を得た(0.2g)。
【0126】
化合物14の合成:化合物13(0.24g、0.34mmol)のTHF(7ml)中溶液に、濃縮HCl(5ml)を加え、反応混合物を室温で10時間撹拌した。反応混合物をH
2O(20ml)で希釈し、EtOAc(3×16ml)で抽出した。合わせた有機相を脱水し(Na
2SO
4)、濾過し、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物14を得た(0.15g)。
【0127】
化合物15の合成:化合物7(0.1g、0.14mmol、WO2013/096926)と化合物14(0.15g、0.23mmol)のMeOH(1.5ml)中混合物を室温で30分間撹拌し、これに続いて、Na(OAc)
3BH(0.096g、0.45mmol)を加えた。反応混合物を室温で終夜撹拌した。反応混合物を濃縮し、残渣をMeOH中に懸濁させた。生成した固体を濾過で除去し、濾液を濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物15を得た(35mg)。
【0128】
化合物16の合成:化合物15(0.028g、0.02mmol)のCH
2Cl
2(2ml)中溶液に、AcOH(0.005ml、0.09mmol)を加え、これに続いてPd(PPh
3)
4(0.003g、0.003mmol)およびBu
3SnH(0.017ml、0.06mmol)を加え、反応混合物を室温で3時間撹拌した。反応混合物をCH
2Cl
2(10ml)で希釈し、H
2O(8ml)で抽出した。水層を凍結乾燥し、H
2Oに溶解し、Sep−Pak C−18カラムで精製した。生成物に対応する画分を濃縮し、H
2Oに溶解した。溶液のpHをNaOH溶液で9.5に調節し、凍結乾燥させて、Na−塩として化合物16を得た(6.5mg)。m/z:C
52H
88BrN
7O
14に対する[M+H]の計算値:1116.2;実測値:1116.6
(実施例2)
SDF−1誘発性化学走性の阻害を評価するCXCR4アッセイ
【0129】
化学走性アッセイを使用して、細胞表面上にCXCR4を発現するCCRF−CEM細胞のCXCR4リガンドCXCL12(SDF−1α)に対する膜を横切った移動を阻害する糖模倣性CXCR4アンタゴニストの能力を測定した。CCRF−CEM細胞は、細胞表面上にCXCR4を発現するヒトTリンパ芽球である。細胞を、37℃で15分間、3uM Calcein AMで標識して、蛍光による検出を可能にした。続いて、細胞を、10分間の250×gでペレット化し、2%FBSを補充したRPMI 1640培地中に、1mL当たり約5×10
5個の細胞の最終濃度に再懸濁させた。通常、200ulの細胞を、22ulの10×濃度の試験化合物と混合し、室温に10分間置いた。処理した細胞を二回反復で評価した。よって、100ulの細胞を、2つのトランスウェル挿入部(Costar番号3421;5.0umポア;6.5mm直径の挿入部)のそれぞれの上側チャンバーに配置した。トランスウェルを、各ウェルが600ulのRPMI 1640および2%FBSおよび50ng/mLのCXCL12を含有する24ウェルプレートのウェルに配置した。陰性対照ウェルは、下側チャンバー内にCXCL12を含有しなかった。細胞を、5%CO
2中、37℃で3時間、上側チャンバーから下側チャンバーへ、膜を横切って移動させた。トランスウェル挿入部を24ウェルプレートから取り出し、励起波長485nmおよび発光波長538nmで、Molecular Devices FlexStation 3を使用して下側チャンバーにおける蛍光を測定した。
図4を参照されたい。
【0130】
(実施例3)
E−セレクチン活性−結合アッセイ
E−セレクチンのアンタゴニストをスクリーニングし、特徴づける阻害アッセイは競合的結合アッセイであり、このアッセイからIC
50値を決定することができる。37℃で2時間のインキュベーションにより、E−セレクチン/Igキメラを96ウェルマイクロタイタープレート内に固定化した。非特異性の結合を減少させるために、ウシ血清アルブミンを各ウェルに添加し、室温で2時間インキュベートした。プレートを洗浄し、ビオチン化した、sLe
aポリアクリルアミドのコンジュゲートの存在下、ストレプトアビジン/西洋わさびペルオキシダーゼと共に試験化合物の段階希釈物をウェルに添加し、室温で2時間インキュベートした。
【0131】
洗浄後、固定化したE−セレクチンに結合しているsLe
aの量を決定するために、ペルオキシダーゼ基質、3,3’,5,5’テトラメチルベンジジン(TMB)を添加した。3分後、H
3PO
4の添加により酵素反応を停止させ、波長450nmでの光の吸光度を決定した。結合を50%阻害するのに必要とされる試験化合物の濃度を決定し、以下の表に示されているように、各E−セレクチンアンタゴニストに対するIC
50値として報告した。本明細書で開示されている例示的化合物に対するIC
50値は、以下の表に提供されている。
図5を参照されたい。
【表1】
(実施例4)
CXCR4アッセイ − 環状AMPの阻害
【0132】
CXCR4−cAMPアッセイは、細胞表面上にCXCR4を発現するように遺伝子操作されたCHO細胞のCXCL12(SDF−1α)への結合を阻害する糖模倣性CXCR4アンタゴニストの能力を測定する。アッセイキットは、DiscoveRx(95−0081E2CP2M;cAMP Hunter eXpress CXCR4 CHO−K1)から購入することができる。キットの指示マニュアルに記載のG
i共役受容体アンタゴニスト応答プロトコールに従った。CXCR4などのGPCRは、通常、3つのGタンパク質:Gs、GiまたはGqのうちの1つに共役する。キットと共に供給されるCHO細胞において、CXCR4は、Giに共役している。リガンド結合(CXCL12)によるCXCR4の活性化後、GiはCXCR4複合体から解離し、活性化され、アデニリルシクラーゼに結合し、そうすることでこれを不活化し、細胞内cAMPレベルの低減をもたらす。細胞内cAMPは通常低く、よって、Gi共役受容体による低レベルのcAMPの低減は検出するのが困難である。ホルスコリンをCHO細胞に加えて、アデニリルシクラーゼを直接活性化し(すべてのGPCRを迂回する)、そうすることで、細胞内のcAMPレベルを上昇させ、これによって、Gi応答を容易に観察することができる。CXCL12のCXCR4との相互作用は、cAMPの細胞内のレベルを低減し、CXCR4アンタゴニストによる、CXCL12のCXCR4との相互作用の阻害は細胞内のcAMPレベルを増加させ、これは発光により測定される。
図6を参照されたい。
(実施例5)
腫瘍関連線維芽細胞へのリンパ管および血管内皮移動の阻害
【0133】
8.0×10
5個の13.34線維芽細胞、S2.013腫瘍細胞、およびColo357腫瘍細胞をT−25内にプレーティングした。終夜インキュベートした。培地を血清フリーEBM−2に変更し、24時間、細胞を培地に慣らした。培地を収集し、濾過してデブリを除去した。750ulの馴化培地をBoydenチャンバー移動プレートの下側のウェルに加えた(3反復/細胞型/処理)。プレーティング仕様:24ウェル;8.0umポア。血清フリーEBM−2に希釈した、3.0×10
4個のhLECまたはHUVECを、Boydenチャンバーの上側のウェルに加えた(500ul/挿入部)。100ug/mlの化合物9を上側のウェルに加えた。hLECまたはHUVECを終夜移動させた。移動後、挿入部を洗浄し、膜の上側の移動しなかった細胞をQティップで除去した。移動した細胞をDiff−Quikキットで固定および染色した。挿入部から膜を取り出し、スライドに載せた。膜の上に四分円を描き、各四分円を画像化した。移動性内皮細胞の数を定量した。
図7を参照されたい。
(実施例6)
PDAC細胞のリンパ単層への結合の阻害
【0134】
4.5×10
4個のhLECを8ウェルチャンバースライドのウェルにプレーティングした。内皮細胞の単層がコンフルエントに達するまで細胞をインキュベートした。指定された処理で、内皮細胞を2時間事前処理した:対照培地、100ug/mlのE−セレクチン特異的アンタゴニスト、10ug/mlの化合物9、または100ug/mlの化合物9。S2.013またはColo357をCFDA−SE Cell Tracker色素で染色した。内皮細胞の事前処理に続いて、血清フリーEBM−2に希釈した3.0×10
4個のS2.013またはColo357細胞をウェルに加え、指定された処理を施した(400ul/ウェル;3反復ウェル/処理)。腫瘍細胞を内皮単層上で1時間インキュベートした。結合インキュベーション後、各ウェルをPBS+0.5% FBSで3回洗浄して、非付着細胞を除去した。4%PFAおよびカバーガラススライドで固定した。5つの位置/ウェルを10×倍率で画像化した。各画像において付着細胞の数を定量した。
図8を参照されたい。
(実施例7)
前立腺がんモデル
【0135】
ルシフェラーゼをトランスフェクトしたPC3Luc細胞を、2×105細胞/血清フリー培地10μlで、4週齢の雄CD1 nu/nuマウスの近位脛骨へ注入した。FaxitronキャビネットX線システムを使用することによって転移の発生をモニターし、生体発光分析で腫瘍負荷を評価した(以下を参照されたい)。FaxitronキャビネットX線システム(Faxitron x−ray corp.、Wheeling、IL、USA)を使用して、転移の発生を放射線撮影によりモニターした。放射線分析を、細胞注入後28日目、35日目、42日目および50日目に実施した。50日目の後にはFaxitron分析を実施しなかった。これは、この時点の後、マウスの麻酔関連死亡の予測されるリスクが顕著に増加したからである。しかし、骨転移と無病生存(DSF)の両方の累積的な発生率を決定するために、各動物の死亡時に、または生存している動物において170日と定義した追跡調査の終わりに動物を屠殺した際に、X線をまた繰り返した。溶骨性の病変の負荷を、放射線撮影のデジタル検査(ImageJ、Wayne Rasband、NIH、USAによるパブリックドメインソフトウエア)で評価した。動物は、心臓注射の170日後、または重篤な苦痛の初期徴候がある場合にはこれより早期に、二酸化炭素吸入により屠殺した。すべての動物に対して精密な検死を行い、様々な器官の試料を常法の組織学的分析のために処理した。
【0136】
発光画像化のために、マウスの腹腔内に体重1kg当たり150mgのホタルルシフェラーゼ(Synchem Ug and Co.KG、Felsberg−Altenburg、Germany)を与えた。ケタミン/キシラジン混合物での麻酔に続いて、マウスを、Hamamatsu画像化ステーション(Hamamatsu photonics、Italian distributor、Rome Italy)に配置した。赤色(高い強度/細胞数)から青色(低い強度/細胞数)の目視スケールで専用のLiving Imageソフトウエアを使用した定量に、ルシフェリン/ルシフェラーゼ反応により生成した生体発光を使用した。デジタルグレイスケール動物画像を取得し、これに続いて、動物内の活性のあるルシフェラーゼから出現する検出した光子カウントの空間的分布を表す擬似色画像を取得し、重ね合わせた。信号強度を、1分間の発光積分時間の間の目的の領域内の検出したすべての光子の合計として定量した。動物が、上腕骨または脛骨/大腿領域のいずれかにおいて検出された少なくとも1つの病変を有するかどうかで、腫瘍発生率を2区分尺度において陽性または陰性のいずれかとしてスコア化した。
図9を参照されたい。
【0137】
上記の様々な実施形態を組み合わせて、さらなる実施形態を提供することができる。本明細書において言及されかつ/または出願データシートに列挙されたすべての米国特許、米国特許出願公報、米国特許出願、非米国特許、非米国特許出願、および非特許公報は、これらの全体が本明細書に参考として援用されている。必要であれば、様々な特許、出願および公報の概念を利用するために実施形態の態様を修正することによって、またさらなる実施形態を提供することができる。