(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6689870
(24)【登録日】2020年4月10日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】適応フィードバック制御研磨方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20200421BHJP
B24B 37/013 20120101ALI20200421BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
H01L21/304 622S
B24B37/013
B24B49/12
【請求項の数】20
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-543719(P2017-543719)
(86)(22)【出願日】2015年10月20日
(65)【公表番号】特表2017-534186(P2017-534186A)
(43)【公表日】2017年11月16日
(86)【国際出願番号】US2015056311
(87)【国際公開番号】WO2016073181
(87)【国際公開日】20160512
【審査請求日】2018年10月2日
(31)【優先権主張番号】14/532,338
(32)【優先日】2014年11月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500475649
【氏名又は名称】ヘッドウェイテクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】特許業務法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムーア テリー
(72)【発明者】
【氏名】ニース ブラント
【審査官】
山口 大志
(56)【参考文献】
【文献】
特表2014−512704(JP,A)
【文献】
特開2005−340679(JP,A)
【文献】
特開2010−093147(JP,A)
【文献】
特開2004−012302(JP,A)
【文献】
特開2009−252342(JP,A)
【文献】
特開2005−011977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/013
B24B 49/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)光学終点システムを用いて、CMP(Chemical mechanical polish)工程の間、基板の前面からの誘電体層の除去を監視することと、
(b)研磨サイクルの開始時刻後の第1の時刻での第1環状領域からの反射光干渉信号を集めるとともに、前記研磨サイクルの開始時刻後の第2の時刻での第2環状領域からの反射光干渉信号を集めることにより、前記基板上の少なくとも2つの環状領域の前記誘電体層の除去の事前除去時間を決定することと、
(c)前記研磨サイクルの最後での前記第1および前記第2環状領域の間の除去の時間差を最小にするために、リテーニングリングの圧力およびCMPヘッドメンブレンの圧力のどちらかまたは両方に対する調整値を計算することと、
(d)前記リテーニングリングの圧力および前記CMPヘッドメンブレンの圧力のどちらかまたは両方に対する前記調整値を適用することと、
(e)前記研磨サイクルを完了することと
を含み、
前記基板の前面は、前記研磨サイクルの間研磨パッドに対向し、かつ、前記基板の背面は前記CMPヘッドメンブレンに隣接するとともに、前記リテーニングリングにより所定の位置に保持され、
前記CMP工程は、前記誘電体層内に埋設されると共に前記誘電体層の上面よりも下方に位置する上面を含む金属層の上部も除去し、
前記誘電体層は、金属エッチストッパ層のうち前記金属層の上部に隣接する領域に形成され、
前記反射光干渉信号は、前記金属層に隣接する領域における前記誘電体層および前記金属エッチストッパ層からの光反射に基づくものであり、
前記金属エッチストッパ層の上面が前記金属層の上面と共平面を形成するように前記誘電体層の最後の部分が除去されるとき、前記研磨サイクルが完了する
CMP適応フィードバック制御方法。
【請求項2】
前記光学終点システムは、
前記基板に入射光を与えるための光源および光学窓と、
前記第1環状領域および前記第2環状領域を含む複数の環状領域からの前記反射光干渉信号を取得するための検出器と
を含む
請求項1に記載のCMP適応フィードバック制御方法。
【請求項3】
前記研磨サイクルの全体の工程時間は、60秒から500秒である
請求項1に記載のCMP適応フィードバック制御方法。
【請求項4】
差t1−t2は、−2秒,−1秒,0,+1秒または+2秒と等しい
請求項1に記載のCMP適応フィードバック制御方法。
【請求項5】
前記CMPヘッドメンブレンの圧力に対する調整値は、負の値,0または正の値をとり得、
前記リテーニングリングの圧力に対する調整値は、負の値,0または正の値をとり得る
請求項1に記載のCMP適応フィードバック制御方法。
【請求項6】
前記第1環状領域と前記第2環状領域との間の事前除去時間の差は、ルックアップテーブル(LUT:look up table)中の所定の行の値に適合し、
前記CMPヘッドメンブレンの圧力に対する調整値および前記リテーニングリングの圧力に対する調整値は、前記所定の行内の隣接する列に見つけられる
請求項1に記載のCMP適応フィードバック制御方法。
【請求項7】
前記反射光干渉信号は、前記誘電体層からの反射光と、前記基板と前記誘電体層との間に設けられたエッチングストッパ層からの反射光とから形成された、前記第1環状領域の誘電体層の厚みに対応する前記第1の時刻での前記反射光の位相差および前記第2環状領域の誘電体層の厚みに対応する前記第2の時刻での前記反射光の位相差を含む
請求項1に記載のCMP適応フィードバック制御方法。
【請求項8】
前記第1および前記第2環状領域の前記誘電体層の厚みは、前記第1および前記第2環状領域各々における少なくとも2つの異なる部分からの前記反射光干渉信号の位相差の平均により求められる
請求項1に記載のCMP適応フィードバック制御方法。
【請求項9】
中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)は、
前記検出器から反射光干渉データを受信し、
前記(b)および前記(c)の工程を行い、
情報の入力を行うことにより、CMP条件を制御し、
前記研磨サイクルの間の前記圧力の調整を行う
請求項2に記載のCMP適応フィードバック制御方法。
【請求項10】
更に、
(a)前記(d)の工程での調整の後に、第3の時刻での前記第1環状領域からの反射光干渉信号を集めるとともに、第4の時刻での前記第2環状領域からの反射光干渉信号を集めることにより、前記基板上の少なくとも2つの環状領域の前記誘電体層の除去の第2の事前除去時間を決定することと、
(b)前記研磨サイクルの最後での前記第1および前記第2環状領域の間の除去の時間差を最小にするための第2の事前除去時間の差に応じて、前記リテーニングリングの圧力および前記CMPヘッドメンブレンの圧力のどちらかまたは両方に対する第2の調整値を計算することと、
(c)前記研磨サイクルの最後まで維持される、前記リテーニングリングの圧力および前記CMPヘッドメンブレンの圧力のどちらかまたは両方に対する前記第2の調整値を適用することと
を含む
請求項1に記載のCMP適応フィードバック制御方法。
【請求項11】
(a)光学終点システムを用いて、CMP(Chemical mechanical polish)工程の間の基板の前面に設けられた複数のnの環状領域からの誘電体層の除去を監視することと、
(b)研磨サイクルの開始時刻後の第1の時刻での第1環状領域からの反射光干渉信号を集めるとともに、前記研磨サイクルの開始時刻後の第2の時刻での第2環状領域からの反射光干渉信号を集めることにより、前記基板上の少なくとも2つの環状領域の前記誘電体層の除去の事前除去時間を決定することと、
(c)前記研磨サイクルの最後での前記第1および前記第2環状領域の間の除去の時間差を最小にするために、少なくとも第1環状部分および第2環状部分でのリテーニングリングの圧力およびCMPヘッドメンブレンの圧力のどちらかまたは両方に対する調整値を計算することと、
(d)少なくとも前記第1環状部分および前記第2環状部分での前記リテーニングリングの圧力および前記CMPヘッドメンブレンの圧力のどちらかまたは両方に対する前記調整値を適用することと、
(e)前記研磨サイクルを完了することと
を含み、
前記基板の前面は、前記研磨サイクルの間研磨パッドに対向し、かつ、前記基板の背面は前記CMPヘッドメンブレンに隣接するとともに、前記リテーニングリングにより所定の位置に保持され、
前記CMP工程は、前記誘電体層内に埋設されると共に前記誘電体層の上面よりも下方に位置する上面を含む金属層の上部も除去し、複数のnの環状部分に適用されるCMPヘッドメンブレンの圧力を含み、
前記第1環状部分および前記第2環状部分は、各々、前記第1および前記第2環状領域に並んで設けられており、
前記誘電体層は、金属エッチストッパ層のうち前記金属層の上部に隣接する領域に形成され、
前記反射光干渉信号は、前記金属層に隣接する領域における前記誘電体層および前記金属エッチストッパ層からの光反射に基づくものであり、
前記金属エッチストッパ層の上面が前記金属層の上面と共平面を形成するように前記誘電体層の最後の部分が除去されるとき、前記研磨サイクルが完了する
CMP適応フィードバック制御方法。
【請求項12】
前記光学終点システムは、
前記基板に入射光を与えるための光源および光学窓と、
前記第1環状領域および前記第2環状領域を含む前記複数の環状領域からの前記反射光干渉信号を取得するための検出器と
を含む
請求項11に記載のCMP適応フィードバック制御方法。
【請求項13】
前記圧力の調整は、更に、前記圧力の調整のための事前除去時間の差を決定するために用いられなかった環状領域に並んで配置された各々の環状部分のCMPヘッドメンブレンの圧力を調整することを含む
請求項11に記載のCMP適応フィードバック制御方法。
【請求項14】
前記金属層はダマシン(damascene)構造内に設けられ、あるいは、前記金属層は磁気トンネル接合(MTJ:Magnetic tunnel junction)素子内のキャッピング層である
請求項11に記載のCMP適応フィードバック制御方法。
【請求項15】
前記少なくとも前記第1環状部分および前記第2環状部分でのCMPヘッドメンブレンの圧力に対する調整値は、負の値,0または正の値をとり得、
前記リテーニングリングの圧力に対する調整値は、負の値,0または正の値をとり得る
請求項11に記載のCMP適応フィードバック制御方法。
【請求項16】
前記第1環状領域と前記第2環状領域との間の事前除去時間の差は、ルックアップテーブル(LUT:look up table)中の所定の行の値に適合し、
前記第1および前記第2環状部分各々での前記CMPヘッドメンブレンの圧力に対する調整値および前記リテーニングリングの圧力に対する調整値は、前記所定の行内の隣接する列に見つけられる
請求項11に記載のCMP適応フィードバック制御方法。
【請求項17】
前記反射光干渉信号は、前記誘電体層からの反射光と、前記基板と前記誘電体層との間に設けられたエッチングストッパ層からの反射光とから形成された、前記第1環状領域の誘電体層の厚みに対応する前記第1の時刻での前記反射光の位相差および前記第2環状領域の誘電体層の厚みに対応する前記第2の時刻での前記反射光の位相差を含む
請求項11に記載のCMP適応フィードバック制御方法。
【請求項18】
前記第1および前記第2環状領域の前記誘電体層の厚みは、前記第1および前記第2環状領域各々における少なくとも2つの異なる部分からの前記反射光干渉信号の位相差の平均により求められる
請求項11に記載のCMP適応フィードバック制御方法。
【請求項19】
中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)は、
前記検出器から反射光干渉データを受信し、
前記(b)および前記(c)の工程を行い、
情報の入力を行うことにより、CMP条件を制御し、
前記研磨サイクルの間の前記圧力の調整を行う
請求項12に記載のCMP適応フィードバック制御方法。
【請求項20】
更に、
(a)前記(d)の工程での調整の後に、第3の時刻での前記第1環状領域からの反射光干渉信号を集めるとともに、第4の時刻での前記第2環状領域からの反射光干渉信号を集めることにより、前記基板上の少なくとも2つの環状領域の前記誘電体層の除去の第2の事前除去時間を決定することと、
(b)前記研磨サイクルの最後での前記第1および前記第2環状領域の間の除去の時間差を最小にするための第2の事前除去時間の差に応じて、前記リテーニングリングの圧力および前記CMPヘッドメンブレンの圧力のどちらかまたは両方に対する第2の調整値を計算することと、
(c)前記研磨サイクルの最後まで維持される、前記リテーニングリングの圧力および前記CMPヘッドメンブレンの圧力のどちらかまたは両方に対する第2の調整値を適用することと
を含む
請求項11に記載のCMP適応フィードバック制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polish)工程に関し、特に、基板上の複数の環状領域の膜厚を監視することと、基板の均一性を最適化するために、CMP工程完了時の環状領域間の除去時間の差が略最小化されるように、CMP工程の間のリテーニングリングの圧力および後側の圧力のどちらかまたは両方を調整することとを含む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CMPは、化学的および機械的な力を適用することにより、基板から導電性または誘電性の不要物質を除去する工程である。例えば、ダマシン(damascene)工程の間、銅(Cu)などの金属は、誘電体層内の開口に設けられる。しかし、過剰金属が堆積されると、この過剰金属は、誘電性物質の一部とともに除去され、誘電体層の上面が新たな金属層の上面と共平面をなす。
【0003】
CMP装置は、典型的には、回転可能なプラテンを備えた研磨基地を含んでおり、このプラテン上には研磨パッドが付けられている。前面側に平坦化される1または複数の層を備えた基板は、ヘッドピースに保持された背面側を有している。この背面側は、ロード/アンロードの間は真空により、研磨の間はリテーニングリングにより、ヘッドピースに保持されている。基板の前面側を研磨パッドに接触させた後、スラリーが導入される。このスラリーは、塩基性水溶液または酸性水溶液などの化学成分と、研磨剤粒子とを含んでいる。研磨パッドが一の方向に回転するとき、基板は、典型的には、同じ方向に回転する。そして、スラリーは、基板上の最上部の1または複数の層の一部を、効果的にエッチングおよび研磨する。研磨サイクルの間、光学検出システムからの終点(エンドポイント)信号は、研磨サイクルの最後を決定するために、リアルタイムまたはオフラインで解析されてもよい。更に、サイクルの最後に、計量学的な測定がなされてもよく、これにより各々のウェハの膜厚の非均一性が示唆されると、計量学的な測定が次の研磨サイクルにおける研磨工程を調整するために用いられてもよい。
【0004】
いくつかのケースでは、ウェハがCMP装置に再ロードされ、2回目の研磨サイクルを要する。そして、最終的な厚みの非均一性を改善するために、最初の研磨サイクルの不均一な厚みのデータが用いられ、2回目の研磨サイクルでウェハの背面側にかける圧力が決定される。時々、最初の研磨の後の最終の厚みで対処せざるを得ない状況により、2回目の研磨を行うことができない。換言すれば、既に最小の厚み基準に達した薄い領域も更に、薄くなってしまうため、基板上の厚い領域を更に研磨することができない。それゆえ、研磨サイクルの最後での異なる環状領域間の除去時間を最小化するため、単一の研磨サイクルの間の圧力調整を可能とするCMPが必要とされている。これにより、工程時間が削減されるとともに、基板の膜厚の均一性が改善される。したがって、製品収量を増加させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の第1の目的は、単一の研磨サイクルで許容可能な膜厚の非均一性に達するように、研磨工程の間にCMPヘッドメンブレンおよび/またはリテーニングリングに対する圧力の調整を行うCMP研磨方法を提供することにある。
【0006】
本開示の第2の目的は、その場での圧力調整を行わない方法と比較して、研磨サイクル時間を延長することのない、第1の目的に準じた方法を提供することにある。
【0007】
これらの目的は、一の形態に係るCMP工程設計により達せられる。一の形態では、研磨プロセスの間、ウェハの前面側の下で移動する光学的なエンドポイント窓からの入射光が誘電体層を通過し、金属のエッチングストッパ層で反射される。エッチングストッパ層は、平坦化される金属層に隣接している。エッチングストッパ層および誘電体層からの反射光は、光干渉信号を形成し、この光干渉信号は研磨パッドおよびプラテンの下に配置された検出器によって集められる。CMP工程の間、誘電体層および隣接する金属層は、スラリーおよびパッドの研磨動作により、また、スラリー中の化学成分によるエッチングも手伝って、薄膜化される。研磨により、金属層が誘電体層およびエッチングストッパ層の一方または両方と共平面をなす平坦面が形成される。研磨工程の間、基板上の2以上の環状領域でのエッチングストッパ層および誘電体層からの反射光により、少なくとも1つの、いわゆるC3デルタ測定がなされる。例えば、時刻t1では、外側の環状領域からの光干渉信号が検出され、検出器およびCMP制御装置に接続されたコンピュータ(CPU)によって、解析される。この光干渉信号は、位相差を計算するために用いられる。位相差は、こののち、反射光が生じた環状領域のエリアにおける誘電体層の厚みに変換される。同様に、時刻t2では、中央の環状領域から第2の光干渉信号が検出され、CPUによって解析され、所定の領域の誘電体層の厚みに変換される。更に、中央と外側の中間付近の環状領域からは、第3の光干渉信号が第3の時刻t3に取り込まれてもよい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の形態では、t1=t2であり、最初の研磨条件が、エッチストッパ層上で誘電体層の第1の部分が除去される最終の工程時刻tFまで続くと仮定したときに、中央と外側の環状領域の間の誘電体層の厚みの差(ディッシング差)は、事前除去時間の差(C3デルタ)に変換される。誘電体層の第1の部分は、通常、基板の中央または端近傍に設けられる。除去時間は、実際の終点として定義され、この終点は、エッチングストッパ層からの反射光干渉信号により、基板上の所定の領域で、エッチングストッパ層上の誘電体層が完全に除去されたことを示された時である。事前除去時間は、1つの環状領域に対して、C3デルタ測定の間に検出された光干渉信号に基づいて見積もられた除去時間である。C3デルタ測定は、好ましくは、研磨サイクルの中間点付近でなされる。例えば、合計の工程時間が、約70秒であるとき、C3デルタ測定は、研磨サイクル開始後、20秒から50秒の間になされてもよい。加えて、時刻t1が、時刻t2に先行してもよく、あるいは、時刻t2が、1秒または2秒、時刻t1に先行してもよい。好ましくは、少なくとも2つの環状領域からの光信号で位相がずれている期間、光干渉信号が集められる。検出器によって集められた光強度データは、CPUに入力される。
【0009】
CPUは、専用ソフトウェアを備えており、この専用ソフトウェアが、検出器からの光干渉信号から計算されたディッシング差に基づいて、リテーニングリングおよび基板背面側(CMPヘッドメンブレン)の圧力調整を算出する。典型的には、ディッシング差は、事前除去時間の差(秒)の観点であり、C3デルタ測定の大きさに基づいて、所定の圧力調整値を規定するために、ルックアップテーブル(LUT:look up table)が用いられる。上述のように、同じ研磨サイクルの間のCMP圧力調整を行うために、どの2つの環状領域間のC3デルタ測定がなされてもよい。しかし、中央と外側の環状領域間の事前除去時間の差は、他のどの2つの環状領域間の事前除去時間の差よりも通常大きい。それゆえ、研磨サイクルの最後で厚みの非均一性を最小化するという点において、検出された事前除去時間の差のうち、最も大きなものに応じたCMP圧力調整が、最も有益である。圧力調整は、CMP制御装置にフィードバックされ、時刻t1,時刻t2で反射光干渉信号が集められた数秒後の時刻tAで、圧力調整がなされる。
【0010】
時刻tAと最終の工程時刻tFとの間で、圧力調整が適用される。その結果、最初の目標時刻tFから合計の工程時間が増加することなく、従来技術と比較して、中央から端の金属の厚みの差が最小化される。従来技術では、最初の圧力値が工程の間中続き、2回目の研磨サイクルまで圧力調整が適用されない。
【0011】
第2の形態では、単一の研磨サイクルが、異なる時刻での2つの圧力調整を含んでいてもよい。第1の圧力調整は、第1の形態の時刻tAと同様に、時刻tP1でなされる。その後、反射光干渉測定の第2のセットが、時刻tP1に続く時刻t4およびt5で集められる。例えば、時刻t4で、外側の環状領域からの反射光干渉信号が解析され、時刻t5で、中央の環状領域からの反射光干渉信号が解析される。2つの環状領域からの光干渉信号で、好ましくはわずかに、互いの位相がずれているとき、時刻t4=時刻t5、または時刻t4と時刻t5とが好ましくは2秒以内にある。その後、第2の圧力調整がCPUによって計算され、CMP制御装置にフィードバックされる。そして、リテーニングリングおよびCMPヘッドメンブレンの一方または両方に、時刻tP2から最終のサイクル時刻である終点tFまで圧力調整がなされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】
図1Aは、誘電体層内に金属層が形成された、CMP工程の前のダマシン構造の断面図である。
【
図1B】
図1Bは、
図1AからCMP工程により上面が平坦化された後のダマシン構造の断面図である。
【
図2】
図2は、本開示の一の形態に係るダマシン構造のエッチングストッパ層および誘電体層からの反射光に起因してどのように位相差が生じるかを示す概略図を表している。
【
図3】
図3は、発明者によって実施された工程にしたがって、基板上の中央および外側の環状領域間の事前除去時間の差を示す可動平均プロットである。
【
図4A】
図4Aは、単一の工程サイクルの間に、事前除去時間測定に応じてCMP圧力調整がなされる、本発明の一の形態に係る工程流れ図である。
【
図4B】
図4Bは、単一の工程サイクルの間に、複数セットの事前除去時間測定に応じて、複数のCMP圧力調整がなされる、本発明の他の形態に係る工程流れ図である。
【
図5】
図5は、CMP工程の間に光強度測定がなされ、2以上の環状領域で事前除去時間が計算され、この事前除去時間が単一の工程サイクルの間に膜の均一性を改善するための圧力調整に用いられるという時系列を表している。
【
図6】
図6は、本開示の一の形態に係る単一のCMP研磨サイクルの間に、圧力調整値を決定するために用いられるルックアップテーブルの一例を表している。
【
図7】
図7は、本開示の一の形態に係るCMP装置レイアウトの断面図である。ここでは、研磨パッドの下の検出器からの光強度測定値がCPUに読み込まれ、事前除去時間が計算され、その後、基板上の複数の環状圧力部分でリテーニングリングの圧力およびCMPヘッドメンブレンの圧力の一方または両方を調整するために、1または複数の圧力調整値がCMP装置に入力される。
【
図8】
図8は、本開示の第2の形態に係る単一のCMP研磨サイクルの間に、圧力調整値を決定するために用いられるルックアップテーブルの一例を表している。
【
図9】
図9は、研磨サイクル完了後のディッシング均一性を決定するための原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscopy)測定を得るために用いられるウェハレイアウトを表している。
【
図10A】
図10Aは、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)測定によって得られた複数のC3デルタ時刻でのウェハの中央と端との間のディッシング差(非均一性)のプロットであるとともに、記録過程(POR:Process of Record)を表す。
【
図11A】
図11Aは、本開示の適応終点(AEP:Adaptive End Point)法実行後に、SEM測定によって得られた複数のC3デルタ時刻でのウェハの中央と端との間のディッシング差のプロットである。
【
図12】
図12は、記録過程によって研磨された複数のウェハから収集された、ウェハの中央と端との間の抵抗差のプロットである。
【
図13】
図13は、本開示に係る、AEP制御法実行後のウェハの中央と端との間の抵抗差のプロットである。
【
図14】
図14は、記録過程およびAEP制御法の両方について、中央と端との間の平均のディッシング差、平均の抵抗差および抵抗差の標準偏差を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、適応フィードバック制御法であり、2回目の研磨サイクルが不要となるように、単一の研磨サイクルの間に膜の非均一性を最小化するためのAEP制御法と言われる。「ウェハ」および「基板」の語は、ほぼ同じ意味で用いられてもよい。ここで規定されるCMP適応フィードバック制御法は、6,8,12または他の大きさの基板に適用されてもよく、中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)内の専用ソフトウェアによって駆動される。
【0014】
発明者は、現在、1または複数の誘電体層内に形成された金属層を平坦化するCMP工程を実行している。例えば、金属層は、ダマシン工程によって形成された、MRAMのビット線またはワード線であってもよく、あるいは、磁気トンネル接合(MTJ:Magnetic Tunnel Junction)素子のキャッピング層であってもよい。金属層は、銅(Cu)に限定されず、当該技術分野で使用される他の金属または合金であってもよいことは理解される。反射光干渉測定を含む従来の終点検出システムは、典型的には、研磨サイクルの間、基板上の複数の位置で誘電体膜の厚みを監視するために用いられるが、研磨サイクルの間、基板の背面側または基板を囲むリテーニングリングへの圧力調整は適用されない。代わりに、基板内あるいはバッチ間の膜厚を監視し、先に平坦化された基板の2回目の研磨サイクルのための、あるいは、平坦化のための待機状態にある他の基板への最初の研磨サイクルのための圧力調整を計算するために、研磨サイクルが完了した後に実施されるAFMおよびSEM測定の一方または両方が用いられてもよい。
【0015】
図3を参照すると、各々がバッチを表す、複数の点60として、いくつかの基板の中央と端との間の除去時間の差がプロットされたCMPの記録過程のチャートが示されている。ランタイムの平均線61は、複数週にわたりまとめられている。この場合、複数バッチ後に、2.8秒の中央から端への除去時間の平均の差が観測される。各々のバッチは、25ウェハまでを含む。この結果がCMP制御装置へプログラムされてもよい。これは、単一の研磨サイクル後の中央と端との間の膜厚の非均一性を減少させる目的で、次のバッチに対して圧力条件を適用するためである。しかし、
図3に示されるように、除去時間の移動平均差に応じて適用される圧力条件を用いたとしても、バッチ間で、まだかなりの非均一性が残る。新たな方法では、リアルタイムでの補正を行い、単一の研磨サイクルの間で基板の非均一性を実質的に最小化し、バッチ間(ウェハ間)の非均一性を減少させることが必要とされる。
【0016】
図1Aを参照すると、ダマシン工程フローの中間工程が示されており、ここでは、複数の金属層および誘電体層(図示せず)を含む下部構造を有する基板10が設けられている。アルミナなどを含む第1層間誘電体層(ILD:Interlevel Dielectric layer)11が、基板上に形成されており、第1層間誘電体層11は側壁11sによって区切られた開口を有している。金属層12は、ワード線またはビット線であってもよく、側壁11s間の開口を埋めており、そして、第1層間誘電体層11上に、所定の距離e伸びている。第1層間誘電体層11の上面に接してエッチングストッパ層13がある。エッチングストッパ層13は、第2層間誘電体層(ILD)14に用いられるアルミナ等の誘電材料よりも化学的または機械的なエッチ抵抗がはるかに高いルテニウム(Ru)または他の金属、あるいは合金により構成されていてもよい。通常、第2ILDは、金属層12上の上面14t2が距離dとなり、かつ、金属側壁12sに隣接する領域内でエッチングストッパ層上の上面14t1も距離dとなるように、等角的に設けられている。ここで、d>eである。
【0017】
図1Bを参照すると、CMP工程完了後の、
図1Aのダマシン構造が示されている。好ましくは、エッチングストッパ層13上の金属層12の一部と、第2ILD14とが除去されて、エッチングストッパ層の上面13tが、側壁11s間の金属層の上面12tと共平面をなす。ウェハの全域で均一な抵抗値が得られるように、ウェハの全域で金属層が均一な厚みを有することが重要である。典型的には、第1ILD11内に平行な金属層(図示せず)が複数形成されているが、図面を簡素化するため、1つの金属層のみを示している。その後、金属層間の相互接続を形成するために、ダマシン構造において、金属層12上に、さらに金属層および誘電体層を形成してもよい。
【0018】
図2を参照すると、終点検出システムは、光源(図示せず)からの複数の入射光信号20a,20bとともに、動作する。この入射光信号20a,20bは、エッチングストッパ層13および第2ILD14各々で反射される。反射光信号は、干渉パターン20cを形成する。この干渉パターン20cが、検出器(図示せず)に取り込まれ、位相差21を計算するために用いられる。位相差21は、エッチングストッパ層上の上面14t1を有する領域内での第2ILD14の厚みを示す。
【0019】
本開示の第1の形態は、
図4Aに示した流れ図に示されている。工程100では、CMP工程の間の研磨サイクルの第1部分の間の基板からの物質除去が、上述したように、光学終点検出システムにより、監視される。光学システムは、基板表面に入射光を与える光源と、干渉信号の形で、誘電体層およびエッチングストッパ層からの反射光を取り込む検出器とを有している。工程101では、基板の少なくとも2つの環状領域からの反射光干渉信号から得られた光強度データが、CPUに入力される。このCPUでは、少なくとも2つの環状領域に対する事前除去時間が計算される。次に工程102では、CPUが少なくとも2つの環状領域間のディッシング差(非均一性)を計算する。2つの環状領域は、中央の環状領域および、外側(端)の環状領域であってもよい。続いて、工程103では、事前除去の非均一性の情報が使用されて、CMP制御装置へのフィードバックデータが生じる。工程104では、このフィードバックデータにより、リテーニングリングおよびCMPヘッドメンブレンの圧力の一方または両方の圧力調整がなされる。これは、工程105での研磨サイクル完了時まで適用される。
【0020】
図4Bに示された第2の形態によれば、圧力調整は適用されるが、維持される必要がないということを除き、第1の形態から、最初の5つの工程100−104が保持される。代わりに、最終の工程105に達する前に、工程106−107または工程106−108が実行される。工程106は、第1の圧力調整後の反射光干渉信号の第2のセットを集めることと、光強度データをCPUに入力することとを含む。CPUでは、基板上の少なくとも2つの環状領域間の事前除去時間の第2のセットが計算される。その後、工程107では、研磨サイクルの最後に、少なくとも2つの環状領域間の除去時間の差を最小化するために、第2の圧力調整が有利となるか否かをCPUが決定する。答えが「ノー」であるとき、研磨サイクルの最後の工程105まで、現行の研磨条件が継続される。答えが「イエス」であるとき、工程108が挿入される。工程108では、第2の圧力調整をCMP制御装置にフィードバックし、研磨サイクルの最後の工程105まで、CMPヘッドメンブレンの圧力およびリテーニングリングの圧力の少なくとも一方を調整する。なお、工程100は、約2秒までを要してもよく、工程101−103のCPU工程時間は、一般的に数ミリ秒以内に達成される。同様に、総じて、本開示の適応フィードバック制御法が、合計の研磨時間にそれほど影響せず、工程104が一瞬生じるようにしてもよい。いくつかの形態では、工程100−105または工程100−108が、発明者によって実施される従来の研磨サイクルと同じ期間内になされてもよい。この従来の研磨サイクルでは、リアルタイムでの調整が計算されず、適用されない。
【0021】
第1の形態を
図5に図示しており、この
図5では、適応フィードバック制御法の様々な工程の時系列が示されている。適応フィードバック制御法は、適応終点(AEP:Adaptive End Point)制御法とも呼ばれる。左側のプロット(縦軸)は、時刻tSで始まり、時刻tFで終わる単一の研磨サイクルの時系列を示している。後者(時刻tF)は、開始時刻後、60秒から500秒であってもよい。横軸は、基板の表面から反射された光強度を表している。曲線50は、基板の中央の環状領域からの反射光干渉信号の光強度に対応し、曲線51は、基板の中央と端との中間の環状領域からの反射光干渉信号の光強度であり、曲線52は、外側の環状n領域からの反射光干渉信号の光強度である。外側の環状領域は、より大きな面積を有し、この領域ではより多くの光が反射されるので、より大きな大きさの信号を有する。全ての3つの曲線は、最大点と最少点とを有するが、これらは互いに一致している必要はない。典型的な形態では、曲線51,50,52各々の光強度は、時刻t3,t2,t1で最少に最も近づく。光強度曲線が、互いに完全には一致していないとき、次の反射光干渉信号からの圧力調整計算は、時刻t1−t3でなされることが好ましい。
【0022】
時刻t1では、外側の環状領域からの第1反射光干渉信号が、検出器(図示せず)によって集められ、CPUに入力される。加えて、中央の環状領域からの第2反射光干渉信号が時刻t2集められるとともに、中間の環状領域からの第2反射光干渉信号が時刻t3で集められ、CPUに送られる。CPUでは、位相差(
図2)を各々の環状領域の誘電体層の厚みに変換するために、ソフトウェアプログラムが用いられる。時刻tSでの、
図1Aに示した厚みdは、時刻tFでゼロに達するまで(
図1B)、徐々に小さくなる。研磨サイクルの間の任意の時刻における、あらゆる2つの環状領域間の厚みの非均一性は、ディッシング差と呼ばれる。続いて、C3デルタ事前除去時間の差が、少なくとも2つの異なる環状領域間で計算される。例えば、時刻t1,t2各々での光強度により決定された外側および中央の環状領域間のディッシング差は、CPUによって、現行の研磨条件が時刻tFまで続くと仮定したときの推定除去時間の差に変換される。様々な事前除去時間の差に対応する、所定の基板背面側(CMPヘッドメンブレン)の圧力の調整値およびリテーニングリングの圧力の調整値を有する表(表1)は、CMP制御装置(図示せず)に対する適当なフィードバックデータを決定するために用いられる。
【0023】
図6には、一の形態に係る表1の拡大図が示されている。図面を簡素化するため、この表は、中央および外側の環状領域の間の、−4ユニットから+4ユニットにわたる9つの事前除去時間の差に対応する9つの行(第1列)を有している。第1列における負の事前除去時間の差は、外側の環状領域を除去する前に、基板の中央の環状領域では、誘電体層14(
図1A)が除去されていることを意味する。実際には、表1はかなり多くの数の行を有していてもよく、0.1から0.01ユニット毎に事前除去時間の差が特徴づけられていてもよい。このとき、ユニットは秒あるいは、1秒たらずであってもよい。真ん中の列は、psiを単位として、最初の圧力と比較したCMPヘッドメンブレンの圧力調整値を示している。例えば行1では、−0.4ユニットの事前除去時間の差により、最初のメンブレン圧力(MP:Membrane Pressure)と比較して、-x1psiのCMPヘッドメンブレンの圧力減少が引き起こされる。同様に、−4ユニットの事前除去時間の差により、時刻tSでのリテーニングリングの圧力(RRP:Retaining Ring Pressure)値と比較して、-y1psiの減少のRRPの調整がなされる。
【0024】
MP調整はx1psiからx8psiまでの単位でなされ、RRP調整はy1からy8として記載されている。どちらの圧力に対してもゼロ調整を含み得る。xn値およびyn値は、それぞれ、0.01と1との間の大きさを有していてもよい。ここで、nは、典型的な形態においては1から8であるが、他の形態においてかなり大きな数字であってもよい。表1内にn行を有する他の形態では、MPpsiとxn異なる調整値、RRPpsiとyn異なる調整値が存在し得る。この調整値はゼロを含み得る。表1内の所定の行におけるCMPヘッドメンブレンの圧力およびRRPの調整は、常に同じ方向(減少のマイナスまたは増加のプラス)でなくてもよい。−(xn)MP調整が、0,-ynまたは+ynのRRP調整と対になってもよく、あるいは、+(xn)MP調整が、0,-ynまたは+ynのRRP調整と対になってもよい。
【0025】
RRPの減少により、ウェハ端の研磨パッド上のリテーニングリングの圧力が減少する。次に、基板の外側の環状領域に近いパッドが反発し、それにより、外側の環状領域の物質除去の速度が速まる。このとき、中央の環状領域からの物質除去の速度には大きな影響は及ぼさない。CMPヘッドの内側で、CMPヘッドメンブレンの圧力(MP)は、基板の背面側にかかる圧力に関係する。それゆえ、MP圧力の増加により、基板の前面側を、効率的に研磨し、速い速度で物質除去することが可能となる。いくつかのCMP装置では、MPの変化が基板内にわたって本質的に均等に適用されるような、CMPヘッドメンブレンの圧力部分は1つのみである。
【0026】
図7に示した他の形態では、研磨サイクルの間、基板10の背面側10bのメンブレン48に、複数の圧力部分が存在していてもよい。典型的な形態では、同心環として形成された4つの環状圧力部分Z1−Z4が示されている。中央にZ4、外側部分としてZ1、Z1に隣接してZ2、Z4に隣接してZ3が基板の背面側に示されている。この場合、メンブレン内の4つの環状圧力部分は、基板の前面側10fの4つの環状領域A1-A4に重なる。ここでは、A4が中央の環状領域であり、A1が外側の環状領域であり、A2が部分Z2の下に並んで配置された第1中間環状領域であり、A3が部分Z3の下に並んで配置された第2中間環状領域である。そして、各々の部分の直径は、本質的に、対応する前側の環状領域の直径と等しい。例えば、環状領域A1および部分Z1の環直径がc1であり、環状領域A2および部分Z2の環直径がc2、環状領域A3および部分Z3の環直径がc3、環状領域A4および部分Z4の環直径がc4である。
【0027】
光源および検出器を含む光学システム30は、CMP工程の間、研磨パッド31および基板10の下に配置されている。ここで、スラリー34は、研磨パッドと基板の前面側10fとの間に導入される。光源は、基板の下を常に移動する光学窓(図示せず)を通じて光を投影する。光学システムは、1秒足らずの間に、4つ全ての環状領域A1−A4に入射光20a,20bを供給し、それらからの反射光干渉信号20cを集める。
【0028】
一の形態によれば、中央の環状領域からの光干渉信号20c4および外側の環状領域からの光干渉信号20c1は、それぞれ時刻t5,t6で集められ、CPU35に入力される。上述の事前除去時間(C3デルタ)の差は、基板の前面側の環状領域A1およびA4で計算される。
図4Aに示した工程流れ図に続いて、CMP制御装置36に送られる圧力調整を決定してもよい。いくつかの形態では、CPUおよびCMP制御装置は、同じ装置であり、分離した構成単位ではない。環状領域A4が、環状領域A1よりも早く薄膜化されていることが分かると、環状領域A4よりも環状領域A1の薄膜化速度を速めるように、圧力調整がなされる。反対に、環状領域A4が、環状領域A1よりも遅く薄膜化されていることが分かると、環状領域A1よりも環状領域A4の薄膜化速度を速めるように、圧力調整がなされる。
【0029】
第1の圧力調整は、時刻tP1でなされ、基板の端のリテーニングリングへの圧力調整40および基板の背面側へのCMPヘッドメンブレンの圧力調整の一方または両方を含む。好ましくは、背面側の圧力調整は、背面側の部分Z1へのMP調整41、背面側の部分Z2へのMP調整42、背面側の部分Z3へのMP調整43、および背面側の部分Z4へのMP調整44を含んでおり、時刻tFの研磨サイクルの最後まで維持される。この場合、各々のメンブレン部分に対して圧力調整の列を有する表2が用いられてもよい。ここでは、部分Z1に対してx1−x8の値が適用され、部分Z2に対してv1−v8の値が適用され、部分Z3に対してw1−w8の値が適用され、部分Z4に対してz1−z8の値が適用される。第1の形態と同様に、各々の、正または負のCMPメンブレン圧力調整値は、絶対値で0.01psiから0.1psiであってもよい。更に、表2中にn行を有する他の形態では、行内において、vn,wn,xn,ynおよびznの値のうちの1以上が、0,負の数または正の数であってもよい。nは、9よりもかなり大きくてもよい。
【0030】
別の形態では、基板上のn個の環状領域のうち、2つの環状領域のみから事前除去時間が計算されるとき、CMPヘッドメンブレンの圧力調整が、2つのMP部分のみになされてもよい。この2つのMP部分は、事前除去時間が計算された2つの環状領域の上に並んで配置されている。例えば、環状領域A1およびA4の間で事前除去時間の差が計算されるとき、前の形態での背面側の圧力調整が変更され、部分Z2およびZ3では最初のMP値が維持されたまま、部分Z1およびZ4に対してのみ圧力調整がなされるようにしてもよい。したがって、部分Z1での値x1−x8および部分Z4での値z1−z8のみが適用される。全てのv1−v8の値および全てのw1−w8の値は、CMPヘッドメンブレンの圧力調整をなすためには、適用されない。
【0031】
図4Bの工程流れ図および
図7の時系列に従う、更に他の形態では、RRP調整40およびMP調整41−44が適用された所定時間後に、反射光干渉信号の第2のセットが集められる。例えば、工程106は、時刻t7での第2の光干渉信号20c4および時刻t8での第2の光干渉信号20c1の収集を含んでいる。これに引き続き、時刻tP1でのMPおよびRRPへの第1の圧力調整の間に適用された条件が、研磨サイクル完了時まで維持されるという仮定のもと、第2の事前除去時間の差を決定する。工程107でCPU35が、MPおよびRRP圧力調整の第2のセットが適用されると、厚みの均一性が改善されると決定したとき、
図4Bの工程108に示したように、MPおよびRRPの一または複数が、点tP2の第2の時刻で調整される。この場合、表2は時刻tP2でのMPおよびRRP調整の大きさを決定するために、2回用いられる。
【0032】
本開示はまた、
図5に示した第1の形態の時刻tAの後に、反射光干渉信号の第2のセットが得られてもよく、リテーニングリングの圧力およびCMPヘッドメンブレンの圧力の一方または両方に第2の圧力調整が適用されてもよいことを予測する。更に、研磨サイクルが、例えば70秒を超える、かなり長い時間であるとき、本開示は、以下の形態もまた含んでいる。この形態は、研磨サイクルの間、異なる時刻で2を超える事前除去時間の差が検出され、各々の事前除去時間の差が計算されてルックアップテーブルから圧力調整が決定された後、圧力調整がなされる。
【0033】
本開示は、以下の形態もまた含んでいる。この形態では、事前除去時間の差を決定している間に、各々の環状領域から複数の反射光干渉信号が集められてもよい。
図9は、円状の基板6上の外側の環状領域で、3つの異なるエリア1,4,5から反射光干渉データが集められる例を表している。3つのエリア各々で、位相差21(
図2)が得られ、膜厚の測定値に変換される。3つの厚みの測定値の平均値が、外側の環状領域の事前除去時間に変換される。同様に、中央の環状領域のエリア2,3からの反射光干渉データにより、2つの厚みの測定値が得られる。なお、検出器は、5つ全てのエリアからの光強度データを、1秒未満、好ましくは200ミリ秒未満の間に集めてもよい。エリア2,3の平均の厚みは、中央の環状領域の事前除去時間を計算するために用いられる。次に、中央および外側の環状領域の間の事前除去時間の差によって、リテーニングリングおよびCMPヘッドメンブレンの一方または両方への圧力調整を計算するために、表1と同様のルックアップテーブルが用いられる。
【0034】
ここで記載したCMP適応終点法の実行による、厚みの非均一性の改善予測を確認するために、
図5に示した単一の研磨サイクル完了後の、複数のウェハのSEM測定を行った。この研磨サイクルでは、中央の環状領域と外側の環状領域との間の事前除去時間の差に応じて、1回のみ圧力調整がなされる。以下のプロットにおけるx軸の値は、
図5のt1−t2の時間差を表しており、(−2,−1,0,+1,+2)秒全体にわたる。そして、t1はt2より1秒または2秒前であってもよく、t2より1秒または2秒後であってもよく、あるいはt2と同じ時刻であってもよい。AEP制御法による
図11Aの結果は、記録過程による
図10Aのデータと比較される。記録過程では、2つの環状領域間の事前除去時間の差を決定する同じ研磨サイクルの間、圧力補正がなされない。
【0035】
図10Aおよび
図11Aは、複数のC3デルタ時間に対して、中央および外側の環状領域の間のディッシング差(厚みの非均一性)をミクロン単位で示している。
図11Aのデータでは、
図10Aの結果に比べて、目的とするy軸の値である非均一性ゼロの近傍に、データがより密集しており、本開示のAEP制御法の利点が示されている。
【0036】
図10Bおよび
図11Bはそれぞれ、
図10Aおよび
図10Bの現在のデータを他の観点で示している。特に、非均一性の結果が、日付に対してプロットされている。各々のチャートで、左側が基板に加工された最も早い日付であり、右側が最近の日付である。
【0037】
上述のように、基板内で、および、基板間(ウェハ間)で金属層の抵抗の非均一性を最小化することもまた重要である。金属層では、抵抗が厚みと関連付けられるので、中央および外側の環状領域間で、厚みの非均一性(ディッシング差)をより小さい値にすることは、抵抗差の非均一性をより小さい値にすることに置き換えられる。
図13を
図12と比較することにより、抵抗の非均一性を最小化するという点におけるAEP制御法の利点が示される。なお、AEP制御法による
図13中のデータ点は、
図12中のデータ点よりも、目的とするy軸の値であるゼロ近傍により密集している。
図12中のデータ点は、発明者によって実施されたCMP記録過程を表す。
【0038】
図14は、本開示のAEP制御法によって与えられるCMP工程の利点の要約表を示している。ウェハ間(WtW:Wafer to wafer)のディッシング差は、行2の0.006μm(PORの平均値)から、行4の0.005μm(AEPの平均値)に、20%改善されている。加えて、ウェハ間の抵抗の非均一性および標準偏差が、両方低下している。特に、AEP制御法を実行して、26%の抵抗差および16%の標準偏差各々が改善されたとき、1.803+/−0.369オームのPOR抵抗差は、1.328+/−0.312オームとなる。表の下側の行に示されているように、ウェハ内(WiW:Within wafer)の抵抗差および標準偏差もまた、AEP制御法によって、改善される。
【0039】
本開示は、その好ましい形態を参照して、例示し、説明してきたが、当該技術分野の通常の知識を有する者であれば、本開示の精神および範囲を逸脱しない範囲で、構造および詳細を様々に変更し得ることは理解できる。