【文献】
Lei Zhu et al.,"Scatter Correction Method for X-Ray CT Using Primary Modulation: Theory and Preliminary Results",IEEE TRANSACTIONS ON MEDICAL IMAGING,2006年12月,VOL. 25, NO. 12,pp.1573-1587
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記測定された計数が、前記推定されたオブジェクト散乱と定数γとに基づいて調整され、前記定数γは、内部検出器散乱を、一次X線の相互作用からの計数と局所近傍におけるオブジェクト散乱からの計数との和の一定の部分γとして関係付ける、請求項4に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
X線撮影は通常の手順であって、医療における撮影では、X線のためのエネルギ範囲は典型的には10keVから200keVであり、非破壊検査またはセキュリティスクリーニングでは、そのエネルギはそれよりも高いことがあり得る。この範囲では、X線は、主にコンプトン効果と光電効果とを通じて、物体と反応する。第1の場合には、X線光子のエネルギの一部だけが、電子の上まで運ばれ、X線は、その散乱イベントの後ではエネルギが減少した状態で継続する。後者の場合には、すべてのエネルギが、電子まで運ばれ、X線は、完全に吸収される。
【0003】
X線撮影検出器にとっての挑戦は、オブジェクトが密度、組成および構造として示されるオブジェクトの画像への入力を提供するために、検出されたX線から最大限の情報を抽出することである。検出器としてフィルムスクリーンを用いることは依然として一般的であるが、ほとんどの場合、今日の検出器はデジタル画像を提供する。
【0004】
検出器は、入射X線を電子に変換する必要があり、これは、典型的には、光効果を通じてまたはコンプトン相互作用を通じて生じるのであって、結果的に生じる電子は、通常、そのエネルギが失われるまで二次的な可視光を生じさせ、この光が、今度は、感光性物質によって検出される。また、それほど一般的ではないが、アモルファスセレンまたはシリコンなどの半導体に基づく検出器も存在し、この場合には、X線によって生成される電子は、十分な強度を有する印加された電場を通じて収集される電子と正孔とのペアとして、電荷を生じさせる。
【0005】
コンピュータ断層撮影(CT)では、大きな検出器を有することが好ましく、回転方向の検出器のサイズが、視野を決定し、回転方向に対する接線方向にある大きなz−カバレッジ(走査方向の長さ)が、スパイラルモードの走査での高速な全身取得と1回の回転で全臓器に及ぶ能力との両方にとって、必須である。しかし、(人間の患者のような)大きな物体を大きな検出器を用いて撮影することの結果として、コントラストを低下させアーティファクトを生じさせることで画像の質を劣化させる散乱対一次放射比が大きくなる。散乱による悪化を生じさせる効果に対処するためには、いくつかの異なる方法が存在する。本質的には、すべては、次の2つのカテゴリの一方に含まれる:
A.オブジェクト散乱が検出器に到達することを、排除すること。
【0006】
B.空間散乱プロファイルの単純な減算または何らかのタイプの逆畳み込みのいずれかにより、散乱分布を推定し、それを補正すること。
【0007】
散乱が検出器に到達することを除去するための方法は、エアギャップと散乱除去グリッドを含むのであるが、後者の技術を用いると、一次X線も同様に吸収してしまい、したがって、システムの線量効率を低下させる、という代償を払うことになる。
【0008】
オブジェクト散乱の空間分布を推定するための方法は、次を含む:
A.小型で吸収性の高い(鉛ビーズなどの)オブジェクトがX線源とオブジェクトとの間のビーム経路に配置される、ビームストップ法(米国特許第6,618,466B1号)。検出器上の対応する位置は、これにより、一次放射に対して遮断され、検出器要素は、その地点における散乱された放射だけを測定する。散乱プロファイルは、空間的に徐々に変動する(低周波数成分)ので、ビームストップが、むしろ低密度で分布させながら、それでも、散乱プロファイルの適切な尺度を生じさせることが可能である。
【0009】
B.モンテ・カルロ、すなわち半解析的なシミュレーションモデルであって、これによると、オブジェクトの輪郭または再構築された断面のいずれかが、検出器においてオブジェクト散乱プロファイルを推定するのに用いられる。この第2の方法は、現在の逐次的再構築法において、重要なステップである。
【0010】
散乱を排除および補償する方法の主な目的は、現在まで、画像アーティファクトを除去し画像コントラストを向上させることであってきた。それぞれの光子が個別に計数され、それが検出器において蓄積するエネルギ量に応じてエネルギ・ビンに割り当てられる、スペクトル光子計数コンピュータ断層撮影の出現により、各投影における散乱量に関する正確な知識が、よりさらに重要になった。その理由は、スペクトル光子計数CTの保証のひとつが、投影領域において物質基底分解を行い、それによって、定量的CTを達成できること、であるからである。物質基底分解は、最大尤度問題を解くことによって、行われる。ビンにおける計数は、各投影において物質基底係数の1組の線積分を取得するために用いられ、計数が散乱放射から未知の数のイベントを含む場合には、この線積分推定がバイアスを含むことになり、これは、再構築された画像においてはバイアスを含む物質基底係数に変換される。ビンの計数から線積分推定を取得するための最大尤度法は、Roessl and Proksa、「K−edge imaging in x−ray computed tomography using multi−bin photon counting detectors」、Physics in Medicine and Biology、vol.52、第4679〜96頁、2007年において十分に説明されている。
【0011】
結論としては、スペクトル光子計数コンピュータ断層撮影の長所を引き出すためには、正確な散乱推定が必要である。
【0012】
米国特許第8,183,535B2号は、主にコンピュータ断層撮影において用いられることが意図された光子計数エネルギ感応検出器について、説明している。その主な特徴は、横向き形状(edge-on geometry)に取り付けられた少なくとも2つのレベルのシリコンダイオードの使用である。これは、米国特許第8,183,535B2号の
図10a、10b、10c、10dおよび11に、図解されている。第2の特徴は、各ダイオードの裏面において、薄いタングステン(または、いずれかの他の適切なX線吸収剤)ラメラを、用いることである。タングステン・ラメラは、組み込まれた散乱除去グリッドとして機能し、オブジェクト散乱と、シリコンの原子番号が小さいことに起因して検出器の物質におけるコンプトン相互作用から生成される2次イベントとの両方を、減少させる。
【0013】
このおよびそれ以外のタイプの光子計数X線検出器のために、効率的な散乱推定および/または補正を提供することによって、画質の改善を得ることは、一般的な関心対象である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
光子計数X線検出器においてオブジェクト散乱を推定するための方法、デバイスおよび対応のコンピュータプログラムを提供することが、目的である。
【0015】
また、光子計数X線検出器の内部散乱を推定するための方法、デバイスおよび対応のコンピュータプログラムを提供することが、目的である。
【0016】
別の目的は、層型の光子計数X線検出器において、測定された計数を調整するための方法およびデバイスを提供することである。
【0017】
さらに別の目的は、層型の光子計数X線検出器において、吸収された散乱放射の全体量と空間プロファイルとを推定するための方法およびデバイスを提供することである。
【0018】
さらにまた別の目的は、散乱を補正しながらオブジェクトをX線断層撮影するための方法およびデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
第1の態様によれば、横向き形状に取り付けられた少なくとも2層の検出器ダイオードまたは入射X線の方向にセグメント化されたダイオードの少なくとも2層のダイオードセグメントを有する光子計数X線検出器で、オブジェクト散乱を推定するための方法であって、
前記少なくとも2層のうちの最上位層における計数へのオブジェクト散乱の寄与を、最上位層と1つまたは複数の下位層との間における計数の1つまたは複数の差に基づき、オブジェクト散乱は徐々に変動する空間的分布を有すると仮定して、推定することを特徴とする方法が提供される。
【0020】
第2の態様によれば、横向き形状に取り付けられた少なくとも2層の検出器ダイオードまたは入射X線の方向にセグメント化されたダイオードの少なくとも2層のダイオードセグメントを有する光子計数X線検出器の内部散乱を推定するための方法であって、
検出器の内部でコンプトン散乱した光子の再吸収からの計数を、いくつかの検出器要素を一次放射から選択的に遮断することに基づいて、高減衰ビームストップを検出器要素の最上位部、1つもしくは複数の下位層、または最上位層と1つもしくは複数の下位層との両方に配置し、それらの検出器要素における計数を測定することによって、推定することを特徴とする方法が提供される。
【0021】
第3の態様によれば、横向き形状に取り付けられた少なくとも2層の検出器ダイオードまたは入射X線の方向にセグメント化されたダイオードの少なくとも2層のダイオードセグメントを有する、層型の光子計数X線検出器において、測定された計数を調整するための方法であって、
測定された計数を、第1の態様の方法に従って推定されたオブジェクト散乱に少なくとも部分的に基づいて調整することによって、一次X線の相互作用に起因する計数のバイアスを含まない推定を取得することを特徴とする方法が提供される。
【0022】
第4の態様によれば、横向き形状に取り付けられた少なくとも2層の検出器ダイオードまたは入射X線の方向にセグメント化されたダイオードの少なくとも2層のダイオードセグメントを有する、層型の光子計数X線検出器において、測定された計数を調整するための方法であって、
測定された計数を、第2の態様の方法に従って推定された内部散乱に少なくとも部分的に基づいて調整することによって、一次X線の相互作用に起因する計数のバイアスを含まない推定を取得することを特徴とする方法が提供される。
【0023】
第5の態様によれば、横向き形状に取り付けられた少なくとも2層の検出器ダイオードまたは入射X線の方向にセグメント化されたダイオードの少なくとも2層のダイオードセグメントを有する層型の光子計数X線検出器で、吸収された散乱放射の全体量と空間プロファイルとを推定するための方法であって、
第1の態様の方法に従って推定されたオブジェクト散乱に少なくとも部分的に基づいて、推定を行うことを特徴とする方法が提供される。
【0024】
第6の態様によれば、横向き形状に取り付けられた少なくとも2層の検出器ダイオードまたは入射X線の方向にセグメント化されたダイオードの少なくとも2層のダイオードセグメントを有する層型の光子計数X線検出器で、吸収された散乱放射の全体量と空間プロファイルとを推定するための方法であって、
第2の態様の方法に従って推定された内部散乱に少なくとも部分的に基づいて、推定を行うことを特徴とする方法が提供される。
【0025】
第7の態様によれば、散乱を補正しながらオブジェクトをX線断層撮影するための方法が提供され、前記方法は、
X線放射源と、X線放射源の方向を向いた2層の直接変換半導体ダイオードを備えた検出器とを提供するステップであって、個々のダイオードの間には、ダイオードの幅に対応する間隔が、最上位層と最下位層との両方において提供されており、最下位層は、最上位層のダイオードを外れた一次X線が減衰されずに下位レベルのダイオードまで通過するように、回転方向に変位している、ステップと、
放射源と検出器とを、オブジェクトの周囲で移動させ、異なる回転角度における投影X線画像を取得するステップと、
放射源からの放射を、検出器によって検出するステップと、
各回転角度に対して、検出器の最上位層におけるオブジェクト散乱の分布を、最上位層が非常に高いアスペクト比を有する散乱除去グリッドのように機能するために、検出器の下位層はオブジェクト散乱から遮蔽されていることに基づいて、推定するステップと、を含む。
【0026】
第8の態様によれば、散乱を補正しながらオブジェクトをX線断層撮影するための方法が提供され、前記方法は、
X線放射源と、X線放射源の方向を向いた2層の直接変換半導体ダイオードを備えた検出器とを提供するステップであって、個々のダイオードの間には、ダイオードの幅に対応する間隔が、最上位層と最下位層との両方において提供されており、最下位層は、最上位層のダイオードを外れた一次X線が減衰されずに下位レベルのダイオードまで通過するように、回転方向に変位している、ステップと、
すべての検出器チャネルの50%未満に及んでおり検出器の全体にわたって分布するビームストップを、最下位層において、または最上位層と最下位層との両方において提供することにより、それらの層を散乱のない一次X線に対して本質的に遮断する、ステップと、
放射源と検出器とを、オブジェクトの周囲で移動させ、異なる回転角度における投影X線画像を取得するステップと、
放射源からの放射を、検出器によって検出するステップと、
各回転角度に対して、各層のオブジェクト散乱と内部散乱との和の分布を、ビームストップをその最上部に取り付けられた検出器要素の計数にパラメトリック表面を適合させることによって、推定するステップと、
オブジェクト散乱と内部散乱との推定された和を、ビームストップの及ばない各検出器要素から減算することにより、ビームストップが及ばない各検出器要素の散乱のない信号の推定を取得するステップと、を含む。
【0027】
第9の態様によれば、横向き形状に取り付けられた少なくとも2層の検出器ダイオードまたは入射X線の方向にセグメント化されたダイオードの少なくとも2層のダイオードセグメントを有する光子計数X線検出器で、オブジェクト散乱を推定するためのデバイスが提供され、
前記デバイスは、前記少なくとも2層のうちの最上位層における計数へのオブジェクト散乱の寄与を、最上位層と1つまたは複数の下位層との間における計数の1つまたは複数の差に基づき、オブジェクト散乱は徐々に変動する空間的分布を有すると仮定して、推定するように構成されている。
【0028】
第10の態様によれば、横向き形状に取り付けられた少なくとも2層の検出器ダイオードまたは入射X線の方向にセグメント化されたダイオードの少なくとも2層のダイオードセグメントを有する、光子計数X線検出器の内部散乱を推定するためのデバイスが提供され、
前記デバイスは、検出器の内部でコンプトン散乱した光子の再吸収からの計数を、高減衰ビームストップが検出器要素の最上位部、1つもしくは複数の下位層、または最上位層と1つもしくは複数の下位層との両方に配置された検出器要素における計数を測定することに基づいて、推定するように構成されている。
【0029】
第11の態様によれば、横向き形状に取り付けられた少なくとも2層の検出器ダイオードまたは入射X線の方向にセグメント化されたダイオードの少なくとも2層のダイオードセグメントを有する層型の光子計数X線検出器で、測定された計数を調整するためのデバイスであって、第9の態様のデバイスを備えたデバイスが提供される。
【0030】
第12の態様によれば、横向き形状に取り付けられた少なくとも2層の検出器ダイオードまたは入射X線の方向にセグメント化されたダイオードの少なくとも2層のダイオードセグメントを有する、層型の光子計数X線検出器において、測定された計数を調整するためのデバイスであって、第10の態様のデバイスを備えたデバイスが提供される。
【0031】
第13の態様によれば、横向き形状に取り付けられた少なくとも2層の検出器ダイオードまたは入射X線の方向にセグメント化されたダイオードの少なくとも2層のダイオードセグメントを有する、層型の光子計数X線検出器において、吸収された散乱放射の全体量と空間プロファイルとを推定するためのデバイスであって、第9の態様のデバイスを備えたデバイスが提供される。
【0032】
第14の態様によれば、横向き形状に取り付けられた少なくとも2層の検出器ダイオードまたは入射X線の方向にセグメント化されたダイオードの少なくとも2層のダイオードセグメントを有する層型の光子計数X線検出器で、吸収された散乱放射の全体量と空間プロファイルとを推定するためのデバイスであって、第10の態様のデバイスを備えたデバイスが提供される。
【0033】
第15の態様によれば、散乱を補正しながらオブジェクトをX線断層撮影するためのデバイスが提供され、前記デバイスは、
X線放射源と、X線放射源の方向を向いた2層の直接変換半導体ダイオードを備えた検出器とを備え、
個々のダイオードの間には、ダイオードの幅に対応する間隔が、最上位層と最下位層との両方において存在し、最下位層は、最上位層のダイオードを外れた一次X線が減衰されずに下位レベルのダイオードまで通過するように、回転方向に変位しており、
放射源と検出器とは、移動コントローラによって制御されて、オブジェクトの周囲で移動され、異なる回転角度における投影X線画像を取得するように配置されており、
検出器に接続され、検出器から測定データを取得するように配置された、または、検出器の統合された一部である推定器であって、各回転角度に対して、検出器の最上位層におけるオブジェクト散乱の分布を、最上位層が非常に高いアスペクト比を有する散乱除去グリッドのように機能するために、検出器の下位層はオブジェクト散乱から遮蔽されていることを用いて、推定するように構成されている推定器を備える。
【0034】
第16の態様によれば、散乱を補正しながらオブジェクトをX線断層撮影するためのデバイスが提供され、前記デバイスは、
X線放射源と、X線放射源の方向を向いた2層の直接変換半導体ダイオードを備えた検出器とを備え、
個々のダイオードの間には、ダイオードの幅に対応する間隔が、最上位層と最下位層との両方において存在しており、最下位層は、最上位層のダイオードを外れた一次X線が減衰されずに下位レベルのダイオードまで通過するように、回転方向に変位し、
すべての検出器チャネルの50%未満に及んでおり検出器の全体にわたって分布するビームストップが、最下位層において、または最上位層と最下位層との両方において提供されることにより、それらの層を散乱のない一次X線に対して本質的に遮断し、
放射源と検出器とは、移動コントローラによって制御されて、オブジェクトの周囲で移動され、異なる回転角度における投影X線画像を取得するように配置されており、
検出器に接続され、検出器から測定データを取得するように構成された、または、検出器の統合された一部である推定器であって、各回転角度に対して、各層のオブジェクト散乱と内部散乱との和の分布を、ビームストップがその最上部に取り付けられた検出器要素の計数にパラメトリック表面を適合させることによって、推定するように構成されており、オブジェクト散乱と内部散乱との推定された和が、ビームストップの及ばない各検出器要素から減算されることにより、ビームストップが及ばない各検出器要素の散乱のない信号の推定を取得する、推定器を備える。
【0035】
第17の態様によれば、プロセッサによる実行によって、横向き形状に取り付けられた少なくとも2層の検出器ダイオードまたは入射X線の方向にセグメント化されたダイオードの少なくとも2層のダイオードセグメントを有する光子計数X線検出器で、オブジェクト散乱を推定するためのコンピュータプログラムが提供され、
前記コンピュータプログラムは、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、少なくとも2層のうちの最上位層における計数へのオブジェクト散乱の寄与を、最上位層と1つまたは複数の下位層との間における計数の1つまたは複数の差に基づき、オブジェクト散乱は徐々に変動する空間的分布を有すると仮定して、推定させる命令を備える。
【0036】
第18の態様によれば、プロセッサによる実行によって、横向き形状に取り付けられた少なくとも2層の検出器ダイオードまたは入射X線の方向にセグメント化されたダイオードの少なくとも2層のダイオードセグメントを有する光子計数X線検出器の内部散乱を推定するためのコンピュータプログラムが提供され
前記コンピュータプログラムは、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、検出器の内部でコンプトン散乱した光子の再吸収からの計数を、高減衰ビームストップが検出器要素の最上位部、1つもしくは複数の下位層、または最上位層と1つもしくは複数の下位層との両方に配置された検出器要素における計数を測定することに基づいて、推定させる命令を備える。
【0037】
第19の態様によれば、そのようなコンピュータプログラムが記憶されているコンピュータ読取可能媒体を備えたコンピュータプログラム製品が、提供される。
【0038】
X線検出器における散乱状況に関するよい理解と知識は、画質の改善、アーティファクトの削減および/または基底物質の分解の改善を可能にするために、非常に重要である。
【0039】
ここで提示された技術の他の態様および利点は、以下の説明を読むことで、理解されるであろう。
【0040】
ここで提示されている技術は、そのさらなる目的および利点と共に、添付の図面を考慮しながら以下の説明を参照することによって、最もよく理解され得る。
【発明を実施するための形態】
【0042】
第1の態様によれば、横向き形状に取り付けられた少なくとも2層の検出器ダイオードまたは入射X線の方向にセグメント化されたダイオードの少なくとも2層のダイオードセグメントを有する、光子計数X線検出器において、オブジェクト散乱を推定するための方法であって、
前記少なくとも2層のうちの最上位層における計数へのオブジェクト散乱の寄与を、最上位層と1つまたは複数の下位層との間における計数の差に基づき、オブジェクト散乱は徐々に変動する空間的分布を有すると仮定して、推定することを特徴とする方法が提供される。
【0043】
第2の態様によれば、横向き形状に取り付けられた少なくとも2層の検出器ダイオードまたは入射X線の方向にセグメント化されたダイオードの少なくとも2層のダイオードセグメントを有する、光子計数X線検出器の内部散乱を推定するための方法であって、
検出器の内部でコンプトン散乱した光子の再吸収からの計数を、いくつかの検出器要素を一次放射から選択的に遮断することに基づいて、高減衰ビームストップを、検出器要素の最上位部、1つもしくは複数の下位層、または最上位層と1つもしくは複数の下位層との両方に配置し、それらの検出器要素における計数を測定することによって、推定することを特徴とする方法が提供される。
【0044】
例としては、この推定は、コンピュータ断層撮影システムのガントリーが回転する間に、いくつかの投影のそれぞれに対して、行われることがあり得る。
【0045】
ある特定の例では、X線検出器は、直接変換物質を用いた直接変換X線検出器である。
【0046】
例えば、直接変換物質は、シリコンである。
【0047】
別の特定の例では、最上位層が、1つまたは複数の下位層に対する散乱除去グリッドとして作用する。
【0048】
第3の態様によれば、横向き形状に取り付けられた少なくとも2層の検出器ダイオードまたは入射X線の方向にセグメント化されたダイオードの少なくとも2層のダイオードセグメントを有する、層型の光子計数X線検出器において、測定された計数を調整するための方法であって、
測定された計数を、第1の態様の方法に従って推定されたオブジェクト散乱に少なくとも部分的に基づいて調整することによって、一次X線の相互作用に起因する計数のバイアスを含まない推定を取得することを特徴とする方法が提供される。
【0049】
例としては、測定された計数が、推定されたオブジェクト散乱と定数γとに基づいて調整されるが、この定数γは、内部検出器散乱を、一次X線の相互作用からの計数と局所近傍におけるオブジェクト散乱からの計数との和の一定の部分γとして、関係付ける。
【0050】
第4の態様によれば、横向き形状に取り付けられた少なくとも2層の検出器ダイオードまたは入射X線の方向にセグメント化されたダイオードの少なくとも2層のダイオードセグメントを有する、層型の光子計数X線検出器において、測定された計数を調整するための方法であって、
測定された計数を、第2の態様の方法に従って推定された内部散乱に少なくとも部分的に基づいて調整することによって、一次X線の相互作用に起因する計数のバイアスを含まない推定を取得することを特徴とする方法が提供される。
【0051】
第5の態様によれば、横向き形状に取り付けられた少なくとも2層の検出器ダイオードまたは入射X線の方向にセグメント化されたダイオードの少なくとも2層のダイオードセグメントを有する、層型の光子計数X線検出器において、吸収された散乱放射の全体量と空間プロファイルとを推定するための方法であって、
第1の態様の方法に従って推定されたオブジェクト散乱に少なくとも部分的に基づいて、推定を行うことを特徴とする方法が提供される。
【0052】
第6の態様によれば、横向き形状に取り付けられた少なくとも2層の検出器ダイオードまたは入射X線の方向にセグメント化されたダイオードの少なくとも2層のダイオードセグメントを有する、層型の光子計数X線検出器において、吸収された散乱放射の全体量と空間プロファイルとを推定するための方法であって、
第2の態様の方法に従って推定された内部散乱に少なくとも部分的に基づいて、推定を行うことを特徴とする方法が提供される。
【0053】
現在提示されている技術の例証のための例では、米国特許第8,183,535B2号に記載されたものと同種の横向き形状で取り付けられた少なくとも2つのレベルの(シリコン)ダイオードを備えたシステムに対し、ガントリーの回転の間の数回の投影(画像の取得)のそれぞれにおいて検出器において吸収される散乱放射の全体量と空間プロファイルとを推定することによって、改善された画質を提供することが望ましい。特に、コンピュータシミュレーションに基づく推定に頼ることなく、検出器における散乱の寄与を測定できることが望ましい。さらに、オブジェクト散乱と内部検出器散乱とを別々に測定できることも望ましい。
【0054】
米国特許第8,183,535B2号に記載されたものと同種の横向き形状で取り付けられた少なくとも2つのレベルのシリコンダイオードを備えたシステムにおいて、2層またはそれより多くの層に、シリコン検出器ダイオードを配置することは、完全なX線カバレージを取得してすべての盲点を残存させることを回避するのに有用である。その理由は、ダイオードウェハ(約0.5mmの厚さを有する)に取り付けられるASICおよびその他のコンポーネントが、1ミリメートルの10分の1の数倍程度の突起部を生じさせ、したがって、一つの層に積層することを幾何学的に不可能にするからである。さらに、空気が複数の層を通過して移動され得るので、積層は、検出器ダイオードの効率的な冷却方式を可能にする。
【0055】
放射源の方向を向いた2層の検出器ダイオードを備えた構成(
図1)は、また、別の利点をもたらすのであって、すなわち、最上位層は、本質的に、下位レベルに対し、非常に高いグリッド比を有する散乱除去グリッドとして、作用する。実際には、2層の場合には、下位層は、ほとんど完全に、オブジェクト散乱を含まない、ということがコンピュータに基づくモンテカルロ・シミュレーションに示されている。最上位層のダイオードのアライメントが僅かにとれていない場合には、それらのダイオードは、下位レベルのダイオードに影を付すことになり、その結果として、最上位層と比較されると、一次係数が減少することになる。この効果は、また、下位レベルに付影する第1の層の、例えばタングステン・プレートなどの散乱除去プレートによっても、もたらされることが可能である。
【0056】
ダイオードが、入射X線301の方向に、電子的にセグメント化されている場合には、このダイオードの下位部分は、上位部分によるオブジェクト散乱から遮蔽される。したがって、最下位セグメントは、上位部分よりも少ないオブジェクト散乱を測定することになり、この差は、多層の場合と同じように用いられることが可能である。
【0057】
提案されている技術は、このように、一般的には、横向き形状に取り付けられた少なくとも2層の検出器ダイオードまたは入射X線の方向にセグメント化されたダイオードの少なくとも2層のセグメントを有する光子計数X線検出器に関する。後者の場合は、少なくとも2層のセグメントを備えたセグメント化されたダイオードに基づく検出器を指す。
【0058】
最上位層は、X線源に最も近い層であり、1つまたは複数の下位層は、X線源からより離れた1つまたは複数の層である。
【0059】
あるいは、このX線検出器は、レベルが検出器ダイオードの層またはダイオードセグメントのレベルに対応し得るマルチレベルの検出器として見なされることもあり得る。
【0060】
オブジェクト散乱のプロファイルが徐々に変動すること、すなわち、その空間周波数成分が、より低い値に向かって集中されていることは、十分に確立されている(Zhu, Bennett and Fahrig、「Scatter correction method for x−ray CT using primary modulation: theory and preliminary results」、IEEE Transactions of Medical Imaging、vol.25、第1573〜1587頁、2006年)。
【0061】
現在提示されている技術のある態様によれば、検出器の最上位層におけるオブジェクト散乱の寄与を、その低空間周波数特性と、第1の層と1つもしくは複数の下位層とにおける計数の1つまたは複数の差とを利用することによって、推定するための方法が提供される。
【0062】
別の態様によれば、検出器内部のコンプトン相互作用からの内部散乱プロファイルを推定するための方法が提供される。これは、高減衰ビームストップをその上に、すなわち、オブジェクトの後に、配置することで、いくつかの検出器要素を一次放射から選択的に遮断することによって、達成される。これは、オブジェクトから生じる散乱を推定する目的で放射源とオブジェクトとの間にビームストップが配置されている、米国特許第6,618,466B2号などの文献において提案された、他のビームストップ法とは異なっている。
【0063】
さらに別の態様によれば、オブジェクト散乱の空間プロファイル推定方法とビンにおける計数の対応する調整とを実装するための、コンピュータプログラムおよび対応のコンピュータプログラム製品が提供される。典型的な調整は、散乱プロファイル計数を減算すること、または、各投影の散乱推定を、物質基底分解問題に含めること、である。例えば、Bornefalk, Persson and Danielsson、「Allowable forward model misspecification for accurate basis decomposition in a silicon detector based spectral CT」、IEEE Transactions of Medical Imaging vol.34, 第788〜795頁、2015年の方程式2を参照のこと。選択された調整方法とは関係なく、目的は、各投影における一次X線相互作用の数の最良の可能な推定を得ることであり、その理由は、これが、最終的な再構築された画像におけるバイアスおよびアーティファクトを回避するからである。
【0064】
例としては、本発明は、以下の効果の少なくとも1つを提供する:
A.再構築されたCT画像におけるアーティファクトの削減。
【0065】
B.定量的CTを可能にする物質基底分解法へのバイアスを含まない解決策。
【0066】
米国特許第8,183,535B2号「Silicon detector assembly for X−ray imaging」は、主にコンピュータ断層撮影における使用が意図された光子計数エネルギ感応検出器について、説明している。シリコンダイオードが、横向き形状で取り付けられている。
【0067】
これは、
図1に図解されており、そこでは、101がX線源であり、104がX線の方向である。
【0068】
図3では、横向き形状により、X線が、どのようにして、例えばシリコンの数センチメートルという比較的大きな距離を横断し、結果的に高い検出効率が生じるのかが見られる。
図3では、302は、一次X線の方向であり、301は、生成された電荷雲が、相互作用の経路に沿って分布するいくつかの電極(検出器要素)によってどのように収集されるかを示す。
【0069】
一つのダイオード(センサ)が、本質的に、それ自体で層型の検出器として作用する。逆バイアス電圧をダイオードに印加することによって、301で示された電荷収集電極が、電荷を生成するX線相互作用が、実際のX線変換に最も近接した電極301に接続されたチャネルにおいて、単に、パルスを生成させるように、ダイオードの両端の電場を形成する。
【0070】
X線コンピュータ断層撮影では、散乱された放射は、結果的に画像アーティファクトを生じさせる問題である。それは、また、物質基底分解の方法をより困難にするのであるが、その理由は、各投影(1つの検出器要素における各測定)に対する散乱対一次比が、数パーセントの単位の範囲内で知られていなければならないからである。Bornefalk, Persson and Danielsson、「Allowable forward model misspecification for accurate basis decomposition in a silicon detector based spectral CT」、IEEE Transactions of Medical Imaging vol.34, 第788〜795頁、2015年を参照のこと。検出器にエネルギを蓄積させる散乱された放射に起因する計数の数が十分な程度には知られていない場合には、結果は、基礎となる関数の係数の線積分に関してバイアスを含む推定を生じることになり、これが、今度は、定量的なCTを不可能にするのである。定量的なCTは、再構築された画像からのヨウ素コントラスト剤濃度の正確な測定を可能にし、また、放射線技師が、腫瘍の密度や嚢腫の組成など、画像においてその他の定量的な測定を行うことを可能にする。さらに、物質基底分解は、ビーム・ハードニングを生じさせるアーティファクトを排除するために、必須である。
【0071】
散乱計数は、典型的には、2つのソースを有するのであって、すなわち、撮影されているオブジェクトからのオブジェクト散乱と、検出器の内部で散乱したイベントである。シリコンのように原子番号が小さな直接変換物質の場合には、診断撮影範囲における断面積が大きな光電効果を有する変換物質の場合よりも、後者のソースの方がより大きな問題である。シミュレーションが示すとことによると、内部散乱に起因する散乱対一次比は、すなわち、コンプトン散乱した光子の再吸収は、米国特許第8,183,535B2号に記載されたシステムの場合には約8%である。Bornefalk and Danielsson、「Photon−counting spectral computed tomography using silicon strip detectors: a feasibility study」、Physics in Medicine and Biology、 vol. 55、第1999〜2022頁、2010年を参照のこと。
【0072】
撮影されているオブジェクトが大きな場合には、検出器の最上位層の上に落ちるイベントの散乱対一次比は、数百パーセントになる可能性がある。この理由により、タンスグテン・ラメラなど、(例えば、30〜150マイクロメートルの範囲にある他の厚さでも機能し得るが)厚さが約50マイクロメートルの散乱除去要素が、各ダイオードの裏面に取り付けられ得る。この結果として、対応する線量効率の損失と共に最大30%に至る一次X線を排除する伝統的な散乱除去グリッドのように幾何学的検出効率に弊害をもたらすことなく、完全ではないが効率的な散乱排除が、最上位層において生じる。ダイオードの下位レベルは、2つの方法で、オブジェクト散乱から遮蔽されるのであり、すなわち、第1は、下位レベルのダイオードのタングステン・ラメラなど、散乱除去要素であり、第2は、タングステン・ラメラなどの散乱除去要素と、最上位層におけるダイオード自体である。それらが共に、非常に高いアスペクト比を有する散乱除去グリッドとして機能する。これは、
図2において、見られる。コンピュータシミュレーションが示すところによると、最上位層が下位レベルに対して構築する事実上の散乱除去グリッドは、オブジェクト散乱を排除するのに非常に効率的であり、下位レベルのダイオードにおける登録された計数は、オブジェクトにおける散乱イベントから生じるカウントをほとんど含まない。最上位層と最下位層とにおける計数の差は、オブジェクト散乱は徐々に変動する空間分布を有することと共に、最上位層における計数へのオブジェクト散乱の寄与を推定するのに用いられることが、可能である。
【0073】
さらに、検出器の内部でコンプトン散乱した光子の吸収からの計数が存在する。下位層では、これは、散乱の寄与だけによる近接した近似になる。小さなビームストップ(203、303)を用いて検出器要素の小さな部分を選択的に遮断することによって、下位層だけにおいて、または、両方において、のいずれかで、それらの検出器要素における計数が散乱だけの結果になる、すなわち、一次的な偏向のないX線からの相互作用は、計数にまったく寄与しないことになる。
【0074】
以下では、方法の2つの非限定的な例示的な実施形態が説明され、上述した洞察が、オブジェクト散乱および/または内部散乱に加えて、どのようにして、検出器において吸収された散乱の全体量の空間プロファイルを推定するのに用いられることが可能であるか、を示す。また、ビームストップを用いる場合と用いない場合との両方について、どのようにして、一次計数が推定されることが可能であるか、も示される。
【0075】
CT画像を取得する間のあるデータ測定値について考察する、すなわち、ガントリーのある一定の回転角度におけるすべての検出器要素の完全な読み出しを考察する。ダイオードには、1から検出器の各層におけるダイオードの個数N
jまでの範囲を動くインデックスjが付される。0.5mmというダイオードの厚さは、1mmの各層におけるダイオードの中心間の距離を示す。回転方向において800mmの幅の検出器の場合には、これは、N
jの値が800に等しいことを示す。
【0076】
kは、各ダイオードにおける検出器要素のインデックスとする。
図3の例では、すべてのセグメント301が、それらすべては共に、放射源(302)からの同じ光線を見るように、1つの検出器要素を構築する。kは、1からN
kまでの範囲を動き、ここで、N
kは、50のオーダーである。
【0077】
最後に、全体の計数は、cによって示されるものとするが、pは一次放射からの計数であり、osはオブジェクト散乱からの計数であり、isは内部検出器散乱からの計数である。
【0078】
ビームストップを用いない場合の散乱および一次放射の推定
ビームストップによって被覆されない最上位層における検出器ダイオードjの検出器要素kにおける計数は、
【数1】
と記載されることが可能であり、下位層における計数は、これに対応して、
【数2】
と記載されることが可能である。
【0081】
スケーリングの後で、方程式(2)が、方程式(1)から減算されると、
【数4】
を得る。
【0082】
スケール・ファクタα
jkは、典型的には1≦α
jk<1.5であるが、最上位層による付影の可能性に起因して、下位層のダイオードの計数が一次光子の分だけ少なくなる程度を獲得する。各位置(それぞれのインデックス組合せ)に対するα
jkの厳密な値は、検出器が組み立てられるときに較正手順において決定され、X線管の加速電圧に依存することになる。
【0083】
インデックスjとはダイオードの個数を指し、kは、各ダイオードにおける検出器要素を指すことに注意すべきである。したがって、最上位層および最下位層のインデックスjは、厳密に同じ空間位置には対応せず、1つのダイオードウェハの厚さ(0.5mm)のオフセットが存在する。
【0085】
差信号d(j,k)と、例えば、Ω上のサポートを有するガウスフィルタである適切なローパスフィルタh(j,k)との畳み込みを作成すると、その結果は、方程式(3a)および(3b)ならびに方程式(5)を用いて、
【数6】
【数7】
によって推定することができる。
【0086】
第2の可能性は、方程式(4)の差信号d(j,k)を、検出器平面全体に渡るパラメトリック表面に適合(フィッティング)させることであろう。次元Nの多項式パラメトリック表面という特定の場合には、検出器のすべての位置j、kに対するオブジェクト散乱は、
【数8】
によって、推定され得るが、ここで、パラメータの組は、計数のポアソン性を考慮する最尤推定か、または、
【数9】
という最小自乗法のいずれかによって決定されることが可能である。
【0087】
いったん最上位層のオブジェクト散乱が推定されると、最上位層および最下位層における一次信号は、
【数10】
【数11】
として決定されることが可能である。
【0088】
方程式(10)および(11)は、内部散乱もまた徐々に変動することを利用していない。これを含む別の方法は、除算を用いる代わりに、計数にローパスフィルタリング処理を行い、その次に、ローパスフィルタリング処理の後の値の適切な部分を減算することである。
【数12】
となるであろう。
【0089】
最上位層については、対応する推定は、(バーがローパスフィルタリング処理を示すものとして)
【数13】
となるであろう。
【0090】
以上の導出は、光子計数モードで行われたのであって、すなわち、すべてのイベントが同じビンにおいて収集される場合である。それは、エネルギ・ビンを別々に扱う方法の明白な拡張である。
【0091】
両方の層にビームストップがある場合の散乱および一次放射の推定
ビームストップが取り付けられた(203、303)場合のインデックスjおよびkの選択された組合せに対して(インデックスは、プライムを付して示されているのであり、すなわち、集合{j’,k’}は{j,k}の部分集合である)、一次イベントが不存在であることに起因して、関係は、
【数14】
となり、そして、オブジェクト散乱イベントが存在しない下位層においては、これと対応して、
【数15】
となる。
【0092】
(線量効率を劣化させる)一次放射の損失を最小化するために、インデックスj’、k’は、低密度に分布される。この理由により、畳み込み法は、適切ではない。その代わりとして、下記の例では多項式であるが、パラメトリック表面が、測定値に適合される。最上位層の場合、これは、推定されるのが、オブジェクト散乱と内部散乱との和であることを意味するのであって、すなわち、
【数16】
であり、ここで、パラメータは、最尤推定によって、または、
【数17】
として表される、遮断された検出器要素にわたって解かれた最小自乗法によって、決定される。
【0093】
これから、最上位層における一次計数が、方程式(1)および方程式(16)を用いて、
【数18】
として推定される。
【0094】
下位レベルについては、同じ方法が、
【数19】
【数20】
【数21】
を用いて、適用される。
【0095】
下位層だけにビームストップがある場合の散乱と一次放射との推定も、類似の方法で行うことが可能である。
【0096】
結論としては、光子計数のための層型検出器において測定された計数を調整して、一次計数のバイアスを含まない推定を取得するための方法を提示した。この方法は、ビームストップがある場合とない場合とに実装されることが可能であり、ビームストップの位置が、文献において先に提示されている位置と異なっているのであって、すなわち、オブジェクトとX線源との間ではなく、オブジェクトの後であり、検出器の真上である。この理由は、X線撮影におけるビームストップの従来の使用は、内部検出器散乱ではなく、検出器におけるオブジェクト散乱のプロファイルを推定するという目的を有していたからである。
【0097】
ある好適な実施形態では、ダイオードの幾何学的構成の結果として、下位レベルのダイオードに対して、効率的な散乱除去グリッドが生じることになり、これによって、内在的な検出器散乱に関するいくつかの妥当な仮定とオブジェクト散乱の空間周波数分布とを与える全体的な散乱プロファイルの推定が可能になる。
【0098】
上述の方法は、2よりも多くの層が適用される検出器ジオメトリに適用されることが可能であるが、その理由は、任意の与えられた層より上にあるすべての層が、その層に対する散乱除去グリッドとして作用することになるからである。
【0099】
上述の方法は、また、ただ1層の半導体ダイオードを有する検出器ジオメトリにも適用されることも、それらのダイオードが入射光子301の方向にセグメント化されている場合には、可能である。そのような構成では、ダイオードの下部は、上部によって、オブジェクト散乱から遮蔽される。したがって、最下位のセグメントは、それよりも上位にある部分よりも少ないオブジェクト散乱を測定することになり、この差が、多層の場合と同じように用いられることが可能である。
【0100】
別の好適な実施形態では、検出器モジュールの内部でビームストップを分布させて用いることにより、散乱された放射の分布全体の直接的推定が可能になり、オブジェクト散乱と内在的な散乱との和の低い空間周波数を利用することになる。
【0101】
以上の導出と例証とは、エネルギ分解能力を有していない光子計数検出器について行われたのであるが、イベント(ダイオードにおける光子変換)が、どのくらい多くのエネルギが蓄積されているかに応じて差カウンタをインクリメントさせるマルチビン・システムにも等しく適用される。
【0102】
ある特定の実施形態では、
図4に図解されているように、散乱を補正しながらオブジェクトをX線断層撮影するための方法が、X線放射源と、X線放射源の方向を向いた2層の直接変換半導体ダイオードで構成された検出器とを提供するステップを含む。個々のダイオードの間には、ダイオードの幅に対応する間隔が、最上位層と最下位層との両方において提供されており、最下位層は、最上位層のダイオードを外れた一次X線が減衰されずに下位レベルのダイオードまで通過するように、回転方向に変位している。放射源と検出器とは、オブジェクトの周囲で移動させ、異なる回転角度における投影X線画像を取得する。放射源からの放射は、検出器によって検出される。各回転角度に対して、検出器の最上位層におけるオブジェクト散乱の分布が、最上位層が非常に高いアスペクト比を有する散乱除去グリッドのように機能するために、検出器の下位層はオブジェクト散乱から遮蔽されていることを用いて、推定される。
【0103】
この推定は、以下のステップを含む。最上位列における各検出器要素に対して、1つのダイオードの幅だけ回転方向に変位させた最下位列からの対応する測定値が、例えば付影から生じる平均検出効率におけるいかなる差も調整するような重み付けの後に、減算される。この差の低空間周波数表現は、パラメトリック表面のローパスフィルタリングまたはフィッティングによって、決定される。この低周波数表現は、最上位層の全体にわたるオブジェクト散乱分散の推定である。内部検出器散乱が一次放射からの計数と局所近傍におけるオブジェクト散乱からの計数との和の一定の部分γであるという近似が、その要素における前記推定されたオブジェクト散乱を減算し、差を(1+γ)によって除算して、内部検出器散乱を補償することによって、または、測定された計数と前記推定されたオブジェクト散乱自体との差からのローパスフィルタリングの後で、測定された計数と前記推定されたオブジェクト散乱との差の一部分1/(1+γ)を減算することによって、各最上位層検出器要素における散乱のない信号を推定するために、用いられる。各最下位層検出器要素における前記散乱のない信号は、測定された信号を(1+γ)で除算することによって、または、その検出器要素において測定されローパスされた信号の一部分1/(1+γ)を、その検出器要素自体における測定された信号から除算することによって、推定される。
【0104】
好適な実施形態では、半導体ダイオードは、シリコンで作られている。
【0105】
好適な実施形態では、半導体ダイオード層の数は、2を超える。換言すると、半導体ダイオード層の数は、2よりも大きい。
【0106】
好適な実施形態では、これらの層が、ダイオードにおける入射X線の方向にセグメントを構築する。
【0107】
別の特定の実施形態では、
図5に図解されているように、散乱を補正しながらオブジェクトをX線断層撮影するための方法は、X線放射源と、X線放射源の方向を向いた2層の直接変換半導体ダイオードで構成された検出器とを提供するステップを含む。個々のダイオードの間には、ダイオードの幅に対応する間隔が、最上位層と最下位層との両方において提供されており、最下位層は、最上位層のダイオードを外れた一次X線が減衰されずに下位レベルのダイオードまで通過するように、回転方向に変位している。すべての検出器チャネルの50%未満に及んでおり検出器の全体にわたって分布するビームストップが、最上位層と最下位層との両方において、提供されることにより、それらの層を散乱のない一次X線に対して本質的に遮断する。放射源と検出器とが、オブジェクトの周囲で移動され、異なる回転角度における投影X線画像を取得する。放射源からの放射が、検出器によって検出される。各回転角度に対して、各層のオブジェクト散乱と内部散乱との和の分布が、パラメトリック表面を、ビームストップをその最上部に有する検出器要素の計数に適合させることによって、推定される。オブジェクト散乱と内部散乱との推定された和を、ビームストップの及ばない各検出器要素から減算することにより、ビームストップが及ばない各検出器要素の散乱のない信号の推定を取得する。
【0108】
好適な実施形態では、半導体ダイオードは、シリコンで作られている。
【0109】
好適な実施形態では、半導体ダイオードの数は、2を超える。換言すると、半導体ダイオードの数は、2よりも大きい。
【0110】
以上で説明された能力により散乱を補正しながらオブジェクトをX線断層撮影するデバイスの実施形態は、米国特許第8,183,535B2号に記載されているのと同種の横向き形状に取り付けられた少なくとも2つのレベルのシリコンダイオードを備えたシステムに、基づくことがあり得る。
【0111】
米国出願米国特許第8,183,535号に記載されたX線検出器は、特に、全体として1つの検出器領域を形成するように共に構成された複数の半導体検出器モジュールに基づくX線撮影のためのシリコン検出器と関係しているが、ここで、各半導体検出器モジュールは、入射X線にエッジオンの方向に向けられており光電効果とコンプトン散乱とを通じてX線センサにおいて相互作用するX線の登録のための集積回路に接続された、結晶シリコンのX線センサを備えており、40keVから250keVまでの間の入射X線エネルギが、オブジェクトの撮影を可能にするように、これらの相互作用から空間およびエネルギに関する情報を提供する。さらに、散乱除去モジュールが、コンプトン散乱されたX線を少なくとも部分的に吸収するために、半導体検出器モジュールの少なくとも部分集合の間に、折り込まれている。
【0112】
言及されたように、複数の半導体検出器モジュールは、それぞれがX線センサを含んでいるが、半導体検出器モジュールの少なくともいくつかの間に統合されている散乱除去グリッドを除いて、ほとんど完全な幾何学的効率性を有するほとんど任意のサイズの完全な検出器を形成するように共に傾斜されている。X線センサは、センサにおいてコンプトン散乱するX線と光効果を通じて反応するX線との両方からの情報を用いる集積回路に付属されている。この情報は、一定の撮影タスクのために最適なコントラストを有する最終画像を再構築するために、用いられる。好ましくは、各X線のためのエネルギは、半導体センサにおいて蓄積されたエネルギとX線のための相互作用の深度とに関する合成された情報を用いて、導かれることが可能である。比較的重い材料で作られるのが通常である反乱除去グリッドは、オブジェクトからのコンプトン散乱したX線を取り除くだけでなく、半導体センサにおけるコンプトン散乱したX線が他のセンサに到達することを防止する。これらのコンプトン散乱されたX線は、そうされない場合には、主に、ノイズを増加させることになる。
【0113】
好ましくは、各散乱除去モジュールは、半導体検出器モジュールにおけるコンプトン散乱したX線のほとんどが隣接の検出器モジュールに到達することを防止するための比較的重い材料のフォイルを含む。
【0114】
図8は、例示的な実施形態によってマルチチップモジュールとして実装された半導体検出器モジュールの一例を図解している概略図である。この例は、半導体センサがどのようにしてマルチチップモジュール(MCM)における基板(A)の機能を有することもできるのか、を示す。信号は、ピクセル(C)から、アクティブなセンサ領域に隣接して位置決めされている並列処理用の集積回路(例えば、ASIC)(D)の入力へ、経路指定される(B)。特定用途向け集積回路(ASIC)という用語は、特定の用途のために用いられ構成されている任意の一般的な集積回路として広く解釈されるべきである、ということが理解されるべきである。ASICは、各X線から生成される電荷を処理し、それを、エネルギを推定するために用いられることが可能なデジタル・データに変換する。ASICは、デジタル・データ処理回路と接続するように構成されていることにより、デジタル・データが、MCMの外部に配置された別のデジタル・データ処理(E)およびメモリに送られることが可能であり、最終的に、そのデータが再構築された画像への入力となる。
【0115】
例としては、ASICでは、各X線からの信号が測定され、各X線による蓄積エネルギが推定される。各X線の測定されたエネルギは、画像における所望の要素のコントラストを向上させるために用いられる。これを達成するため、エネルギ情報が、光効果を通じて反応するX線からの半導体センサにおいてコンプトン散乱するX線から、電子ノイズを分離するのに用いられる。この情報は、好ましくは、オブジェクトでの所望の要素および構造に対するコントラストを最大化するために共に重み付けがなされる。X線のための相互作用の深度の測定からのいくらかのエネルギ情報も存在することになるが、この測定は、どの深度セグメントがX線変換されたのかを追跡することができるから、行われる。これは、検出器におけるコンプトン散乱したX線にとって、特に重要であるが、その理由は、これらのX線については、元のエネルギの一部だけが半導体センサに蓄積されたために、エネルギが、より不確実となるからである。
【0116】
図9は、いくつかの半導体検出器モジュールがX線検出器の全体を構築するために相互に隣接して位置決めされることがどのようにして可能であるか、の一例を図解している概略図である。この特定の例では、いくつかのマルチチップモジュール(MCM)(A)が、X線検出器全体を構築するために、相互に隣接して位置決めされている。MCMは、半導体センサ(C)またはオブジェクト(D)においてコンプトン散乱されたX線を吸収するために、例えば(タングステンなどの)重い元素のシートなどである散乱除去フォイル(B)によって、折り込まれており、そうでない場合には、これらのX線は、画像におけるノイズに寄与することになる。換言すると、散乱除去フォイルは、個々のセンサの間に配置され、X線コリメータとして機能する。より高い位置に配置されたセグメントと比較されると最下位セグメントに対する受光角度がより小さいことに起因して、検出されたオブジェクト散乱は、最下位セグメントに対しては、より少なくなる。層の間の散乱計数の差は、各セグメントの散乱を推定するのに用いられ得る。
【0117】
図10は、2層での半導体検出器モジュールの構成の一例を図解する、拡大図である。
【0118】
本明細書で説明された本発明の方法は、対応するデバイスとして、実装されることもあり得る。
【0119】
第9の態様によれば、横向き形状に取り付けられた少なくとも2層の検出器ダイオードまたは入射X線の方向にセグメント化されたダイオードの少なくとも2層のダイオードセグメントを有する、光子計数X線検出器において、オブジェクト散乱を推定するためのデバイスが提供され、
前記デバイスは、前記少なくとも2層のうちの最上位層における計数へのオブジェクト散乱の寄与を、最上位層と1つまたは複数の下位層との間における計数の1つまたは複数の差に基づき、オブジェクト散乱は徐々に変動する空間的分布を有すると仮定して、推定するように構成されている。
【0120】
第10の態様によれば、横向き形状に取り付けられた少なくとも2層の検出器ダイオードまたは入射X線の方向にセグメント化されたダイオードの少なくとも2層のダイオードセグメントを有する、光子計数X線検出器の内部散乱を推定するためのデバイスが提供され、
前記デバイスは、検出器の内部でコンプトン散乱した光子の再吸収からの計数を、高減衰ビームストップが検出器要素の最上位部、1つもしくは複数の下位層、または最上位層と1つもしくは複数の下位層との両方に配置された検出器要素における計数を測定することに基づいて、推定するように構成されている。
【0121】
第11の態様によれば、横向き形状に取り付けられた少なくとも2層の検出器ダイオードまたは入射X線の方向にセグメント化されたダイオードの少なくとも2層のダイオードセグメントを有する、層型の光子計数X線検出器において、測定された計数を調整するためのデバイスであって、第9の態様のデバイスを備えたデバイスが提供される。
【0122】
第12の態様によれば、横向き形状に取り付けられた少なくとも2層の検出器ダイオードまたは入射X線の方向にセグメント化されたダイオードの少なくとも2層のダイオードセグメントを有する、層型の光子計数X線検出器において、測定された計数を調整するためのデバイスであって、第10の態様のデバイスを備えたデバイスが提供される。
【0123】
第13の態様によれば、横向き形状に取り付けられた少なくとも2層の検出器ダイオードまたは入射X線の方向にセグメント化されたダイオードの少なくとも2層のダイオードセグメントを有する、層型の光子計数X線検出器において、吸収された散乱放射の全体量と空間プロファイルとを推定するためのデバイスであって、第9の態様のデバイスを備えたデバイスが提供される。
【0124】
第14の態様によれば、横向き形状に取り付けられた少なくとも2層の検出器ダイオードまたは入射X線の方向にセグメント化されたダイオードの少なくとも2層のダイオードセグメントを有する、層型の光子計数X線検出器において、吸収された散乱放射の全体量と空間プロファイルとを推定するためのデバイスであって、第10の態様のデバイスを備えたデバイスが提供される。
【0125】
図6に図解されているある特定の実施形態では、散乱を補正しながらオブジェクトをX線断層撮影するためのデバイスが、X線放射104の放射源101と、X線放射源の方向を向いた2層102、103の直接変換半導体ダイオードで構成された検出器とを備える。個々のダイオードの間には、ダイオードの幅に対応する間隔が、最上位層と最下位層との両方において存在し、最上位層のダイオードを外れた一次X線が減衰されずに下位レベルのダイオードまで通過するような、最下位層の回転方向の変位が存在する。放射源101と検出器102、103とは、移動コントローラ107によって制御されて、オブジェクトの周囲で移動され、異なる回転角度における投影X線画像を取得するように配置されている。この配置は、検出器に接続され、検出器から測定データを取得するように構成された推定器106を備える。この推定器は、検出器の統合された一部である場合もあり得る。推定器106は、各回転角度に対して、検出器の最上位層におけるオブジェクト散乱の分布を、最上位層が非常に高いアスペクト比を有する散乱除去グリッドのように機能するために、検出器の下位層はオブジェクト散乱から遮蔽されていることを用いて、推定するように構成されている。
【0126】
推定器106は、以下のステップに従って、推定を行うように構成される。最上位列における各検出器要素に対して、1つのダイオードの幅だけ回転方向に変位させた最下位列からの対応する測定値が、例えば付影から生じる平均検出効率におけるいかなる差も調整するような重み付けの後に、減算される。この差の低空間周波数表現は、パラメトリック表面のローパスフィルタリングまたはフィッティングによって、決定される。この低周波数表現は、最上位層の全体にわたるオブジェクト散乱分散の推定である。内部検出器散乱が一次放射からの計数と局所近傍におけるオブジェクト散乱からの計数との和の一定の部分γであるという近似が、その要素における前記推定されたオブジェクト散乱を減算し、前記差を(1+γ)によって除算して、内部検出器散乱を補償すること、または、測定された計数と前記推定されたオブジェクト散乱自体との差からのローパスフィルタリングの後で、測定された計数と前記推定されたオブジェクト散乱との差の一部分1/(1+γ)を減算することによって、各最上位層検出器要素における散乱のない信号を推定するために用いられる。各最下位層検出器要素における散乱のない信号は、測定された信号を(1+γ)で除算することによって、または、その検出器要素において測定されローパスされた信号の一部分1/(1+γ)を、その検出器要素自体における測定された信号から除算することによって、推定される。
【0127】
好適な実施形態では、半導体ダイオードは、シリコンで作られている。
【0128】
好適な実施形態では、半導体ダイオード層の数は、2を超える。換言すると、半導体ダイオード層の数は、2よりも大きい。
【0129】
好適な実施形態では、これらの層が、ダイオードにおける入射X線の方向にセグメントを構築する。
【0130】
別の実施形態では、散乱を補正しながらオブジェクトをX線断層撮影するためのデバイスが、X線放射源と、X線放射源の方向を向いた2層の直接変換半導体ダイオードを備えた検出器とを備える。個々のダイオードの間には、ダイオードの幅に対応する間隔が、最上位層と最下位層との両方において存在しており、また、最上位層のダイオードを外れた一次X線が減衰されずに下位レベルのダイオードまで通過するような、最下位層の回転方向の変位も存在する。すべての検出器チャネルの50%未満に及んでおり検出器の全体にわたって分布するビームストップが、最上位層と最下位層との両方において提供されることにより、それらの層を散乱のない一次X線に対して本質的に遮断する。
【0131】
前記放射源と検出器とは、移動コントローラによる制御によって、オブジェクトの周囲で移動させ、異なる回転角度における投影X線画像を取得するように配置されている。この構成は、検出器に接続されており検出器から測定データを取得するように構成された推定器を備える。この推定器は、また、前記検出器の統合された一部でもあり得る。この推定器は、各回転角度に対して、各層のオブジェクト散乱と内部散乱との和の分布を、ビームストップがその最上部に取り付けられた検出器要素の計数にパラメトリック表面を適合させることによって、推定するように構成されている。オブジェクト散乱と内部散乱との前記推定された和は、ビームストップの及ばない各検出器要素から減算されることにより、ビームストップが及ばない各検出器要素の、散乱のない信号の推定を取得する。
【0132】
好適な実施形態では、半導体ダイオードは、シリコンで作られている。
【0133】
好適な実施形態では、半導体ダイオードの層の数は、2を超える。換言すると、半導体ダイオードの層の数は、2よりも大きい。
【0134】
本明細書で説明されたデバイスのいずれにおいても、タングステン・ラメラなどの散乱除去要素は、いくつかのダイオードのそれぞれの裏面に、取り付けられ得る。
【0135】
本明細書で説明された方法およびデバイスが、様々な方法で組み合わされ、再構成されることが可能であることは、理解されるだろう。
【0136】
例えば、実施形態は、ハードウェアとして、または適切な処理回路による実行のためのソフトウェアとして、またはそれらの組合せとして、実装され得る。推定器の実施形態が、
図7に図解されている。
【0137】
本明細書で説明されたステップ、関数、プロシージャ、モジュールおよび/またはブロックは、汎用の電子回路と特定用途向けの回路との両方を含む、ディスクリート回路または集積回路技術など、いずれかの従来技術を用いたハードウェアとして少なくとも部分的に実装されることがあり得る。
【0138】
特定の例としては、1つまたは複数の適切に構成されたデジタル信号プロセッサと、例えば、特定の機能を遂行するように相互に接続されたディスクリート論理ゲートまたは特定用途向け集積回路(ASIC)など、その他の既知の電子回路とを含む。
【0139】
あるいは、本明細書で説明されたステップ、関数、プロシージャ、モジュールおよび/またはブロックのうちの少なくともいくつかは、1つまたは複数のプロセッサまたは処理ユニットなど、適切な処理回路による実行のためのコンピュータプログラムなどのソフトウェアとして実装されることもあり得る。
【0140】
処理回路の例としては、以下に限定されることはないが、1つもしくは複数のマイクロプロセッサ、1つもしくは複数のデジタル信号プロセッサ(DSP)、1つもしくは複数の中央処理装置(CPU)、ビデオ加速ハードウェア、および/または、1つもしくは複数のフィールド・プログラマブル・ゲートアレイ(FPGA)、もしくは、1つもしくは複数のプログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)などの任意の適切なプログラマブル・ロジック回路を含む。
【0141】
提案された技術が実装されている任意の従来型デバイスまたはユニットの一般的な処理能力の再利用が可能な場合もあり得る、ということも、理解されるべきである。例えば、既存のソフトウェアを再プログラミングすることによって、または、新たなソフトウェア・コンポーネントを追加することによって、既存のソフトウェアの再利用が可能な場合もあり得る。
【0142】
この特定の例では、本明細書で説明されたステップ、関数、プロシージャ、モジュールおよび/またはブロックのうち少なくともいくつかは、1つまたは複数のプロセッサ501を含む処理回路による実行のためにメモリ502にロードされるコンピュータプログラム(ソフトウェア)510として、実装される。プロセッサ(1つまたは複数)501とメモリ502とは、正常なソフトウェア実行を可能にするように、互いに、システムバス500を経由して、相互接続される。オプションである入力/出力デバイス503が、入力パラメータ(1つもしくは複数)および/または結果的に生じる出力パラメータ(1つもしくは複数)など、関係データの入力および/または出力を可能にするために、I/Oバス504を経由して、プロセッサ(1つもしくは複数)501および/またはメモリ502と相互接続される場合があり得る。
【0143】
一例として、横向き形状に取り付けられた少なくとも2層の検出器ダイオードまたは入射X線の方向にセグメント化されたダイオードの少なくとも2層のダイオードセグメントを有する、光子計数X線検出器において、プロセッサ501によって実行されると、オブジェクト散乱を推定するためのコンピュータプログラム510が提供され、
前記コンピュータプログラム510は、プロセッサ501によって実行されると、プロセッサに、前記少なくとも2層のうちの最上位層における計数へのオブジェクト散乱の寄与を、最上位層と下位層との間における計数の差に基づき、オブジェクト散乱は徐々に変動する空間的分布を有すると仮定して、推定させる命令を備えている。
【0144】
別の例によると、プロセッサ501によって実行されると、横向き形状に取り付けられた少なくとも2層の検出器ダイオードまたは入射X線の方向にセグメント化されたダイオードの少なくとも2層のダイオードセグメントを有する、光子計数X線検出器の内部散乱を、推定するためのコンピュータプログラム510が提供され、
前記コンピュータプログラム510は、プロセッサ501によって実行されると、プロセッサに、検出器の内部でコンプトン散乱した光子の再吸収からの計数を、高減衰ビームストップが、検出器要素の最上位部、下位層、または最上位層と下位層との両方に配置された検出器要素における計数を測定することに基づいて、推定させる。
【0145】
「プロセッサ」という用語は、一般的な意味として、特定の処理、判断または計算タスクを実行するためのプログラム・コードまたはコンピュータプログラム命令を実行することができる任意のシステムまたはデバイスと、解釈されるべきである。
【0146】
1つまたは複数のプロセッサを含む処理回路は、したがって、コンピュータプログラムを実行するときに、本明細書で説明されたものなどの適切に定義された処理タスクを実行するように、構成されている。
【0147】
処理回路は、単に前述のステップ、関数、プロシージャおよび/またはブロックを実行するのみである必要はなく、他のタスクも実行する場合があり得る。
【0148】
例として、ソフトウェアまたはコンピュータプログラムは、通常は、コンピュータ読取可能媒体上で、より詳しくは不揮発性媒体で、搬送されるまたはこれらに記憶されるコンピュータプログラム製品として、実現される場合があり得る。このコンピュータ読取可能媒体とは、以下に限定されることはないが、リードオンリーメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、コンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ・ディスク、ユニバーサルシリアルバス(USB)メモリ、ハードディスクドライブ(HDD)記憶デバイス、フラッシュ・メモリ、磁気テープ、またはいずれかの他の従来型メモリデバイスを含む、1つまたは複数の取り外し可能または取り外し不可能なメモリデバイスを含み得る。したがって、コンピュータプログラムは、コンピュータまたは同等な処理デバイスの動作メモリに、その処理回路によって実行される目的で、ロードされることがあり得る。
【0149】
本明細書において提示された1つまたは複数のフロー図は、1つまたは複数のプロセッサによって実行されると、コンピュータの1つまたは複数のフロー図と、少なくとも部分的には見なされることが可能である。対応するデバイス、システムおよび/または装置は、機能モジュールのグループとして定義される場合があるのであって、その場合、プロセッサによって実行される各ステップが、1つの機能モジュールに対応する。この場合、機能モジュールは、プロセッサ上で動作するコンピュータプログラムとして、実装される。よって、デバイス、システムおよび/または装置は、代替的に、機能モジュールのグループとして定義されることが可能であり、それらの機能モジュールは、少なくとも1つのプロセッサ上で動作するコンピュータプログラムとして、実装される。
【0150】
メモリに存在するコンピュータプログラムは、プロセッサによって実行されると、本明細書で説明されたステップおよび/またはタスクの少なくとも一部を実行するように構成された適切な機能モジュールとして、編成され得る。
【0151】
あるいは、これらのモジュールを主にハードウェア・モジュールによって、または、その代わりに、ハードウェアによって実現することが可能である。ソフトウェアとハードウェアとの度合いは、純粋に、実装上の選択である。
【0152】
以上に記載された実施形態は、本発明に関する少数の例証のための例として理解されるべきである。これらの実施形態に対して、本発明の範囲から逸脱せずに、様々な修正、組合せおよび変更がなされ得ることが、当業者によって理解されるだろう。特に、技術的に可能な場合には、異なる実施形態における異なる部分的解決策が、他の構成として組み合わされることが可能である。
【0153】
参考文献
1.米国特許第6,618,466B1号「Apparatus and method for x−ray scatter reduction and correction for fan beam CT and cone beam volume CT」
2.米国特許第8183535B2号「Silicon detector assembly for X−ray imaging」
3.RoessI and Proksa、「K−edge imaging in x−ray computed tomography usingmulti−bin photon counting detectors」、Physics in Medicine and Biology、vol.52、第4679〜96頁、2007年
4.Zhu, Bennett and Fahrig、「Scatter correction method for x−ray CT using primary modulation: theory and preliminary results」、IEEE Transactions of Medical Imaging、vol.25、第1573〜1587頁、2006年
5.Bornefalk, Persson and Danielsson、「Allowable forward model misspecification for accurate basis decomposition in a silicon detector based spectral CT」、IEEE Transactions of Medical Imaging、vol.34、第788〜795頁、2015年
6.Bornefalk and Danielsson、「Photon−counting spectral computed tomography using silicon strip detectors: a feasibility study」、Physics in Medicine and Biology、vol.55、第1999〜2022頁、2010年