特許第6689906号(P6689906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6689906スチレン樹脂及びポリフェニレンエーテルを含むブレンド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6689906
(24)【登録日】2020年4月10日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】スチレン樹脂及びポリフェニレンエーテルを含むブレンド
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/20 20060101AFI20200421BHJP
   C08L 25/04 20060101ALI20200421BHJP
   C08L 71/12 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
   C08J3/20 ZCET
   C08J3/20CEZ
   C08L25/04
   C08L71/12
【請求項の数】6
【外国語出願】
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-59778(P2018-59778)
(22)【出願日】2018年3月27日
(62)【分割の表示】特願2016-30767(P2016-30767)の分割
【原出願日】2016年2月22日
(65)【公開番号】特開2018-111832(P2018-111832A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2018年4月2日
(31)【優先権主張番号】816/CHE/2015
(32)【優先日】2015年2月20日
(33)【優先権主張国】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】511103513
【氏名又は名称】スティア エンジニアリング プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ロデン
(72)【発明者】
【氏名】パラカシュ・ハディマニ
(72)【発明者】
【氏名】バドラ・サンブ
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−173034(JP,A)
【文献】 特開昭58−021443(JP,A)
【文献】 特開昭60−099161(JP,A)
【文献】 特開昭58−174439(JP,A)
【文献】 特開2002−316316(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/046308(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第00153173(EP,A1)
【文献】 特開平03−163154(JP,A)
【文献】 米国特許第05234994(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00−3/28;99/00
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
B29B 7/00−11/14
B29B 13/00−15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融スチレン樹脂中にポリフェニレンエーテルを溶解させることによって形成された、スチレン樹脂とポリフェニレンエーテルとを含むブレンドであって、
ポリフェニレンエーテルが10から50パーセント(w/w)の濃度範囲内であり、
ペレットの形態であり、
少なくとも45の白色度を有し、かつ、
ペレットの表面上に見える、ポリフェニレンエーテルとスチレン樹脂によって形成される暗色点が、10パーセント未満である、ブレンド。
【請求項2】
ポリフェニレンエーテルが10から12パーセント(w/w)の濃度範囲内であり、少なくとも60の白色度を有する、請求項1に記載のブレンド。
【請求項3】
ポリフェニレンエーテルが20から30パーセント(w/w)の濃度範囲内であり、少なくとも50の白色度を有する、請求項1に記載のブレンド。
【請求項4】
ポリフェニレンエーテルが50パーセント(w/w)であり、少なくとも45の白色度を有する、請求項1に記載のブレンド。
【請求項5】
スチレン樹脂が、スチレン樹脂のホモポリマー、スチレン樹脂のコポリマー、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のブレンド。
【請求項6】
スチレン樹脂が、ポリスチレン、汎用ポリスチレン、高衝撃ポリスチレン、スチレンアクリロニトリル、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のブレンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリフェニレンエーテルとスチレン樹脂とのブレンドに関する。具体的には、改善された外観及び品質を有するポリフェニレンエーテルとスチレン樹脂とのブレンド、並びにこうしたブレンドを調製するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェニレンエーテル(PPE)は、比較的高い溶融粘度及び軟化点を有する高性能エンジニアリング熱可塑性材料である。しかし、PPEは、約215℃の高いガラス転移温度(Tg)及び最高で262℃の融点を有し、高い処理温度(250℃以上)を要する。このような高い温度では、ポリマーは本質的に不安定であるため、その溶融粘度は増加し、様々な反応が引き起こされる。このため、PPEは、通常は他のポリマーと、例えば、様々な種類のスチレン樹脂、例えばポリスチレン(PS)とブレンドすることによって処理される。米国特許3,383,435号明細書は、PPEの溶融加工性の、スチレン樹脂とのブレンドによる改善に関する。PPEとスチレン樹脂とのブレンドは、優れた高温性能及び加工性を示す。これらのブレンドは、様々な用途、例えば、電気/電子機器、事務機器、各種の外装材、工業用品、及び食品包装に使用される。
【0003】
PPEとスチレン樹脂とのブレンドを調製するための従来の方法には、押出機中で1種以上のスチレン樹脂とPPEを溶融ブレンドすることが含まれる。この方法には、押出機に、PPE、スチレン樹脂、及び他の添加剤を供給し、溶融混練することが含まれる。相当量のエネルギーがPPEに伝達され、その完全な溶融を確実にする。中程度及び幅広のローブ混練ブロックを押出機に供給し、ここで前記材料は非常に高いせん断速度にさらされる。加熱された押出機のバレルによる熱対流と、混練ブロックによって提供される剪断、圧縮、及び摩擦との組合せは、PPEをその融点より高温に加熱する。PPEが溶融されると、そのポリマー鎖は相互に密着しており、これらは酸化し始めて、PPEの分子量に低下をもたらす。高い温度及びせん断応力の継続によりPPEはより暗い色になり最終的に暗褐色になる。これはまた、PPEの粘弾性挙動及びブレンドの品質及び加工性に影響し、射出及び圧縮成形などの二次的な操作で処理することを困難にする。最終的に、PPEはすべての粘弾性特性を失い、炭化する。得られるブレンドは、くすんだ黄色から褐色であり、炭化したものは製品中の暗色の斑点として目に見える、ブレンド中に懸濁した粒子状の汚染物質を作り出す。
【0004】
多くの用途、特にエレクトロニクス産業においては、PPEとスチレン樹脂とのブレンドが良好な外観を有して大型の成形品、例えば、大型のテレビ受像機の筐体、コピー機、プリンター等としての使用に適することが望まれる。PPEとスチレン樹脂とのブレンドの外観を改善するために、幾つかの解決策が提案されている。
【0005】
通常、ブレンドは、汚染物質を隠して製品の外観を改善するために着色されている。典型的なブレンドは、ブレンドの色をマスクするために、10パーセントまでの二酸化チタンを要し、これはコストを増加させるのみならず、製品の品質にも影響を及ぼす。米国特許3,639,334号明細書は、1種以上の添加剤を安定剤としてブレンドに添加することによる、PPE-PSブレンドの外観の改善に関する。米国特許4,588,764号明細書は、PPE-PSブレンドにジホスファイト材料を添加してブレンドの当初の黄色度を低減することを開示している。米国特許5,438,086号明細書には、ポリマーの色を維持し、溶融劣化を最小限に抑えるために、ヒンダードフェノール類及びUV安定剤と組み合わせて使用することができるビス(アラルキルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが開示されている。しかし、ブレンドへの顔料及び/または他の添加剤の添加は、さらにブレンドの特性に影響を及ぼし、製造コストを増加させる。
【0006】
米国特許7,541,399号明細書は、PPEとスチレン樹脂とを含む組成物の製造方法を開示する。この方法は、PPEと第一スチレン樹脂とを溶融混練して溶融混練生成物を得て、溶融混練生成物を第二のスチレン樹脂とさらに溶融混練することを含む。得られる組成物は、黒色異物粒子、未溶融物、および色ムラなどの外観的欠陥がないと言われる。しかし、この方法は、使用されるスチレン樹脂の種類に制限を伴う多工程の方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許3,383,435号明細書
【特許文献2】米国特許3,639,334号明細書
【特許文献3】米国特許4,588,764号明細書
【特許文献4】米国特許5,438,086号明細書
【特許文献5】米国特許7,541,399号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
外観的欠陥をもたず、より優れた加工性を示す、PPEとスチレン樹脂とのブレンドの製造のための、安全、費用効果的、かつ効率的な方法が依然として必要とされている。PPEの処理に関連する刺激性の臭いを生じない、こうしたブレンドの製造方法もまた必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、スチレン樹脂及びポリフェニレンエーテル(PPE)を有するブレンドの調製のための共回転式ツインスクリュー処理機に関する。ツインスクリュー処理機は、リード「L」を有し、その表面に螺旋状に形成された連続フライトを含む少なくとも一つの部品を含む第一処理ゾーンを含み、ここで、フライトは、リード「L」の一部分において整数ローブフライトから少なくとも一度は非整数ローブフライトに変形し、リード「L」の一部分において変形して整数ローブフライトに戻るか、または、フライトが、リード「L」の一部分において非整数ローブフライトから整数ローブフライトに少なくとも一度変形し、リード「L」の一部分において変形して非整数ローブフライトに戻り(これ以降は動的撹拌部品(DSE)と呼称)、少なくとも一つの部分ローブ部品が第一整数部品(n)と第二整数部品(N)とを仲介し(これ以降は部分混合部品(FME)と呼称);また、第二の処理ゾーンは、少なくとも一つのDSE及び少なくとも一つのFMEを含む。第一及び第二の処理ゾーンは、少なくとも一つの運搬部品または少なくとも一つの混合部品、あるいは少なくとも一つの運搬部品と少なくとも一つの混合部品との組み合わせによって分割されている。第一及び第二の処理ゾーンは、まとまってスチレン樹脂を溶融させ、溶融スチレン樹脂中にPPEを溶解させるように構成されている。
【0010】
本発明は、共回転式ツインスクリュー処理機中でスチレン樹脂とPPEを含むブレンドを調製するための方法に関する。この方法は、ツインスクリュー処理機に、少なくとも一つのDSEと少なくとも一つのFMEを含む少なくとも一つの処理ゾーンを設け、ツインスクリュー処理機にスチレン樹脂とPPEを供給し、少なくとも一つの処理ゾーンにおいてスチレン樹脂を溶融させて溶融スチレン樹脂にPPEを溶解させ、ツインスクリュー処理機からスチレン樹脂とPPEとを授受することを含む。
【0011】
本発明はまた、スチレン樹脂とPPEとを含むブレンドであって、PPEが10から50パーセントw/wの範囲の濃度であり、少なくとも45の白色度を有するものに関する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1Aは、通常の方法で調製されたPPEとスチレン樹脂とのブレンド及び本発明の実施態様によるPPEとスチレン樹脂とのブレンドの写真である。図1Bは、通常の方法で調製されたPPEとスチレン樹脂とのブレンド及び本発明の実施態様によるPPEとスチレン樹脂とのブレンドの別の写真である。
図2図2は、通常の方法を実施するために使用された共回転式ツインスクリュー処理機のスクリューデザインである。
図3図3は、本発明の実施態様による方法を実施するために使用された共回転式ツインスクリュー処理機のスクリューデザインである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、スチレン樹脂及びポリフェニレンエーテル(PPE)を有するブレンドの調製のための共回転式ツインスクリューに関する。ツインスクリュー処理機は、リード「L」を有し、その表面に螺旋状に形成された連続フライトを含む少なくとも一つの部品を含む第一処理ゾーンを含み、ここで、フライトは、リード「L」の一部分において整数ローブフライトから少なくとも一度は非整数ローブフライトに変形し、リード「L」の一部分において変形して整数ローブフライトに戻るか、または、フライトが、リード「L」の一部分において非整数ローブフライトから整数ローブフライトに少なくとも一度変形し、リード「L」の一部分において変形して非整数ローブフライトに戻る(これ以降は動的撹拌部品(DSE)と呼称)。第一処理ゾーンは、第一整数部品(n)と第二整数部品(N)とを仲介する少なくとも一つの部分ローブ部品をさらに含む(これ以降は部分混合部品(FME)と呼称)。部分ローブ部品は、第一整数部品(n)と第二整数部品(N)とを規定の部分で仲介して、N/nが整数であり、前記部分が第一の整数と第二の整数との間の遷移の程度を決定する部品である。単フライトローブまたは2−ローブは、1.2.xxなどの部分ローブを形成することができ、ここでは、xxは1から99のいかなる数であってもよい。1から99の数は、部分ローブが単一フライト部品と2−ローブ部品のいずれに見えるかを決定する。1.2.xx との表記中の1及び2の数は、単一フライト部品(1)と2−ローブ部品(2)をそれぞれ仲介するローブ部品を表す。ツインスクリュー処理機は、少なくとも一つのDSEと少なくとも一つのFMEとをさらに含む第二の処理ゾーンをさらに含む。第一処理ゾーン及び第二処理ゾーンは、少なくとも一つの運搬部品または少なくとも一つの混合部品、あるいは少なくとも一つの運搬部品と少なくとも一つの混合部品との組み合わせによって分割されている。第一処理ゾーン及び第二処理ゾーンは、まとまってスチレン樹脂を溶融させ、溶融スチレン樹脂中にPPEを溶解させるように構成されている。
【0014】
本発明の実施態様によれば、ツインスクリュー処理機は、少なくとも一つのDSEと少なくとも一つのFMEを含む第三の処理ゾーンをさらに含む。第三の処理ゾーンは、少なくとも一つの運搬部品または少なくとも一つの混合部品、あるいは少なくとも一つの運搬部品と少なくとも一つの混合部品との組み合わせによって第二の処理ゾーンと分割されている。第三処理ゾーンは、第一及び第二処理ゾーンと共に、溶融スチレン樹脂中にPPEを溶融及び溶解させるように構成されている。
【0015】
一実施態様では、第一処理ゾーンは、二つのDSE部品及び一つのFMEを含み、第一の処理ゾーンはツインスクリュー処理機の中間点より前に始まる。図3のスクリュー構成においては、処理機バレルC4に設けられた部品が、第一処理ゾーンの一部を形成する。
【0016】
ツインスクリュー処理機は、インプットゾーン及びアウトプットゾーンをさらに含む。図3の実施態様では、バレルC0がインプットゾーンを形成し、バレルC12がアウトレットを形成する。別の実施態様によれば、ツインスクリュー処理機は処理ゾーンの前にゾーンを含み(これ以降、軟化ゾーンと呼称)、ここでスチレン樹脂を軟化させる。一実施態様では、ツインスクリュー処理機は、一つ以上の副供給機をさらに含む。一つ以上の副供給機は、インプットゾーン、軟化ゾーン、及び/または処理ゾーンに配置することができる。
【0017】
一実施態様では、ツインスクリュー処理機は、所望の滞留時間、大きな自由体積、低いずれ痕跡(shear signature)、及び厳しい許容度のための長いL/D比を有する。ツインスクリュー処理機は、共回転式ツインスクリュー押出機であってよい。一実施態様では、押出機は40/60のL/D比を有する。別の実施態様では、押出機は60のL/D比を有する。例えば、押出機は、STEER Engineering Pvt. Ltd.製のOmega Class 40mm押出機である。
【0018】
インプットゾーンは、短いリード混練部品を有してよい。短いリード混練部品は、インプットゾーン中の材料の滞留時間を増大させる。
【0019】
一実施態様には、インプットゾーンと処理ゾーンとの間に軟化ゾーンが配置されている。軟化ゾーンは、加熱システムを含み、少なくともDSEと少なくともFMEとを含んでよい。スチレン樹脂は、取込ゾーンから軟化ゾーンに運搬される。
【0020】
本発明はまた、共回転式ツインスクリュー処理機におけるスチレン樹脂とPPEとを含むブレンドを調製する方法にも関する。この方法は、ツインスクリュー処理機に、少なくとも一つのDSE(上記)と少なくとも一つのFME(上記)とを含む少なくとも一つの処理ゾーンを設け、ツインスクリュー処理機にスチレン樹脂及びPPEを供給し、少なくとも一つの処理ゾーンでスチレン樹脂を溶融させて溶融スチレン樹脂にPPEを溶解させ、ツインスクリュー処理機からスチレン樹脂とPPEとのブレンドを押出すことを含む。
【0021】
処理ゾーンの温度は、160℃から220℃の範囲である。処理ゾーン中の滞留時間は、2から4秒の範囲である。これらの処理ゾーン温度及び滞留時間は、ポリフェニレンエーテルの著しい溶解を引き起こすためには十分でない。
【0022】
DSEとFMEとの組み合わせは、溶融スチレンとPPEとの混合物に、この混合物が運搬される際に破壊的な分裂及び再結合を生み出す。これらは、分配的かつ延伸的な混合とより優れた溶融温度制御との組み合わせを提供する。分配的な混合は、少量の成分をスチレン樹脂とPPEとのマトリックス全体に行き渡らせ、これによって優れた空間的分配をもたらす。延伸的混合は、張力をもたらす。張力を使用することで、PPEのポリマー鎖が穏やかに引っ張られ、これによりPPEが溶融スチレン樹脂に溶解される。さらに、延伸的混合は、混合物の表面積を補給し、これによって溶融スチレン樹脂中へのPPEの溶解を増進させる。
【0023】
一実施態様では、二つの処理ゾーンがツインスクリュー処理機中に設けられる。二つの処理ゾーンは、少なくとも一つの運搬部品または少なくとも一つの混合部品、あるいは少なくとも一つの運搬部品と少なくとも一つの混合部品との組み合わせによって分割されている。さらにまた、二つの処理ゾーンは、まとまってスチレン樹脂を溶融させ、溶融スチレン樹脂中にPPEを溶解させるように構成されている。
【0024】
スチレン樹脂及びPPEは、供給口及び/または一つ以上の副供給機(上述)から同時に、処理機の取込ゾーンに供給することができる。スチレン樹脂及びPPEは、ツインスクリュー処理機に、一時間あたり20から50キログラムの供給速度で供給される。一実施態様では、スチレン樹脂はツインスクリュー処理機にペレットの形態で供給され、PPEはツインスクリュー処理機に粉末の形態で供給される。
【0025】
前記ブレンドは、1パーセントから99パーセント(w/w)の範囲でPPEを含む。好ましい実施態様によれば、このブレンドは、10パーセントから50パーセント(w/w)の範囲でPPEを含む。
【0026】
スチレン樹脂は、スチレン樹脂のホモポリマー、スチレン樹脂のコポリマー、またはこれらの組み合わせであってよい。スチレン樹脂の例には、以下に限定されるものではないが、ポリスチレン(PS)、汎用ポリスチレン(GPPS)、高衝撃ポリスチレン(HIPS)、スチレンアクリロニトリル、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、またはこれらの組み合わせが含まれる。一実施態様によれば、スチレン樹脂は、ポリスチレン(PS)またはGPPSである。一実施態様によれば、ブレンドは、ポリフェニレンエーテル、GPPS、及びHIPSを含む。
【0027】
一実施態様によれば、取込ゾーン(上述)中での滞留時間は、1から2秒の範囲である。取込ゾーンの温度は、25から30℃の範囲である。長い滞留時間及び取込ゾーンでの温度により、スチレン樹脂が取込ゾーン内に運搬されるにつれてその軟化または溶融が開始される。
【0028】
この方法は、ツインスクリュー処理機の60から200rpmのスクリュー速度で実施される。
【0029】
一実施態様では、このブレンドは、ペレット、ストランド、またはシートの形態で回収される。
【0030】
一実施態様によれば、スチレン樹脂は、軟化ゾーン(上述)において、取込ゾーンから処理ゾーンに運搬されるにつれてさらに軟化される。軟化ゾーンの温度は、120から300℃の範囲である。軟化ゾーンでの滞留時間は、1から2秒の範囲である。軟化ゾーンの温度及び滞留時間は、ポリフェニレンエーテルの著しい溶融を引き起こすためには十分でない。
【0031】
一実施態様によれば、PPEはスチレン樹脂が軟化または溶融された後にツインスクリュー処理機に供給される。
【0032】
一実施態様によれば、この方法は、ブレンドを得る前に真空を適用して、処理中に放出された揮発性有機化合物もしくは気体を除去することをさらに含む。
【0033】
本発明の方法は、PPEとスチレン樹脂との両方を溶解するためにも、高い剪断及び圧縮の力の使用を含まない。したがって、ブレンド調製の間にもPPEの熱酸化はおこらないか非常にわずかである。このため、ブレンド中のPPEの黄色化及び/または炭化(charring)は著しく低減されるか排除される。さらに、過剰な揮発性有機化合物もしくは気体の発生もまた低減される。
【0034】
このブレンドには、炭化及び色の不均一性によって形成される暗色点の存在などの、外観上の欠陥が皆無である。一実施態様によれば、このブレンドは白色である。一実施態様によれば、ブレンドは淡黄色から淡いクリーム色である。このブレンドは、透明または半透明である。ブレンドは、優れた強度及びより良い処理加工性を示す。
【0035】
本明細書は、スチレン樹脂とPPEとのブレンドにも関する。PPEは、10から50パーセント(w/w)の濃度範囲内である。ブレンドは、少なくとも45の白色度を有する。白色度は、Biuged Laboratory Instruments (Guangzhou)Co. Ltd.製のBGD 556、Precise Computer Colorimeterによって測定される。
【0036】
一実施態様によれば、PPEは10から12パーセント(w/w)の濃度範囲内であり、ブレンドは少なくとも60の白色度を有する。
【0037】
一実施態様によれば、PPEは20から30パーセント(w/w)の濃度範囲内であり、ブレンドは少なくとも50の白色度を有する。
【0038】
一実施態様によれば、PPEは50パーセント(w/w)の濃度であり、ブレンドは少なくとも45の白色度を有する。
【0039】
一実施態様では、このブレンドは、ペレット、ストランド、またはシートの形態である。
【0040】
一実施態様では、このブレンドは、ペレットまたはストランドの表面上に見える暗色点が10パーセント未満であるが、こうした暗色点はポリフェニレンエーテルとスチレン樹脂によって形成される。
【0041】
図1Aは、通常の方法で調製されたPPEとスチレン樹脂とのブレンド102及び本発明の実施態様によるブレンド104の写真である。通常の方法には、PPEを溶融ブレンドすることが含まれる。写真に見られるように、104は102よりも著しく白い。
【0042】
図1Bは、通常の方法で調製されたPPEとスチレン樹脂とのブレンド106及び本発明の実施態様によるブレンド108の別の写真である。
【実施例】
【0043】
(実施例1:溶融ブレンドを含む通常の方法による、PPEとスチレン樹脂とのブレンドの調製)
押出機仕様:Omega-40 H、原動力:160 KW、最大スクリュー速度:1200 RPM、最大トルク:500Nm/シャフト、特定トルク:17.1 Nm/cm3、バレル直径:40mm、スクリュー直径:39.7mm、L/D:60、中心距離:32
【0044】
【表1】
【0045】
部品についての略称リスト
・RSE: 右旋(Right Handed)スクリュー部品
・RFV: 右旋ショベル部品
・RFN: 右旋遷移部品
・LSE: 左旋スクリュー部品
・DSE: 動的撹拌部品
・RKB: 食い違い角45°の右旋混練ブロック
・NKB: 食い違い角90°の(Neutral)混練ブロック
共回転式ツインスクリュー押出機のためのスクリューデザインは、図2に示される。
【0046】
【表2】
【0047】
PPE及びHIPSを主供給機から添加し、GPPSを副供給機から添加した。
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【0050】
【表5】
【0051】
(実施例2:本発明の実施態様による、PPEとスチレン樹脂とのブレンドの調製)
押出機仕様:Omega-40 H、原動力:160 KW、最大スクリュー速度:1200 RPM、最大トルク:500Nm/シャフト、特定トルク:17.1 Nm/cm3、バレル直径:40mm、スクリュー直径:39.7mm、L/D:60、中心距離:32
【0052】
【表6】
【0053】
部品についての略称リスト
・RSE: 右旋スクリュー部品
・LSE: 左旋スクリュー部品
・DSE: 動的撹拌部品
・FME:部分混合部品
・EME:偏心混合部品
共回転式ツインスクリュー押出機のためのスクリューデザインは、図3に示される。
【0054】
【表7】
【0055】
PPE及びHIPSを主供給機から添加し、GPPSを副供給機から添加した。
【0056】
【表8】
【0057】
【表9】
【0058】
バレルB2からB4は、軟化ゾーンを形成する。バレルB4からB13は、処理ゾーンを形成する。
【0059】
【表10】
【0060】
【表11】
【0061】
【表12】
【0062】
白色度は、Biuged Laboratory Instruments (Guangzhou)Co. Ltd.製のBGD 556、Precise Computer Colorimeterによって測定される。
【0063】
DSEとFMEとの組み合わせにより、PPEのポリマー鎖は穏やかに引っ張られ、これによりPPEが溶融スチレン樹脂に溶解される。
【0064】
本発明の方法は、溶融ブレンド工程を含む通常の方法と比較して著しく低温で実施される。さらにまた、この方法は、PPEとスチレン樹脂との混合物を高剪断に晒さない。ポリマー鎖は、張力を使用して互いから穏やかに引き離される。温度及び剪断がより低いことにより、PPEが酸化する傾向は低減または排除される。然るに、PPEの黄色化または炭化は著しく低減または排除される。この方法は、PPEの分子量を安定化する。PPEの分子量の安定化により、ブレンドの融点はバッチ間でも一貫性を持つ。
【0065】
得られるブレンドは、優れた色、外観、及び加工性を有する。このブレンドは、安全かつ経済的でもある。このブレンドは、射出成型などの二次操作向けに従来品より堅固である。ブレンドの色は、射出成型操作の間も安定である。
【0066】
この方法は、PPEの加工に典型的には付随する大きな機械的エネルギーの導入を必要としない。ブレンドから製造される製品に導入されるエネルギーは、50パーセント以上低減されうる。
【0067】
本発明により得られるブレンドに外観上の欠陥が皆無であるため、二次加工中にブレンドに加える必要のある二酸化チタンの量もまた2パーセント(w/w)以下に低減される。添加が必要な二酸化チタンの量の低減により、こうしたブレンドから製造される製品は密度が低減される。密度は18または20パーセント低減されうる。
【0068】
本願発明によるブレンドは、透明かつ鮮やかな製品を製造するために使用することができる。このために、従前は外観上の欠陥により従来のブレンドからは製造し得なかった製品への応用が可能になる。
【0069】
また、この方法は、高温でのPPEの処理に伴う刺激性の臭気を発生しない。また、製品の操作中に気体発生が全く観察されない。このため、臭気問題に対する高価な環境制御の必要性が排除される。
【0070】
共回転式ツインスクリュー処理機におけるスチレン樹脂及びPPEを含むブレンドの調製方法は、ツインスクリュー処理機に、少なくとも一つのDSEと少なくとも一つのFMEを含む少なくとも一つの処理ゾーンを設け、ツインスクリュー処理機にスチレン樹脂とPPEを供給し、少なくとも一つの処理ゾーンにおいてスチレン樹脂を溶融させて溶融スチレン樹脂にPPEを溶解させ、ツインスクリュー処理機からスチレン樹脂とPPEとを授受することを含む。
【0071】
こうした方法は、ツインスクリュー処理機中に、少なくとも一つの運搬部品または少なくとも一つの混合部品、あるいは少なくとも一つの運搬部品と少なくとも一つの混合部品との組み合わせによって分割された二つの処理ゾーンを設けることを含み、二つの処理ゾーンは、まとまってスチレン樹脂を溶融させ、溶融スチレン樹脂中にPPEを溶解させるように構成されている。
【0072】
こうした方法では、溶解は160から220℃の範囲の温度で実施される。
【0073】
こうした方法では、スチレン樹脂及びポリフェニレンエーテルは、ツインスクリュー処理機に同時に供給される。
【0074】
こうした方法では、スチレン樹脂及びポリフェニレンエーテルは、ツインスクリュー処理機に、1時間当たり20から50キログラムの供給速度で供給される。
【0075】
こうした方法では、ツインスクリュー処理機は、60から200RPMのスクリュー速度で稼働する。
【0076】
こうした方法は、120℃から130℃の範囲の温度で、処理ゾーンの前にスチレン樹脂を軟化する工程を含む。
【0077】
こうした方法では、ポリフェニレンエーテルは、スチレン樹脂を軟化または溶融させた後にツインスクリュー処理機に供給される。
【0078】
こうした方法では、スチレン樹脂はツインスクリュー処理機にペレットの形態で供給され、ポリフェニレンエーテルはツインスクリュー処理機に粉末の形態で供給される。
【0079】
こうした方法では、ポリフェニレンエーテルは、ブレンド中に10から50パーセント(w/w)の範囲で存在する。
【0080】
こうした方法では、スチレン樹脂は、スチレン樹脂のホモポリマー、スチレン樹脂のコポリマー、またはこれらの組み合わせから選択される。
【0081】
こうした方法では、スチレン樹脂は、ポリスチレン、汎用ポリスチレン、高衝撃ポリスチレン、スチレンアクリロニトリル、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0082】
こうした方法は、処理ゾーンの終点近くで真空を適用して、処理中に放出された揮発性有機化合物もしくは気体を除去する工程をさらに含む。
【0083】
ブレンドは、スチレン樹脂とポリフェニレンエーテルとを含み、ここでポリフェニレンエーテルは10から50パーセント(w/w)の濃度範囲であり、ブレンドは少なくとも45から60の白色度を有する。
【0084】
こうしたブレンドでは、ポリフェニレンエーテルは10から12パーセント(w/w)の濃度範囲内であり、ブレンドは少なくとも60の白色度を有する。
【0085】
こうしたブレンドでは、ポリフェニレンエーテルは20から30パーセント(w/w)の濃度範囲内であり、ブレンドは少なくとも50の白色度を有する。
【0086】
こうしたブレンドでは、ポリフェニレンエーテルは50パーセント(w/w)の濃度であり、ブレンドは少なくとも45の白色度を有する。
【0087】
こうしたブレンドでは、ブレンドはペレットまたはストランドの形態である。
【0088】
こうしたブレンドでは、ペレットまたはストランドの表面上に見える、ポリフェニレンエーテルとスチレン樹脂によって形成される暗色点が10パーセント未満である。
【0089】
こうしたブレンドでは、スチレン樹脂は、スチレン樹脂のホモポリマー、スチレン樹脂のコポリマー、またはこれらの組み合わせから選択される。
【0090】
こうしたブレンドでは、スチレン樹脂は、ポリスチレン、汎用ポリスチレン、高衝撃ポリスチレン、スチレンアクリロニトリル、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0091】
スチレン樹脂とポリフェニレンエーテル(PPE)を含むブレンドを調製するための共回転式ツインスクリュー処理機であって、少なくとも一つのDSEと少なくとも一つのFMEを含む第一処理ゾーン及び少なくとも一つのDSEと少なくとも一つのFMEを含む第二処理ゾーンを備え、第一及び第二の処理ゾーンは、少なくとも一つの運搬部品または少なくとも一つの混合部品、あるいは少なくとも一つの運搬部品と少なくとも一つの混合部品との組み合わせによって分割されており、第一及び第二の処理ゾーンは、まとまってスチレン樹脂を溶融させ、溶融スチレン樹脂中にPPEを溶解させるように構成されている。
【0092】
こうした処理機は、リード「L」を有し、その表面に螺旋状に形成された連続フライトを含む少なくとも一つの部品を含む第三処理ゾーンを含み、ここで、フライトは、リード「L」の一部分において整数ローブフライトから少なくとも一度は非整数ローブフライトに変形し、リード「L」の一部分において変形して整数ローブフライトに戻るか、または、フライトが、リード「L」の一部分において非整数ローブフライトから整数ローブフライトに少なくとも一度変形し、リード「L」の一部分において変形して非整数ローブフライトに戻り、少なくとも一つの部分ローブ部品が第一整数部品(n)と第二整数部品(N)とを仲介し、第三の処理ゾーンは第二の処理ゾーンから、少なくとも一つの運搬部品または少なくとも一つの混合部品、あるいは少なくとも一つの運搬部品と少なくとも一つの混合部品との組み合わせによって分割されており、第一及び第二の処理ゾーンと共に、溶融スチレン樹脂中にPPEを溶融及び溶解させるように構成されている。
【0093】
こうした処理機では、第一処理ゾーンは、リード「L」を有し、その表面に螺旋状に形成された連続フライトを含む二つの部品を含み、ここで、フライトは、リード「L」の一部分において整数ローブフライトから少なくとも一度は非整数ローブフライトに変形し、リード「L」の一部分において変形して整数ローブフライトに戻るか、または、フライトが、リード「L」の一部分において非整数ローブフライトから整数ローブフライトに少なくとも一度変形し、リード「L」の一部分において変形して非整数ローブフライトに戻り、少なくとも一つの部分ローブ部品が第一整数部品(n)と第二整数部品(N)とを仲介し、ここで第一の処理ゾーンはツインスクリュー処理機の中間点より前に始まる。
図1
図2
図3