(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アンモニアの除去速度が0.02%/min〜0.09%/min範囲内になるように、前記第2の工程及び前記第4の工程それぞれにおける加熱を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の酸化亜鉛コアシェル粒子の製造方法。
前記第2の工程及び前記第4の工程それぞれにおける加熱を80℃〜100℃の範囲内で行うことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の酸化亜鉛コアシェル粒子の製造方法。
前記第1の工程における第1の亜鉛アンモニア錯塩溶液及び前記第3の工程における第2の亜鉛アンモニア錯塩溶液は、すべて亜鉛イオン濃度が8wt%〜20wt%の範囲内にあるものを使用することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の酸化亜鉛コアシェル粒子の製造方法。
前記第1の工程における第1の亜鉛アンモニア錯塩溶液及び前記第3の工程における第2の亜鉛アンモニア錯塩溶液は、前記第1の亜鉛アンモニア錯塩溶液と前記第2の亜鉛アンモニア錯塩溶液との重量比が1:3〜3:1の範囲内となるように使用することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の酸化亜鉛コアシェル粒子の製造方法。
前記第2の工程で得る第1の中間産物は、前記カルシウム含有材料のコアと、コアの表面に形成された炭酸亜鉛フレークと、を含むことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の酸化亜鉛コアシェル粒子の製造方法。
前記第1の工程においては、亜鉛アンモニア重炭酸錯塩溶液を前記第1の亜鉛アンモニア錯塩溶液として使用することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の酸化亜鉛コアシェル粒子の製造方法。
前記第5の工程で得る酸化亜鉛コアシェル粒子は、前記カルシウム含有材料のコアと、コアの表面に形成された酸化亜鉛フレークのシェルと、を含むことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の酸化亜鉛コアシェル粒子の製造方法。
前記第3の工程においては、亜鉛アンモニア重炭酸錯塩溶液を前記第2の亜鉛アンモニア錯塩溶液として使用することを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の酸化亜鉛コアシェル粒子の製造方法。
前記第1の工程においては、前記カルシウム含有材料として、炭酸カルシウム含有材料、酸化カルシウム含有材料、ケイ酸カルシウム含有材料、塩化カルシウム含有材料、硫酸カルシウム含有材料からなる群より少なくとも1つ選ばれるものを使用することを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の酸化亜鉛コアシェル粒子の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の酸化亜鉛コアシェル粒子の製造方法は、下記第1の工程〜第5の工程を含む。
【0014】
第1の工程は、カルシウム含有材料を第1の亜鉛アンモニア錯塩溶液に混合して第1の混合物を得る。
【0015】
第2の工程は、前記第1の混合物を加熱してアンモニアを除去することにより、第1の中間産物を得る。
【0016】
第3の工程は、前記第1の中間産物を第2の亜鉛アンモニア錯塩溶液に混合して第2の混合物を得る。
【0017】
第4の工程は、前記第2の混合物を加熱してアンモニアを除去した後、乾燥処理により、第2の中間産物を得る。
【0018】
第5の工程は、前記第2の中間産物を焼成して酸化亜鉛コアシェル粒子を得る。
【0019】
カルシウム含有材料は、前記第2の工程及び前記第4の工程の加熱及び前記第5の工程の焼成において分解されないものを用いるべきで、このようなカルシウム含有材料として、炭酸カルシウム含有材料、酸化カルシウム含有材料、ケイ酸カルシウム含有材料、塩化カルシウム含有材料、硫酸カルシウム含有材料からなる群より少なくとも1つ選ばれるものを使用するが、それらの材料に限定されない。
【0020】
炭酸カルシウム含有材料として、モンモリロナイト、カオリナイト、珪藻土、大理石の粉からなる群より少なくとも1つ選ばれるものを使用するが、それらの材料に限定されない。
【0021】
この実施形態において、炭酸カルシウム含有材料は、平均粒度が5μm〜7μmにある大理石の粉である。
【0022】
前記第1の工程における第1の亜鉛アンモニア錯塩溶液及び前記第3の工程における第2の亜鉛アンモニア錯塩溶液は、すべて亜鉛イオン濃度が8wt%〜20wt%の範囲内にあるものを使用する。また、1つの実施例として、前記第1の工程における第1の亜鉛アンモニア錯塩溶液及び前記第3の工程における第2の亜鉛アンモニア錯塩溶液は、すべて亜鉛イオン濃度が8wt%〜11wt%の範囲内にあるものを使用することが好ましい。
【0023】
前記第1の工程においては、亜鉛アンモニア重炭酸錯塩溶液(zinc ammonia bicarbonate complex salt solution)を前記第1の亜鉛アンモニア錯塩溶液として使用することができる。この実施形態において、前記第1の亜鉛アンモニア錯塩溶液は、Zn(NH
3)
n(HCO
3)
2溶液であり、nは整数1〜6である。
【0024】
前記第3の工程においては、亜鉛アンモニア重炭酸錯塩溶液を前記第2の亜鉛アンモニア錯塩溶液として使用することができる。この実施形態において、前記第2の亜鉛アンモニア錯塩溶液は、Zn(NH
3)
n(HCO
3)
2溶液であり、nは整数1〜6である。
【0025】
前記第1の工程における第1の亜鉛アンモニア錯塩溶液及び前記第3の工程における第2の亜鉛アンモニア錯塩溶液は、前記第1の亜鉛アンモニア錯塩溶液と前記第2の亜鉛アンモニア錯塩溶液との重量比が1:3〜3:1の範囲内となるように使用する。
【0026】
また、前記第1の工程における第1の亜鉛アンモニア錯塩溶液及び前記第3の工程における第2の亜鉛アンモニア錯塩溶液は、前記第1の亜鉛アンモニア錯塩溶液と前記第2の亜鉛アンモニア錯塩溶液との重量比が1:3〜3:5の範囲内となるように使用することもできる。
【0027】
また、前記第1の工程における第1の亜鉛アンモニア錯塩溶液及び前記第3の工程における第2の亜鉛アンモニア錯塩溶液は、前記第1の亜鉛アンモニア錯塩溶液と前記第2の亜鉛アンモニア錯塩溶液との重量比が5:3〜3:1の範囲内となるように使用することもできる。
【0028】
特に、前記第1の亜鉛アンモニア錯塩溶液と前記第2の亜鉛アンモニア錯塩溶液との重量比を、1:3〜3:5または5:3〜3:1の範囲内にすると、紫外線遮蔽効果が上がった酸化亜鉛コアシェル粒子を得られる。
【0029】
各工程において、加熱条件(例えば、除去速度、加熱時間、温度)は、所望の効果を達成するように、使用者の必要や実施の要求に応じて変更することができる。
【0030】
アンモニアの除去速度が0.02%/min〜0.09%/min範囲内になるように、前記第2の工程及び前記第4の工程それぞれにおける加熱を行う。また、前記第2の工程及び前記第4の工程それぞれにおいて、アンモニアの除去は、複数の段階で行うことができ、例えば、前記第2の工程において、第1段階は、0.03±0.001%/minの除去速度で、1〜2時間アンモニアの除去を行い、第2段階は、0.025±0.001%/minの除去速度で、1〜3時間アンモニアの除去を行い、また、前記第4の工程において、第1段階は、0.085±0.001%/minの除去速度で、1〜2時間アンモニアの除去を行い、第2段階は、0.025±0.001%/minの除去速度で、1〜3時間アンモニアの除去を行うことができる。
【0031】
アンモニアの除去速度は、下記の式(1)により計算された。
【0032】
式(1):アンモニアの除去速度(%/min)=(A−B)/C
A=加熱前のアンモニア濃度(%)、即ち、加熱前の第1の混合物または第2の混合物におけるアンモニアの重量パーセント濃度
B=加熱後のアンモニア濃度(%)、即ち、加熱後の第1の混合物または第2の混合物におけるアンモニアの重量パーセント濃度
C=加熱時間(min)即ち、アンモニアの除去時間
【0033】
また、前記第2の工程及び第4の工程それぞれにおける加熱は、第1の混合物及び第2の混合物にある二酸化炭素を、0.04(g/L)/min〜0.8(g/L)/minの除去速度で除去することにもなり得る。また、前記第2の工程及び前記第4の工程それぞれにおいて、二酸化炭素の除去は、複数の段階で行うことができ、例えば、前記第2の工程において、第1段階は、0.05±0.01(g/L)/minの除去速度で、1〜2時間二酸化炭素の除去を行い、第2段階は、0.25±0.01(g/L)/minの除去速度で、1〜3時間二酸化炭素の除去を行い、また、前記第4の工程において、第1段階は、0.75±0.01(g/L)/minの除去速度で、1〜2時間二酸化炭素の除去を行い、第2段階は、0.25±0.01(g/L)/minの除去速度で、1〜3時間二酸化炭素の除去を行うことができる。
【0034】
二酸化炭素の除去速度((g/L)/min)は、下記の式(2)により計算された。
【0035】
式(2)二酸化炭素の除去速度((g/L)/min)=(D−E)/F
D=加熱前の二酸化炭素濃度(g/L)、即ち、加熱前の第1の混合物または第2の混合物の1リットル中の二酸化炭素の量
E=加熱後の二酸化炭素濃度(g/L)、即ち、加熱後の第1の混合物または第2の混合物の1リットル中の二酸化炭素の量
F=加熱時間(min)、即ち、二酸化炭素の除去時間
【0036】
アンモニアの除去速度と二酸化炭素の除去速度とのいずれかでも上記の範囲から外れると、アンモニウムイオンと炭酸イオンの比が正常範囲内から外れて、安定した前記第1の中間産物または前記第2の中間産物が得られなくなり、得られた酸化亜鉛コアシェル粒子の構造が安定しにくい。
【0037】
なお、前記第2の工程及び第4の工程それぞれにおける加熱は80℃〜100℃の範囲内で行うことが好ましく、この実施形態において、前記第2及び第4の工程それぞれにおける加熱を85℃〜95℃の範囲内で行う。
【0038】
この実施形態において、前記第1の亜鉛アンモニア錯塩における亜鉛とカルシウム含有材料との重量比は、0.08〜1.14の範囲内にある。
【0039】
この実施形態において、前記第1の亜鉛アンモニア錯塩及び前記第2の亜鉛アンモニア錯塩における亜鉛の合計量とカルシウム含有材料との重量比は、0.34〜1.88の範囲内にある。
【0040】
この実施形態において、温度が340℃〜360℃の範囲内、且つ、時間が50min〜70minの範囲内の焼成で前記第5の工程を行う。
【0041】
この実施形態において、前記第2の工程で得る第1の中間産物は、前記カルシウム含有材料のコアと、コアの表面に形成された炭酸亜鉛フレークと、を含む。炭酸亜鉛フレークは、実質的にコアの表面と平行するように形成されている。
【0042】
この実施形態において、前記第5の工程で得る酸化亜鉛コアシェル粒子は、前記カルシウム含有材料のコアと、コアの表面に形成された酸化亜鉛フレークのシェルと、を含む。また、シェルは、一部の酸化亜鉛フレークが他の一部の酸化亜鉛フレークと平行にならないように構成されている。
【0043】
酸化亜鉛フレークが実質的にコアの表面と平行するようにコアの表面に形成された酸化亜鉛コアシェル粒子(即ち、実質的に本発明の前記第1の工程、前記第2の工程及び前記第5の工程のみを含む従来の製造方法により製造された酸化亜鉛コアシェル粒子)と、前記第1の工程〜前記第5の工程を含む本発明の製造方法により製造された酸化亜鉛コアシェル粒子とを比較すると、本発明の酸化亜鉛コアシェル粒子は、酸化亜鉛フレーク(互いに平行していない部分がある)を明らかにより多く有するので、反射領域が増加し、紫外線に照射される時に、紫外線遮蔽効果が向上する。
【0044】
酸化亜鉛コアシェル粒子の平均粒度は、6μm〜11μmの範囲内にあることが好ましい。
【0045】
本発明の製造方法により製造された酸化亜鉛コアシェル粒子は、より多く紫外線を反射できることが証明されているので、本発明の酸化亜鉛コアシェル粒子は、従来より優れた紫外線遮蔽効果を有する。従って、本発明によれば、本発明の酸化亜鉛コアシェル粒子を含む紫外線遮蔽組成物も提供することが可能となる。
【0046】
紫外線遮蔽組成物は、紫外線吸収材料または紫外線反射材料を更に含むことが好ましい。
【0047】
これから実施例及び比較例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、最も広い解釈の精神および範囲内に含まれる様々な構成として、全ての修飾および均等な構成を包含するものとする。
【0048】
<亜鉛アンモニア錯塩溶液の準備>
金属工業において生じた亜鉛含有廃棄物を、水酸化アンモニウムと二酸化炭素とを含有する水溶液に混合して(混合物の重量比は、亜鉛:アンモニア:二酸化炭素=10g/L:7〜12g/L:7〜9g/L)、亜鉛を溶出し、そして、その混合物に含有する重金属を除去することにより、亜鉛イオン濃度が9.55wt%の亜鉛アンモニア錯塩溶液を得る。該亜鉛アンモニア錯塩は、Zn(NH
3)
n(HCO
3)
2であり、nは整数1〜6である。
【0049】
<実施例1〜5の酸化亜鉛コアシェル粒子の製造>
下記の工程により実施例1〜5の酸化亜鉛コアシェル粒子を製造する。
【0050】
第1の工程:平均粒径が6μmのカルシウム含有材料221g(即ち、大理石の粉)及び第1の亜鉛アンモニア錯塩溶液とする所定量の上記の亜鉛アンモニア錯塩溶液を、4Lのビーカーに添加して混合することにより、第1の混合物を得た。
【0051】
第2の工程:90℃で該第1の混合物を2段階に分けてアンモニア及び二酸化炭素を除去することにより、前記カルシウム含有材料のコアと、コアの表面に形成された炭酸亜鉛フレークとを含む第1の中間産物を得た。第1段階は、アンモニアの除去速度が0.03±0.001%/minで、二酸化炭素の除去速度が0.05±0.01(g/L)/minで、1.5時間行い、第2段階は、アンモニアの除去速度が0.025±0.001%/minで、二酸化炭素の除去速度が0.25±0.01(g/L)/minで、1.5時間行った。
【0052】
第3の工程:該第1の中間産物を、更に第2の亜鉛アンモニア錯塩溶液とする所定量の上記の亜鉛アンモニア錯塩溶液と混合することにより、第2の混合物を得た。
【0053】
第4の工程:90℃で該第2の混合物を2段階に分けてアンモニア及び二酸化炭素を除去することにより、前記カルシウム含有材料のコアと、コアの表面に形成された炭酸亜鉛フレークとを含む第1の中間産物を得た。第1段階は、アンモニアの除去速度が0.085±0.001%/minで、二酸化炭素の除去速度が0.75±0.01(g/L)/minで、1.5時間行い、第2段階は、アンモニアの除去速度が0.025±0.001%/minで、二酸化炭素の除去速度が0.25±0.01(g/L)/minで、1.5時間行った。
【0054】
第5の工程:該第2の中間産物を350℃で60分焼成することにより、炭酸亜鉛を酸化亜鉛に変質させて、酸化亜鉛コアシェル粒子を得た。
【0055】
実施例1〜5それぞれの酸化亜鉛コアシェル粒子は、前記カルシウム含有材料のコアと、コアの表面に形成された酸化亜鉛フレークのシェルと、を含む。
【0056】
各実施例の第1の工程における亜鉛アンモニア錯塩溶液の使用量、第3の工程における亜鉛アンモニア錯塩溶液の使用量、及び、各実施例の第1の工程に使用した亜鉛アンモニア錯塩溶液における亜鉛とカルシウム含有材料との重量比は、表1に示されている。第1の工程及び第3の工程にて使用した亜鉛アンモニア錯塩溶液における亜鉛の合計の量とカルシウム含有材料との重量比はおよそ0.3457である。
【0058】
<実施例6〜10の酸化亜鉛コアシェル粒子の製造>
実施例6〜10の酸化亜鉛コアシェル粒子は、大理石の粉を40.7g使用すること以外、実施例1〜5と同じ条件及び工程で製造された。
【0059】
各実施例の第1の工程に使用した亜鉛アンモニア錯塩溶液における亜鉛とカルシウム含有材料との重量比は、表2に示されている。第1の工程及び第3の工程に使用した亜鉛アンモニア錯塩溶液における亜鉛の合計の量とカルシウム含有材料との重量比はおよそ1.8771ある。
【0061】
<比較例1の酸化亜鉛コアシェル粒子の製造>
下記の工程により比較例1の酸化亜鉛コアシェル粒子を製造する。
【0062】
第1の工程:平均粒径が6μmのカルシウム含有材料221g(即ち、大理石の粉)と亜鉛アンモニア錯塩溶液800g(即ち、上記各実施例の製造において、第1の工程で使用した亜鉛アンモニア錯塩溶液及び第3の工程で使用した亜鉛アンモニア錯塩溶液の合計の量と同じ)とを4Lのビーカーに添加して混合することにより、第1の混合物を得た。
【0063】
第2の工程:90℃で該第1の混合物を4段階に分けてアンモニア及び二酸化炭素を除去した。第1段階は、アンモニアの除去速度が0.03±0.001%/minで、二酸化炭素の除去速度が0.05±0.01(g/L)/minで、1.5時間行い、第2段階は、アンモニアの除去速度が0.025±0.001%/minで、二酸化炭素の除去速度が0.25±0.01(g/L)/minで、1.5時間行い、第3段階は、アンモニアの除去速度が0.03±0.001%/minで、二酸化炭素の除去速度が0.32±0.01(g/L)/minで、1.5時間行い、第4段階は、アンモニアの除去速度が0.025±0.001%/minで、二酸化炭素の除去速度が0.25±0.01(g/L)/minで、1.5時間行った。そして、該第1の混合物をろ過することにより、水を除去し、ろ過処理された該第1の混合物を3Lの水で洗浄した後、オーブンを用いて100℃で4時間乾燥して、前記カルシウム含有材料のコアと、コアの表面に形成された炭酸亜鉛フレークと、を含む中間産物を得た。
【0064】
第3の工程:該中間産物を350℃で60分焼成することにより、炭酸亜鉛を酸化亜鉛に変質させて、前記カルシウム含有材料のコアと、コアの表面に形成された酸化亜鉛フレークのシェルと、を含む酸化亜鉛コアシェル粒子を得た。
【0065】
<酸化亜鉛コアシェル粒子の紫外線遮蔽効果の評価>
A.UV−可視光の吸光度スペクトル
実施例1〜5と比較例1との酸化亜鉛コアシェル粒子それぞれを直径3cmの透明の試料セルに、厚さが1cmになるまで添加した後、UV−可視光分光光度計(HITACHI 3900)で、各実施例及び比較例それぞれを600nm/minの速度で500nmから250nmまでスキャンして、各波長の透過率を測定する。そして、計算ソフトにより吸光度に換算して、吸光度スペクトルの図を得た。
【0066】
図1は本発明の実施例1と比較例1のUV−可視光の吸光度スペクトルを示す図である。
図2は本発明の実施例2と比較例1のUV−可視光の吸光度スペクトルを示す図である。
図3は本発明の実施例3と比較例1のUV−可視光の吸光度スペクトルを示す図である。
図4は本発明の実施例4と比較例1のUV−可視光の吸光度スペクトルを示す図である。
図5は本発明の実施例5と比較例1のUV−可視光の吸光度スペクトルを示す図である。
【0067】
図1〜
図5に示されるように、本発明の実施例1〜5の酸化亜鉛コアシェル粒子は、比較例1の酸化亜鉛コアシェル粒子より、高い紫外線吸光度を有するので、より優れた紫外線遮蔽効果を有する。
B. 紫外線吸光度の増加率の計算
図1〜
図5により、実施例1〜5と比較例1との酸化亜鉛コアシェル粒子それぞれの最大紫外線吸光度は、340nm〜360nmの範囲内にあることが分かった。
【0068】
実施例1〜5と比較例1と比べて紫外線吸光度の増加率(%)は、下記式(3)により計算された。計算の結果は、表3に示されている。
【0069】
式(3)G=[(H−I)/I]×100%
G=紫外線吸光度の増加率(%)
H=実施例の最大紫外線吸光度
I=比較例1の最大紫外線吸光度
【0071】
図1〜
図5に示されるように、実施例1〜5の酸化亜鉛コアシェル粒子は、UVB波に属する波長のすべてにおいて、且つ、UVA波に属する波長のほとんどにおいて、比較例1の酸化亜鉛コアシェル粒子と比べて、吸光度がより高い。即ち、実施例1〜5の酸化亜鉛コアシェル粒子は、比較例1の酸化亜鉛コアシェル粒子より多くの紫外線を反射できる。
【0072】
この結果から見ると、同じ量の亜鉛アンモニア錯塩溶液と同じ量のカルシウム含有材料とを使用する状況において、本発明の酸化亜鉛コアシェル粒子の製造方法(即ち、亜鉛アンモニア錯塩溶液を2つの工程に分けて添加する方法)により製造された酸化亜鉛コアシェル粒子は、従来の製造方法(即ち、1つの工程で全部の亜鉛アンモニア錯塩溶液を添加する方法)により製造された酸化亜鉛コアシェル粒子と比べて、より優れた紫外線遮蔽効果を有する。
【0073】
表3に示されるように、第1の工程における亜鉛アンモニア錯塩溶液と第3の工程における亜鉛アンモニア錯塩溶液との重量比を、1:3〜3:5または5:3〜3:1の範囲内にすると、得られた酸化亜鉛コアシェル粒子は、紫外線吸光度の増加率が10%以上にあるので、更に優れた紫外線遮蔽効果を有する。
【0074】
<酸化亜鉛コアシェル粒子の微細構造の分析>
走査型電子顕微鏡で、実施例1〜3、5及び比較例1の酸化亜鉛コアシェル粒子を観察し、その画像を、
図6〜10に示した。
【0075】
図6は走査型電子顕微鏡で観察された比較例1の微細構造を示す図である。
図7は走査型電子顕微鏡で観察された本発明の実施例1の微細構造を示す図である。
図8は走査型電子顕微鏡で観察された本発明の実施例2の微細構造を示す図である。
図9は走査型電子顕微鏡で観察された本発明の実施例3の微細構造を示す図である。
図10は走査型電子顕微鏡で観察された本発明の実施例5の微細構造を示す図である。
【0076】
図7〜
図10に示されるように、実施例1〜3、5の酸化亜鉛コアシェル粒子は、多数の酸化亜鉛フレークを有する。
図6を
図7〜
図10と比べると、
図7〜
図10に示される酸化亜鉛コアシェル粒子において、コアの表面と平行しない酸化亜鉛フレークの量は、
図6に示される比較例1のより多い。即ち、実施例1〜3、5の酸化亜鉛コアシェル粒子のシェルには、比較例1の酸化亜鉛コアシェル粒子より多くの紫外線反射領域を有するので、上記紫外線遮蔽効果の評価の結果を証明できる。
【0077】
従って、本発明の製造方法により製造された酸化亜鉛コアシェル粒子は、従来の製造方法により製造された酸化亜鉛コアシェル粒子と比べて、より優れた紫外線遮蔽効果を有する。