特許第6689927号(P6689927)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東急建設株式会社の特許一覧

特許6689927梁貫通孔配置判断プログラム及び梁貫通孔配置方法
<>
  • 特許6689927-梁貫通孔配置判断プログラム及び梁貫通孔配置方法 図000002
  • 特許6689927-梁貫通孔配置判断プログラム及び梁貫通孔配置方法 図000003
  • 特許6689927-梁貫通孔配置判断プログラム及び梁貫通孔配置方法 図000004
  • 特許6689927-梁貫通孔配置判断プログラム及び梁貫通孔配置方法 図000005
  • 特許6689927-梁貫通孔配置判断プログラム及び梁貫通孔配置方法 図000006
  • 特許6689927-梁貫通孔配置判断プログラム及び梁貫通孔配置方法 図000007
  • 特許6689927-梁貫通孔配置判断プログラム及び梁貫通孔配置方法 図000008
  • 特許6689927-梁貫通孔配置判断プログラム及び梁貫通孔配置方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6689927
(24)【登録日】2020年4月10日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】梁貫通孔配置判断プログラム及び梁貫通孔配置方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/13 20200101AFI20200421BHJP
   G06F 30/20 20200101ALI20200421BHJP
   E04C 3/08 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
   G06F17/50 680B
   G06F17/50 612Z
   E04C3/08
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-167597(P2018-167597)
(22)【出願日】2018年9月7日
(65)【公開番号】特開2020-42390(P2020-42390A)
(43)【公開日】2020年3月19日
【審査請求日】2018年9月12日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年5月11日に株式会社イエイリ・ラボの「http://ieiri−lab.jp/success/2018/05/tokyu−const−adsk−case.htmlのアドレスのウェブサイト」を通じて発表 [刊行物等] 平成30年7月1日に一般社団法人日本建設業連合会の「https://www.nikkenren.com/kenchiku/bim/pdf/bimstyle_2018.pdfのアドレスのウェブサイト」を通じて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】303056368
【氏名又は名称】東急建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】邊見 一考
【審査官】 田中 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−36591(JP,A)
【文献】 特開2015−162130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/13
E04C 3/08
G06F 30/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁に設けられる貫通孔の情報が入力されて、前記貫通孔の配置の適否をコンピュータに判断させる梁貫通孔配置判断プログラムであって、
前記貫通孔の孔径と、2つの前記貫通孔の間の距離に関する複数の判定基準と、に基づいて、前記貫通孔の配置の適否を判断し、
前記貫通孔の配置の適否の判断結果は、不適格と判断された前記貫通孔の移動方向と移動距離を示唆する情報を含む
ことを特徴とする、梁貫通孔配置判断プログラム。
【請求項2】
前記貫通孔の孔径と、2つの前記貫通孔の間の距離と、の関係に基づいて、前記貫通孔の配置の適否を判断する
ことを特徴とする、請求項1に記載の梁貫通孔配置判断プログラム。
【請求項3】
前記梁の長手方向における、2つの前記貫通孔の中心間の距離が、所定の距離より大きいか否かを判定する第1貫通孔中心間距離判定と、
前記梁の長手方向における、2つの前記貫通孔の中心間の距離が、2つの前記貫通孔の平均孔径又は最大孔径の所定の倍数より大きいか否かを判定する第2貫通孔中心間距離判定と、
前記梁の長手方向における、2つの前記貫通孔の縁間の距離が、所定の距離より大きいか否かを判定する第1貫通孔縁間距離判定と、
前記梁の長手方向における、2つの前記貫通孔の縁間の距離が、2つの前記貫通孔の平均孔径又は最大孔径の所定の倍数より大きいか否かを判定する第2貫通孔縁間距離判定と、を実行する
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の梁貫通孔配置判断プログラム。
【請求項4】
前記梁の長手方向における、前記貫通孔の周囲に配置された補強材の縁間の距離が、所定の距離より大きいか否かを判定する補強材間距離判定を実行する
こと特徴とする、請求項3に記載の梁貫通孔配置判断プログラム。
【請求項5】
前記貫通孔の位置情報は、
前記貫通孔に挿入されたスリーブの長手方向の一方の端面と、前記スリーブの中心軸と、の交点である始点と、
前記スリーブの長手方向の他方の端面と、前記スリーブの中心軸と、の交点である終点と、の間の中間点の位置座標を使用する
ことを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の梁貫通孔配置判断プログラム。
【請求項6】
前記貫通孔の配置の適否の判断結果は、不適格と判断された2つの前記貫通孔を特定する情報を含む
ことを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載の梁貫通孔配置判断プログラム。
【請求項7】
前記貫通孔の配置の適否の判断結果は、複数の前記判定基準に対する判定結果をそれぞれ出力する
ことを特徴とする、請求項1〜の何れか一項に記載の梁貫通孔配置判断プログラム。
【請求項8】
梁に貫通孔を設ける梁貫通孔配置方法であって、
CAD端末から、前記貫通孔に関する中間ファイルを出力する出力ステップと、
前記中間ファイルに基づいて、請求項1〜の何れか一項に記載の梁貫通孔配置判断プログラムを実行して、不適格と判断された前記貫通孔の移動方向と移動距離を示唆する情報を含んだ、前記貫通孔の配置の適否を判断する梁貫通孔配置判断ステップと、
前記梁貫通孔配置判断ステップの結果を考慮して、前記CAD端末のCADデータを修正する修正ステップと、を含む
ことを特徴とする、梁貫通孔配置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梁に設けられる貫通孔の情報が入力されて、貫通孔の配置の適否をコンピュータに判断させる梁貫通孔配置判断プログラム及び、梁貫通孔配置判断プログラムを使用した梁貫通孔配置方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、梁には、建物に設置された設備機器を接続する配管を通す貫通孔が設けられることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、3次元CG空間表示装置上にて3次元CGオブジェクトの干渉状態を判断し、干渉と判断された3次元CGオブジェクトをユーザーが確認しやすい色彩で表示させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−123077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のプログラムは、オブジェクト同士の干渉をチェックするに留まり、梁に設けられる貫通孔の配置の適否を判断することはできない、という問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、梁に設けられる貫通孔の配置の適否を判断することができる梁貫通孔配置判断プログラム及び梁貫通孔配置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の梁貫通孔配置判断プログラムは、梁に設けられる貫通孔の情報が入力されて、前記貫通孔の配置の適否をコンピュータに判断させる梁貫通孔配置判断プログラムであって、前記貫通孔の孔径と、2つの前記貫通孔の間の距離に関する複数の判定基準と、に基づいて、前記貫通孔の配置の適否を判断することを特徴とする。
【0008】
ここで、本発明の梁貫通孔配置判断プログラムは、前記貫通孔の孔径と、2つの前記貫通孔の間の距離と、の関係に基づいて、前記貫通孔の配置の適否を判断してもよい。
【0009】
また、本発明の梁貫通孔配置判断プログラムは、前記梁の長手方向における、2つの前記貫通孔の中心間の距離が、所定の距離より大きいか否かを判定する第1貫通孔中心間距離判定と、前記梁の長手方向における、2つの前記貫通孔の中心間の距離が、2つの前記貫通孔の平均孔径又は最大孔径の所定の倍数より大きいか否かを判定する第2貫通孔中心間距離判定と、前記梁の長手方向における、2つの前記貫通孔の縁間の距離が、所定の距離より大きいか否かを判定する第1貫通孔縁間距離判定と、前記梁の長手方向における、2つの前記貫通孔の縁間の距離が、2つの前記貫通孔の平均孔径又は最大孔径の所定の倍数より大きいか否かを判定する第2貫通孔縁間距離判定と、を実行してもよい。
【0010】
また、本発明の梁貫通孔配置判断プログラムは、前記梁の長手方向における、前記貫通孔の周囲に配置された前記補強材の縁間の距離が、所定の距離より大きいか否かを判定する補強材間距離判定を実行してもよい。
【0011】
また、本発明の梁貫通孔配置判断プログラムでは、前記貫通孔の位置情報は、前記貫通孔に挿入されたスリーブの長手方向の一方の端面と、前記スリーブの中心軸と、の交点である始点と、前記スリーブの長手方向の他方の端面と、前記スリーブの中心軸と、の交点である終点と、の間の中間点の位置座標を使用してもよい。
【0012】
また、本発明の梁貫通孔配置判断プログラムでは、前記貫通孔の配置の適否の判断結果は、不適格と判断された前記貫通孔を特定する情報を含んでもよい。
【0013】
また、本発明の梁貫通孔配置判断プログラムでは、前記貫通孔の配置の適否の判断結果は、不適格と判断された前記貫通孔の移動方向と移動距離を示唆する情報を含んでもよい。
【0014】
また、本発明の梁貫通孔配置判断プログラムでは、前記貫通孔の配置の適否の判断結果は、複数の前記判定基準に対する判定結果をそれぞれ出力してもよい。
【0015】
また、本発明の梁貫通孔配置方法は、梁に貫通孔を設ける梁貫通孔配置方法であって、CAD端末から、前記貫通孔に関する中間ファイルを出力する出力ステップと、前記中間ファイルに基づいて、上記の梁貫通孔配置判断プログラムを実行する梁貫通孔配置判断ステップと、前記梁貫通孔配置判断ステップの結果を考慮して、前記CAD端末のCADデータを修正する修正ステップと、を含んでもよい。
【発明の効果】
【0016】
このように構成された本発明の梁貫通孔配置判断プログラムでは、貫通孔の孔径と、2つの前記貫通孔の間の距離に関する複数の判定基準と、に基づいて、前記貫通孔の配置の適否を判断する。そのため、貫通孔の配置を複数の判定基準に基づいて判断することができる。その結果、梁に対する貫通孔の配置の適否を詳細に判断することができる。
【0017】
また、本発明の梁貫通孔配置判断プログラムでは、前記貫通孔の孔径と、2つの前記貫通孔の間の距離と、の関係に基づいて、前記貫通孔の配置の適否を判断することで、貫通孔の孔径に対する2つの貫通孔の間の距離の関係を考慮することができる。そのため、2つの貫通孔の間の距離だけを考慮する場合と比較して、梁に対する貫通孔の配置の適否を、より詳細に判断することができる。
【0018】
また、本発明の梁貫通孔配置判断プログラムでは、第1貫通孔中心間距離判定と、第2貫通孔中心間距離判定と、第1貫通孔縁間距離判定と、第2貫通孔縁間距離判定と、を実行することで、梁の長手方向における2つの貫通孔の中心間の距離と、梁の長手方向における貫通孔の孔径に対する2つの貫通孔の中心間の距離と、梁の長手方向における2つの貫通孔の縁間の距離と、梁の長手方向における貫通孔の孔径に対する2つの貫通孔の縁間の距離と、を考慮することができる。そのため、梁に対する貫通孔の配置の適否をより詳細に判断することができる。
【0019】
また、本発明の梁貫通孔配置判断プログラムでは、前記梁の長手方向における、前記貫通孔の周囲に配置された前記補強材の縁間の距離が、所定の距離より大きいか否かを判定する補強材間距離判定を実行することで、貫通孔の周囲に設けられた補強材を考慮して、貫通孔の配置の適否を判断することができる。そのため、2つの貫通孔の間の距離を、必要以上に長くしないようにすることができる。
【0020】
また、本発明の梁貫通孔配置判断プログラムでは、前記貫通孔の位置情報は、前記貫通孔に挿入されたスリーブの長手方向の一方の端面と、前記スリーブの中心軸と、の交点である始点と、前記スリーブの長手方向の他方の端面と、前記スリーブの中心軸と、の交点である終点と、の間の中間点の位置座標を使用することで、貫通孔の位置を正確かつ容易に取得することができる。
【0021】
また、本発明の梁貫通孔配置判断プログラムでは、前記貫通孔の配置の適否の判断結果は、不適格と判断された2つの前記貫通孔を特定する情報を含むことで、不適格な貫通孔の位置を特定することができる。
【0022】
また、本発明の梁貫通孔配置判断プログラムでは、前記貫通孔の配置の適否の判断結果は、不適格と判断された前記貫通孔の移動方向と移動距離を示唆する情報を含むことで、貫通孔を移動させなければならない量と、貫通孔を移動させなければならない方向を知ることができる。そのため、貫通孔の配置を検討する際の修正方針を知ることができる。
【0023】
また、本発明の梁貫通孔配置判断プログラムでは、前記貫通孔の配置の適否の判断結果は、複数の前記判定基準に対する判定結果をそれぞれ出力することで、何れの判定基準に対して、NG判定となっているかを知ることができる。そのため、貫通孔の配置の検討を容易にすることができる。
【0024】
また、本発明の梁貫通孔配置方法では、梁に貫通孔を設ける梁貫通孔配置方法であって、CAD端末から、前記貫通孔に関する中間ファイルを出力する出力ステップと、前記中間ファイルに基づいて、上記の梁貫通孔配置判断プログラムを実行する梁貫通孔配置判断ステップと、前記梁貫通孔配置判断ステップの結果を考慮して、前記CAD端末のCADデータを修正する修正ステップと、を含むことで、梁貫通孔配置判断プログラムの判断結果を考慮して、CAD端末のCADデータを修正することができる。そのため、梁に設けられた貫通孔の設計を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施例1の梁貫通孔配置判断プログラムを実行する鉄骨梁を示す断面図である。
図2】実施例1の梁貫通孔配置判断プログラムを実行する鉄骨梁を示す側面図である。
図3】実施例1の梁貫通孔配置判断プログラムが実行されるシステムの構成を示すブロック図である。
図4】実施例1の入力部に入力されるCSVデータを示す図である。
図5】実施例1の複数の判定基準を示す表である。
図6】実施例1の梁貫通孔配置判断処理を説明するフローチャートである。
図7】実施例1の貫通孔間距離判定処理を説明するフローチャートである。
図8】実施例1の出力情報の出力例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明による梁貫通孔配置判断プログラム及び梁貫通孔配置方法を実現する実施形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0027】
実施例1の梁貫通孔配置判断プログラム及び梁貫通孔配置方法は、3次元CADを使用して、3次元座標上に、鉄骨構造の建物の鉄骨梁に貫通孔を設計する際に使用される。
【0028】
[鉄骨梁の構成]
図1は、実施例1の梁貫通孔配置判断プログラムを実行する鉄骨梁を示す断面図である。図2は、実施例1の梁貫通孔配置判断プログラムを実行する鉄骨梁を示す側面図である。以下、図1及び図2に基づいて、実施例1の梁貫通孔配置判断プログラムを実行する鉄骨梁の構成を説明する。
【0029】
鉄骨梁50は、図1及び図2に示すように、ウェブ部51と、フランジ部52とからH型状に形成されるH型鋼である。鉄骨梁50は、ウェブ部51に設けられた貫通孔53と、貫通孔53の周囲を補強する補強材54と、を備える。
【0030】
貫通孔53は、鉄骨梁50の長手方向に垂直な方向に貫通する円形の孔として形成される。なお、貫通孔53は、鉄骨梁50の長手方向に垂直な方向に対して傾斜した方向に貫通する円形の孔として形成されてもよい。
【0031】
補強材54は、鋼材でフランジを有するドーナツ型に形成される。補強材54は、ウェブ部51の一方の面に、貫通孔53を囲むように設けられて、鉄骨梁50を補強する。なお、補強材54は、矩形又は多角形の枠状に形成されてもよい。補強材54のサイズは、貫通孔53のサイズに応じて予め定められており、これらの情報は、後述する判定プログラムデータベース21に記憶されている。
【0032】
3次元CADでは、貫通孔53は、鉄骨梁50から架空のスリーブ60を引き算することで、形成される。そのため、3次元CADでは、スリーブ60の位置が貫通孔53の位置となる。
【0033】
スリーブ60は、円柱状に形成され、貫通孔53に挿入されて配置される。スリーブ60の長手方向の長さは、フランジ部52の幅と、略同じ長さとする。スリーブ60の中心軸Cがスリーブ60の長手方向の一方の端面と交わる点を始点Psとし、他方の端面と交わる点を終点Peとする。
【0034】
始点Psと終点Peとの中間の中間点を貫通孔53の中心Pcとする。スリーブ60は、鉄骨梁50の長手方向に垂直な方向から傾斜した姿勢で、鉄骨梁50から引き算されて、貫通孔53が形成されることがある。このような場合、始点Psと終点Peとの中間の中間点を貫通孔53の中心Pcとすることで、貫通孔53の位置を正確に特定することができる。
【0035】
貫通孔53は、鉄骨梁50のウェブ部51に複数形成される。図2に示すように、貫通孔53のうち、一の貫通孔53を第1貫通孔53aとし、他の一の貫通孔53を第2貫通孔53bとする。
【0036】
第1貫通孔53aは、スリーブ60としての第1スリーブ60aによって形成される。第1貫通孔53aの周囲には、鉄骨梁50を補強する第1補強材54aが設けられる。第2貫通孔53bは、スリーブ60としての第2スリーブ60bによって形成される。第2貫通孔53bの周囲には、鉄骨梁50を補強する第2補強材54bが設けられる。
【0037】
例えば、第1貫通孔53aは、孔径Daを有する。第2貫通孔53bは、孔径Daより小さい孔径Dbを有する。第1貫通孔53aの中心Pcaと、第2貫通孔53bの中心Pcbとは、鉄骨梁50の長手方向において、距離L1を有する。
【0038】
第1貫通孔53aの縁と、第2貫通孔53bの縁とは、鉄骨梁50の長手方向において、距離L2を有する。第1補強材54aの縁と、第2補強材54bとの縁とは、鉄骨梁50の長手方向において、距離L3を有する。
【0039】
[梁貫通孔配置判断プログラムが実行されるシステムの構成]
図3は、実施例1の梁貫通孔配置判断プログラムが実行されるシステムの構成を示すブロック図である。図4は、実施例1の入力部に入力されるCSVデータを示す図である。図5は、実施例1の複数の判定基準を示す表である。以下、図3図5に基づいて、実施例1の梁貫通孔配置判断プログラムが実行されるシステムの構成を説明する。
【0040】
梁貫通孔配置判断プログラムが実行されるシステムは、図3に示すように、梁貫通孔配置判断プログラムを実行するコンピュータ1と、コンピュータ1に入力するCSVデータ6を出力するCAD端末5と、コンピュータ1が実行した梁貫通孔配置判断プログラムの判断結果を出力する出力部30と、を備える。
【0041】
CAD端末5には、3次元CADのソフトウェアがインストールされている。作業者は、CAD端末5を使用して、建物の3次元モデルを、3次元座標上にモデリングできるようになっている。また、作業者は、CAD端末5を使用して、鉄骨梁50に設ける貫通孔53の配置位置をモデリングできるようになっている。
【0042】
CAD端末5は、モデリングされた鉄骨梁50に形成される貫通孔53の情報を、互換性のある中間フォーマットとしてのCSVデータ6として、出力可能となっている。
【0043】
CSVデータ6は、図4に示すように、CSVデータ6が出力された日付データTと、CSVデータ6のバージョン情報Vと、建物の原点座標Pと、貫通孔53の孔の形状Mと、貫通孔53に設けられたシリアル番号Nと、貫通孔53の孔径Dと、スリーブ60の始点Psの位置座標と、スリーブ60の終点Peの位置座標等の情報を有する。
【0044】
コンピュータ1は、図3に示すように、例えばパーソナルコンピュータであって、CAD端末5が出力したCSVデータ6が入力される入力部2と、梁貫通孔配置判断プログラムを実行する制御部10と、梁貫通孔配置判断プログラムやデータが記憶される記憶部20と、を備える。
【0045】
入力部2は、例えば、CSVデータ6が記録されたUSBデバイスを挿入するUSBポートである。
【0046】
制御部10は、複数の判定部11〜17を備え、CSVデータ6に基づいて、梁貫通孔配置判断プログラムを実行することで、梁貫通孔配置判断処理を実行する。また、制御部10は、CSVデータ6から、判定部11〜17に使用する情報を算出する。制御部10は、貫通孔判定部11と、第1貫通孔中心間距離判定部12と、第2貫通孔中心間距離判定部13と、第1貫通孔縁間距離判定部14と、第2貫通孔縁間距離判定部15と、補強材間距離判定部16と、修正方針判定部17と、を備える。なお、制御部10は、コンピュータ1の全体の制御を司る。
【0047】
貫通孔判定部11は、図5の番号1の判定項目を判定する。すなわち、貫通孔判定部11は、第1貫通孔53aの孔径Daが、所定の範囲(例えば、100〜600[mm])内にあるか否かを判定する。
【0048】
第1貫通孔中心間距離判定部12は、図5の番号2の判定項目を判定する。すなわち、第1貫通孔中心間距離判定部12は、鉄骨梁50の長手方向における、第1貫通孔53aの中心Pcaと、第2貫通孔53bの中心Pcbと、の間の距離L1が、所定の距離(例えば、250[mm])以上であるか否かを判定する。
【0049】
第2貫通孔中心間距離判定部13は、図5の番号3の判定項目を判定する。すなわち、第2貫通孔中心間距離判定部13は、鉄骨梁50の長手方向における、第1貫通孔53aの中心Pcaと、第2貫通孔53bの中心Pcbと、の間の距離L1が、第1貫通孔53aの孔径Daと、第2貫通孔53bの孔径Dbと、の平均孔径の所定の倍数(例えば、3倍)以上であるか否かを判定する。なお、第2貫通孔中心間距離判定部13は、鉄骨梁50の長手方向における、第1貫通孔53aの中心Pcaと、第2貫通孔53bの中心Pcbと、の間の距離L1が、第1貫通孔53aの孔径Daと、第2貫通孔53bの孔径Dbとのうち、大きい方の孔径(最大孔径)の所定の倍数以上であるか否かを判定してもよい。
【0050】
第1貫通孔縁間距離判定部14は、図5の番号4の判定項目を判定する。すなわち、第1貫通孔縁間距離判定部14は、鉄骨梁50の長手方向における、第1貫通孔53aの縁と、第2貫通孔53bの縁と、の間の距離L2が、所定の距離(例えば、198[mm])以上であるか否かを判定する。
【0051】
第2貫通孔縁間距離判定部15は、図5の番号5の判定項目を判定する。すなわち、第2貫通孔縁間距離判定部15は、鉄骨梁50の長手方向における、第1貫通孔53aの縁と、第2貫通孔53bの縁と、の間の距離L2が、第1貫通孔53aの孔径Daと、第2貫通孔53bの孔径Dbとのうち、大きい方の孔径(最大孔径)の所定の倍数(例えば、1倍)以上であるか否かを判定する。なお、第2貫通孔縁間距離判定部15は、鉄骨梁50の長手方向における、第1貫通孔53aの縁と、第2貫通孔53bの縁と、の間の距離L2が、第1貫通孔53aの孔径Daと、第2貫通孔53bの孔径Dbとの平均孔径の所定の倍数以上であるか否かを判定してもよい。
【0052】
補強材間距離判定部16は、図5の番号6の判定項目を判定する。すなわち、補強材間距離判定部16は、鉄骨梁50の長手方向における、第1補強材54aの縁と、第2補強材54bの縁と、の間の距離L3が、所定の値(例えば、20[mm])以上であるか否かを判定する。
【0053】
修正方針判定部17は、判定部11〜16での判定結果に基づいて、修正方針を判定する。修正方針は、3次元座標上で、2つの貫通孔53の間の不足している不足距離の情報と、その方向の情報と、を含む。
【0054】
記憶部20は、梁貫通孔配置判断プログラムが記憶された判定プログラムデータベース21と、判定部11〜17の判定結果が記憶される判定結果記憶部22と、入力部2に入力された情報が記憶される入力情報記憶部23と、を備える。
【0055】
判定プログラムデータベース21には、各判定部11〜17が判定に使用する梁貫通孔配置判断プログラムが記憶されている。また、判定プログラムデータベース21には、貫通孔53のサイズに応じた補強材54のサイズが記憶されている。
【0056】
梁貫通孔配置判断プログラムは、作業者が適宜更新可能となっている。この梁貫通孔配置判断プログラムには、使用期間が設定できるようになっている。
【0057】
判定結果記憶部22に記憶された情報は、制御部10によって、出力部30に送信される。出力部30は、記憶部31と、記憶部31に接続された表示部32と、印刷装置33と、USBポート34と、を備える。
【0058】
記憶部31は、判定結果記憶部22に格納された情報が記憶される。表示部32は、例えばモニタであり、記憶部31に記憶された情報を表示する。印刷装置33は、記憶部31に記憶された情報を用紙に印刷する。USBポート34は、判定結果記憶部22に記憶された情報をCSVデータ6Aとして、USBデバイスに出力する。
【0059】
このように構成されたシステムでは、まず、出力ステップにおいて、CAD端末5から、貫通孔53に関するCSVデータ6を出力する。次に、梁貫通孔配置判断ステップにおいて、CSVデータ6に基づいて梁貫通孔配置判断プログラムを実行する。次に、修正ステップにおいて、梁貫通孔配置判断ステップの結果の情報に基づいて、CAD端末5で貫通孔53の配置を修正する。
【0060】
これにより、作業者は、梁貫通孔配置判断プログラムの実行された結果を考慮して、CAD端末5を操作し、鉄骨梁50に設けられる貫通孔53の配置場所を検討することができる。
【0061】
[梁貫通孔配置判断処理]
図6は、実施例1の梁貫通孔配置判断処理を説明するフローチャートである。以下、図6に基づいて、実施例1の梁貫通孔配置判断処理について説明する。
【0062】
図6に示すように、梁貫通孔配置判断処理を開始すると、制御部10は、梁貫通孔配置判断プログラムが使用期間内であるか否かを判断する(ステップS101)。梁貫通孔配置判断プログラムが使用期間内でないと判断した場合(ステップS101でNO)、制御部10は、梁貫通孔配置判断プログラムの更新を要求し(ステップS102)、ステップS101に戻る。なお、この梁貫通孔配置判断プログラムの更新の要求は、コンピュータ1が備えるモニタに表示することができる。一方、梁貫通孔配置判断プログラムが使用期間内であると判断した場合(ステップS101でYES)、制御部10は、入力情報記憶部23から1つのCSVデータ6を取得する(ステップS103)。
【0063】
次いで、制御部10は、基準の貫通孔53として、第1貫通孔53aの情報を取得する(ステップS104)。ここで、第1貫通孔53aの情報には、第1貫通孔53aの中心Pcaの位置座標と、第1貫通孔53aの孔径Daの情報が含まれる。第1貫通孔53aの中心Pcaの位置座標は、第1スリーブ60aの始点Psの位置座標と終点Peの位置座標とから算出される。
【0064】
次いで、貫通孔判定部11が、基準の貫通孔53としての第1貫通孔53aの孔径Daが、所定の範囲(例えば、100〜600[mm])内であるか否かを判断する(ステップS105)。
【0065】
基準の貫通孔53としての第1貫通孔53aの孔径Daが、所定の範囲内でないと判断した場合(ステップS105でNO)、制御部10は、第1貫通孔53aの孔径Daが所定の範囲外であるという情報を判定結果記憶部22に記憶して(ステップS106)、ステップS107に進む。一方、基準の貫通孔53としての第1貫通孔53aの孔径Daが、所定の範囲内であると判断した場合(ステップS105でYES)、ステップS107に進む。なお、ステップ106では、制御部10は、所定の範囲から外れた外れ量を判定結果記憶部22に記憶してもよい。
【0066】
次いで、制御部10は、比較対象の貫通孔53として、第2貫通孔53bの情報を取得する(ステップS107)。ここで、第2貫通孔53bの情報には、第2貫通孔53bの中心Pcbの位置座標と、第2貫通孔53bの孔径Dbの情報が含まれる。第2貫通孔53bの中心Pcbの位置座標は、第2スリーブ60bの始点Psの位置座標と終点Peの位置座標とから算出される。
【0067】
次いで、制御部10は、第1貫通孔53aと、第2貫通孔53bとが、同一のフロアにあるか否かを判定する(ステップS108)。ここで、第1貫通孔53aと、第2貫通孔53bとが、同一のフロアにあるか否かは、第1貫通孔53aの中心PcaのZ座標と、第2貫通孔53bの中心PcbのZ座標とが、所定の値(例えば、2000[mm])以上離隔しているか否かを判断することで判断される。
【0068】
第1貫通孔53aの中心PcaのZ座標と、第2貫通孔53bの中心PcbのZ座標との離隔が、2000[mm]以上である場合、第1貫通孔53aと、第2貫通孔53bとは、同一フロアにないと判断する。一方、第1貫通孔53aの中心PcaのZ座標と、第2貫通孔53bの中心PcbのZ座標との離隔が、2000[mm]未満の場合、第1貫通孔53aと、第2貫通孔53bとは、同一フロアにあると判断する。
【0069】
第1貫通孔53aと、第2貫通孔53bとが、同一のフロアにないと判断した場合(ステップS108でNO)、ステップS107に戻る。一方、第1貫通孔53aと、第2貫通孔53bとが、同一のフロアにあると判断した場合(ステップS108でYES)、ステップS109に進む。
【0070】
次いで、制御部10は、貫通孔間距離判定処理を実行する(ステップS109)。なお、貫通孔間距離判定処理については、後述する。
【0071】
次いで、制御部10は、比較対象の貫通孔53を変更するか否かを判断する(ステップS110)。ここで、制御部10は、基準の貫通孔53としての第1貫通孔53aと同一のフロアに、比較対象の貫通孔53として選択されていない貫通孔53がある場合、比較対象の貫通孔53を変更する。一方、制御部10は、基準の貫通孔53としての第1貫通孔53aと同一のフロアに、比較対象の貫通孔53として選択されていない貫通孔53がない場合、比較対象の貫通孔53を変更しない。
【0072】
比較対象の貫通孔53を変更する場合(ステップS110でYES)、ステップS107に戻る。一方、比較対象の貫通孔53を変更しない場合(ステップS110でNO)、ステップS111に進む。
【0073】
次いで、制御部10は、基準の貫通孔53を変更するか否かを判定する(ステップS111)。ここで、制御部10は、基準の貫通孔53としての第1貫通孔53aと同一のフロアに、基準の貫通孔53として選択されていない貫通孔53がある場合、基準の貫通孔53を変更する。一方、制御部10は、基準の貫通孔53としての第1貫通孔53aと同一のフロアに、基準の貫通孔53として選択されていない貫通孔53がない場合、比較対象の貫通孔53を変更しない。
【0074】
基準の貫通孔53を変更する場合(ステップS111でYES)、ステップS105に戻る。一方、基準の貫通孔53を変更しない場合(ステップS111でNO)、梁貫通孔配置判断処理を終了する。
【0075】
[貫通孔間距離判定処理]
図7は、実施例1の貫通孔間距離判定処理を説明するフローチャートである。以下、図7に基づいて、実施例1の貫通孔間距離判定処理について説明する。
【0076】
図7に示すように、貫通孔間距離判定処理を開始すると、第1貫通孔中心間距離判定部12は、鉄骨梁50の長手方向における、基準の貫通孔53と比較対象の貫通孔53の中心間の距離が所定の値(例えば、250[mm])以上であるか否かを判定する(ステップS201)。
【0077】
すなわち、第1貫通孔中心間距離判定部12は、鉄骨梁50の長手方向における、基準の貫通孔53とされた第1貫通孔53aの中心Pcaと、比較対象の貫通孔53とされた第2貫通孔53bの中心Pcbと、の間の距離L1が、所定の値(例えば、250[mm])以上であるか否かを判定する。
【0078】
鉄骨梁50の長手方向における、基準の貫通孔53と比較対象の貫通孔53の中心間の距離が所定の値以上でないと判定した場合(ステップS201でNO)、制御部10は、第1貫通孔中心間距離判定部12による判定結果がNG判定であることを判定結果記憶部22に記憶し(ステップS202)、ステップS203に進む。
【0079】
一方、鉄骨梁50の長手方向における、基準の貫通孔53と比較対象の貫通孔53の中心間の距離が所定の値以上であると判定した場合(ステップS201でYES)、ステップS203に進む。
【0080】
次いで、第2貫通孔中心間距離判定部13は、鉄骨梁50の長手方向における、基準の貫通孔53と比較対象の貫通孔53の中心間の距離が、平均孔径の所定の倍数(例えば、3倍)以上であるか否かを判定する(ステップS203)。なお、ステップS203では、第2貫通孔中心間距離判定部13は、鉄骨梁50の長手方向における、基準の貫通孔53と比較対象の貫通孔53の中心間の距離が、最大孔径の所定の倍数以上であるか否かを判定してもよい。
【0081】
すなわち、第2貫通孔中心間距離判定部13は、鉄骨梁50の長手方向における、基準の貫通孔53とされた第1貫通孔53aの中心Pcaと、比較対象の貫通孔53とされた第2貫通孔53bの中心Pcbと、の間の距離L1が、第1貫通孔53aの孔径Daと、第2貫通孔53bの孔径Dbと、の平均孔径の所定の倍数以上であるか否かを判定する。
【0082】
鉄骨梁50の長手方向における、基準の貫通孔53と比較対象の貫通孔53の中心間の距離が、平均孔径の所定の倍数以上でないと判定した場合(ステップS203でNO)、制御部10は、第2貫通孔中心間距離判定部13による判定結果がNG判定であることを判定結果記憶部22に記憶し(ステップS204)、ステップS205に進む。
【0083】
一方、鉄骨梁50の長手方向における、基準の貫通孔53と比較対象の貫通孔53の中心間の距離が、平均孔径の所定の倍数以上であると判定した場合(ステップS203でYES)、ステップS205に進む。
【0084】
次いで、第1貫通孔縁間距離判定部14は、鉄骨梁50の長手方向における、基準の貫通孔53と比較対象の貫通孔53の縁間の距離が、所定の値(例えば、198[mm])以上であるか否かを判定する(ステップS205)。
【0085】
すなわち、第1貫通孔縁間距離判定部14は、鉄骨梁50の長手方向における、第1貫通孔53aの縁と、第2貫通孔53bの縁と、の間の距離L2が、所定の距離以上であるか否かを判定する。
【0086】
鉄骨梁50の長手方向における、基準の貫通孔53と比較対象の貫通孔53の縁間の距離が、所定の値以上でないと判定した場合(ステップS205でNO)、制御部10は、第1貫通孔縁間距離判定部14による判定結果がNG判定であることを判定結果記憶部22に記憶し(ステップS206)、ステップS207に進む。
【0087】
一方、鉄骨梁50の長手方向における、基準の貫通孔53と比較対象の貫通孔53の縁間の距離が、所定の値以上であると判定した場合(ステップS205でYES)、ステップS207に進む。
【0088】
次いで、第2貫通孔縁間距離判定部15は、鉄骨梁50の長手方向における、基準の貫通孔53と比較対象の貫通孔53の縁間の距離が、最大孔径の所定の倍数(例えば、1倍)以上であるか否かを判定する(ステップS207)。なお、ステップS207において、第2貫通孔縁間距離判定部15は、鉄骨梁50の長手方向における、基準の貫通孔53と比較対象の貫通孔53の縁間の距離が、平均孔径の所定の倍数以上であるか否かを判定してもよい。
【0089】
すなわち、第2貫通孔縁間距離判定部15は、鉄骨梁50の長手方向における、第1貫通孔53aの縁と、第2貫通孔53bの縁と、の間の距離L2が、所定の距離以上であるか否かを判定する。
【0090】
鉄骨梁50の長手方向における、基準の貫通孔53と比較対象の貫通孔53の縁間の距離が、最大孔径の所定の倍数以上でないと判定した場合(ステップS207でNO)、制御部10は、第2貫通孔縁間距離判定部15による判定結果がNG判定であることを判定結果記憶部22に記憶し(ステップS208)、ステップS209に進む。
【0091】
一方、鉄骨梁50の長手方向における、基準の貫通孔53と比較対象の貫通孔53の縁間の距離が、最大孔径の所定の倍数以上であると判定した場合(ステップS207でYES)、ステップS209に進む。
【0092】
次いで、補強材間距離判定部16は、鉄骨梁50の長手方向における、補強材54の縁間の距離が、所定の値(例えば、20[mm])以上であるか否かを判定する(ステップS209)。すなわち、補強材間距離判定部16は、鉄骨梁50の長手方向における、第1補強材54aの縁と、第2補強材54bの縁と、の間の距離L3が、所定の値以上であるか否かを判定する。
【0093】
鉄骨梁50の長手方向における、補強材54の縁間の距離が、所定の値以上でないと判定した場合(ステップS209でNO)、制御部10は、補強材間距離判定部16による判定結果がNG判定であることを判定結果記憶部22に記憶し(ステップS210)、ステップS211に進む。
【0094】
鉄骨梁50の長手方向における、補強材54の縁間の距離が、所定の値以上であると判定した場合(ステップS209でYES)、ステップS211に進む。
【0095】
次いで、制御部10は、NG判定となった基準の貫通孔53と比較対象の貫通孔53の孔径Dと、その中心Pcの位置座標を、判定結果記憶部22に記憶する(ステップS211)。
【0096】
次いで、修正方針判定部17は、2つの貫通孔53の間の不足している不足距離の情報と、その方向の情報とを判定結果記憶部22に記憶する(ステップS212)。ここで、不足距離の情報と、その方向の情報とは、2つの貫通孔53の中心Pcの位置座標に基づいて算出される。
【0097】
次いで、制御部10は、例えば鉛直方向の貫通孔53の中心間の距離を、判定結果記憶部22に記憶し(ステップS213)、メインフローに戻る。なお、ステップS213では、制御部10は、鉛直方向の貫通孔53の中心間の距離が2つの貫通孔の平均孔径又は最大孔径が所定の倍数より大きいか否かの情報を、判定結果記憶部22に記憶してもよい。
【0098】
[出力情報]
図8は、実施例1の出力情報の出力例を示す図である。以下、図8に基づいて、実施例1の梁貫通孔配置判断処理の処理結果の出力情報について説明する。
【0099】
梁貫通孔配置判断処理の処理結果の出力情報としては、各判定部11〜16の判定項目の情報E1と、各判定部11〜16が判定した判定内容の模式図の情報E2と、各判定部11〜16の判定結果の情報E3と、各判定部11〜16の判定結果がNG判定であった基準の貫通孔53を特定する情報E4と、各判定部11〜16の判定結果がNG判定であった比較対象の貫通孔53を特定する情報E5と、修正方針の情報E6と、を備える。
【0100】
なお、出力情報には、梁貫通孔配置判断プログラムが実行された日付(チェック日付)の情報を含めてもよい。また、出力情報には、貫通孔53の孔径の判定基準からの外れ量の情報を含めてもよい。また、出力情報には、鉛直方向の貫通孔53の中心間の距離の情報を含めてもよい。また、出力情報には、使用した補強材54の外径の情報を含めてもよい。また、出力情報には、入力したファイル名の情報を含めていもよい。また、出力情報には、チェックしたスリーブ60の数と、エラーとなったスリーブ60の数の情報を含めてもよい。出力情報は、印刷装置33から用紙70に印刷される。
【0101】
次に、実施例1の梁貫通孔配置判断プログラム及び梁貫通孔配置方法の作用を説明する。実施例1の梁貫通孔配置判断プログラムは、梁(鉄骨梁50)に設けられる貫通孔53の情報が入力されて、貫通孔53の配置の適否をコンピュータ1に判断させる梁貫通孔配置判断プログラムである。この梁貫通孔配置判断プログラムは、貫通孔53の孔径と、2つの貫通孔53の間の距離に関する複数の判定基準に基づいて、貫通孔53の配置の適否を判断する(図7)。
【0102】
これにより、貫通孔53の配置を複数の判定基準に基づいて判断することができる。そのため、複数の判断基準について個別に確認する場合と比較して、梁(鉄骨梁50)に対する貫通孔53の配置の適否を容易かつ詳細に判断することができる。その結果、貫通孔53を設けた梁(鉄骨梁50)を安全性の高いものとすることができる。
【0103】
実施例1の梁貫通孔配置判断プログラムは、貫通孔53の孔径と、2つの貫通孔53の間の距離と、の関係に基づいて、貫通孔53の配置の適否を判断する(ステップS203,ステップS207)。
【0104】
これにより、貫通孔53の孔径に対する2つの貫通孔53の間の距離の関係を考慮することができる。そのため、2つの貫通孔53の間の距離だけを考慮する場合と比較して、梁(鉄骨梁50)に対する貫通孔53の配置の適否を、より詳細に判断することができる。その結果、貫通孔53を設けた梁(鉄骨梁50)を安全性の高いものとすることができる。
【0105】
実施例1の梁貫通孔配置判断プログラムは、梁(鉄骨梁50)の長手方向における2つの貫通孔53の中心間の距離が、所定の距離より大きいか否かを判定する第1貫通孔中心間距離判定と、梁(鉄骨梁50)の長手方向における2つの貫通孔53の中心間の距離が、2つの貫通孔53の平均孔径又は最大孔径の所定の倍数より大きいか否かを判定する第2貫通孔中心間距離判定と、梁(鉄骨梁50)の長手方向における2つの貫通孔53の縁間の距離が、所定の距離より大きいか否かを判定する第1貫通孔縁間距離判定と、梁(鉄骨梁50)の長手方向における2つの貫通孔53の縁間の距離が、2つの貫通孔53の平均孔径又は最大孔径の所定の倍数より大きいか否かを判定する第2貫通孔縁間距離判定と、を実行する(ステップS201,ステップS203,ステップS205,ステップS207)。
【0106】
これにより、貫通孔53の孔径と、梁(鉄骨梁50)の長手方向における2つの貫通孔53の中心間の距離L1と、梁(鉄骨梁50)の長手方向における貫通孔53の孔径に対する2つの貫通孔53の中心間の距離L1と、梁(鉄骨梁50)の長手方向における2つの貫通孔53の縁間の距離L2と、梁(鉄骨梁50)の長手方向における貫通孔53の孔径に対する2つの貫通孔53の縁間の距離L2と、を考慮することができる。そのため、梁(鉄骨梁50)に対する貫通孔53の配置の適否をより詳細に判断することができる。その結果、貫通孔53を設けた梁(鉄骨梁50)を安全性の高いものとすることができる。
【0107】
実施例1の梁貫通孔配置判断プログラムは、梁(鉄骨梁50)の長手方向における、貫通孔53の周囲に配置された補強材54の縁間の距離L3が、所定の距離より大きいか否かを判定する補強材間距離判定を実行する(ステップS209)。
【0108】
これにより、貫通孔53の周囲に設けられた補強材54を考慮して、貫通孔53の配置の適否を判断することができる。そのため、2つの貫通孔53の間の距離を、必要以上に長くしないようにすることができる。
【0109】
ところで、スリーブ60は、ウェブ部51の面に対して直交方向に設けられるだけでなく、ウェブ部51の面に対して傾斜した方向に設けられる。このような場合、スリーブ60の始点Psと終点Peを、貫通孔53の位置情報とすると、貫通孔53の位置を正確に特定することが困難となる。
【0110】
実施例1の梁貫通孔配置判断プログラムは、貫通孔53の位置情報は、貫通孔53に挿入されたスリーブ60の長手方向の一方の端面と、スリーブ60の中心軸Cと、の交点である始点Psと、スリーブ60の長手方向の他方の端面と、スリーブ60の中心軸Cと、の交点である終点Peと、の間の中間点の位置座標を使用する(図1)。
【0111】
これにより、スリーブ60の始点Psと終点Peの中間点の位置座標を、貫通孔53の位置座標とすることができる。そのため、貫通孔53の位置を正確かつ簡易に取得することができる。
【0112】
実施例1の梁貫通孔配置判断プログラムは、貫通孔53の配置の適否の判断結果は、不適格と判断された2つの貫通孔53を特定する情報を含む(図3)。
【0113】
これにより、例えば、不適格と判断された2つの貫通孔53を特定する情報として、3次元座標空間の位置座標とした場合、異なるCAD間においても、貫通孔53の位置を特定することができる。そのため、業者間(例えば、鉄骨業者と設備業者と間)で、異なる専用のCADを使用していた場合に、ファイル形式が異なることで、不適格な貫通孔53の位置を特定することができないといった事態を防止することができる。
【0114】
実施例1の梁貫通孔配置判断プログラムは、貫通孔53の配置の適否の判断結果は、不適格と判断された貫通孔53の移動方向と移動距離を示唆する情報を含む(図8)。
【0115】
これにより、貫通孔53を移動させなければならない量と、貫通孔53を移動させなければならない方向を知ることができる。そのため、貫通孔53の配置を検討する際の修正方針を知ることができる。
【0116】
実施例1の梁貫通孔配置判断プログラムは、貫通孔53の配置の適否の判断結果は、複数の判定基準に対する判定結果をそれぞれ出力する(図8)。
【0117】
これにより、何れの判定基準に対して、NG判定となっているかを知ることができる。そのため、貫通孔53の配置の検討を容易にすることができる。
【0118】
実施例1の梁貫通孔配置方法は、梁(鉄骨梁50)に貫通孔53を設ける梁貫通孔配置方法であって、CAD端末5から、貫通孔53に関する中間ファイル(CSVデータ6)を出力する出力ステップと、中間ファイル(CSVデータ6)を、請求項1〜8の何れか一項に記載の梁貫通孔配置判断プログラムによって、処理する梁貫通孔配置判断ステップと、梁貫通孔配置判断ステップの結果を考慮して、CAD端末5のCADデータを修正する修正ステップと、を含む(図1)。
【0119】
これにより、梁貫通孔配置判断プログラムの判断結果を考慮した修正データを、CAD端末5のCADデータに反映することができる。そのため、梁(鉄骨梁50)に設けられた貫通孔53の設計を容易に行うことができる。
【0120】
以上、本発明の梁貫通孔配置判断プログラム及び梁貫通孔配置方法を実施例1に基づき説明してきた。しかし、具体的な構成については、この実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。また、フローチャートは一例を示したものに過ぎず、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、変更は許容される。
【0121】
実施例1では、梁を鉄骨構造の建物に使用される鉄骨梁50とする例を示した。しかし、梁としては、コンクリート造や、鉄筋コンクリート造や、鉄骨鉄筋コンクリート造で使用される梁であってもよい。
【0122】
実施例1では、梁をH型鋼とする例を示した。しかし、梁としては、I型鋼や、溝型鋼としてもよい。
【0123】
実施例1では、貫通孔53を円形の孔とする例を示した。しかし、貫通孔としては、矩形の孔や、多角形の孔であってもよい。
【0124】
実施例1では、補強材54をウェブ部51の一方の面に設ける例を示した。しかし、補強材54は、この態様に限定されるものではなく、ウェブ部51の両方の面に設けてもよい。
【0125】
実施例1では、中間ファイルをCSVデータとする例を示した。しかし、中間ファイルは、CSVデータに限定されるものではない。
【0126】
実施例1では、本発明の梁貫通孔配置判断プログラム及び梁貫通孔配置方法を、鉄骨構造の建物の鉄骨梁に貫通孔を設計する際に使用する例を示した。しかし、本発明の梁貫通孔配置判断プログラム及び梁貫通孔配置方法は、コンクリート造や、鉄筋コンクリート造や、鉄骨鉄筋コンクリート造の建物の梁に貫通孔を設計する際に使用することができる。
【符号の説明】
【0127】
1 コンピュータ
50 鉄骨梁(梁の一例)
51 ウェブ部
53 貫通孔
54 補強材
60 スリーブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8