【文献】
ROBAGLIA,TRANSLATION INITIATION FACTORS: A WEAK LINK IN PLANT RNA VIRUS INFECTION,TRENDS IN PLANT SCIENCE,英国,ELSEVIER SCIENCE,2006年 1月 1日,V11 N1,P40-45
【文献】
FLORENCE PIRON,AN INDUCED MUTATION IN TOMATO EIF4E LEADS TO IMMUNITY TO TWO POTYVIRUSES,PLOS ONE,2010年 6月25日,V5 N6,P E11313
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
したがって、本発明の第1態様では、ウイルスにとって非機能的である、単離された植物真核細胞の翻訳開始因子4E(eIF4E)変異体、またはそのアイソフォーム(eIF(iso)4Eが提供され、ここで、eIF4EまたはeIF(iso)4Eをコード化している核酸がミススプライスされている。
【0012】
eIF4EおよびeIF(iso)4Eの前例は全て、その遺伝子のコード領域内に突然変異を含んでいた。本発明者は、今度は、ウイルス抵抗性を誘導するイントロンのDNA配列における変異の第1例を提供した。イントロンは、翻訳より前に遺伝子からスプライスされ、したがって蛋白質に影響を及ぼさないため、イントロンDNA配列の殆どの変化は、抵抗性を提供しないであろうと予測される。さらに、遺伝子のミススプライシングは通常、非機能的蛋白質を結果的に生じ、また機能的蛋白質の欠如は致命的であったり、適応度の低下につながったり、あるいは他の悪影響があったりすることがある。
【0013】
用語「eIF4E」は、真核細胞の翻訳開始因子4Eとしても知られる、蛋白質合成の開始における重要な要素である。当業者に知られるように、植物で、eIF4Eは複雑なeIF4F(eIF4EおよびeIF4Gから成る)を形成する。植物eIF4E蛋白質のウイルス感染における正確な生化学的役割は未だ確認されていない。しかし、いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、植物eIF4EはウイルスRNAの5’キャップ構造(または模倣物)に結合できることもあり、または植物eIF4EはウイルスRNAと直接的に相互に作用することもある。あるいは、eIF4Eは、宿主植物における感染ウイルスの細胞間移動に関与することもある。
【0014】
用語「eIF(iso)4E」はeIF4Eのアイソフォームを指し、またeIF(iso)4EはeIF4Eと類似した機能を有する。アラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana)由来のeIF4E蛋白質とeIF(iso)4E蛋白質は、アミノ酸レベルで44%〜49%同一である。これは、ブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)系統R−o−18(47〜50%同一性)およびブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)系統チイフ(Chiifu)(43〜50%同一性)で見られる値と似ている。
【0015】
ウイルスのライフサイクルは、ウイルスの核酸を蛋白質に変えるために宿主植物の翻訳機構を使用することに完全に依存している。宿主翻訳機構によって産生されるウイルス蛋白質がなければ、ウイルスのレプリカーゼ蛋白質は何も産生されず、それ故ウイルスも複製されない。多くのウイルスは宿主植物の翻訳複合体に依存していることが示されており、また植物eIF4E蛋白質および/またはeIF(iso)4E蛋白質とのウイルス相互作用が証明されている(使用されるバージョンは、ウイルス種と植物種との特定の組合せによる)。
【0016】
ミススプライシングは、第1態様のeIF4E変異体またはeIF(iso)4E変異体(したがって、野生型または天然のeIF4E蛋白質またはeIF(iso)4E蛋白質と比較して、選択的にスプライスされた変異体であると記述することができる)を産生できることを、熟練者は十分理解するであろう。遺伝子のゲノム配列、たとえばeIF4EまたはeIF(iso)4Eをコード化しているもの等は、コード領域(すなわち、エクソン)および非コード領域(すなわちイントロン)を含む。イントロンおよびエクソンは、「一次転写物、mRNAの前駆体」(あるいは「mRNA前駆体(pre−mRNA)」)と呼ばれるRNAに転写される。エクソンよりコード化される天然の蛋白質が産生され得るように、イントロンはmRNA前駆体から除去されなければならない。用語「天然の蛋白質」は、自然に存在する蛋白質、野生型蛋白質または機能的蛋白質を意味することができる。
【0017】
mRNA前駆体からのイントロンの除去および後続するエクソンの相互ライゲーションは、スプライシング過程で実行される。スプライシング過程は通常、スプライシング因子によって仲介される、一連の反応からなり、これは転写後であるが翻訳前にRNA上で実行される。したがって、「mRNA前駆体」は、エクソンとイントロンの両者を含むRNA分子であり、「mRNA」は、イントロンは除去されており、エクソンは、リボソームによって蛋白質が翻訳され得るように順次結合された、RNAである。
【0018】
イントロンは、スプライシング反応を実行する様々なスプライシング因子を結合する、比較的短い、保存されたRNAセグメントである1組の「スプライス要素」によって明確に規定される。したがって、各イントロンは、5’スプライス部位、3’スプライス部位、およびその間に位置する枝分かれ部位によって明確に規定される。
【0019】
本発明者は、第1態様の蛋白質変異体が、天然のDNAおよび/またはeIF4EまたはeIF(iso)4EのmRNA前駆体のスプライス要素における改変に起因することがあり、これが(野生型と比べて)新しい、異所性の、スプライス要素を作り出すことを発見した。したがって、本発明の一実施態様で、eIF4EまたはeIF(iso)4Eをコード化しているミススプライスされた遺伝子は、スプライス要素における改変に起因することがあり、それによって異所性のスプライス要素を産生する。異所性のスプライス要素は、eIF4EまたはeIF(iso)4E mRNA前駆体のスプライスパターンの変化を引き起こし、変化したmRNAを生じさせ得る。好ましくは、結果として生じる第1態様のeIF4E蛋白質変異体またはeIF(iso)4E蛋白質変異体は、植物がウイルス感染に実質的に抵抗性があるように、植物におけるウイルスにとって機能的ではない。
【0020】
本発明者は、eIF4EまたはeIF(iso)4Eをコード化している遺伝子のイントロンの変化は(エクソンの変化よりむしろ)、ミススプライシングの発生を招いて、eIF4E変異体蛋白質またはeIF(iso)4E変異体蛋白質(これはウイルスにとって非機能的である)が結果的に産生され、そのため植物に存在するとき、ウイルス抵抗性を与えることを証明した。
【0021】
一実施態様で、異所性スプライス要素は、イントロンの5’末端または3’末端における天然スプライス部位(すなわち、イントロンの5’天然スプライス部位または3’天然スプライス部位)を変えることがあり、これが新しい、異所性の、スプライス部位を作り出す。ゲノムDNA配列と成熟メッセージRNAの配列との間の差異がイントロンを明確に規定することは十分理解されるであろう。イントロンの5’末端および3’末端が、遺伝子の天然スプライス部位を明確に規定する。
【0022】
異所性スプライス部位は、天然スプライス部位の上流であっても下流であってもよい。用語「上流」は、DNAまたはmRNA前駆体分子の5’末端に向かうことを意味し、符号「−」で示されることがあることは、当業者により十分理解されるであろう。用語「下流」は、DNAまたはmRNA前駆体分子の3’末端に向かうことを意味し、符号「+」で示されることがあることも、当業者により十分理解されるであろう。したがって、異所性のスプライス部位が、イントロン1の5’天然スプライス部位から10ヌクレオチド上流であってもよい実施態様で、異所性スプライス部位は「イントロン1の5’スプライス部位に比べて−10bp」と呼ばれることもある。
【0023】
異所性スプライス部位が、イントロンの5’天然スプライス部位の上流である実施態様では、イントロンの上流であるエクソンの一部が、スプライシング過程中に切除され得る。したがって、結果として生じるmRNAは、切除されたエクソンのヌクレオチドを欠くことがある。異所性スプライス部位がイントロンの5’天然スプライス部位の下流である実施態様では、イントロンの一部がスプライス事象の間保持され得る。したがって、結果として生じるmRNAは、保持されたイントロンのヌクレオチドを含み得る。
【0024】
異所性スプライス部位が、イントロンの3’天然スプライス部位の下流である実施態様では、イントロンの下流であるエクソンの一部が、スプライシング過程中に切除され得る。したがって、結果として生じるmRNAは、切除されたエクソンのヌクレオチドを欠くことがある。異所性スプライス部位が、イントロンの3’天然スプライス部位の上流である実施態様では、イントロンの一部または全部がスプライス事象の間ずっと保持され得る。したがって、結果として生じるmRNAは、保持されたイントロンヌクレオチドを含み得る。
【0025】
代替実施態様で、変化したスプライスパターンは、少なくとも1つのイントロンを保持することを含んでもよい。結果として生じるmRNA分子(すなわち、mRNA変異体)は、したがって保持された1つまたは複数のイントロンに相当するRNA配列を含むことがあり、天然のmRNA分子より大きいことがある。
【0026】
保持された少なくとも1つのイントロン、またはその一部から翻訳されるアミノ酸配列は、終止コドンを含むことがある。結果として生じる蛋白質(すなわち、蛋白質変異体)は、第1の終止コドンを超えて翻訳されないことがあり、それ故、蛋白質変異体は天然の蛋白質と比べてサイズが小さいことがある。保持されたイントロンによって導入される終止コドンは、mRNAの翻訳を早期に停止させる(遺伝子の第1の野生型終止コドンはさらに下流に位置している)ため、未熟終止コドンと呼ばれることがある。したがって、蛋白質変異体は、野生型蛋白質または天然の蛋白質と比べて、機能が欠如していたり変化していたりすることがある。蛋白質変異体は、ウイルスにとって非機能的であり得る。
【0027】
保持された少なくとも1つのイントロンのコドンリーディングフレーム、またはその一部は、インフレームであることも、隣接したエクソンのコーディングリーディングフレームを含むアウトオブフレームであることもある。結果として生じるmRNAは、変化したアミノ酸配列をコード化することがあり、したがって蛋白質変異体を産生し得る。蛋白質変異体は、野生型蛋白質または天然の蛋白質と比べて、機能が欠如していたり変化していたりし得る。蛋白質変異体は、ウイルスにとって非機能的であり得る。
【0028】
保持された少なくとも1つのイントロンのコドンリーディングフレーム、またはその一部が、隣接したエクソンのそれを含むアウトオブフレームである実施態様では、結果として生じる蛋白質(すなわち蛋白質変異体)は、変化したアミノ酸配列を含むことがあり、未熟終止コドンのため短縮されていることがある。結果として生じる蛋白質変異体は、野生型蛋白質または天然の蛋白質と比べて、機能が欠如していたり変化していたりすることがある。蛋白質変異体は、ウイルスにとって非機能的であり得る。
【0029】
少なくとも1つのエクソン、または、その一部が切除される実施態様では、結果として生じるmRNAは、変化したアミノ酸配列をコード化することがあり、したがって、蛋白質変異体を産生し得る。変化したアミノ酸配列は、未熟終止コドンを含み得る。蛋白質変異体は、野生型蛋白質または天然の蛋白質と比べて、機能が欠如していたり変化した機能を有していたりし得る。蛋白質変異体は、ウイルスにとって非機能的であり得る。
【0030】
eIF4E変異体またはeIF(iso)4E変異体の変化した機能は、その翻訳開始のための活性低下を含み得る。ミススプライシングがイントロン1で生じるとき、これは極度に短縮されたバージョンの蛋白質、あるいは蛋白質の大部分が機能的バージョンと完全に異なるバージョンを結果的に生じ得る。真核細胞の開始複合体の他の要素、特にeIF4GまたはeIF(iso)4Gに結合する可能性は極めて低く、またウイルス蛋白質VPg、またはメッセンジャーRNAキャップに結合する可能性も低いため、理論に束縛されずに、これには多数の結果があり得る。これは、メッセンジャーRNAおよび/またはウイルスRNAの翻訳を欠く結果となるであろう。
【0031】
本発明者は、ブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)を植物モデルとして使用して実験を実行し、意外なことに、B.ラパ(B.rapa)は3つのeIF(iso)4E遺伝子座を含み、したがって、eIF(iso)4Eの3つの蛋白質アイソフォーム(その蛋白質アイソフォームはeIF(iso)4E.a、eIF(iso)4E.bおよびeIF(iso)4E.cと表示される)を有することを発見した。その結果、本発明者はeIF(iso)4E.aを2つの植物系統で調査した。本明細書で「R−o−18」と呼ばれる、第1の植物系統は、ウイルス(すなわち、ターニップ・モザイクウイルス (Turnip Mosaic virus),TuMV)による感染に感受性であり、本明細書で「RLR22」と呼ばれる、第2の植物系統は、ウイルス感染に抵抗性がある。本発明者は、以下に記す通り、B.ラパ(B.rapa)のeIF(iso)4E.aアイソフォームの、ゲノム配列、mRNA配列およびポリペプチド配列を決定した。
【0032】
系統R−o−18(ウイルス感染感受性)において、天然または野生型のブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)eIF(iso)4E.aアイソフォーム、BraA.eIF(iso)4E.aをコード化しているゲノムDNA配列を、以下の通り、配列番号1として本明細書に提供する:
【化1】
【0033】
配列番号1は、ボールド体で表示されているイントロンと共に、エクソン1〜5を表す。
【0034】
系統R−o−18(ウイルス感染感受性)における、天然または野生型のBraA.eIF(iso)4E.aのmRNA配列を、以下の通り、配列番号2として本明細書に提供する:
【化2】
【0035】
図3は、BraA.eIF(iso)4E.aのエクソンが共にライゲートされて配列番号2のmRNAを形成することを、概略的に示している。
【0036】
系統R−o−18(ウイルス感染感受性)における、天然または野生型のBraA.eIF(iso)4E.aのポリペプチド配列を、以下の通り、配列番号3として本明細書に提供する:
【化3】
【0037】
系統RLR22(ウイルス感染抵抗性)における、ブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)eIF(iso)4E.aアイソフォーム、BraA.eIF(iso)4E.a変異体をコード化しているゲノムDNA配列を、以下の通り、配列番号4として本明細書に提供する:
【化4】
【0038】
配列番号4は、ボールド体で表示されているイントロン、およびイントロン1の5’スプライス部位の+1位におけるグアニン挿入(上記配列における下線)を表す。この突然変異は本明細書では「挿入/欠失」突然変異または「インデル」と呼ばれる。本発明者は意外なことに、配列番号4として表示されるDNA配列は、幾つかの実施態様で、幾つかの異なる型のmRNA配列を生じさせることができ、それぞれが第1態様のeIF4E蛋白質またはeIF(iso)4E蛋白質の変異体を産生することが可能なことを確認した。本発明者は、ウイルス抵抗性系統(RLR22)由来の対立遺伝子(BraA.eIF(iso)4E.a)を「retr01」と名づけた。これは、劣性であると考えられている。
【0039】
系統RLR22(ウイルス感染抵抗性)におけるBraA.eIF(iso)4E.a変異体のmRNA配列の第1実施態様を、以下の通り、配列番号5として本明細書に提供する:
【化5】
【0040】
示すように、配列番号4における核酸改変(すなわち、イントロン1の5’スプライス部位の+1位にグアニン挿入を含む)の影響は、結果として生じた、配列番号5で表されるmRNAが、完全に保持されているイントロン1に相当するRNA配列(ボールド体で表示されている)を含むことである。
図4は、eIF4E DNAまたはmRNA前駆体の変化したスプライスパターンが、結果的に配列番号5のmRNAを生じることを概略的に示している。
【0041】
系統RLR22におけるBraA.eIF(iso)4E.a変異体のmRNAの第1実施態様(すなわち、配列番号5)に相当するポリペプチド配列を、以下の通り、配列番号6として本明細書に提供する:
【化6】
【0042】
配列番号6で、鎖終結は「.」で示されている。示すように、イントロン1全体が保持された、配列番号5で表されるmRNAの翻訳は、短縮されたeIF(iso)4E蛋白質が産生されるように、88位に第1の未熟終止コドンを生じる結果となる。
【0043】
系統RLR22(ウイルス感染抵抗性)におけるBraA.eIF(iso)4E.a変異体のmRNA配列の第2実施態様を、以下の通り、配列番号7として本明細書に提供する:
【化7】
【0044】
配列番号7で表されるmRNA変異体は、イントロン1の変化した3’スプライス部位に起因する。変化したスプライス部位は、イントロン1の5’末端と比べて+48位(すなわち、イントロン1の天然の3’スプライス部位の15bp上流)である。保持されたイントロン配列(15ヌクレオチド)は、ボールド体で表示されている。
図5は、このスプライス事象を概略的に示している。
【0045】
系統RLR22におけるBraA.eIF(iso)4E.a変異体のmRNA変異体の第2実施態様(すなわち、配列番号7)に相当するポリペプチド配列を、以下の通り、配列番号8として提供する:
【化8】
【0046】
配列番号8で、5つの新しいアミノ酸残基(すなわち、IFFCS)が核改変の結果として翻訳され、ボールド体で表されている。示すように、イントロンの一部が保持された配列番号7で表されるmRNAの翻訳は、結果的にフレームシフトを招かないが、伸長した蛋白質はウイルスにとって非機能的となり得る。
【0047】
系統RLR22(ウイルス感染抵抗性)におけるBraA.eIF(iso)4E.a変異体のmRNA配列の第3実施態様を、以下の通り、配列番号9として本明細書に提供する:
【化9】
【0048】
配列番号9で表されるmRNA変異体は、イントロン1の変化した5’スプライス部位に起因する。変化したスプライス部位は、イントロン1の5’天然スプライス部位と比べて−3位(すなわち、3bp上流)である。切除されたエクソン配列(3ヌクレオチド)は、符号「Δ」で表示されている。
図6は、このスプライス事象を概略的に示している。
【0049】
系統RLR22におけるBraA.eIF(iso)4E.a変異体のmRNAの第3実施態様(すなわち配列番号9)に相当するポリペプチド配列を、以下の通り、配列番号10として本明細書に提供する:
【化10】
【0050】
配列番号10で、新しいアミノ酸残基(すなわち、C)が核改変の結果として翻訳され、ボールド体で表されている。示すように、イントロンの一部が保持された配列番号9で表されるmRNAの翻訳は、結果的にフレームシフトを招かなかった。配列番号9を配列番号3と比較すると、アミノ酸:75〜77位のフェニルアラニン(F)−トリプトファン(W)−グリシン(G)が、システイン(C)に置き換えられていた。アミノ酸1つを失い、別のアミノ酸が置換されたことにより、ウイルスにとって非機能的である蛋白質を結果的に生じ得る。
【0051】
したがって、第1態様のeIF4E蛋白質変異体またはeIF(iso)4E蛋白質変異体は、配列番号6、8または10で実質的に示されるアミノ酸配列、あるいはその変異体またはフラグメントを含み得る。eIF4E蛋白質またはeIF(iso)4E蛋白質をコード化する核酸は、配列番号4、5、7または9で実質的に示される配列、あるいはその変異体またはフラグメントを含み得る。
【0052】
上記を考慮すれば、第1態様のeIF4E蛋白質変異体またはeIF(iso)4E蛋白質変異体をコード化している核酸のミススプライシングは、前記核酸配列における改変に起因し得ることが十分理解されるであろう。改変は、遺伝子の非コード領域で生じることが好ましい。異所性スプライス要素を作り出すために、改変は、eIF4E蛋白質またはeIF(iso)4E蛋白質をコード化する核酸配列におけるスプライス要素に位置していてもよい。改変は、エクソン−イントロン接合点または天然スプライス部位の上流に存在していてもよく、下流に存在していてもよい。好ましくは、改変は、天然スプライス部位の−10位〜+10位の間に存在する。より好ましくは、改変は、天然スプライス部位の−5位〜+5位の間に存在する。最も好ましくは、改変は、天然スプライス部位の−1位〜+1位に存在する。天然スプライス部位は、イントロンの5’−末端または3’−末端にあってもよく、5’−末端または3’−末端の近くにあってもよい。
【0053】
スプライス要素は、3’スプライス部位、5’スプライス部位および枝分かれ部位(全て、成熟メッセージRNAの産生中に、イントロンを正確に除去するのに必要である)を含むことができる。こうした要素の1つ、または複数における改変は、イントロンの一部、または全部を結果的に除去できなかったり、あるいはエクソン配列を除去する結果となったりし得る。これは、次には、短縮した蛋白質または伸長した蛋白質(機能的である可能性が極めて低いか、天然の蛋白質より低機能性であろう)を生じる結果となる。
【0054】
改変は、eIF4E蛋白質またはeIF(iso)4E蛋白質をコード化している核酸配列におけるイントロンに位置していてもよい。改変は、eIF4E蛋白質またはeIF(iso)4E蛋白質をコード化している核酸配列のイントロン1、2、3または4にあってもよい。イントロン1は、配列番号1の塩基201〜263に相当し、イントロン2は、配列番号1の塩基439〜509に相当し、イントロン3は、配列番号1の塩基636〜1187に相当し、イントロン4は、配列番号1の塩基1254〜1339に相当する。
【0055】
好ましくは、改変は、eIF4E蛋白質またはeIF(iso)4E蛋白質をコード化している核酸配列のイントロン1にある。
【0056】
改変は、eIF4E蛋白質またはeIF(iso)4E蛋白質をコード化している核酸配列中の、好ましくはイントロン中の、より好ましくはイントロン1中の、何処かに少なくとも1つの核酸塩基の、挿入、欠失、置換またはこれらの任意の組合せを含んでもよい。挿入は、プリン(アデニンまたはグアニン)であってもよく、ピリミジン(シトシンまたはチミン)であってもよい。好ましくは、改変はグアニン挿入を含む。改変は、天然の蛋白質と比べて、コドンリーディングフレームのフレームシフトを結果的に招き得る。改変は、結果的に未熟終止コドンを形成し得る。改変は、結果的にフレームシフトを招いたり、未熟終止コドンを生じたりすることはないが、アミノ酸の付加または欠失は招き得る。
【0057】
好ましくは、改変は、配列番号1の201位における挿入を含み、その挿入は好ましくはグアニンである。
【0058】
eIF4Eおよび/またはeIF(iso)4E、またはウイルスのライフサイクルの完成に不可欠な他の蛋白質の、ミススプライシングを結果的にもたらすであろう突然変異を生じさせるために、当該技術分野で知られている人工的な手段によって、植物ゲノムを改変することは可能であろうと、本発明者は考えている。人工的な手段は、組み換えの誘導/促進、多くの手段による部位特異的突然変異誘発、Targeted Induced Local Lesions in Genomes(TILLING)、または当該技術分野で知られている他の手段、を含んでもよい。
【0059】
本発明者は、第1態様のeIF4E変異体蛋白質またはeIF(iso)4E変異体蛋白質が、ターニップ・モザイクウイルス (Turnip mosaic virus)(TuMV)にとって非機能的であることを発見した。しかし、本発明者は、第1態様のeIF4E蛋白質またはeIF(iso)4E蛋白質は、(他の状況では植物を感染させることができる)多種多様のウイルス類にとって非機能的であると考えている。このように、eIF4EまたはeIF(iso)4Eは、植物ウイルスのライフサイクルを完成するために、それらに依存しているあらゆる植物ウイルスにとって非機能的であり得る。
【0060】
しかし、変異体eIF4EまたはeIF(iso)4Eは、ポチビリダエ(Potyviridae)科のあらゆる植物ウイルスにとって非機能的であることが好ましい。eIF4EまたはeIF(iso)4Eが非機能的であり得る好適なポチウイルス類の例としては、ペッパー・ベイナル・モトル・ウイルス(Pepper veinal mottle virus)(PVMP)、インゲンマメ・モザイクウイルス(Bean common mosaic virus)(BCMV)、ジャガイモウイルスY(Potato virus Y)(PVY)、またはアズキニン・モザイクウイルス(Azukinin mosaic virus)(AzMV)、またはeIF4Eおよび/またはeIF(iso)4Eに依存する他のウイルスなどがある。
【0061】
本明細書に記載の通り、第1態様のeIF4E蛋白質またはeIF(iso)4E蛋白質は、ブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)の様々なウイルスにとって非機能的である。しかし、本発明者は、第1態様のeIF4E蛋白質またはeIF(iso)4E蛋白質は、広範囲の様々な植物種におけるウイルス類にとって非機能的であると考えている。したがって、eIF4EまたはeIF(iso)4Eは、ジャガイモ(全種)、トマト、コショウまたはナス等のナス科(Solanaceae)、メロン、カボチャおよびキュウリ等のウリ科(Cucurbit)、アブラナ科(Cruciferous)作物、特にアブラ菜等のブラッシカ・ナプス(Brassica napus)、白菜等のブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)、およびさらに詳細には、ブロッコリー、カリフラワー、キャベツ、チリメンキャベツ、芽キャベツ、赤キャベツ等の、ブラッシカ・オレラセア(Brassica oleracea)、マメ科(Fabaceae)エンドウ豆、豆、豆類等、およびまたコメ、トウモロコシ、コムギ、オオムギ等を含む単子葉作物の植物におけるウイルスにとって非機能的であり得る。好ましい一実施態様で、植物は、ブラッシカ種(Brassica spp)であってもよく、好ましくはB.ラパ(B.rapa)および/またはブラッシカ・オレラセア(Brassica oleracea)である。
【0062】
第2態様では、植物真核細胞の翻訳開始因子4E(eIF4E)、またはそのアイソフォーム(eIF(iso)4E)の、選択的にスプライスされた変異体をコード化している単離された核酸配列であって、eIF4EまたはeIF(iso)4Eがウイルスにとって非機能的であるように、ミススプライスされている核酸配列を提供する。
【0063】
第2態様の単離された核酸配列は、DNA、cDNA、RNAまたはmRNAを含んでもよい。
【0064】
核酸配列は、配列番号4、5、7または9のいずれか1つで実質的に示されるヌクレオチド配列、またはその変異体またはフラグメントを含んでもよい。その核酸配列によってコード化されるeIF4EまたはeIF(iso)4Eは、配列番号6、8または10のいずれか1つで実質的に示されるアミノ酸配列、またはその変異体またはフラグメントを含んでもよい。
【0065】
第3態様では、第2態様の核酸配列を含む組み換えベクターを提供する。
【0066】
組み換えベクターは、プラスミド、コスミドまたはファージであってもよい。そのような組み換えベクターは、第2態様の核酸分子で宿主細胞を形質転換するのに極めて有用である。当業者は、発現目的で、本発明の遺伝子構築物を、多くのタイプの骨格ベクターと組合せることが可能なことを十分理解するであろう。骨格ベクターは、バイナリーベクター(たとえば大腸菌(E.coli)でもアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)でも複製できるもの)であってもよい。たとえば、好適なベクターは、pBIN19等の、pBINプラスミドであってもよい。
【0067】
組み換えベクターは、本発明の核酸配列に加えて、プロモーターを含む、種々の他の機能的要素を含んでもよい。たとえば、組み換えベクターを、宿主細胞(植物細胞であってもよい)のサイトゾル内で自律的に複製するように設計することが可能である。この場合、DNA複製を誘導または制御する要素が、組み換えベクターで必要なこともある。あるいは、組み換えベクターは、宿主細胞のゲノムに組み込まれるように設計してもよい。この場合、標的とされた組み込み(たとえば、相同的組み換えによる)に好都合なDNA配列が予想される。
【0068】
組み換えベクターはまた、クローニング過程で選択可能マーカーとして使用することが可能な遺伝子、すなわち、形質移入された細胞または形質転換されている細胞の選択を可能にするため、および非相同DNAを組み込むベクターを抱懐する細胞の選択を可能にするための遺伝子を、コードしているDNAも含んでもよい。あるいは、選択マーカー遺伝子は、関心対象の遺伝子を含んでいるベクターと同時に使用される異なるベクター内にあってもよい。ベクターはまた、コード配列の発現制御と関係があるDNA、または発現したポリペプチドを宿主細胞のある特定の部分、たとえば、葉緑体に、ターゲットするためのDNAも含んでもよい。したがって、第3態様のベクターは、選択マーカー遺伝子(たとえば抗生物質耐性遺伝子)、ポリペプチド終結信号、および蛋白質ターゲティング配列(たとえば葉緑体輸送ペプチド)からなる群から選択される少なくとも1つの追加的要素含んでもよい。
【0069】
好適なマーカー遺伝子の例としては、カナマイシン、ジェネティシン(G418)およびハイグロマイシン(npt−II、hyg−B)に対する抵抗性を与えるもの等の、抗生物質耐性遺伝子、ホスフィノトリシンおよびスルホンアミド系除草剤に対する抵抗性を与えるもの等の、除草剤抵抗性遺伝子(それぞれ、barおよびsuI、欧州特許出願公開第A−242246号明細書、欧州特許出願公開第A−0249637号明細書)、β−グルクロニダーゼ(英国特許第2197653号明細書)、ルシフェラーゼおよび緑色蛍光蛋白質(GFP)等の、選別マーカーなどがある。
【0070】
マーカー遺伝子は、細胞における発現を可能にする、第2プロモーター(種子中にあってもよく、なくてもよい)によって制御することができ、それによって植物の発生のいずれかの段階で、そのマーカーを含む細胞または組織の選択を可能にする。好適な第2プロモーターは、アグロバクテリウム(Agrobacterium)のノパリンシンターゼ遺伝子のプロモーターおよび35Sカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)転写物をコード化する遺伝子に由来するプロモーターである。しかし、何か他の好適な第2プロモーターを使用してもよい。
【0071】
本発明のベクターの様々な実施態様は、好適なクローニング手順を使用して調製してもよく、以下の通りに要約することができる。
【0072】
第4態様では、第3態様のベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0073】
宿主細胞は植物細胞であってもよい。あるいは、宿主細胞は、細菌またはウイルスであってもよい。当業者に知られている技法を使用して、ベクターを宿主細胞に形質転換することができる。
【0074】
第3態様のベクターを植物に導入するために必要な分子技術は、当該技術で知られていることは十分理解されるであろう、またSambrookらのテキスト等で見ることが可能である。
【0075】
本発明者は、ウイルスによる感染に対して抵抗性がある植物を検出できることを発見した。
【0076】
本発明の第5態様では、試験植物で、植物真核細胞の翻訳開始因子4E(eIF4E)変異体、またはそのアイソフォーム(eIF(iso)4E)(eIF4EまたはeIF(iso)4Eをコード化している核酸がミススプライスされており、ウイルスにとって非機能的である)の存在を検出する方法であって、
(i)試験植物からRNAを単離するステップと、
(ii)eIF4EまたはeIF(iso)4Eに特異的なプライマーを使用して、ステップ(i)で単離されるRNAからcDNAを産生するステップと、
(iii)ステップ(ii)で産生されるcDNAの配列を決定するステップと、
(iv)ステップ(iii)で決定されるcDNA配列を、野生型eIF4EまたはeIF(iso)4EのcDNA配列と比較するステップと
を含み、
ここで、野生型配列と比較されるステップ(iii)の配列における変異は、試験植物におけるeIF4EまたはeIF(iso)4Eをコード化している核酸がミススプライスされており、eIF4EまたはeIF(iso)4Eの変異体であることを示す、
方法を提供する。
【0077】
(i)〜(iv)の検出ステップが、Sambrookら等の、当該技術分野で知られている分子技術を含むことは十分理解されるであろう。本方法は、RNA、好ましくはmRNAを単離することが可能な、試料を試験植物から得るステップを含んでもよい。cDNAは、こうした遺伝子に相補的なプライマーを利用して、eIF4Eおよび/またはeIF(iso)4E RNAの逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)で得ることが可能である。当業者であれば、当該技術分野で知られている技法を使用して、RT−PCRプライマーの位置を設計することが十分理解されるであろう。好ましくは、RT−PCRプライマーは、結果として生じる増幅産物が、eIF4E遺伝子またはeIF(iso)4E遺伝子の完全なコード領域を含むように設計される。
【0078】
たとえば、逆転写プライマーは、
AAAAAGCAGGCTCGAGGCGACAGAGGATG_(配列番号13)、
AGAAAGCTGGGTTCAGACAGTGAACCTAGTTCTTC(配列番号14)、および
AGAAAGCTGGGTTCAGACAGTGAACCGAGTTCTTC(配列番号15)、
からなる群から選択することが可能である。
【0079】
第5態様の方法は、eIF4EまたはeIF(iso)4Eのミススプライシングを引き起こす植物ゲノムにおける改変を同定するステップをさらに含んでもよく、ここで前記同定ステップは、eIF4E遺伝子またはeIF(iso)4E遺伝子についてホモ接合であるように、試験植物を育種することを含んでもよい。本方法は、前記遺伝子のゲノム配列を決定することを含んでもよい。本方法は、eIF4EまたはeIF(iso)4Eのミススプライシングを引き起こす改変を同定するために、決定されたゲノム配列を、野生型eIF4EまたはeIF(iso)4Eのゲノム配列と比較することを含んでもよい。
【0080】
試験植物が、eIF4EまたはeIF(iso)4Eについてヘテロ接合である実施態様では、試験植物を自家交配することによってホモ接合性を得ることが可能である。
【0081】
本発明者は、ウイルス類による感染に抵抗性がある、植物を作り出して選択することが可能なことを発見した。
【0082】
したがって、第6態様では、ウイルス抵抗性植物を選択する方法であって、
(i)第1態様の、植物真核細胞の開始因子4E(eIF4E)変異体またはそのアイソフォーム(eIF(iso)4E)、および
(ii)野生型eIF4EまたはeIF(iso)4Eの少なくとも1つのコピー(ここで、eIF4EまたはeIF(iso)4Eの野生型コピーを、植物は使用することができるが、ウイルスは使用することができない)、
の存在を、試験植物で、検出することを含む、方法を提供する。
【0083】
第7態様では、植物ウイルス抵抗性を誘導するための、第1態様の植物真核細胞の開始因子4E(eIF4E)変異体またはそのアイソフォーム(eIF(iso)4E)あるいは第2態様の核酸の、使用を提供する。
【0084】
第8態様では、ウイルス抵抗性植物を作り出す方法であって、第1態様の植物真核細胞の開始因子4E(eIF4E)変異体またはそのアイソフォーム(eIF(iso)4E)を発現する親植物を、レシピエント植物と交配することを含み、そのレシピエントは、農学的利点、商業的利点、および/またはある特定の気候または土壌への適合性からなる群から選択される少なくとも1つの形質を含む、方法を提供する。
【0085】
レシピエント植物は、穀物(たとえばコメ、コムギ等)または野菜(たとえば、トマト等)等の、商業的に有用な植物である。実施例に記述し、また
図8に示す通り、ウイルス感染に抵抗性がある親植物は第1態様のeIF4E変異体またはeIF4(iso)4E変異体を発現するため、これと、レシピエント植物(B.ラパ(B.rapa)であってもよい)を、交配してもよい。本方法は、一代雑種の子孫を、レシピエント親(すなわち回帰植物系統)と戻し交配することをさらに含んでもよい。1〜10周の戻し交配が必要なこともある。第5態様による方法を使用して、eIF4EまたはeIF(iso)4E(ウイルス抵抗性を与える)の変異型対立遺伝子が、各交配で、非回帰植物に存在することを確実にすることが可能である。最後に、本方法は、戻し交配プログラムによって得られるウイルス抵抗性植物を自家受粉または自殖させるステップを含んでもよい。次いで、改変されたスプライス部位(ウイルス抵抗性を与える)についてホモ接合である次世代の植物を、同定することが可能である。
【0086】
ウイルス抵抗性を備えたF
1雑種植物を育種するために、戻し交配プログラムによって得られ、かつ第1態様のeIF4EまたはeIF(iso)4Eについてホモ接合である2つの同系交配親植物系統を使用して、F
1雑種を生み出すことが可能である。次いで、こうした2つの同系交配親系統を共に交配して、第1態様のeIF4EまたはeIF(iso)4Eについてホモ接合である、ウイルス抵抗性F
1雑種を生み出すことが可能である。
【0087】
本方法で作用される親植物は、野生型eIF4EまたはeIF(iso)4Eの少なくとも1つのコピーを発現できることが好ましく、ここでeIF4EまたはeIF(iso)4Eの野生型コピーを、植物は使用することが可能であるが、ウイルスは使用することができない。
【0088】
第9態様で、本発明は、第8態様の方法で作り出される、または得られる、ウイルス抵抗性植物を提供する。
【0089】
第10態様で、本発明は、第1態様の植物真核細胞の翻訳開始因子4E(eIF4E)変異体またはそのアイソフォーム(eIF(iso)4E)、あるいは第2態様のeIF4EまたはeIF(iso)4Eの選択的にスプライスされた変異体をコード化している核酸を含む、ウイルス抵抗性植物を提供する。
【0090】
好ましくは、第9態様および第10態様の植物は、野生型eIF4EまたはeIF(iso)4Eの少なくとも1つのコピーを発現するが、ここでeIF4EまたはeIF(iso)4Eの野生型コピーを、植物は使用できるが、ウイルスは使用できない。植物は、eIF4EまたはeIF(iso)4Eをコード化している遺伝子の非コード領域に改変または突然変異を含んでもよい。改変は、eIF4E核酸またはeIF(iso)4E核酸のスプライス要素内であってもよい。
【0091】
使用、方法または植物は、eIF(iso)4E.a、eIF(iso)4E.bまたはeIF(iso)4E.c、好ましくはeIF(iso)4E.aの、使用を含んでもよい。
【0092】
植物は、ジャガイモ(全種)、トマト、コショウまたはナス等の、ナス科(Solanaceae)植物、メロン、カボチャおよびキュウリ等のウリ科(Cucurbit)植物、アブラナ科(Cruciferous)作物、特にアブラ菜等のブラッシカ・ナプス(Brassica napus)、白菜等のブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)およびさらに詳細にはブロッコリー、カリフラワー、キャベツ、チリメンキャベツ、芽キャベツ、赤キャベツ等のブラッシカ・オレラセア(Brassica oleracea)、マメ科(Fabaceae)エンドウ豆、豆、豆類等、またコメ、トウモロコシ、コムギ、オオムギ等を含むあらゆる単子葉作物であってもよい。好ましい一実施態様で、植物は、ブラッシカ種(Brassica spp)であってもよく、好ましくはB.ラパ(B. rapa)および/またはブラッシカ・オレラセア(Brassica oleracea)である。
【0093】
第5態様、第6態様または第8態様のいずれか1つの方法、第7態様の使用、または第9態様の植物が、トランスジェニック植物の使用を含んでもよいことは十分理解されるであろう。実際に、本明細書に記載の植物はいずれもトランスジェニックであってもよい、すなわち組み換えDNAテクノロジーを使用して作り出すことが可能である。
【0094】
上述のシナリオで、eIF4Eおよび/またはeIF(iso)4E(これをウイルスが使用して、そのライフサイクルを完成し、感染を引き起こす)の1コピーを有する植物におけるウイルス抵抗性が説明される。したがって、好ましい実施態様で、植物は、eIF4Eおよび/またはeIF(iso)4Eについてホモ接合であって、これは植物真核細胞の翻訳開始因子4E(eIF4E)、またはそのアイソフォーム(eIF(iso)4E)の選択的にスプライスされた変異体をコード化しており、ウイルスにとって非機能的である。
【0095】
しかし、一部の植物が、これらの2つの遺伝子の一方、または両方の、複数のコピー/遺伝子座を有することは十分理解されるであろう。たとえば、ブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)は、eIF4EとeIF(iso)4Eの両方の3コピー(すなわち、BraA.eIF4E.a、BraA.eIF4E.bおよびBraA.eIF4E.c、およびBraA.eIF(iso)4E.a、BraA.eIF(iso)4E.bおよびBraA.eIF(iso)4E.c)を有し、またウイルスはこれらの遺伝子のいずれかを使用してそのライフサイクルを完成し、宿主植物でウイルス感染を引き起こし得る。したがって、eIF4Eおよび/またはeIF(iso)4Eの複数のコピー/遺伝子座を有する植物においてウイルス抵抗性を与えるためには、こうした他の遺伝子座の各々におけるeIF4Eおよび/またはeIF(iso)4Eの対立遺伝子も、ウイルスにとって非機能的であることが好ましい。
【0096】
このことをさらに調査するために、本発明者は、B.ラパ(B.rapa)ウイルス感染−易感染性系統R−o−18とウイルス抵抗性系統RLR22を交配し、F
1植物を抵抗性植物由来の自殖個体に戻し交配して、BraA.eIF(iso)4E.aのRLR22対立遺伝子およびBraA.eIF4E.cのRLR22対立遺伝子についてホモ接合であるが、BraA.eIF(iso)4E.c遺伝子座でヘテロ接合であったB
1植物を作り出した。次いで、この特定の個体から得られるB
1S
1植物を、表現型検査および遺伝子型検査した。意外なことに、BraA.eIF(iso)4E.cのRLR22対立遺伝子についてホモ接合の植物は、ターニップ・モザイクウイルス (Turnip mosaic virus)(TuMV)に対して完全に抵抗性があり、ヘテロ接合体はウイルス感染に対して僅かに易感染性に過ぎなかったが、BraA.eIF(iso)4E.cのR−o−18対立遺伝子についてホモ接合であった植物は、ウイルス感染に対して完全に易感染性であった。
【0097】
したがって、本発明者は、B.ラパ(B.rapa)におけるウイルスに対する広域スペクトル抵抗性に関係がある第2の遺伝子座を、染色体A8上のBraA.eIF(iso)4E.c.と同定した。この第2の遺伝子座を、本明細書ではConTR01と呼ぶ。本発明者は、広域スペクトルウイルス抵抗性のためには、植物は、第1の遺伝子(すなわちretr01、BraA.eIF(iso)4E.aのRLR22対立遺伝子)に加えて、第2の遺伝子(すなわち、ConTR01、BraA.eIF(iso)4E.cのRLR22対立遺伝子)を必要とすると考えている。これによって、ウイルスがeIF4Eおよび/またはeIF(iso)4Eの複数のコピー/遺伝子座を利用できる植物においてウイルス抵抗性を与えるためには、2つ以上の遺伝子が重要なことが証明される。ブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)系統R−o−18および系統RLR22由来のeIF4E対立遺伝子およびeIF(iso)4E対立遺伝子について決定されたゲノムDNA配列ならびに予測されるmRNA配列およびポリペプチド配列を、ターニップ・モザイクウイルス (Turnip mosaic virus)が各対立遺伝子を使用できるかどうかに関する情報と共に、以下に提供する。
【0098】
R−o−18 BraA.eIF4E.a
TuMVがB.ラパ(B.rapa)で使用できない、染色体A1上に位置するBraA.eIF4E.aのR−o−18対立遺伝子は、以下のゲノムDNA配列を有する(エクソン1〜5、ボールド体で表したイントロンを含む):
【化11】
【0099】
TuMVがB.ラパ(B.rapa)で使用できない、BraA.eIF4E.aのR−o−18対立遺伝子は、以下のmRNA配列を有する:
【化12】
【0100】
TuMVがB.ラパ(B.rapa)で使用できない、BraA.eIF4E.aのR−o−18対立遺伝子は、以下のポリペプチド配列をコードする:
【化13】
【0101】
RLR22BraA.eIF4E.a
TuMVがB.ラパ(B.rapa)で使用できない染色体A1上に位置するBraA.eIF4E.aのRLR22対立遺伝子は、以下のゲノムDNA配列を有する(エクソン1〜5、ボールド体で表したイントロンを含む):
【化14】
【0102】
TuMVがB.ラパ(B.rapa)で使用できない、BraA.eIF4E.aのRLR22対立遺伝子は、以下のmRNA配列を有する:
【化15】
【0103】
TuMVがB.ラパ(B.rapa)で使用できない、BraA.eIF4E.aのRLR22対立遺伝子は、以下のポリペプチド配列をコード化する:
【化16】
【0104】
R−o−18 BraA.eIF4E.b
染色体A3上に位置するR−o−18 BraA.eIF4E.bは、非機能的である。非機能的であるBraA.eIF4E.bのR−o−18対立遺伝子は、以下のゲノムDNA配列を有する(エクソン1〜3、ボールド体で表したイントロンおよび下線を施した未熟終止コドンを含む):
【化17】
【0105】
非機能的であるBraA.eIF4E.bのR−o−18対立遺伝子は、以下のmRNA配列を有する:
【化18】
【0106】
非機能的であるBraA.eIF4E.bのR−o−18対立遺伝子は、以下のポリペプチド配列をコードする:
【化19】
【0107】
RLR22BraA.eIF4E.b
染色体A3上に位置するBraA.eIF4E.bのRLR22対立遺伝子について、配列は何も得られなかった。
【0108】
R−o−18BraA.eIF4E.c
TuMVがB.ラパ(B.rapa)で使用できない、染色体A8上に位置するBraA.eIF4E.cのR−o−18対立遺伝子は、以下のゲノムDNA配列を有する(エクソン1〜5、ボールド体で表したイントロンを含む):
【化20】
【0109】
TuMVがB.ラパ(B.rapa)で使用できない、BraA.eIF4E.cのR−o−18対立遺伝子は、以下のmRNA配列を有する:
【化21】
【0110】
TuMVがB.ラパ(B.rapa)で使用できない、BraA.eIF4E.cのR−o−18対立遺伝子は、以下のポリペプチド配列をコードする:
【化22】
【0111】
RLR22BraA.eIF4E.c
TuMVがB.ラパ(B.rapa)で使用できない、染色体A8上に位置するBraA.eIF4E.cのRLR22対立遺伝子は、以下のゲノムDNA配列を有する(エクソン1〜5、ボールド体で表したイントロンを含む):
【化23】
【0112】
TuMVがB.ラパ(B.rapa)で使用できない、BraA.eIF4E.cのRLR22対立遺伝子は、以下のmRNA配列を有する:
【化24】
【0113】
TuMVがB.ラパ(B.rapa)で使用できない、BraA.eIF4E.cのRLR22対立遺伝子は、以下のポリペプチド配列をコードする:
【化25】
【0114】
R−o−18BraA.eIF(iso)4E.b
TuMVがB.ラパ(B.rapa)で使用できない、染色体A5上に位置するBraA.eIF(iso)4E.bのR−o−18対立遺伝子は、以下のゲノムDNA配列を有する(エクソン1〜5、ボールド体で表したイントロンを含む):
【化26】
【0115】
TuMVがB.ラパ(B.rapa)で使用できない、BraA.eIF(iso)4E.bのR−o−18対立遺伝子は、以下のmRNA配列を有する:
【化27】
【0116】
TuMVがB.ラパ(B.rapa)で使用できない、BraA.eIF(iso)4E.bのR−o−18対立遺伝子は、以下のポリペプチド配列(RLR22BraA.eIF(iso)4E.bと同じ)をコードする:
【化28】
【0117】
RLR22BraA.eIF(iso)4E.b
TuMVがB.ラパ(B.rapa)で使用できない、染色体A5上に位置するBraA.eIF(iso)4E.bのRLR22対立遺伝子は、以下のゲノムDNA配列を有する(エクソン1〜5、ボールド体で表したイントロンを含む):
【化29】
【0118】
TuMVがB.ラパ(B.rapa)で使用できない、BraA.eIF(iso)4E.bのRLR22対立遺伝子は、以下のmRNA配列を有する:
【化30】
【0119】
TuMVがB.ラパ(B.rapa)で使用できない、BraA.eIF(iso)4E.bのRLR22対立遺伝子は、以下のポリペプチド配列(R−o−18BraA.eIF(iso)4E.bと同じ)をコードする:
【化31】
【0120】
R−o−18BraA.eIF(iso)4E.c
TuMVがB.ラパ(B.rapa)で使用でき、植物に易感染性を与える、染色体A8上に位置するBraA.eIF(iso)4E.cのR−o−18対立遺伝子は、以下のゲノムDNA配列を有する(エクソン1〜5、ボールド体で表したイントロンを含む):
【化32】
【0121】
TuMVがB.ラパ(B.rapa)で使用でき、植物に易感染性を与える、BraA.eIF(iso)4E.cのR−o−18対立遺伝子は、以下のmRNA配列を有する:
【化33】
【0122】
TuMVがB.ラパ(B.rapa)で使用でき、植物に易感染性を与える、BraA.eIF(iso)4E.cのR−o−18対立遺伝子は、以下のポリペプチド配列をコードする:
【化34】
【0123】
RLR22BraA.eIF(iso)4E.c
TuMVがB.ラパ(B.rapa)で使用できず、かつ抵抗性に必要な、染色体A8上に位置するBraA.eIF(iso)4E.cのRLR22対立遺伝子は、以下のゲノムDNA配列を有する(エクソン1〜5、ボールド体で表したイントロンを含む):
【化35】
【0124】
TuMVがB.ラパ(B.rapa)で使用できず、かつ抵抗性に必要な、BraA.eIF(iso)4E.cのRLR22対立遺伝子は、以下のmRNA配列を有する:
【化36】
【0125】
TuMVがB.ラパ(B.rapa)で使用できず、かつ抵抗性に必要な、BraA.eIF(iso)4E.cのRLR22対立遺伝子は、以下のポリペプチド配列をコードする:
【化37】
【0126】
したがって、第10態様では、植物真核細胞の翻訳開始因子4E(eIF4E)、またはそのアイソフォーム(eIF(iso)4E)をコード化している単離された核酸配列であって、eIF4EまたはeIF(iso)4Eはウイルスにとって非機能的であり、配列番号4、5、7、9、34、35、37、38、40、41、43、44、46、47、49、50、52、53、58または59で実質的に示されるヌクレオチド配列、あるいはその変異体またはフラグメントを含む拡散配列を提供する。
【0127】
第11態様では、ウイルスにとって非機能的である、単離された植物真核細胞の翻訳開始因子4E(eIF4E)変異体、またはそのアイソフォーム(eIF(iso)4E)を提供する。ここでeIF4E蛋白質変異体またはeIF(iso)4E蛋白質変異体は、配列番号6、8、10、36、39、42、45、48、51、54または60で実質的に示されるアミノ酸配列、あるいは変異体またはフラグメントを含む。
【0128】
第3態様のベクター、第4態様の宿主細胞、第5、第6、または第8態様のいずれか1つの方法、第7態様の使用あるいは第9態様の植物は、ウイルスにとって非機能的である本明細書に記載されている配列、すなわち第10態様で明確に規定されている配列の、いずれを含んでもよいことは十分理解されるであろう。たとえば、一実施態様で、本発明のベクター、細胞、方法、使用または植物は、配列番号4、5、7、9、34、35、37、38、40、41、43、44、46、47、49、50、52、53、58または59で実質的に示されるヌクレオチド配列、あるいはその変異体またはフラグメントを含んでもよい。
【0129】
別の実施態様では、本発明のベクター、細胞、方法、使用または植物は、第11態様で明確に規定される、eIF4E蛋白質変異体またはeIF(iso)4E蛋白質変異体を含んでもよい。したがって、好ましくは、ベクター、細胞、方法、使用または植物は、配列番号6、8、10、36、39、42、45、48、51、54または60で実質的に示されるアミノ酸配列、あるいはその変異体またはフラグメントを含む、eIF4E蛋白質変異体またはeIF(iso)4E蛋白質変異体を含む。
【0130】
本発明のベクター、細胞、方法、使用または植物は、配列番号58または59で実質的に示されるヌクレオチド配列、またはその変異体またはフラグメントの使用、あるいは配列番号60で実質的に示されるアミノ酸配列、またはその変異体またはフラグメントを含む、eIF4E蛋白質変異体またはeIF(iso)4E蛋白質変異体の使用を含むことが好ましい。
【0131】
本発明が、任意の核酸またはペプチド、あるいはその変異体、誘導体または類縁体((機能的)変異体または(機能的)フラグメントを含む、本明細書で言及される配列のいずれかのアミノ酸配列または核酸配列を実質的に含む)に及ぶことは、十分理解できるであろう。用語「実質的にアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列」、「(機能的)変異体」および「(機能的)フラグメント」は、本明細書で言及される配列のいずれか1つのアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列と、少なくとも40%の配列同一性を有する配列であり得る。
【0132】
言及される配列のいずれかと65%を超える配列同一性、より好ましくは70%を超える配列同一性、さらに好ましくは75%を超える配列同一性、いっそう好ましくは80%を超える配列同一性を有するアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列も、予想される。好ましくは、アミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列は、言及される配列のいずれかと、少なくとも85%の同一性を有し、より好ましくは本明細書で言及される配列のいずれかと、少なくとも90%の同一性、さらに好ましくは少なくとも92%の同一性、さらに好ましくは少なくとも95%の同一性、さらに好ましくは少なくとも97%の同一性、さらに好ましくは少なくとも98%の同一性そして、最も好ましくは少なくとも99%の同一性を有する。
【0133】
当業者は、2つのアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列間の同一性率の計算の仕方を十分理解するであろう。2つのアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列間の同一性率を計算するために、2つの配列のアラインメントを最初に作製しなければならず、続いて配列同一性値を計算する。2つの配列に関する同一性率は、(i)配列をアラインさせるために使用される方法、たとえば、ClustalW、BLAST、FASTA、Smith−Waterman(異なるプログラムで実行される)、または3D比較による構造アラインメント、および(ii)アラインメント法で使用されるパラメータ(たとえば、ローカルアラインメント対グローバルアラインメント)、使用されるペア−スコア・マトリクス(たとえばBLOSUM62、PAM250、Gonnet等)、およびギャップ−ペナルティ(たとえば関数形式および定数)によって異なる値をとり得る。
【0134】
アラインメントを行った後、2つの配列間の同一性率を計算する方法はいくつもある。たとえば、(i)最短配列の長さ、(ii)アラインメントの長さ、(iii)配列の平均長、(iv)非ギャップ位置の数、または(iv)オーバーハングを除く等価位置の数で、同一性の数を除してもよい。さらに、同一性率はまた、極めて長さ依存的であることも十分理解されるであろう。したがって、配列対が短いほど、偶然により生じると予期され得る配列同一性は高い。
【0135】
したがって、蛋白質配列またはDNA配列の正確なアラインメントが複雑なプロセスであることは十分理解されるであろう。よく知られている多重アラインメントプログラムClustalW(Thompson et al.,1994,Nucleic Acids Research,22,4673−4680、Thompson et al.,1997,Nucleic Acids Research,24,4876−4882)は、本発明による蛋白質またはDNAの多重アラインメントを作成するのに好ましい方法である。ClustalWに好適なパラメータは以下の通りであろう:DNAアラインメントについて:Gap Open Penalty=15.0、Gap Extension Penalty=6.66、およびMatrix=Identity。蛋白質アラインメントについて:Gap Open Penalty=10.0、Gap Extension Penalty=0.2、およびMatrix=Gonnet。DNAおよびたんぱくアラインメントについて:ENDGAP=−1、GAPDIST=4。当業者は、最適な配列アラインメントのためには、これらのパラメータおよび他のパラメータを変えることが必要なことに気付くであろう。
【0136】
好ましくは、2つのアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列間の同一性率の計算は、(N/T)*100のようなアラインメントから計算することが可能である(ここで、Nは、配列が同一残基を共有する位置の数であり、Tは、ギャップは含めるがオーバーハングは除外して比較された位置の総数である)。したがって、2つの配列間の同一性率を計算する最も好ましい方法は、(i)たとえば上記のような、好適なパラメータセットを使用し、ClustalWプログラムを使用して、配列アラインメントを作成すること、および(ii)N値およびT値を次式:配列同一性=(N/T)*100に挿入することを含む。
【0137】
類似した配列を同定する代替法は、当業者に分かるであろう。たとえば、実質的に類似したヌクレオチド配列は、ストリンジェントな条件下で、配列番号1、2、4、5、7または9で表される配列またはそれらの補体にハイブリダイズする配列によってコード化されるであろう。ストリンジェントな条件によって、ヌクレオチドがほぼ45℃の3x塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でフィルタ結合DNAまたはRNAにハイブリダイズし、ほぼ20〜65℃の0.2x SSC/0.1%SDS中での少なくとも1回の洗浄が後に続くことを意味する。あるいは、実質的に類似したペプチドは、配列番号3、6、8または10で表される配列と、少なくとも1つ、しかし5、10、20、50または100未満のアミノ酸だけ、異なる。当業者は、単一のヌクレオチド変異または核酸配列における突然変異を同定するための、高感度の技法を熟知しているであろう。
【0138】
遺伝子コードの縮重が原因で、本明細書の記載のいずれの核酸配列も、それによってコード化される蛋白質の配列に実質的に影響を与えることなく、変異または変化して、その(機能的)変異体を提供することは明らかである。好適なヌクレオチド変異体は、同じアミノ酸をコード化する異なるコドンの置換によって変更された配列を配列内に有するものであり、したがってサイレント変化を生じさせるものである。他の好適な変異体は、相同のヌクレオチド配列を有するが、置換するアミノ酸と類似した生物物理学的特性の側鎖を有するアミノ酸をコード化する異なるコドンの置換によって変更され、保存的変化を生じさせる、配列の全部、または一部を含むものである。たとえば、小さい、非極性の、疎水性アミノ酸としては、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリンおよびメチオニンなどがある。大きい、非極性の、疎水性アミノ酸としては、フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンなどがある。極性の中性アミノ酸としては、セリン、スレオニン、システイン、アスパラギンおよびグルタミンなどがある。正電荷を持つ(塩基性)アミノ酸としては、リシン、アルギニンおよびヒスチジンなどがある。負電荷を持つ(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸などがある。したがって、どのアミノ酸を、類似した生物物理学的特性を有するアミノ酸と置換することが可能か十分に理解されるであろうし、また当業者には、これらのアミノ酸をコード化しているヌクレオチド配列が分かるであろう。
【0139】
本明細書(あらゆる添付の特許請求の範囲、要約および図面を含む)に記載の全ての特徴、および/またそのように開示されるあらゆる方法またはプロセスのステップは全て、そのような特徴および/またはステップの少なくとも一部が相互排他的である組合せを除き、前述の態様のいずれかと任意の組合せで組み合わせることが可能である。
【実施例】
【0140】
実施例1−ウイルス−抵抗性を与えるeIF(iso)4E配列の分析、およびウイルス−抵抗性を与える第1遺伝子座、retr01の単離
TuMVに対する植物抵抗性を与えることに関わる遺伝子および機序を同定する目的で、本発明者はB.ラパ(B.rapa)で調査した。
【0141】
材料および方法
B.ラパ(B.rapa)系統R−o−18は、TuMVによる感染に易感染性の同系交配系統である。しかし、系統RLR22は、今までに試験した全てのTuMV単離株に対して広域スペクトル抵抗性を有する。総ゲノムDNAは、系統R−o−18およびRLR22系統の若葉から、DNeasy plant mini kit(Qiagen)を使用して抽出し、続いてGenomiPhi system(GE Healthcare)を使用して増幅した。Taq DNA ポリメラーゼ(Invitrogen)および以下のプライマーを使用し、標準PCRで、BraA.eIF(iso)4E.a遺伝子のゲノムコード領域の大部分を増幅した。
PCR1(ATGGCGACAGAGGATGTGAACG)−(配列番号11)および
PCR2(TCTCCTTCCACTTCTTCCCAATAC)−(配列番号12)
【0142】
eIF(iso)4E遺伝子座aに相当する、最大の増幅産物を、アガロースゲルおよびQiaquick gel extraction kit(Qiagen)を使用して精製した。次いで、RediPrime(商標)II DNA labelling system(GE Healthcare)を使用して、
32P dCTPでPCR産物を標識し、プローブを形成した。次いで、こうした放射標識したプローブを、JBr BACライブラリー(系統R−o−18)または系統RLR22のフォスミドライブラリー(Warwick Plant Genome Libraries,UK)の36864コロニーをプリントしたフィルターにハイブリダイズさせ、BraA.eIF(iso)4E.aを有するプラスミド(それぞれJBr043O19およびRLR021G13)を含むコロニーを同定した。BigDye Terminator systemおよびABIPrism 3130xl Genetics Analyzer(Applied Biosystems)を使用して、段階的な方法で、これらのプラスミドの部分を配列決定し、2つの対立遺伝子の完全なゲノム配列を決定した。
【0143】
総RNAは、RNeasy kit(Qiagen)を使用して、両植物系統の若葉から抽出した。幾つかの総RNA試料を、DNaseI(Roche)で処理して、ゲノムDNAのあらゆる残遺物を除去した。RT−FORプライマーおよびRT−REVプライマーは、BraA.eIF(iso)4E.a遺伝子の完全なコード領域を含む(開始コドンおよび終止コドンをボールド体で示す、クローニング用のアダプターをイタリック体で示す)。
【0144】
RT−FOR:AAAAAGCAGGCT CGATGGCGACAGAGGATG(配列番号13)
RT−REV(R−o−18):AGAAAGCTGGGT TCAGACAGTGAACCTAGTTCTTC(配列番号14)
RT−REV(RLR22):AGAAAGCTGGGT TCAGACAGTGAACCGAGTTCTTC(配列番号15)
【0145】
総RNA(DNaseI処理した、またはDNaseI処理しないRNA約10μg)を、Superscript II(Invitrogen)および好適なRT−REVプライマーを使用した標準逆転写反応でcDNAに変えた。Taq DNA ポリメラーゼ(Invitrogen)またはKOD ポリメラーゼ(Novagen)および好適なRT−FORプライマーとRT−REVプライマーとの組合せを使用した標準PCRで、cDNAを増幅した。RT−PCR産物は、アガロースゲル電気泳動法を使用して分離し、Qiaquick gel extraction kit(Qiagen)を使用してゲルから抽出した。BP クロナーゼ(Invitrogen)を使用して、産物をプラスミドpDONR221にクローニングした。TempliPhi reaction(GE Healthcare)を使用して、プラスミドを増幅し、次いで配列決定した。
【0146】
結果
本発明者は、世界各地の様々なTuMV単離株に対して抵抗性を有し、かつ異なる遺伝群を表す、B.ラパ(B.rapa)系統、RLR22を同定した。
図8は、eIF(iso)4E.aのRLR22対立遺伝子についてホモ接合の植物は、TuMV感染に抵抗性がある(左)が、eIF(iso)4E.aのB.ラパ(B.rapa)R−o−18対立遺伝子についてホモ接合、またはヘテロ接合の植物は、TuMV感染に易感染性である(右)ことを説明している。
【0147】
まず第一に、本発明者は、ウイルス抵抗性表現型がeIF(iso)E遺伝子座と関連していることを発見した。易感染性系統(R−o−18)と抵抗性系統(RLR22)との間の交配を使用して、本発明者は、B.ラパ(B.rapa)が3つのeIF(iso)4E遺伝子座を含むことを確認した。
【0148】
第二に、系統R−o−18および系統RLR22におけるBraA.eIF(iso)4E.aの、ゲノムバージョンの配列とmRNAバージョンの配列を比較した。
図1は、ブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)eIF(iso)4E.a mRNA、および対照としての、アラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana)eIF4EおよびeIF(iso)4E mRNAの、RT−PCR産物の電気泳動ゲルを表す。ゲルで分かる通り、ウイルス抵抗性系統、RLR22由来の、BraA.eIF(iso)4E.aのmRNAは、感染した系統、R−o−18から得たBraA.eIF(iso)4E.aのmRNAより大きい。
【0149】
系統R−o−18におけるBraA.eIF(iso)4E.aのゲノム配列を配列番号1として提供し、RLR22のゲノム配列を、配列番号4として提供する。BraA.eIF(iso)4E.aのシーケンシングに続いて、本発明者は、2つの対立遺伝子(R−o−18およびRLR22における)は、エクソン/イントロン接合点における1塩基挿入/欠失(すなわち1「インデル」)だけ異なることを発見した。ウイルス−易感染性系統R−o−18では、eIF(iso)4E.a対立遺伝子の、単一のmRNA配列が発見され、そのmRNA配列を配列番号2として提供する。mRNAは、
図3に表されている図式によって表される通り、全長蛋白質を産生することができ、またその蛋白質配列を配列番号3として提供する。
【0150】
しかし、ウイルス抵抗性系統RLR22では、eIF(iso)4E.aのmRNAのスプライス変異体が幾つか発見された。eIF(iso)4E.aのmRNAは、主として、発現されたDNAに第1イントロンが依然として存在する産物(配列番号5として示される)からなり、より長いeIF(iso)4E.a蛋白質を形成し、これによって、なぜ
図1に示すRLR22でフラグメントがより長いのかが説明される。他のさらに希少な、eIF(iso)4E.aのスプライス変異体も同定された。すなわち、
図5に表示されている通り、配列番号7は、保持された3’末端の15塩基を除き、第1イントロンの大部分が除去されていた。配列番号9は、
図6に表示されている通り、第1イントロンの全てが除去されており、エクソン1の3’末端の3塩基も除去されていた。こうしたスプライシング変異体はどれも、全長の「正確な」eIF(iso)4E.a蛋白質を産生することができないであろう、すなわち、ウイルス感染に易感染性である系統R−o−18のように、スプライシングが正確に行われたかのように全長蛋白質を産生することができないであろう。配列番号5、7および9から翻訳されたアミノ酸配列を、それぞれ配列番号6、8および10として表す。本発明者は、改変された蛋白質はどれも、TuMVにとって機能的ではないであろうと考えている。
【0151】
これまで報告されたeIF(iso)4Eに基づいたポチウイルス類に対する劣性抵抗性は、遺伝子のコード領域(エクソン)のみの塩基の変化によって生じ、変化した蛋白質配列(変化したアミノ酸残基または未熟な鎖終結)をもたらしていた。しかし、ウイルス抵抗性系統RLR22の場合、抵抗性は意外にも遺伝子の非コード領域(イントロン)における変化に関係している。eIF(iso)4E.a対立遺伝子における「インデル」は、系統RLR22における正確なスプライシングを混乱させ、ウイルスゲノム翻訳にとって機能的なeIF(iso)4Ea蛋白質を何も生じない(または大幅に減少して生じる)結果となり、最終的にウイルス感染を招かないことを、本発明者は示した。本発明者は、ウイルス抵抗性系統RLR22由来の対立遺伝子、BraA.eIF(iso)4E.aを、retr01と命名した。
【0152】
実施例2−TuMV感染に抵抗性がある植物の育種
TuMVに抵抗性があるB.ラパ(B.rapa)植物は、以下の育種プログラムから得ることが可能であり、そのプログラムを
図8に図示する。
【0153】
図8を参照すると、所望の農学的形質を有するレシピエントB.ラパ(B.rapa)植物を、ウイルス抵抗性RLR22植物と交配し、その子孫(F
1)をレシピエント親(回帰)植物系統と戻し交配する。分子技術(たとえばBraA.eIF(iso)4E.a対立遺伝子を識別するための、PCRおよびシークエンシングまたは他の特異的PCRに基づいた方法)を使用して、RLR22に由来するBraA.eIF(iso)4E.aの対立遺伝子(ウイルス抵抗性を与える)が、各交配で、非回帰植物に存在することを確実にする。最終的に、BraA.eIF(iso)4E.aのRLR22対立遺伝子を有する戻し交配プログラムによって得られる植物を自殖させる(すなわち自家受粉させる)。BraA.eIF(iso)4E.aのRLR22対立遺伝子についてホモ接合である次世代の植物を、上述の分子技術によって同定する。
【0154】
ウイルス抵抗性を有するF
1雑種植物を育種するためには、別々の戻し交配プログラムによって得られる2つの植物系統が、第1態様のeIF4EまたはeIF(iso)4Eについてホモ接合でなければならない。次いで、こうした系統を交配して、次には第1態様のeIF4EまたはeIF(iso)4Eについてホモ接合であろう、F
1ハイブリッドを作り出す。
【0155】
実施例3−ポチウイルス感染に抵抗性がある植物の育種
ある特定のポチウイルスに抵抗性がある植物は、以下の育種プログラムにより得ることが可能である。
【0156】
レシピエント植物を、eIF4Eおよび/またはeIF(iso)4Eのスプライシングに関して欠陥がある植物と交配し、その子孫をレシピエント親(回帰)植物系統と戻し交配する。分子技術(PCRおよびシークエンシングまたは他の特異的PCRに基づいた試験)を使用して、スプライシングに欠陥があり、抵抗性を与える、eIF4Eおよび/またはeIF(iso)4Eの対立遺伝子が、各交配で、非回帰植物に存在することを確実にする。スプライシングに欠陥があり、抵抗性を与える、eIF4Eおよび/またはeIF(iso)4E対立遺伝子を有する戻し交配プログラムによって得られる植物を、自殖させる。上述の分子技術を使用して、スプライシングに欠陥があるeIF4Eおよび/またはeIF(iso)4Eの対立遺伝子についてホモ接合である次世代の植物を同定する。最終的に、こうした植物を自殖させて、所望のeIF4E/eIF(iso)4E対立遺伝子についてホモ接合である系統/ファミリーを提供する。
【0157】
ウイルス抵抗性を有するF
1雑種植物を育種するためには、別々の戻し交配プログラムによって得られる2つの植物系統が、第1態様のeIF4EまたはeIF(iso)4Eについてホモ接合でなければならない。次いで、こうした系統を交配して、次には第1態様のeIF4EまたはeIF(iso)4Eについてホモ接合であろう、F
1ハイブリッドを作り出す。
【0158】
実施例4−ウイルス−抵抗性を与える第2の遺伝子座、ConTR01の単離
実施例1〜3に記述されているシナリオは、ある特定のウイルスがそのライフサイクルを完成するために利用することができる、eIF4Eおよび/またはeIF(iso)4Eのコピーをたった1つ有する植物におけるウイルス抵抗性を説明するのに十分である。しかし、一部の植物は、こうした2つの遺伝子の一方、または両者の、複数のコピー/遺伝子座を有する。たとえば、ブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)はeIF4EとeIF(iso)4Eの両方の3コピーを有し、ウイルスはこれらの遺伝子のいずれかを使用してそのライフサイクルを完成することが可能である。したがって、eIF4Eおよび/またはeIF(iso)4Eの複数のコピー/遺伝子座を有する植物でウイルス抵抗性を与えるためには、こうした他の遺伝子座の各々におけるeIF4Eおよび/またはeIF(iso)4Eの対立遺伝子が、ウイルスにとって非機能的であることが必要である。
【0159】
B.ラパ(B.rapa)TuMV−易感染性系統R−o−18とTuMV−抵抗性系統RLR22との間で、上述の交配を使用して、BraA.eIF(iso)4E.aのRLR22対立遺伝子とBraA.eIF4E.cのRLR22対立遺伝子についてホモ接合であったが、BraA.eIF(iso)4E.c遺伝子座でヘテロ接合であった、B
1植物を同定した。次いで、この特定の個体に由来するB
1S
1植物を、表現型検査および遺伝子型検査した。BraA.eIF(iso)4E.cのRLR22対立遺伝子についてホモ接合の植物は、TuMVの全身的な広がりに対して完全に抵抗性があり、ヘテロ接合体はウイルス感染に対して僅かに易感染性に過ぎなかったが、BraA.eIF(iso)4E.cのR−o−18対立遺伝子についてホモ接合であった植物は、完全に易感染性であった。
【0160】
B.ラパ(B.rapa)で、TuMVに対する広域スペクトル抵抗性に関わる第2の遺伝子座が、染色体A8上のBraA.eIF(iso)4E.cとして今や同定され、本明細書ではConTR01と呼ばれる。これによって、B.ラパ(B.rapa)におけるTuMVに対する広域スペクトル抵抗性には、retr01(BraA.eIF(iso)4E.aのRLR22対立遺伝子)に加えて、第2の遺伝子(ConTR01、BraA.eIF(iso)4E.cのRLR22対立遺伝子)が必要なことが確認され、またウイルスがeIF4Eおよび/またはeIF(iso)4Eの複数のコピー/遺伝子座を利用できる植物で、抵抗性を与えるためには、2つ以上の遺伝子が重要なことが証明される。
【0161】
材料と方法
総ゲノムDNAは、R−o−18系統およびRLR22系統の若葉から、DNeasy plant mini kit(Qiagen)を使用して抽出し、続いてGenomiPhi system(GE Healthcare)を使用して増幅した。BraA.eIF4E.a遺伝子、BraA.eIF4E.b遺伝子(R−o−18のみ)、BraA.eIF4E.c遺伝子、BraA.eIF(iso)4E.b遺伝子およびBraA.eIF(iso)4E.c遺伝子のゲノムコード領域を、Taq DNA ポリメラーゼ(Invitrogen)および下記のプライマーを使用して標準PCRで増幅した。BigDye Terminator systemおよびABI Prism 3130xl Genetics Analyzer(Applied Biosystems)を使用して、段階的な方法で、これらの産物の部分を配列決定し、対立遺伝子の完全なゲノム配列を決定する。BraA.eIF4E.bは、非機能的であるため、RLR22から配列決定されなかった。得られた配列の概要を表1に記載する。
【0162】
【表1】
【0163】
ブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)系統R−o−18およびRLR22由来のeIF4EおよびeIF(iso)4E対立遺伝子を増幅または配列決定するために使用されたプライマー:
R−o−18BraA.eIF4E.a:
順方向(BR57):AAAAAGCAGGCTTTTGGTCTGCAGTTATGTTATTAG(配列番号16)
逆方向(BR58):AGAAAGCTGGGTAAAAAGGCTTGCGAGTCA(配列番号17)
【0164】
R−o−18BraA.eIF4E.b:
順方向(BR71):CAATGGCGGTAGAAGACACT(配列番号18)
逆方向(BR50):AGTTGAGTTTTTGTTCTTAC(配列番号19)
【0165】
R−o−18BraA.eIF4E.c:
順方向(BR59):AAAAAGCAGGCTTAGGACAAATGATATGGGGAGAGT(配列番号20)
逆方向(BR60):AGAAAGCTGGGTAGCTTGGCGACCTTTTGA(配列番号21)
【0166】
R−o−18BraA.eIF(iso)4E.b:
順方向(BR73):TGAAAGGGGCGAAAAACACAT(配列番号22)
逆方向(BR74):GCAAACCGACAAAATAAGGAAGAA(配列番号23)
【0167】
R−o−18BraA.eIF(iso)4E.c:
順方向(BR63):AAAAAGCAGGCTTTTTTAAGAATGGAGGGAGTAT(配列番号24)
逆方向(BR64):AGAAAGCTGGGTGAAGCGCGGGTCAAAAT(配列番号25)
【0168】
RLR22BraA.eIF4E.a:
順方向(BR68):AAAAAGCAGGCTTTTGGTCTGCAATTATCTTATTAG(配列番号26)
逆方向(BR58):AGAAAGCTGGGTAAAAAGGCTTGCGAGTCA(配列番号27)
【0169】
RLR22BraA.eIF4E.c:
順方向(59):AAAAAGCAGGCTTAGGACAAATGATATGGGGAGAGT(配列番号28)
逆方向(60):AGAAAGCTGGGTAGCTTGGCGACCTTTTGA(配列番号29)
【0170】
RLR22BraA.eIF(iso)4E.b:
順方向(BR73):TGAAAGGGGCGAAAAACACAT(配列番号30)
逆方向(BR74):GCAAACCGACAAAATAAGGAAGAA(配列番号31)
【0171】
RLR22BraA.eIF(iso)4E.c:
順方向(BR80):AAAAAGCAGGCTCGAAGAAGTCCGCATAAAGC(配列番号32)
逆方向(BR81):AGAAAGCTGGGTACCCGTCCGTGGATTAAATA(配列番号33)
【0172】
実施例5−広域スペクトル抵抗性に関わる第2の遺伝子(ConTR01)の同定
B.ラパ(B.rapa)系統R−o−18は、TuMVに易感染性の同系交配系統である。TuMVに抵抗性がある、系統RLR22は、今までに試験した全てのTuMV単離株に対して広域スペクトル抵抗性を有する(Walsh et al.2002,European Journal of Plant Pathology 108,15−20)。B.ラパ(B.rapa)TuMV−易感染性系統R−o−18とTuMV−抵抗性系統RLR22との間の交配から(Rusholme et al.2007,Journal of General Virology 88,3177−3186)。B
1植物16は、BraA.eIF(iso)4E.aおよびBraA.eIF4E.cのRLR22対立遺伝子についてホモ接合であると同定されたが、BraA.eIF(iso)4E.c遺伝子座でヘテロ接合であると同定された。RLR22およびR−o−18は、BraA.eIF(iso)4E.b遺伝子座に同じ対立遺伝子を有し、またBraA.eIF4E.bにおけるR−o−18対立遺伝子は、非常に短縮されたポリペプチドを提供する偽遺伝子であるため、この植物についてこうした対立遺伝子は決定されなかった。
【0173】
B
1植物16に由来するB
1S
1種子を蒔いた。総ゲノムDNAは、発芽させた植物の若葉から、DNeasy plant mini kit(Qiagen)を使用して抽出し、続いてGenomiPhi system(GE Healthcare)を使用して増幅した。次いで、プライマーBR2(TCTCCTTCCACTTCTTCCCAATAC−配列番号61)およびBR14(TAGACAAGGCTTGGCTTGAAACTG−配列番号62)を使用して、植物のBraA.eIF(iso)4E.c遺伝子座の遺伝子型検査をした。こうしたプライマーは、RLR22について3サイズの産物を産生し(
図9参照)、R−o−18について3サイズの産物を産生する。最大の産物は、両植物ともにBraA.eIF(iso)4E.aに相当し、中型の産物はBraA.eIF(iso)4E.bに相当し、最小の産物は両植物ともにBraA.eIF(iso)4E.cに相当する。BraA.eIF(iso)4E.cのR−o−18対立遺伝子に関する産物(566bp)は、RLR22対立遺伝子に関する産物(546bp)より大きく、容易に識別できる(
図9参照)。ゲルで分かる通り、易感染性植物R−o−18由来のBrA.eIF(iso)4Ecに関するPCR産物は、抵抗性植物RLR22のそれより大きい。
【0174】
3〜5葉期に、TuMV単離株CDN1を植物に機械的に接種し、Rusholmeら(2007)により記述されている視覚的評価およびELISAで、感染/抵抗性表現型を決定した。植物に関する遺伝子型、表現型およびELISA値を表2に提供する。
【0175】
【表2】
【0176】
BraA.eIF(iso)4E.cのRLR22対立遺伝子についてホモ接合の植物はTuMVに対して完全に抵抗性があり、ヘテロ接合体は検出可能な感染を何も示さないか、または接種した葉から限定された数の未接種葉にウイルスが広がったが、その後それ以上広がらない、僅かに易感染性かのいずれかであった。BraA.eIF(iso)4E.cのR−o−18対立遺伝子についてホモ接合であった植物は、完全に易感染性であった。TuMVはBraA.eIF(iso)4E.cのR−o−18対立遺伝子を使用することができ、完全な全身性感染を確立するためには、植物はこの対立遺伝子についてホモ接合であることが必要なことが、結果から分かる。この遺伝子座でヘテロ接合であった植物の接種結果から、R−o−18対立遺伝子の1コピーは、TuMVが最も悪化した全身性感染を確立するのに十分ではないことが分かる。ヘテロ接合体の表現型間の違い(易感染性ではないか、または限定された易感染性)は、恐らく、全身的な広がりが起こるために、ウイルスが接種された葉で十分に高い力価を確立する必要性におそらく関連している。
【0177】
表3は、TuMVが本明細書に記載の6つの対立遺伝子を使用する能力の概要を提供する。BraA.eIF(iso)4E.aはretr01であり、BraA.eIF(iso)4E.cはConTR01である。
【0178】
【表3】
【0179】
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕ウイルスに対して非機能的である、単離された植物真核細胞の翻訳開始因子4E(eIF4E)変異体またはそのアイソフォーム(eIF(iso)4E)であって、前記eIF4EまたはeIF(iso)4Eをコードしている核酸が、ミススプライスされていることを特徴とする、単離された植物真核細胞の翻訳開始因子4E(eIF4E)変異体またはそのアイソフォーム(eIF(iso)4E)。
〔2〕前記eIF4EまたはeIF(iso)4Eをコードしているミススプライスされた遺伝子が、前記核酸配列における改変に起因する、前記〔1〕に記載の単離された植物真核細胞の翻訳開始因子4E(eIF4E)変異体またはそのアイソフォーム(eIF(iso)4E)。
〔3〕前記改変が、前記遺伝子の非コード領域に生じる、前記〔2〕に記載の単離された植物真核細胞の翻訳開始因子4E(eIF4E)変異体またはそのアイソフォーム(eIF(iso)4E)。
〔4〕前記改変が、前記eIF4EまたはeIF(iso)4Eをコードしている核酸配列におけるミスプライス要素に生じる、前記〔2〕または〔3〕に記載の単離された植物真核細胞の翻訳開始因子4E(eIF4E)変異体またはそのアイソフォーム(eIF(iso)4E)。
〔5〕前記改変が、前記eIF4EまたはeIF(iso)4Eをコードしている核酸配列のイントロンに位置する、前記〔2〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の単離された植物真核細胞の翻訳開始因子4E(eIF4E)変異体またはそのアイソフォーム(eIF(iso)4E)。
〔6〕前記改変がイントロン1に位置する、前記〔2〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の単離された植物真核細胞の翻訳開始因子4E(eIF4E)変異体またはそのアイソフォーム(eIF(iso)4E)。
〔7〕前記改変が少なくとも1塩基の挿入または欠失を含む、前記〔2〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の単離された植物真核細胞の翻訳開始因子4E(eIF4E)変異体またはそのアイソフォーム(eIF(iso)4E)。
〔8〕前記改変が少なくとも1つのグアニンの挿入を含む、前記〔2〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の単離された植物真核細胞の翻訳開始因子4E(eIF4E)変異体またはそのアイソフォーム(eIF(iso)4E)。
〔9〕前記改変が、配列番号1の201位に、好ましくはグアニンの挿入を含む、前記〔2〕〜〔8〕のいずれか1項に記載の単離された植物真核細胞の翻訳開始因子4E(eIF4E)変異体またはそのアイソフォーム(eIF(iso)4E)。
〔10〕配列番号6、8または10で実質的に示されるアミノ酸配列、またはその変異体またはフラグメントを含む、前記〔1〕〜〔9〕のいずれか1項に記載の単離された植物真核細胞の翻訳開始因子4E(eIF4E)変異体またはそのアイソフォーム(eIF(iso)4E)。
〔11〕前記eIF4E蛋白質またはeIF(iso)4E蛋白質をコードする核酸が、配列番号4、5、7または9で実質的に示される配列、またはその変異体またはフラグメントを含む、前記〔1〕〜〔10〕のいずれか1項に記載の単離された植物真核細胞の翻訳開始因子4E(eIF4E)変異体またはそのアイソフォーム(eIF(iso)4E)。
〔12〕植物真核細胞の翻訳開始因子4E(eIF4E)、またはそのアイソフォーム(eIF(iso)4E)の、選択的にスプライスされた変異体をコードしている単離された核酸配列であって、前記eIF4EまたはeIF(iso)4Eがウイルスにとって非機能的であるように、前記核酸配列がミススプライスされている、単離された核酸配列。
〔13〕前記eIF4EまたはeIF(iso)4Eが、前記〔1〕〜〔11〕のいずれか1項に明確に規定されている、前記〔12〕に記載の単離された核酸配列。
〔14〕前記〔13〕に記載の核酸配列を含む、組み換えベクター。
〔15〕前記〔14〕に記載のベクターを含む、宿主細胞。
〔16〕ウイルスにとって非機能的である、植物真核細胞の翻訳開始因子4E(eIF4E)変異体、またはそのアイソフォーム(eIF(iso)4E)の存在を、試験植物で、検出する方法であって、前記eIF4EまたはeIF(iso)4Eをコードしている核酸がミススプライスされており、
(i)試験植物からRNAを単離するステップと、
(ii)eIF4EまたはeIF(iso)4Eに特異的なプライマーを使用して、ステップ(i)で単離される前記RNAからcDNAを産生するステップと、
(iii)ステップ(ii)で産生される前記cDNAの配列を決定するステップと、 (iv)ステップ(iii)で決定される前記cDNA配列を、野生型eIF4EまたはeIF(iso)4EのcDNA配列と比較するステップと
を含み、
野生型配列と比較される前記ステップ(iii)の配列における変異は、前記試験植物における前記eIF4EまたはeIF(iso)4Eをコードしている前記核酸がミススプライスされており、eIF4EまたはeIF(iso)4Eの変異体であることを示す、方法。
〔17〕eIF4EまたはeIF(iso)4Eのミススプライシングを引き起こす前記植物ゲノムにおける前記改変を同定するステップをさらに含み、前記同定ステップが、eIF4EまたはeIF(iso)4E遺伝子についてホモ接合であるように、前記試験植物を育種することを含む、前記〔16〕に記載の方法。
〔18〕前記eIF4EまたはeIF(iso)4E変異体が、前記〔1〕〜〔11〕のいずれか1項に規定されている、前記〔17〕に記載の方法。
〔19〕ウイルス抵抗性植物を選択する方法であって、
(i)前記〔1〕〜〔11〕のいずれか1項に記載の、植物真核細胞の開始因子4E(eIF4E)変異体またはそのアイソフォーム(eIF(iso)4E)、および
(ii)野生型eIF4EまたはeIF(iso)4Eの少なくとも1つのコピーであって、前記植物は使用することができるが、ウイルスは使用することができない、前記eIF4EまたはeIF(iso)4Eの野生型コピー、
の存在を、試験植物で、検出することを含む、方法。
〔20〕植物においてウイルス抵抗性を誘導するための、前記〔1〕〜〔11〕のいずれか1項に記載の植物真核細胞の開始因子4E(eIF4E)変異体またはそのアイソフォーム(eIF(iso)4E)、または前記〔12〕または〔13〕のいずれかに記載の核酸の使用。
〔21〕前記〔1〕〜〔11〕のいずれか1項に記載の植物真核細胞の開始因子4E(eIF4E)変異体またはそのアイソフォーム(eIF(iso)4E)を発現する親植物を、レシピエント植物と交配することを含み、前記レシピエントは、農学的利点、商業的利点、および/またはある特定の気候または土壌への適合性からなる群から選択される少なくとも1つの形質を含む、ウイルス抵抗性植物を作り出す方法。
〔22〕前記〔21〕に記載の方法で作り出される、または得られる、ウイルス抵抗性植物。
〔23〕前記〔1〕〜〔11〕のいずれか1項に記載の植物真核細胞の翻訳開始因子4E(eIF4E)変異体またはそのアイソフォーム(eIF(iso)4E)、または、前記〔12〕または前記〔13〕のいずれかに記載の核酸を含む、ウイルス抵抗性植物。
〔24〕前記植物が、野生型eIF4EまたはeIF(iso)4Eの少なくとも1つのコピーを発現し、前記eIF4EまたはeIF(iso)4Eの野生型コピーを、前記植物は使用することができるが、ウイルスは使用することができない、前記〔22〕または前記〔23〕のいずれかに記載のウイルス抵抗性植物。
〔25〕前記植物が、バラシカ種(Brassica spp)、好ましくはB.ラパ(B.rapa)および/またはブラッシカ・オレラセア(Brassica oleracea)である、前記〔22〕〜〔24〕のいずれか1項に記載のウイルス抵抗性植物。
〔26〕トランスジェニック植物の使用を含む、前記〔16〕〜〔19〕または〔21〕のいずれか1項に記載の方法、前記〔20〕に記載の使用または前記〔22〕〜〔25〕のいずれか1項に記載の植物。
〔27〕ウイルスにとって非機能的である、前記植物真核細胞の翻訳開始因子4E(eIF4E)、またはそのアイソフォーム(eIF(iso)4E)の前記選択的にスプライスされた変異体をコードする、eIF4Eおよび/またはeIF(iso)4Eについて前記植物がホモ接合である、前記〔16〕〜〔19〕または〔21〕のいずれか1項に記載の方法、前記〔20〕に記載の使用、または前記〔22〕〜〔26〕のいずれか1項に記載の植物。
〔28〕eIF4Eおよび/またはeIF(iso)4Eの複数のコピー/遺伝子座を有する植物でウイルス抵抗性を与えるために、こうした他の遺伝子座の各々における前記eIF4Eおよび/またはeIF(iso)4Eの対立遺伝子もやはり、前記ウイルスにとって非機能的である、前記〔16〕〜〔19〕または前記〔21〕のいずれか1項に記載の方法、前記〔20〕に記載の使用、または、前記〔22〕〜〔27〕のいずれか1項に記載の植物。
〔29〕植物真核細胞の翻訳開始因子4E(eIF4E)、またはそのアイソフォーム(eIF(iso)4E)をコードしている単離された核酸配列であって、前記eIF4EまたはeIF(iso)4Eがウイルスにとって非機能的であり、前記核酸配列が、配列番号4、5、7、9、34、35、37、38、40、41、43、44、46、47、49、50、52、53、58または59で実質的に示されるヌクレオチド配列、またはその変異体またはフラグメントを含む、単離された核酸配列。
〔30〕ウイルスにとって非機能的である、単離された植物真核細胞の翻訳開始因子4E(eIF4E)変異体、またはそのアイソフォーム(eIF(iso)4E)であって、eIF4E蛋白質変異体またはeIF(iso)4E蛋白質変異体が、配列番号6、8、10、36、39、42、45、48、51、54または60で実質的に示されるアミノ酸配列、またはその変異体またはフラグメントを含む、単離された植物真核細胞の翻訳開始因子4E(eIF4E)変異体、またはそのアイソフォーム(eIF(iso)4E)。
〔31〕配列番号4、5、7、9、34、35、37、38、40、41、43、44、46、47、49、50、52、53、58または59で実質的に示されるヌクレオチド配列、またはその変異体またはフラグメントを含む、前記〔14〕に記載のベクター、前記〔15〕に記載の宿主細胞、前記〔16〕〜〔19〕または〔21〕のいずれか1項に記載の方法、前記〔20〕に記載の使用、前記〔22〕〜〔28〕のいずれか1項に記載の植物。
〔32〕配列番号6、8、10、36、39、42、45、48、51、54または60で実質的に示されるアミノ酸配列、またはその変異体またはフラグメントを含む、eIF4E蛋白質変異体またはeIF(iso)4E蛋白質変異体を含む、前記〔14〕に記載のベクター、前記〔15〕に記載の宿主細胞、前記〔16〕〜〔19〕または〔21〕のいずれか1項に記載の方法、前記〔20〕に記載の使用、または前記〔22〕〜〔28〕のいずれか1項に記載の植物。
〔33〕配列番号58または59で実質的に示されるヌクレオチド配列、またはその変異体またはフラグメントの使用、あるいは配列番号60で実質的に示されるアミノ酸配列、またはその変異体またはフラグメントを含むeIF4E蛋白質変異体またはeIF(iso)4E蛋白質変異体の使用を含む、前記〔14〕に記載のベクター、前記〔15〕に記載の宿主細胞、前記〔16〕〜〔19〕または〔21〕のいずれか1項に記載の方法、前記〔20〕に記載の使用、または前記〔22〕〜〔28〕のいずれか1項に記載の植物。
〔34〕前記植物が、ジャガイモ、トマト、コショウまたはナス等のナス科(Solanaceae)、メロン、カボチャおよびキュウリ等のウリ科(Cucurbits)、アブラナ科(Cruciferous)作物、ブラッシカ種(Brassica spp)、アブラ菜等のブラッシカ・ナプス(Brassica napus)、白菜等のブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)、ブロッコリー、カリフラワー、キャベツ、チリメンキャベツ、芽キャベツ、赤キャベツ等の、ブラッシカ・オレラセア(Brassica oleracea)、ブラッシカ・オレラセア(Brassica oleracea)、マメ科(Fabaceae)エンドウ豆、豆、豆類等、またはコメ、トウモロコシ、コムギ、もしくはオオムギ等を含む、単子葉作物、である、前記〔16〕〜〔19〕または〔21〕のいずれか1項に記載の方法、前記〔20〕に記載の使用、前記〔22〕〜〔28〕のいずれか1項に記載の植物。