【文献】
地震保険金の早期お支払いに向けた対応について,日本損害保険協会,2011年 3月28日,URL,http://www.sonpo.or.jp/news/release/2011/1103_07.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
保険の契約者ごとの保険契約情報を記憶する保険契約情報データベースを備える保険業務支援システムにおいて被災した契約者を特定するための、コンピュータにより実行される方法であって、
上空画像を取得するステップと、
前記取得した上空画像に含まれる特徴に基づいて、該上空画像が含むエリアの中から全損エリアを特定するステップと、
前記特定された全損エリアと、前記保険契約情報が含む契約者の住所とに基づいて、該全損エリア内の契約者を特定するステップと、
を含み、
前記全損エリアを特定するステップは、
前記取得した上空画像の単位要素の各々の特徴量であって、複数の成分を含む特徴量を算出するステップと、
特徴量を構成する各成分を座標軸に割り当てた特徴空間内における、各単位要素に対応する特徴量の分布を所定数のクラスタにクラスタリングするステップと、
全損エリアに対応する特徴量が含まれるクラスタに基づいて全損エリアを特定するステップと、
を含む、方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
保険会社は、(1)事故の受付、(2)初動対応、(3)損害調査を経て、(4)保険金支払を行うため、保険加入者が保険金を受領するまでに時間を要するという問題がある。一方、事故に遭遇した保険加入者は、可能な限り早く保険金を受領したいという要望がある。特に大きな自然災害等の事故の場合は、被災した保険加入者はより早い保険金の受領を要望する一方、保険会社による(1)事故の受付〜(3)損害調査は通常より多くの時間を要することが多い。このような状況において、例えば特許文献1は、(4)保険金支払の段階における保険加入者がより早く保険金を利用することが可能な技術を開示する。しかしながら、保険業務(1)〜(3)の少なくとも一部を自動化して人手による対応を低減して、保険加入者がより早く保険金を利用することが可能なシステムの開発が望まれている。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、保険業務の少なくとも一部を自動化し、保険加入者がより早く保険金を受領することが可能な保険業務支援システムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様としてのシステムは、保険業務支援システムであって、保険の契約者ごとの保険契約情報を記憶する保険契約情報データベース及び被災した契約者を特定するための契約者特定装置を備え、前記契約者特定装置は、上空画像を取得する画像取得部と、前記取得した上空画像に含まれる特徴に基づいて、該上空画像が含むエリアの中から全損エリアを特定する全損エリア特定部と、前記特定された全損エリアと、前記保険契約情報が含む契約者の住所とに基づいて、該全損エリア内の契約者を特定する契約者特定部と、を含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明において好ましくは、上空画像は、空撮画像又は衛星画像である。
【0010】
また、本発明において好ましくは、全損エリアは、浸水エリア、建物倒壊エリア、建物火災エリア、及び土砂災害エリアのうちの1つである。
【0011】
また、本発明において好ましくは、前記全損エリア特定部は、前記取得した上空画像の単位要素の各々の特徴量であって、複数の成分を含む特徴量を算出し、特徴量を構成する各成分を座標軸に割り当てた特徴空間内における、各単位要素に対応する特徴量の分布を所定数のクラスタにクラスタリングし、及び全損エリアに対応する特徴量が含まれるクラスタに基づいて全損エリアを特定する、第1の特定部を含む。
【0012】
また、本発明において好ましくは、前記第1の特定部は、クラスタリングした結果を反映させた上空画像を、前記契約者特定装置が備えるディスプレイに表示し、全損エリアに対応する特徴量が含まれるクラスタの選択を受け付け、選択を受け付けたクラスタを用いて全損エリアを特定する。
【0013】
また、本発明において好ましくは、前記全損エリア特定部は、前記取得した上空画像を、前記契約者特定装置が備えるディスプレイに表示し、前記取得した上空画像の一部の領域の各々を所定数のカテゴライズされたエリアの各々に対応付けるための入力を受け付け、前記取得した上空画像の単位要素の各々の特徴量であって、複数の成分から構成される特徴量を算出し、特徴量を構成する各成分を座標軸に割り当てた特徴空間内における特徴量の分布を、前記カテゴライズされたエリアごとに設定された確率密度関数を用いて、前記カテゴライズされたエリアに各々対応するクラスタにクラスタリングし、及び全損エリアに対応付けられた前記カテゴライズされたエリアに対応するクラスタに基づいて全損エリアを特定する、第2の特定部を含み、
前記第1の特定部が特定するエリア及び前記第2の特定部が特定するエリアに対して重み付けして得られた結果により全損エリアを特定する。
【0014】
また、本発明において好ましくは、前記全損エリア特定部は、複数の上空画像及び対応する地図データを学習データとして用いて機械学習を行うことにより学習モデルを生成し、前記取得した上空画像及び対応する地図データと、生成された学習モデルとに基づいて、該上空画像が含むエリアの中から全損エリアを特定する、第3の特定部を含み、前記第1の特定部が特定するエリア、前記第2の特定部が特定するエリア、及び前記第3の特定部が特定するエリアに対して重み付けして得られた結果により全損エリアを特定する。
【0015】
また、本発明において好ましくは、前記全損エリア特定部は、複数の上空画像及び対応する地図データを学習データとして用いて機械学習を行うことにより学習モデルを生成し、前記取得した上空画像及び対応する地図データと、生成された学習モデルとに基づいて、該上空画像が含むエリアの中から全損エリアを特定する、第3の特定部を含む。
【0016】
また、上記の目的を達成するために、本発明の一態様としての契約者特定装置は、保険の契約者ごとの保険契約情報を記憶する保険契約情報データベースを備える保険業務支援システムにおいて被災した契約者を特定するための契約者特定装置であって、前記契約者特定装置は、上空画像を取得する画像取得部と、前記取得した上空画像に含まれる特徴に基づいて、該上空画像が含むエリアの中から全損エリアを特定する全損エリア特定部と、前記特定された全損エリアと、前記保険契約情報が含む契約者の住所とに基づいて、該全損エリア内の契約者を特定する契約者特定部と、を備えることを特徴とする。
【0017】
また、上記の目的を達成するために、本発明の一態様としての方法は、保険の契約者ごとの保険契約情報を記憶する保険契約情報データベースを備える保険業務支援システムにおいて被災した契約者を特定するための、コンピュータにより実行される方法であって、上空画像を取得するステップと、前記取得した上空画像に含まれる特徴に基づいて、該上空画像が含むエリアの中から全損エリアを特定するステップと、前記特定された全損エリアと、前記保険契約情報が含む契約者の住所とに基づいて、該全損エリア内の契約者を特定するステップと、を含むことを特徴とする。
【0018】
また、上記の目的を達成するために、本発明の一態様としてのプログラムは、上記に記載の方法の各ステップをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、保険会社の業務の少なくとも一部を自動化し、保険加入者がより早く保険金を利用することが可能な保険業務支援システムを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態による保険業務支援システムについて説明する。保険業務は、保険契約を引き受けて契約者から保険料を受け取り、契約内容に応じて保険金を支払う業務であり、例えば(1)事故の受付、(2)初動対応、(3)損害調査、(4)保険金支払、(5)保険金回収の業務を含むものである。本発明の実施形態では、保険業務支援システムのユーザ及び管理者は、保険者である。保険者は、保険会社・共済・補償サービス提供会社などの火災保険・動産保険・盗難保険・サービス補償等の補償提供事業者を表す。また本発明の実施形態では、保険は地震保険又は家財保険であり、契約者は当該保険の加入者を表す。保険金は、損害区分に応じて決定されるものであり、一番損害の大きい「全損」は、例えば家財の損害額が家財の時価の80%以上の場合を示す。本明細書においては、説明の便宜上、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成についての重複説明を省略する場合がある。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態の保険業務支援システム1の全体構成図の一例である。
図1に示すように、保険業務支援システム1は、契約者特定装置10、及び保険者サーバ20を含む。契約者特定装置10及び保険者サーバ20は、インターネットなどのネットワーク2に接続され、互いに通信可能である。ただし、それぞれが必要に応じて個別に接続される形態であってもよい。保険業務支援システム1は、ネットワーク2を介して契約者特定装置10や保険者サーバ20にアクセス可能な保険者の職員等が使用するユーザ端末を含むこともできる。
【0023】
図2は本発明の一実施形態の契約者特定装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。契約者特定装置10は、一般的なサーバやPC等と同様の構成を含む。契約者特定装置10は、プロセッサ11、入力装置12、出力装置13、記憶装置14、及び通信装置15を備える。これらの各構成装置はバス16によって接続される。なお、バス16と各構成装置との間には必要に応じてインタフェースが介在しているものとする。契約者特定装置10は、複数のコンピュータ(サーバ)により構成されてもよい。
【0024】
プロセッサ11は、契約者特定装置10全体の動作を制御する。例えばプロセッサ11は、CPUである。プロセッサ11は、記憶装置14に格納されているプログラムやデータを読み込んで実行することにより、様々な処理を実行する。1つの例では、プロセッサ11は、複数のプロセッサから構成される。他の例では、プロセッサ11は、MPU等の電子回路が用いられる。本実施形態においては、プロセッサ11によりプログラムが実行されることにより、契約者特定装置10の様々な機能が実現される。
【0025】
入力装置12は、契約者特定装置10に対するユーザからの入力を受け付けるユーザインタフェースであり、例えば、タッチパネル、タッチパッド、キーボード、又はマウスである。出力装置13は、ユーザに契約者特定装置10の出力情報を出力又は表示するものである。本実施形態では、出力装置13は、画像を出力するディスプレイである。出力装置13は、プリンタを含むこともできる。
【0026】
記憶装置14は、主記憶装置及び補助記憶装置を含む。主記憶装置は、例えばRAMのような半導体メモリである。RAMは、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、プロセッサ11が情報を処理する際の記憶領域及び作業領域として用いられる。主記憶装置は、読み出し専用の不揮発性記憶媒体であるROMを含んでいてもよい。この場合、ROMはファームウェア等のプログラムを格納する。補助記憶装置は、様々なプログラムや、各プログラムの実行に際してプロセッサ11が使用するデータを格納する。補助記憶装置は、例えばハードディスク装置であるが、情報を格納できるものであればいかなる不揮発性ストレージ又は不揮発性メモリであってもよく、着脱可能なものであってもよい。補助記憶装置は、例えば、オペレーティングシステム(OS)、ミドルウェア、アプリケーションプログラム、これらのプログラムの実行に伴って参照され得る各種データなどを格納する。
【0027】
通信装置15は、ネットワークを介してサーバなどの他のコンピュータとの間でデータの授受を行う。例えば通信装置15は、移動体通信や無線LAN等の既知の無線通信又は既知の有線通信を行い、ネットワーク2へ接続する。1つの例では、契約者特定装置10は、通信装置15によってプログラムをサーバからダウンロードして、記憶装置14に格納する。
【0028】
保険者サーバ20は、各部を制御するCPU等のプロセッサと、主記憶装置及び補助記憶装置を含む記憶装置と、ディスプレイ等の表示装置と、マウス、キーボード、タッチパネル等の入力装置と、ネットワークボード等の通信装置とを備える。このように保険者サーバ20は、契約者特定装置10と同様のハードウェア構成を有するため、ハードウェア構成の説明は省略する。
【0029】
保険者サーバ20は、保険の新規契約や契約内容の変更等の保険業務の支援を行うためのアプリケーションがインストールされたコンピュータである。保険者サーバ20は、一般的に保険者が利用する基幹システムの少なくとも一部を構成するものであり、複数のコンピュータなどから構成される。
【0030】
保険者サーバ20は、データベースサーバ機能を備える。保険者サーバ20が備える記憶装置は各種データベース用のデータ(例えばテーブル)やプログラムを記憶し、プログラムが実行されることにより、各種データベースは実現される。
【0031】
保険者サーバ20は、
図3に示すとおり、加入者データベース(加入者DB)21及びマップデータベース(マップDB)22を備える。加入者DB21は、主に保険の加入者(契約者)ごとの保険契約に関する保険契約情報を記憶する。加入者DB21は、加入者ID、加入者(契約者)の氏名、年齢、住所、連絡先などの保険加入者に関する情報と、保険契約の種類、内容、開始日、終了日(満期日)などの保険契約に関する情報と、を含む保険契約情報を記憶するデータベースである。加入者DB21は、保険の加入者ごとに、保険契約情報の各情報を関連付けて記憶する。加入者IDは、保険加入者を識別するための一意の識別情報である。マップDB22は、道路及び施設(POI)に関する情報が住所又は緯度経度等の位置を特定するための情報と関連付けられている一般的な地図データに関するデータベースである。
【0032】
図4は本発明の一実施形態の契約者特定装置10の機能ブロック図の一例を示す図である。契約者特定装置10は、画像取得部31、全損エリア特定部32、及び契約者特定部33を備える。これら各部の機能は、契約者特定装置10のプロセッサ11によりプログラムが実行されることにより実現される。本実施形態においては、各種機能がプログラム読み込みにより実現されるため、1つのパート(機能)の一部を他のパートが有していてもよい。ただし、各機能の一部又は全部を実現するための電子回路等を構成することにより、ハードウェアによってこれらの機能は実現してもよい。
【0033】
画像取得部31は、上空画像(aerial imagery)を取得する。上空画像は、空撮画像又は衛星画像である。空撮画像は、カメラを備えるドローン等の無人航空機を用いて取得される撮影画像である。空撮画像は、撮影されたエリアを特定するための情報(緯度経度等)と関連付けて記憶され、空撮画像の画素の各々は、RGBの3つの成分で表すことができる。衛星画像は、人工衛星から撮影した画像であり、撮影されたエリアを特定するための情報(緯度経度等)と関連付けて記憶され、衛星画像の画素の各々は、RGBの3つの成分で表すことができる。
【0034】
空撮画像を取得するには、無人航空機等を用いる必要があるが、空撮画像は、衛星画像と比較して短時間で取得可能であり、衛星画像と比較してより解像度の高い画像である。衛星画像は、例えば1日1回の更新頻度であるため短時間で取得することは不可能であり、空撮画像と比較してより解像度が低い画像であるが、衛星画像を取得するために無人航空機等を用いる必要が無く、またほぼ全域の画像を取得することが可能である。
【0035】
1つの例では、画像取得部31は、ユーザからの上空画像の入力を受け付けることにより、上空画像を取得する。1つの例では、契約者特定装置10は、上空画像の撮影装置と通信可能に構成され、画像取得部31は、定期的に、当該撮影装置から受信した上空画像を取得する。
【0036】
本実施形態の保険業務支援システム1が契約者を特定しようとするエリアは、日本全国の広範囲にわたるため、エリアに応じて取得可能な上空画像は異なる。1つの例では、画像取得部31は、空撮画像が取得可能な場所については比較的解像度の高い空撮画像を取得し、それ以外の箇所については衛星画像を取得する。全損エリア特定部32は、空撮画像を用いた方が衛星画像を用いるよりも精度が高く全損エリアを特定することが可能であるが、上記のように本実施形態では、エリアの重点度に応じて全損エリア特定部32が用いる画像を変更することができる。
【0037】
全損エリア特定部32は、第1の特定部34、第2の特定部35、及び第3の特定部36を備える。全損エリアは、例えば浸水エリア、建物倒壊エリア、建物火災エリア、及び土砂災害エリアのうちの1つであり、損害区分における一番損害の大きい「全損」と判断されるエリアである。
【0038】
第1の特定部34は、既知のクラスタリング手法を用いて取得した上空画像に対してクラスタリングすることにより、該上空画像が含むエリアの中から全損エリアを特定する。
【0039】
例えば第1の特定部34は、以下のように既知のK平均法を用いて全損エリアを特定する。第1の特定部34は、取得した上空画像の画素の各々の特徴量を算出する。特徴量は、R(赤)、G(緑)、B(青)の3つの成分を含む。例えば、特徴量は、各々が256段階(8ビット)で表されるRGBの3次元ベクトルで表現されるデジタルバリューである。ただし、画素は上空画像を構成する単位要素の一例であって、単位要素は上空画像を複数の領域に分割した各領域とすることもできる。
【0040】
第1の特定部34は、特徴量を構成する各成分を座標軸に割り当てた特徴空間内における特徴量の分布をK個のクラスタにクラスタリングする。
図5は、特徴空間内における特徴量の分布を示す図である。特徴空間内における特徴量は、各画素(単位要素)に対応する座標点である。そのため、特徴空間を構成する座標は、画素の数量分のデータ数を有する。K個は、予め設定された数であって、例えば12である。例えば、取得した上空画像が土砂災害エリアを多く含む場合、特徴空間内において、茶色などに対応するRGBの座標に多くの特徴量の座標点が分布することになる。
【0041】
第1の特定部34は、特徴空間内におけるK個のクラスタの中心位置として適当な位置(座標)を設定する。第1の特定部34は、各特徴量(座標点)を最も近いクラスタに割り振る。第1の特定部34は、クラスタごとに割り振られた座標点の重心を計算し、それを新たなクラスタの中心位置として設定する。第1の特定部34は、上記の座標点のクラスタへの振り分けと新たなクラスタの中心位置の設定を、既定の回数、例えば20回繰り返す。第1の特定部34は、このようにして、各特徴量をK個のクラスタにクラスタリングする。
【0042】
続いて、第1の特定部34は、全損エリアに対応する特徴量が含まれるクラスタに基づいて全損エリアを特定する。例えば、第1の特定部34は、クラスタリングした結果を反映させた上空画像を契約者特定装置10が備えるディスプレイに表示する。クラスタリングした結果を反映させた上空画像とは、各特徴量の画素の位置において各特徴量のクラスタリング結果を反映させた画像であって、K個に分けられたクラスタに応じて各特徴量に対応する画素を色付けした画像である。したがって、クラスタリング結果を反映させた上空画像とは、K種類の色に色付けされた画像である。このようにK個に色付けされた画像を確認することにより、ユーザは、元の上空画像よりも容易に全損エリアを選択することが可能となる。ただし、クラスタリング結果を反映させた上空画像は、各画素がK個のクラスタのいずれかに分けられたことが識別可能であれば、色付けされていなくてもよい。
【0043】
第1の特定部34は、入力装置12を介して、全損エリアに対応するK個のうちの1又は複数の色の選択を受け付けることにより、全損エリアに対応する特徴量が含まれるクラスタの選択を受け付ける。第1の特定部34は、選択を受け付けたクラスタに対応するエリアを全損エリアとして特定する。例えば第1の特定部34は、上空画像を構成するすべての画素を全損エリアと全損エリアではない非全損エリアとのいずれかに対応付けた全損エリア抽出マップを生成することにより、全損エリアを特定する。1つの例では、全損エリア抽出マップは、全損エリアに対応付けられた領域(画素)には全損指数「1」が対応付けられ、非全損エリアに対応付けられた領域(画素)には全損指数「0」が対応付けられる。
【0044】
第2の特定部35は、既知のクラスタリング手法及び既知の最尤法を用いて取得した上空画像をクラスタリングすることにより、該上空画像が含むエリアの中から全損エリアを特定する。
【0045】
例えば第2の特定部35は、以下のように全損エリアを特定する。1つの例では、第2の特定部35は、取得した上空画像を契約者特定装置10が備えるディスプレイに表示する。上空画像を確認したユーザは、一部の領域が、例えば駐車場、テニスコート、被害無しの住宅、河川、森林、浸水、建物火災、又は土砂災害などのカテゴライズされたエリアであることを確認することができる。第2の特定部35は、入力装置12を介して、上空画像の一部の領域の各々を所定数N個のカテゴライズされたエリアの各々に対応付けるためのユーザからの入力を受け付ける。なお、この段階においては、カテゴライズされたエリアは、例えば建物火災エリアと土砂災害エリアを同じ損害エリアとしてカテゴライズせず、異なるエリアとしてカテゴライズする。
【0046】
図6は、ユーザからの入力により第2の特定部35が上空画像の一部の領域の各々をカテゴライズされたエリアの各々に対応付けた様子の一例を示す図である。例えば、上空画像40は、領域41が河川エリアに対応付けられ、領域42が土砂災害エリアに対応付けられ、領域43が森林エリアに対応付けられ、領域44が被害無しの住宅エリアに対応付けられ、領域45が建物火災エリアに対応付けられる。この場合、Nは5である。
【0047】
第2の特定部35は、第1の特定部34と同様にして、取得した上空画像の画素の各々の特徴量を算出する。第2の特定部35は、特徴量を構成する各成分を座標軸に割り当てた特徴空間内における特徴量の分布を、カテゴライズされたエリアごとに設定された確率密度関数を用いて、カテゴライズされたエリアに各々対応するクラスタにクラスタリングする。
【0048】
第2の特定部35は、特徴空間内において対応付けられた領域の特徴量(座標点)の重心を計算することにより、カテゴライズされたエリアの各々に対応するN個のクラスタの中心位置を設定する。第2の特定部35は、N個のクラスタの各々を、カテゴライズされたエリアごとに設定された、例えば正規分布のような確率密度関数に対応付ける。N個のクラスタの中心位置の各々は、対応付けられた確率密度関数の中心位置(最大値)となるように対応付けられる。第2の特定部35は、より確率密度関数の値が大きいクラスタに、各特徴量(座標点)を割り振る。第2の特定部35は、クラスタごとに割り振られた座標点の重心を計算し、それを新たなクラスタの中心位置として設定する。第2の特定部35は、上記の座標点のクラスタへの振り分けと新たなクラスタの中心位置の設定を、既定の回数、例えば20回繰り返す。第2の特定部35は、このようにして、各特徴量をN個のクラスタにクラスタリングする。
【0049】
続いて、第2の特定部35は、全損エリアに対応付けられたカテゴライズされたエリアに対応するクラスタに基づいて全損エリアを特定する。例えば第2の特定部35は、土砂災害エリアや浸水エリアなどの全損エリアに予め対応付けられた1又は複数のエリアに対応するクラスタに対応するエリアを全損エリアとして特定する。例えば第2の特定部35は、全損エリア抽出マップを生成することにより、全損エリアを特定する。
【0050】
1つの例では、第2の特定部35は、カテゴライズされたエリアの各々が含む画素(単位要素)の数量に応じて確率密度関数を設定する。1つの例では、第2の特定部35は、入力を受け付けたカテゴライズされたエリアの各々にユーザからの確信度の入力を受け付け、該確信度に応じて確率密度関数を設定する。
【0051】
第3の特定部36は、既知の深層学習を用いて、上空画像が含むエリアの中から全損エリアを特定する。
【0052】
第3の特定部36は、複数の上空画像及び対応する地図データを学習データとして用いて機械学習を行うことにより学習モデルを生成する。第3の特定部36は、取得した上空画像及び対応する地図データと、生成された学習モデルとに基づいて、取得した上空画像が含むエリアの中から全損エリアを特定する。
【0053】
1つの例では、第3の特定部36は、既知のConditional GAN(cGAN)のアイディアをベースとした既知のpix2pixを用いて、全損エリアを特定する。例えばcGANにおいては、生成器(G)及び判別器(D)は、変換前画像と訓練データの画像のペアを学習し、Gは、変換前画像から訓練データのような画像を生成し、Dは、生成された画像がGにより生成されたものであるか否かを判別する学習を繰り返す。このようにして、Gは、より訓練データの画像に近い画像を生成することが可能となる。第3の特定部36は、上記のような既知の方法を用いて、上空画像と地図データのペアを学習させて、上空画像と地図データのペアの真偽を判定可能な学習モデルを生成する。
【0054】
第3の特定部36は、生成した学習モデルに、取得した上空画像と対応する位置の地図データのペアを入力して真偽を判定し、偽と判定されたエリアを全損エリアとして特定する。例えば第3の特定部36は、取得した上空画像を複数の領域に分割し、各領域について真偽判定を行い、偽と判定された領域を全損エリアとして特定する。例えば第3の特定部36は、全損エリア抽出マップを生成することにより、全損エリアを特定する。
【0055】
このように、全損エリア特定部32は、全損エリアを特定するための複数の機能である、第1の特定部34、第2の特定部35、及び第3の特定部36を備える。全損エリア特定部32は、1つの取得した上空画像に対して、第1の特定部34が特定するエリア、第2の特定部35が特定するエリア、及び第3の特定部36が特定するエリアに対して重み付けした後、各々を加算して得られた結果により全損エリアを特定する。
【0056】
例えば、全損エリア特定部32は、第1の特定部34、第2の特定部35、及び第3の特定部36の各々が作成した全損エリア抽出マップを合成したマップである全損エリア判定マップを作成する。全損エリア特定部32は、全損エリア判定マップを合成する際、各全損エリア抽出マップの画素に対応付けられた全損指数にW1、W2、W3の係数を各々掛けた値を加えて、全損エリア判定マップを作成する。したがって、W1+W2+W3=1とした場合、新たな全損エリア判定マップの各画素は、「0」〜「1」の実数で表される全損指数が対応付けられることとなる。全損エリア特定部32は、全損エリア判定マップにおいて、所定の閾値以上の全損指数を有する領域(画素)を全損エリアとして特定する。
【0057】
契約者特定部33は、特定された全損エリアと、保険契約情報が含む契約者の住所とに基づいて、該全損エリア内の契約者を特定する。
【0058】
1つの例では、契約者特定部33は、上空画像に関連付けられた緯度経度等の情報を用いて特定された全損エリアの具体的な位置情報を特定する。契約者特定部33は、マップDB22から対象の上空画像に対応する範囲の地図データを取得し、該地図データ内の加入者に関する情報を加入者DBから取得する。契約者特定部33は、全損エリアの具体的な位置情報と、加入者DBから取得した契約者の住所情報を照合することにより、全損エリア内の住所情報に関連付けられた加入者IDを特定し、全損エリア内の契約者を特定する。1つの例では、契約者特定部33は、全損エリア特定部32が生成した全損エリア判定マップに対応するレイヤと、対応する位置における加入者DBから取得した契約者の各々の住所をプロットしたレイヤと、対応する位置における地図レイヤとを照合する。契約者特定部33は、所定の閾値以上の全損指数を有する領域内の住所情報に関連付けられた加入者IDを特定することにより、全損エリア内の契約者を特定する。例えば契約者特定装置10は、上空画像に関連付けられた位置情報を用いて加入者DB21及びマップDB22へ問い合わせることにより、各データベースから必要な加入者情報及び地図情報を取得できるように構成される。
【0059】
次に、本発明の一実施形態による契約者特定装置10の情報処理について説明する。
図7〜
図9の情報処理は、プログラムを契約者特定装置10に実行させることで実現される。
【0060】
図7は、本発明の一実施形態による第1の特定部34の情報処理のフローチャートである。ステップ101で、第1の特定部34は、K平均法を用いて、取得した上空画像に対してK個のクラスタへクラスタリングを行う。続いてステップ102で、第1の特定部34は、クラスタリングした結果を反映させた上空画像をディスプレイに表示する。続いてステップ103で、第1の特定部34は、入力装置12を介したユーザからの入力により、全損エリアに対応するクラスタの選択を受け付ける。続いてステップ104で、第1の特定部34は、選択を受け付けたクラスタに対応するエリアを全損エリアの全損指数に対応付けた全損エリア抽出マップを生成することにより、全損エリアを特定する。
【0061】
図8は、本発明の一実施形態による第2の特定部35の情報処理のフローチャートである。ステップ201で、第2の特定部35は、取得した上空画像をディスプレイに表示する。続いてステップ202で、第2の特定部35は、入力装置12を介して、上空画像の一部の領域の各々を所定数N個のカテゴライズされたエリアの各々に対応付けるためのユーザからの入力を受け付ける。続いてステップ203で、第2の特定部35は、取得した上空画像に対してN個のクラスタへクラスタリングを行う。続いてステップ204で、第2の特定部35は、カテゴライズされたエリアのうち全損エリアに対応付けられたクラスタに対応するエリアを全損エリアの全損指数に対応付けた全損エリア抽出マップを生成することにより、全損エリアを特定する。
【0062】
図9は、本発明の一実施形態による第3の特定部36の情報処理のフローチャートである。ステップ301で、第3の特定部36は、複数の上空画像及び対応する地図データを学習データとして用いて機械学習を行うことにより予め生成された学習モデルに、取得した上空画像を及び対応する地図データを所定領域ごとに入力して真偽判定を行う。続いてステップ302で、第3の特定部36は、所定領域ごとに、偽と判定されたエリアを全損エリアの全損指数に対応付けた全損エリア抽出マップを生成することにより、全損エリアを特定する。
【0063】
図10は、本発明の一実施形態による全損エリア特定部32の情報処理のフローチャートである。ステップ401で、全損エリア特定部32は、第1の特定部34、第2の特定部35、及び第3の特定部36の各々が作成した全損エリア抽出マップを合成して全損エリア判定マップを作成する。続いてステップ402で、全損エリア特定部32は、全損エリア判定マップにおいて、所定の閾値以上の全損指数を有する領域を全損エリアとして特定する。
【0064】
次に、本発明の実施形態による保険業務支援システム1(契約者特定装置10)の主な作用効果について説明する。本実施形態では、全損エリア特定部32は、取得した上空画像に含まれる特徴に基づいて、該上空画像が含むエリアの中から全損エリアを特定する。全損エリア特定部32は、特定された全損エリアと、保険契約情報が含む契約者の住所とに基づいて、該全損エリア内の契約者を特定する。
【0065】
このように、本実施形態の保険業務支援システム1は、全損エリアの契約者はより早く保険金を利用する必要があるという考えに基づいて、かつ複数の区分を有する損害区分のうち、上空画像を用いて全損エリアか否かを判定することは比較的容易であるという新しい考えに基づいて、全損エリア内の契約者を特定するものである。第1の特定部34、第2の特定部35、及び第3の特定部36の一部において、ユーザによる操作が必要な場合があるものの、本実施形態では、保険業務の少なくとも一部を自動化することが可能である。特に上空画像から全損エリアとして特定できたエリアについては、保険業務として、(1)事故の受付、(2)初動対応、(3)損害調査の業務の一部又は全部を自動化することが可能となり、当該業務に要する人手を低減するとともに要する時間を削減することが可能となる。これにより、保険加入者がより早く保険金を利用することが可能となる。
【0066】
また本実施形態では、第1の特定部34、第2の特定部35、及び第3の特定部36の各々は、上空画像に含まれる特徴に基づいて全損エリアを特定しており、単純な色の強度の分布などにより全損エリアを特定していない。このような構成とすることにより、全損エリア特定部32の太陽光の影響による誤った特定を防ぐことが可能となる。
【0067】
また本実施形態では、全損エリア特定部32は、1つの取得した上空画像に対して、第1の特定部34、第2の特定部35、及び第3の特定部36の各々が特定する全損エリアに対して重み付けした後、各々を加算して得られた結果により全損エリアを特定する。このように、本実施形態では、全損エリア特定部32は、異なる複数の特定方法により特定した全損エリアに対する重み付けをより適切に設定することで、1つの特定方法により全損エリアを特定するのに比較して、より正確に全損エリアを特定することが可能となる。また、全損エリアを特定するために要する時間は、第1の特定部34、第2の特定部35、第3の特定部36の順番に短く、一方、全損エリアの特定精度は第3の特定部36が一番高いと考えられる。本実施形態では、全損エリア特定部32は、必要な時間及び精度に応じて、3つの特定部から特定方法を選択することが可能であるため、よりフレキシブルに全損エリアを特定することが可能となる。
【0068】
上記の作用効果は、特に言及が無い限り、他の実施形態や他の実施例においても同様である。
【0069】
本発明の他の実施形態では、上記で説明した本発明の実施形態の機能やフローチャートに示す情報処理を実現するプログラムや該プログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体とすることもできる。また他の実施形態では、上記で説明した本発明の実施形態の機能やフローチャートに示す情報処理を実現する方法とすることもできる。また他の実施形態では、上記で説明した本発明の実施形態の機能やフローチャートに示す情報処理を実現するプログラムをコンピュータに供給することができるサーバとすることもできる。また他の実施形態では、上記で説明した本発明の実施形態の機能やフローチャートに示す情報処理を実現する仮想マシンとすることもできる。
【0070】
以下に本発明の実施形態の変形例について説明する。以下で述べる変形例は、矛盾が生じない限りにおいて、適宜組み合わせて本発明の任意の実施形態に適用することができる。
【0071】
1つの変形例では、保険者サーバ20が契約者特定装置10を含む。この場合、保険者サーバ20が1つの機能として契約者特定装置10が備える機能を有する。
【0072】
1つの変形例では、上空画像は、赤外線カメラによる空撮画像又は衛星画像を含む。この場合、上空画像の各画素の特徴量は、RGBの3つの成分に加えて赤外線を含む。第1の特定部34や第2の特定部35は、4つの成分を座標軸に割り当てた特徴空間内における特徴量の分布をクラスタリングする。このような構成とすることにより、全損エリア特定部32は、より正確に全損エリアを特定することが可能となる。
【0073】
1つの変形例では、全損エリア特定部32は、取得した上空画像から第1の特定部34が自動的に出力するクラスタリング結果を反映させた上空画像と、当該画像から生成された全損エリア抽出マップとを対応付けて記憶装置14に記憶する。第1の特定部34は、新たに取得した上空画像から出力するクラスタリング結果を反映させた上空画像を、記憶装置14に記憶された上空画像の各々と比較する。第1の特定部34は、類似度が既定値以上であった上空画像に対応付けられた全損エリア抽出マップを用いて、全損エリア抽出マップを自動的に生成することにより、全損エリアを特定する。このような構成とすることにより、第1の特定部34は、ユーザ操作を介さずに、自動的に全損エリアを特定することが可能となる。
【0074】
1つの変形例では、第3の特定部36は、複数の上空画像に対して全損エリアと非全損エリアを関連付けたデータを学習データとして用いて機械学習を行うことにより学習モデルを生成する。第3の特定部36は、生成した学習モデルに取得した上空画像を入力することで、該上空画像に対応する全損エリア及び非全損エリアを特定するためのデータを出力する。全損エリア及び非全損エリアを特定するためのデータは、例えば全損エリア判定マップである。
【0075】
1つの変形例では、第1の特定部34及び第2の特定部35の少なくとも一方は、インターネット上のSNSなどの情報から、全壊や全損等の所定のキーワードと位置情報とを抽出して、全損エリアのサンプル位置を特定する。第1の特定部34及び第2の特定部35の少なくとも一方は、上空画像においてサンプル位置に対応する画素が属するクラスタに対応するエリアを全損エリアとして特定する。このような構成とすることにより、保険業務支援システム1は、よりローカルな情報を反映しつつ、全損エリアを特定することが可能となる。
【0076】
1つの変形例では、全損エリア特定部32は、第1の特定部34、第2の特定部35、及び第3の特定部36のうちの1つの特定部のみを備える。全損エリア特定部32は、自身が備える特定部が生成する全損エリア抽出マップにおいて、全損指数が「1」の領域(画素)を全損エリアとして特定する。ただし、全損エリア特定部32がより正確に全損エリアを特定するためには、全損エリア特定部32は複数の特定部を備えることが好ましい。
【0077】
1つの変形例では、全損エリア特定部32は、第1の特定部34、第2の特定部35、及び第3の特定部36のうちの2つの特定部のみを備える。全損エリア特定部32は、自身が備える2つの特定部の各々が作成した全損エリア抽出マップを合成して全損エリア判定マップを作成する。全損エリア特定部32は、全損エリア判定マップを合成する際、各全損エリア抽出マップの画素に対応付けられた全損指数にW1、W2の係数を各々掛けた値を加えて、全損エリア判定マップを作成する。したがって、W1+W2=1とした場合、新たな全損エリア判定マップの各画素は、「0」〜「1」の実数で表される全損指数が対応付けられることとなる。全損エリア特定部32は、全損エリア判定マップにおいて、所定の閾値以上の全損指数を有する領域(画素)を全損エリアとして特定する。
【0078】
以上に説明した処理又は動作において、あるステップにおいて、そのステップではまだ利用することができないはずのデータを利用しているなどの処理又は動作上の矛盾が生じない限りにおいて、処理又は動作を自由に変更することができる。また以上に説明してきた各実施例は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、種々の形態で実施することができる。