(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書の全体を通して使用されるときに、以下の省略形は、別途文脈が明確に指示しない限り、以下の意味を有するものとする。A=アンペア、A/dm
2=1平方デシメートルあたりのアンペア=ASD、DC=直流、℃=摂氏度、mmol=ミリモル、mg=ミリグラム、g=グラム、L=リットル、mL=ミリリットル、ppm=百万分率=mg/L、m=メートル、μm=ミクロン=マイクロメートル=10
−6メートル、mm=ミリメートル、cm=センチメートル、nm=ナノメートル=10
−9メートル、Å=オングストローム=1x10
−10メートル、2.54cm=1インチ、MPa=メガパスカル=N/m
2、N=ニュートン、kV=キロボルト、V=ボルト=ジュール/クーロン、mA=ミリアンペア、DI=脱イオン化、mJ=ミリジュール、ジュール=kg(m)/s
2、kg=キログラム、s=秒、Mw=重量平均分子量、Mn=数平均分子量、重量%=重量パーセント、XRD=X線回折、EBSD=電子後方散乱回折、FE−SEM=電界放射型走査電子顕微鏡法、EO/PO=酸化エチレン/酸化プロピレンコポリマー、IPF=逆極点図、RDL=再分配層、N
2=窒素ガス、vs.=対、例えば=例、ohm−cm=抵抗、およびL/S=RDLの場合等の、2つの特徴または構造間の線の間隔または距離。
【0009】
本明細書の全体を通して使用される場合、「めっき」という用語は、金属電気めっきを指す。「堆積」および「めっき」は、本明細書全体を通して交換可能に使用される。「組成物」および「浴」という用語は、本明細書の全体を通して交換可能に使用される。「促進剤」は、電気めっき組成物のめっき速度を高め、さらに、銅堆積物の明瞭さを向上させるために使用される有機添加剤を指す。「抑制剤」は、電気めっき中に銅のめっき速度を抑制する有機添加剤を指す。「電解質」という用語は、イオンに分離し、したがって電荷を運搬することが可能である化学化合物、例えば酸を指す。「部分」という用語は、官能基の全体または官能基の一部のいずれかを副構造体として含み得る分子またはポリマーの一部を意味する。「部分」および「基」という用語は、本明細書の全体を通して交換可能に使用される。「開口」という用語は、開口部、孔、間隙、またはビアを意味する。「アスペクト比」という用語は、基板の厚さを基板内の特徴の開口の直径で割ったものを意味する。「粒界」という用語は、銅金属における2つの粒子または微結晶間の界面を指し、粒界は、銅の結晶構造における二次元欠陥(2D)である。「粒子」、「
結晶」、および「微結晶」という用語は、本明細書の全体を通して交換可能に使用される。「
結晶方位差」という用語は、共通の界面を有する、2つの粒子または微結晶の結晶学的配向の差を指し、2つの粒子または微結晶間の結晶配向は、0〜180°の角度の範囲であり、0°は、いかなる
結晶方位差も伴わない完全な結晶を示す。「抗張力」という用語は、張力下での破壊に対する材料の抵抗を意味する。「熱応力」という用語は、銅構造部材の温度が変化したときに、その熱膨張の結果として生じる応力を意味する。「アニーリング」という用語は、材料の物理的特性、あるときには化学的特性を変化させる熱処理を意味する。「ミラー指数:(hkl)[hkl]{hkl}、<hkl>」という用語は、平面(または任意の平行平面)がどのように固体の主結晶軸(すなわち、基準座標−結晶内に定義されるx、y、およびz軸、x=h、y=k、およびz=l)と交差するのかを考慮することによって定義される結晶平面の表面の配向を意味し、一組の数(hkl)、[hkl]、{hkl}、および<hkl>は、切片を定量化するものであり、また、平面を識別するために使用される。「(hkl)」という表現は、格子内の固有の結晶平面を定義する。「[hkl]」という表現は、格子内の結晶平面の特定の方向を定義する。「{hkl}」という表現は、格子の対称性によって(hkl)に等しい一組の全ての平面を定義する。「<hkl>」という表現は、格子の対称性によって[hkl]に等しい一組の全ての平面を定義する。「平面」という用語は、平面内の任意の2点を結ぶ直線が全体的に存在する二次元表面(長さおよび幅を有する)を意味する。「格子」という用語は、結晶の構造内の原子、分子、またはイオンの位置を示す、規則的なパターンでの孤立点の空間内の配設を意味する。「粒界エネルギー」という用語は、界面形成による2つの粒子間の界面におけるエネルギーを意味する。「結晶学的ドメイン」という用語は、同じ原子の配設、結晶化度、配向、および対称性を有する、特定の空間内の原子を意味する。「テクスチャ(結晶質)」という用語は、銅試料の結晶学的配向の分布を意味し、これらの配向が完全にランダムである試料は、いかなる異なったテクスチャも有しないと言われ、結晶学的配向がランダムでなく、いくつかの好ましい配向を有する場合、その試料は、弱い、適度な、または強いテクスチャを有し、その程度は、好ましい配向を有する結晶の割合に依存する。「滑り系」という用語は、一組の対称的に同一の滑り平面、および転位運動が容易に発生して、塑性変形につながり得る、関連する滑り方向系統を意味し、外力は、結晶格子の一部を、互いに沿って滑らせ、材料の幾何学的形状を変化させる。「ピッチ」という用語は、基板上の互いの特徴位置の頻度を意味する。「アミノ基」という用語は、−NHRであり、ここで、Rは、−H(水素)または直鎖または分岐鎖ヒドロカルビル基である。「アミノアルキル」という用語は、−(C
1−C
4)−NH−Rであり、ここで、Rは、−H(水素)または直鎖または分岐鎖ヒドロカルビル基である。「ヒドロカルビル基」という用語は、水素および炭素官能基を意味する。「ハロゲン化物」という用語は、塩化物、フッ化物、臭化物、およびヨウ化物を意味する。「隣接する」という用語は、2つの構造または材料が共通の界面を有するように、直接その上に、またはその隣にあることを意味する。冠詞「a」および「an」は、単数および複数を指す。
【0010】
本明細書の全体を通して使用されるときに、パラメータの平均は、そのパラメータの個々の測定値の合計を、そのパラメータについて取った測定値の数で割ったものを意味する。粒径(球相当直径)は、全ての粒子が球形であるという計算に基づくものであり、粒径面積は、π(d/2)
2であり、式中、dは、粒子の直径である。銅は、6面の立体構造を有し、また、対称性によって全ての方向において同一である。粒子長(μm)およびテクスチャ(結晶質の)による双晶分率は、FE−SEMと同義であるEBSD分析技術に基づく。本明細書の全体を通して使用されるときに、機械引張試験パラメータは、INSTRON(商標)の引張試験機を使用して、IPC(登録商標) Association Connecting Electronics Industriesから入手可能なIPC−TM−650の試験手順に基づく。本明細書の全体を通して使用されるときに、回折ピーク(111)平面配向および回折ピーク(200)平面配向の曲線下面積比は、KSA Analytical Systems(Aubrey,TX)から入手可能なJade2010 MIDIソフトウェアによって行ったときの、回折強度(I)対回折角2θ(°)のXRD分析に基づく。
【0011】
全ての数値範囲は、そのような数値範囲が合計で100%となることを強いられることが明白である場合を除き、包括的であり、また任意の順序で組み合わせ可能である。
【0012】
本発明は、<111>の結晶平面方向軸に対して55°〜65°の
結晶方位差の角度を有する隣接する銅粒子間に、粒界の30%以上の双晶分率を含む銅金属を対象とする。双晶分率は、例えば60μm×3μm等の所与の計測可能な試料領域について観察した、55°〜65°の
結晶方位差を有するμmでの粒界の長さの合計を、<111>の結晶平面方向に対して0°〜180°の
結晶方位差を有するμmでの全ての粒界の長さの合計で割った、比率として定義される。
【0013】
好ましくは、双晶分率は、<111>の結晶平面方向に対して55°〜65°の
結晶方位差の角度を有する隣接する銅粒子間の粒界の35%以上であり、より好ましくは、双晶分率は、<111>の結晶平面方向に対して55°〜65°の
結晶方位差の角度を有する隣接する銅粒子間の粒界の35%〜55%であり、さらに好ましくは、双晶分率は、<111>の結晶平面方向に対して55°〜65°の
結晶方位差の角度を有する隣接する銅粒子間の粒界の35%〜52%(例えば35%、37%、または52%)である。好ましくは、隣接する銅粒子間の粒界は、<111>の結晶平面方向に対して60°の
結晶方位差の角度を有する。そのような
結晶方位差の角度は、
結晶方位差が経時的に変化しない程度に、熱力学的に安定している。
【0014】
<111>の結晶平面方向に対して55°〜65°の
結晶方位差の角度を有する隣接する銅粒子間の粒界は、高傾角粒界であり、高傾角粒界は、<111>の結晶平面方向に対して10°を超える角度の
結晶方位差として定義される。低傾角粒界は、<111>の結晶平面方向に対して2〜10°の
結晶方位差を有する。<111>の結晶平面方向に対して55°〜65°の高傾角粒界の
結晶方位差に加えて、本発明の銅金属は、<111>の結晶平面方向に対して55°未満の、および65°を超える
結晶方位差の角度を有する隣接する銅粒子間に、粒界の30%未満の双晶分率を含むことができる。そのような
結晶方位差の角度は、<111>の結晶平面方向に対して0°〜55°未満、および65°超〜180°の範囲とすることができる。
【0015】
本発明の銅金属は、(111)平面配向において2以上の、好ましくは5〜10.5など(例えば5.7〜10.2)の5以上の、ランダム分布の倍数(MRD)とも称されるテクスチャインデックス(結晶質)を有する。高い(111)テクスチャは、銅における滑り系が{111}の滑り平面および<110>({111}<110>)の滑り方向を含み、したがって、抗張力および伸長といった機械的性能を向上させる結果となるので、本発明が、滑りを生じさせるために利用可能である、より多くの(111)平面を有することを示す。1というテクスチャインデックスは、(111)平面配向を有する試料において、(111)平面のランダムな配向、およびより少ない銅の結晶を示し、したがって、滑りがより少なく、抗張力および伸長といった機械的性能が劣る結果となる。1を超えるテクスチャインデックスは、(111)平面配向を有する試料において、より多くの結晶が存在することを示す。故に、2というテクスチャインデックスは、(111)平面配向を有する試料中の結晶の数が、1というテクスチャインデックスを有する試料の2倍を超えることを意味し、5というテクスチャインデックスは、(111)平面配向を有する試料中の結晶の数が、1というテクスチャを有する試料中の結晶の数の5倍であり、向上した滑り、および向上した機械的特性を可能にすることを意味する。MRDにおいて検出される2を超える追加的な配向は、例えば、(001)、(101)、(201)、(212)、(311)、および(511)であるが、5未満等の、または0〜5等の、または1〜4(例えば、1〜3.5)等のテクスチャインデックスを有することができる。
【0016】
本発明の銅金属は、回折強度(I)対回折角2θ(°)のグラフ上で1以上である、回折角2θ(°)での(111)平面配向/(200)平面配向のXRD面積比を有する。好ましくは、回折角2θ(°)での(111)平面配向/(200)平面配向のXRD面積比は、5以上である。より好ましくは、回折角2θ(°)での(111)平面配向/(200)平面配向のXRD面積比は、高い数の(111)平面を有する銅の結晶を示す、5〜31(例えば、5.3、21、または31)である。
【0017】
本発明の銅金属の平均粒径(球相当直径)は、アニーリング過程で見出されるような200℃以上の高温の熱に晒されたときに、実質的に増加せず、したがって、銅金属のクラッキングの可能性を低減させる。例えば、<111>結晶平面方向において55°〜65°の
結晶方位差の角度を有する銅試料中の全ての粒子の平均粒径(球相当直径)は、アニーリング前に、100nm以上、好ましくは500nm以上、より好ましくは1〜2μmとすることができる。<111>の結晶平面方向において55°〜65°の
結晶方位差の角度を有する銅粒子の平均直径は、熱アニーリング後に、100nm以上、好ましくは500nm以上の直径(球相当直径)を有する。より好ましくは、<111>の結晶平面方向において55°〜65°の
結晶方位差の角度を有する銅粒子の平均直径は、熱アニーリング後に、0.1μm〜3μm(例えば、1μm〜2.5μm、または1.4μm〜2.3μm等)の直径(球相当直径)を有し、さらに好ましくは、<111>の結晶平面方向において55°〜65°の
結晶方位差の角度を有する銅粒子の平均直径は、熱アニーリング後に、1μm〜2.5μm、最も好ましくは1.5〜2.3μmの直径(球相当直径)を有する。本発明の銅金属の小さい粒子直径(球相当直径)は、次式のホール−ペッチの関係によって証明されるように、抗張力が向上する程度に、材料を強化することができる。
σ
y(降伏応力)=σ
0+k
1D
−1/2
式中、σ
yは、MPaでの降伏における材料強度である。
σ
0は、転位運動の開始応力に関する材料定数であり、銅の場合は、25MPaである。
k
1は、強化係数(各材料に固有の定数)であり、銅の場合は、0.11MPa・m
1/2である。
Dは、メートルでの平均粒子直径である。
【0018】
本発明の銅金属は、本発明の水性酸性銅の電気めっき組成物(浴)によって電気めっきされる。本発明の水性酸性銅電気めっき組成物(浴)は、銅イオンおよび対アニオンの供給源と、電解質と、1つまたは2つ以上のイミダゾール化合物
、あるいは1つまたは2つ以上の
2−アミノピリジン化合物と、1つまたは2つ以上の
ビスエポキシドとの反応生成物を含む(好ましくは、
からなる)レベラーと、促進剤と、抑制剤と、随意だが、好ましくはハロゲン化物イオンの供給源と、水とを含有する(好ましくはこれらから成る)。
【0019】
好ましくは、イミダゾール化合物は、以下の一般構造式を有する。
【0021】
式中、R
1、R
2、およびR
3は、水素原子、直鎖もしくは分岐鎖(C
1−C
10)アルキル、ヒドロキシル、直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ、直鎖もしくは分岐鎖ヒドロキシ(C
1−C
10)アルキル、直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ(C
1−C
10)アルキル、直鎖もしくは分岐鎖カルボキシ(C
1−C
10)アルキル、直鎖もしくは分岐鎖アミノ(C
1−C
10)アルキル、または置換もしくは非置換フェニルから独立して選択され、ここで、置換基は、ヒドロキシル、ヒドロキシ(C
1−C
3)アルキル、または(C
1−C
3)アルキルから選択される。好ましくは、R
1、R
2、およびR
3は、水素原子、直鎖もしくは分岐鎖(C
1−C
5)アルキル、ヒドロキシル、直鎖もしくは分岐鎖ヒドロキシ(C
1−C
5)アルキル、または直鎖もしくは分岐鎖アミノ(C
1−C
5)アルキルから独立して選択される。より好ましくは、R
1、R
2、およびR
3は、水素原子、または、メチル、エチル、または、プロピル部分等の(C
1−C
3)アルコールから独立して選択される。そのような化合物の例は、1H−イミダゾール、2,5−ジメチル−1H−イミダゾール、および4−フェニルイミダゾールである。
【0022】
本発明の2−アミノピリジン化合物は、ピリジン環の炭素−2がアミノ基またはアミノアルキル基で置換された、ピリジン化合物である。
【0023】
好ましくは、本発明の2−アミノピリジン化合物は、以下の構造式を有する。
【0025】
式中、R
8は、−Hまたは直鎖もしくは分岐鎖(C
1−C
4)アルキルであり、R
9は、−H、直鎖もしくは分岐鎖(C
1−C
4)アルキル、ハロゲン化物、直鎖もしくは分岐鎖アミノ(C
1−C
4)アルキル、またはフェニルであり、pは、0〜4の整数であり、ここで、p=0のとき、NHR
8の窒素は、ピリジンリングの炭素−2と共有結合を形成する。好ましくは、R
8は、−Hまたは(C
1−C
2)アルキルであり、R
9は、−Hまたは(C
1−C
2)アルキル、アミノ(C
1−C
2)アルキル、塩化物であり、pは、1〜2の整数である。より好ましくは、R
8は、−Hまたはメチルであり、R
9は、−Hまたはメチルであり、pは、1〜2の整数である。最も好ましくは、R
8は、−Hであり、R
9は、−Hであり、pは、2である。構造式(II)の例示的な化合物は、2−アミノ−4−メチルピリジン、2−アミノ−5−メチルピリジン、2−アミノ−5−クロロピリジン、2−アミノピリジン、2−(2−アミノエチル)ピリジン、および4−(2−アミノエチル)ピリジンであり、2−(2−アミノエチル)ピリジンが好ましい。
【0026】
好ましくは、ビスエポキシドは、以下の構造式を有する。
【0028】
式中、R
4およびR
5は、水素または(C
1−C
4)アルキルから独立して選択され、R
6およびR
7は、同じまたは異なるものとすることができ、水素、メチル、またはヒドロキシルから独立して選択され、mは、1〜6であり、nは、1〜20である。好ましくは、R
4およびR
5は、水素である。好ましくは、R
6およびR
7は、水素、メチル、またはヒドロキシルから独立して選択される。より好ましくは、R
6は、水素であり、R
7は、水素またはヒドロキシルである。好ましくは、mは、2〜4であり、nは、1〜2である。より好ましくは、mは、3〜4であり、nは、1である。
【0029】
構造式(II)の化合物としては、1,4−ブチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル化合物、およびポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
本発明の反応生成物(レベラー)は、当該技術分野において既知の種々の過程によって調製することができる。典型的には、1つまたは2つ以上のイミダゾール化合物または1つまたは2つ以上の2−アミノピリジン化合物は、室温で、DI水中に溶解され、続いて、1つまたは2つ以上のビスエポキシド化合物を滴下によって加える。次いで、浴の温度を室温から約100℃まで上昇させる。2〜5時間にわたって、撹拌しながら加熱する。次いで、さらに8〜12時間にわたって撹拌しながら、加熱浴の温度を室温まで降下させる。各成分の量は、変化させることができるが、一般に、イミダゾール化合物または2−アミノピリジン化合物からの部分とビスエポキシドからの部分とのモル比が、1:1〜100:70の範囲である生成物を提供するのに十分な量の各反応物を加える。本発明の反応生成物またはコポリマーは、本発明の酸性銅電気めっき組成物中で、正に帯電する(カチオン)。
【0031】
一般に、反応生成物は、200〜100,000、好ましくは300〜50,000、より好ましくは500〜30,000の数平均分子量(Mn)を有するが、他のMn値を有する反応生成物を使用することができる。そのような反応生成物は、1000〜50,000、好ましくは5000〜30,000の範囲の重量平均分子量(Mw)値を有することができるが、他のMw値を使用することができる。
本発明のめっき銅金属の銅電気めっき浴に含まれる反応生成物の量は、めっき浴の合計量に基づいて、2ppm〜15ppm、好ましくは2ppm〜10ppm、より好ましくは2ppm〜5ppm、最も好ましくは3ppm〜4ppmの範囲とすることができる。
【0032】
銅イオン源は、銅塩(好ましくは水溶性)であり、限定されないが、硫酸銅五水和物等の硫酸銅、塩化銅等のハロゲン化銅、酢酸銅、硝酸銅、テトラフルオロホウ酸銅、アルキルスルホン酸銅、アリールスルホン酸銅、スルファミン酸銅、過塩素酸銅、およびグルコン酸銅が挙げられる。例示的なアルカンスルホン酸銅としては、(C
1−C
6)アルカンスルホン酸銅、およびより好ましくは(C
1−C
3)アルカンスルホン酸銅が挙げられる。好ましいアルカンスルホン酸銅は、メタンスルホン酸銅、エタンスルホン酸銅、およびプロパンスルホン酸銅である。アリールスルホン酸銅としては、限定されないが、ベンゼンスルホン酸銅およびp−トルエンスルホン酸銅が挙げられる。銅イオン源の混合物を使用することができる。好ましくは、銅塩は、30〜60g/Lのめっき溶液の量の銅イオンを提供するのに十分な量で存在する。より好ましくは、銅イオンの量は、35〜50g/Lであり、最も好ましくは、銅イオンの量は、35〜45g/Lである。
【0033】
本発明の電解質は、酸性である。好ましくは、電解質のpHは、2以下であり、より好ましくは、pHは、1以下である。酸性電解質としては、硫酸、酢酸、フルオロホウ酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、およびトリフルオロメタンスルホン酸等のアルカンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、スルファミン酸等のアリールスルホン酸、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、クロム酸、およびリン酸が挙げられるが、これらに限定されない。本件の銅電気めっき組成物においては、酸の混合物を使用することができる。好ましい酸としては、硫酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、塩酸、およびそれらの混合物が挙げられる。最も好ましい酸は、硫酸である。酸は、1〜400g/L、好ましくは10g/L〜300g/L、より好ましくは25g/L〜250g/L、最も好ましくは30g/L〜100g/Lの量で存在することができる。硫酸が銅電気めっき組成物に含まれるときに、好ましい濃度範囲は、40g/L〜80g/L、最も好ましくは40g/L〜60g/Lである。電解質は、概して、様々な供給源から市販されており、さらに精製することなく使用することができる。
【0034】
そのような電解質は、随意に、しかし好ましくは、ハロゲン化物イオンの供給源を含有することができる。好ましくは、塩化物イオンおよび臭化物イオンが使用される。例示的な塩化物イオン源としては、塩化銅、塩化ナトリウム、塩化カリウム、および塩酸が挙げられる。臭化物イオンの供給源の例は、塩化臭素および臭素水である。広範囲にわたるハロゲン化物イオン濃度を本発明において使用することができる。好ましくは、ハロゲン化物イオン濃度は、めっき浴に基づいて、0.5ppm〜100ppmの範囲である。より好ましくは、ハロゲン化物イオンは、50ppm〜80ppm、最も好ましくは65ppm〜75ppmの量で含まれる。そのようなハロゲン化物イオン源は、一般に市販されており、さらに精製することなく使用することができる。
【0035】
水性酸銅電気めっき浴は、促進剤を含有する。促進剤(光沢剤とも称される)としては、N,N−ジメチルジチオカルバミン酸−(3−スルホプロピル)エステル、3−メルカプト−プロピルスルホン酸−(3−スルホプロピル)エステル、3−メルカプト−プロピルスルホン酸ナトリウム塩、3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸カリウム塩を有する炭酸−ジチオ−O−エチルエステル−S−エステル、ビススルホプロピルジスルフィド、ビス−(ナトリウムスルホプロピル)−ジスルフィド、3−(ベンゾチアゾリル−Sチオ)プロピルスルホン酸ナトリウム塩、ピリジニウムプロピルスルホベタイン、1−ナトリウム−3−メルカプトプロパン−1−スルホネート、N,N−ジメチルジチオカルバミン酸−(3−スルホエチル)エステル、3−メルカプト−エチルプロピルスルホン酸−(3−スルホエチル)エステル、3−メルカプト−エチルスルホン酸ナトリウム塩、3−メルカプト−1−エタンスルホン酸カリウム塩を有する炭酸−ジチオ−O−エチルエステル−S−エステル、ビス−スルホエチルジスルフィド、3−(ベンゾチアゾリル−Sチオ)エチルスルホン酸ナトリウム塩、ピリジニウムエチルスルホベタイン、および1−ナトリウム−3−メルカプトエタン−1−スルホネート、が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の好ましい促進剤は、N,N−ジメチルジチオカルバミン酸−(3−スルホプロピル)エステルである。好ましくは、促進剤は、0.1ppm〜1000ppmの量で含まれる。より好ましくは、促進剤は、40ppm〜50ppm、最も好ましくは10ppm〜50ppmの量で含まれる。
【0036】
抑制剤としては、エチレンオキシド−プロピレンオキシド(「EO/PO」)コポリマーおよびブチルアルコール−エチレンオキシド−プロピレンオキシドコポリマーを含む、ポリプロピレングリコールコポリマーおよびポリエチレングリコールコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。抑制剤の重量平均分子量は、800〜15,000、好ましくは900〜12,000の範囲とすることができる。好ましくは、抑制剤は、組成物の重量に基づいて、0.5g/L〜15g/L、より好ましくは1g/L〜5g/Lの範囲である。
【0037】
電気めっき浴は、成分を任意の順序で組み合わせることによって調製することができる。最初に、銅イオンの供給源、水、電解質、および随意のハロゲン化物イオン源等の無機成分を浴容器に加え、続いて、反応生成物、レベラー、促進剤、抑制剤、および任意の他の随意の有機成分等の有機成分(例えば)を加えることが好ましい。
【0038】
本発明の水性銅電気めっき浴は、随意に、従来のレベリング剤を含むことができるが、そのようなレベリング剤は、実質的には銅特徴の構造および機能を大幅に損なわないことを条件とする。そのようなレベリング剤としては、Stepらへの米国特許第6,610,192号、Wangらへの第7,128,822号、Hayashiらへの第7,374,652号、およびHagiwaraらへの第6,800,188号に開示されているものを挙げることができる。しかしながら、そのようなレベリング剤は、浴から除去されることが好ましい。
【0039】
電気めっきは、好ましくは15〜65℃、より好ましくは、電気めっきは、室温〜50℃、さらに好ましくは室温〜40℃、最も好ましくは室温〜30℃で行われるが、室温が最適である。
【0040】
好ましくは、本発明の銅電気めっき浴は、めっき中に攪拌される。撹拌方法としては、エアスパージング、ワークピース撹拌、およびインピンジメントが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、撹拌は、10cm/秒〜25cm/秒、より好ましくは15cm/秒〜20cm/秒で行われる。
【0041】
基板は、基板を浴に浸漬することによって、または基板に浴を噴霧することによって、基板をめっき浴と接触させることによって電気めっきされる。基板は、陰極として機能する。めっき浴は、可溶性陽極または不溶性陽極とすることができる、陽極を含有する。電極には、電位が印加される。電流密度は、好ましくは2ASD〜8ASD、より好ましくは4ASD〜8ASD、最も好ましくは、5ASD〜7ASD(例えば、5ASD〜6ASD、または5ASD〜7ASD、または6ASD〜7ASD等)の範囲である。
【0042】
本発明の水性酸性銅電気めっき組成物から銅によって基板が電気めっきされた後に、基板と共に銅をアニールして、本発明の銅金属を調製する方法を完成する。好ましくは、アニーリングは、200℃以上、より好ましくは200℃〜260℃、最も好ましくは230℃〜250℃で行われる。好ましくは、アニーリングは、2時間〜10時間、より好ましくは5時間〜8時間、最も好ましくは5.5時間〜6.5時間行われる。好ましくは、アニーリングは、N
2ガス雰囲気等の不活性雰囲気中で行われる。アニーリング過程は、銅の粒径を大幅に増加させない。
【0043】
上で説明した特性に加えて、本発明の銅金属は、良好な抗張力(破壊時)および伸長率(破壊時)といった機械的特性を有する。好ましくは、本発明の銅金属の破壊時の抗張力は、330MPa以上、より好ましくは330MPa〜360MPaである。破壊時の伸長率は、20%以上(例えば、20%〜25%)、好ましくは21%〜23%である。
【0044】
本発明の銅金属および本発明の銅金属を電気めっきする方法は、種々の基板を銅金属化するために使用することができるが、好ましくは、本発明の銅金属は、チップパッケージ内の導電経路を再ルーティングするための方法として使用される微細線銅RDLの形態で、本発明の方法によって電気めっきされ、例えば、チップパッケージは、微細線RDLが、10μm×10μm以下、好ましくは5μm×5μm、より好ましくは2μm×2μm以下、最も好ましくは、1μm×1μm以下のL/Sを有する。
【0045】
銅めっきRDLに加えて、本発明の銅電気めっき方法は、本発明の銅金属同金属を銅シード層等の金属シード層を有する誘電体基板および半導体に電気めっきするために使用することができる。誘電体材料としては、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。特に好ましい誘電体材料は、ポリイミドである。半導体材料としては、シリコンが挙げられるが、これに限定されない。
【0046】
銅金属電気めっき方法は、基板の表面、ならびにビア等の開口に本発明の銅金属を非コンフォーマルに電気めっきするために使用することができる。好ましくは、ビアを含む開口は、2:1以上、より好ましくは4:1以上、さらに好ましくは10:1〜20:1等の6:1以上の高アスペクト比を有する。
【0047】
ビア等の開口は、好ましくは0.5μm〜200μm、より好ましくは1μm〜50μmの直径を有する。開口の深さは、好ましくは0.5μm〜500μm、より好ましくは1μm〜100μmの範囲とすることができる。
【0048】
以下の実施例は、本発明をさらに例示するために含まれるが、その範囲を限定することを意図しない。
【実施例1】
【0049】
レベラー
グリセロールジグリシジルエーテル(60mmol)および1H−イミダゾール(100mmol)を、室温で、加熱浴中に配置した丸底反応フラスコに加えた。次いで、40mLのDI水をフラスコに加えた。加熱浴の温度は、98℃に設定した。反応混合物は、5時間加熱し、さらに8時間にわたって室温で撹拌し続けた。反応生成物(反応生成物1)は、精製することなく使用した。1H−イミダゾールからの部分のモル比と、エーテル部分のモル比とは、100:63であった。
【実施例2】
【0050】
レベラー
グリセロールジグリシジルエーテル(30mmol)、および1H−イミダゾール(25モル%)+4−フェニルイミダゾール(75モル%)のイミダゾール化合物混合物(30mmol)を、室温で、加熱浴中に配置した丸底反応フラスコに加えた。次いで、40mLのDI水をフラスコに加えた。加熱浴の温度は、98℃に設定した。反応混合物は、5時間加熱し、さらに8時間にわたって室温で撹拌し続けた。反応生成物(反応生成物2)は、精製することなく使用した。イミダゾール混合物からの部分のモル比と、エーテル部分のモル比とは、1:1であった。
【実施例3】
【0051】
レベラー
2−(2−アミノエチル)ピリジン(100mmol)を、室温で、加熱浴中に配置した丸底反応フラスコに加えた。次いで、40mLのDI水をフラスコに加えた。加熱浴の温度は、90℃に設定したジャケット温度まで加熱した。浴が76〜78℃の内部温度に到達した時点で、グリセロールジグリシジルエーテル(100mmol)を、丸底反応フラスコに緩やかに注いで、任意の発熱を緩和した。反応混合物は、4時間にわたって、90℃に設定したジャケット温度によって撹拌しながら加熱した。次いで、反応混合物を50〜55℃まで冷却し、硫酸溶液を加えて、混合物を40重量%に希釈した。最終反応生成物(反応生成物3)を25℃まで冷却し、重力排出した。反応生成物3は、精製することなく使用した。イミダゾール混合物からの部分のモル比と、エーテル部分のモル比とは、1:1であった。
【実施例4】
【0052】
比較のレベラー
凝縮器および温度計を備えた250mLの丸底三つ口フラスコにおいて、100mmolの1H−イミダゾールおよび12mLのDI水を加え、続いて、200mmolのエピクロロヒドリンを加えた。得られた混合物を、95℃に設定した油浴を使用して5時間にわたって加熱し、次いで、さらに8時間にわたって室温で撹拌し続けた。反応生成物を、200mLのメスフラスコに移し、すすいで、DI水で200mLのマークに調整した。反応生成物(比較の反応生成物)の溶液は、さらに精製することなく使用した。
【実施例5】
【0053】
本発明の銅電気めっき浴
以下の水性銅電気めっき浴を、水中で浴の成分を混合し、撹拌することによって、室温で調製した。
【0054】
【表1】
【0055】
水性銅電気めっき浴のpHは、1未満であった。
【実施例6】
【0056】
比較の銅電気めっき浴
以下の水性銅電気めっき浴を、水中で浴の成分を混合し、撹拌することによって、室温で調製した。
【0057】
【表2】
【0058】
水性銅電気めっき浴のpHは、1未満であった。
【実施例7】
【0059】
本発明の浴1による銅電気めっき
厚さ1500Åの銅シード層を有する銅のブランクシリコンウエハ(サイズ=4cm×4cm)を、実施例5からの浴1の水性銅電気めっき組成物を含むめっきセルの中に配置した。めっき中の浴のpHは、1未満とし、めっき組成物は、めっき中に20cm/秒の線形速度でパドル撹拌した。可溶性銅電極が陽極としての役割を果たした。DCめっきは、6ASDの電流密度を使用して室温で行った。銅電気めっきは、20μmの厚さを有する銅堆積物がウエハにめっきされるまで行った。銅堆積物は、不活性N
2雰囲気を充填したオーブン中で、6時間にわたって230℃でアニールした。アニーリング後に、銅金属をめっきしたウエハを室温まで冷却した。
【実施例8】
【0060】
比較の浴による銅電気めっき
厚さ1500Åの銅シード層を有する銅のブランクシリコンウエハ(サイズ=4cm×4cm)を、実施例6から比較の浴の水性銅電気めっき組成物を含むめっきセルの中に配置した。めっき中の浴のpHは、1未満とし、めっき組成物は、めっき中に20cm/秒の線形速度でパドル撹拌した。可溶性銅電極が陽極としての役割を果たした。DCめっきは、6ASDの電流密度を使用して室温で行った。銅電気めっきは、20μmの厚さを有する銅堆積物がウエハにめっきされるまで行った。銅堆積物は、不活性N
2雰囲気を充填したオーブン中で、6時間にわたって230℃でアニールした。アニーリング後に、銅金属をめっきしたウエハを室温まで冷却した。
【実施例9】
【0061】
銅を電気めっきした切片の分析
EBSDを使用して、実施例7および実施例8による銅堆積物の特性を定量的に測定した。EBSDは、粒径、粒子配向、テクスチャ、および粒界角度を明らかにした。めっきした銅ウエハ(Pure Wafer 2240 Ringwood Ave.San Jose CA 951311による300mmの多結晶シリコン、P/ホウ素、<100>、0〜100ohm−cm)を4mm×8mmの断片に切り分け、試料ホルダに載置した。JEOL USA,Inc.によるアルゴンミリングクロスセクションポリッシャ モデルJEOL IB09010CPを使用して、各断片の表面を研磨し、表面を分析した。EBSD検出器(EDAX Inc.,モデルHikari Super、データは、OIM(商標)分析ソフトウェアによって分析した)と連結したFE−SEM(FEI、モデルHeliosG3)を使用して、試料から回折信号を収集した。粒径分析については、ステップサイズを0.025μmとし(0.025μm間隔で測定し)、異なるランダムな試料場所において10個のスキャンを収集して、統計的に有意なデータを取得した。テクスチャ分析については、ステップサイズを0.075μmとし(0.075μm間隔で測定し)、5つの異なる場所で(統計的に有意な)スキャンを行った。
【0062】
図1および
図2は、それぞれ、本発明の、および比較実施例のEBSD逆極点図(IPF)を示し、図においては、種々の配向を異なる色合いによって示す。
図1および
図2の両方において、太く暗い輪郭は、各図において矢印によって示されるように、60°±5°の
結晶方位差角度を有する<111>方向での、隣接する粒界の双晶分率を示す。60°±5°の範囲外の
結晶方位差角度を有する隣接する粒界は、細く薄い線によって示される。
図1において、60°±5°の範囲外の
結晶方位差角度は、5°、40°、および93°である。
図1に関して、60°±5°の
結晶方位差角度は、この範囲外の
結晶方位差の残部によって35%を構成する。
図2において、60°±5°の範囲外の
結晶方位差角度は、23°、39°、および139°である。
図2に関して、60°±5°の
結晶方位差角度は、この範囲外の
結晶方位差の残部によってわずか15%を構成する。
図2の比較の銅金属は、
図1の本発明の銅金属の数の半分未満の60°±5°の
結晶方位差角度を有する。
【0063】
EBSDを使用して、
図1および
図2に示されるような2つの隣接する粒子間の
結晶方位差を決定した。
【0064】
実施例7および実施例8からの銅ウエハを約1cm×2cmの断片に機械的に分割した。次いで、各断片を、両面テープを使用して、銅を上に向けてプラスチック試料ホルダに載置した。銅密閉線源管およびVantec−1リニア位置検出器を備えたBruker D8 Advanceθ−θX線回折計(XRD)を使用して、回折パターンを収集した(Bruker AXS Inc.5465 East Cheryl Parkway,Madison WI 53711)。管は、35kVおよび45mAで動作させ、試料は、銅Kα放射(l=1.541Å)によって照射した。XRDデータは、ステップサイズを0.0256°とし、収集時間を1秒/ステップとして、3°検出器窓によって、15°〜84°2θで収集した。分析は、KSA Analytical Systems(Aubrey,TX)から入手可能なJade2010 MIDIソフトウェアアプリケーションによって行った。
【0065】
機械的特性試験は、INSTRON(商標)の引張試験機33RR64を使用して行った。試験片は、最初に、同じめっき条件で、実施例7および実施例8の配合物を使用して、ステンレス鋼基板(寸法=12cm×12cm)にめっきし、そして、6ASDの電流密度でめっきした。次いで、めっきした銅をステンレスプレートから剥がし、1.3cm×10cmの寸法で条片に切り分けた。単体の銅フィルムの厚さは、50μmであった。この試験においては、インストロン(商標)の引張試験機33R4465を使用して、試験手順(IPC−TM−650)に従った。銅条片は、炉(Blue Mの工業用研究室オーブン、モデル01440A)中で、6時間にわたって230℃でアニールした。試料を室温まで冷却した後に、試料を引張試験機で試験した。適用した引張速度は、試料が破損するまで0.002インチ/分であった。データは、INSTRON(登録商標)から入手可能なBluehill−3ソフトウェアによって記録した。表3は、伸長試験の結果を示す。機械的引張試験は、本発明の試料が比較の試料に対して抗張力を向上させ、一方で、伸長性能を大幅に犠牲にしなかったことを示した。
【0066】
表3は、本発明の銅堆積物と、比較または従来の浴の銅堆積物との比較を示す。本発明の銅堆積物の粒径は、熱アニーリング後に、比較実施例による銅の約43%未満であった。
【0067】
また、EBSDを使用して、本発明の銅堆積物および比較の銅の双晶分率およびテクスチャインデックスも決定した。本発明の銅堆積物は、<111>の結晶平面方向の隣接する粒子間で、60°±5°誤配向を有する粒界の35%の双晶分率を示した。本発明の銅金属のテクスチャインデックスは、(111)平面配向において5.7であった。銅の滑り系は、{111}<110>であるので、高い(111)平面配向が好ましい。高い(111)平面分率は、滑りを起こり易くし、これは、より良好な機械的性能をもたらす。一方で、比較の銅金属において、(001)平面配向テクスチャは、5.1のテクスチャインデックス比率が支配的であり、これは、滑り系に好都合ではない。(111)平面および(001)平面は、銅において2を超えるMRDに関して、2つの最も有意な平面である。したがって、2つの平面を比較したが、本発明の銅金属については、より高い数の(111)平面対(001)平面が好ましい。
【0068】
XRDはまた、本発明の銅金属が、比較の銅金属よりも大幅に高い(111)/(200)比を有することも明らかにした。XRD試験の試料は、実施例7および実施例8の銅浴によってシリコンウエハにめっきした、厚さ約5μm銅フィルムであった。(200)平面配向が(111)に次いで2番目に強い回折ピークであったので、この比は、(200)平面配向での回折ピークを使用して決定した。他の回折ピークは、弱過ぎたか、または検出することができなかった。
図3に示されるように、回折強度(I)対回折角2θ(°)を各試料について記録し、プロットした。固有の回折ピーク(111)配向および回折ピーク(200)配向下にある面積を、さらなる定量化のために積分した。積分は、XRDシステム用のJade2010 MDIソフトウェアによって行った。結果を表3に示す。
【0069】
【表3】
【実施例10】
【0070】
本発明の浴2によって銅を電気めっきした切片の分析
浴2による銅金属を、実施例7において開示されるものと同じ種類の基板にめっきした。めっき条件は、実施例7で開示したものと実質的に同じであった。実施例5において表2に開示された浴2の銅電気めっき組成物によってめっきした銅を、上記の実施例9で説明される方法に従って、その特性を分析した。EBSD、XRDの結果、および機械的引張試験の結果を下の表4に開示する。
【0071】
【表4】
【実施例11】
【0072】
本発明の浴3による銅を電気めっきした切片の分析
浴3によってめっきされた銅金属を、実施例7において開示されるものと同じ種類の基板にめっきした。めっき条件は、実施例7におけるものと実質的に同じであった。実施例5において表2に開示された浴3の組成物によってめっきした銅を、上記の実施例9で説明される方法に従って、その特性を分析した。EBSD、XRDの結果、および機械的引張試験の結果を下の表5に開示する。
【0073】
【表5】