特許第6689967号(P6689967)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6689967低ガラス転移を有する固体ロケット推進薬
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6689967
(24)【登録日】2020年4月10日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】低ガラス転移を有する固体ロケット推進薬
(51)【国際特許分類】
   C06D 5/00 20060101AFI20200421BHJP
   C06B 45/10 20060101ALI20200421BHJP
   C06B 23/00 20060101ALI20200421BHJP
   F02K 9/08 20060101ALI20200421BHJP
   C08G 18/69 20060101ALI20200421BHJP
   C08G 18/77 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
   C06D5/00 A
   C06B45/10
   C06B23/00
   F02K9/08
   C08G18/69
   C08G18/77 080
   C08G18/77 030
   C08G18/77 010
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-516191(P2018-516191)
(86)(22)【出願日】2016年9月30日
(65)【公表番号】特表2018-537375(P2018-537375A)
(43)【公表日】2018年12月20日
(86)【国際出願番号】US2016054681
(87)【国際公開番号】WO2017069926
(87)【国際公開日】20170427
【審査請求日】2019年5月17日
(31)【優先権主張番号】62/243,614
(32)【優先日】2015年10月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594203852
【氏名又は名称】エアロジェット ロケットダイン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ドール,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ドーリー,スコット
【審査官】 古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第08334356(US,B1)
【文献】 欧州特許出願公開第00520104(EP,A1)
【文献】 特表昭59−500820(JP,A)
【文献】 米国特許第04463155(US,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01219652(EP,A1)
【文献】 特開2010−257981(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02253650(EP,A1)
【文献】 特開昭61−218617(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00192190(EP,A1)
【文献】 特開昭63−150321(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00266973(EP,A1)
【文献】 国際公開第00/034350(WO,A1)
【文献】 米国特許第04332631(US,A)
【文献】 英国特許第01061390(GB,B)
【文献】 特開平02−055862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C06D 5/00
C06B 23/00
C06B 45/10
C08G 18/69
C08G 18/77
F02K 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘキサメチレンジイソシアネート末端ペルフルオロ‐3,6,9‐トリオキサウンデカン‐1,11‐ジオール(FODI)、およびヘキサメチレンジイソシアネート末端ポリテトラヒドロフラン(pTHF)からなる群から選択された、ジイソシアネート末端ポリエーテルである硬化剤とともにヒドロキシル基末端ポリブタジエン(HTPB)を有するバインダを備えた、固体ロケット推進薬。
【請求項2】
前記バインダが、前記硬化剤の前記ヒドロキシル基末端ポリブタジエンに対する重量比で、5:95〜40:60の比率を有することを特徴とする請求項1に記載の固体ロケット推進薬。
【請求項3】
モータケースと、
前記モータケースに取り付けられたノズルと、
前記モータケースに配置された固体ロケット推進薬であって、ヘキサメチレンジイソシアネート末端ペルフルオロ‐3,6,9‐トリオキサウンデカン‐1,11‐ジオール(FODI)、およびヘキサメチレンジイソシアネート末端ポリテトラヒドロフラン(pTHF)からなる群から選択された、ジイソシアネート末端ポリエーテルである硬化剤とともにヒドロキシル基末端ポリブタジエン(HTPB)を含んだ、固体ロケット推進薬と、
を備えた固体ロケットモータ。
【請求項4】
前記バインダが、前記硬化剤の前記ヒドロキシル基末端ポリブタジエンに対する重量比で、5:95〜40:60の比率を有することを特徴とする請求項に記載の固体ロケットモータ。
【請求項5】
ヘキサメチレンジイソシアネート末端ペルフルオロ‐3,6,9‐トリオキサウンデカン‐1,11‐ジオール(FODI)、およびヘキサメチレンジイソシアネート末端ポリテトラヒドロフラン(pTHF)からなる群から選択された、ジイソシアネート末端ポリエーテルである硬化剤とともにヒドロキシル基末端ポリブタジエン(HTPB)を備えたポリマ組成。
【請求項6】
記バインダが、前記硬化剤の前記ヒドロキシル基末端ポリブタジエンに対する重量比で、5:95〜40:60の比率を有することを特徴とする請求項に記載のポリマ組成。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本発明は、2015年10月19日出願の米国特許仮出願第62/243,614号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
固体ロケットモータは一般的に鋳造された固体推進薬を含む。固体推進薬は、バインダで結合された酸化剤、燃料、またはその両方を含む。固体推進薬の点火により高圧ガスを発生させ、この高圧ガスは、ノズルを通して放出されて推力を発生させる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の一例による固体ロケット推進薬が、イソシアネート末端ポリエーテル、イソシアネート末端ポリシロキサン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された硬化剤とともに、ヒドロキシル基末端ポリブタジエン(HTPB)を有するバインダを含む。
【0004】
前述の実施例のいずれかにおける更なる実施例では、硬化剤が、イソシアネート末端ポリエーテルである。
【0005】
前述の実施例のいずれかにおける更なる実施例では、イソシアネート末端ポリエーテルが、ジイソシアネート末端ポリエーテルである。
【0006】
前述の実施例のいずれかにおける更なる実施例では、ジイソシアネート末端ポリエーテルが、フッ素化される。
【0007】
前述の実施例のいずれかにおける更なる実施例では、ジイソシアネート末端ポリエーテルが、ヘキサメチレンジイソシアネート末端ペルフルオロ‐3,6,9‐トリオキサウンデカン‐1,11‐ジオール(FODI)である。
【0008】
前述の実施例のいずれかにおける更なる実施例では、ジイソシアネート末端ポリエーテルが、ヘキサメチレンジイソシアネート末端ポリテトラヒドロフラン(pTHF)である。
【0009】
前述の実施例のいずれかにおける更なる実施例では、硬化剤が、イソシアネート末端ポリシロキサンである。
【0010】
前述の実施例のいずれかにおける更なる実施例では、イソシアネート末端ポリシロキサンが、ジイソシアネート末端ポリシロキサンである。
【0011】
前述の実施例のいずれかにおける更なる実施例では、イソシアネートが、脂肪族ジイソシアネートである。
【0012】
前述の実施例のいずれかにおける更なる実施例では、イソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネートである。
【0013】
前述の実施例のいずれかにおける更なる実施例では、バインダが、硬化剤のヒドロキシル基末端ポリブタジエンに対する重量比(a ratio of the curative to the HTPB, by weight)で、約5:95〜約40:60の比率を有する。
【0014】
前述の実施例のいずれかにおける更なる実施例では、硬化剤が、ヘキサメチレンジイソシアネート末端ポリエーテルであり、バインダが、硬化剤のヒドロキシル基末端ポリブタジエンに対する重量比で、約5:95〜約40:60の比率を有する。
【0015】
前述の実施例のいずれかにおける更なる実施例では、硬化剤が、ジイソシアネート末端ポリシロキサンであり、バインダが、硬化剤のヒドロキシル基末端ポリブタジエンに対する重量比で、約5:95〜約40:60の比率を有する。
【0016】
本発明の一例による固体ロケットモータが、モータケースと、モータケースに取り付けられたノズルと、モータケースに配置された固体ロケット推進薬と、を含む。固体ロケット推進薬は、イソシアネート末端ポリエーテル、イソシアネート末端ポリシロキサン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された硬化剤とともに、ヒドロキシル基末端ポリブタジエン(HTPB)を有する。
【0017】
前述の実施例のいずれかにおける更なる実施例では、硬化剤が、ジイソシアネート末端ポリエーテルである。
【0018】
前述の実施例のいずれかにおける更なる実施例では、ジイソシアネート末端ポリエーテルが、ヘキサメチレンジイソシアネート末端ペルフルオロ‐3,6,9‐トリオキサウンデカン‐1,11‐ジオール(FODI)、およびヘキサメチレンジイソシアネート末端ポリテトラヒドロフラン(pTHF)からなる群から選択される。
【0019】
前述の実施例のいずれかにおける更なる実施例では、硬化剤が、ジイソシアネート末端ポリシロキサンである。
【0020】
前述の実施例のいずれかにおける更なる実施例では、バインダが、硬化剤のヒドロキシル基末端ポリブタジエンに対する重量比で、約5:95〜約40:60の比率を有する。
【0021】
本発明の一例によるポリマ組成が、イソシアネート末端ポリエーテル、イソシアネート末端ポリシロキサン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された硬化剤とともに、ヒドロキシル基末端ポリブタジエン(HTPB)を含む。
【0022】
前述の実施例のいずれかにおける更なる実施例では、硬化剤が、ヘキサメチレンジイソシアネート末端ペルフルオロ‐3,6,9‐トリオキサウンデカン‐1,11‐ジオール(FODI)、およびヘキサメチレンジイソシアネート末端ポリテトラヒドロフラン(pTHF)からなる群から選択され、バインダが、硬化剤のヒドロキシル基末端ポリブタジエンに対する重量比で、約5:95〜約40:60の比率を有する。
【0023】
以下の詳細な説明から本発明の様々な特徴および利点が当業者に明らかとなるであろう。詳細な説明に添付の図面を以下に簡単に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】一例の固体ロケットモータを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は一例の固体ロケットモータ20の選択された部分の断面図を概略的に示し、これはエネルギー装置の一例でもある。固体ロケットモータ20は概してノズル22と、固体推進薬セクション24と、を含む。固体推進薬セクション24は、前端24aと、後端24bと、を含む。ノズル22は、後端24bに取り付けられる。理解できるように、固体ロケットモータ20は、その動作に関連する追加のコンポーネントを含んでもよく、それらのコンポーネントは概ね周知であり、ここでは記載しない。
【0026】
固体推進薬セクション24は固体推進薬26を含む。固体推進薬は少なくともポリマベースのバインダと、酸化剤と、を含む。特定の設計要件に応じて、固体推進薬は固体燃料も含みうる。この例では、固体推進薬26は細長いボア28を画定する。ボア28の形状は円筒形であってもよく、放射状のフィン型のスロットまたはその他の特徴を有してもよい。代替的に、固体推進薬26はボアを有していなくてもよい。固体推進薬26はモータケース30内に中心軸Aを中心として配置される。
【0027】
点火時に固体推進薬26は反応して、高温高圧ガス(燃焼ガス)を発生させる。燃焼ガスがボア28を経てノズル22を通して放出されて、推力を発生させる。
【0028】
推力の発生に使用する前、モータ20は保管され、あるいは輸送される。保管または輸送中、モータは広範囲の温度を含む周辺環境の環境条件に曝されうる。特に、極低温では、ポリマベースのバインダは、そのガラス転移温度(Tg)に到達し始める。Tgを下回ると、ポリマは脆弱になり、ひずみに対して耐性が低くなり始め、それによりロケットモータの応力が極低温においてバインダに亀裂を生じさせる可能性が増加する。こうしたポリマバインダのより低いガラス転移温度がひずみ不耐性の可能性を低減するのに望ましいが、固体推進薬は製造可能で、かつ優れた推力性能を提供する必要もある。この点に関し、以下に詳述するように、固体推進薬26は優れた性能を有するとともに向上した低Tgを有するバインダを含む。
【0029】
本明細書中に記載の固体推進薬26は、硬化剤(curative)とともにヒドロキシル基末端ポリブタジエン(HTPB)を有するバインダを含み、硬化剤は、イソシアネート末端ポリエーテル(isocyanate-terminated polyether)、イソシアネート末端ポリシロキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート末端ペルフルオロ‐3,6,9‐トリオキサウンデカン‐1,11‐ジオール(hexamethylene diisocyanate-terminated perfluoro-3,6,9-trioxaundecane-1,11-diol)(FODI)であるジイソシアネート末端ポリエーテル、またはそれらの組合せから選択される。選択された硬化剤はバインダのTgを低下させ、延いては固体推進薬26の低温ひずみ耐性を向上させる役割を果たす。
【0030】
一例では、硬化剤はイソシアネート末端ポリエーテルである。例えば、イソシアネート末端ポリエーテルはジイソシアネート末端ポリエーテルであり、フッ素化されてもよい。フッ素化されたジイソシアネート末端ポリエーテルの一例は、ヘキサメチレンジイソシアネート末端ペルフルオロ‐3,6,9‐トリオキサウンデカン‐1,11‐ジオール(FODI)である。別の例では、ジイソシアネート末端ポリエーテルは、ヘキサメチレンジイソシアネート末端ポリテトラヒドロフラン(pTHF)である。
【0031】
付加的にまたは代替的に、硬化剤はイソシアネート末端ポリシロキサンであってもよく、またはこれを含んでもよい。例えば、イソシアネート末端ポリシロキサンは、ジイソシアネート末端ポリシロキサンでもよい。
【0032】
固体推進薬26のバインダは、硬化剤のHTPBに対する重量比で、約5:95〜約40:60である。上記の比率は、例えば−85°C以下などの、約−80°Cを下回るTgを達成するのに有効である。更なる例では、FODIを用いることにより約−88°CのTgが得られ、pTHFを用いることにより約−85°CのTgが得られる。
【0033】
モータ20は、ケース30内に固体推進薬26を注入するまたは流し込むことによって製造される。例えば、固体推進薬26の構成成分が互いに混合され、次いでケースまたは適切なモールド内に注入または流し込まれる。次いで混合物を硬化させ、その結果、最終的な固体推進薬26が所望の形状に製造される。一例として、固体推進薬26は本明細書中に記載のバインダと、酸化剤と、を含みうる。モータ20の設計に応じて、固体推進薬26はまた、例えばアルミニウム、ホウ素、又はマグネシウムの一つ以上の粉末などの、固体燃料を含みうる。一般的に、硬化剤を除くこれらの構成成分が互いに混合される。硬化剤は、早期の硬化を防止するように混合物に最後に添加される。次いでその混合物がケース30または適切なモールドに注入されて、固体推進薬26を形成する。硬化剤はHTPBのヒドロキシル基と反応して架橋を形成し、バインダに弾性を生じさせる役割を果たす。
【0034】
特徴部の組合せを図示の例に示したが、本開示の様々な実施例の利点を実現するようにそれらの全てを必ずしも組み合わせる必要はない。換言すれば、本開示の実施例によって設計された装置は、図面の一つに示された特徴部の全て、または図面に概略的に示された部分の全てを必ずしも含む必要はない。さらに、一実施例の選択された特徴部を別の実施例の選択された特徴部と組み合わせてもよい。
【0035】
上記の記載は本質的に限定的ではなく例示的なものである。開示の例に対する変更、修正が本開示から必ずしも逸脱することなく当業者にとって明らかとなるであろう。本開示に所与の法的保護の範囲は以下の特許請求の範囲を検討することによってのみ決定することができる。
図1