特許第6689984号(P6689984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6689984少なくとも1つのレーザ光モジュールを備えた車両用の投光器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6689984
(24)【登録日】2020年4月10日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】少なくとも1つのレーザ光モジュールを備えた車両用の投光器
(51)【国際特許分類】
   F21S 45/70 20180101AFI20200421BHJP
   F21S 41/16 20180101ALI20200421BHJP
   F21S 41/176 20180101ALI20200421BHJP
   F21S 41/20 20180101ALI20200421BHJP
   F21S 41/25 20180101ALI20200421BHJP
   B60Q 1/14 20060101ALI20200421BHJP
   B60Q 1/04 20060101ALI20200421BHJP
   F21W 102/10 20180101ALN20200421BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20200421BHJP
【FI】
   F21S45/70
   F21S41/16
   F21S41/176
   F21S41/20
   F21S41/25
   B60Q1/14 Z
   B60Q1/04 E
   F21W102:10
   F21Y115:30
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-533153(P2018-533153)
(86)(22)【出願日】2016年12月16日
(65)【公表番号】特表2018-538676(P2018-538676A)
(43)【公表日】2018年12月27日
(86)【国際出願番号】AT2016060131
(87)【国際公開番号】WO2017106893
(87)【国際公開日】20170629
【審査請求日】2018年6月22日
(31)【優先権主張番号】A51094/2015
(32)【優先日】2015年12月22日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】593045569
【氏名又は名称】ツェットカーヴェー グループ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(74)【代理人】
【識別番号】100119415
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 充
(72)【発明者】
【氏名】ダナー、マルクス
(72)【発明者】
【氏名】リーゼンフーバー、ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ライジンガー、ベッティーナ
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー、ペーター
【審査官】 河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第102013200521(DE,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102012220481(DE,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102012220472(DE,A1)
【文献】 特開2014−022084(JP,A)
【文献】 特開2015−088398(JP,A)
【文献】 特開2014−135159(JP,A)
【文献】 特開2014−013758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 45/70
F21S 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源(11)と、ビーム路において前記レーザ光源(11)に後置された蛍光体素子(13)と、前置光学系(16)とを有する少なくとも1つのレーザ光モジュール(3l,3m,3r)を備えた車両用の投光器(1)であって、
前記少なくとも1つのレーザ光モジュール(3l,3m,3r)は、前記投光器のケーシング(2)内に配置されており、前記投光器(1)は、前記少なくとも1つのレーザ光モジュールの投影光学系の焦平面において形成された光分布を車道空間に投影するための投影光学系(4)を有し、
前記少なくとも1つの前置光学系(16)には、少なくとも1つの偏向プリズム(20;22,23)が組み込まれており、該偏向プリズム(20;22,23)は、欠陥又は欠損がある蛍光体素子(13)を通過するレーザ光線(15;15−1,15−2)の領域に位置しており、且つ障害時に生じる該レーザ光線を偏向させ、前記投影光学系(4)から、従って前記車道空間から隔離すること
前記少なくとも1つのレーザ光モジュール(3l,3m,3r)の前記前置光学系(16)は、TIR光学系として構成されていること、
前記少なくとも1つの偏向プリズム(20;22,23)は、前記TIR光学系(16)の前面における凹部によって構成されていること
を特徴とする、投光器。
【請求項2】
前記前置光学系(16)の光軸は、生成されたレーザビームの方向とは異なり、蛍光体素子(13)に欠陥又は欠損がある場合に、前記レーザ光線は2つの部分ビーム(15−1,15−2)に分割され、各部分ビームには1つの偏向プリズム(22,23)が対応付けられていることを特徴とする、請求項1記載の投光器。
【請求項3】
前記偏向プリズム(20;22,23)の光入射面は、前記障害時に生じるレーザビーム(15;15−1,15−2)の横断面に適合されていることを特徴とする、請求項1又は2記載の投光器。
【請求項4】
前記少なくとも1つの偏向プリズム(20,22,23)は、前記障害時に生じるレーザビーム(15;15−1,15−2)に関して、該レーザビーム(15;15−1,15−2)の偏向がビーム横断面の短い方の軸線に対して平行に行われるように配向されていることを特徴とする、請求項3記載の投光器。
【請求項5】
前記投光器の前記ケーシング(2)内で、前記障害時に偏向された少なくとも1つのレーザビーム(15;15−1,15−2)の発生領域にフォトセンサが配置されており、該フォトセンサは、前記障害時に警告信号を出力する、及び/又は少なくとも1つの前記レーザ光源(11)をオフにするように構成されている検出装置と接続されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の投光器。
【請求項6】
前記投光器の前記ケーシング(2)内で、前記障害時に偏向された前記少なくとも1つのレーザビーム(15;15−1,15−2)の当射領域にビーム吸収手段(6)が設けられていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の投光器。
【請求項7】
少なくとも2つのレーザ光モジュール(3l,3m,3r)が設けられており、レーザ光モジュールにおいては、前記前置光学系(16)の光軸の位置は、生成されたレーザビームの方向に関して異なっていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の投光器。
【請求項8】
少なくとも2つのレーザ光モジュール(3l,3m,3r)が設けられており、該少なくとも2つのレーザ光モジュール(3l,3m,3r)のレーザ光源(11)は、楕円形のビーム横断面を有するレーザビームを生成し、前記レーザ光モジュールにおいては、前記楕円形のビーム横断面の軸線位置は、前記投光器の主光軸に関して異なっていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の投光器。
【請求項9】
前記TIR光学系(16)は、前記障害時に生じるレーザ光線をコリメートするものとして構成されており、コリメートされた障害ビームは前記投影光学系(4)から離れる方向に偏向されることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の投光器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光源と、ビーム路においてレーザ光源に後置された蛍光体素子と、前置光学系とを有する少なくとも1つのレーザ光モジュールを備えた車両用の投光器(ないしヘッドランプ)に関する。
【0002】
この種の投光器においては、レーザビームの例えば青色の光が、ここでは「蛍光体素子」と称する光変換手段において、蛍光発光によって実質的に「白色の」光に変換される。光変換手段は、大抵の場合、小さいプレートの形状を有しており、反射(投射)光原理又は透過光原理に従い機能することができる。前者の場合(反射光)には、変換された光は、レーザビームが入射する面と同一の面から放出され、またここではより関心の高い後者の場合(透過光)には、変換された光は、レーザが照射される面とは反対側の面から放出される。いずれの場合にも、可能な限り「白色の」光を得るために、利用される光を、例えば青色のレーザ光を変換された光と混合したものから形成することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】DE 20 2015 001 682 U1
【0004】
刊行物DE 20 2015 001 682 U1からは、この種の自動車用の照明装置が公知であり、この刊行物においては、光変換素子の、即ち蛍光体素子の異なる面(複数)に、図示されていない赤外線信号発生器乃至は信号受信器が設けられており、蛍光体素子の損傷時には相応の測定光線を検出することができ、またレーザダイオードをオフにすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、蛍光体素子の部分的な又は完全な損傷の意味での障害時に、僅かなコストで、レーザ光線に由来する危険を阻止する乃至は最小限に留める措置が講じられる、投光器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、冒頭で述べたような投光器によって解決され、この投光器においては、本発明によれば、少なくとも1つのレーザ光モジュールが投光器のケーシング内に配置されており、この投光器は、少なくとも1つのレーザ光モジュールの投影光学系の焦平面において形成された光分布を車道空間に投影するための投影光学系を有し、また少なくとも1つの前置光学系には、少なくとも1つの偏向プリズムが組み込まれており、この偏向プリズムは、欠陥又は欠損がある蛍光体素子を通過するレーザ光線の領域に位置しており、また障害時に生じるこのレーザ光線を偏向させ、投影光学系から、従って車道空間から隔離する。
本発明の一視点において、レーザ光源と、ビーム路において前記レーザ光源に後置された蛍光体素子と、前置光学系とを有する少なくとも1つのレーザ光モジュールを備えた車両用の投光器が提供される。この投光器は、前記少なくとも1つのレーザ光モジュールは、前記投光器のケーシング内に配置されており、前記投光器は、前記少なくとも1つのレーザ光モジュールの投影光学系の焦平面において形成された光分布を車道空間に投影するための投影光学系を有し、
前記少なくとも1つの前置光学系には、少なくとも1つの偏向プリズムが組み込まれており、該偏向プリズムは、欠陥又は欠損がある蛍光体素子を通過するレーザ光線の領域に位置しており、且つ障害時に生じる該レーザ光線を偏向させ、前記投影光学系から、従って前記車道空間から隔離するよう構成され
前記少なくとも1つのレーザ光モジュールの前記前置光学系は、TIR光学系として構成されており、
前記少なくとも1つの偏向プリズムは、前記TIR光学系の前面における凹部によって構成されている。
なお、本願の特許請求の範囲の各請求項に付記した図面参照符号は、専ら説明の理解を助けるためのものであり、図示の形態に限定することを意図するものではない。
【0007】
このようにして、蛍光体素子の損傷時の投光器の安全性を、僅かなコストで効果的に保証することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明によれば、種々の形態が可能である。
(形態1)
上記視点に記載のとおり。
(形態2)
前記前置光学系の光軸は、生成されたレーザビームの方向とは異なり、蛍光体素子に欠陥又は欠損がある場合に、前記レーザ光線は2つの部分ビームに分割され、各部分ビームには1つの偏向プリズムが対応付けられていることが好ましい。
(形態3)
前記偏向プリズムの光入射面は、前記障害時に生じるレーザビームの横断面に適合されていることが好ましい。
(形態4)
前記少なくとも1つの偏向プリズムは、前記障害時に生じるレーザビームに関して、該レーザビームの偏向がビーム横断面の短い方の軸線に対して平行に行われるように配向されていることが好ましい。
(形態5)
前記投光器の前記ケーシング内で、前記障害時に偏向された少なくとも1つのレーザビームの発生領域にフォトセンサが配置されており、該フォトセンサは、前記障害時に警告信号を出力する、及び/又は少なくとも1つの前記レーザ光源をオフにするように構成されている検出装置と接続されていることが好ましい。
(形態6)
前記投光器の前記ケーシング内で、前記障害時に偏向された前記少なくとも1つのレーザビームの当射領域にビーム吸収手段が設けられていることが好ましい。
(形態7)
少なくとも2つのレーザ光モジュールが設けられており、レーザ光モジュールにおいては、前記前置光学系の光軸の位置は、生成された前記レーザビームの方向に関して異なっていることが好ましい。
(形態8)
少なくとも2つのレーザ光モジュールが設けられており、該少なくとも2つのレーザ光モジュールのレーザ光源は、楕円形のビーム横断面を有するレーザビームを生成し、前記レーザ光モジュールにおいては、前記楕円形のビーム横断面の軸線位置は、前記投光器の主光軸に関して異なっていることが好ましい。
(形態9)
前記少なくとも1つのレーザ光モジュールの前記前置光学系は、TIR光学系として構成されていることが好ましい。
(形態10)
前記少なくとも1つの偏向プリズムは、前記TIR光学系の前面における凹部によって構成されていることが好ましい。
(形態11)
前記TIR光学系は、前記障害時に生じるレーザ光線をコリメートするものとして構成されており、コリメートされた障害ビームは前記投影光学系から離れる方向に偏向されることが好ましい。
本発明の有利な発展形態においては、前置光学系の光軸が、生成されたレーザビームの方向とは異なり、また蛍光体素子に欠陥又は欠損がある場合に、レーザ光線が2つの部分ビームに分割され、この際、各部分ビームには1つの偏向プリズムが対応付けられている。これによって、2つの妨害的なレーザビームが生じた場合においても、所望の安全性が保証されている(なお、その発生はやむを得ないものと認識されている)。
【0009】
偏向プリズムの光入射面が、障害時に生じるレーザビームの横断面に適合されている場合、レーザビームが一般的に(真)円形ではない横断面を有している状況も考慮される。
【0010】
偏向プリズムが不必要に大きく形成されることを回避するために、少なくとも1つの偏向プリズムが、障害時に生じるレーザビームに関して、そのレーザビームの偏向がビーム横断面の短い方の軸線に対して平行に行われるように配向(整列)されている場合には有利である。
【0011】
投光器のケーシング内で、障害時に偏向された少なくとも1つのレーザビームの発生領域にフォト検出器が配置されており、このフォト検出器が、障害時に警告信号を出力する、及び/又は少なくとも1つのレーザ光源をオフにするように構成されている検出装置と接続されている場合には更に得策である。
【0012】
他方では、投光器のケーシング内で、障害時に偏向された少なくとも1つのレーザビームの発生領域にビーム吸収手段が設けられていることは好適であると考えられる。
【0013】
光出力及び光分布に関して好適な構成においては、少なくとも2つのレーザ光モジュールが設けられており、それらのレーザ光モジュールにおいては、前置光学系の光軸の位置は、形成されたレーザビームの方向に関して異なっている。
【0014】
同様に、最適な光分布の意味において、少なくとも2つのレーザ光モジュールが設けられており、それらのレーザ光モジュールのレーザ光源が楕円形のビーム横断面を有するレーザビームを形成することは有利であると考えられ、この場合、それらのレーザ光モジュールにおいては、楕円形のビーム横断面の軸線の配向(位置)は、投光器の主光軸に関して異なっている。
【0015】
また有利には、少なくとも1つのレーザ光モジュールの前置光学系がTIR光学系として形成されている。
【0016】
ここで、簡単且つ好適な実施形態は、少なくとも1つの偏向プリズムが、TIR光学系の前面における凹部によって構成されていることを特徴とする。
【0017】
TIR光学系が、障害時に生じるレーザ光線をコリメートするものとして形成されており、またコリメートされた障害ビームが投影光学系から離れる方向に偏向される場合には有利であると考えられる。
【0018】
ここに、本発明の可能な態様を付記する。
[付記1]レーザ光源と、ビーム路において前記レーザ光源に後置された蛍光体素子と、前置光学系とを有する少なくとも1つのレーザ光モジュールを備えた車両用の投光器。
前記少なくとも1つのレーザ光モジュールは、前記投光器のケーシング内に配置されており、前記投光器は、前記少なくとも1つのレーザ光モジュールの投影光学系の焦平面において形成された光分布を車道空間に投影するための投影光学系を有する。
前記少なくとも1つの前置光学系には、少なくとも1つの偏向プリズムが組み込まれており、該偏向プリズムは、欠陥又は欠損がある蛍光体素子を通過するレーザ光線の領域に位置しており、且つ障害時に生じる該レーザ光線を偏向させ、前記投影光学系から、従って前記車道空間から隔離する。
[付記2]上記の投光器において、前記前置光学系の光軸は、生成されたレーザビームの方向とは異なり、蛍光体素子に欠陥又は欠損がある場合に、前記レーザ光線は2つの部分ビームに分割され、各部分ビームには1つの偏向プリズムが対応付けられている。
[付記3]上記の投光器において、前記偏向プリズムの光入射面は、前記障害時に生じるレーザビームの横断面に適合されている。
[付記4]上記の投光器において、前記少なくとも1つの偏向プリズムは、前記障害時に生じるレーザビームに関して、該レーザビームの偏向がビーム横断面の短い方の軸線に対して平行に行われるように配向されている。
[付記5]上記の投光器において、前記投光器の前記ケーシング内で、前記障害時に偏向された少なくとも1つのレーザビームの発生領域にフォトセンサが配置されており、該フォトセンサは、前記障害時に警告信号を出力する、及び/又は少なくとも1つの前記レーザ光源をオフにするように構成されている検出装置と接続されている。
[付記6]上記の投光器において、前記投光器の前記ケーシング内で、前記障害時に偏向された前記少なくとも1つのレーザビームの当射領域にビーム吸収手段が設けられている。
[付記7]上記の投光器において、少なくとも2つのレーザ光モジュールが設けられており、レーザ光モジュールにおいては、前記前置光学系の光軸の位置は、生成されたレーザビームの方向に関して異なっている。
[付記8]上記の投光器において、少なくとも2つのレーザ光モジュールが設けられており、該少なくとも2つのレーザ光モジュールのレーザ光源は、楕円形のビーム横断面を有するレーザビームを生成し、前記レーザ光モジュールにおいては、前記楕円形のビーム横断面の軸線位置は、前記投光器の主光軸に関して異なっている。
[付記9]上記の投光器において、前記少なくとも1つのレーザ光モジュールの前記前置光学系は、TIR光学系として構成されている。
[付記10]上記の投光器において、前記少なくとも1つの偏向プリズムは、前記TIR光学系の前面における凹部によって構成されている。
[付記11]上記の投光器において、前記TIR光学系は、前記障害時に生じるレーザ光線をコリメートするものとして構成されており、コリメートされた障害ビームは前記投影光学系から離れる方向に偏向される。
以下では、図面に基づいた例示的な実施形態(実施例)に基づいて、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明にとって本質的でない部分を省略した、3つのレーザ光モジュールを備えた投光器の模式的で概略的な部分断面図。
図2】蛍光体素子と共に、非常に概略的に示された、レーザ光モジュールにおいて使用されるレーザ光源。
図3】模式的に示された、図1の中央のレーザ光モジュール。
図4図3の平面IV−IVに沿った断面図。
図5図3の線V−Vに沿った断面図。
図6】模式的に示された、図1の右側のレーザ光モジュール。
図7図6の平面VII−VIIに沿った断面図。
図8図6の線VIII−VIIIに沿った断面図。
【実施例】
【0020】
ここで図1を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。特に、本発明による投光器にとって重要な部分が図示されているが、自動車投光器(ないしヘッドランプ)が、自動車、例えば特に乗用車又はオートバイにおいて有意義な使用を実現する更に多くの別の部分を含むことは明らかである。
【0021】
本発明による図示の投光器(ヘッドランプ)1は、例示的な構成において、ハイビーム分布を形成するために使用することができる。投光器1は、投光器ケーシング2を有し、この投光器ケーシング2の後方領域には、下記において詳細に記述する3つのレーザ光モジュール(以下「光モジュール」とも略称する)3l,3m,3rが配置されている。ケーシング2は、その前面側において、投影光学系4によって閉じられている。この実施例において、光モジュール3l,3m,3rと投影光学系4との間には、動作時に明暗境界を形成するシェード(光遮蔽部材)5が設けられている。更に、ケーシング2の後方領域には、平坦な薄板として形成されたビーム吸収手段6が配置されている。図面において、複数の孔8を備えたフランジ7を見て取ることができ、それらの孔8は、投光器1を車両のボディ部分に固定するために使用される。ここで、本願において図示及び記述する「投光器」とは、複数のモジュールを有する投光器に設けられた投光器モジュール又は照明ユニットとしても使用できることを言及しておく。従って、「投光器」という概念は、この広義の意味で解されるべきである。
【0022】
本発明にとって重要な、投光器1の更なる特徴を考察する前に、先ず図2に基づいて、蛍光体素子を備えたレーザ光源の原理的な構造及びレーザ光源に関連する問題を説明する。
【0023】
ケーシング9からは、電気的な端子10が引き出されており、またケーシング9内には、レーザ光源11が配置されており、このレーザ光源11は、好適にはレーザダイオードとして構成されている。しかしながらこれは、例えば固体レーザのような他の構造様式を排除するものではない。レーザ光源11には、内部フォーカシング光学系12が後置されており、この内部フォーカシング光学系12は、レーザビームを、ケーシングの前端部に配置された蛍光体素子13に収束させる。この蛍光体素子13は、小さいプレートとして形成することができるか、又はピル状であってよく、またレーザ光線の少なくとも一部を、別の波長の光に変換するために、例えば青色又は紫外線のレーザ光を、例えば黄色みのある白色の可視光に変換するために使用される。
【0024】
「青色」レーザが使用される場合、例えば、405nm及び450nmの波長、紫外線領域では例えば365nmから375nmまでの波長の、InGaNをベースとする半導体レーザが対象になる。レーザビームは蛍光体素子13に入射し、蛍光体素子13内又は蛍光体素子13上に含まれる、略して「蛍光体」と称される光変換材料を通過する。蛍光体は、例えば青色光又は紫外線光を「白色」光に変換する。本発明との関係において、「蛍光体」とは極めて一般的に、ある波長の光を別の波長の光又は混合波長の光に、特に「白色」光に変換する物質又は組成物であると解され、この変換を「波長変換」という概念に包括することができる。蛍光(発光)色素が使用され、この場合、出発波長は放射される混合波長よりも一般的に短く、従って放射される混合波長よりも高いエネルギを有する。ここで、所望の白色光の印象は加色混合によって生じる。ここで「白色光」とは、人間に「白色」の色印象を生じさせるスペクトル組成の光と解される。「光」という概念は、勿論、人間の目に見える光線(可視光)に限定されていない。光変換手段に関しては、例えば透明なセラミックスであるオプトセラミックス、例えばYAG:Ce(セリウムがドープされたイットリウム−アルミニウム−ガーネット)が対象になる。代替的に、量子点が埋設されている半導体材料を使用することもできる。
【0025】
蛍光体素子13の後方には、一般的に、大きい立体角にわたり放出された、変換された光と散乱されたレーザ光線とから成る混合光14が存在する。蛍光体素子13に欠損又は欠陥がある場合に、相応に強く集光されているレーザビーム15が生じる状況は重大である。
【0026】
次に図3図4及び図5を参照すると、上記において記述した蛍光体素子13を備えたレーザ光源11と、その手前に設けられており、且つレーザ光源11のケーシング9に固く結合されている前置光学系16とを含む中央のレーザ光モジュール3mをより詳細に拡大したものが見て取れる。この実施例においては、この前置光学系がTIR光学系、従って全反射が行われる光学系であり、例えば非常に透明なプラスチック、ガラス又はシリコーンから成る。そのようなTIR(内面全反射Total Internal Reflection)光学系は公知であり、また多くの場合、高出力LEDの光を収束させるために使用される。前置光学系16は、蛍光体素子に由来する混合光14(図2を参照されたい)を集めて、実質的に平行な光線17として前方に放出する。図1及び図3においては、周縁を成すフランジ18に形成された複数の孔19が見て取れ、それらの孔19は、レーザ光モジュール3mを投光器1に、図示していないボルト又はねじによって固定するために使用される。
【0027】
ここで、投影光学系4は、その投影光学系の焦平面において、レーザ光モジュール3l,3m,3rによって形成された光分布を車道空間に投影するために使用される。
【0028】
蛍光体素子13に欠損又は欠陥がある場合に生じる、図2に示したレーザビーム15について再度言及すると、そのような比較的エネルギの高いレーザビームは生物にとって、特に人間の視力にとって潜在的な危険となる可能性があることは明らかである。何故ならば、そのようなレーザビームは、投影光学系4を通過して投光器1から離れて、被害をもたらす虞があるからである。これを回避するために、この場合、前置光学系16に偏向プリズム20が組み込まれており、この偏向プリズム20は、欠陥又は欠損がある蛍光体素子13を通過するレーザビーム15の領域に位置しており、また障害時に生じるこのレーザ光線を偏向させ、投影光学系4から、従ってその前方に位置する車道空間から隔離する。また、TIR光学系16を、障害時に生じるレーザ光線をコリメートするものとして形成することもでき、その結果、コリメートされた障害ビームは投影光学系4から離れる方向に偏向され、制御できない拡散性のレーザ光線は僅かにしか生じないか、又はほぼ生じない。
【0029】
図示した例(図3図4)においては、偏向プリズム20が、TIR投影光学系の前面における凹部によって形成されている。同様に、偏向プリズムが、前置光学系に成形されていてもよい。全反射を達成するために、TIR前置光学系16の材料から大気への移行部が、ここでは約45°で形成されていることだけが重要である。ここで、偏向プリズム20の光入射面は、レーザビーム15の横断面に適合されており、また偏向プリズム20は、障害時に生じるレーザビーム15に関して、そのレーザビーム15の偏向がビーム横断面の短い方の軸線に対して平行に行われるように配向(整列)されている。これによって偏向プリズムの寸法はより小さくなり、このことは図4及び図5からもはっきりと見て取ることができる。つまり図4においては、障害時に生じるレーザビーム15の楕円形の横断面がはっきりと見て取れる。これに関して、楕円形のビーム横断面は、レーザダイオードでは一般的であることを言及しておく。図中、偏向プリズムによって偏向されたレーザビームには参照番号21を付している。このレーザビーム21を、好適にはビーム吸収手段に偏向させることができ、このビーム吸収手段は、危険なレーザ光線を吸収して消失させる。そのようなビーム吸収手段6は図1に示されており、このビーム吸収手段6については下記において詳細に考察する。ビーム吸収手段の代わりに、又はビーム吸収手段の他に、図面には示していない1つ又は複数のフォトセンサを設けることができる。フォトセンサは、障害時に生じるレーザ光線の少なくとも一部を検出し、また障害時に警告信号を出力する、及び/又はレーザ光源をオフにするように構成されている検出装置と接続されている。
【0030】
再び図1を参照し、また更に図6図7及び図8を参照すると、右側のレーザ光モジュール3rにおいても、左側のレーザ光モジュール3lにおいても、前置光学系16の光軸が、レーザ光源11の光軸に対して、乃至は形成されたレーザビームの方向に関して、約30°の角度でずらされていることが見て取れる。必要とされる固定に関して、複数の孔19を備えたフランジ部分は、2つの外側のレーザ光モジュール、即ち左側のレーザ光モジュール3l及び右側のレーザ光モジュール3rでは、中央のレーザ光モジュール3mとは異なるように形成されているが、それにもかかわらず、レーザ光モジュール3l、3rの前置光学系16を、それらのレーザ光源11と同様に、左側と右側で同一に形成することができ、それによって工作機械に関する(加工)コストが節約される。
【0031】
更に図4及び図5図7及び図8と比較すると、中央のレーザ光モジュール3mのレーザ光源の光軸が、右側のレーザ光モジュール3r乃至は左側のレーザ光モジュール3lに関して90°回転されていることが見て取れる。この場合、中央のレーザ光モジュール3mは、「立った」(楕円形の)ビーム横断面を有しており、これに対して、外側の2つのレーザ光モジュール3l及び3rは、「横たわった」(楕円形の)ビーム横断面を提供する。
【0032】
3つのレーザ光モジュールを使用することによって、ただ1つのレーザ光モジュールと比較して、3倍の光出力が得られると理解することができ、また上記において記述したように軸線を所定の角度、ここでは30°ずらすことによって、並びにビーム横断面を回転させることによって、ここでは90°回転させることによって、実践に適合されたハイビーム分布が生じる。勿論、一方では、本発明による投光器に1つ又は2つ又は3つより多くのレーザ光モジュールを装備させることもでき、或いはずらす角度及び軸線を回転させる角度について別の角度を選択することもできる。
【0033】
図1並びに図6から図8においては、外側のレーザ光モジュール3l、3rの前置光学系がそれぞれ2つの偏向プリズム22及び23を有し、更にそれら2つの偏向プリズム22及び23が互いに異なるように形成されていることが見て取れる。その理由は、ここではレーザ光源の光軸が前置光学系の光軸に対してずらされており、且つ障害時には妨害的なレーザビームを2つの部分ビーム15−1及び15−2に分割させ、それら2つの部分ビーム15−1,15−2が無害にされなければならない、乃至は検出されなければならないという事情にある。
【符号の説明】
【0034】
1 投光器
2 投光器ケーシング
3l 左側のレーザ光モジュール
3m 中央のレーザ光モジュール
3r 右側のレーザ光モジュール
4 投影光学系
5 シェード
6 ビーム吸収手段
7 フランジ
8 孔
9 ケーシング
10 端子
11 レーザ光源
12 フォーカシング光学系
13 蛍光体素子
14 混合光
15 レーザビーム(レーザ光線)
15−1 レーザビーム(レーザ光線)
15−2 レーザビーム(レーザ光線)
16 前置光学系
17 光線
18 フランジ
19 孔
20 偏向プリズム
21 レーザビーム
22 偏向プリズム
23 偏向プリズム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8