特許第6689996号(P6689996)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ・モーター・ヨーロッパの特許一覧

特許6689996蓄電池放電のための制御装置および蓄電池を放電する方法
<>
  • 特許6689996-蓄電池放電のための制御装置および蓄電池を放電する方法 図000006
  • 特許6689996-蓄電池放電のための制御装置および蓄電池を放電する方法 図000007
  • 特許6689996-蓄電池放電のための制御装置および蓄電池を放電する方法 図000008
  • 特許6689996-蓄電池放電のための制御装置および蓄電池を放電する方法 図000009
  • 特許6689996-蓄電池放電のための制御装置および蓄電池を放電する方法 図000010
  • 特許6689996-蓄電池放電のための制御装置および蓄電池を放電する方法 図000011
  • 特許6689996-蓄電池放電のための制御装置および蓄電池を放電する方法 図000012
  • 特許6689996-蓄電池放電のための制御装置および蓄電池を放電する方法 図000013
  • 特許6689996-蓄電池放電のための制御装置および蓄電池を放電する方法 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6689996
(24)【登録日】2020年4月10日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】蓄電池放電のための制御装置および蓄電池を放電する方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20200421BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20200421BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20200421BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20200421BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20200421BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20200421BHJP
【FI】
   H02J7/00 302D
   H02J7/00 P
   H01M10/44 P
   H01M10/48 P
   H01M10/42 P
   H01M10/48 301
   B60L3/00 S
   B60L50/60
【請求項の数】22
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-539410(P2018-539410)
(86)(22)【出願日】2016年1月29日
(65)【公表番号】特表2019-506830(P2019-506830A)
(43)【公表日】2019年3月7日
(86)【国際出願番号】EP2016051950
(87)【国際公開番号】WO2017129259
(87)【国際公開日】20170803
【審査請求日】2018年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】509043571
【氏名又は名称】トヨタ・モーター・ヨーロッパ
【氏名又は名称原語表記】TOYOTA MOTOR EUROPE
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 啓太
(72)【発明者】
【氏名】加藤 祐樹
【審査官】 佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−045182(JP,A)
【文献】 特開2014−003777(JP,A)
【文献】 特開2007−005434(JP,A)
【文献】 特開2004−355953(JP,A)
【文献】 特開平05−236677(JP,A)
【文献】 特開2010−288419(JP,A)
【文献】 特開2013−158142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
B60L 3/00
B60L 50/60
H01M 10/42
H01M 10/44
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池(2)の放電を制御するための制御装置(6)であって、
前記制御装置(6)は、
前記電池(2)の放電中における前記電池(2)の電圧(V)を測定し、
前記測定電圧(V)が第1の所定の下限電圧(Vmin1)より低い場合に放電を停止し、
放電停止後に前記電池(2)の電圧(V)を測定し、
前記第1の所定の下限電圧(Vmin1)と前記測定された放電停止後の前記電池(2)の測定電圧との間の電圧差(ΔV)を求め、
前記求めた電圧差(ΔV)が所定の閾値(ΔV)を超える場合に放電を継続するよう構成される、制御装置(6)。
【請求項2】
前記求めた電圧差が前記所定の閾値を超える場合に、
前記第1の所定の下限電圧(Vmin1)を、前記第1の所定の下限電圧(Vmin1)より低い第2の所定の下限電圧(Vmin2)に置き換えて、前記電池(2)の放電を再開し、
前記電池(2)の放電中における前記電池(2)の電圧(V)を測定し、
前記電圧が前記第2の所定の下限電圧(Vmin2)より低い場合、または前記電池(2)の充電レベル(SOC)の所定の許容範囲の下限に到達した場合に、
前記電池(2)が完全放電状態であると判定して、前記所定の閾値(ΔV)を初期状態にリセットするようさらに構成される、請求項1に記載の制御装置(6)。
【請求項3】
前記求めた電圧差(ΔV)が前記所定の閾値(ΔV)を超えない場合に、
前記電池(2)が完全放電状態であると判定して、前記所定の閾値(ΔV)を前記初期状態にリセットするようさらに構成される、請求項1および2のいずれか1項に記載の制御装置(6)。
【請求項4】
放電開始前の前記電池(2)の充電レベル(SOC)に基づいて前記閾値(ΔV)を決定するようさらに構成される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の制御装置(6)
【請求項5】
前記電池(2)の判定された劣化度(α)に基づいて前記閾値(ΔV)を決定するようさらに構成される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の制御装置(6)。
【請求項6】
前記電池(2)の温度/頻度分布および前記電池(2)の所定の劣化率(β)に基づいて前記電池(2)の劣化度(α)を判定するようさらに構成される、請求項5に記載の制御装置(6)。
【請求項7】
前記電池(2)の劣化度(α)はアレニウスの式に基づいて判定される、請求項5または6に記載の制御装置(6)。
【請求項8】
前記電池(2)の各温度について、寿命終了までの間に前記電池(2)がその温度であった時間の長さを記録したものに基づいて、前記電池(2)の温度/頻度分布を求めるようさらに構成される、請求項6または7に記載の制御装置(6)。
【請求項9】
前記電池(2)の電圧(V)を測定するための電圧センサ(10)を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の制御装置(6)。
【請求項10】
前記電池(2)の温度(T)を測定するための温度センサ(8)を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の制御装置(6)。
【請求項11】
少なくとも1つの電池(2)、特にバイポーラ固体電池と、
請求項1〜10のいずれか1項に記載の制御装置(6)とを含む、組電池(2)。
【請求項12】
少なくとも1つの電池(2)、特にバイポーラ固体電池と、
前記電池(2)のための放電装置(5)と、
請求項1〜10のいずれか1項に記載の制御装置(6)とを含む、電池放電システム。
【請求項13】
電動モータ(4)と、
請求項11に記載の組電池とを含む、車両(1)。
【請求項14】
電動モータ(4)と、
少なくとも1つの電池(2)、特にバイポーラ固体電池と、
請求項1〜10のいずれか1項に記載の制御装置(6)とを含む、車両(1)。
【請求項15】
蓄電池(2)の放電を制御する方法であって、
前記電池の放電中における前記電池の電圧(V)を測定する工程と、
前記測定電圧(V)が第1の所定の下限電圧(Vmax)より低い場合に放電を停止する工程と、
放電停止後に前記電池の電圧(V)を測定する工程と、
前記第1の所定の下限電圧(Vmin1)と前記測定された放電停止後の前記電池(2)の測定電圧との間の電圧差(ΔV)を求める工程と、
前記求めた電圧差(ΔV)が所定の閾値(ΔV)を超える場合に放電を継続する工程とを含む、方法。
【請求項16】
前記求めた電圧差が前記所定の閾値を超える場合に、
前記第1の所定の下限電圧(Vmin1)を、前記第1の所定の下限電圧(Vmin1)より低い第2の所定の下限電圧(Vmin2)に置き換えて、前記電池(2)の放電を再開する工程と、
前記電池(2)の放電中における前記電池(2)の電圧(V)を測定する工程と、
前記電圧が前記第2の所定の下限電圧(Vmin2)より低い場合、または前記電池(2)の充電レベル(SOC)の所定の許容範囲の下限に到達した場合に、
前記電池(2)が完全放電状態であると判定して、前記所定の閾値(ΔV)を初期状態にリセットする工程とをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記求めた電圧差(ΔV)が前記所定の閾値(ΔV)を超えない場合に、
前記電池(2)が完全放電状態であると判定して、前記所定の閾値(ΔV)を前記初期状態にリセットする工程をさらに含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記閾値(ΔV)は放電開始前の前記電池(2)の充電レベル(SOC)に基づいて決定される、請求項15〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記閾値(ΔV)は前記電池(2)の判定された劣化度(α)に基づいて決定される、請求項15〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記電池(2)の劣化度(α)は前記電池(2)の温度/頻度分布および前記電池(2)の所定の劣化率(β)に基づいて判定される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記電池(2)の劣化度(α)はアレニウスの式に基づいて判定される、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記電池(2)の温度/頻度分布は、前記電池(2)の各温度について、寿命終了までの間に前記電池(2)がその温度であった時間の長さを記録したものに基づいて求められる、請求項20または21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の分野
本開示は、蓄電池の放電を制御するための制御装置および蓄電池を放電する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本開示の背景
蓄電池は、二次電池ともよばれ、エネルギー貯蔵手段として、特に車両用のエネルギー貯蔵手段としてますます重要になってきている。このような車両としては、内燃機関と1つ以上の電動モータとを備えるハイブリッド車や、電気のみで駆動される自動車が挙げられる。車両が電力で駆動される際に、電池が放電される。
【0003】
このような車両で使用するのに好適な蓄電池としては、たとえばバイポーラ固体電池や、それ以外の蓄電池として、液体電池、特にラミネート型リチウムイオン電池が挙げられる。上記用途に用いられる蓄電池は、単電池1つからなるものであってもよいし、複数の単電池、好ましくは複数の同一の単電池からなるものであってもよい。後者の蓄電池は組電池ともよばれる。
【0004】
電池または組電池は、充放電を制御するための制御装置をさらに含んでいてもよい。制御装置は、電池が安全作動域を超えて作動することのないよう、電池の充電レベル(SOC)を監視する。こうした電池または組電池は、スマート電池またはスマート組電池ともよばれる。制御装置は車両に装備されていてもよい。
【0005】
充放電制御において重要な態様の1つは、電池の過充電や過放電を確実に回避することである。過充電や過放電は、電池の電圧を監視することによって回避できる。電池の電圧が充電中に上昇し、放電中に低下するからである。放電中に電池の測定電圧が所定の下限電圧より低くなると、電池が完全放電状態であると制御装置が認識して、放電を停止する。
【0006】
電池の寿命の間において、充放電が繰り返されることにより、電池を構成している積層された層が劣化する可能性がある。特に、積層型電極は劣化の影響を受ける可能性がある。劣化により、抵抗が増大して、放電中に計測される電池の電圧計測値が低くなる。
【0007】
そのため、層劣化した電池の放電においては、電圧計測値が所定の下限電圧に達するのが早く、制御装置は、電池が完全放電状態になったと誤認識する。実際には電池が完全放電状態に達していない(SOCの許容範囲の下限に達していない)にもかかわらず、放電が終了することになる。つまり、電池から得られるエネルギーの量が、劣化分散により減少するのである。
【0008】
欧州特許出願公開第1422769号は、単電池電圧計測タブを備えたラミネート型積層型電池を開示する。複数の単電池が積層方向に積層されたものが直列に接続されており、当該複数の単電池の電圧を計測するための共有電圧計測タブ電極が、当該複数の単電池のそれぞれに接して形成されている。
【0009】
ただ、この技術においては、単電池1つに電圧計測タブ電極1つが必要となる。電池が単電池400〜500個からなる場合には、このようにセンサを配置するとコストが非常に多くかかり得るし、場合によってはこのような配置は不可能である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の概要
現状では、信頼性が高く経済的な放電制御機能を有し、かつ種々の電池型の電池に対して好適に使用できる制御装置の提供が望まれている。
【0011】
したがって、本開示の実施形態は、蓄電池の放電を制御するための制御装置を提供する。制御装置は、
電池の放電中における電池の電圧を測定し、
測定電圧が第1の所定の下限電圧より低い場合に放電を停止し、
放電停止後に電池の電圧を測定し、
第1の所定の下限電圧と放電停止後の電池の測定電圧との間の電圧差を求め、
求めた電圧差が所定の閾値を超える場合に放電を継続するよう構成される。
【0012】
このような構成を提供することにより、放電停止時の電池の測定電圧の上昇量に基づいて放電を制御することが可能となる。電池が既に層劣化している場合、電圧上昇量は比較的大きい。というのは、劣化により抵抗が増大していて、放電中の電池の電圧が低いためである。言い換えると、電圧上昇量が所定の閾値より大きい場合には、放電中に電池の電圧が比較的低くてもそれは層劣化によるものであって、電池が実際に放電状態になったためではない、と判定できる。この場合、放電は継続される。
【0013】
第1の所定の下限電圧は、車両により使用される充電レベルの望ましい範囲に基づいて決定されてもよい。第1の所定の下限電圧の設定は、たとえば、第1の所定の下限電圧に到達すると充電レベルが低くなる(たとえばSOC20%になる)ように、または充電レベルが低くなると予期されるようになされてもよい。
【0014】
制御装置および制御装置により実施される上記プロシージャは、あらゆる型のバイポーラ固体電池に適している。また、制御装置は、他の型の電池、たとえばリチウムイオン電池などの液体電池にも適用できる。
【0015】
制御装置は、上記電圧差が所定の閾値を超える場合に、第1の所定の下限電圧を、第1の所定の下限電圧より低い第2の所定の下限電圧に置き換えて、電池の放電を再開するようさらに構成されてもよい。好ましくは、制御装置は、この場合に電池の放電中における電池の電圧を測定し、電圧が第2の所定の下限電圧より低い場合、または電池の充電レベルの所定の許容範囲の下限に到達した場合には、電池が完全放電状態であると判定して、所定の閾値をリセットするようさらに構成されてもよい。
【0016】
このように、所定の下限電圧を下げることによって、放電を適度に継続できる。測定電圧が、所定の下限電圧から下げた後の値を超えたら、放電が停止されてもよい。それよりも前に電池の充電レベル(SOC)の所定の許容範囲の下限に到達した場合(たとえば10%SOCに到達した場合)にも、放電が停止されてよい。したがって、「完全放電状態である」という記載は、電池が物理的に完全に放電された状態(すなわち0%SOC)であることを意味するものではない。電池が物理的に完全に放電された状態は、電池を損なう可能性があるため、回避すべきである。SOCの許容範囲の下限は、電池の危険な放電や危険な低電圧が生じるリスクを冒すことなく電池が最大限に放電され得るように選択されてもよい。
【0017】
したがって、制御装置は好ましくは、電池が低電圧になることが回避されるように第2の所定の下限電圧を設定するよう構成されてもよい。ここで注目すべき点は、第1の所定の下限電圧は通常、真に臨界の下限電圧に設定されるのではなく、未劣化の電池が充電レベルの所定の許容範囲の下限に到達するまで放電され得るように選択されるという点である。ゆえに、真に危険な低電圧を引き起こすことなく、この第1の所定の下限電圧をたとえば10%、15%、20%、または30%下げ得るのである。たとえば、第1の所定の下限電圧は、SOCの最小値が10%よりも依然として高く、または20%よりも依然として高くなると予期されるように下げられてもよい。
【0018】
制御装置は、上記電圧差が所定の閾値を超えない場合に、電池が完全放電状態であると判定して所定の閾値をリセットするようさらに構成されてもよい。
【0019】
言い換えると、制御装置は、電池が完全放電状態であるのかそれとも放電の継続が必要であるのかを、上記電圧差に基づいて認識してもよい。以降の記載においてより詳細に示すように、所定の閾値は、電池が放電される度に決定されてもよい。したがって、所定の閾値は放電完了時にリセットされてもよい。
【0020】
特に、制御装置は、閾値の決定を放電開始前の電池の充電レベルに基づいて実施するよう構成されてもよい。
【0021】
言い換えると、閾値の決定は、放電開始前または放電開始時に実施されてもよい。放電開始前の電池の充電レベルは100%SOCより小さくてもよく、たとえば60%SOCでもよい。閾値を決定する際には、上記放電開始前の充電レベル(SOC)が考慮されてもよい。というのは、このSOCが、上記求めた電圧差に影響を及ぼす可能性があるためである。すなわち、閾値は電池の内部抵抗に依存し、内部抵抗は電池のSOCに依存する。したがって、SOCが大きい場合には閾値を低くするのが好ましい。言い換えると、放電開始前のSOCが大きいほど、電池の内部抵抗が小さくなるため、閾値をさらに低くしてもよい。
【0022】
さらに、または代替的に、閾値の決定は、電池の判定された劣化度に基づいてなされてもよい。
【0023】
電池の劣化度の判定は、電池の温度/頻度分布および電池の所定の劣化率に基づいてなされてもよい。
【0024】
電池の劣化度の判定は、アレニウスの式に基づいてなされてもよい。
電池の温度/頻度分布は、電池の各温度について、寿命終了までの間に電池がその温度であった時間の長さを記録することによって求められてもよい。
【0025】
言い換えると、電池の温度データは、寿命終了までの間、すなわち使用期間中および使用期間と使用期間との間の休止期間中に取得されてもよい。温度/頻度分布は、電池の各温度について、現時点までの間に電池がその温度であった時間の長さを累積することによって確立されてもよい。
【0026】
好ましくは、制御装置は、電池の電圧を測定するための電圧センサを含んでもよい。この電圧センサは、電池の充電レベルを判定するためにも使用されてよい。代替的には、制御装置は、電池の充電レベルを判定するためのさらなる電圧センサを含んでもよい。
【0027】
制御装置は、電池の温度を測定するための温度センサを含んでもよい。
本開示は組電池にも関する。組電池は、少なくとも1つの電池、特にバイポーラ固体電池と、上述の制御装置とを含んでもよい。
【0028】
本開示は、電池放電システムにも関する。電池放電システムは、少なくとも1つの電池、特にバイポーラ固体電池と、電池の放電装置と、上述の制御装置とを含んでもよい。
【0029】
さらなる態様によれば、本開示は、上述したような、電動モータおよび組電池を含む車両に関する。
【0030】
代替的には、車両は、上述したように、電動モータと、少なくとも1つの電池、特にバイポーラ固体電池と、さらに制御装置とを含んでもよい。
【0031】
また本開示は、蓄電池の放電を制御する方法にも関する。この方法は、
電池の放電中における電池の電圧を測定する工程と、
測定電圧が第1の所定の下限電圧より低い場合に放電を停止する工程と、
放電停止後に電池の電圧を測定する工程と、
第1の所定の下限電圧と放電停止後の電池の測定電圧との間の電圧差を求める工程と、
上記電圧差が所定の閾値を超える場合に放電を継続する工程とを含む。
【0032】
好ましくは、上記電圧差が所定の閾値を超える場合に、第1の所定の下限電圧が、第1の所定の下限電圧より低い第2の所定の下限電圧に置き換えられてもよく、そして電池の放電が再開されてもよい。また、電池の放電中における電池の電圧が測定されてもよく、電圧が第2の所定の下限電圧より低い場合には、電池が完全放電状態であると判定されてもよく、そして所定の閾値がリセットされてもよい。
【0033】
第2の下限電圧は、危険である恐れのある電池の低電圧が回避されるように設定されてもよい。
【0034】
上記電圧差が所定の閾値を超えない場合に、好ましくは電池が完全放電状態であると判定されて、所定の閾値がリセットされてもよい。
【0035】
閾値の決定は、放電開始前の電池の充電レベルに基づいてなされてもよい。
閾値の決定は、電池の判定された劣化度に基づいてなされてもよい。
【0036】
電池の劣化度の判定は、電池の温度/頻度分布および電池の所定の劣化率に基づいてなされてもよい。
【0037】
電池の劣化度の判定は、上記求めた電圧差に基づいてなされてもよい。
電池の劣化度の判定は、アレニウスの式に基づいてなされてもよい。
【0038】
電池の温度/頻度分布は、電池の各温度について、寿命終了までの間に電池がその温度であった時間の長さを記録することによって求められてもよい。
【0039】
添付の図面は、本明細書に援用され、本明細書の一部を構成している。本開示の実施形態を例示するものであり、かつ、本明細書の記載とともに本明細書の基本的な思想を説明するものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本開示の一実施形態に係る制御装置を含む車両の概略図である。
図2】本開示の一実施形態に係る一般的な放電制御プロシージャを示すフローチャートである。
図3】本開示の一実施形態に係る閾値決定プロシージャを示すフローチャートである。
図4】本開示の一実施形態に係る電池劣化度判定プロシージャを示すフローチャートである。
図5】電池の温度に対する所定の劣化率を示す例示的な概略図である。
図6】電池について求められた温度/頻度分布を示す例示的な概略図である。
図7】従来の放電制御が適用された場合の電池の電圧とSOCとを表した例示的な概略図である。
図8】本開示の一実施形態に係る放電制御が適用された場合の電池の電圧とSOCとを表した第1の例示的な概略図である。
図9】本開示の一実施形態に係る放電制御が適用された場合の電池の電圧とSOCとを表した第2の例示的な概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
実施形態の説明
以下に、本開示の例示的な実施形態が詳細に参照され、その例が添付の図面中に示される。同一または類似の部品や部分を指すために、全ての図面を通して可能な限り同一の参照番号が用いられる。
【0042】
図1は、本開示の一実施形態に係る制御装置6を含む車両1の概略図である。車両1は、ハイブリッド車または電気自動車(すなわち、電気のみで駆動される自動車)であってもよい。車両1は少なくとも1つの電動モータ4を含み、電動モータ4は、電池または組電池2により、好ましくはインバータ3を介して駆動される。車両がハイブリッド車である場合には、車両は内燃機関をさらに含む。電池2はバイポーラ固体電池であってもよい。電池2は別の型の電池であってもよく、たとえばリチウムイオン電池のような液体型電池であってもよい。
【0043】
電池2は放電装置5に接続され、放電装置5は電池2を放電するよう構成される。放電装置5は電気制御回路、たとえばパワーエレクトロニクス回路を含んでもよい。放電装置5は電動モータ4に、特にインバータ3を介して接続されてもよい。したがって、電池2は、車両1、特に電動モータ4を動作させるために放電されてもよい。電池2は、さらに、電池処理および/または回収プロシージャにおいても放電されてよい。
【0044】
放電装置は、電池を充電するようさらに構成されてもよい。この目的のために、放電装置は、外部電源を用いて外部から充電するためのコネクタを含んでもよい、またはこうしたコネクタに接続されていてもよい。コネクタは、たとえばプラグ式または無線式コネクタシステムであってもよい。車両がハイブリッド車である場合には、放電装置5は、車両の内燃機関の発電機にさらに接続されていてもよい。こうして、内燃機関の作動中にかつ/または車両が外部電源に接続されている間に電池2が充電され得る。
【0045】
車両2は、充放電を制御する目的で、制御装置6およびセンサ7を備える。この目的のために、制御装置6は、センサ7を介して電池2を監視して放電装置5を制御する。制御装置6および/またはセンサ7は、電池2に備わっていてもよい。制御装置は電子制御回路(ECU)であってもよい。制御装置はデータ記憶装置をさらに含んでもよい。車両は、スマート電池とスマート充電装置とを備えたスマート電池充電システムを含むこともできる。言い換えると、電池と車両との両方がそれぞれECUを含み、この2つのECUが一緒に動作し、一緒になって本発明に係る制御装置を形成してもよい。さらに制御装置6は、電池管理システムを含んでもよい、または電池管理システムの一部であってもよい。
【0046】
制御装置6は、特定用途向け集積回路(ASIC)、電子回路、プロセッサ(共有プロセッサ、専用プロセッサ、またはグループプロセッサ)、結合論理回路、1つ以上のソフトウェアプログラムを実行するメモリ、および/または上記以外の好適な部品であって、上述した制御装置6の機能性を与える部品を含んでもよい。
【0047】
センサ7は、電池2の温度を計測するための1つ以上の温度センサ8、電池2の充電レベルを計測するためのSOC(充電レベル)センサ9、および電池の電圧を計測するための電圧センサ10を含んでもよい。SOCセンサ9は電圧センサであってもよく、この電圧センサにより計測された電圧値が電池のSOCを決めるために使用される。この場合、SOCセンサは電圧センサ10と同一のセンサであってもよいし、または追加して使用されるセンサであってもよい。言うまでもなく、SOCセンサ9は、電池のSOCの判定にあたり他の型のセンサをさらに含んでもよく、このことは従来公知である。
【0048】
図2は、本開示の一実施形態に係る一般的な放電制御プロシージャを示すフローチャートである。制御装置6は、この図2のプロシージャを実施するよう構成される。
【0049】
工程S11において、プロシージャが開始される。開始のトリガは、(たとえば電動モータ4を作動させるために)電池の放電が必要になったと制御装置が判定することによってなされてもよい。また、工程S11において閾値ΔVが決定されてもよい。この決定プロシージャは、以下に、特に図3および図4の文脈で詳細に記載される。
【0050】
工程S12において、電池の放電が開始される。
工程S13において、好ましくは放電中に、電池の電圧Vが計測される。好ましくは継続的に、電圧Vが監視される。次いで、電池の電圧計測値Vが第1の所定の下限電圧Vmin1より低いか否かが判定される。低くなければ、放電が継続される。電池の電圧の計測値Vが第1の所定の下限電圧Vmin1より低ければ、上記方法が継続して実行されて工程S14へと進む。その結果、電池の電圧Vは放電中に継続的に下がり、VがVmin1を超えると放電が停止される。
【0051】
第1の所定の下限電圧Vmin1は好ましくは電池の型に依存し、予備実験により決定される。制御装置は、電池からそれぞれの情報を、たとえば電池のVmin1値または電池のIDがあればそのIDを直接、受け取ってもよい。後者について、制御装置は、受け取ったIDを基に、その特定の電池のVmin1値をデータ記憶装置において検索してもよい。同様のことを、以下に工程S17の文脈で説明される第2の所定の下限電圧Vmin2にも適用できる。さらに注目すべきは、Vmin1、min2、およびVが好ましくは絶対値(すなわち正値)であることである。
【0052】
工程S14において、少なくとも限られた時間の間だけ、たとえば最長で0.02秒間、0.05秒間、0.1秒間、または0.2秒間だけ、放電が停止される。好ましくは、この時間の間、充電も停止されてよい。従来の放電制御プロシージャにおいては、電池が実際には完全放電状態に達していなくても、放電が工程S14において最終的に停止される。
【0053】
工程S15において、電池の電圧Vが再度計測されるが、この計測は、S14で放電の中断が開始されたために放電が停止した状態(そして最終的には充電も停止した状態)でなされる。次いで、第1の所定の下限電圧Vmin1と放電停止後に工程S15で計測された電圧Vとの間の電圧差ΔVが求められる。工程S15で計測された電圧Vは第1の所定の下限電圧Vmin1よりも常に高いため、ΔVは電圧増分となる。
【0054】
代替的には、電圧差ΔVは、工程S13において放電の最後に、すなわち放電停止直前に計測された電圧Vと、放電停止後に工程S15で計測された電圧Vとの差であってもよい。
【0055】
このように電圧が上昇する原因の少なくとも一部は、電池の層劣化である。というのは、劣化により抵抗が増大し、その結果、放電中の電池の電圧が低くなるからである。したがって、電圧上昇量が比較的大きければ層劣化が生じており、この層劣化により、工程S13における放電中の電圧の計測値が第1の所定の下限電圧Vmin1より低くなっている、と判定できる。
【0056】
工程S16において、上記電圧差ΔVが所定の閾値ΔVを超えるか否かが判定される。超えない場合には、放電が完了したと判定され、その結果、放電が最終的に工程S19において停止される。ΔVがΔVを超える場合には、プロシージャが継続して実行され工程S17へと進む。注目すべきは、ΔVおよびΔVが好ましくは絶対値(すなわち正値)であるということである。
【0057】
工程S17において、第1の下限電圧Vmin1が、これより低い第2の下限電圧Vmin2に置き換えられる。特に、下限電圧Vmin1が、所定の電圧量だけ、たとえば0.1V、0.2V、0.5V、1V、または2Vだけ低くされてもよく、これにより、第2の所定の下限電圧Vmin2が得られる。次いで、放電が再開される。
【0058】
工程S18において、好ましくは放電中に、電池の電圧Vが計測される(すなわち監視される)。次いで、電池の電圧計測値Vが第2の所定の下限電圧Vmin2より低いか否かが判定される。低くなければ、放電が継続される。電池の電圧計測値Vが第2の所定の下限電圧Vmin2より低ければ、放電が工程S19において最終的に停止される。
【0059】
好ましくは、放電が最終的に工程S19において停止されたときに、第2の所定の下限電圧Vmin2はリセットされて初期値Vmin1となる。
【0060】
図3は、本開示の一実施形態に係る閾値ΔV決定プロシージャを示すフローチャートである。
【0061】
図3のプロシージャは、好ましくは図2のプロシージャとともに開始され、より好ましくは、その工程S21〜工程S24は図2のプロシージャの工程S11において実施される。
【0062】
工程S22において、電池のSOC(充電レベル)データが判定される。上述したように、この目的のためにSOCセンサ9が使用されてもよい。
【0063】
工程S23において、閾値ΔVが、SOCと、現時点で判定された電池の劣化度αとに基づいて決定される。αの判定は、以下に図4の文脈で詳細に記載される。こうして決定された閾値ΔVが、工程S24において、図2の工程S16で使用される閾値として設定される。
【0064】
工程S25において、放電が最終的に停止されたか否かが監視される。この工程は図2中の工程S19に対応する。放電が最終的に停止されている場合には、工程S26において閾値ΔVがリセットされる。このようにして、(図2のプロシージャの実行に対応する)各放電プロシージャの始めに一旦閾値ΔVが設定され、そして、次の放電プロシージャの開始時には、その時点での電池の劣化度αとその時点でのSOCとを考慮する目的で、当該次の放電プロシージャで使用する閾値ΔVが新たに決定される。
【0065】
図4は、本開示の一実施形態に係る電池劣化度α判定プロシージャを示すフローチャートである。このプロシージャは、好ましくは図3の工程S23においてまたはこの工程の前に実施され、その結果、現時点での値に更新された劣化度αに常に基づいて閾値ΔVが決定される。このような状況において、さらに注目すべきは、判定された劣化度αが表すのは電池の実際の劣化度の概算であるという点である。
【0066】
工程S32において、電池の温度データが得られる。この目的のために温度センサ8が使用されてもよい。ここで得られたデータは、現時点での電池の温度だけでなく、図4のプロシージャが最後に実施されてからの、特に温度頻度分布Tが最後に更新されてからの(工程S33を参照)、温度履歴データも含んでいてよい。
【0067】
工程S33において、温度頻度分布Tが確立される、または、温度頻度分布Tが既にある場合にはこれが更新される。工程S32において収集された温度データはこの目的のために累積されたものであり、各計測温度における累積時間がその逆関数として、すなわち頻度として表される。温度頻度分布Tは、以下に図6の文脈でより詳細に記載される。
【0068】
工程S34において、温度頻度分布Tと、上記特定の電池型についての所定の劣化率βとに基づいて、電池の劣化度αが判定される。この判定について、すなわちこの計算については、以下に図5および図6を参照して記載される。
【0069】
基本的に、劣化度αの計算はアレニウスの式に基づいてなされ、このことは従来公知である。劣化度αは以下のように計算される。
【0070】
【数1】
【0071】
式中、
t=時間
c=ln(A)
b=−(E/R)
T=温度
したがって、現時点での劣化度αは累積値、すなわち現時点での劣化度計算値および現時点より以前に計算された劣化度計算値の総計であり、たとえば以下のとおりである。
αx1=α+α+α
式中、
【0072】
【数2】
【0073】
温度Tの値および時間tの値は、図6中に示される温度頻度分布Tから得られる。それら以外のパラメータであるcおよびbは、劣化率βの決定に関する文脈においてあらかじめ決定される。
【0074】
劣化率βは下記の等式に基づいて計算される。
【0075】
【数3】
【0076】
式中、
k=所定の反応速度定数(または速度定数)
A=定数
=活性化エネルギー
R=気体定数
T=温度
パラメータk、A、Ea、およびRは、使用された電池の電池型に特定して行なった予備実験から既知であるか、または一般に公知のパラメータである。
k⇒βである場合、以下のとおりである。
【0077】
【数4】
【0078】
劣化度αの計算に用いるパラメータbおよびcは、下記のように決定できる。
b=−(E/R)
c=ln(A)
得られた劣化率βの図を図5に示す。劣化率βは所定の値であり、また、使用された電池の電池型に特定のものである。劣化率βは好ましくは予備実験において決定され、(スマート電池の場合には)電池について、かつ/または制御装置について既知のものである。
【0079】
閾値ΔVは、好ましくはルックアップマップ中の判定された劣化度αに対し、たとえば、下記の通りマッピングされる。
【0080】
αx1⇒ΔVT1
αx2⇒ΔVT2
αx3⇒ΔVT3
このΔVとαxとの関係は好ましくは予備実験において決定され、使用された電池の電池型に特定のものである。ルックアップマップは、制御装置の、または(スマート電池の場合には)電池のデータ記憶装置に記憶されていてもよい。
【0081】
好ましくは、ΔVを決定する際に、電池について判定されたSOCも考慮される。制御装置は、αxのルックアップマップ中にあるもののようなSOCとΔVとの関連についての情報も保持していてよい。たとえば、このルックアップマップ中において、SOC値の列がさらに追加されてもよい。
【0082】
図5は、電池の温度に対する所定の劣化率を示す例示的な概略図である。図から分かるように、この図から、パラメータbおよびcの値を直接得ることができる。bが一次関数の傾きであり、cが(縦長の)一次関数とY軸との交点である。
【0083】
図6は、電池について求められた温度/頻度分布を示す例示的な概略図である。図中、X軸は電池の温度Tを表し、Y軸は頻度、すなわち時間の逆関数を表す。図は、電池の寿命全体にわたっての、すなわち電池が使用された全期間および使用期間と使用期間との間の休止期間にかけての累積温度データを含む。図の確立にあたり、すなわち図中の曲線の確立にあたり、寿命終了までの間における電池の各温度について、たとえば−40℃〜+60℃の範囲で(量子化)段階的に1℃間隔で、電池がその温度であった時間の長さが測定される。そして、累積時間はその逆関数、すなわち頻度で表される。
【0084】
図7は、従来の放電制御が適用された場合の電池の電圧とSOCとを表した例示的な概略図である。図から分かるように、電池の電圧Vが放電中に下がる、すなわち電池のSOCの減少に伴って下がる。
【0085】
したがって、連続する直線は劣化していない電池、たとえば新しい電池を表す。SOCがSOCの許容範囲の下限、たとえば10%SOCに到達すると、この電池の電圧の計測値Vは放電中に第1の下限電圧Vmin1に到達する。影響として、放電が完了したという正しい判定がなされ、放電が停止される。したがって、第1の下限電圧Vmin1は、従来使用される下限電圧を表す。
【0086】
破線は、層劣化した電池、たとえば使用された電池を表す。この電池では、層劣化により抵抗が大きくなっているため、放電中における電圧計測値Vの減少がより急激である。したがって、SOCが約35%である時に既に、電圧Vが(従来の)第1の下限電圧Vmin1に到達している。影響として、放電が完了したという、すなわちSOCの許容範囲内において電池が完全に放電されたという誤った判定がなされ、放電が停止される。この誤判定は、図8および図9の文脈で記載される発明によって回避できる。
【0087】
図8は、本開示の一実施形態に係る放電制御が適用された場合の電池の電圧とSOCとを表した第1の例示的な概略図である。図8図7と同様のものを例示している。すなわち、劣化していない(新しい)電池と層劣化した(使用された)電池とを例示している。2本の曲線はともに、最初の第1の下限電圧Vmin1に到達するまで減少している。破線は、層劣化した電池を表しており、SOCが約35%である時に第1の下限電圧Vmin1に到達している。
【0088】
ここで、図2の工程S16の文脈で上述したように、放電が完全に停止する前に、電圧差ΔVが所定の閾値ΔVを超えるか否かが判定される。ΔVがΔVを超えると判定され層劣化があると認識された場合には、第1の下限電圧Vmin1が低くされて、(第1の下限電圧Vmin1より低い)第2の下限電圧Vmin2とされ、放電が継続される。こうして低くされた第2の下限電圧Vmin2よりも電池の電圧Vが低くなるまで、放電が継続され得る。図8の例において、ほぼ17%SOCに到達するまで、電池はこのようにして放電され得る。したがって、劣化によるエネルギー損失が、従来の放電と比較して、(SOCの許容範囲の下限が10%SOCであると想定した場合に)ほぼ25%SOCからほぼ7%SOCに低減され得る。言うまでもなく、低くされた後の第2の下限電圧Vmin2も、真に危険な低電圧を回避するのに十分に高い値とされる。
【0089】
図9は、本開示の一実施形態に係る放電制御が適用された場合の電池の電圧とSOCとを表した第2の例示的な概略図である。図9は、劣化していない(新しい)電池と層劣化した(使用された)電池とを例示している。2本の曲線はともに、最初の第1の下限電圧Vmin1に到達するまで減少している。破線は、層劣化した電池を表しており、SOCが約28%である時に第1の下限電圧Vmin1に到達している。
【0090】
ここで、図2の工程S16の文脈で上述したように、放電が完全に停止する前に、電圧差ΔVが所定の閾値ΔVを超えるか否かが判定される。ΔVがΔVを超えると判定され層劣化があると認識された場合には、第1の下限電圧Vmin1が低くされて、(第1の下限電圧Vmin1より低い)第2の下限電圧Vmin2とされ、放電が継続される。こうして低くされた第2の下限電圧Vmin2よりも電池の電圧Vが低くなるまで、放電が継続され得る。図9の例においては、電池がまず、SOCの許容範囲の下限(この例ではほぼ10%SOC)に到達している。したがって、この例においては、電池のSOCの許容範囲の下限に到達したために放電が最終的に停止されている。そのため、劣化によるエネルギー損失はない。
【0091】
請求項を含む本開示全体にわたって、「含む」という用語は、特記しない限り、「少なくとも1つ含む」と同義であるとして理解される。また、本記載中に示される範囲(請求項を含む)はいずれも、特記しない限り、当該範囲の両端の値を含むものとして理解される。記載された要素についての特定の値は、当業者に公知である許容製造公差または工業界における許容公差の範囲内であるものとして理解され、また、「実質的に」および/または「ほぼ」および/または「一般的に」という用語が使用されている箇所では、これらの用語の意味が上記の許容公差の範囲内にあるものとして理解される。
【0092】
国内、または国際、またはそれら以外の標準化団体が定める標準が参照されている箇所では(たとえばISOなど)、本明細書の優先日の時点で当該国内または国際標準化団体により定義された標準が参照されることが意図される。優先日以降に当該標準に加えられた実質的な変更によって、本開示および/または請求項の範囲および/または定義が変更されるものではない。
【0093】
本明細書中の開示は特定の実施形態を参照して記載されたものであるが、これらの実施形態は本開示の思想および用途についての例示を示すのみであることが理解される。
【0094】
本明細書および実施例は具体例として提示されるのみであり、本開示の真の範囲は以下の請求項により示される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9