(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
プライマリプーリ及びセカンダリプーリと、上記両プーリに架け渡されたベルトと、上記両プーリの少なくとも一方のプーリの可動シーブを軸方向に移動して変速比を調整する機械式プーリ移動機構と、を備えた無段変速機において、
前記機械式プーリ移動機構は、
互いのカム面を摺接させて前記可動シーブと同軸上に直列に配置された第1,第2のカム部材を有し、前記第1のカム部材は前記可動シーブと直結され、前記第2のカム部材の前記第1のカム部材に対する相対回転位相を変更されると全長が変更されて前記可動シーブを軸方向に移動するトルクカム機構と、
前記第2のカム部材の前記相対回転位相を変更又は一定とするアクチュエータと、
サンギヤ,キャリア,リングギヤの3つの回転要素を有し、これらの何れか1つの回転要素が前記第1のカム部材に動力伝達機構を介して連結され、残りのうちの何れか1つの回転要素が前記第2のカム部材に連結され、残りの回転要素が前記アクチュエータに連結された、第1遊星歯車機構と、を備え、
前記動力伝達機構は、前記アクチュエータにより前記第1,第2のカム部材の相対回転位相を一定とする変速比固定時に、前記第1,第2のカム部材が同方向に等速回転するように速度伝達比が設定され、
前記動力伝達機構は、前記第1遊星歯車機構と同軸上に直列に配置され、サンギヤ,キャリア,リングギヤの3つの回転要素を有する第2遊星歯車機構を有し、前記第1遊星歯車機構と前記第2遊星歯車機構との互いに対応する回転要素同士が一体に回転する一体回転要素となっており、
前記第2遊星歯車機構のサンギヤ,キャリア,リングギヤは、前記第1遊星歯車機構のサンギヤ,キャリア,リングギヤとそれぞれ等しい歯数に設定され、
前記一体回転要素の回転速度と前記第1のカム部材の回転速度との比として規定される前記動力伝達機構の前記速度伝達比が、前記一体回転要素の回転速度と前記第2のカム部材の回転速度との比と等しい値に設定されている
ことを特徴とする、無段変速機。
プライマリプーリ及びセカンダリプーリと、上記両プーリに架け渡されたベルトと、上記両プーリの少なくとも一方のプーリの可動シーブを軸方向に移動して変速比を調整する機械式プーリ移動機構と、を備えた無段変速機において、
前記機械式プーリ移動機構は、
互いのカム面を摺接させて前記可動シーブと同軸上に直列に配置された第1,第2のカム部材を有し、前記第1のカム部材は前記可動シーブと直結され、前記第2のカム部材の前記第1のカム部材に対する相対回転位相を変更されると全長が変更されて前記可動シーブを軸方向に移動するトルクカム機構と、
前記第2のカム部材の前記相対回転位相を変更又は一定とするアクチュエータと、
サンギヤ,キャリア,リングギヤの3つの回転要素を有し、これらの何れか1つの回転要素が前記第1のカム部材に動力伝達機構を介して連結され、残りのうちの何れか1つの回転要素が前記第2のカム部材に連結され、残りの回転要素が前記アクチュエータに連結された、第1遊星歯車機構と、を備え、
前記動力伝達機構は、前記アクチュエータにより前記第1,第2のカム部材の相対回転位相を一定とする変速比固定時に、前記第1,第2のカム部材が同方向に等速回転するように速度伝達比が設定され、
前記動力伝達機構は、前記第1遊星歯車機構と同軸上に直列に配置され、サンギヤ,キャリア,リングギヤの3つの回転要素を有する第2遊星歯車機構を有し、前記第1遊星歯車機構と前記第2遊星歯車機構との互いに対応する回転要素同士が一体に回転する一体回転要素となっており、
前記第2遊星歯車機構のサンギヤ,キャリア,リングギヤは、前記第1遊星歯車機構のサンギヤ,キャリア,リングギヤとそれぞれ異なる歯数に設定され、
前記一体回転要素の回転速度と前記第1のカム部材の回転速度との比として規定される前記動力伝達機構の前記速度伝達比が、前記一体回転要素の回転速度と前記第2のカム部材の回転速度との比と異なる値に設定されている
ことを特徴とする、無段変速機。
プライマリプーリ及びセカンダリプーリと、上記両プーリに架け渡されたベルトと、上記両プーリの少なくとも一方のプーリの可動シーブを軸方向に移動して変速比を調整する機械式プーリ移動機構と、を備えた無段変速機において、
前記機械式プーリ移動機構は、
互いのカム面を摺接させて前記可動シーブと同軸上に直列に配置された第1,第2のカム部材を有し、前記第1のカム部材は前記可動シーブと直結され、前記第2のカム部材の前記第1のカム部材に対する相対回転位相を変更されると全長が変更されて前記可動シーブを軸方向に移動するトルクカム機構と、
前記第2のカム部材の前記相対回転位相を変更又は一定とするアクチュエータと、
サンギヤ,キャリア,リングギヤの3つの回転要素を有し、これらの何れか1つの回転要素が前記第1のカム部材に動力伝達機構を介して連結され、残りのうちの何れか1つの回転要素が前記第2のカム部材に連結され、残りの回転要素が前記アクチュエータに連結された、第1遊星歯車機構と、を備え、
前記動力伝達機構は、前記アクチュエータにより前記第1,第2のカム部材の相対回転位相を一定とする変速比固定時に、前記第1,第2のカム部材が同方向に等速回転するように速度伝達比が設定され、
前記動力伝達機構は、前記第1遊星歯車機構と同軸上に直列に配置され、サンギヤ,キャリア,リングギヤの3つの回転要素を有する第2遊星歯車機構を有し、前記第1遊星歯車機構と前記第2遊星歯車機構との互いに対応する回転要素同士が一体に回転する一体回転要素となっており、
前記第1遊星歯車機構において、前記サンギヤが前記第2のカム部材に結合され、前記リングギヤが前記アクチュエータに連結され、前記キャリアが前記動力伝達機構に駆動連結され、
前記動力伝達機構は、前記可動シーブの回転軸線と平行に設置されたカウンタ軸と、カウンタ軸に結合された第1カウンタギヤ及び第2カウンタギヤと、前記第1のカム部材に結合され前記第1カウンタギヤと噛合する第1外歯ギヤと、前記キャリアに結合され前記第2カウンタギヤと噛合する第2外歯ギヤと、からなる平行ギヤ機構により構成されている
ことを特徴とする、無段変速機。
プライマリプーリ及びセカンダリプーリと、上記両プーリに架け渡されたベルトと、上記両プーリの少なくとも一方のプーリの可動シーブを軸方向に移動して変速比を調整する機械式プーリ移動機構と、を備えた無段変速機において、
前記機械式プーリ移動機構は、
互いのカム面を摺接させて前記可動シーブと同軸上に直列に配置された第1,第2のカム部材を有し、前記第1のカム部材は前記可動シーブと直結され、前記第2のカム部材の前記第1のカム部材に対する相対回転位相を変更されると全長が変更されて前記可動シーブを軸方向に移動するトルクカム機構と、
前記第2のカム部材の前記相対回転位相を変更又は一定とするアクチュエータと、
サンギヤ,キャリア,リングギヤの3つの回転要素を有し、これらの何れか1つの回転要素が前記第1のカム部材に動力伝達機構を介して連結され、残りのうちの何れか1つの回転要素が前記第2のカム部材に連結され、残りの回転要素が前記アクチュエータに連結された、第1遊星歯車機構と、を備え、
前記動力伝達機構は、前記アクチュエータにより前記第1,第2のカム部材の相対回転位相を一定とする変速比固定時に、前記第1,第2のカム部材が同方向に等速回転するように速度伝達比が設定され、
前記動力伝達機構は、前記第1遊星歯車機構と同軸上に直列に配置され、サンギヤ,キャリア,リングギヤの3つの回転要素を有する第2遊星歯車機構を有し、前記第1遊星歯車機構と前記第2遊星歯車機構との互いに対応する回転要素同士が一体に回転する一体回転要素となっており、
前記第1遊星歯車機構は、前記可動シーブの回転軸線と平行な回転軸線上に配置され、
前記第1遊星歯車機構において、前記サンギヤが前記アクチュエータに連結され、前記リングギヤが前記第2のカム部材に連結され、前記キャリアが前記動力伝達機構に駆動連結され、
前記動力伝達機構は、前記第1のカム部材に結合される外歯ギヤと、前記キャリアに結合され前記外歯ギヤと噛合するカウンタギヤと、からなる平行ギヤ機構により構成されている
ことを特徴とする、無段変速機。
プライマリプーリ及びセカンダリプーリと、上記両プーリに架け渡されたベルトと、上記両プーリの少なくとも一方のプーリの可動シーブを軸方向に移動して変速比を調整する機械式プーリ移動機構と、を備えた無段変速機において、
前記機械式プーリ移動機構は、
互いのカム面を摺接させて前記可動シーブと同軸上に直列に配置された第1,第2のカム部材を有し、前記第1のカム部材は前記可動シーブと直結され、前記第2のカム部材の前記第1のカム部材に対する相対回転位相を変更されると全長が変更されて前記可動シーブを軸方向に移動するトルクカム機構と、
前記第2のカム部材の前記相対回転位相を変更又は一定とするアクチュエータと、
サンギヤ,キャリア,リングギヤの3つの回転要素を有し、これらの何れか1つの回転要素が前記第1のカム部材に動力伝達機構を介して連結され、残りのうちの何れか1つの回転要素が前記第2のカム部材に連結され、残りの回転要素が前記アクチュエータに連結された、第1遊星歯車機構と、を備え、
前記動力伝達機構は、前記アクチュエータにより前記第1,第2のカム部材の相対回転位相を一定とする変速比固定時に、前記第1,第2のカム部材が同方向に等速回転するように速度伝達比が設定され、
前記動力伝達機構は、前記第1遊星歯車機構と同軸上に直列に配置され、サンギヤ,キャリア,リングギヤの3つの回転要素を有する第2遊星歯車機構を有し、前記第1遊星歯車機構と前記第2遊星歯車機構との互いに対応する回転要素同士が一体に回転する一体回転要素となっており、
前記第1遊星歯車機構は、前記可動シーブの回転軸線と平行な回転軸線上に配置され、
前記第1遊星歯車機構において、前記サンギヤが前記アクチュエータに連結され、前記リングギヤが前記第2のカム部材に連結され、前記キャリアが前記動力伝達機構に駆動連結され、
前記動力伝達機構は、前記第1遊星歯車機構と同軸上に直列に配置され、サンギヤ,キャリア,リングギヤの3つの回転要素を有する第2遊星歯車機構と、前記第2遊星歯車機構のリングギヤの外周に一体に設けられた第1外歯ギヤと、前記第1のカム部材に結合され前記第1外歯ギヤと噛合する外歯ギヤと、から構成されている
ことを特徴とする、無段変速機。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。以下の実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができるとともに、必要に応じて取捨選択することや適宜組み合わせることが可能である。
【0019】
〔各実施形態に係る無段変速機〕
図1は各実施形態に係る無段変速機を模式的に示す構成図である。
図1に示すように、車両を走行させるための内燃機関,電動モータ等からなる駆動源2には、遊星歯車機構等で構成された前後進切換機構4を介して、無段変速機5のプライマリプーリ6の固定シーブ8に結合された回転軸10が連結されている。この回転軸10には、固定シーブ8のシーブ面に対向してプーリのV字状溝を形成するシーブ面を有する可動シーブ12が、軸方向に摺動可能且つ相対回転不能に配設されている。
【0020】
また、無段変速機5のセカンダリプーリ14の固定シーブ16に結合された駆動軸18には、差動機構等を介して図示しない駆動輪が連結され、また、駆動軸18には固定シーブ16のシーブ面に対向してプーリのV字状溝を形成するシーブ面を有する可動シーブ20が、軸方向に摺動可能且つ相対回転不能に配設されている。
【0021】
さらに、セカンダリプーリ14の両シーブ16,20間にはV字状溝を狭める方向に付勢力を付加するスプリング22とカム機構24が介装されている。
また、両プーリ6,14間には、ベルト26が巻き掛けられている。
さらに、スプリング22及びカム機構24はセカンダリプーリ14の推力を調整してベルト26の挟圧力を調整する推力調整機構として機能する。
【0022】
なお、
図1には、プライマリプーリ6,セカンダリプーリ14及びベルト26について、変速比がロー側の状態とハイ側の状態とを示している。プライマリプーリ6,セカンダリプーリ14の各外側の半部にロー側の状態を示し、各内側の半部にハイ側の状態を示している。ベルト26については、ロー側の状態を実線で示し、ハイ側の状態を破線で示している。但し、破線で示したハイ状態は、プーリとベルトの半径方向の位置関係を示すのみであり、実際のベルト位置がプーリの内側半部に現れることはない。
【0023】
プライマリプーリ6の可動シーブ12の背面(シーブ面と反対側の面)13側には、可動シーブ12を軸方向に移動して変速比を調整する機械式プーリ移動機構30が配設されている。
図1では機械式プーリ移動機構30を極めて簡略化して記載しているが、この機械式プーリ移動機構30は、トルクカム機構40と、第1遊星歯車機構50と、動力伝達機構(例えば、第2遊星歯車機構やその他の歯車機構)60と、アクチュエータとしての電動モータ70とを備えている。
【0024】
〔各実施形態に係る機械式プーリ移動機構〕
図2に示すように、トルクカム機構40は、可動シーブ12と直結(相対回転不能及び軸方向相対動不能に固定的に連結)されて可動シーブ12と一体に回転する第1カム(第1のカム部材)42と、第1カム42に形成された第1カム面42aに対向する第2カム面44aが一端(図中左方)に形成され、他端(図中右方)がスラスト軸受46を介して回転軸10に軸方向位置を規制された第2カム(第2のカム部材)44とを備えている。
【0025】
第1カム42及び第2カム44は、回転軸10の外周側に回転軸10の軸心と同軸(同一軸心)に配置されている。なお、回転軸10は、軸受32,34を介して図示しない変速機ケーシングに回転自在に支持されている。可動シーブ12と一体に回転する第1カム42は、回転軸10に対して可動シーブ12と同様の構成(ボール又はローラ等を介在させたスプライン機構)で相対回転不能、軸方向移動可能に支持されている。第2カム44は回転軸10に対して図示しない軸受等を介して相対回転可能に支持され、且つ軸方向には回転軸10に対して一定の位置を保持し移動しないように軸方向移動不能になっている。
【0026】
このように、第1カム42を可動シーブ12に直結(固定的に連結)し、第2カム44を回転軸10に対して軸方向移動不能に支持することにより、両カム42,44の相対回転位相の変位で可動シーブ12を軸方向に移動する(変速比を変更する)ことが可能となる。
【0027】
第1カム面42a及び第2カム面44aは、円筒状の各カム42,44の互いに対向する端面に形成されており、互いに摺接するように配設される。これらのカム面42a,44aの形状は、回転軸10の軸線SCに対して傾斜した螺旋状斜面に形成されている。各実施形態では、この斜面(即ち、第1及び第2カム面42a,44a)は、車両の前進走行時におけるプライマリプーリ6の回転方向に沿って可動シーブ12の背面13に近づくように傾斜している。
【0028】
第2カム44と第1カム42との相対回転位相が変更されるとトルクカム機構40の全長が変更される。第2カム44は軸方向には移動しないので、第1カム42が可動シーブ12と共に軸方向に移動する。したがって、第2カム44を第1カム42に対して相対回転させて相対回転位相を変更すると、可動シーブ12が軸方向に移動して、無段変速機5の変速比が調整される。
【0029】
なお、第1カム42と動力伝達機構60との間には、両者の軸方向に沿う相対移動を許容し且つ相対回転不能(回転動力を伝達可能)とするためのスライド許容機構(ボール又はローラ等を介在させたスプライン機構等)80が介装されている。このスライド許容機構80は、遊星歯車機構50や動力伝達機構60等の各ギヤがヘリカルギヤで構成されている場合、各歯車間の軸方向相対移動が不能となるので、このスライド許容機構80は、動力伝達機構60と第1カム42との間の相対移動を許容するために必要となる。しかし、遊星歯車機構50,動力伝達機構60の何れか一方又は両方を平歯車で構成すれば、平歯車間での相対移動が可能となるので、スライド許容機構80を省略することも可能である。
【0030】
第1遊星歯車機構50は、第2カム44の外周に配置され、サンギヤS
1,キャリアC
1,リングギヤR
1の3つの回転要素のうちの何れか1つの回転要素(第1回転要素)が動力伝達機構(例えば遊星歯車機構その他の歯車機構)60を介して第1カム42に連結され、残りのうちの何れか1つの回転要素(第2回転要素)が第2カム44に連結され、残りの回転要素(第3回転要素)がアクチュエータとしての電動モータ70に連結されている。
【0031】
なお、以下の第1〜第4,第8,第9実施形態では、動力伝達機構として第2遊星歯車機構60を例示するが、動力伝達機構は、遊星歯車機構に限るものではなく、例えば第5〜第7実施形態に例示するように、平行ギヤ機構等を利用してもよい。また、アクチュエータとしては電動モータが好適であるが、アクチュエータとして必要な制御性を確保できるものであれば電動モータに限るものではない。
【0032】
第1遊星歯車機構50は、3つの回転要素(サンギヤS
1,キャリアC
1,リングギヤR
1)の何れか1つの回転要素の回転を拘束すれば、残る2つの回転要素のうち、一方の回転要素が反力要素となり、他方の回転要素は、その歯数比に応じた変速比(=出力回転速度/入力回転速度、速比とも言う)で回転することになる。この場合の回転の拘束とは、回転速度を所定速度(一定速度、回転停止も含む)にすることである。また、回転の拘束は、電動モータ70によって行う。つまり、第3回転要素の回転をモータ70によって制御し拘束することにより、第1回転要素と第2回転要素とがその歯数比に応じた変速比で回転する。
【0033】
第1遊星歯車機構50の第1回転要素は、動力伝達機構60を介して第1カム42に連結されているので、第1カム42の回転速度(N
カム1)は、第1遊星歯車機構50の第1回転要素の回転速度(N
1)に対して、動力伝達機構60の速度伝達比(N
カム1/N
1)に応じた回転速度で回転する。この動力伝達機構60は、アクチュエータ70による第3回転要素の所定の回転拘束時、即ち、第3回転要素を所定速度(一定速度)で回転或いは停止させているときに、第1カム42と第2カム44とが等速回転するように速度伝達比が設定されている。
なお、入力要素の回転速度Nin、歯数Zin、出力要素の回転速度Nout、歯数Zoutとすると、速度伝達比は、次式に示すように、ギヤ比(変速比)の逆数で定義される。
速度伝達比=Nout/Nin =Zin/Zout =1/ギヤ比(変速比)
【0034】
アクチュエータ70による第3回転要素の回転拘束状態を変更すると、即ち、第3回転要素の回転速度を変更する(第3回転要素が停止状態であれば回転させる、あるいは第3回転要素が所定回転速度の場合には、この所定回転速度から変更する)と、第1カム42は可動プーリ12にと直結していることから回転速度は変化しないため、第1カム42と第2カム44との間に差回転が生じ、第2カム44が第1カム42に対して相対回転して第1カム42と第2カム44との相対回転位相が変更される。これにより、可動シーブ12が軸方向に移動して、無段変速機5の変速比が調整される。
【0035】
以下、第1〜第4,第8,第9実施形態により、機械式プーリ移動機構30の第1遊星歯車機構50及び動力伝達機構としての第2遊星歯車機構60の具体的な構成を説明する。
なお、第1〜第4,第8,第9実施形態では、第1遊星歯車機構50A〜50D,50H,50Iについて、サンギヤをS
1で、キャリアをC
1で、プラネタリギヤをP
1で、リングギヤをR
1でそれぞれ示し、第2遊星歯車機構60A〜60D,60H,60Iについて、サンギヤをS
2で、キャリアをC
2で、プラネタリギヤをP
2で、リングギヤをR
2でそれぞれ示すが、これらの各回転要素は、各実施形態の間で必ずしも同一規格のものである必要はなく、各実施形態の構成において要求される規格(例えば、ギヤの歯数や歯幅)のものとする。
また、各実施形態の構成を示す図(
図3,6,8,10,12,14,16,18)においては、第2遊星歯車機構60と第1カム42との連結部分に介装されるスライド許容機構80を省略している(図示していない)。
【0036】
〔第1実施形態〕
図3に示すように、第1実施形態に係る機械式プーリ移動機構30Aでは、第1遊星歯車機構50Aについては、キャリアC
1が、上記第1回転要素に相当し、動力伝達機構である第2遊星歯車機構60Aを介して第1カム42に連結されている。サンギヤS
1が、上記第2回転要素に相当し、第2カム44に連結されている。リングギヤR
1が、上記第3回転要素に相当し、アクチュエータである電動モータ70は、リングギヤR1の外周に形成された外歯ギヤ71a及び電動モータ70の回転軸に固定されたギヤ71bが噛み合ってなるギヤ機構71を介して第1遊星歯車機構50Aと連結されている。
【0037】
第2遊星歯車機構60Aについては、キャリアC
2が第1遊星歯車機構50AのキャリアC
1に直結され、サンギヤS
2が第1カム42に連結され、リングギヤR
2が図示しない変速機ケーシングに固定されている。したがって、第1遊星歯車機構50AのキャリアC
1と第2遊星歯車機構60AのキャリアC
2とが、互いに一体に回転する一体回転要素となっている。
【0038】
また、本実施形態では、第1遊星歯車機構50A及び第2遊星歯車機構60Aの各サンギヤS
1,S
2、各プラネタリギヤP
1,P
2、各リングギヤR
1,R
2が、互いに同歯数に設定されている。したがって、サンギヤの歯数Zsとリングギヤの歯数Zrとの歯数比α(=Zs/Zr)については、第1遊星歯車機構50Aの歯数比α
1と第2遊星歯車機構60Aの歯数比α
2とが同一になっている(α
1=α
2)。
【0039】
動力伝達機構である第2遊星歯車機構60Aによる速度伝達比は、一体回転要素であるキャリアC
2の回転速度N
C2と第1カム42の回転速度(即ち、サンギヤS
2の回転速度)との比N
S2として規定される。第2遊星歯車機構60AはリングギヤR
1が固定状態なので、その共線図(速度線図)は
図4に実線Lで示すようになる。
なお、
図4及び後述する他の実施形態に係る
図5,
図7,
図9,
図11,
図13,
図15,
図17,
図19では、縦軸を回転速度とし、図中、回転速度ゼロに対して上方向を正回転、回転速度ゼロに対して下方向を負方向と定義する。
【0040】
ここで、上記速度伝達比は、第2カム44と一体回転するサンギヤS
2の回転速度N
S2と、一体回転要素である第2遊星歯車機構60AのキャリアC
2の回転速度N
C2との比N
S2/N
C2として規定される。この比N
S2/N
C2は(1+α
2)/α
2と等しくなる。
【0041】
電動モータ70の回転速度をゼロに維持して第1遊星歯車機構50AのリングギヤR
1を固定状態にすれば、第1遊星歯車機構50AのサンギヤS
1は、第1カム42と一体回転する第2遊星歯車機構60AのサンギヤS
2と等速で回転する。このときの第1遊星歯車機構50Aの共線図は第2遊星歯車機構60Aと同様に
図4に実線Lで示すようになり、第1遊星歯車機構50AのサンギヤS
1は第2遊星歯車機構60AのサンギヤS
2と等速回転する。
【0042】
したがって、このときには、サンギヤS
1が連結された第2カム44は、サンギヤS
2が連結された第1カム42と相対回転しないで、一定の回転位相を保持する。つまり、トルクカム機構40の全長は変更されず、変速比は一定を維持する。
また、本実施形態では、キャリアC
1が一体回転要素であり、歯数比α
2と歯数比α
1とが同一(α
1=α
2)なので、上記のサンギヤS
2とキャリアC
2との回転速度比である速度伝達比N
S2/N
C2は、変速比が一定を維持する固定変速比状態での、第2カム44と一体回転するサンギヤS
1の回転速度N
S1と、一体回転要素である第1遊星歯車機構50AのキャリアC
1の回転速度N
C1との比N
S1/N
C1〔=(1+α
1)/α
1〕と等しい値になる。
【0043】
これに対して、電動モータ70をキャリアC
1,C
2と同方向(正方向)に回転させると(変速aの矢印を参照)、第1遊星歯車機構50Aの共線図は
図4に破線Laで示すようになり、第1遊星歯車機構50AのサンギヤS
1は第2遊星歯車機構60AのサンギヤS
2よりも低速になる。即ち、第2カム44は第1カム42よりも低速になって、第2カム44は第1カム42と相対回転して、相対回転位相が変更される。これにより、トルクカム機構40の全長が変更され、変速比が変更される。そして、無段変速機5が所望の変速比となったところで、電動モータ70の回転速度をゼロに戻す。
【0044】
逆に、電動モータ70をキャリアC
1,C
2の回転方向と逆方向(負方向)に回転させると(変速bの矢印を参照)、第1遊星歯車機構50Aの共線図は
図4に破線Lbで示すようになり、第1遊星歯車機構50AのサンギヤS
1は第2遊星歯車機構60AのサンギヤS
2よりも高速になる。即ち、第2カム44は第1カム42よりも高速になって、第2カム44は第1カム42と相対回転して、相対回転位相が変更される。これにより、トルクカム機構40の全長が変更され、変速比が変更される。
【0045】
したがって、変速比を変更する(即ち、変速を行なう)場合には、電動モータ70を回転速度ゼロから所定方向に回転させ、変速比を固定する場合には、電動モータ70の回転速度をゼロに維持する。
【0046】
本実施形態に係る機械式プーリ移動機構30Aは、上記のように構成されており、第1カム42は可動シーブ12と直結されているため、第1カム42とプーリ6との間には回転によるフリクションは発生しない。また、変速比固定時には、第1カム42と第2カム44とは同方向に等速回転し相対回転しないので、これら2つの部材間で回転によるフリクションは発生しない。このため、動力伝達ロスの発生が抑制される。
【0047】
変速比の変更時には、電動モータ70を所定方向に回転させて第2カム44を第1カム42(したがって、プーリ6)に対して相対回転させて、第1カム42と第2カム44との相対回転位相を変更する。このとき、スラスト軸受46には、第2カム44が第1カム42を介してその他端側(図中右方)に向けて受けるベルト26の推力が加わり、相対回転が発生するが、短時間であり、しかもこの相対回転の速度は低いため、相対回転によるフリクションは発生するものの僅かなものに抑えられる。
【0048】
また、第1遊星歯車機構50AのリングギヤR
1を電動モータ70に連結し、また、第2遊星歯車機構60AのリングギヤR
2を変速機ケーシングに固定しており、リングギヤR
1,R
2は機構の外周にあって電動モータ70や変速機ケーシングアクセスし易いため、構造をシンプルに構成することができ、装置の軸方向及び径方向のサイズをコンパクトにする上で有利である。
【0049】
また、第1遊星歯車機構50A及び第2遊星歯車機構60Aの各サンギヤS
1,S
2、各プラネタリギヤP
1,P
2、各リングギヤR
1,R
2が、互いに同歯数に設定されているので、全体構成を簡素化することや電動モータ70の制御プログラムを簡素化することが可能である。
【0050】
また、回転軸10の外周に各遊星歯車機構50A,60Aの各ギヤを配置するため、レイアウト上、各サンギヤS
1,S
2を比較的大径に(即ち、歯数Zsを比較的多く)、且つ、各リングギヤR
1,R
2を比較的小径にでき(即ち、歯数Zsを比較的少なく)、換言すれば、歯数比α(=Zs/Zr)を1に近い大きさに設定することになるので、変速比変更のために電動モータ70に必要とするトルクを抑えることができる。
【0051】
〔第2実施形態〕
本実施形態では、
図3に示す第1実施形態の構成に対して、第1遊星歯車機構50A及び第2遊星歯車機構60Aの各サンギヤS
1,S
2、各リングギヤR
1,R
2のそれぞれが、異なる歯数に設定されている点のみが異なる。その他の点は第1実施形態の構成と同様のため、
図3の構成および符号をつかって説明する。つまり、サンギヤS
1,S
2の歯数Zs
1,Zs
2はZs
1<Zs
2に、リングギヤR
1,R
2の歯数Zr
1,Zr
2はZr
1>Zr
2に、それぞれ設定されている。
【0052】
したがって、サンギヤの歯数Zsとリングギヤの歯数Zrとの歯数比α(=Zs/Zr)については、第1遊星歯車機構50の歯数比α
1(=Zs
1/Zr
1)と第2遊星歯車機構60Aの歯数比α
2(=Zs
2/Zr
2)とでは、異なる大きさ、即ち、歯数比α
1が歯数比α
2よりも小さくなっている(α
1<α
2)。
【0053】
本実施形態でも、動力伝達機構である第2遊星歯車機構60Aによる速度伝達比は、第1カム42の回転速度(即ち、サンギヤS
2の回転速度N
S2)と、一体回転要素であるキャリアC
2の回転速度N
C2との比N
S2/N
C2として規定される。第2遊星歯車機構60AはリングギヤR
1が固定状態なので、その共線図は
図5に実線Lで示すようになる。上記速度伝達比であるキャリアC
2の回転速度とサンギヤS
2の回転速度との比N
S2/N
C2は、(1+α
2)/α
2と等しくなる。
【0054】
一方、歯数比α
1,α
2はα
1<α
2なので、第1遊星歯車機構50AのリングギヤR1が
図5の実線Lで示す直線上の黒丸の回転速度状態になるように電動モータ70を回転させることで、第2カム44と一体回転する第1遊星歯車機構50AのサンギヤS
1と、第1カム42と一体回転する第2遊星歯車機構60AのサンギヤS
2とを等速で回転させることができる。
【0055】
図5に黒丸で示す回転速度状態は、電動モータ70により、第1遊星歯車機構50AのリングギヤR
1を両キャリアC
1,C
2の回転と同方向(可動シーブ12の回転と同方向:正方向)で、かつゼロではない所定速度(歯数比α
1,α
2の比率に応じた大きさの一定速度)である。
【0056】
なお、歯数比α
1,α
2の大小関係が逆(即ち、α
1>α
2、なお、
図5にはこの場合の歯数比α
1をα
1´で示す)、ならば、電動モータ70により、第1遊星歯車機構50AのリングギヤR
1を両キャリアC
1,C
2の回転と逆方向(負方向)に、
図5に二重丸で示す回転速度で回転させればよい。つまり、第1遊星歯車機構50の歯数比α
1が第2遊星歯車機構60Aの歯数比α
2よりも大きい場合には、
図5の実線Lの延長線上に二点鎖線で示すようにR1の位置がR1´の位置に共線図が変更されることになり、第2カム44と一体回転する第1遊星歯車機構50AのサンギヤS
1を、第1カム42と一体回転する第2遊星歯車機構60AのサンギヤS
2と等速で回転させるには、第1遊星歯車機構50AのリングギヤR
1を両キャリアC
1,C
2の回転と逆方向(負方向)に
図5に二重丸で示す所定速度で回転させることになる。
【0057】
つまり、歯数比α
1<α
2の関係の場合には、リングギヤR
1は正方向に所定速度で回転しており、歯数比α
1>α
2の関係の場合には、リングギヤR
1は負方向に所定速度で回転している。
そして、各状態から電動モータ70の回転速度を増速して、各所定速度から正方向に速度を増速させると、第1遊星歯車機構50Aの共線図は
図5に破線Laで示すようになり、第1遊星歯車機構50AのサンギヤS
1は第2遊星歯車機構60AのサンギヤS
2よりも低速になる。即ち、第2カム44は第1カム42よりも低速になって、第2カム44は第1カム42と相対回転して、相対回転位相が変更される。これにより、トルクカム機構40の全長が変更され、変速比が変更される。その後、無段変速機5が所望の変速比となったときに、電動モータ70の回転速度をリングギヤR
1が黒丸で示す所定回転速度になるようにする。
【0058】
逆に、歯数比α
1<α
2の関係の場合には、リングギヤR
1が正方向に回転し、歯数比α
1>α
2の関係の場合には、リングギヤR
1が負方向に回転している状態から、電動モータ70の回転速度を減速して、各所定速度から正方向に速度を増速させると、第1遊星歯車機構50Aの共線図は
図5に破線Lbで示すようになり、第1遊星歯車機構50AのサンギヤS
1は第2遊星歯車機構60AのサンギヤS
2よりも高速になる。即ち、第2カム44は第1カム42よりも高速になって、第2カム44は第1カム42と相対回転して、相対回転位相が変更される。これにより、トルクカム機構40の全長が変更され、変速比が変更される。その後、無段変速機5が所望の変速比となったときに、電動モータ70の回転速度をリングギヤR
1が黒丸で示す所定回転速度になるようにする。
【0059】
したがって、無段変速機5の変速比を変更する(即ち、変速を行なう)場合には、電動モータ70の回転速度をサンンギヤS
1、S
2が等速回転する所定速度から所定方向に変更(増速又は減速)させ、変速比を固定する場合には、サンギヤS
1、S
2が等速回転するようにリングギヤR
1を所定速度で電動モータ70により回転させる。
【0060】
本実施形態に係る機械式プーリ移動機構30Aは、上記のように、第1実施形態と同様に、第1カム42は可動シーブ12と直結されており、第1カム42とプーリ6との間には回転によるフリクションは発生しない。また、変速比固定時には、第1カム42と第2カム44とは同方向に等速回転し相対回転しないので、2つの部材間で回転によるフリクションは発生しない。このため、動力伝達ロスの発生が抑制される。
【0061】
変速比の変更時には、電動モータ70の回転速度を変更して第2カム44を第1カム42(したがって、プーリ6)に対して相対回転させて、第1カム42と第2カム44との相対回転位相を変更する。このとき、スラスト軸受46には、第2カム44が第1カム42を介してその他端側(図中右方)に向けて受けるベルト26の推力が加わり、相対回転によるフリクションが発生するが、第1実施形態と同様に、変速は短時間であり、しかもこの相対回転の速度は低いため、相対回転によるフリクションは発生するものの僅かなものに抑えられる。
【0062】
また、第1実施形態と同様に、第1遊星歯車機構50AのリングギヤR
1を電動モータ70に連結し、また、第2遊星歯車機構60AのリングギヤR
2を変速機ケーシングに固定しており、構造をシンプルに構成することができ、装置の軸方向及び径方向のサイズをコンパクトにする上で有利である。
【0063】
また、本実施形態では、遊星歯車機構50A,60Aの歯数比α
1,α
2が異なっており(α
1≠α
2)変速比を一定に保持する際には、サンギヤS
1、S
2が等速回転するリングギヤR
1の回転速度となるように電動モータ70を所定速度で回転させることで達成する。電動モータ70の一般的な特性(例えば、トルクと回転のモータ効率マップ)では、モータ回転ゼロで制御するには大きなトルクを要し、モータ効率が比較的低い領域で制御を行なうことになるが、電動モータ70を回転させながら制御するため、モータ効率の低い領域での制御を回避することができる。
【0064】
また、第1実施形態と同様に、レイアウト上コンパクトにするには歯数比αを1に近い大きさに設定することになるので、変速比変更のために電動モータ70に必要とするトルクを抑えることができる。
【0065】
〔第3実施形態〕
図6に示すように、第3実施形態に係る機械式プーリ移動機構30Cは、第1遊星歯車機構50Cについては、サンギヤS
1が、上記第1回転要素に相当し、動力伝達機構である第2遊星歯車機構60Cを介して第1カム42に連結されている。リングギヤR
1が、上記第2回転要素に相当し、第2カム44に直結されている。キャリアC
1が、上記第3回転要素に相当し、アクチュエータである電動モータ70は、キャリアC
1の外周に形成されキャリアC
1と一体回転するギヤ73a及び電動モータ70の回転軸に固定されたギヤ73bが噛み合ってなるギヤ機構73を介して第1遊星歯車機構50Cと連結されている。
【0066】
また、第2遊星歯車機構60Cについては、サンギヤS
2が第1遊星歯車機構50CのサンギヤS
1に直結され、リングギヤR
2が第1カム42に連結され、キャリアC
2が図示しない変速機ケーシングに固定されている。したがって、第1遊星歯車機構50CのサンギヤS
1と第2遊星歯車機構60CのサンギヤS
2とが、互いに一体に回転する一体回転要素となっている。
【0067】
また、本実施形態では、第1遊星歯車機構50C及び第2遊星歯車機構60Cの各サンギヤS
1,S
2、各プラネタリギヤP
1,P
2、各リングギヤR
1,R
2が、互いに同歯数に設定されている。したがって、サンギヤの歯数Zsとリングギヤの歯数Zrとの歯数比α(=Zs/Zr)については、第1遊星歯車機構50Cの歯数比α
1と第2遊星歯車機構60Cの歯数比α
2とが同一になっている(α
1=α
2)。
【0068】
動力伝達機構である第2遊星歯車機構60Cによる速度伝達比は、第1カム42の回転速度(即ち、リングギヤR
2の回転速度N
R2)と、一体回転要素であるサンギヤS
2の回転速度N
S2との比N
R2/N
S2として規定される。第2遊星歯車機構60CはキャリアC
2が固定状態なので、その共線図は
図7に実線Lで示すようになる。上記速度伝達比である、サンギヤS
2の回転速度とリングギヤR
2の回転速度との比N
R2/N
S2は、−α
2と等しくなる。
【0069】
一方、電動モータ70の回転速度をゼロに維持して第1遊星歯車機構50CのキャリアC
1を固定状態にすれば、第1遊星歯車機構50CのリングギヤR
1は、第1カム42と一体回転する第2遊星歯車機構60CのリングギヤR
2と等速で回転する。このときの第1遊星歯車機構50Cの共線図は第2遊星歯車機構60Cと同様に
図7に実線Lで示すようになり、第1遊星歯車機構50CのリングギヤR
1は第2遊星歯車機構60CのリングギヤR
2と等速回転する。
【0070】
したがって、このときには、リングギヤR
1が連結された第2カム44はリングギヤR
2が連結された第1カム42と相対回転しないで、一定の回転位相を保持する。つまり、トルクカム機構40の全長は変更されず、無段変速機5の変速比は一定を維持する。
また、本実施形態では、サンギヤS
1が一体回転要素であり、歯数比α
2と歯数比α
1とが同一(α
1=α
2)なので、上記のリングギヤR
2とサンギヤS
2との回転速度比である速度伝達比N
R2/N
S2は、変速比は一定を維持する固定変速比状態での、第2カム44と一体回転するリングギヤR
1の回転速度と、一体回転要素である第1遊星歯車機構50CのサンギヤS
1の回転速度との比N
R1/N
S1(=−α
2)と等しい値になる。
【0071】
これに対して、電動モータ70をリングギヤR
1,R
2と同方向(正方向)に回転させると(変速aの矢印を参照)、第1遊星歯車機構50Cの共線図は
図7に破線Laで示すようになり、第1遊星歯車機構50CのリングギヤR
1は第2遊星歯車機構60CのリングギヤR
2よりも高速になる。即ち、第2カム44は第1カム42よりも高速になって、第2カム44は第1カム42と相対回転して、相対回転位相が変更される。これにより、トルクカム機構40の全長が変更され、変速比が変更される。そして、無段変速機5が所望の変速比となったところで、電動モータ70の回転速度をゼロに戻す。
【0072】
逆に、電動モータ70をリングギヤR
1,R
2と逆方向(負方向)に回転させると(変速bの矢印を参照)、第1遊星歯車機構50Cの共線図は
図7に破線Lbで示すようになり、第1遊星歯車機構50CのリングギヤR
1は第2遊星歯車機構60CのリングギヤR
2よりも低速になる。即ち、第2カム44は第1カム42よりも低速になって、第2カム44は第1カム42と相対回転して、相対回転位相が変更される。これにより、トルクカム機構40の全長が変更され、変速比が変更される。そして、無段変速機5が所望の変速比となったところで、電動モータ70の回転速度をゼロに戻す。
【0073】
したがって、変速比を変更する(即ち、変速を行なう)場合には、電動モータ70を正方向、あるいは負方向に回転させ、変速比を固定する場合には、電動モータ70を停止させる。
本実施形態に係る機械式プーリ移動機構30Cは、上記のように、第1カム42は可動シーブ12と直結されており、第1カム42とプーリ6との間には回転によるフリクションは発生しない。また、変速比固定時には、第1カム42と第2カム44とは同方向に等速回転し相対回転しないので、この2つの部材間で回転によるフリクションは発生しない。このため、動力伝達ロスの発生が抑制される。
【0074】
変速比の変更時には、電動モータ70の回転速度を変更して第2カム44を第1カム42(したがって、プーリ6)に対して相対回転させて、第1カム42と第2カム44との相対回転位相を変更する。このとき、スラスト軸受46には、第2カム44が第1カム42を介してその他端側(図中右方)に向けて受けるベルト26の推力が加わり、相対回転によるフリクションが発生するが、第1実施形態と同様に、変速は短時間であり、しかもこの相対回転の速度は低いため、相対回転によるフリクションは発生するものの僅かなものに抑えられる。
【0075】
また、第1実施形態と同様に、第1遊星歯車機構50C及び第2遊星歯車機構60Cの各サンギヤS
1,S
2、各プラネタリギヤP
1,P
2、各リングギヤR
1,R
2が、互いに同歯数に設定されているので、全体構成を簡素化することや電動モータ70の制御プログラムを簡素化することが可能である。
【0076】
さらに、第1カム42及び第2カム44のカムトルクが、第1遊星歯車機構50C及び第2遊星歯車機構60Cの各リングギヤR
1,R
2から入力するので、第1遊星歯車機構50C及び第2遊星歯車機構60Cのトルク負荷は小さくなり、各遊星歯車機構50C,60Cのギヤ幅を小さくすることができる効果もある。
【0077】
〔第4実施形態〕
図8に示すように、第4実施形態に係る機械式プーリ移動機構30Dは、第1遊星歯車機構50Dについては、リングギヤR
1が、上記第1回転要素に相当し、動力伝達機構である第2遊星歯車機構60Dを介して第1カム42に連結されている。サンギヤS
1が、上記第2回転要素に相当し、第2カム44に直結されている。キャリアC
1が、上記第3回転要素に相当し、アクチュエータである電動モータ70は、の外周に形成されキャリアC
1と一体回転するギヤ74a及び電動モータ70の回転軸に固定された74bが噛み合ってなるギヤ機構74を介して第1遊星歯車機構50Dと連結されている。
【0078】
また、第2遊星歯車機構60Dについては、リングギヤR
2が第1遊星歯車機構50DのリングギヤR
1に直結され、サンギヤS
2が第1カム42に連結され、キャリアC
2が図示しない変速機ケーシングに固定されている。したがって、第1遊星歯車機構50DのリングギヤR
1と第2遊星歯車機構60DのリングギヤR
2とが、互いに一体に回転する一体回転要素となっている。
【0079】
また、本実施形態では、第1遊星歯車機構50D及び第2遊星歯車機構60Dの各サンギヤS
1,S
2、各リングギヤR
1,R
2が、互いに同歯数に設定されている。したがって、サンギヤの歯数Zsとリングギヤの
歯数Zrとの歯数比α(=Zs/Zr)については、第1遊星歯車機構50Dの歯数比α
1と第2遊星歯車機構60Dの歯数比α
2とが同一になっている(α
1=α
2)。
【0080】
動力伝達機構である第2遊星歯車機構60Dによる速度伝達比は、第1カム42の回転速度(即ち、サンギヤS
2の回転速度N
S2)と、一体回転要素であるリングギヤR
2の回転速度N
R2との比N
S2/N
R2として規定される。第2遊星歯車機構60DはキャリアC
2が固定状態なので、その共線図は
図9に実線Lで示すようになる。上記速度伝達比である、リングギヤR
2の回転速度とサンギヤS
2の回転速度との比N
S2/N
R2は、−1/α
2と等しくなる。
【0081】
一方、電動モータ70の回転を停止させて第1遊星歯車機構50DのキャリアC
1を固定状態にすれば、第1遊星歯車機構50DのサンギヤS
1は、第1カム42と一体回転する第2遊星歯車機構60DのサンギヤS
2と等速で回転する。このときの第1遊星歯車機構50Dの共線図は第2遊星歯車機構60Dと同様に
図9に実線Lで示すようになり、第1遊星歯車機構50DのサンギヤS
1は第2遊星歯車機構60DのサンギヤS
2と等速回転する。
【0082】
したがって、このときには、サンギヤS
1が連結された第2カム44はサンギヤS
2が連結された第1カム42と相対回転しないで、一定の回転位相を保持する。つまり、トルクカム機構40の全長は変更されず、無段変速機5の変速比は一定を維持する。
また、本実施形態では、サンギヤS
1が一体回転要素であり、歯数比α
2と歯数比α
1とが同一(α
1=α
2)なので、上記のサンギヤS
2とリングギヤR
2との回転速度比である速度伝達比N
S2/N
R2は、二組の遊星歯車の歯数比がα
1=α
2と等しいことから、変速比は一定を維持する固定変速比状態での、第2カム44と一体回転するサンギヤS
1の回転速度N
S1と、一体回転要素である第1遊星歯車機構50DのリングギヤR
1の回転速度N
R1との速度伝達比N
S1/N
R1(=−1/α
1)と等しい値になる。
【0083】
これに対して、電動モータ70をサンギヤS
1,S
2と同方向(正方向)に回転させてキャリアC
1の回転速度を増加させると(変速aの矢印を参照)、第1遊星歯車機構50Dの共線図は
図9に破線Laで示すようになり、第1遊星歯車機構50DのサンギヤS
1は第2遊星歯車機構60DのサンギヤS
2よりも高速になる。即ち、第2カム44は第1カム42よりも高速になって、第2カム44は第1カム42と相対回転して、相対回転位相が変更される。これにより、トルクカム機構40の全長が変更され、変速比が変更される。
【0084】
逆に、電動モータ70をサンギヤS
1,S
2と逆方向(負方向)に回転させると(変速bの矢印を参照)、第1遊星歯車機構50Dの共線図は
図9に破線Lbで示すようになり、第1遊星歯車機構50DのサンギヤS
1は第2遊星歯車機構60DのサンギヤS
2よりも低速になる。即ち、第2カム44は第1カム42よりも低速になって、第2カム44は第1カム42と相対回転して、相対回転位相が変更される。これにより、トルクカム機構40の全長が変更され、変速比が変更される。
【0085】
したがって、変速比を変更する(即ち、変速を行なう)場合には、電動モータ70を所定方向に回転させ、変速比を固定する場合には、電動モータ70の回転速度をゼロにする。
本実施形態に係る機械式プーリ移動機構30Dは、上記のように、第1カム42は可動シーブ12と直結されており、第1カム42とプーリ6との間には回転によるフリクションは発生しない。また、変速比固定時には、第1カム42と第2カム44とは同方向に等速回転し相対回転しないので、これらの2部材間で回転によるフリクションは発生しない。このため、動力伝達ロスの発生が抑制される。
【0086】
変速比の変更時には、電動モータ70の回転速度を変更して第2カム44を第1カム42(したがって、プーリ6)に対して相対回転させて、第1カム42と第2カム44との相対回転位相を変更する。このとき、スラスト軸受46には、第2カム44が第1カム42を介してその他端側(図中右方)に向けて受けるベルト26の推力が加わり、相対回転によるフリクションが発生するが、第1実施形態と同様に、変速は短時間であり、しかもこの相対回転の速度は低いため、相対回転によるフリクションは発生するものの僅かなものに抑えられる。
【0087】
また、第1実施形態と同様に、第1遊星歯車機構50D及び第2遊星歯車機構60Dの各サンギヤS
1,S
2、各プラネタリギヤP
1,P
2、各リングギヤR
1,R
2が、互いに同歯数に設定されているので、全体構成を簡素化することや電動モータ70の制御プログラムを簡素化することが可能である。
【0088】
〔第5実施形態〕
図10に示すように、第5実施形態に係る機械式プーリ移動機構30Eは、第1遊星歯車機構50Eについては、キャリアC
1が、上記第1回転要素に相当し、動力伝達機構である動力伝達機構60Eを介して第1カム42に連結されている。サンギヤS
1が、上記第2回転要素に相当し、第2カム44に直結されている。リングギヤR
1が、上記第3回転要素に相当し、アクチュエータである電動モータ70は、リングギヤR
1の外周に形成されリングギヤR
1と一体回転するギヤ75a及び電動モータ70の回転軸に固定されたギヤ75bが噛み合ってなるギヤ機構75を介して第1遊星歯車機構50Eと連結されている。
【0089】
また、動力伝達機構60Eについては、平行ギヤ機構により構成されている。
この平行ギヤ機構は、カウンタ軸61と、第1外歯ギヤ61aと第1カウンタギヤ61bとが噛合してなる第1ギヤ機構と、第2外歯ギヤ61dと第2カウンタギヤ61cとが噛合してなる第2ギヤ機構と、から構成されている。
【0090】
つまり、可動シーブ12の回転軸線と平行にカウンタ軸61が設置され、このカウンタ軸61には第1カウンタギヤ61b及び第2カウンタギヤ61cが一体回転するように結合されている。第1カム42には、第1外歯ギヤ61aが一体回転するように結合され、この第1外歯ギヤ61aと第1カウンタギヤ61bとが噛合して第1ギヤ機構を構成している。また、第1遊星歯車機構50EのキャリアC
1には、第2外歯ギヤ61dが一体回転するように結合され、この第2外歯ギヤ61dと第2カウンタギヤ61cとが噛合して第2ギヤ機構を構成している。
【0091】
動力伝達機構である平行ギヤ機構60Eは、アクチュエータである電動モータ70により第1カム42,第2カム44の相対回転位相を一定とする変速比固定時に、第1カム42,第2カム44が同方向に等速回転するように速度伝達比が設定されている。即ち、第1カム42の回転速度(N
カム1)は、第1遊星歯車機構50の第1回転要素であるキャリアC
1の回転速度(Nc1)に対して、動力伝達機構60Eの速度伝達比(N
カム1/Nc1)に応じた回転速度で回転する。
【0092】
平行ギヤ機構60Eにおいて、第1外歯ギヤ61aの歯数をZ
A、第1カウンタギヤ61bの歯数をZ
B、第2カウンタギヤ61cの歯数をZ
C、第2外歯ギヤ61の歯数をZ
Dとすると、動力伝達機構である平行ギヤ機構60Eによる速度伝達比は、第1外歯ギヤ61aの回転速度N
Aと第2外歯ギヤ61dの回転速度N
Dとの比(N
A/N
D)となり、各ギヤ61a〜61dの歯数Z
A〜Z
Dで決まる。
速度伝達比=N
A/N
D=(N
A/N
B)・(N
C/N
D)
=(Z
B/Z
A)・(Z
D/Z
C)=(Z
B・Z
D)/(Z
A・Z
C)
【0093】
ここで、電動モータ70を停止させたときに変速比が固定されるものとすると、第1遊星歯車機構50Eの共線図は
図11に実線Lで示すようになる。
図11において、αは第1遊星歯車機構50Eの歯数比である。
第1カム42,第2カム44の相対回転位相を一定とする変速比固定時に、第1カム42,第2カム44が同方向に等速回転するように、平行ギヤ機構60Eの速度伝達比N
A/N
Dを設定すると、
図11に示すように、速度伝達比N
A/N
Dは、(1+α)/αと等しくなる。
【0094】
電動モータ70の回転を停止させて第1遊星歯車機構50EのリングギヤR
1を固定状態にすれば、第1遊星歯車機構50Eでは、第2カム44と一体回転するサンギヤS
1は、キャリアC
1に対して(1+α)/α倍の速度で回転する。このとき、第1カム42と一体回転する第1外歯ギヤ61aも、キャリアC
1と一体回転する第2外歯ギヤ61dに対して(1+α)/α倍の速度で回転する。
【0095】
したがって、このときには、サンギヤS
1が連結された第2カム44はキャリアC
1が連結された第1カム42と相対回転しないで、一定の回転位相を保持する。つまり、トルクカム機構40の全長は変更されず、無段変速機5の変速比は一定を維持する。
【0096】
これに対して、電動モータ70をリングギヤR
1がキャリアC
1やサンギヤS
1と同方向(正方向)に回転するように作動させると(変速aの矢印を参照)、第1遊星歯車機構50Eの共線図は
図11に破線Laで示すようになり、第1遊星歯車機構50EのサンギヤS
1(即ち、第2カム44)は、電動モータ70の作動前よりも低速になって、第2カム44は第1カム42と相対回転して、相対回転位相が変更される。これにより、トルクカム機構40の全長が変更され、変速比が変更される。
【0097】
逆に、電動モータ70をリングギヤR
1がキャリアC
1やサンギヤS
1と逆方向(負方向)に回転するように作動させると(変速bの矢印を参照)、第1遊星歯車機構50Eの共線図は
図11に破線Lbで示すようになり、第1遊星歯車機構50EのサンギヤS
1(即ち、第2カム44)は、電動モータ70の作動前よりも高速になって、第2カム44は第1カム42と相対回転して、相対回転位相が変更される。これにより、トルクカム機構40の全長が変更され、変速比が変更される。
【0098】
したがって、変速比を変更する(即ち、変速を行なう)場合には、電動モータ70を所定方向に回転させ、変速比を固定する場合には、電動モータ70の回転速度をゼロにする。
【0099】
本実施形態に係る機械式プーリ移動機構30Eは、上記のように、第1カム42は可動シーブ12と直結されており、第1カム42とプーリ6との間には回転によるフリクションは発生しない。また、変速比固定時には、第1カム42と第2カム44とは同方向に等速回転し相対回転しないので、これらの2部材間で回転によるフリクションは発生しない。このため、動力伝達ロスの発生が抑制される。
【0100】
変速比の変更時には、電動モータ70の回転速度を変更して第2カム44を第1カム42(したがって、プーリ6)に対して相対回転させて、第1カム42と第2カム44との相対回転位相を変更する。このとき、スラスト軸受46には、第2カム44が第1カム42を介してその他端側(図中右方)に向けて受けるベルト26の推力が加わり、相対回転によるフリクションが発生するが、第1実施形態と同様に、変速は短時間であり、しかもこの相対回転の速度は低いため、相対回転によるフリクションは発生するものの僅かなものに抑えられる。
【0101】
〔第6実施形態〕
図12に示すように、第6実施形態に係る機械式プーリ移動機構30Fは、第1遊星歯車機構51については、プライマリプーリ6(可動シーブ12)の回転軸線と離隔しこの回転軸線と平行な別の回転軸線上に配置されている。
この第1遊星歯車機構51において、サンギヤS
3がアクチュエータとしての電動モータ70の回転軸に結合され、リングギヤR
3が第2カム44に連結され、キャリアC
3が動力伝達機構60Fに駆動連結されている。
【0102】
キャリアC
3が、上記第1回転要素に相当し、動力伝達機構である動力伝達機構60Fを介して第1カム42に連結されている。リングギヤR
3が、上記第2回転要素に相当し、リングギヤR
3の外側に形成された外歯ギヤ(ギヤRともいう)51aと、第2カム44の外側に形成された外歯ギヤ(ギヤAともいう)51bとが噛合している。サンギヤS
3が、上記第3回転要素に相当し、アクチュエータである電動モータ70の回転軸に結合されている。
【0103】
また、動力伝達機構60Fについては、平行ギヤ機構により構成されている。この平行ギヤ機構は、第1カム42に結合される外歯ギヤ(ギヤBともいう)62aと、キャリアC
3に結合され外歯ギヤ62aと噛合する外歯ギヤ(ギヤCともいう)62bと、から構成されている。
【0104】
動力伝達機構である平行ギヤ機構60Fは、アクチュエータである電動モータ70により第1カム42,第2カム44の相対回転位相を一定とする変速比固定時に、第1カム42,第2カム44が同方向に等速回転するように速度伝達比が設定されている。即ち、第1カム42の回転速度(N
カム1)は、第1遊星歯車機構51の第1回転要素であるキャリアC
3の回転速度(Nc3)に対して、動力伝達機構60Fの速度伝達比(N
カム1/Nc3)に応じた回転速度で回転する。
【0105】
平行ギヤ機構60Fにおいて、第1カム42に結合された外歯ギヤ62aの歯数をZ
B、キャリアC
3に結合された外歯ギヤ62bの歯数をZ
Cとすると、動力伝達機構である平行ギヤ機構60Fによる速度伝達比は、外歯ギヤ62aの回転速度(第1カム42の回転速度)N
Bと外歯ギヤ62bの回転速度(キャリアC
3の回転速度)N
Cとの比(N
B/N
C)となり、各ギヤ62a,62bの歯数Z
B,Z
Cで決まる。
速度伝達比=N
B/N
C=Z
C/Z
B
【0106】
ここで、電動モータ70を停止させたときに変速比が固定されるものとすると、第1遊星歯車機構51の共線図は
図13に実線Lで示すようになる。
図13において、αは第1遊星歯車機構51の歯数比である。
図13に示すように、リングギヤR
3の回転速度とキャリアC
3の回転速度との比は1+αとなる。
【0107】
さらに、キャリアC
3の回転速度〔外歯ギヤ(ギヤA)51bの回転速度〕N
AとリングギヤR
3の回転速度〔外歯ギヤ(ギヤR)51aの回転速度〕N
Rとの回転速度比(N
A/N
ROUT)は各ギヤ62a,62bの歯数Z
A,Z
Rで決まり、以下のようになる。
N
A/N
R=Z
R/Z
A
【0108】
ここで、回転速度比(N
A/N
R)を考慮して、第1カム42,第2カム44の相対回転位相を一定とする変速比固定時に、第1カム42,第2カム44が同方向に等速回転するように設定するには、次式の関係を満たすように、平行ギヤ機構60Fの速度伝達比(各ギヤ62a,62bの歯数Z
B,Z
Cの比)を設定すればよい。
N
B/N
C=Z
C/Z
B=(1+α)・(N
A/N
R)=(1+α)・(Z
R/Z
A)
なお、
図13の共線図には、理解を容易にするために、Z
R/Z
A=1としている。
【0109】
平行ギヤ機構60Fの速度伝達比をこのように設定することにより、電動モータ70の回転を停止させて第1遊星歯車機構51のサンギヤS
3を固定状態にすれば、第2カム44は第1カム42と相対回転しないで、一定の回転位相を保持する。つまり、トルクカム機構40の全長は変更されず、無段変速機5の変速比は一定を維持する。
【0110】
これに対して、電動モータ70をサンギヤS
3がキャリアC
3やリングギヤR
3と同方向(正方向)に回転するように作動させると(変速aの矢印を参照)、第1遊星歯車機構50Fの共線図は
図13に破線Laで示すようになり、第1遊星歯車機構50FのリングギヤR
3(即ち、第2カム44)は、電動モータ70の回転作動前よりも低速になって、第2カム44は第1カム42と相対回転して、相対回転位相が変更される。これにより、トルクカム機構40の全長が変更され、変速比が変更される。
【0111】
逆に、電動モータ70をサンギヤS
3がキャリアC
3やリングギヤR
3と逆方向(負方向)に回転するように作動させると(変速bの矢印を参照)、第1遊星歯車機構50Fの共線図は
図13に破線Lbで示すようになり、第1遊星歯車機構50FのリングギヤR
3(即ち、第2カム44)は、電動モータ70の回転作動前よりも高速になって、第2カム44は第1カム42と相対回転して、相対回転位相が変更される。これにより、トルクカム機構40の全長が変更され、変速比が変更される。
【0112】
したがって、変速比を変更する(即ち、変速を行なう)場合には、電動モータ70を所定方向に回転させ、変速比を固定する場合には、電動モータ70の回転速度をゼロにする。
【0113】
本実施形態に係る機械式プーリ移動機構30Fは、上記のように、第1実施形態と同様に第1カム42は可動シーブ12と直結されており、第1カム42とプーリ6との間には回転によるフリクションは発生しない。また、変速比固定時には、第1カム42と第2カム44とは同方向に等速回転し相対回転しないので、これらの2部材間で回転によるフリクションは発生しない。このため、動力伝達ロスの発生が抑制される。
【0114】
第1実施形態と同様に変速比の変更時には、電動モータ70の回転速度を変更して第2カム44を第1カム42(したがって、プーリ6)に対して相対回転させて、第1カム42と第2カム44との相対回転位相を変更する。このとき、スラスト軸受46には、第2カム44が第1カム42を介してその他端側(図中右方)に向けて受けるベルト26の推力が加わり、相対回転によるフリクションが発生するが、第1実施形態と同様に、変速は短時間であり、しかもこの相対回転の速度は低いため、相対回転によるフリクションは発生するものの僅かなものに抑えられる。
【0115】
〔第7実施形態〕
図14に示すように、第7実施形態に係る機械式プーリ移動機構30Gは、第6実施形態と同様に、第1遊星歯車機構51については、プライマリプーリ6(可動シーブ12)の回転軸線と離隔しこの回転軸線と平行な別の回転軸線上に配置され、第6実施形態のものと同様に構成されている。
つまり、第1遊星歯車機構51において、サンギヤS
3がアクチュエータとしての電動モータ70の回転軸に結合され、リングギヤR
3が第2カム44に連結され、キャリアC
3が動力伝達機構60Gに駆動連結されている。
【0116】
キャリアC
3が、上記第1回転要素に相当し、動力伝達機構である動力伝達機構60Gを介して第1カム42に連結されている。リングギヤR
3が、上記第2回転要素に相当し、リングギヤR
3の外側に形成された外歯ギヤ(ギヤR1ともいう)51aと、第2カム44の外側に形成された外歯ギヤ(ギヤAともいう)51bとが噛合している。サンギヤS
3が、上記第3回転要素に相当し、アクチュエータである電動モータ70の回転軸に結合されている。
【0117】
一方、動力伝達機構60Gには、遊星歯車機構(第2遊星歯車機構)63が用いられている。この第2遊星歯車機構63は、プライマリプーリ6(可動シーブ12)の回転軸線と離隔しこの回転軸線と平行な第1遊星歯車機構51の回転軸線と同軸上に配置され、第1遊星歯車機構51と同様な回転要素により構成されている。
【0118】
つまり、第2遊星歯車機構63は、第1遊星歯車機構51のサンギヤS
3と同軸上に配置されたサンギヤS
4と、第1遊星歯車機構51のキャリアC
3と同軸上に配置されたキャリアC
4と、第1遊星歯車機構51のリングギヤR
3と同軸上に配置されたリングギヤR
4と、を備え、キャリアC
4には、第1遊星歯車機構51のプラネタリギヤP
3と同様にプラネタリギヤP
4が装備されている。
【0119】
本実施形態では、第2遊星歯車機構63のサンギヤS
4,リングギヤR
4,プラネタリギヤP
4はそれぞれ、第1遊星歯車機構51の対応するサンギヤS
3,リングギヤR
3,プラネタリギヤP
3と同一に歯数に構成されている。そして、第2遊星歯車機構63のキャリアC
4と第1遊星歯車機構51のキャリアC
3とが一体回転するように結合されている。そして、リングギヤR
4の外側に形成された外歯ギヤ(ギヤR2ともいう)63bと、第1カム42の外側に形成された外歯ギヤ(ギヤBともいう)63aとが噛合している。
【0120】
動力伝達機構60Gは、アクチュエータである電動モータ70により第1カム42,第2カム44の相対回転位相を一定とする変速比固定時に、第1カム42,第2カム44が同方向に等速回転するように速度伝達比が設定されている。
【0121】
第2カム44の回転速度(N
カム2)は、第1遊星歯車機構51の第1回転要素であるキャリアC
3の回転速度(Nc3)に対して、第1遊星歯車機構51の速度伝達比(N
カム2/Nc3)に応じた回転速度で回転する。
一方、第1カム42の回転速度(N
カム1)は、第1遊星歯車機構51の第1回転要素であるキャリアC
3の回転速度(Nc3)に対して、動力伝達機構60Gの速度伝達比(N
カム1/Nc3)に応じた回転速度で回転する。
【0122】
ここで、第2カム44に結合された外歯ギヤ(ギヤA)62aの歯数をZ
A、リングギヤR
3の外側に形成された外歯ギヤ(ギヤR1)51aの歯数をZ
R1、リングギヤR
4の外側に形成された外歯ギヤ(ギヤR2)63bの歯数をZ
R2、第1カム42に結合された外歯ギヤ(ギヤB)62aの歯数をZ
Bとし、第1遊星歯車機構51の歯数比(=Zs/Zr)をα
1、第2遊星歯車機構63の歯数比(=Zs/Zr)をα
2とすると、第1カム42に関する動力伝達機構60Gの速度伝達比(N
カム1/Nc3)、及び、第2カム44に関するは第1遊星歯車機構51の速度伝達比(N
カム2/Nc3)は、以下のようになる。
(N
カム1/Nc3)=(1+α
2)・(Z
R2/Z
B)
(N
カム2/Nc3)=(1+α
1)・(Z
R1/Z
A)
【0123】
第1カム42,第2カム44の相対回転位相を一定とする変速比固定時に、第1カム42,第2カム44が同方向に等速回転するように動力伝達機構60Gの速度伝達比(N
カム1/Nc3)を設定するには、次式に示すように、速度伝達比(N
カム1/Nc3)と速度伝達比(N
カム2/Nc3)とが等しくなるように設定すればよい。
(1+α
2)・(Z
R2/Z
B)=(1+α
1)・(Z
R1/Z
A)
【0124】
なお、本実施形態では、第1遊星歯車機構51,第2遊星歯車機構63の共線図は
図15に実線Lで示すようになる。
図15において、α
1は第1遊星歯車機構51の歯数比であり、α
2は第2遊星歯車機構63の歯数比である。
図15に示すように、リングギヤR
3,R
4の回転速度とキャリアC
3,C
4の回転速度との比は1+α
1,1+α
2となる。
このように、本実施形態では、第1遊星歯車機構51の歯数比α
1と第2遊星歯車機構63の歯数比α
2とが等しく設定されているので、以下の関係を満たせばよい。
Z
R2/Z
B=Z
R1/Z
A
【0125】
動力伝達機構60Gの速度伝達比をこのように設定することにより、電動モータ70の回転を停止させて第1遊星歯車機構51のサンギヤR
3を固定状態にすれば、第2カム44は第1カム42と相対回転しないで、一定の回転位相を保持する。つまり、トルクカム機構40の全長は変更されず、無段変速機5の変速比は一定を維持する。
【0126】
これに対して、電動モータ70をサンギヤS
3がキャリアC
3やリングギヤR
3と同方向(正方向)に回転するように作動させると(変速aの矢印を参照)、第1遊星歯車機構50Fの共線図は
図15に破線Laで示すようになり、第1遊星歯車機構50FのリングギヤR
3(即ち、第2カム44)は、電動モータ70の回転作動前よりも低速になって、第2カム44は第1カム42と相対回転して、相対回転位相が変更される。これにより、トルクカム機構40の全長が変更され、変速比が変更される。
【0127】
逆に、電動モータ70をサンギヤS
3がキャリアC
3やリングギヤR
3と逆方向(負方向)に回転するように作動させると(変速bの矢印を参照)、第1遊星歯車機構50Fの共線図は
図15に破線Lbで示すようになり、第1遊星歯車機構50FのリングギヤR
3(即ち、第2カム44)は、電動モータ70の回転作動前よりも高速になって、第2カム44は第1カム42と相対回転して、相対回転位相が変更される。これにより、トルクカム機構40の全長が変更され、変速比が変更される。
【0128】
したがって、変速比を変更する(即ち、変速を行なう)場合には、電動モータ70を所定方向に回転させ、変速比を固定する場合には、電動モータ70の回転速度をゼロにする。
【0129】
本実施形態に係る機械式プーリ移動機構30Gは、上記のように、第1実施形態と同様に第1カム42は可動シーブ12と直結されており、第1カム42とプーリ6との間には回転によるフリクションは発生しない。また、変速比固定時には、第1カム42と第2カム44とは同方向に等速回転し相対回転しないので、これらの2部材間で回転によるフリクションは発生しない。このため、動力伝達ロスの発生が抑制される。
【0130】
第1実施形態と同様に変速比の変更時には、電動モータ70の回転速度を変更して第2カム44を第1カム42(したがって、プーリ6)に対して相対回転させて、第1カム42と第2カム44との相対回転位相を変更する。このとき、スラスト軸受46には、第2カム44が第1カム42を介してその他端側(図中右方)に向けて受けるベルト26の推力が加わり、相対回転によるフリクションが発生するが、第1実施形態と同様に、変速は短時間であり、しかもこの相対回転の速度は低いため、相対回転によるフリクションは発生するものの僅かなものに抑えられる。
【0131】
〔第8実施形態〕
図16に示すように、第8実施形態に係る機械式プーリ移動機構30Hは、第1遊星歯車機構50Hについては、サンギヤS
1が、上記第1回転要素に相当し、動力伝達機構である第2遊星歯車機構60Hを介して第1カム42に連結されている。キャリアC
1が、上記第2回転要素に相当し、第2カム44に直結されている。リングギヤR
1が、上記第3回転要素に相当し、アクチュエータである電動モータ70は、リングギヤR
1の外周に形成されリングギヤR
1と一体回転するギヤ76a及び電動モータ70の回転軸に固定されたギヤ76bが噛み合ってなるギヤ機構76を介して第1遊星歯車機構50Hと連結されている。
【0132】
また、第2遊星歯車機構60Hについては、サンギヤS
2が第1遊星歯車機構50HのサンギヤS
1に直結され、キャリアC
2が第1カム42に連結され、リングギヤR
2が図示しない変速機ケーシングに固定されている。したがって、第1遊星歯車機構50HのサンギヤS
1と第2遊星歯車機構60HのサンギヤS
2とが、互いに一体に回転する一体回転要素となっている。
【0133】
また、本実施形態では、第1遊星歯車機構50H及び第2遊星歯車機構60Hの各サンギヤS
1,S
2、各プラネタリギヤP
1,P
2、各リングギヤR
1,R
2が、互いに同歯数に設定されている。したがって、サンギヤの歯数Zsとリングギヤの歯数Zrとの歯数比α(=Zs/Zr)については、第1遊星歯車機構50Hの歯数比α
1と第2遊星歯車機構60Hの歯数比α
2とが同一になっている(α
1=α
2)。
【0134】
動力伝達機構である第2遊星歯車機構60Hによる速度伝達比は、第1カム42の回転速度(即ち、キャリアC
2の回転速度N
C2)と、一体回転要素であるサンギヤS
2の回転速度N
S2との比N
C2/N
S2として規定される。第2遊星歯車機構60HはリングギヤR
2が固定状態なので、その共線図は
図17に実線Lで示すようになる。上記速度伝達比である、サンギヤS
2の回転速度とキャリアC
2の回転速度との比N
C2/N
S2は、α
2/(1+α
2)と等しくなる。
【0135】
一方、電動モータ70の回転速度をゼロに維持して第1遊星歯車機構50HのリングギヤR
1を固定状態にすれば、第1遊星歯車機構50HのキャリアC
1は、第1カム42と一体回転する第2遊星歯車機構60HのキャリアC
2と等速で回転する。このときの第1遊星歯車機構50Hの共線図は第2遊星歯車機構60Hと同様に
図17に実線Lで示すようになり、第1遊星歯車機構50HのキャリアC
1は第2遊星歯車機構60HのキャリアC
2と等速回転する。
【0136】
したがって、このときには、キャリアC
1が連結された第2カム44はキャリアC
2が連結された第1カム42と相対回転しないで、一定の回転位相を保持する。つまり、トルクカム機構40の全長は変更されず、無段変速機5の変速比は一定を維持する。
また、本実施形態では、サンギヤS
1が一体回転要素であり、歯数比α
2と歯数比α
1とが同一(α
1=α
2)なので、上記のリングギヤR
2とサンギヤS
2との回転速度比である速度伝達比N
R2/N
S2は、変速比は一定を維持する固定変速比状態での、第2カム44と一体回転するキャリアC
1の回転速度と、一体回転要素である第1遊星歯車機構50HのサンギヤS
1の回転速度との比N
C1/N
S1(=α
2/(1+α
2))と等しい値になる。
【0137】
これに対して、電動モータ70をリングギヤR
1,R
2と同方向(正方向)に回転させると(変速aの矢印を参照)、第1遊星歯車機構50Hの共線図は
図17に破線Laで示すようになり、第1遊星歯車機構50HのリングギヤR
1は第2遊星歯車機構60HのリングギヤR
2よりも高速になる。即ち、第2カム44は第1カム42よりも高速になって、第2カム44は第1カム42と相対回転して、相対回転位相が変更される。これにより、トルクカム機構40の全長が変更され、変速比が変更される。そして、無段変速機5が所望の変速比となったところで、電動モータ70の回転速度をゼロに戻す。
【0138】
逆に、電動モータ70をリングギヤR
1,R
2と逆方向(負方向)に回転させると(変速bの矢印を参照)、第1遊星歯車機構50Hの共線図は
図17に破線Lbで示すようになり、第1遊星歯車機構50HのリングギヤR
1は第2遊星歯車機構60HのリングギヤR
2よりも低速になる。即ち、第2カム44は第1カム42よりも低速になって、第2カム44は第1カム42と相対回転して、相対回転位相が変更される。これにより、トルクカム機構40の全長が変更され、変速比が変更される。そして、無段変速機5が所望の変速比となったところで、電動モータ70の回転速度をゼロに戻す。
【0139】
したがって、変速比を変更する(即ち、変速を行なう)場合には、電動モータ70を正方向、あるいは負方向に回転させ、変速比を固定する場合には、電動モータ70を停止させる。
本実施形態に係る機械式プーリ移動機構30Hは、上記のように、第1カム42は可動シーブ12と直結されており、第1カム42とプーリ6との間には回転によるフリクションは発生しない。また、変速比固定時には、第1カム42と第2カム44とは同方向に等速回転し相対回転しないので、この2つの部材間で回転によるフリクションは発生しない。このため、動力伝達ロスの発生が抑制される。
【0140】
変速比の変更時には、電動モータ70の回転速度を変更して第2カム44を第1カム42(したがって、プーリ6)に対して相対回転させて、第1カム42と第2カム44との相対回転位相を変更する。このとき、スラスト軸受46には、第2カム44が第1カム42を介してその他端側(図中右方)に向けて受けるベルト26の推力が加わり、相対回転によるフリクションが発生するが、第1実施形態と同様に、変速は短時間であり、しかもこの相対回転の速度は低いため、相対回転によるフリクションは発生するものの僅かなものに抑えられる。
【0141】
また、第1実施形態と同様に、第1遊星歯車機構50H及び第2遊星歯車機構60Hの各サンギヤS
1,S
2、各プラネタリギヤP
1,P
2、各リングギヤR
1,R
2が、互いに同歯数に設定されているので、全体構成を簡素化することや電動モータ70の制御プログラムを簡素化することが可能である。
【0142】
また、第1遊星歯車機構50HのリングギヤR
1を電動モータ70に連結し、また、第2遊星歯車機構60HのリングギヤR
2を変速機ケーシングに固定しており、リングギヤR
1,R
2は機構の外周にあって電動モータ70や変速機ケーシングにアクセスし易いため、構造をシンプルに構成することができ、装置の軸方向及び径方向のサイズをコンパクトにする上で有利である。
【0143】
〔第9実施形態〕
図18に示すように、第9実施形態に係る機械式プーリ移動機構30Iは、第1遊星歯車機構50Iについては、リングギヤR
1が、上記第1回転要素に相当し、動力伝達機構である第2
遊星歯車機構60Iを介して第1カム42に連結されている。キャリアC
1が、上記第2回転要素に相当し、第2カム44に直結されている。サンギヤS
1が、上記第3回転要素に相当し、アクチュエータである電動モータ70は、サンギヤS
1の外周に形成されサンギヤS
1と一体回転するギヤ77a及び電動モータ70の回転軸に固定されたギヤ77bが噛み合ってなるギヤ機構77を介して第1遊星歯車機構50Iと連結されている。
【0144】
また、第2遊星歯車機構60Iについては、リングギヤR
2が第1遊星歯車機構50IのリングギヤR
1に直結され、キャリアC
2が第1カム42に連結され、サンギヤS
2が図示しない変速機ケーシングに固定されている。したがって、第1遊星歯車機構50IのリングギヤR
1と第2遊星歯車機構60IのリングギヤR
2とが、互いに一体に回転する一体回転要素となっている。
【0145】
また、本実施形態では、第1遊星歯車機構50I及び第2遊星歯車機構60Iの各サンギヤS
1,S
2、各プラネタリギヤP
1,P
2、各リングギヤR
1,R
2が、互いに同歯数に設定されている。したがって、サンギヤの歯数Zsとリングギヤの歯数Zrとの歯数比α(=Zs/Zr)については、第1遊星歯車機構50Iの歯数比α
1と第2遊星歯車機構60Iの歯数比α
2とが同一になっている(α
1=α
2)。
【0146】
動力伝達機構である第2遊星歯車機構60Iによる速度伝達比は、第1カム42の回転速度(即ち、キャリアC
2の回転速度N
C2)と、一体回転要素であるリングギヤR
2の回転速度N
R2との比N
C2/N
R2として規定される。第2遊星歯車機構60IはサンギヤS
2が固定状態なので、その共線図は
図19に実線Lで示すようになる。上記速度伝達比である、リングギヤR
2の回転速度とキャリアC
2の回転速度との比N
C2/N
R2は、1/(1+α
2)と等しくなる。
【0147】
一方、電動モータ70の回転速度をゼロに維持して第1遊星歯車機構50IのサンギヤS
1を固定状態にすれば、第1遊星歯車機構50IのキャリアC
1は、第1カム42と一体回転する第2遊星歯車機構60IのキャリアC
2と等速で回転する。このときの第1遊星歯車機構50Iの共線図は第2遊星歯車機構60Iと同様に
図19に実線Lで示すようになり、第1遊星歯車機構50IのキャリアC
1は第2遊星歯車機構60IのキャリアC
2と等速回転する。
【0148】
したがって、このときには、キャリアC
1が連結された第2カム44はキャリアC
2が連結された第1カム42と相対回転しないで、一定の回転位相を保持する。つまり、トルクカム機構40の全長は変更されず、無段変速機5の変速比は一定を維持する。
また、本実施形態では、サンギヤS
1が一体回転要素であり、歯数比α
2と歯数比α
1とが同一(α
1=α
2)なので、上記のリングギヤR
2とサンギヤS
2との回転速度比である速度伝達比N
R2/N
S2は、変速比は一定を維持する固定変速比状態での、第2カム44と一体回転するキャリアC
1の回転速度と、一体回転要素である第1遊星歯車機構50IのリングギヤR
1の回転速度との比N
C1/N
R1(=1/(1+α
2))と等しい値になる。
【0149】
これに対して、電動モータ70をサンギヤS
1,S
2と同方向(正方向)に回転させると(変速aの矢印を参照)、第1遊星歯車機構50Iの共線図は
図19に破線Laで示すようになり、第1遊星歯車機構50IのサンギヤS
1は第2遊星歯車機構60IのサンギヤS
2よりも高速になる。即ち、キャリアC
1が連結された第2カム44は第1カム42よりも高速になって、第2カム44は第1カム42と相対回転して、相対回転位相が変更される。これにより、トルクカム機構40の全長が変更され、変速比が変更される。そして、無段変速機5が所望の変速比となったところで、電動モータ70の回転速度をゼロに戻す。
【0150】
逆に、電動モータ70をサンギヤS
1,S
22と逆方向(負方向)に回転させると(変速bの矢印を参照)、第1遊星歯車機構50Iの共線図は
図19に破線Lbで示すようになり、第1遊星歯車機構50IのサンギヤS
1は第2遊星歯車機構60IのサンギヤS
2よりも低速になる。即ち、第2カム44は第1カム42よりも低速になって、第2カム44は第1カム42と相対回転して、相対回転位相が変更される。これにより、トルクカム機構40の全長が変更され、変速比が変更される。そして、無段変速機5が所望の変速比となったところで、電動モータ70の回転速度をゼロに戻す。
【0151】
したがって、変速比を変更する(即ち、変速を行なう)場合には、電動モータ70を正方向、あるいは負方向に回転させ、変速比を固定する場合には、電動モータ70を停止させる。
本実施形態に係る機械式プーリ移動機構30Iは、上記のように、第1カム42は可動シーブ12と直結されており、第1カム42とプーリ6との間には回転によるフリクションは発生しない。また、変速比固定時には、第1カム42と第2カム44とは同方向に等速回転し相対回転しないので、この2つの部材間で回転によるフリクションは発生しない。このため、動力伝達ロスの発生が抑制される。
【0152】
変速比の変更時には、電動モータ70の回転速度を変更して第2カム44を第1カム42(したがって、プーリ6)に対して相対回転させて、第1カム42と第2カム44との相対回転位相を変更する。このとき、スラスト軸受46には、第2カム44が第1カム42を介してその他端側(図中右方)に向けて受けるベルト26の推力が加わり、相対回転によるフリクションが発生するが、第1実施形態と同様に、変速は短時間であり、しかもこの相対回転の速度は低いため、相対回転によるフリクションは発生するものの僅かなものに抑えられる。
【0153】
また、第1実施形態と同様に、第1遊星歯車機構50I及び第2遊星歯車機構60Iの各サンギヤS
1,S
2、各プラネタリギヤP
1,P
2、各リングギヤR
1,R
2が、互いに同歯数に設定されているので、全体構成を簡素化することや電動モータ70の制御プログラムを簡素化することが可能である。
【0154】
さらに、電動モータ70に連結するサンギヤS
1のトルク(サンギヤトルク)T
S1は、1+α
2第2カム44と連結するキャリアC
1のトルク(キャリアトルク)をT
C1とすると、歯数比α
1を用いて、T
S1=〔α
1/(1+α
1)〕T
C1となり、サンギヤトルク)T
S1は、歯数比α
1によらず常にキャリアトルクT
C1よりも小さくなる。したがって、電動モータ70がサンギヤS
1から入力するトルク(=サンギヤトルクT
S1)を歯数比α
1によらず小さくすることができる。
【0155】
〔その他〕
上記の第3,4,8,9実施形態では、第1遊星歯車機構50C,50D,50H,50I及び第2遊星歯車機構60C,60D,60H,60Iの各サンギヤS
1,S
2、各リングギヤR
1,R
2が、互いに同歯数に設定されているが、第2実施形態のように、第1遊星歯車機構50A及び第2遊星歯車機構60Aの各サンギヤS
1,S
2、各リングギヤR
1,R
2のそれぞれが、異なる歯数に設定されていてもよい。
この場合、第2実施形態と同様に、変速比固定時にも、電動モータ70を回転させながら制御するため、モータ効率の低い領域での制御を回避することができる。
【0156】
上記の第5〜7実施形態では、アクチュエータである電動モータ70を回転速度ゼロの回転停止状態にすることで変速比が一定になるように設定しているが、第2実施形態と同様に、変速比固定時にも、電動モータ70を回転させながら制御するように構成してもよく、この場合、モータ効率の低い領域での制御を回避することができる。
【0157】
上記の各実施形態では、構造上の成立容易性から、第1遊星歯車機構と第2遊星歯車機構とで互いに一体に回転する一体回転要素を、キャリア又はサンギヤにしているが、一体回転要素をリングギヤにしてもよい。
さらに、上記の各実施形態では、プライマリプーリ6に機械式プーリ移動機構を装備しているが、セカンダリプーリ14に機械式プーリ移動機構を装備してもよい。さらには、プライマリプーリ6とセカンダリプーリ14との両プーリに機械式プーリ移動機構を設けることもできる。