【課題を解決するための手段】
【0007】
仮想目標位置からのバイノーラルオーディオ信号を生成することを可能にする、改良されたオーディオ信号処理装置および方法を提供することが本発明の目的である。
【0008】
この目的は独立請求項の特徴によって達成される。さらなる実装形態は、従属請求項、明細書、および図面から明らかである。
【0009】
第1の態様によれば、本発明は、リスナに対する方位角および仰角によって画定された仮想目標位置から来る入力オーディオ信号をリスナが知覚するように、リスナに送信される入力オーディオ信号を処理するためのオーディオ信号処理装置に関し、オーディオ信号処理装置は、リスナに対する複数の基準位置に対してあらかじめ定義された一組の所定の左耳および右耳の伝達関数のペアを記憶するように構成されたメモリであって、複数の基準位置が2次元平面内にある、メモリと、仮想目標位置の方位角および仰角に対する一組の所定の左耳および右耳の伝達関数のペアに基づいて、左耳および右耳の伝達関数のペアを決定するように構成された決定器と、決定された左耳および右耳の伝達関数のペアと、左耳出力オーディオ信号および右耳出力オーディオ信号を取得するために、決定された左耳および右耳の伝達関数のペアの左耳伝達関数と右耳伝達関数との間の遅延、ならびに決定された左耳および右耳の伝達関数のペアの左耳伝達関数および右耳伝達関数の周波数依存性を、仮想目標位置の方位角および/または仰角の関数として調整するように構成された調整関数とに基づいて、入力オーディオ信号をフィルタリングするように構成された調整フィルタとを備える。
【0010】
このように、仮想目標位置からのバイノーラルオーディオ信号を生成することを可能にする改良されたオーディオ信号処理装置が提供される。特に、第1の態様によるオーディオ信号処理装置は、計算効率の良い方式で、ユーザに対して、2次元平面、たとえば、(所与のシナリオでは、何度もすでに利用可能である)水平面で仮想目標位置に対して定義された一組の所定の伝達関数を3次元に、すなわち、この平面の上下の仮想目標位置に拡張することを可能にする。これは、たとえば、所定の伝達関数を記憶するために必要とされるメモリが著しく低減される有益な効果を有する。
【0011】
一組の所定の左耳および右耳の伝達関数のペアは、所定の左耳および右耳の頭部伝達関数のペアを備えることができる。
【0012】
一組の所定の左耳および右耳の伝達関数のペアは、測定された左耳および右耳の伝達関数および/またはモデル化された左耳および右耳の伝達関数を備えることができる。こうして、第1の態様によるオーディオ信号処理装置は、ユーザ固有の測定された伝達関数が利用可能でない場合、より現実的な音の知覚またはモデル化された伝達関数のためのユーザ固有の測定された伝達関数のデータベースを使用することができる。
【0013】
そのような第1の態様によるオーディオ信号処理装置の第1の可能な実装形態では、調整フィルタは、仮想目標位置とリスナの左耳との間の距離および仮想目標位置とリスナの右耳との間の距離に関連付けられた音の移動時間差を補償することにより、決定された左耳および右耳の伝達関数のペアの左耳伝達関数と右耳伝達関数との間の遅延を、仮想目標位置の方位角および/または仰角の関数として調整するように構成される。
【0014】
仮想目標位置の方位角および/または仰角の関数として遅延を導入することにより、音の移動時間差を補償することができ、リスナによるより現実的な音の知覚がもたらされる。
【0015】
そのような第1の態様またはその第1の実装形態によるオーディオ信号処理装置の第2の可能な実装形態では、調整フィルタは、以下の式:
【数1】
および
【数2】
に基づいて、決定された左耳および右耳の伝達関数のペアの左耳伝達関数と右耳伝達関数との間の遅延を、仮想目標位置の方位角および/または仰角の関数として調整するように構成され、
τ
Lは左耳伝達関数に適用される遅延を表し、τ
Rは右耳伝達関数に適用される遅延を表し、τおよびΘは、以下の式:
【数3】
および
【数4】
に基づいて定義され、
τは秒単位の遅延を表し、cは音速を表し、aはリスナの頭部に関連するパラメータを表し、θは仮想目標位置の方位角を表し、φは仮想目標位置の仰角を表す。
【0016】
このように、仮想目標位置の方位角および/または仰角の関数としての音の移動時間差を補償するための遅延は、計算効率の良い方法で決定することができる。
【0017】
そのような第1の態様またはその第1もしくは第2の実装形態によるオーディオ信号処理装置の第3の可能な実装形態では、調整フィルタは、複数の無限インパルス応答フィルタに基づいて、決定された左耳および右耳の伝達関数のペアの左耳伝達関数および右耳伝達関数の周波数依存性を、仮想目標位置の方位角および/または仰角の関数として調整するように構成され、複数の無限インパルス応答フィルタは、測定された左耳および右耳の伝達関数の複数のペアの左耳伝達関数および右耳伝達関数の周波数依存性の少なくとも一部分を、仮想目標位置の方位角および/または仰角の関数として近似するように構成される。
【0018】
IIRフィルタによって測定された伝達関数を近似し、それらの主なスペクトル特性、特に方位角および/または仰角の知覚に関連する特性のみを考慮することにより、計算の複雑さを低減することができる。
【0019】
第1の態様の第3の実装形態によるオーディオ信号処理装置の第4の可能な実装形態では、各無限インパルス応答フィルタの周波数依存性は、複数の所定のフィルタパラメータによって定義され、複数の所定のフィルタパラメータは、各無限インパルス応答フィルタの周波数依存性が、測定された左耳および右耳の伝達関数の複数のペアの左耳伝達関数および右耳伝達関数の周波数依存性の少なくとも一部分、特に、スペクトル最大値またはスペクトル最小値などの顕著なスペクトル特性を、仮想目標位置の方位角および/または仰角の関数として近似するように選択される。
【0020】
有限セットのフィルタパラメータによって各無限インパルス応答フィルタを定義することにより、測定された伝達関数の主なスペクトル特性を復元するためにフィルタパラメータのみを保存すればよいので、メモリスペースを節約することが可能になる。
【0021】
第1の態様の第4の実装形態によるオーディオ信号処理装置の第5の可能な実装形態では、複数の無限インパルス応答フィルタは、複数のバイカッドフィルタ、すなわち4次フィルタを備える。複数のバイカッドフィルタは、並列フィルタまたは直列フィルタとして実装することができる。直列フィルタの使用は、伝達関数のスペクトル特性をより良く近似するので好ましい。複数のバイカッドフィルタの順序は異なっていてもよい。
【0022】
第1の態様の第5の実装形態によるオーディオ信号処理装置の第6の可能な実装形態では、複数のバイカッドフィルタは、少なくとも1つのシェルビングフィルタであって、少なくとも1つのシェルビングフィルタが、カットオフ周波数パラメータf
0およびゲインパラメータg
0によって定義される、シェルビングフィルタ、ならびに/または少なくとも1つのピーキングフィルタであって、少なくとも1つのピーキングフィルタが、カットオフ周波数パラメータf
0、ゲインパラメータg
0、および帯域幅パラメータΔ
0によって定義される、ピーキングフィルタを備える。
【0023】
シェルビングフィルタおよび/またはピーキングフィルタの周波数依存性は、2つまたは3つのフィルタパラメータに基づいて測定された伝達関数の周波数依存性に良好な近似値を提供する。
【0024】
第1の態様の第6の実装形態によるオーディオ信号処理装置の第7の可能な実装形態では、複数の無限応答フィルタの少なくとも1つの無限インパルス応答フィルタに対して、複数の所定のフィルタパラメータは、測定された左耳および右耳の伝達関数の複数のペアの左耳伝達関数または右耳伝達関数が最小または最大の大きさを有する周波数ならびに方位角および/または仰角を決定することによって、かつ少なくとも1つの無限インパルス応答フィルタの周波数依存性により、測定された左耳および右耳の伝達関数の複数のペアの左耳伝達関数または右耳伝達関数の周波数依存性を近似することによって選択される。
【0025】
こうして、所定のフィルタパラメータは、計算効率の良い方法で決定することができる。
【0026】
第1の態様の第6または第7の実装形態によるオーディオ信号処理装置の第8の可能な実装形態では、フィルタパラメータ、すなわちカットオフ周波数パラメータf
0、ゲインパラメータg
0、および帯域幅パラメータΔ
0は、以下の式:
f
0=max(m
f,min(M
f,a
f(φ−φ
p)
2+f
p))、
g
0=max(m
g,min(M
g,a
g(φ−φ
p)
2+g
p))、
Δ
0=max(m
Δ,min(M
Δ,a
Δ(φ−φ
p)
2+Δ
p))、
に基づいて決定され、M
f、M
g、M
Δおよびm
f、m
g、m
Δは、それぞれf、g、Δの最大値および最小値を表し、a
f、a
g、a
Δは、対応するフィルタ設計パラメータを変更する速度を制御する係数を表す。
【0027】
そのような第1の態様またはその第1から第8の実装形態のいずれか1つによるオーディオ信号処理装置の第9の可能な実装形態では、調整フィルタは、左耳出力オーディオ信号を取得するために、調整関数を左耳伝達関数と畳み込み、その結果を入力オーディオ信号と畳み込むことにより、かつ/または右耳出力オーディオ信号を取得するために、調整関数を右耳伝達関数と畳み込み、その結果を入力オーディオ信号と畳み込むことにより、決定された左耳および右耳の伝達関数のペアならびに調整関数に基づいて、入力オーディオ信号をフィルタリングするように構成される。
【0028】
そのような第1の態様またはその第1から第8の実装形態のいずれか1つによるオーディオ信号処理装置の第10の可能な実装形態では、調整フィルタは、左耳出力オーディオ信号を取得するために、左耳伝達関数を入力オーディオ信号と畳み込み、その結果を調整関数と畳み込むことにより、かつ/または右耳出力オーディオ信号を取得するために、右耳伝達関数を入力オーディオ信号と畳み込み、その結果を調整関数と畳み込むことにより、決定された左耳および右耳の伝達関数のペアならびに調整関数に基づいて、入力オーディオ信号をフィルタリングするように構成される。
【0029】
そのような第1の態様またはその第1から第10の実装形態のいずれか1つによるオーディオ信号処理装置の第11の可能な実装形態では、オーディオ信号処理装置は、左耳出力オーディオ信号および右耳出力オーディオ信号を出力するように構成された一対のトランスデューサ、特に、クロストーク除去を使用するヘッドホンまたはラウドスピーカをさらに備える。
【0030】
そのような第1の態様またはその第1から第11の実装形態のいずれか1つによるオーディオ信号処理装置の第12の可能な実装形態では、所定の左耳および右耳の伝達関数のペアは、リスナに対して水平面内にある、リスナに対する複数の基準位置に対してあらかじめ定義される。すなわち、一組の所定の左耳および右耳の伝達関数のペアは、複数の異なる方位角および一定のゼロ仰角に対する所定の左耳および右耳の伝達関数のペアから構成することができる。
【0031】
そのような第1の態様またはその第1から第12の実装形態のいずれか1つによるオーディオ信号処理装置の第13の可能な実装形態では、決定器は、仮想目標位置の方位角および仰角に対する一組の所定の左耳および右耳の伝達関数のペアから左耳および右耳の伝達関数のペアを選択することにより、かつ/または仮想目標位置の方位角および仰角に対する一組の所定の左耳および右耳の伝達関数のペアに基づいて、左耳および右耳の伝達関数のペアを補間することにより、仮想目標位置の方位角および仰角に対する一組の所定の左耳および右耳の伝達関数のペアに基づいて、左耳および右耳の伝達関数のペアを決定するように構成される。
【0032】
第2の態様によれば、本発明は、リスナに対する方位角および仰角によって画定された仮想目標位置から来る入力オーディオ信号をリスナが知覚するように、リスナに送信される入力オーディオ信号を処理するためのオーディオ信号処理方法に関し、オーディオ信号処理方法は、仮想目標位置の方位角および仰角に対する一組の所定の左耳および右耳の伝達関数のペアに基づいて、左耳および右耳の伝達関数のペアを決定するステップであって、所定の左耳および右耳の伝達関数のペアが、リスナに対する複数の基準位置に対してあらかじめ定義され、複数の基準位置が2次元平面内にある、ステップと、たとえば、調整フィルタにより、決定された左耳および右耳の伝達関数のペアと、左耳出力オーディオ信号および右耳出力オーディオ信号を取得するために、決定された左耳および右耳の伝達関数のペアの左耳伝達関数と右耳伝達関数との間の遅延、ならびに決定された左耳および右耳の伝達関数のペアの左耳伝達関数および右耳伝達関数の周波数依存性を、仮想目標位置の方位角および/または仰角の関数として調整するように構成された調整関数とに基づいて、入力オーディオ信号をフィルタリングするステップとを備える。
【0033】
そのような第2の態様によるオーディオ信号処理方法の第1の可能な実装形態では、調整関数は、仮想目標位置とリスナの左耳との間の距離および仮想目標位置とリスナの右耳との間の距離に関連付けられた音の移動時間差を補償することにより、決定された左耳および右耳の伝達関数のペアの左耳伝達関数と右耳伝達関数との間の遅延を、仮想目標位置の方位角および/または仰角の関数として調整するように構成される。
【0034】
そのような第2の態様またはその第1の実装形態によるオーディオ信号処理方法の第2の可能な実装形態では、調整関数は、以下の式:
【数5】
および
【数6】
に基づいて、決定された左耳および右耳の伝達関数のペアの左耳伝達関数と右耳伝達関数との間の遅延を、仮想目標位置の方位角および/または仰角の関数として調整するように構成され、
τ
Lは左耳伝達関数に適用される遅延を表し、τ
Rは右耳伝達関数に適用される遅延を表し、τおよびΘは、以下の式:
【数7】
および
【数8】
に基づいて定義され、
τは秒単位の遅延を表し、cは音速を表し、aはリスナの頭部に関連するパラメータを表し、θは仮想目標位置の方位角を表し、φは仮想目標位置の仰角を表す。
【0035】
そのような第2の態様またはその第1もしくは第2の実装形態によるオーディオ信号処理方法の第3の可能な実装形態では、調整関数は、複数の無限インパルス応答フィルタに基づいて、決定された左耳および右耳の伝達関数のペアの左耳伝達関数および右耳伝達関数の周波数依存性を、仮想目標位置の方位角および/または仰角の関数として調整するように構成され、複数の無限インパルス応答フィルタは、測定された左耳および右耳の伝達関数の複数のペアの左耳伝達関数および右耳伝達関数の周波数依存性の少なくとも一部分を、仮想目標位置の方位角および/または仰角の関数として近似するように構成される。
【0036】
第2の態様の第3の実装形態によるオーディオ信号処理方法の第4の可能な実装形態では、各無限インパルス応答フィルタの周波数依存性は、複数の所定のフィルタパラメータによって定義され、複数の所定のフィルタパラメータは、各無限インパルス応答フィルタの周波数依存性が、測定された左耳および右耳の伝達関数の複数のペアの左耳伝達関数および右耳伝達関数の周波数依存性の少なくとも一部分、特に、スペクトル最大値またはスペクトル最小値などの顕著なスペクトル特性を、仮想目標位置の方位角および/または仰角の関数として近似するように選択される。
【0037】
第2の態様の第4の実装形態によるオーディオ信号処理方法の第5の可能な実装形態では、複数の無限インパルス応答フィルタは、複数のバイカッドフィルタ、すなわち4次フィルタを備える。複数のバイカッドフィルタは、並列フィルタまたは直列フィルタとして実装することができる。直列フィルタの使用は、伝達関数のスペクトル特性をより良く近似するので好ましい。複数のバイカッドフィルタの順序は異なっていてもよい。
【0038】
第2の態様の第5の実装形態によるオーディオ信号処理方法の第6の可能な実装形態では、複数のバイカッドフィルタは、少なくとも1つのシェルビングフィルタであって、少なくとも1つのシェルビングフィルタが、カットオフ周波数パラメータf
0およびゲインパラメータg
0によって定義される、シェルビングフィルタ、ならびに/または少なくとも1つのピーキングフィルタであって、少なくとも1つのピーキングフィルタが、カットオフ周波数パラメータf
0、ゲインパラメータg
0、および帯域幅パラメータΔ
0によって定義される、ピーキングフィルタを備える。
【0039】
第2の態様の第6の実装形態によるオーディオ信号処理方法の第7の可能な実装形態では、複数の無限応答フィルタの少なくとも1つの無限インパルス応答フィルタに対して、複数の所定のフィルタパラメータは、測定された左耳および右耳の伝達関数の複数のペアの左耳伝達関数または右耳伝達関数が最小または最大の大きさを有する周波数ならびに方位角および/または仰角を決定することによって、かつ少なくとも1つの無限インパルス応答フィルタの周波数依存性により、測定された左耳および右耳の伝達関数の複数のペアの左耳伝達関数または右耳伝達関数の周波数依存性を近似することによって選択される。
【0040】
第2の態様の第6または第7の実装形態によるオーディオ信号処理方法の第8の可能な実装形態では、フィルタパラメータ、すなわちカットオフ周波数パラメータf
0、ゲインパラメータg
0、および帯域幅パラメータΔ
0は、以下の式:
f
0=max(m
f,min(M
f,a
f(φ−φ
p)
2+f
p))、
g
0=max(m
g,min(M
g,a
g(φ−φ
p)
2+g
p))、
Δ
0=max(m
Δ,min(M
Δ,a
Δ(φ−φ
p)
2+Δ
p))、
に基づいて決定され、M
f、M
g、M
Δおよびm
f、m
g、m
Δは、それぞれf、g、Δの最大値および最小値を表し、a
f、a
g、a
Δは、対応するフィルタ設計パラメータを変更する速度を制御する係数を表す。
【0041】
そのような第2の態様またはその第1から第8の実装形態のいずれか1つによるオーディオ信号処理方法の第9の可能な実装形態では、決定された左耳および右耳の伝達関数のペアならびに調整関数に基づいて、入力オーディオ信号をフィルタリングするステップは、左耳出力オーディオ信号を取得するために、調整関数を左耳伝達関数と畳み込み、その結果を入力オーディオ信号と畳み込むステップ、および/または右耳出力オーディオ信号を取得するために、調整関数を右耳伝達関数と畳み込み、その結果を入力オーディオ信号と畳み込むステップを備える。
【0042】
そのような第2の態様またはその第1から第8の実装形態のいずれか1つによるオーディオ信号処理方法の第10の可能な実装形態では、決定された左耳および右耳の伝達関数のペアならびに調整関数に基づいて、入力オーディオ信号をフィルタリングするステップは、左耳出力オーディオ信号を取得するために、左耳伝達関数を入力オーディオ信号と畳み込み、その結果を調整関数と畳み込むステップ、および/または右耳出力オーディオ信号を取得するために、右耳伝達関数を入力オーディオ信号と畳み込み、その結果を調整関数と畳み込むステップを備える。
【0043】
そのような第2の態様またはその第1から第10の実装形態のいずれか1つによるオーディオ信号処理方法の第11の可能な実装形態では、オーディオ信号処理方法は、一対のトランスデューサ、特に、クロストーク除去を使用するヘッドホンまたはラウドスピーカを用いて、左耳出力オーディオ信号および右耳出力オーディオ信号を出力するステップをさらに備える。
【0044】
そのような第2の態様またはその第1から第11の実装形態のいずれか1つによるオーディオ信号処理方法の第12の可能な実装形態では、所定の左耳および右耳の伝達関数のペアは、リスナに対して水平面内にある、リスナに対する複数の基準位置に対してあらかじめ定義される。
【0045】
そのような第2の態様またはその第1から第12の実装形態のいずれか1つによるオーディオ信号処理方法の第13の可能な実装形態では、仮想目標位置の方位角および仰角に対する一組の所定の左耳および右耳の伝達関数のペアに基づいて、左耳および右耳の伝達関数のペアを決定するステップは、仮想目標位置の方位角および仰角に対する一組の所定の左耳および右耳の伝達関数のペアから左耳および右耳の伝達関数のペアを選択するステップ、または仮想目標位置の方位角および仰角に対する一組の所定の左耳および右耳の伝達関数のペアに基づいて、左耳および右耳の伝達関数のペアを補間するステップを備える。
【0046】
本発明の第2の態様によるオーディオ信号処理方法は、本発明の第1の態様によるオーディオ信号処理装置によって実施することができる。
【0047】
第3の態様によれば、本発明は、コンピュータ上で実行されると、本発明の第2の態様またはその実装形態のうちのいずれかによるオーディオ信号処理方法を実施するためのプログラムコードを備えるコンピュータプログラムに関する。
【0048】
本発明は、ハードウェアおよび/またはソフトウェア内に実装することができる。
本発明のさらなる実施形態が以下の図に関して記載される。